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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025317
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】軸流ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/52 20060101AFI20240216BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F04D29/52 D
F04D29/52 E
F04D29/66 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128680
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 昌嗣
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130BA13A
3H130BA13B
3H130BA22A
3H130BA22B
3H130CA22
3H130CA24
3H130DA02Z
3H130DD02Z
3H130EA06A
3H130EA06B
3H130EA07A
3H130EA07B
(57)【要約】
【課題】振動を抑制することが可能な軸流ファンを提供する。
【解決手段】送風方向に風を送る軸流ファン1は、径方向に延びる翼5を有するインペラカップ3と、インペラカップ3を回転させるモータ7と、インペラカップ3およびモータ7を収容するハウジング2と、を備える。ハウジング2は、インペラカップ3の外周を覆うケーシング部21と、モータ7を支持するベース部9と、ベース部9とケーシング部21を接続するスポーク部10と、を有する。ベース部9の外周部であってスポーク部10と接続される部位は、剛性が他の部位より小さい振動抑制部で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風方向に風を送る軸流ファンであって、
径方向に延びる翼を有するインペラカップと、
前記インペラカップを回転させるモータと、
前記インペラカップおよび前記モータを収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記インペラカップの外周を覆うケーシング部と、
前記モータを支持するベース部と、
前記ベース部と前記ケーシング部を接続するスポーク部を有し、
前記ベース部の外周部であって前記スポーク部と接続される部位は、剛性が他の部位より小さい振動抑制部で構成されている、軸流ファン。
【請求項2】
前記ベース部は、前記モータの前記送風方向の下流側を支持するモータ支持部を有し、
前記ベース部の外周部には、前記送風方向に沿って延びる外周壁部が設けられており、
前記外周壁部は、
径方向外側に位置し、前記スポーク部と接続される外側部と、
径方向内側に位置し、前記モータ支持部と接続される内側部と、を有する、請求項1に記載の軸流ファン。
【請求項3】
前記振動抑制部は、前記内側部と前記外側部との間の空洞の領域である、請求項2に記載の軸流ファン。
【請求項4】
送風方向に風を送る軸流ファンであって、
径方向に延びる翼を有するインペラカップと、
前記インペラカップを回転させるモータと、
前記インペラカップおよび前記モータを収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記インペラカップの外周を覆うケーシング部と、
前記モータを支持するベース部と、
前記ベース部と前記ケーシング部を接続するスポーク部を有し、
前記ベース部の外周部であって前記スポーク部と接続される部位から周方向に離間された位置に、剛性が他の部位より大きい振動バイパス部が設けられている、軸流ファン。
【請求項5】
前記ベース部は、前記モータの前記送風方向の下流側を支持するモータ支持部を有し、
前記ベース部の外周部には、前記送風方向に沿って延びる外周壁部が設けられており、
前記外周壁部は、
径方向外側に位置し、前記スポーク部と接続される外側部と、
径方向内側に位置し、前記モータ支持部と接続される内側部と、を有する、請求項4に記載の軸流ファン。
【請求項6】
前記振動バイパス部は、前記内側部と前記外側部との間を接続する領域である、請求項5に記載の軸流ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンは、羽根車の回転速度を上げることにより、高い冷却性能を達成することが可能である。しかし、羽根車の回転速度を上げると、軸流ファンが発生する個体振動も大きくなる。軸流ファンの振動は、例えば、ロータの回転により生じた振動が、軸受支持部、フレームハブを有するフレームを介してケーシングに伝達することにより発生する。
【0003】
このような振動を抑制するために、例えば、特許文献1には、インペラと、モータ部と、モータ支持部と、インペラ及びモータ部を収容するハウジングとを備え、モータ支持部が樹脂で構成された略円形板状のベース部を有し、ベース部の上面もしくは下面の少なくともいずれか一方の面に、軸方向に凹む複数の凹部が網目状に形成され、ベース部の凹部以外の平坦部が、ベース部の中心から放射状に伸びる径方向に添って連続する部位を有さないように構成された送風ファンが開示されている。
【0004】
特許文献2には、回転軸と、インペラと、モータと、ケーシングと、モータベース部と、ケーシングとモータベース部とを連結するスポークと、を備え、モータベース部が筒形状のボス部と、外周側面と、ボス部の外周側とモータベース部の外周側とを連結する複数の補強リブと、を有するように構成された送風ファンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5668534号公報
【特許文献2】特許第6496773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、羽根の回転に伴って発生する振動を抑制するための技術は複数提案されている。しかしながら、特許文献1及び特許文献2の送風ファンにおいても、必ずしも十分な振動抑制であるとはいえず、さらなる改良の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、振動を抑制することが可能な軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る軸流ファンは、
送風方向に風を送る軸流ファンであって、
径方向に延びる翼を有するインペラカップと、
前記インペラカップを回転させるモータと、
前記インペラカップおよび前記モータを収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記インペラカップの外周を覆うケーシング部と、
前記モータを支持するベース部と、
前記ベース部と前記ケーシング部を接続するスポーク部を有し、
前記ベース部の外周部であって前記スポーク部と接続される部位は、剛性が他の部位より小さい振動抑制部で構成されている。
【0009】
本発明の一側面に係る軸流ファンは、
送風方向に風を送る軸流ファンであって、
径方向に延びる翼を有するインペラカップと、
前記インペラカップを回転させるモータと、
前記インペラカップおよび前記モータを収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記インペラカップの外周を覆うケーシング部と、
前記モータを支持するベース部と、
前記ベース部と前記ケーシング部を接続するスポーク部を有し、
前記ベース部の外周部であって前記スポークと接続される部位から周方向に離間された位置に、剛性が他の部位より大きい振動バイパス部が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、振動を抑制することが可能な軸流ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る軸流ファンの正面図である。
図2図1に示す軸流ファンのA-A線における半部断面図である。
図3】軸流ファンのハウジングを示す図である。
図4】振動の伝導経路を説明する図である。
図5】振動の伝導経路を説明する図である。
図6】比較例の軸流ファンの構成を示す部分断面図である。
図7】本発明と比較例の軸流ファンにおける回転速度と振動加速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る軸流ファンの一例を示す正面図である。図1に示すように、軸流ファン1は、ハウジング2と、ハウジング2内に配置されるインペラカップ3と、インペラカップ3を回転駆動するモータ7と、を備える。インペラカップ3は、複数(本例では、7枚)の翼5を有する。モータ7は、インペラカップ3のカップ内に収容されている。
【0014】
ハウジング2は、全体の形状が概略矩形状に形成されている。ハウジング2は、インペラカップ3の外周を覆う円筒状のケーシング部21と、インペラカップ3に収容されたモータ7を支持するベース部9と、ベース部9とケーシング部21を接続するスポーク部10と、を有する。ハウジング2は、樹脂で形成されている。
【0015】
ケーシング部21は、風を吸い込む吸込口21a(図裏側のケーシング部開口)と、吸い込んだ風を吐き出す吐出口21b(図表側のケーシング部開口)と、を有する。ケーシング部21は、吸込口21aと吐出口21bとに連通する通風路22を形成する。翼5の回転に伴って吸込口21aから吸い込まれた風は、通風路22に沿う方向(以下、送風方向Wという)に送られ、吐出口21bから外部に吐出される。図1は、軸流ファン1をケーシング部21の吐出口21b側から見た図である。なお、図中に示す矢印Vの方向は、翼5の回転方向を示す。
【0016】
図2は、図1に示す軸流ファン1のA-A線における半部断面図である。図2に示すように、インペラカップ3のカップ30は、その中心部がモータ7の回転軸70に固定されている。以下の説明において、回転軸70に沿う方向を「軸方向」、回転軸70を中心とする半径方向を「径方向」という。
【0017】
回転軸70は、通風路22の中央部に通風路22(送風方向W)に沿うように設けられている。インペラカップ3は、カップ30の開口側を通風路22の吐出口21bの方向に向けて通風路22に沿うように回転軸70に固定されている。カップ30の径方向における外側の外周側面31は、通風路22の吸入口21a側における内周面を形成する。カップ30の外周側面31は、送風方向Wと平行に延びるように形成されている。翼5を有するインペラカップ3は、通風路22内において、回転軸70と共に回転することにより、風を送風方向Wへと送る。
【0018】
複数の翼5は、カップ30の外周側面31から径方向へ延びるように設けられている。翼5はカップ30と一体的に設けられている。複数の翼5は、それぞれが回転軸70の方向に対して傾斜して設けられている。
【0019】
モータ7は、翼5を回転駆動させる装置としてインペラカップ3のカップ30内に収容されている。モータ7は、略カップ状のロータヨーク71と、ロータヨーク71の中心部に圧入された回転軸70と、コイル82が巻回されたステータコア81と、を有する。
【0020】
ロータヨーク71は、インペラカップ3のカップ30内に嵌入されている。ロータヨーク71は、回転軸70と共に軸線Yを中心に回転する。ロータヨーク71の内側面には、マグネット72が取り付けられている。回転軸70は、軸受73に回転可能に支持されている。軸受73は、筒状の支持部74の内側面に固定されている。支持部74の外側面にはステータコア81が固定されている。ステータコア81の外側面は、ロータヨーク71のマグネット72の内側面と隙間を隔てて対向している。
【0021】
また、モータ7のステータコア81は、ベース部9に取り付けられている。ベース部9は、略カップ状に形成されている。ベース部9は、通風路22の吐出口21b側において、ベース部9の開口側をインペラカップ3のカップ30の開口側と対向させるように設けられている。ベース部9は、通風路22の中央部において通風路22と同軸に設けられている。
【0022】
ベース部9は、モータ7の送風方向Wにおける下流側(吐出口21b側)を支持するモータ支持部91を有する。モータ支持部91の内周部には、送風方向Wに沿ってインペラカップ3の方向へ延びる内周壁部92が設けられている。モータ支持部91の外周部には、送風方向Wに沿ってインペラカップ3の方向へ延びる外周壁部93が設けられている。ベース部9の内周壁部92は、モータ7のステータコア81に取り付けられるとともに、支持部74の外側面に固定されている。ベース部9の外周壁部93は、通風路22の吐出口21b側における内周面を形成する。
【0023】
外周壁部93は、径方向における外側に位置する外側部94と、径方向における内側に位置する内側部95と、を有する。外側部94は、スポーク部10の径方向における内側の端部に接続されている。内側部95は、モータ支持部91に接続されている。外周壁部93は、モータ支持部91の径方向における外側の端部をインペラカップ3の方向へ凸部ができるように折り曲げて形成された壁部である。折り曲げて形成された外周壁部93には、送風方向Wにおける下流側(吐出口21b側)へ開口するU字状あるいはV字状の凹部96が形成される。凹部96は、外側部94と内側部95との間に形成されている。
【0024】
ベース部9とケーシング部21とを連結するスポーク部10は、ハウジング2の吐出口21b側に設けられている。スポーク部10は、ベース部9の周方向に略等間隔に複数本設けられている。ベース部9及びベース部9に取り付けられているモータ7は、複数のスポーク部10によってケーシング部21に支持されている。
【0025】
ハウジング2のケーシング部21における吸込口21a及び吐出口21bの周縁には、電子機器などにハウジング2を固定するためのフランジ部23,24が設けられている。フランジ部23,24は、それぞれ吸込口21a及び吐出口21bからハウジング2の径方向における外方へ向けて延設されている。フランジ部23,24には、ハウジング2を貫通するように固定孔25が形成されている。この固定孔25に例えばネジを挿入することより、軸流ファン1を電子機器などに取り付けることができる。
【0026】
次に、図3を参照して、軸流ファン1のハウジング2について詳しく説明する。図3は、ハウジング2の正面図である。図3に示すように、ベース部9の外周壁部93には、外側部94と内側部95によってベース部9の周方向へ沿うように凹部96が形成されている。凹部96は、外側部94と内側部95との間に形成される空洞の領域である。
【0027】
また、ベース部9の外周壁部93には、外側部94と内側部95とを接続する接続部97が設けられている。接続部97は、凹部96の一部分を樹脂で埋めて外側部94と内側部95との間を接続する領域である。接続部97は、隣り合う凹部96と凹部96の間に設けられている。接続部97の周方向における長さ(幅)や数量は、任意に設定することが可能である。例えば、発生する振動の周波数に応じて接続部97の長さや数量を設定してもよい。
【0028】
スポーク部10は、それぞれが外周壁部93における凹部96が形成されている領域の外側部94に接続されている。接続部97は、スポーク部10と外側部94が接続されている部位から周方向に離間した位置に設けられている。すなわち、接続部97が設けられている部位の外周壁部93の外側部94にはスポーク部10が接続されないように構成されている。
【0029】
外周壁部93におけるスポーク部10が接続されている部位の剛性は、他の部位の剛性よりも小さい。例えば、スポーク部10が接続されている部位の外周壁部93の剛性は、少なくとも接続部97が設けられている部位の外周壁部93の剛性よりも小さい。すなわち、凹部96が形成されている部位の外周壁部93の剛性は、少なくとも接続部97が設けられている部位の外周壁部93の剛性よりも小さい。外側部94と内側部95との間に形成される空洞の領域(凹部96)は、軸流ファン1の動作で発生する振動及びケーシング部21等で発生する振動を抑制することが可能な剛性が小さい振動抑制部である。
【0030】
外周壁部93における接続部97が設けられている部位の剛性は、他の部位の剛性よりも大きい。例えば、接続部97が設けられている部位の外周壁部93の剛性は、少なくともスポーク部10が接続されている部位の外周壁部93の剛性よりも大きい。すなわち、接続部97が設けられている部位の外周壁部93の剛性は、少なくとも凹部96が形成されている部位の外周壁部93の剛性よりも大きい。外側部94と内側部95との間を接続する領域(接続部97)は、軸流ファン1の動作で発生する振動及びケーシング部21等で発生する振動を迂回させて伝導することが可能な剛性が大きい振動バイパス部である。
【0031】
図4は、軸流ファン1の動作で発生した振動の伝導経路を説明する図である。図4に示すように、軸流ファン1の動作によりモータ7やインペラカップ3等で発生した振動は、例えば、矢印Bで示す経路に伝導される。具体的には、モータ7やインペラカップ3で発生した振動は、ベース部9の内周壁部92からモータ支持部91へ伝導された後、外周壁部93の内側部95と外側部94を介してスポーク部10に伝導される。すなわち、モータ7やインペラカップ3で発生した振動は、内側部95と外側部94の間に凹部96が形成されて剛性が小さい振動抑制部を介してスポーク部10に伝導される。
【0032】
図5は、軸流ファン1の動作で発生した振動及びケーシング部21等で発生した振動の伝導経路を説明する図である。図5に示すように、軸流ファン1の動作によりモータ7やインペラカップ3で発生した振動の一部は、例えば、矢印Cで示す経路に伝導される。具体的には、モータ7やインペラカップ3で発生した振動は、外周壁部93を超えてスポーク部10へ伝導される際に、図4で示した矢印Bの経路の他、図5で示す矢印Cの経路のように剛性が大きく伝導しやすい接続部97へ振動の一部が分散して伝導される。すなわち、モータ7やインペラカップ3で発生した振動は、一部の振動が剛性の大きい接続部97が設けられている経路を迂回してスポーク部10に伝導される。
【0033】
また、図5に示すように、ケーシング部21等で発生した外的な振動の一部は、例えば、矢印Dで示す経路に伝導される。具体的には、ケーシング部21等で発生した外的な振動は、スポーク部10を伝導し、外周壁部93を超えてモータ支持部91へ伝導される際に、剛性が大きく伝導しやすい接続部97へ振動の一部が分散して伝導される。すなわち、ケーシング部21等で発生した外的な振動は、一部の振動が剛性の大きい接続部97が設けられている経路を迂回してモータ支持部91に伝導される。
【0034】
図6は、振動の抑制効果を比較するための比較例の軸流ファン100を示す構成図である。図6に示すように、軸流ファン100は、上述した本発明の軸流ファン1と比較してベース部109の構成が相違する。なお、その他の、例えば翼105を有するインペラカップ103、モータ107等の構成については、本発明の軸流ファン1における翼5を有するインペラカップ3、モータ7等の構成と同様であるため説明を省略する。
【0035】
軸流ファン100のベース部109は、モータ支持部191を有し、モータ支持部191の内周部に内周壁部192が設けられ、外周部に外周壁部193が設けられている。モータ支持部191の内周壁部192は本発明の軸流ファン1における内周壁部92と同様の構成であるが、外周壁部193の構成が軸流ファン1の外周壁部93の構成と相違する。本発明の軸流ファン1における外周壁部93が凹部96を有するように折り曲げ形成された外側部94と内側部95とを有するのに対して、比較例の軸流ファン100における外周壁部193は、インペラカップ103の方向へ略垂直に延びる一枚の壁部で形成されている。軸流ファン100の外周壁部193は、凹部96が形成された剛性が小さい振動抑制部を備えていない。したがって、軸流ファン100の外周壁部193は、本発明の軸流ファン1における外側部94と内側部95とを接続する接続部97に相当するものも備えていない。
【0036】
図7は、本発明の軸流ファン1及び比較例の軸流ファン100における回転速度と振動加速度との関係を示すグラフである。図7において、実線は、本発明の軸流ファン1の振動加速度の大きさを示す。破線は、比較例の軸流ファン100の振動加速度の大きさを示す。
【0037】
図7に示すように、ベース部9の外周壁部93に凹部96が形成されて剛性が小さい振動抑制部と、接続部97で構成される剛性が大きい振動バイパス部を備えた本発明の軸流ファン1は、振動抑制部及び振動バイパス部を備えていない比較例の軸流ファン100と比較して、振動加速度を小さくすることができる。例えば、軸流ファンの回転速度が3000rpmのとき、比較例の軸流ファン100の振動加速度が0.19[m/s]であるのに対して、本発明の軸流ファン1では振動加速度を0.14[m/s]に抑制することができる。
【0038】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る軸流ファン1は、ベース部9の外周壁部93に外側部94と内側部95とを有し、外側部94と内側部95の間に凹部96が形成される部位であって、その剛性が他の部位より小さい振動抑制部を介してベース部9がスポーク部10と接続されている。モータ7で生じた振動は、ベース部9からスポーク部10を介してケーシング部21へ伝導される。上記軸流ファン1の構成によれば、スポーク部10との接続部位であるベース部9の外周壁部93に剛性の小さい振動抑制部が設けられているため、モータ7で生じた振動を振動抑制部によって吸収することができる。このため、モータ7で生じた振動をベース部9からスポーク部10へ伝導しにくくすることができ、軸流ファン1における振動の発生を抑制することができる。
【0039】
また、軸流ファン1は、外周壁部93の外側部94と内側部95の間に形成された凹部96の一部に外側部94と内側部95との間を接続する接続部97を設けることによって、接続部97が設けられていない部位よりも剛性が大きい振動バイパス部を形成し、その振動バイパス部の位置がスポーク部10の接続されている外周壁部93の位置から周方向に離間した位置となるように構成されている。この構成によれば、モータ7で生じた振動の一部が、例えば図5の矢印Cで示すように、剛性が大きく伝導しやすい振動バイパス部(接続部97)を経由して伝導される。これにより、振動の伝導経路を長くすることができるため、伝導する振動を減衰させることができる。また、ケーシング部21等で発生した外的な振動の場合も同様であり、振動の一部は、例えば図5の矢印Dで示すように、スポーク部10を伝導し、外周壁部93を超えてモータ支持部91へ伝導される際に、剛性が大きく伝導しやすい振動バイパス部(接続部97)を経由して伝導される。このため、振動の伝導経路を長くすることができ、振動を減衰させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0041】
上述した実施形態においては、凹部96が形成されている部位の外周壁部93の剛性が接続部97が設けられている部位の外周壁部93の剛性よりも小さい例を説明したが、これに限らない。例えば、凹部96が形成されている部位の外周壁部93の剛性がモータ支持部91の剛性よりも小さくなるようにしてもよい。また、接続部97が設けられている部位の外周壁部93の剛性が凹部96が形成されている部位の外周壁部93の剛性よりも大きい例を説明したが、これに限らない。例えば、接続部97が設けられている部位の外周壁部93の剛性がモータ支持部91の剛性よりも大きくなるようにしてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態においては、ベース部9の外周壁部93に外側部94と内側部95で形成される凹部96と、隣り合う凹部96間に形成される接続部97とが設けられている例を説明した、外周壁部93の構成はこれに限らない。例えば、外周壁部93は、凹部96のみが設けられ、接続部97が設けられない構成であってもよい。
【0043】
また、上述した実施形態においては、図5に示すように、振動バイパス部(接続部97)は直線形状であって径方向に沿って設けられている例を説明したが、振動バイパス部の形状や配置される向きはこれに限らない。例えば、振動バイパス部の形状は、曲線形状であってもよく、径方向から所定の角度だけ傾けるように配置されてもよい。
【0044】
例えば、振動バイパス部を、径方向から所定の角度だけ任意のスポーク10側へ傾けて配置することで、伝導方向を調整することができる。そのため、特定のスポーク10に集中して振動が加わらないようにして、特定の振動周波数の増加を抑制することができる。
また、例えば、振動バイパス部の形状を曲線形状とすることで、振動バイパス部内の振動の伝導距離を長くして、さらに振動を減衰することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 軸流ファン
2 ハウジング
3 インペラカップ
5 翼
7 モータ
9 ベース部
10 スポーク部
21 ケーシング部
21a 吸込口
21b 吐出口
22 通風路
30 カップ
91 モータ支持部
92 内周壁部
93 外周壁部
94 外側部
95 内側部
96 凹部
97 接続部
W 送風方向
Y 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7