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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025385
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】アームレスト
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/74 20060101AFI20240216BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A47C7/74 B
A47C7/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128772
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 慎治
(72)【発明者】
【氏名】二宮 彰久
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084JA08
3B084JF02
(57)【要約】
【課題】ヒータの電熱線に掛かる曲げ負荷を低減可能なアームレストを提供すること。
【解決手段】アームレスト1は、骨格となる基材2と、基材2上に設けられるクッション用のパッド3と、基材2をパッド3と共に包むカバー4と、パッド3とカバー4との間に電熱線5Bが敷かれるように配設される面状のヒータ5と、を有する。基材2の外周表面が、上面2Dから下方に曲がる曲がり面2Eを有する。パッド3が、基材2の外周表面を上面2Dと曲がり面2Eとに跨って覆う曲覆い部3Cを有する。ヒータ5が、曲覆い部3Cとカバー4との間に電熱線5Bが敷かれるように配設される曲設部5Cを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームレストであって、
骨格となる基材と、
前記基材上に設けられるクッション用のパッドと、
前記基材を前記パッドと共に包むカバーと、
前記パッドと前記カバーとの間に電熱線が敷かれるように配設される面状のヒータと、を有し、
前記基材の外周表面が、上面から下方向に曲がる曲がり面を有し、前記パッドが、前記基材の前記外周表面を前記上面と前記曲がり面とに跨って覆う曲覆い部を有し、前記ヒータが、前記曲覆い部と前記カバーとの間に前記電熱線が敷かれるように配設される曲設部を有するアームレスト。
【請求項2】
請求項1に記載のアームレストであって、
前記曲覆い部が、前記パッドの上面のクッションを成す天板領域と幅方向の側面のクッションを成す側板領域との外角部とされ、
前記ヒータが、前記パッドの前記天板領域と前記側板領域とに跨って前記電熱線が敷かれるように配設されるアームレスト。
【請求項3】
請求項2に記載のアームレストであって、
前記パッドが、前記天板領域のクッションを成す天板パッドと、前記天板パッドと幅方向に隣接状に並んで前記外角部を含む前記側板領域のクッションを成すサイドパッドと、を有し、
前記天板パッドが、前記サイドパッドよりも軟質とされるアームレスト。
【請求項4】
請求項3に記載のアームレストであって、
前記基材の前記天板パッドを支持する天板部に、前記天板パッドが嵌め込まれる嵌合凹部が形成されるアームレスト。
【請求項5】
請求項2に記載のアームレストであって、
前記パッドが、前記外角部を含む前記天板領域及び前記側板領域のクッションを成す本体パッドと、前記本体パッドの前記天板領域に形成されたパッド表面側から凹む凹部に積層状に設けられて前記本体パッドと共に前記天板領域のクッションを成す積層パッドと、を有し、
前記積層パッドが、前記本体パッドよりも軟質とされるアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレストに関する。詳しくは、内部に電熱線を発熱源とするヒータを備えるアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗物用シートのアームレストに面状のヒータが組み込まれた構成が開示されている。ヒータは、面状の基布に電熱線が縫い付けられた構成とされる。ヒータは、アームレストの内部のパッドとその表面を覆うカバーとの間に挟まれて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5603466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、アームレストに腕や手が置かれることで、ヒータの電熱線がアームレストの内部の基材に押し付けられる。そのため、基材表面に凹凸がある場合に、ヒータの電熱線に過大な曲げ負荷が掛かるおそれがある。そこで、本発明は、ヒータの電熱線に掛かる曲げ負荷を低減可能なアームレストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本発明のアームレストは、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、アームレストであって、骨格となる基材と、前記基材上に設けられるクッション用のパッドと、前記基材を前記パッドと共に包むカバーと、前記パッドと前記カバーとの間に電熱線が敷かれるように配設される面状のヒータと、を有し、前記基材の外周表面が、上面から下方向に曲がる曲がり面を有し、前記パッドが、前記基材の前記外周表面を前記上面と前記曲がり面とに跨って覆う曲覆い部を有し、前記ヒータが、前記曲覆い部と前記カバーとの間に前記電熱線が敷かれるように配設される曲設部を有するアームレストである。
【0007】
第1の発明によれば、基材の曲がり面に敷かれる電熱線の曲設部が、曲がり面との間に介在するパッドの曲覆い部により弾性的に支持される。その結果、アームレストに腕や手が置かれた際に電熱線の曲設部に掛けられる曲げ負荷を低減することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記曲覆い部が、前記パッドの上面のクッションを成す天板領域と幅方向の側面のクッションを成す側板領域との外角部とされ、前記ヒータが、前記パッドの前記天板領域と前記側板領域とに跨って前記電熱線が敷かれるように配設されるアームレストである。
【0009】
第2の発明によれば、ヒータの電熱線を、アームレストの上面と側面とに跨る広範囲に亘って過大な曲げ負荷が掛からないように敷くことができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記パッドが、前記天板領域のクッションを成す天板パッドと、前記天板パッドと幅方向に隣接状に並んで前記外角部を含む前記側板領域のクッションを成すサイドパッドと、を有し、前記天板パッドが、前記サイドパッドよりも軟質とされるアームレストである。
【0011】
第3の発明によれば、上面のソフト感を高めつつ、外角部を含む側面の形状出しを適切に行うことができる。また、天板パッドが幅方向に隣接するサイドパッドにより側方から支えられることから、上面に置かれた腕や手の支持の安定性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第3の発明において、前記基材の前記天板パッドを支持する天板部に、前記天板パッドが嵌め込まれる嵌合凹部が形成されるアームレストである。
【0013】
第4の発明によれば、天板パッドを天板部上に位置決めした状態に組み付けることができる。それにより、上面に置かれた腕や手の支持の安定性をより向上させることができる。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第2の発明において、前記パッドが、前記外角部を含む前記天板領域及び前記側板領域のクッションを成す本体パッドと、前記本体パッドの前記天板領域に形成されたパッド表面側から凹む凹部に積層状に設けられて前記本体パッドと共に前記天板領域のクッションを成す積層パッドと、を有し、前記積層パッドが、前記本体パッドよりも軟質とされるアームレストである。
【0015】
第5の発明によれば、本体パッドに本体パッドよりも軟質な積層パッドを重ねる構成により、上面のクッション性を適切に調節することが可能となる。また、積層パッドが本体パッドにより周囲から支えられることから、上面に置かれた腕や手の支持の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係るアームレストの概略構成を表す斜視図である。
図2図1の要部を拡大して表す斜視図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図3のIV部拡大図である。
図5】アームレストの上面に腕や手が置かれた時の変形態様を表す図4に対応する断面図である。
図6】第2の実施形態に係るアームレストの構成を表す図3に対応する断面図である。
図7図6のVII部拡大図である。
図8】他の実施形態に係るアームレストの構成を表す図3に対応する断面図である。
図9】他の実施形態に係るアームレストの構成を表す図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
<アームレスト1の概略構成>
始めに、本発明の第1の実施形態に係るアームレスト1の構成について、図1図5を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図5のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るアームレスト1は、自動車のシート10に適用されている。シート10は、一人掛け用のいわゆるキャプテンシートとして構成される。具体的には、シート10は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック11と、着座部となるシートクッション12と、頭凭れ部となるヘッドレスト13と、を備える。シートバック11は、シートクッション12の後端部に対し、不図示のリクライナを介して背凭れ角度の調節を行えるように連結されている。
【0020】
また、シート10は、シートクッション12の左右両側部から壁状に立ち上がる一対の側壁体14を備える。また、シート10は、一対の側壁体14の各上部に、着座乗員が腕や手を置くことが可能なアームレスト1をそれぞれ備える。各アームレスト1は、それぞれ、着座乗員の腕や手を柔らかく支持することが可能なクッション性を備える。
【0021】
図2に示すように、各アームレスト1は、それぞれ、それらの上面Uを温めることが可能な面状のヒータ5を備える。各ヒータ5は、それぞれ、各アームレスト1の上面Uと左右の各側面Sとに跨って敷かれるように設けられている。それにより、各アームレスト1は、それらの上面Uに置かれた腕や手に加え、左右の手の各アームレスト1の各側面Sを掴むように延ばされる指先をも温めることができるようになっている。
【0022】
詳しくは、各ヒータ5は、各アームレスト1の前後方向の略全域に亘って上面Uと各側面Sとに跨って敷かれるように設けられている。そのため、シートバック11の後傾によって各アームレスト1への着座乗員の腕や手の置かれる位置が後方にずれても、各ヒータ5によって着座乗員の左右の腕や手、それに指先を広く温めることができるようになっている。
【0023】
また、着座乗員の腕や手が各アームレスト1から内側に降ろされた際にも、各アームレスト1の内側の側面Sに敷かれた各ヒータ5によって、前後方向の広い範囲において着座乗員の腕を温めることができるようになっている。以下、各アームレスト1の各部の具体的な構成について詳しく説明する。なお、各アームレスト1は、互いに略同一の基本構成を備えたものとなっている。したがって、以下では、これらを代表して、図2に示す左側のアームレスト1の構成について詳しく説明することとする。
【0024】
<アームレスト1の各部構成>
アームレスト1は、上述した側壁体14の上部に沿って前後方向に長尺状に延びる平板状の形に形成されている。具体的には、図3に示すように、アームレスト1は、骨格となる基材2と、基材2上に設けられるクッション用のパッド3と、基材2をパッド3と共に包むカバー4と、を有する。また、アームレスト1は、上記パッド3とカバー4との間に敷かれるように配設される面状のヒータ5を有する。
【0025】
基材2は、インジェクション成形された板状の樹脂部品から成る。基材2は、側壁体14の上端部に沿って組み付けられる。基材2は、具体的には、アームレスト1の上面Uに沿った骨格を成す平板状の天板部2Aを有する。また、基材2は、天板部2Aの左右の各側縁から下方に延びる平板状の各側板部2Bを有する。各側板部2Bは、アームレスト1の各側面Sに沿った骨格を成す。また、基材2は、各側板部2Bの下方に延びた先の端部から、幅方向の外側(互いに離間する側)に向かって延びるひれ部2Cを有する。
【0026】
上記構成により、基材2は、その天板部2Aと天板部2Aの各側縁から下方に延びる各側板部2Bとの外角部に、それぞれ、折れ曲がり状の曲がり面2Eが形成された構成とされる。図4に示すように、各曲がり面2Eは、天板部2Aの上面2Dから下方に曲がる面として構成される。
【0027】
図3に示すように、天板部2Aの上面には、その左右方向の略全域に亘って、下方に僅かに凹む平面視矩形状の嵌合凹部A1が形成されている。嵌合凹部A1は、天板部2Aの板厚寸法の半分以下程度凹む僅かな凹みとなっている。上記嵌合凹部A1の形成に伴い、天板部2Aの嵌合凹部A1の両上角部にも、それぞれ、折れ曲がり状の曲がり面2Fが形成されている。図4に示すように、各曲がり面2Fは、天板部2Aの上面2Dから下方に曲がる面として構成される。
【0028】
図3に示すように、パッド3は、スラブウレタンから成る天板パッド3Aと、チップウレタンから成る左右一対のサイドパッド3Bと、で構成される。パッド3は、上記天板パッド3Aと左右一対のサイドパッド3Bとによって、基材2の外周表面を隙間なく覆うように基材2上にセットされる。具体的には、天板パッド3Aが基材2の天板部2A上にセットされ、各サイドパッド3Bが各側板部2Bをそれぞれ幅方向の外側から覆うようにセットされる。
【0029】
詳しくは、天板パッド3Aは、天板部2Aに形成された嵌合凹部A1の凹形状に沿った平面視矩形の板形状にカットされている。天板パッド3Aは、その下部全域が嵌合凹部A1に上方から嵌め込まれ、上部全域が嵌合凹部A1から上方に膨出する形にセットされる。それにより、天板パッド3Aは、アームレスト1の上面Uのクッションを成すパッド3の天板領域を成す。
【0030】
各サイドパッド3Bは、それぞれ、断面逆L字状の板形状に形成されている。詳しくは、各サイドパッド3Bは、天板パッド3Aと幅方向に隣接状に並んで天板部2Aの上面2D上にセットされる部分と、各側板部2Bを幅方向の外側から覆うようにセットされる部分と、を一続きに有する断面逆L字状の板形状とされる。各サイドパッド3Bは、基材2の外周表面に沿って、それらのL字の縦辺部分が、各ひれ部2Cの上面と各側板部2Bの外側面2Gとにそれぞれ当接するようにセットされる。
【0031】
そして、各サイドパッド3Bは、それらのL字の横辺部分が、基材2の天板部2Aの上面2Dに当接すると共に、天板パッド3Aに幅方向の外側からあてがわれるようにセットされる。それにより、各サイドパッド3Bは、アームレスト1の各側面Sのクッションを成すパッド3の各側板領域を成す。また、各サイドパッド3Bは、天板パッド3Aと共にアームレスト1の上面Uの一部(幅方向の各側縁)のクッションを成す。
【0032】
上記構成により、各サイドパッド3Bは、それらのL字の縦辺部分と横辺部分とを繋ぐ角の部分が、基材2の両外角部の曲がり面2Eを覆う曲覆い部3Cとして構成される。図4に示すように、各曲覆い部3Cは、各曲がり面2Eを、天板部2Aの上面2Dと各側板部2Bの外側面2Gとに跨って一続きに覆う。
【0033】
また、パッド3は、各サイドパッド3Bと天板パッド3Aとが隣接状に突き合わされる天板部分において、基材2の嵌合凹部A1の両上角部の曲がり面2Fを覆う曲覆い部3Dを構成する。具体的には、各曲覆い部3Dは、各曲がり面2Fを、天板部2Aの上面2Dと嵌合凹部A1の各内側面とに跨って一続きに覆う。
【0034】
以上の構成により、パッド3は、基材2の外周表面を隙間なく覆い、凸状の縁となる各曲がり面2Eや各曲がり面2Fの使用時における異物感を和らげられるようになっている。上記パッド3は、上面Uのクッションを成すスラブウレタン製の天板パッド3Aが、各側面Sのクッションを成すチップウレタン製の各サイドパッド3Bよりも軟質な構成とされている。それにより、パッド3は、比較的軟質な天板パッド3Aによって上面Uのソフト感を高めつつ、比較的硬質な各サイドパッド3Bによってアームレスト1の各側面Sや外角部の形状出しを適切に行える構成とされる。
【0035】
また、パッド3は、天板パッド3Aが基材2の天板部2Aの嵌合凹部A1に嵌め込まれることで、天板パッド3Aが基材2に対して幅方向に位置ずれしにくい構成とされる。また、パッド3は、天板パッド3Aが比較的硬質な各サイドパッド3Bにより幅方向の両外側からあてがわれることによっても、幅方向に位置ずれしにくい構成とされる。それにより、パッド3は、上面Uに腕や手が置かれた際に天板パッド3Aが左右に動かされにくく、腕や手を定位置で適切に支持することができる構成とされる。
【0036】
図3に示すように、カバー4は、アームレスト1の上面U及び各側面Sの形に合わせて形成された複数枚のカバーピースが1枚に縫合された構成とされる。カバー4は、上記基材2上にパッド3が組み付けられた後、パッド3の外周表面を上方から覆うように被せられる。
【0037】
そして、カバー4は、上記被せられた先の各端末が、基材2の裏側(下側)に引き込まれて基材2の裏面に止着される。それにより、カバー4は、パッド3の外周表面に広く密着した状態に張設されて、パッド3を基材2の外周表面に広く密着させた状態に保持する。
【0038】
ヒータ5は、不織布から成る面状の基布5Aに、ニクロム線から成る電熱線5Bがジグザグ状に広く敷設された面状構造から成る。電熱線5Bは、基布5Aの裏面に沿ってジグザグ状に敷設され、その所々の箇所が基布5Aに縫い付けられて固定されている。上記ヒータ5は、アームレスト1の上面Uに加え、左右の各側面Sも温められるように次のように配設されている。
【0039】
すなわち、ヒータ5は、天板パッド3Aと各サイドパッド3Bとに跨って敷かれる大きさに拡張され、天板パッド3A及び各サイドパッド3Bとこれらを包むカバー4との間にそれぞれ敷かれるように配設される。それにより、図4に示すように、ヒータ5は、上述したパッド3の両外角部の曲覆い部3Cとカバー4との間に電熱線5Bが曲げられる形に敷設される各曲設部5Cを有する構成とされる。すなわち、ヒータ5は、上述した基材2の両外角部の曲がり面2E上に電熱線5Bが掛かるように配設される各曲設部5Cを有する構成とされる。
【0040】
また、ヒータ5は、上述したパッド3の天板パッド3Aと各サイドパッド3Bとの突き合わせ部分から成る各曲覆い部3Dとカバー4との間にも、電熱線5Bが敷かれるように配設される各曲設部5Dを有する構成とされる。すなわち、ヒータ5は、上述した基材2の嵌合凹部A1の両上角部の曲がり面2F上に電熱線5Bが掛かるように配設される各曲設部5Dを有する構成とされる。
【0041】
上記構成により、図5に示すように、ヒータ5は、アームレスト1の上面Uに着座乗員の腕や手が置かれた際に、各曲設部5C,5Dに曲げ負荷が掛けられることがある。しかし、ヒータ5は、各曲設部5C,5Dがそれぞれパッド3の各曲覆い部3C,3Dにより裏側から広く面状に弾性支持されている。
【0042】
そのため、ヒータ5は、各曲設部5C,5Dが基材2の各曲がり面2E,2Fを支点に曲げられるような負荷を受けても、各曲がり面2E,2Fとの間に介在するパッド3の各曲覆い部3C,3Dによる弾性支持により、局所的な折れ曲がりを伴うことなく全体が緩やかな曲率で撓む程度の変形に留められる。したがって、ヒータ5の電熱線5Bを、アームレスト1の上面Uと各側面Sとに跨る広範囲に亘って敷設しても、各曲設部5C,5Dに過大な曲げ負荷が掛からないようにすることができる。
【0043】
ヒータ5は、基布5Aの裏面に電熱線5Bが敷設されており、基布5Aがカバー4と対面し、電熱線5Bがパッド3と対面するように配設される。そのような構成とされることにより、カバー4の表面に電熱線5Bの出っ張りに伴うハイライト線が露出しにくくなっている。また、上面Uに腕や手が置かれた際に、電熱線5Bの出っ張りに伴う異物感が感じられにくくなっている。
【0044】
以上をまとめると、本実施形態に係るアームレスト1は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0045】
すなわち、アームレスト(1)は、骨格となる基材(2)と、基材(2)上に設けられるクッション用のパッド(3)と、基材(2)をパッド(3)と共に包むカバー(4)と、パッド(3)とカバー(4)との間に電熱線(5B)が敷かれるように配設される面状のヒータ(5)と、を有する。基材(2)の外周表面が、上面(2D)から下方向に曲がる曲がり面(2E,2F)を有する。パッド(3)が、基材(2)の外周表面を上面(2D)と曲がり面(2E,2F)とに跨って覆う曲覆い部(3C,3D)を有する。ヒータ(5)が、曲覆い部(3C,3D)とカバー(4)との間に電熱線(5B)が敷かれるように配設される曲設部(5C,5D)を有する。
【0046】
上記構成によれば、基材(2)の曲がり面(2E,2F)に敷かれる電熱線(5B)の曲設部(5C,5D)が、曲がり面(2E,2F)との間に介在するパッド(3)の曲覆い部(3C,3D)により弾性的に支持される。その結果、アームレスト(1)に腕や手が置かれた際に電熱線(5B)の曲設部(5C,5D)に掛けられる曲げ負荷を低減することができる。
【0047】
また、曲覆い部(3C)が、パッド(3)の上面(U)のクッションを成す天板領域と幅方向の側面(S)のクッションを成す側板領域との外角部とされる。ヒータ(5)が、パッド(3)の天板領域と側板領域とに跨って電熱線(5B)が敷かれるように配設される。上記構成によれば、ヒータ(5)の電熱線(5B)を、アームレスト(1)の上面(U)と側面(S)とに跨る広範囲に亘って過大な曲げ負荷が掛からないように敷くことができる。
【0048】
また、パッド(3)が、天板領域のクッションを成す天板パッド(3A)と、天板パッド(3A)と幅方向に隣接状に並んで外角部を含む側板領域のクッションを成すサイドパッド(3B)と、を有する。天板パッド(3A)が、サイドパッド(3B)よりも軟質とされる。上記構成によれば、上面(U)のソフト感を高めつつ、外角部を含む側面(S)の形状出しを適切に行うことができる。また、天板パッド(3A)が幅方向に隣接するサイドパッド(3B)により側方から支えられることから、上面(U)に置かれた腕や手の支持の安定性を向上させることができる。
【0049】
また、基材(2)の天板パッド(3A)を支持する天板部(2A)に、天板パッド(3A)が嵌め込まれる嵌合凹部(A1)が形成される。上記構成によれば、天板パッド(3A)を天板部(2A)上に位置決めした状態に組み付けることができる。それにより、上面(U)に置かれた腕や手の支持の安定性をより向上させることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係るアームレスト1の構成について、図6図7を用いて説明する。図6に示すように、本実施形態に係るアームレスト1は、パッド3が、スラブウレタンから成る本体パッド3Eと、チップウレタンから成る積層パッド3Fと、で構成される点において、第1の実施形態で示した構成と異なる。また、基材2の天板部2Aが、第1の実施形態で示した嵌合凹部A1(図3参照)を備えない滑らかな上面形状とされる。
【0051】
本体パッド3Eは、基材2の外周表面に沿った断面逆U字状の板形状に形成されている。本体パッド3Eは、基材2の外周表面に沿って、基材2の各ひれ部2Cの上面と各側板部2Bの外側面2Gと天板部2Aの上面2Dとにそれぞれ当接するようにセットされる。それにより、本体パッド3Eは、アームレスト1の上面Uのクッションを成すパッド3の天板領域を成すと共に、アームレスト1の各側面Sのクッションを成すパッド3の各側板領域も成す。
【0052】
上記構成により、本体パッド3Eは、その逆U字の両外角部が、基材2の両外角部の曲がり面2Eを覆う曲覆い部3Gとして構成される。図7に示すように、各曲覆い部3Gは、各曲がり面2Eを、天板部2Aの上面2Dと各側板部2Bの外側面2Gとに跨って一続きに覆う。
【0053】
積層パッド3Fは、本体パッド3Eの天板部2A上の領域である天板領域に形成された凹部E1に嵌め込まれて積層状に設けられている。凹部E1は、パッド表面側(上側)から平面視矩形状に凹む形に形成されている。積層パッド3Fは、凹部E1の凹形状に沿った平面視矩形の板形状にカットされている。
【0054】
積層パッド3Fは、凹部E1に上方から嵌め込まれることで、その上面が本体パッド3Eの凹部E1の周縁の上面と面一状を成す形にセットされる。それにより、積層パッド3Fは、その下層に積層された本体パッド3Eと共に、アームレスト1の上面Uのクッションを成すパッド3の天板領域を成す。なお、凹部E1の両側面と積層パッド3Fの両側面との境界線は、図示のように基材2の天板部2Aから垂直に立ち上がるものでも良いが、幅方向に斜めに立ち上がるものであっても良い。上記の境界線は、カバー4のカバーピース同士が両外角部において縫い合わされる縫合部の縫い代よりも幅方向の内側に位置するのが好ましい。
【0055】
以上の構成により、パッド3は、本体パッド3Eによって、基材2の外周表面を隙間なく覆い、凸状の縁となる各曲がり面2Eの使用時における異物感を和らげられるようになっている。また、パッド3は、そのアームレスト1の上面Uのクッションを成す天板領域が、軟質な積層パッド3Fとそれよりも硬質な本体パッド3Eとの積層構造から成ることにより、これらの厚さ調節によって、アームレスト1の上面Uのクッション性を適切に調節することが可能な構成とされる。
【0056】
上記パッド3は、比較的軟質な積層パッド3Fによってアームレスト1の上面Uのソフト感を高めつつ、比較的硬質な本体パッド3Eによってアームレスト1の各側面Sや外角部の形状出しを適切に行える構成とされる。また、積層パッド3Fが本体パッド3Eにより周囲から支えられることから、上面Uに置かれた腕や手の支持の安定性を向上させることができる。
【0057】
上記以外の構成は、第1の実施形態で示した構成と実質的に同一の構成となっている。したがって、第1の実施形態で示した構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0058】
以上をまとめると、本実施形態に係るアームレスト1は次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0059】
すなわち、パッド(3)が、外角部を含む天板領域及び側板領域のクッションを成す本体パッド(3E)と、本体パッド(3E)の天板領域に形成されたパッド表面側から凹む凹部(E1)に積層状に設けられて本体パッド(3E)と共に天板領域のクッションを成す積層パッド(3F)と、を有する。積層パッド(3F)が、本体パッド(3E)よりも軟質とされる。
【0060】
上記構成によれば、本体パッド(3E)に本体パッド(3E)よりも軟質な積層パッド(3F)を重ねる構成により、上面(U)のクッション性を適切に調節することが可能となる。また、積層パッド(3F)が本体パッド(3E)により周囲から支えられることから、上面(U)に置かれた腕や手の支持の安定性を向上させることができる。
【0061】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を2つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0062】
1.本発明のアームレストは、シートの側部に固定されて設けられるものの他、シートバックの側部に前後の回転による展開格納が行えるように設けられるものであってもよい。また、アームレストは、いわゆるベンチシートのシートバックの中央部を前に倒して腕や手を置ける状態に切り替えられるタイプの構成であってもよい。
【0063】
また、アームレストは、シートの他、自動車のセンタコンソールの上部やドアトリムに設けられるものであってもよい。また、アームレストは、鉄道等の自動車以外の車両の他、航空機や船舶等の車両以外の乗物のシート用に供されるものであってもよい。また、アームレストは、乗物の他、スポーツ施設や劇場、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置されるシートやマッサージシート等の乗物以外のシート用に供されるものであってもよい。
【0064】
2.パッドは、スラブウレタンやチップウレタンから成るものの他、モールドウレタンから成るものであってもよい。パッドは、天板領域と側板領域のクッションをひとつながりで構成するものであってもよい。カバーは、合成皮革の他、本革やファブリックから成るものであってもよい。基材は、樹脂の他、金属から成るものであってもよい。
【0065】
3.ヒータは、基布がなく、電熱線のみがパッドとカバーとの間に敷設される構成であってもよい。また、ヒータは、電熱線が基布の裏面ではなく表面に敷設される構成であってもよい。また、電熱線が基布の表面と裏面との両面に分かれて敷設される構成であってもよい。
【0066】
4.基材の外周表面に形成される曲がり面は、基材の上面から下方に直角に曲がるものの他、鈍角又は鋭角で曲がるものであっても良い。上記曲がり面は、その曲がり形状により、ヒータの電熱線に曲げ負荷を掛け得る面となるものであり、パッドの曲覆い部が基材の曲がり面と上面とに跨って外周表面を覆うように設けられることで、パッドを介してヒータの電熱線に掛けられる曲げ負荷が低減されるものである。
【0067】
5.ヒータは、アームレストの前後方向の略全域に亘って設けられるものの他、前後方向の一部領域にのみ設けられるものであってもよい。例えば、アームレストがシートバックの側部に前後の回転による展開格納が行えるように連結されるタイプにおいては、シートバックが後傾してもアームレストがこれに追従する。したがって、アームレストに対する着座乗員の腕や手の置かれる位置はずれにくい。よって、このようなタイプにおいては、アームレストの腕や手の置かれる特定箇所にのみヒータを設ければよい。特に、アームレストの側面に設けられるヒータについては、着座乗員の手が置かれる領域の側面にのみ設ける構成としても、アームレストの側面を掴むように延ばされる指先を適切に温めることが可能となる。
【0068】
6.図8図9に示すように、基材2上に設けられるクッション用のパッド3を、モールドウレタンから成る1部品で構成してもよい。その場合には、パッド3の基材2の上面2Dに掛かる天板領域に、パッド3を表面側から切り込むスリット3H(図8参照)や基材2の上面2Dとの間に空間をあける裏凹部3J(図9参照)を設けて、パッド3の天板領域の表面硬さを和らげるようにしてもよい。このようにすることで、アームレスト1の腕や手が載せられる上面Uのソフト感を高めつつ、アームレスト1の各側面Sや外角部の形状出しを適切に行うことが可能となる。なお、図8に示したスリット3Hに代えて、パッド3を厚さ方向に貫通させる貫通孔としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 アームレスト
2 基材
2A 天板部
A1 嵌合凹部
2B 側板部
2C ひれ部
2D 上面
2E 曲がり面
2F 曲がり面
2G 外側面
3 パッド
3A 天板パッド
3B サイドパッド
3C 曲覆い部
3D 曲覆い部
3E 本体パッド
E1 凹部
3F 積層パッド
3G 曲覆い部
3H スリット
3J 裏凹部
4 カバー
5 ヒータ
5A 基布
5B 電熱線
5C 曲設部
5D 曲設部
U 上面
S 側面
10 シート
11 シートバック
12 シートクッション
13 ヘッドレスト
14 側壁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9