(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025362
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電池セル
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20240216BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/169 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/531
H01M50/548 101
H01M50/169
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128736
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】大岡 愛佳
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011CC01
5H011CC06
5H011DD06
5H011DD13
5H011EE02
5H011FF03
5H043AA04
5H043BA19
5H043CA08
5H043CA13
5H043DA09
5H043EA06
(57)【要約】
【課題】外装フィルムの端部の露出を抑制する。
【解決手段】電池セル10は、電池要素100と、電池要素100に電気的に接続された正極タブ110と、電池要素100の端部を覆い、正極タブ110が引き出される前方蓋材210と、少なくとも一部分が電池要素100の周りに巻き付けられた外装フィルム300と、を備えている。前方蓋材210の少なくとも一部分は、外装フィルム300の端部の少なくとも一部分を覆っている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池要素と、
前記電池要素に電気的に接続されたタブと、
前記電池要素の端部を覆い、前記タブが引き出される蓋材と、
少なくとも一部分が前記電池要素の周りに巻き付けられた外装フィルムと、
を備え、
前記蓋材の少なくとも一部分が前記外装フィルムの端部の少なくとも一部分を覆っている、電池セル。
【請求項2】
前記蓋材の少なくとも一部分が前記外装フィルムの外周面の少なくとも一部分を覆っている、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記電池要素の前記端部の反対側の他の端部を覆う他の蓋材をさらに備える、請求項1又は2に記載の電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池セル等の電池セルの様々な構造が開発されている。例えば、特許文献1及び2に記載されている電池セルは、電池要素、2つの蓋材及び外装フィルムを備えている。2つの蓋材は、電池要素の長手方向の両端部を覆っている。外装フィルムは、電池要素の長手方向の周りに巻き付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に記載されている電池セルにおいて、外装フィルムを蓋材に巻き付けると、外装フィルムの端部が露出する。外装フィルムの端部が露出している場合、外装フィルムに含まれる導電性シート等の導体を介しての外装フィルムの短絡を抑制することが難しくなることがある。
【0005】
本発明の目的の一例は、外装フィルムの端部の露出を抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、以下のとおりである。
[1]
電池要素と、
前記電池要素に電気的に接続されたタブと、
前記電池要素の端部を覆い、前記タブが引き出される蓋材と、
少なくとも一部分が前記電池要素の周りに巻き付けられた外装フィルムと、
を備え、
前記蓋材の少なくとも一部分が前記外装フィルムの端部の少なくとも一部分を覆っている、電池セル。
[2]
前記蓋材の少なくとも一部分が前記外装フィルムの外周面の少なくとも一部分を覆っている、[1]に記載の電池セル。
[3]
前記電池要素の前記端部の反対側の他の端部を覆う他の蓋材をさらに備える、[1]又は[2]に記載の電池セル。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、外装フィルムの端部の露出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電池セルの前方斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電池セルの一部分の前方拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る電池セル10の前方斜視図である。
図2は、実施形態に係る電池セル10の一部分の前方拡大斜視図である。
図3は、実施形態に係る電池セル10の右側面図である。
図4は、
図2のA-A断面模式図である。
図3では、説明のため、外装フィルム300を透過させた状態で図示している。
【0011】
各図には、説明のため、X方向、Y方向及びZ方向が付されている。X方向は、電池セル10の前後方向を示している。Y方向は、X方向に直交している。Y方向は、電池セル10の左右方向を示している。Z方向は、X方向及びY方向の双方に直交している。Z方向は、電池セル10の上下方向を示している。X方向を示す矢印によって指し示される方向、Y方向を示す矢印によって指し示される方向及びZ方向を示す矢印によって指し示される方向は、それぞれ、後方向、左方向及び上方向である。ただし、電池セル10のX方向、Y方向、Z方向、前後方向、左右方向及び上下方向の関係は、この例に限定されない。
【0012】
なお、X方向、Y方向又はZ方向を示すX付き白丸は、紙面の手前から奥に向かう方向が当該方向を示す矢印によって指し示される方向であることを示している。
【0013】
電池セル10は、電池要素100、正極タブ110、負極タブ120、前方蓋材210、後方蓋材220及び外装フィルム300を備えている。外装フィルム300は、巻付部分302及び引出部分304を有している。
【0014】
電池要素100は、略直方体形状となっている。電池要素100の長手方向は、X方向に略平行となっている。電池要素100のX方向の長さは、以下に限定されないが、例えば、300mm以上500mm以下、好ましくは450mm以下である。電池要素100の短手方向は、Z方向に略平行となっている。電池要素100のZ方向の長さは、以下に限定されないが、例えば、90mm以上130mm以下、好ましくは120mm以下である。電池要素100の厚み方向は、Y方向に略平行となっている。電池要素100のY方向の厚さは、以下に限定されないが、例えば、20mm以上50mm以下、好ましくは45mm以下である。ただし、電池要素100の形状は、この例に限定されない。
【0015】
電池要素100は、不図示の少なくとも1つの正極、不図示の少なくとも1つの負極及び不図示の少なくとも1つのセパレータを有している。例えば、複数の正極及び複数の負極がY方向に交互に積層されている。セパレータの少なくとも一部分は、Y方向に隣り合う正極及び負極の間に位置している。例えば、複数枚のシート状のセパレータの各々がY方向に隣り合う正極及び負極の間に位置していてもよい。或いは、1枚のシート状のセパレータがY方向に隣り合う正極及び負極の間の領域を通過するつづら折り形状になっていてもよい。或いは、正極、負極及びセパレータは、セパレータが正極及び負極の間に配置されるように巻回されていてもよい。一例において、正極及び負極の一方の両面がセパレータによって覆われた状態で正極、負極及びセパレータは巻回されている。他の例において、正極、セパレータ及び負極をこの順に含む単位積層体を複数含む積層体が巻回されていてもよい。ただし、正極、負極及びセパレータの巻回構造は、これらの例に限定されない。
【0016】
正極タブ110は、電池要素100の前方に配置されている。正極タブ110の後端部は、正極集電体102aに電気的に接続されている。正極集電体102aは、電池要素100の正極から前方に向けて引き出されている。これによって、正極タブ110は、電池要素100の正極に電気的に接続されている。
【0017】
負極タブ120は、電池要素100の後方に配置されている。負極タブ120の前端部は、負極集電体104aに電気的に接続されている。負極集電体104aは、電池要素100の負極から後方に向けて引き出されている。これによって、負極タブ120は、電池要素100の負極に電気的に接続されている。
【0018】
前方蓋材210は、電池要素100の前端部を覆っている。前方蓋材210は、例えば、樹脂、金属等からなっている。前方蓋材210の前面からは、正極タブ110の前端部が引き出されている。前方から見て、前方蓋材210は、略長方形形状となっている。前方から見て、前方蓋材210の長手方向はZ方向に略平行となっており、前方蓋材210の短手方向はY方向に略平行となっている。
【0019】
後方蓋材220は、電池要素100の後端部を覆っている。後方蓋材220は、例えば、樹脂、金属等からなっている。後方蓋材220の後面からは、負極タブ120の後端部が引き出されている。後方から見て、後方蓋材220は、略長方形形状となっている。後方から見て、後方蓋材220の長手方向はZ方向に略平行となっており、後方蓋材220の短手方向はY方向に略平行となっている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、巻付部分302は、前方及び後方の双方に向けて開口した略筒形状となっている。巻付部分302の前方の開口の内部には、後述する前方凸部212を除いて前方蓋材210が配置されている。巻付部分302の後方の開口の内部には、後述する後方凸部222を除いて後方蓋材220が配置されている。巻付部分302は、電池要素100、前方蓋材210及び後方蓋材220のX方向の周りに1周巻き付けられている。これによって、前方蓋材210、後方蓋材220及び巻付部分302は、電池要素100を収容する収容空間500を形成している。収容空間500には、電池要素100とともに、不図示の電解液が収容されている。なお、巻付部分302の電池要素100の巻き付きの態様は、上述した例に限定されない。
【0021】
前方蓋材210のX方向の周りの外周面と、巻付部分302の前方の開口のX方向の周りの内周面と、は例えば熱融着によって互いに接合されている。これによって、前方封止部510が形成されている。
【0022】
後方蓋材220のX方向の周りの外周面と、巻付部分302の後方の開口のX方向の周りの内周面と、は例えば熱融着によって互いに接合されている。これによって、後方封止部520が形成されている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、前方から見て、引出部分304は、巻付部分302の電池要素100の左上側の角から引き出されている。具体的には、
図2に示すように、引出部分304は、第1引出部分304a及び第2引出部分304bを含んでいる。第1引出部分304aは、巻付部分302のX方向の周りの周方向の両端の一方から引き出されている。第2引出部分304bは、巻付部分302のX方向の周りの周方向の両端の他方から引き出されている。第1引出部分304a及び第2引出部分304bは、例えば熱融着によって互いに接合されている。これによって、前方から見て、側方封止部530が形成されている。引出部分304は、電池要素100の上面に沿って折り曲げられている。ただし、引出部分304は、折り曲げられていなくてもよい。また、引出部分304の折り曲げの形状は、実施形態に係る形状に限定されない。
【0024】
図1、
図2及び
図4に示すように、前方蓋材210の外周面には、前方凸部212が設けられている。前方凸部212は、前方蓋材210の外周面の全周に設けられている。ただし、前方凸部212は、前方蓋材210の外周面の全周の一部分のみに設けられていてもよい。前方凸部212は、外装フィルム300の前端部の前方に位置している。これによって、前方凸部212は、外装フィルム300の前端部を覆っている。このため、外装フィルム300の前端部の露出を前方凸部212によって抑制することができる。したがって、外装フィルム300に含まれる導電性シート等の導体が外装フィルム300の前端部から露出していても、当該導体を介しての外装フィルム300の短絡を抑制することができる。
【0025】
図1に示すように、後方蓋材220の外周面には、前方蓋材210の外周面と同様にして、後方凸部222が設けられている。後方凸部222は、前方凸部212と同様にして、外装フィルム300の後端部を覆っている。このため、外装フィルム300の後端部の露出を後方凸部222によって抑制することができる。したがって、外装フィルム300に含まれる導電性シート等の導体が外装フィルム300の後端部から露出していても、当該導体を介しての外装フィルム300の短絡を抑制することができる。
【0026】
実施形態では、前方凸部212及び後方凸部222の双方が設けられている。しかしながら、前方凸部212及び後方凸部222の一方のみが設けられていてもよい。
【0027】
次に、実施形態に係る電池セル10の製造方法の一例について説明する。この例において、実施形態に係る電池セル10は、以下のようにして製造されている。
【0028】
まず、電池要素100を製造する。電池要素100は、少なくとも1つの正極、少なくとも1つの負極及び少なくとも1つのセパレータを有している。
【0029】
次いで、正極タブ110と、前方蓋材210と、を互いに接合させる。同様にして、負極タブ120と、後方蓋材220と、を互いに接合させる。次いで、正極タブ110と、正極集電体102aと、を互いに接合させる。同様にして、負極タブ120と、負極集電体104aと、を互いに接合させる。ただし、正極タブ110と正極集電体102aとを互いに接合させた後、正極タブ110と前方蓋材210とを互いに接合させてもよい。同様にして、負極タブ120と負極集電体104aとを互いに接合させた後、負極タブ120と後方蓋材220とを互いに接合させてもよい。
【0030】
次いで、外装フィルム300を電池要素100、前方蓋材210及び後方蓋材220のX方向の周りに1周巻き付ける。これによって、巻付部分302が形成される。また、外装フィルム300の余長を引出部分304として引き出す。この状態において、外装フィルム300の前端部の前方に前方凸部212が位置している。これによって、外装フィルム300の前端部が前方凸部212によって覆われている。また、外装フィルム300の後端部の後方に後方凸部222が位置している。これによって、外装フィルム300の後端部が後方凸部222によって覆われている。
【0031】
次いで、前方蓋材210のX方向の周りの外周面と、巻付部分302の前方の開口のX方向の周りの内周面と、を熱融着によって互いに接合する。これによって、前方封止部510が形成される。次いで、後方蓋材220のX方向の周りの外周面と、巻付部分302の後方の開口のX方向の周りの内周面と、を熱融着によって互いに接合する。これによって、後方封止部520が形成される。
【0032】
次いで、第1引出部分304a及び第2引出部分304bの間の隙間を介して収容空間500に電解液を注入する。次いで、第1引出部分304a及び第2引出部分304bの間の隙間を介して収容空間500を真空引きする。次いで、第1引出部分304a及び第2引出部分304bを熱融着によって接合して側方封止部530を形成する。これによって、収容空間500が真空封止される。
【0033】
なお、収容空間500の真空封止の方法は、上述した例に限定されない。他の例においては、まず、第1引出部分304a及び第2引出部分304bを熱融着によって接合して側方封止部530を形成する。次いで、前方蓋材210及び後方蓋材220の少なくとも一方に設けられた注液孔を介して収容空間500に電解液を注入する。次いで、当該注液孔を介して収容空間500を真空引きする。次いで、当該注液孔を所定の蓋材によって塞ぐ。
【0034】
次いで、側方封止部530を電池要素100の上面に沿って折り曲げる。
【0035】
このようにして、電池セル10が製造される。
【0036】
【0037】
変形例に係る電池セル10Aの前方蓋材210Aは、前方被覆部212Aを有している。前方被覆部212Aは、外装フィルム300の前端部と、外装フィルム300の外周面の前端部の近傍部と、を覆っている。特に、収容空間500の上方かつ外装フィルム300の前端部の近傍において、前方被覆部212Aは、側方封止部530の上面を覆っている。前方被覆部212Aが外装フィルム300の前端部の少なくとも一部分を覆う場合、外装フィルム300に含まれる導電性シート等の導体が外装フィルム300の前端部から露出していても、当該導体を介しての外装フィルム300の短絡を抑制することができる。前方被覆部212Aが外装フィルム300の外周面の少なくとも一部分を覆う場合、外装フィルム300の前端部の位置を前方被覆部212Aによって固定することができる。
【0038】
一例において、前方被覆部212Aは、実施形態に係る前方凸部212を変形させることで形成することができる。例えば、実施形態に係る電池セル10の製造方法のすべての工程を終了した後、前方凸部212に熱を加えながら前方凸部212を押しつぶすことで、前方凸部212を構成する材料を後方に向けて流動させる。これによって、前方凸部212を構成する材料は、外装フィルム300の前端部だけでなく、外装フィルム300の外周面も覆うようになる。特に、前方凸部212を変形させる前に、側方封止部530が電池要素100に沿って折り曲げられている場合、側方封止部530の外面を前方被覆部212Aによって覆うことができる。
【0039】
図5に示す例では、前方蓋材210Aの構造について説明した。
図5における前方蓋材210Aの構造は、後方蓋材にも同様に適用可能である。
【0040】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0041】
例えば、実施形態では、正極タブ110及び負極タブ120が電池要素100のX方向の互いに反対側に配置されている。しかしながら、正極タブ110及び負極タブ120の双方が電池要素100のX方向の前側及び後側の一方のみに配置されていてもよい。この場合、電池要素100の前端部及び後端部は、例えば、2つの蓋材によって覆われている。或いは、電池要素100の正極タブ110及び負極タブ120が引き出された側のみが蓋材によって覆われていてもよい。この例において、電池要素100の蓋材の反対側において、外装フィルム300が封止されて電池要素100に沿って折りたたまれていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10,10A 電池セル
100 電池要素
102a 正極集電体
104a 負極集電体
110 正極タブ
120 負極タブ
210,210A 前方蓋材
212 前方凸部
212A 前方被覆部
220 後方蓋材
222 後方凸部
300 外装フィルム
302 巻付部分
304 引出部分
304a 第1引出部分
304b 第2引出部分
500 収容空間
510 前方封止部
520 後方封止部
530 側方封止部