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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025307
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】抗菌性消毒液
(51)【国際特許分類】
   A01N 61/00 20060101AFI20240216BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240216BHJP
   A01N 59/08 20060101ALI20240216BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A01N61/00 D
A01P3/00
A01N59/08 A
A01N25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128660
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】522322398
【氏名又は名称】FODS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 哲也
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BB18
4H011BB21
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】人体への安全性が高く、かつ空間除菌にも利用でき、長時間に亘る静菌効果を発現できる消毒液を提供する。
【解決手段】本発明に係る抗菌性消毒液は、次亜塩素酸(HClO)成分:有効濃度で35~500ppm、ポリリジン:5~500ppmを含有することを特徴とする。このとき、次亜塩素酸(HClO)成分の有効濃度が70~1000ppmである次亜塩素酸水に、ポリリジン10~1000ppmを混合させてなる抗菌性次亜塩素酸水溶液に対して、更に水で2~8倍希釈させることで抗菌性消毒液を得るようにしてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸(HClO)成分:有効濃度で35~500ppm、
ポリリジン:5~500ppmを含有すること
を特徴とする抗菌性消毒液。
【請求項2】
次亜塩素酸(HClO)成分の有効濃度が70~1000ppmである次亜塩素酸水に、ポリリジン10~1000ppmを混合させてなること
を特徴とする抗菌性次亜塩素酸水溶液。
【請求項3】
請求項2記載の抗菌性次亜塩素酸水溶液に対して、更に水で2~8倍希釈させたこと
を特徴とする抗菌性消毒液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症蔓延時において空間除菌及び手指等を消毒する際に、より抗菌性を強力かつ長期間に亘り発現させる上で好適な抗菌性消毒液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の新型コロナウィルスを始めとする各種感染症の蔓延時には、特に屋外から建物や公共施設内に入る場合に、手指に付着したウィルスを除菌するために、消毒液を空中散布及び塗布により消毒を行う。またドアノブや手すり等、人の手指が頻繁に接触する可能性がある部位に対して予め消毒液を塗布する。この消毒液については、アルコール消毒液や次亜塩素酸ナトリウムを希釈した消毒液が多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、アルコール消毒液は、同時に手指の脱脂を行う。また、アルコールには脱水作用もあるため、頻繁に使用してしまうと、皮膚表面の皮脂と水分の両方を奪うことにもなる。その結果、手指が荒れてしまい、また手指を保護するために良い働きをする常在菌まで死滅させてしまうという問題点がある。アルコール消毒液は、刺激が強い為、加湿器などを利用して空間に噴霧できない。特に火の元や石油ストーブが室内にある場合には、引火する可能性もある。
【0004】
また次亜塩素酸ナトリウムは、アルカリ性であることから人体には優しいものではなく、また毒性が強いことから、アルコール消毒液と同様に散布剤や加湿器等を利用して空間に噴霧することができない。
【0005】
さらにこれらアルコール消毒液や次亜塩素酸ナトリウムを希釈した消毒液は短時間における静菌効果は期待できるものの、その静菌効果を長時間に亘り持続させ続けることについては、未だ検証の半ばにある。
【0006】
このため、人体への安全性が高く、かつ空間除菌にも利用でき、長時間に亘る静菌効果を発現できる消毒液が従来より望まれていたが、未だ案出されていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-81610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、人体への安全性が高く、かつ空間除菌にも利用でき、長時間に亘る静菌効果を発現できる消毒液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る抗菌性消毒液は、次亜塩素酸(HClO)成分:有効濃度で35~500ppm、ポリリジン:5~500ppmを含有することを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る抗菌性次亜塩素酸水溶液は、次亜塩素酸(HClO)成分の有効濃度が70~1000ppmである次亜塩素酸水に、ポリリジン10~1000ppmを混合させてなることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る抗菌性消毒液は、請求項2記載の抗菌性次亜塩素酸水溶液に対して、更に水で2~8倍希釈させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成からなる本発明によれば、次亜塩素酸水、及びポリリジンという、何れも安全な食品添加物として認可されている成分で構成されていることから、極めて人体に対して安全な消毒液を構成することができ、消毒した手指が荒れてしまうのを防止できる。また人体に対して安全な本発明を適用した抗菌性消毒液によれば、空中散布や加湿器などを利用して室内等の空間に噴霧する利用形態も採用できる。
【0013】
更に本発明によれば、経時変化しにくい食品保存料であるポリリジンを次亜塩素酸水に混合することによって、次亜塩素酸水だけでは期待できなかった継続した静菌効力(ウィルス不活性効果)が期待でき、長時間に亘る静菌効果を発現できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態における抗菌性消毒液について詳細に説明する。
【0015】
本発明を適用した抗菌性消毒液は、消毒液全体に対して、次亜塩素酸(HClO)成分:有効濃度で35~500ppm、ポリリジン:5~500ppmを含有させてなる。
【0016】
このとき、次亜塩素酸(HClO)成分の有効濃度が70~1000ppmである次亜塩素酸水に、ポリリジン10~1000ppmを混合させてなる抗菌性次亜塩素酸水溶液として具現化されるものであってもよい。また、この抗菌性次亜塩素酸水溶液に対して、更に水で希釈することで、次亜塩素酸(HClO)成分の有効濃度と、ポリリジンを上述した範囲となるように調製した抗菌性消毒液で構成するようにしてもよい。
【0017】
なお、以下でいう抗菌とは、あらゆる菌以外に、あらゆるウィルスを不活性化することも含む。
【0018】
次亜塩素酸水
次亜塩素酸水は、塩酸又は塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。次亜塩素際水は、超純水(H2O純度99.99%)に、純度100%の塩化ナトリウムを電気分解することで得られるものを意味する場合が多いが、これに限定されるものではない。即ち、次亜塩素酸水は、pH、有効塩素濃度、電気分解の方式に応じて、強酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水に分類できるが、後述する除菌効果において大きな差異は無く、何れの分類の次亜塩素酸水を適用するものであってもよい。
【0019】
次亜塩素酸水に含まれる主な除菌成分としての次亜塩素酸は、低い有効塩素濃度であっても高い除菌力を発揮する。この次亜塩素酸水は、様々な菌やウィルスに対して高い除菌効果を発現するものであり、次亜塩素酸ナトリウムと比較してより高い除菌力を発揮する。また次亜塩素酸水は、除菌範囲が広く、速効性もあるため、新型コロナウィルスの予防用として十分活用することが期待できる。
【0020】
これに加えて、次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムに比べてはるかに安全で、食品添加物として認可を受けている。特に次亜塩素酸水に含まれる塩素成分の残留性が低いので、食品の洗浄にも使用することができるくらいである。このため、次亜塩素酸水は、人体への安全性が高く、噴霧した手指が荒れてしまうことも無くなることから、除菌及びウィルス不活性剤として幅広く用いられている。この次亜塩素酸水は、有機物に反応した瞬間に殺菌作用を発揮した上で、無害な水に戻る性質を持つ。
【0021】
抗菌性消毒液全体に対して、次亜塩素酸(HClO)成分が有効濃度で35ppm未満の場合、次亜塩素酸の消毒作用が弱すぎてしまい菌の増殖を抑えることができない。一方で次亜塩素酸(HClO)成分が有効濃度で500ppmを超えてしまうと、除菌効果が飽和するばかりか、次亜塩素酸自体が揮発してしまう。このため、次亜塩素酸(HClO)成分は、有効濃度で35~500ppmとする。
【0022】
ポリリジン
ポリリジンは、正式にはε-ポリ-L-リジンと呼ばれ、必須アミノ酸のL-リジンのε位のアミノ基とα位のカルボキシル基がアミド結合により、通常約25~30個連なった低分子天然ホモポリマーである。ポリリジンは、広いpH範囲において優れた抗菌効果(ウィルス不活性化効力)を示し、熱安全性に優れ、水への溶解性も高いという特徴がある。ポリリジンは、グラム陽性菌(セレウス菌等)、グラム陰性菌(大腸菌等)、酵母など広範囲の微生物、特に食中毒原因菌に対しても、優れた増殖抑制効果を発揮する。
【0023】
ポリリジンは、枯草菌をはじめとする耐熱性菌に対しても、優れた増殖抑制効果を発揮する。ポリリジンは、食品の腐敗に大きな影響を及ぼす乳酸菌に対しても強い増殖抑制効果を発揮する。更に、このポリリジンは、厚生労働省告示の食品添加物であり、天然の発酵物であるので、食品保存料としても安全性が高く、食品添加物の中で用途制限がない添加物であることから、人体への安全性が極めて高いという特徴がある。
【0024】
ポリリジンの含有量が5ppm未満の場合、ポリリジンによる殺菌作用が弱すぎて、グラム陽性菌は除菌できる者の、雑菌の発生については抑制することができない。一方で、ポリリジンの含有量が500ppmを超える場合、除菌効果が飽和するばかりか、ポリリジンの粉末が残存してしまう。このため、ポリリジンの含有量は、5~500ppmとする。
【0025】
このように、次亜塩素酸水、及びポリリジンは、何れも安全な食品添加物として認可されているものであり、これらを抗菌剤として組み合わせることにより、極めて人体に対して安全な消毒液を構成することができる。
【0026】
特にポリリジンは、芽胞という外殻膜がある雑菌には、その外郭膜の防御機能により、雑菌への静菌・抗菌効果が出にくい場合がある。このため、食品工場では ポリリジンの効果を高めるために、弁当等にポリリジン溶液を噴霧及び塗布し、弁当等の表面についた雑菌を冷凍することにより、浸透圧により雑菌の外郭膜を破り、又は一部を破損させることにより雑菌の繁殖を抑える。ポリリジンの解凍時に雑菌の外郭膜が破損した部分から内包部と接触し、雑菌を動けなくするという、いわば冷凍工程とポリリジンの併用が行われる。
【0027】
しかしながら、ポリリジンを空間除菌や、物の表面に噴霧した除菌剤として活用する場合、特に人の居る場所では、ポリリジンを冷凍させるのは不可能である。
【0028】
このため、冷凍工程の代わりに、非常に安全性が高く 物と反応すると水に変化する次亜塩素酸水に、ポリリジンを溶解させることとした。これにより、空間除菌及び人体や物への除菌を、冷凍工程の代わりに噴霧で実現することができる。
【0029】
特に噴霧材として使用する場合、次亜塩素酸水、及びポリリジンは、何れも安全な成分の組み合わせで、特に乳幼児の部屋や、乳児のおむつ替えの際に、乳児に直接、噴霧できるというメリットもある。
【0030】
経時変化しにくい食品保存料であるポリリジンを次亜塩素酸水に混合することによって、次亜塩素酸水だけでは期待できなかった継続した殺菌効力(ウィルス不活性効果)が期待できる。
【0031】
次亜塩素酸水が有機物に反応して水になった後、水を拭き取らずにそのまま残した場合には、水は雑菌の培地となりえる。このため、次亜塩素酸水に対してポリリジンを混合することにより、次亜塩素酸水から変化した水を培地として雑菌を発生させない、いわば静菌作用を持続的に発現させることができる。
【0032】
このようなポリリジンによる水の中の雑菌の持続的に静菌作用は 水が蒸発、乾燥するまで長時間に亘り継続する。また水が蒸発、乾燥した箇所にポリリジンが残存することから、ポリリジンがゆっくり生分解されていく間も、上述した静菌作用を持続させることができる。
【0033】
次亜塩素酸水に、ポリリジンを溶解させ噴霧した場合、噴霧されたミスト化水溶液にはポリリジンが均等に混合しており、次亜塩素酸水が雑菌と接触し、即時除菌した後の水にもポリリジンが残存し、継続した抗菌作用を及ぼす。
【0034】
仮に次亜塩素酸水と、ポリリジン溶液を混合することなく二液に分離したまま個々の噴霧器に収容して噴霧した場合、先に次亜塩素酸水をミスト噴霧しても、次亜塩素酸水が反応した後、残存した水滴が雑菌の培地となる。このよう残存した雑菌の培地となっている個々の水滴に対して、ポリリジンのみを収容した噴霧器でピンポイントで正確に噴霧して接触させ、除菌することは一般的には困難である。
【0035】
本発明においては次亜塩素酸水に対してポリリジンを溶解させることで、これらを混合した一液で構成していることから、次亜塩素酸水を通じて瞬間除菌を行い、有機物と反応して得られた水に対してポリリジンを通じて継続静菌を行う効果を相乗的に得ることができる。
【0036】
なお、本発明は、水による希釈前の抗菌性次亜塩素酸水溶液として具現化してもよいことは勿論である。かかる場合において、希釈前の次亜塩素酸水における次亜塩素酸(HClO)成分の有効濃度が70~1000ppmとした理由について、次亜塩素酸成分の有効濃度が70ppm未満では、水により2倍で希釈した場合であっても希釈後の消毒液全体に対する次亜塩素酸成分の濃度が35ppm未満となってしまい、所期の効果を発現させることができなくなる。これに対して、希釈前の次亜塩素酸水における次亜塩素酸成分の有効濃度が1000ppmを超えてしまうと、次亜塩素酸自体が揮発してしまい、製造や保管が困難になる。
【0037】
このため、希釈前の次亜塩素酸水における次亜塩素酸(HClO)成分の有効濃度が70~1000ppmとしている。
【0038】
この希釈前の次亜塩素酸水に対して混合すべきポリリジンは、10~1000ppmとするがポリリジンが10ppm未満では、水により2倍で希釈した場合であっても希釈後の消毒液全体に対するポリリジンの濃度が5ppm未満となってしまい、所期の効果を発現させることができなくなる。一方で、混合すべきポリリジンの含有量が1000ppmを超える場合、次亜塩素酸水中において、ポリリジンの粉末が残存してしまう。
【0039】
このため、希釈前の次亜塩素酸水に混合すべきポリリジンの含有量は、10~1000ppmとする。
【0040】
なお、本発明を消毒液として構成する場合には、上述した範囲でポリリジンが混合された次亜塩素酸水に対して、更に重量比で水で希釈する。このとき希釈後の抗菌性消毒液における次亜塩素酸(HClO)成分が、有効濃度で35~500ppm、ポリリジンが5~500ppmとなるように希釈すべき水の量を調製する。水の希釈量については、いかなるものであってもよいが2~8倍に希釈することが望ましい。水による希釈が2倍未満では、次亜塩素酸、ポリリジンの濃度が高すぎてしまい、効果が飽和してしまうばかりでなく、製造コストが高くなってしまう。一方、水による希釈が8倍を超えてしまう場合、次亜塩素酸、ポリリジンの濃度が低すぎてしまい、所期の殺菌作用を長時間に亘り持続させることができない
【実施例0041】
以下、本発明を適用した抗菌性消毒液の実施例について説明をする。本実施例においては、次亜塩素酸、ポリリジンを含有させた抗菌性消毒液の抗菌活性を確認するために、以下の表1に示す実験的検証を行った。
【0042】
この実験的検証では、次亜塩素酸水にポリリジンを混合し、更に水により希釈することで表1に示す本発明例1~16、比較例1~10を作製した。ポリリジンは、ポリリジン(チッソ株式会社製50%デキストリン粉末:ε-ポリリジン臭素酸塩50%、デキストリン50%含有)を使用した。
【0043】
【表1】
【0044】
このような本発明例1~16、比較例1~10に至るまでの各調製溶液の抗菌活性を測定するために、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)を利用した抗菌力試験を行った。試験では、関東化学株式会社製のウェルシュ菌選択増菌培地を利用した。具体的には、本発明例1~16、比較例1~10に至るまでの各調製溶液に対して、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)を寒天平板に滴下し、全面に拡げ40℃で18時間培養後のコロニーの発現を観察した。
【0045】
その結果、本発明例1~16は、表1に示すように、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)が発現しなかった。また、実験開始から3時間経過時点で菌が増殖しなかったか、或いは一部の菌が残存してはいたが増殖しなかった。このため、本発明例1~16に示すように、次亜塩素酸(HClO)成分を有効濃度で35~500ppm、ポリリジンを5~500ppmとすることで所期の効果を発現できることを検証できた。ε-ポリリジリンは、マイクログラム単位量の範囲内において、高濃度では菌の増殖阻害効果を示し、低濃度では菌の増殖促進効果を示すという二面的な作用を有し、この付近に転換濃度があるという示唆が得られた。
【0046】
これに対して、比較例1は、次亜塩素酸の有効濃度が35ppm未満であることから、グラム陽性菌が増殖していた。比較例2は、次亜塩素酸の有効濃度が500ppmを超えていたため、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)が発現せず、菌が増殖しなかったが、次亜塩素酸が揮発した。
【0047】
また比較例3は、ポリリジンが5ppm未満であることから、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)が死滅したが、5分後、雑菌(ブドウ球菌等)が発生していた。比較例4は、ポリリジンが500ppmを超えていたため、ポリリジン粉末残存が見られた。
【0048】
比較例5~7は、何れもポリリジンが含まれていないため、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)が死滅したが、30分経過と共に急速に雑菌(ブドウ球菌等)が発生、増殖していた。比較例8~10は、何れも次亜塩素酸が含まれていないので、当初からグラム陽性菌(ウェルシュ菌)が残存し、その後時間経過とともに、ウェルシュ菌が増殖した。
【0049】
また、表2に示す実験的検証においては、希釈前の次亜塩素酸水にポリリジンを混合し、その後水により希釈して消毒液として調製後、上述と同様にグラム陽性菌の発現性等について観察したものである。
【0050】
【表2】
【0051】
本発明例17については水により4倍に希釈、本発明例18~19により2倍に希釈し、本発明例20は水により希釈することなくそのままこれを消毒液として調製した。
【0052】
その結果、本発明例17~20は、何れもグラム陽性菌(ウェルシュ菌)が発現せず、3時間経過時点で菌が増殖しなかったか、或いは3時間経過時点で一部の菌が残存していたが、増殖しなかった。
【0053】
比較例11については、水により2倍に希釈したが、グラム陽性菌が増殖した。比較例12については、水により2倍に希釈したが、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)が発現せず、菌が増殖しなかったが、次亜塩素酸が揮発した。比較例13については、水により2倍に希釈したが、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)が死滅したが、5分後、雑菌(ブドウ球菌等)が発生した。比較例14については、グラム陽性菌(ウェルシュ菌)が発現せず、3時間経過時点で、菌が増殖しなかったが、ポリリジン粉末残存が見られた。