(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025364
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】後退自走装置および杭圧入機の後退自走方法
(51)【国際特許分類】
E02D 11/00 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
E02D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128739
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岩下 浩也
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA12
2D050CB22
2D050EE04
2D050EE13
(57)【要約】
【課題】圧入対象の矢板の種類に関わらず、ケーシングと既設の矢板の共掴みが可能な後退自走装置および杭圧入機の後退自走方法を提供する。
【解決手段】オーガ装置を用いて矢板Pを圧入する杭圧入機に使用される後退自走装置40において、オーガ装置の筒状のケーシング12を挿通可能な開口部42が形成された本体部41と、本体部41の上側に設けられ、開口部42に挿通されるケーシング12を把持するために、該ケーシング12に対して接近または離隔する方向に移動する可動壁部51と、本体部41の下側に設けられ、矢板Pおよび開口部42に挿通されるケーシング12を共に把持する把持部70と、を設ける。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガ装置を用いて矢板を圧入する杭圧入機に使用される後退自走装置であって、
前記オーガ装置の筒状のケーシングを挿通可能な開口部が形成された本体部と、
前記本体部の上側に設けられ、前記開口部に挿通されるケーシングを把持するために、該ケーシングに対して接近または離隔する方向に移動する可動壁部と、
前記本体部の下側に設けられ、前記矢板および前記開口部に挿通されるケーシングを共に把持する把持部と、を備えることを特徴とする、後退自走装置。
【請求項2】
前記可動壁部は、前記本体部を起点としてスライド移動可能な機構を有することを特徴とする、請求項1に記載の後退自走装置。
【請求項3】
前記本体部の上側には、
前記可動壁部である第1壁部と、
前記第1壁部から前記開口部に挿通されるケーシングの側方に向かって延びた互いに対向する一対の第2壁部と、が設けられ
前記本体部と前記第2壁部とが連結されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の後退自走装置。
【請求項4】
前記本体部と前記第2壁部とに挿通されて前記本体部と前記第2壁部とを連結する連結部材を有し、
前記第2壁部は、前記連結部材が挿通可能であって、かつ、前記第1壁部の可動方向に延びた長孔を有することを特徴とする、請求項3に記載の後退自走装置。
【請求項5】
前記杭圧入機のチャック装置に形成された挿通口に挿通されることで該チャック装置と前記第2壁部とを連結する柱状部材が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の後退自走装置。
【請求項6】
オーガ装置を用いて矢板を圧入する杭圧入機の後退自走方法であって、
前記杭圧入機のチャック装置によって前記オーガ装置の筒状のケーシングを下降させ、後退自走装置の本体部に形成された開口部に前記ケーシングを挿通する工程と、
前記本体部の上側に設けられた可動壁部を前記ケーシングに向かって移動させ、前記可動壁部と前記ケーシングを接触させた状態で、前記ケーシングを前記可動壁部ごと前記チャック装置で把持する工程と、
前記本体部の下側において、前記杭圧入機のクランプで把持している第1矢板の前方に位置した第2矢板および前記ケーシングを共に把持する工程と、
前記後退自走装置で前記第2矢板および前記ケーシングを共に把持した状態で、前記クランプによる前記第1矢板の把持状態を解除し、前記杭圧入機のサドルの上昇、後退および下降を順に行い、前記クランプで前記第1矢板の後方に位置する第3矢板を把持する工程と、
前記クランプで前記第3矢板を把持した状態で、前記後退自走装置による前記第2矢板および前記ケーシングの把持状態を解除し、前記チャック装置のケーシングチャック部を上昇させることで前記ケーシングを引き上げた後に、前記チャック装置のチャック部を上昇させることで前記後退自走装置を上昇させる工程と、
前記杭圧入機のリーダーマストを後退させる工程と、を有することを特徴とする、杭圧入機の後退自走方法。
【請求項7】
前記ケーシングを前記可動壁部ごと前記チャック装置で把持する工程において、前記可動壁部を前記ケーシングに向かって移動させる際に、前記チャック部が備える可動爪で前記可動壁部を押圧することにより前記可動壁部を移動させることを特徴とする、請求項6に記載の杭圧入機の後退自走方法。
【請求項8】
前記本体部の上側には、
前記可動壁部である第1壁部と、
前記第1壁部から前記開口部に挿通されるケーシングの側方に向かって延びた互いに対向する一対の第2壁部と、が設けられ
前記本体部と前記第2壁部とが連結されていることを特徴とする、請求項6または7に記載の杭圧入機の後退自走方法。
【請求項9】
前記後退自走装置は、前記本体部と前記第2壁部とに挿通されて前記本体部と前記第2壁部とを連結する連結部材を有し、
前記第2壁部は、前記連結部材が挿通可能であって、かつ、前記第1壁部の可動方向に延びた長孔を有することを特徴とする、請求項8に記載の杭圧入機の後退自走方法。
【請求項10】
前記チャック装置で前記後退自走装置を把持する工程において、前記チャック装置と前記第2壁部とを連結するための柱状部材を、前記チャック装置に形成された前記柱状部材用の挿通口に挿通することを特徴とする、請求項8に記載の杭圧入機の後退自走方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入機に取り付けられる後退自走装置および杭圧入機の後退自走方法に関する。
【背景技術】
【0002】
玉石を含む砂礫層や岩盤等の硬質地盤にハット形鋼矢板やU形鋼矢板などの矢板を圧入する際には、オーガ装置を備えた杭圧入機を使用することがある。オーガ装置とは、特許文献1に記載されているように、地盤を掘削するオーガスクリューと、そのオーガスクリューを囲う筒状のケーシングとを有する装置である。
【0003】
上記のオーガ装置を用いて矢板の圧入を行う際には、オーガスクリューの下端部にあるオーガヘッドによって地盤を掘削しながら、ケーシング及びオーガスクリューを下降させ、これと共に矢板も圧入する。
【0004】
そして、地盤に計画数の矢板を圧入した後は、既設の矢板上に位置した杭圧入機の後退自走を行う場合がある。そのような杭圧入機の後退自走を行うためには、矢板やケーシングを把持するチャック装置の下端部に後退自走装置が取り付けられる。この後退自走装置は、杭圧入機に後退自走機能を付与するためのアタッチメントである。杭圧入機の後退自走に関する技術としては、特許文献2に、杭圧入・引抜き機の自走用補助装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-044445号公報
【特許文献2】実開昭58-090236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように後退自走装置は、チャック装置に取り付けられるものであり、例えばハット形鋼矢板用のチャック装置の下端部には、
図1(a)に示すような後退自走装置150が取り付けられる。なお、
図1(a)は、既設のハット形鋼矢板を把持した状態の従来の後退自走装置の一例を示した斜視図であり、
図1(b)は、その後退自走装置とチャック装置によって、ケーシングと既設のハット形鋼矢板の両方が把持された状態を模式的に示した平面図である。
【0007】
図1(b)の二点鎖線で示すように、ハット形鋼矢板用の後退自走装置を用いた場合には、後退自走装置でハット形鋼矢板のフランジを掴む部分G
1と、チャック装置でケーシングを掴む部分G
2とがあり、ケーシングと既設のハット形鋼矢板の両方を掴むことが可能である。これによって、杭圧入機を後退自走させる際には、チャック装置からケーシングを取り外さずに後退自走を行うことができる。
【0008】
一方、圧入対象の矢板が例えばU形鋼矢板である場合、U形鋼矢板には、ハット形鋼矢板のようなフランジ部が存在しない。このため、矢板の掴み方がハット形鋼矢板とは異なるため、ハット型鋼矢板用の後退自走装置をそのままU型鋼矢板に適用することはできない。
【0009】
したがって、U形鋼矢板用の杭圧入機を後退自走させるために、従来は、
図2に示すような後退自走装置160をチャック装置の下端部に取り付けて、杭圧入機の後退自走が行われていた。
【0010】
しかしながら、
図2に示す後退自走装置160をチャック装置に取り付けるためには、U形鋼矢板の圧入施工時に使用していたオーガ装置を杭圧入機から取り外す必要がある。このため、U形鋼矢板の圧入施工の完了後から杭圧入機の後退自走の開始までにオーガ装置の取り外しのための作業時間を要していた。
【0011】
加えて、杭圧入機からオーガ装置を取り外す作業には、重量の大きなオーガ装置を吊り上げるための大型クレーンの使用や、取り外したオーガ装置の保管スペースの確保等が必要となる。このため、施工現場の周辺環境によっては、杭圧入機の後退自走が困難となる場合もあった。
【0012】
以上のように、従来の後退自走装置では、圧入対象の矢板の種類によっては、ケーシングと既設の矢板の両方を掴むことができないために、後退自走開始前にオーガ装置の取り外し作業を行うことが必要となり、圧入施工の完了後から杭圧入機の後退自走の開始までにオーガ装置の取り外しのための作業時間を要する場合や、オーガ装置の取り外し作業を行うスペースが足りず、後退自走そのものが困難となる場合があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、圧入対象の矢板の種類に関わらず、ケーシングと既設の矢板の両方を挟み込んで掴むこと(以下、「共掴み」と記載する)が可能な後退自走装置および杭圧入機の後退自走方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明は、オーガ装置を用いて矢板を圧入する杭圧入機に使用される後退自走装置であって、前記オーガ装置の筒状のケーシングを挿通可能な開口部が形成された本体部と、前記本体部の上側に設けられ、前記開口部に挿通されるケーシングを把持するために、該ケーシングに対して接近または離隔する方向に移動する可動壁部と、前記本体部の下側に設けられ、前記矢板および前記開口部に挿通されるケーシングを共に把持する把持部と、を備えることを特徴としている。
【0015】
別の観点による本発明は、オーガ装置を用いて矢板を圧入する杭圧入機の後退自走方法であって、前記杭圧入機のチャック装置によって前記オーガ装置の筒状のケーシングを下降させ、後退自走装置の本体部に形成された開口部に前記ケーシングを挿通する工程と、前記本体部の上側に設けられた可動壁部を前記ケーシングに向かって移動させ、前記可動壁部と前記ケーシングを接触させた状態で、前記ケーシングを前記可動壁部ごと前記チャック装置で把持する工程と、前記本体部の下側において、前記杭圧入機のクランプで把持している第1矢板の前方に位置した第2矢板および前記ケーシングを共に把持する工程と、前記後退自走装置で前記第2矢板および前記ケーシングを共に把持した状態で、前記クランプによる前記第1矢板の把持状態を解除し、前記杭圧入機のサドルの上昇、後退および下降を順に行い、前記クランプで前記第1矢板の後方に位置する第3矢板を把持する工程と、前記クランプで前記第3矢板を把持した状態で、前記後退自走装置による前記第2矢板および前記ケーシングの把持状態を解除し、前記チャック装置のケーシングチャック部を上昇させることで前記ケーシングを引き上げた後に、前記チャック装置のチャック部を上昇させることで前記後退自走装置を上昇させる工程と、前記杭圧入機のリーダーマストを後退させる工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧入対象の矢板の種類に関わらず、後退自走装置によってケーシングと既設の矢板の共掴みが可能となる。例えば圧入対象の矢板がU形鋼矢板であっても、
図3の二点鎖線部で示されるように、U形鋼矢板とケーシングの共掴みが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ハット形鋼矢板用の従来の後退自走装置の斜視図、およびハット型鋼矢板とケーシングをチャック装置で把持した状態を模式的に示す平面図である。
【
図2】U形鋼矢板用の従来の後退自走装置の一例を示す図である。
【
図3】本発明に係る後退自走装置の一例を示す図であり、U形鋼矢板とケーシングを後退自走装置で共掴みした状態を模式的に示す平面図である。
【
図4】オーガ装置を備える杭圧入機の概略構成を示す右側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る後退自走装置をチャック装置に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】後退自走装置をチャック装置に取り付けた状態をチャック装置の前方から見た図である。
【
図7】後退自走装置をチャック装置に取り付けた状態をチャック装置の前方から見た縦断面図(
図5のA-A断面に相当する図)である。
【
図8】
図5からチャック装置を除いた斜視図である。
【
図9】後退自走装置の平面図、右側面図、正面図、下面図である。
【
図10】後退自走装置の可動壁部がケーシングに接触した状態を上方から見た図である。
【
図11】本体部とブラケットの連結構造の一例を示す右側面図および正面図である。
【
図12】ブラケットの可動機構の一例を示す右側面図および正面図(一部は断面図)である。
【
図13】ブラケットの可動機構の一例を示す正面図(一部は断面図)である。
【
図14】チャック部と後退自走装置の第2壁部との連結部を拡大した斜視図である。
【
図15】従来の矢板の搬送システムの概略構成を説明するための右側面図である。
【
図16】後退自走装置の搬送方法の一例を示す左側面図である。
【
図17】後退自走装置の搬送姿勢を保持する治具について説明するための右側面図および上面図である。
【
図18】後退自走装置の搬送方法の一例を示す左側面図である。
【
図19】杭圧入機の後退自走方法の一例を説明するための右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図4は、杭圧入機1の概略構成を示す右側面図である。なお、本明細書および図面で使用する「前」、「後」、「左」、「右」は、圧入施工時における杭圧入機1の進行方向を基準にして定められており、圧入施工時に杭圧入機1が進行していく方向が前方である。このため、
図4においては、紙面右側が前方であり、紙面左側が後方である。また、杭圧入機1の左右方向は、上方から見た杭圧入機1の進行方向を基準として定められており、
図4の紙面手前側が右側方であり、紙面奥側が左側方である。
【0020】
図4に示すように、杭圧入機1は、地盤を掘削するオーガ装置10と、そのオーガ装置10が取り付けられた杭圧入機本体20を備えている。なお、杭圧入機1で圧入する杭は、オーガ装置10を併用して圧入することが可能な矢板であり、例えばハット形鋼矢板やU形鋼矢板、Z形鋼矢板等の矢板が圧入対象の杭となる。本実施形態の説明で参照する図面では、U形鋼矢板を例示している。
【0021】
オーガ装置10は、地盤を掘削するオーガスクリュー11と、そのオーガスクリュー11の側方を囲う筒状(例えば略円筒状)のケーシング12と、オーガスクリュー11を回転させるオーガ駆動部13を備えている。
【0022】
オーガ駆動部13は、ケーシング12の上端部に取り付けられており、オーガ駆動部13の筐体13a内には、オーガスクリュー11の駆動源となる油圧モータ14と、油圧モータ14の下方に配置された減速機15が設けられている。油圧モータ14には、モータ用油圧ホース16が接続されている。
【0023】
ケーシング12の下端から下方に突出したオーガスクリュー11の下端部には、交換可能なオーガヘッド17が取り付けられており、オーガヘッド17には、玉石を含む砂礫層や岩盤等の硬質地盤を破砕する掘削ビット(図示せず)が設けられている。また、ケーシング12には、掘削された土砂や石等を排出する長孔状の排出孔18が形成されており、排出孔18は、ケーシング12の長手方向に沿って間隔をおいて複数設けられている。
【0024】
杭圧入機本体20は、既設の矢板Pを掴む複数のクランプ21が装着されたサドル22と、スライド機構23によりサドル22に対し前後動可能に構成されたリーダーマスト24を有する。
【0025】
リーダーマスト24には、各部の油圧動作を行うための全体油圧ホース25が接続されている。また、リーダーマスト24には、モータ用油圧ホース16の巻き取りと払い出しを行うホースリール26が設けられており、ホースリール26には、モータ用油圧ホース16が接するホース案内ローラ27が取り付けられている。このホースリール26は、掘削作業に伴うオーガ装置10の昇降移動に併せて適宜回転し、掘削作業中のモータ用油圧ホース16に張力を付与する。
【0026】
リーダーマスト24の前部には、リーダーマスト24に対して昇降可能に構成されたチャック装置30が設けられている。このチャック装置30は、オーガ装置10のケーシング12を把持するケーシングチャック部31と、ケーシングチャック部31の下方に設けられたチャック部32を有する。このチャック部32の構成について後述するが、チャック部32は、ケーシング12及び矢板Pを把持する構成を有している。
【0027】
以上、杭圧入機1の概略構成について説明した。オーガ装置10を用いた矢板Pの圧入施工は、このような杭圧入機1によって行われる。なお、具体的な圧入方法は公知の方法を適用できる。
【0028】
そして、例えば計画数の矢板Pの圧入施工が完了した後は、杭圧入機1を後退自走させるために、チャック装置30に後退自走装置が取り付けられる。以下、本実施形態に係る後退自走装置について説明する。
【0029】
まず、チャック装置30に対する後退自走装置の取り付け構造について説明する。
図5は、後退自走装置40をチャック装置30に取り付けた状態を示す斜視図である。
図6は、後退自走装置40をチャック装置30に取り付けた状態をチャック装置30の前方から見た図である。
図7は、後退自走装置40をチャック装置30に取り付けた状態をチャック装置30の前方から見た縦断面図(
図5のA-A断面に相当する図)である。
【0030】
チャック装置30は、前述のようにケーシングチャック部31とチャック部32と、を有しており、
図6及び
図7に示すように、チャック部32は、固定爪32aと、可動爪32bとを有する。この可動爪32bは、例えば油圧シリンダからなり、左右方向に伸縮自在に構成されている。換言すると、可動爪32bは、固定爪32aに対して接近または離隔する方向に移動自在に構成されている。
【0031】
矢板Pの圧入施工の際には、上記の固定爪32aと可動爪32bとの間にケーシング12及び矢板Pが挟まれて、ケーシング12及び矢板Pが把持されるが、チャック装置30に後退自走装置40を取り付ける際には、固定爪32aと可動爪32bとの間に、ケーシング12と後退自走装置40の上部が挟まれて把持される。このため、後退自走装置40は、チャック部32に把持されることによって、チャック装置30に取り付けられた状態となる。
【0032】
なお、
図7に示すケーシングチャック部31においても、チャック部32と同様に、固定爪31aと、可動爪31bとを有しており、チャック部32の上方においてケーシング12を把持することが可能である。このケーシングチャック部31の可動爪31bは、チャック部32の可動爪32bと独立して動作するため、チャック部32におけるケーシング12の把持状態が解除されていても、ケーシングチャック部31によってケーシング12の把持状態を維持することができる。加えて、ケーシングチャック部31は、チャック部32に対して昇降可能に構成されているため、チャック部32の高さを変更せずに、ケーシングチャック部31によってケーシング12を上昇または下降させることができる。
【0033】
次に、後退自走装置40の詳細構造について、上述した
図5~
図7に加え、さらに他の図面も参照しながら説明を行う。
【0034】
図8は、後退自走装置40の概略構成を示す斜視図であり、
図5からチャック装置30を除いた図である。
図9は、後退自走装置40の平面図(上方から見た図)、右側面図(右側方から見た図)、正面図(前方から見た図)、下面図(下方から見た図)である。
【0035】
まず、後退自走装置40は、ケーシング12が挿通される本体部41を有する。本体部41には、当該本体部41の上方から下方まで貫通する開口部42が形成されている。上方から見た開口部42の大きさは、ケーシング12の外形よりも大きく、この開口部42の内方にケーシング12が挿通される。
【0036】
本体部41の上側には、上方から見た形状がU字状のブラケット50が設けられている。このブラケット50は、第1壁部51と、互いに対向する一対の第2壁部52、53を有しており、一対の第2壁部52、53は、第1壁部51から開口部42に挿通されるケーシング12の側方に向かって延びている。
【0037】
また、
図7に示すように、第1壁部51は、チャック装置30に後退自走装置40を取り付けた際に、開口部42とチャック部32の可動爪32bとの間に位置する壁部である。このため、
図8及び
図9(a)に示すように、一対の第2壁部52、53は、開口部42に挿通されるケーシング12の前方及び後方に位置する壁部である。これらの第1壁部51及び一対の第2壁部52、53によって、本体部41に形成された開口部42の周囲三方が囲まれる。
【0038】
図10に示すように、第1壁部51は、後退自走装置40をチャック部32(
図6)で把持する際に、チャック部32の可動爪32bが接触することによって移動可能な可動壁部である。詳述すると、可動爪32bが伸長した際には、第1壁部51が可動爪32bに押されて開口部42に接近し、開口部42に挿通されたケーシング12に接触する。これによって、第1壁部51と固定爪32aとの間にケーシング12を挟んで把持することができる。
【0039】
一方、開口部42にケーシング12を挿通させる段階では、第1壁部51が可動壁部であることによって、第1壁部51を開口部42から離れた位置(初期位置)に移動させておくことができる。これにより、開口部42にケーシング12を挿通させる際に、第1壁部51とケーシング12との干渉を避けることができるため、開口部42へのケーシング12の挿通作業を容易に行うことが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態においては、開口部42に挿通されるケーシング12を第1壁部51と、チャック部32の固定爪32a(
図6)との間に挟んで把持する構成としているが、開口部42に挿通されるケーシング12を把持できれば、本体部41の上側でケーシング12を把持する構成は、上述した構成に限定されない。
【0041】
ここで、可動壁部である第1壁部51を有したブラケット50と、本体部41との連結構造について説明する。
【0042】
図9(b)および
図9(c)に示すように、本体部41の上面部には、上方に突出した4つの連結部43a~43dが設けられている。これらの各連結部43a~43dは、ブラケット50の第2壁部52、53と平行な方向に延びた矩形状の板部であり、開口部42の後方には、2つの連結部43a、43bが間隔を空けて配置され、開口部42の前方には、残りの2つの連結部43c、43dが間隔を空けて配置されている。
【0043】
また、4つの連結部43a~43dの各々には、2つの長孔44が間隔を空けて形成されている。長孔44の延伸方向は、チャック部32の可動爪32bの移動変更であり、換言すると、第1壁部51の可動方向である。
【0044】
上記のような4つの連結部43a~43dのうち、2つの連結部43a、43bの間には、一方の第2壁部52の下端部が位置し、残りの2つの連結部43c、43dの間には、他方の第2壁部53の下端部が位置している。そして、第2壁部52、53の各々の下端部には、図示しない円形の貫通孔が形成されていて、一方の第2壁部52と連結部43a、43bとは、長孔44を介してピン54で連結されている。同様に、他方の第2壁部53と連結部43c、43dとは、長孔44を介してピン54で連結されている。これによって、後退自走装置40の本体部41とブラケット50が連結されている。
【0045】
また、上述したピン54は、連結部43a~43dの長孔44内を移動可能であるため、ブラケット50は、長孔44の延伸方向に沿ってスライド移動可能である。すなわち、ブラケット50は、本体部41を起点としてスライド移動可能な機構を有しており、これによって、第1壁部51の可動機能が担保される。なお、ピン54は、本体部41とブラケット50を連結するための連結部材の一例である。
【0046】
なお、本体部41と第1壁部51の連結構造は、上述した長孔44とピン54を用いた構成に限定されず、例えば
図11に示す構成であってもよい。
図11に示した例では、本体部41と、第2壁部52、53との連結部としてレール機構55が採用されている。このレール機構55により、本体部41に対するブラケット50のスライド移動が可能である。
【0047】
また、以上で説明した第1壁部51の可動機構によれば、ブラケット50を開口部42から離れる方向(可動爪32bの収縮方向)に戻す際には、例えば現場の作業者が手動で戻すことになり得るが、自動で戻すための可動機構として、例えば
図12や
図13に示す構成を採用してもよい。
【0048】
図12に示した例では、ばね機構56が設けられており、ばね56aの伸縮方向が第1壁部51の可動方向と一致するように、ばね56aの一端が固定部材56bに、他端が第1壁部51の内面に取り付けられている。このようなばね機構56を用いた場合には、可動爪32b(
図10)が開口部42から離れる方向に移動した際に、ばね56aの弾性力によって第1壁部51を自動的に初期位置に戻すことができる。
【0049】
図13に示した例は、
図12に示したばね機構56に代えて、シリンダ機構57を採用した例である。この例においては、可動爪32b(
図10)が開口部42から離れる方向に移動した際に、シリンダ機構57の伸長動作を行うことによって第1壁部51を自動的に初期位置に戻すことができる。
【0050】
また、第1壁部51の可動機構の他の構成例としては、公知のボールねじ機構(図示せず)とモータを組み合わせた構成や、可動爪32b(
図10)と第1壁部51とを連結する構成等がある。
【0051】
以上のように、第1壁部51の可動機構は、開口部42に挿通されるケーシング12に対して接近または離隔する方向に移動可能な構成であれば、特に限定されない。換言すると、第1壁部51は、開口部42に挿通されるケーシング12に接する位置と、接しない位置との間で移動可能に構成されていればよい。
【0052】
次に、第2壁部52、53に設けることが好ましい部品について説明を行う。
【0053】
図8、
図9(b)及び
図9(c)に示すように、第2壁部52、53の各々の上端部には、チャック装置30を受け止めるための受け部として、プレート58を設けることが好ましい。このようなプレート58が設けられることによって、後退自走装置40をチャック装置30に取り付ける際に、重量の大きいチャック装置30をプレート58に載せることができ、後退自走装置40の取り付け作業が容易になる。
【0054】
また、プレート58は、ボルトなどの締結具によって第2壁部52、53に対して着脱自在に取り付けることが好ましい。これにより、サイズや形状が異なる他のプレートとの交換が可能であるため、仕様が異なるチャック装置に適したプレートに適宜交換することによって、一つの後退自走装置40を仕様が異なる他のチャック装置でも使用することが可能となり、後退自走装置40の汎用性を高めることができる。さらに、プレート58が交換可能であれば、プレート58の摩耗が進行した際に、新しいプレートへの交換も容易となる。
【0055】
また、
図6、
図8、
図9(b)及び
図9(c)に示すように、第2壁部52、53の固定爪32a側の端部においては、ピン取付部としてのピン用ブラケット59を取り付け、第2壁部52、53とチャック部32の固定爪32aとを連結するための落下防止ピン60を設けることが好ましい。この落下防止ピン60は、第2壁部52、53に対して垂直な方向(チャック装置30の前後方向)に移動自在に設けられる。なお、落下防止ピン60は、第2壁部52、53とチャック部32を連結するための柱状部材の一例である。
【0056】
図14に示すように、落下防止ピン60を設ける場合には、例えばチャック部32の固定爪32aに、落下防止ピン60が挿通される挿通口33が形成される。この挿通口33に対しては、落下防止ピン60を挿通させたり、引き抜いたりすることが可能となる。すなわち、落下防止ピン60は、固定爪32aに対して挿脱自在に設けられている。
【0057】
このような落下防止ピン60を設けることによって、後退自走装置40の落下防止機能が得られる。例えば、
図6に示したチャック部32の可動爪32bを固定爪32aから離隔する方向に移動させた場合、落下防止ピン60が設けられていないと、後退自走装置40は落下し得る。一方で、固定爪32aと第2壁部52、53が落下防止ピン60で連結されていれば、チャック部32の把持状態が解除されても、第2壁部52、53に固定された落下防止ピン60が固定爪32aに引っ掛かる状態となるため、後退自走装置40の落下を防止することが可能となる。
【0058】
なお、落下防止ピン60の挿通口33は、チャック部32の固定爪32a以外の他の部位に形成されてもよい。また、チャック装置30からの後退自走装置40の落下を防止する機構は、チャック装置30の構成に応じて適宜検討されるべき事項であるため、落下防止ピン60による落下防止機構を設けることは必須ではない。しかしながら、落下防止ピン60でチャック部32と第2壁部52、53とを連結する構成によれば、簡素な構造で落下防止機能を得ることができる。
【0059】
以上、後退自走装置40のブラケット50について説明した。次に、本体部41の下側に設けられた把持部70について説明する。
【0060】
図9(b)~
図9(d)に示すように、本体部41の下側には、矢板Pと開口部42に挿通されるケーシング12を把持するための把持部70が設けられ、把持部70は、固定爪70aと、可動爪70bを有する。この可動爪70bは、例えば油圧シリンダからなり、左右方向に伸縮自在に構成されている。すなわち、可動爪70bは、固定爪70aに対して接近または離隔する方向に移動自在に構成されていて、換言すれば、第1壁部51の可動方向に移動自在に構成されている。
【0061】
上記把持部70によれば、固定爪70aと可動爪70bとの間で、ケーシング12及び矢板Pを共に把持することができるため、杭圧入機1の後退自走を行う際に、ケーシング12と矢板Pの共掴みが可能となる。
【0062】
以上、本実施形態に係る後退自走装置40の概略構成について説明した。次に、その後退自走装置40を杭圧入機1まで搬送するための搬送方法と、杭圧入機1の後退自走方法について順に説明する。
【0063】
まず、矢板Pの圧入施工の際には、
図15に示す搬送システムによって、圧入対象の矢板Pを杭圧入機1まで搬送することが知られている。
図15で例示した搬送システムでは、杭圧入機1の後方にクレーン80、動力装置81、搬送装置82が順に配置され、クレーン80、動力装置81、搬送装置82は、いずれも既設の矢板P(完成杭)の上端部(天端)を前後方向に移動可能に構成されている。そして、搬送装置82によって搬送された圧入対象の矢板P(圧入杭)は、クレーン80で吊り上げられ、そのクレーン80が回動して、杭圧入機1に矢板Pがセットされる。その後、杭圧入機1によって矢板Pが圧入される。
【0064】
その後、例えば計画数の矢板Pの圧入が完了した後などの杭圧入機1の後退自走が必要となった段階では、
図16に示すように、例えば搬送装置82によって後退自走装置40の搬送が行われる。
図16に示した例では、後退自走装置40の搬送姿勢を保持するための治具90に後退自走装置40を載せ、その治具90を搬送装置82の搬送台83の上に載せることで、後退自走装置40を搬送している。
【0065】
なお、
図17は、上記の治具90について説明するための図であり、
図17(a)は、治具90の右側面図(紙面手前側の外壁の図示を省略)、
図17(b)は、上面図である。治具90は、後退自走装置40の四方(前後左右)を囲むための外壁91a~91dを有しており、各外壁91a~91dが後退自走装置40に接触することで後退自走装置40が拘束されている。また、治具90には、後退自走装置40の脚部を拘束する拘束部材92a~92c等も設けられている。
【0066】
図18は、後退自走装置40の搬送方法の他の例を示す左側面図である。この例では、治具90を搬送台83に載せずに、搬送装置82と、その搬送装置82の前方に配置した治具90を連結具93で連結して、後退自走装置40が載せられた治具90を搬送装置82で押している。なお、
図18では、治具90を搬送装置82で押す例が示されているが、例えば治具90を搬送装置82の後方に配置し、搬送装置82によって治具90を牽引することによって後退自走装置40を搬送してもよい。
【0067】
以上で例示した搬送方法によって搬送された後退自走装置40は、クレーン80(
図15)で吊り上げられ、その状態でクレーン80が回動することによって杭圧入機1の前方に移動する。その後の杭圧入機1の後退自走方法については、以下の通りである。
【0068】
まず、
図19(a)に示すように、あらかじめケーシング12及びチャック装置30を上昇させた状態にしておき、クランプ21で把持している第1矢板P
1の前方に位置した第2矢板P
2の上端部に後退自走装置40を設置(仮置き)する。
【0069】
続いて、
図19(b)に示すように、ケーシング12及びチャック装置30を下降させ、後退自走装置40の本体部41に形成された開口部42(
図8)にケーシング12を挿通させる。ここで、チャック部32で後退自走装置40を把持する。
【0070】
詳述すると、チャック部32の可動爪32b(
図10)を伸長させて、ブラケット50の第1壁部51を可動爪32bで押し、第1壁部51の内面をケーシング12に接触させる。これによって、ケーシング12及び第1壁部51が固定爪32a(
図7)と可動爪32bとの間に挟持され、ケーシング12を第1壁部51ごと把持することができる。
【0071】
また、
図7に示したように、後退自走装置40の把持部70においては、開口部42に挿通されたケーシング12と既設の矢板Pが隣接した状態で、把持部70の可動爪70bを固定爪70aに接近させる。これによって、ケーシング12と既設の矢板Pを共掴みする。
【0072】
なお、チャック部32によるケーシング12の把持工程と、把持部70によるケーシング12及び既設の第2矢板P2の把持工程は、いずれかが先に行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0073】
次に、
図19(c)に示すように、後退自走装置40によるケーシングと第2矢板P
2の把持状態を維持したまま、クランプ21による第1矢板P
1の把持状態を解除し、サドル22を上昇させた後にサドル22を後退させる。
【0074】
次に、
図19(d)に示すように、サドル22を下降させ、杭圧入機1で当初把持していた第1矢板P
1の後方に位置する第3矢板P
3をクランプ21で把持する。
【0075】
次に、
図19(e)に示すように、クランプ21による第3矢板P
3の把持状態を維持したまま、後退自走装置40の把持部70によるケーシング12及び第2矢板P
2の把持状態を解除し、ケーシング12及びチャック装置30を上昇させる。詳述すると、把持部70によるケーシング12及び第2矢板P
2の把持状態を解除した後、ケーシング12を把持したケーシングチャック部31をチャック部32に対して上昇させることでケーシング12を引き上げ、その後にチャック部32を上昇させることで後退自走装置40を上昇させる。
【0076】
そして、
図19(f)に示すように、リーダーマスト24を後退させた後にケーシング12及びチャック装置30を下降させる。以上の動作によって、杭圧入機1を矢板1枚分後方に後退自走させることができる。
【0077】
その後は、
図19(b)~
図19(f)に示した一連の動作を繰り返し行うことで、所望の位置まで杭圧入機1を後退自走させることができる。
【0078】
以上で説明したように、本実施形態に係る後退自走装置40によれば、ケーシング12と既設の矢板Pの共掴みが可能であるため、チャック装置30からオーガ装置10を取り外さずに杭圧入機1を後退自走させることができる。
【0079】
特に、本実施形態に係る後退自走装置40によれば、圧入対象の矢板の種類に関わらず、ケーシング12と既設の矢板Pの共掴みが可能となる。例えば、後退自走装置40によれば、従来は実現できなかったU形鋼矢板とケーシング12の共掴みも可能となる。すなわち、U形鋼矢板の施工時においても、チャック装置30からオーガ装置10を取り外さずに杭圧入機1を後退自走させることができる。
【0080】
なお、
図19(a)に示した例では、第1矢板P
1の1枚前方に位置する第2矢板P
2に後退自走装置40を仮置きしているが、第1矢板P
1の2枚以上前方に位置する矢板に後退自走装置40を仮置きしてもよい。また、後退自走装置40
をチャック装置30に取り付ける際には、開口部42にケーシング12が挿通された状態でチャック部32によって第1壁部51ごとケーシングを把持できればよいため、この作業を行うことが可能な場所であれば、後退自走装置40を仮置きする場所は特に限定されない。
【0081】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0082】
例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0083】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0084】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)オーガ装置を用いて矢板を圧入する杭圧入機に使用される後退自走装置であって、
前記オーガ装置の筒状のケーシングを挿通可能な開口部が形成された本体部と、
前記本体部の上側に設けられ、前記開口部に挿通されるケーシングを把持するために、該ケーシングに対して接近または離隔する方向に移動する可動壁部と、
前記本体部の下側に設けられ、前記矢板および前記開口部に挿通されるケーシングを共に把持する把持部と、を備えることを特徴とする、後退自走装置。
(2)前記可動壁部は、前記本体部を起点としてスライド移動可能な機構を有することを特徴とする、(1)に記載の後退自走装置。
(3)前記本体部の上側には、
前記可動壁部である第1壁部と、
前記第1壁部から前記開口部に挿通されるケーシングの側方に向かって延びた互いに対向する一対の第2壁部と、が設けられ
前記本体部と前記第2壁部とが連結されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載の後退自走装置。
(4)前記本体部と前記第2壁部とに挿通されて前記本体部と前記第2壁部とを連結する連結部材を有し、
前記第2壁部は、前記連結部材が挿通可能であって、かつ、前記第1壁部の可動方向に延びた長孔を有することを特徴とする、(3)に記載の後退自走装置。
(5)前記杭圧入機のチャック装置に形成された挿通口に挿通されることで該チャック装置と前記第2壁部とを連結する柱状部材が設けられていることを特徴とする、(3)または(4)に記載の後退自走装置。
(6)オーガ装置を用いて矢板を圧入する杭圧入機の後退自走方法であって、
前記杭圧入機のチャック装置によって前記オーガ装置の筒状のケーシングを下降させ、後退自走装置の本体部に形成された開口部に前記ケーシングを挿通する工程と、
前記本体部の上側に設けられた可動壁部を前記ケーシングに向かって移動させ、前記可動壁部と前記ケーシングを接触させた状態で、前記ケーシングを前記可動壁部ごと前記チャック装置で把持する工程と、
前記本体部の下側において、前記杭圧入機のクランプで把持している第1矢板の前方に位置した第2矢板および前記ケーシングを共に把持する工程と、
前記後退自走装置で前記第2矢板および前記ケーシングを共に把持した状態で、前記クランプによる前記第1矢板の把持状態を解除し、前記杭圧入機のサドルの上昇、後退および下降を順に行い、前記クランプで前記第1矢板の後方に位置する第3矢板を把持する工程と、
前記クランプで前記第3矢板を把持した状態で、前記後退自走装置による前記第2矢板および前記ケーシングの把持状態を解除し、前記チャック装置のケーシングチャック部を上昇させることで前記ケーシングを引き上げた後に、前記チャック装置のチャック部を上昇させることで前記後退自走装置を上昇させる工程と、
前記杭圧入機のリーダーマストを後退させる工程と、を有することを特徴とする、杭圧入機の後退自走方法。
(7)前記ケーシングを前記可動壁部ごと前記チャック装置で把持する工程において、前記可動壁部を前記ケーシングに向かって移動させる際に、前記チャック部が備える可動爪で前記可動壁部を押圧することにより前記可動壁部を移動させることを特徴とする、(6)に記載の杭圧入機の後退自走方法。
(8)前記本体部の上側には、
前記可動壁部である第1壁部と、
前記第1壁部から前記開口部に挿通されるケーシングの側方に向かって延びた互いに対向する一対の第2壁部と、が設けられ
前記本体部と前記第2壁部とが連結されていることを特徴とする、(6)または(7)に記載の杭圧入機の後退自走方法。
(9)前記後退自走装置は、前記本体部と前記第2壁部とに挿通されて前記本体部と前記第2壁部とを連結する連結部材を有し、
前記第2壁部は、前記連結部材が挿通可能であって、かつ、前記第1壁部の可動方向に延びた長孔を有することを特徴とする、(8)に記載の杭圧入機の後退自走方法。
(10)前記チャック装置で前記後退自走装置を把持する工程において、前記チャック装置と前記第2壁部とを連結するための柱状部材を、前記チャック装置に形成された前記柱状部材用の挿通口に挿通することを特徴とする、(8)または(9)に記載の杭圧入機の後退自走方法。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、地盤を掘削するオーガ装置を用いた杭圧入機に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 杭圧入機
10 オーガ装置
11 オーガスクリュー
12 ケーシング
13 オーガ駆動部
13a 筐体
14 油圧モータ
15 減速機
16 モータ用油圧ホース
17 オーガヘッド
18 排出孔
20 杭圧入機本体
21 クランプ
22 サドル
23 スライド機構
24 リーダーマスト
25 全体油圧ホース
26 ホースリール
27 ホース案内ローラ
30 チャック装置
31 ケーシングチャック部
31a 固定爪
31b 可動爪
32 チャック部
32a 固定爪
32b 可動爪
33 挿通口
40 後退自走装置
41 本体部
42 開口部
43a~43d 連結部
44 長孔
50 ブラケット
51 第1壁部
52、53 第2壁部
54 ピン
55 レール機構
56 ばね機構
56a ばね
56b 固定部材
57 シリンダ機構
58 プレート
59 ピン用ブラケット
60 落下防止ピン
70 把持部
70a 固定爪
70b 可動爪
80 クレーン
81 動力装置
82 搬送装置
83 搬送台
90 治具
91a~91d 外壁
92a~92c 拘束部材
93 連結具
150 従来の後退自走装置
160 従来の後退自走装置
P 矢板