(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025387
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】評価装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20240216BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128774
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】300010899
【氏名又は名称】NGB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昌
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 航
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC60
(57)【要約】
【課題】産業財産権に付与される分類を評価する方法および当該分類の評価に基づいて産業財産権を評価する方法を提供する。
【解決手段】評価装置10は、評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得する。評価装置10は、産業財産権情報データベース111を参照して、評価分類と同じ分類で、かつ、評価対象基準日と同じ評価基準日に関連付けられたスコアに基づいて、評価対象の産業財産権を評価する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業財産権の内容に応じて付与される分類について、前記分類と、評価基準日とに関連付けられて、前記分類の評価を示すスコアが記録されているデータベースに接続され、前記データベースに基づき評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記スコアは、前記分類に属する前記産業財産権における特定の手続に関連付けられた所定の日付が前記評価基準日より前に属する前記産業財産権の件数に応じた指標と前記評価基準日より後に属する前記産業財産権の件数に応じた指標との比較に基づき算出されており、
前記データベースには、前記スコアが、複数の前記分類の各々について、複数の評価基準日ごとに記録されており、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類と同じ前記分類で、かつ、前記評価対象基準日と同じ前記評価基準日に関連付けられた前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する、評価装置。
【請求項2】
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の複数の分類である複数の前記評価分類を取得し、
前記データベースを参照して、前記複数の評価分類の各々について算出された複数のスコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
複数の産業財産権について、特定の手続に関連付けられた所定の日付と、各々に付された分類とが関連付けられて記録されたデータベースに接続され、前記データベースを参照して、評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類に属する前記産業財産権における前記所定の日付が前記評価対象基準日より前に属する前記産業財産権の件数に応じた指標と前記評価対象基準日より後に属する前記産業財産権の件数に応じた指標との比較に基づき、前記評価分類の評価を示すスコアを算出し、
算出された前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する、評価装置。
【請求項4】
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の複数の分類である複数の前記評価分類を取得し、
前記データベースを参照して、前記複数の評価分類の各々について前記スコアを算出し、
算出された複数の前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する、請求項3に記載の評価装置。
【請求項5】
前記評価装置は、
複数の前記スコアのうち最大のスコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する、請求項2または請求項4に記載の評価装置。
【請求項6】
前記複数の分類に利用廃止された分類が含まれている場合、前記評価対象の産業財産権を評価する際には前記利用廃止された分類の前記スコアは考慮されない、請求項2または請求項4に記載の評価装置。
【請求項7】
前記複数の分類に新設されてから所定期間経過していない分類が含まれている場合、前記評価対象の産業財産権を評価する際には前記新設されてから所定期間経過していない分類のスコアは考慮されない、請求項2または請求項4に記載の評価装置。
【請求項8】
前記所定の日付は、出願日である、請求項1または請求項3に記載の評価装置。
【請求項9】
前記評価対象基準日は、前記評価対象の産業財産権の特定の手続に関連付けられた所定の日付である、請求項1または請求項3に記載の評価装置。
【請求項10】
前記評価装置は、
前記所定の日付が前記評価対象基準日より前に属する件数に応じた指標の平均変化率と、前記評価対象基準日より後に属する件数に応じた指標の平均変化率との比較に基づき、前記スコアを算出する、請求項3に記載の評価装置。
【請求項11】
前記所定の日付が前記評価対象基準日より後に属する件数に応じた指標の平均変化率が、前記所定の日付が前記評価対象基準日より前に属する件数に応じた指標の平均変化率より大きいほど、前記スコアが高い、請求項10に記載の評価装置。
【請求項12】
複数の産業財産権について、特定の手続に関連付けられた所定の日付と、各々に付された分類とが関連付けられて記録されたデータベースに接続され、分類ごとに、前記分類の評価を示すスコアを算出する評価装置であって、
前記評価装置は、前記データベースを参照し、前記分類に属する前記産業財産権における特定の手続に関連付けられた所定の日付が評価基準日より前に属する前記産業財産権の件数に応じた指標と前記評価基準日より後に属する前記産業財産権の件数に応じた指標との比較に基づき、前記スコアを算出し、
前記評価装置は、複数の前記分類の各々について、複数の評価基準日ごとに、前記スコアを算出する、評価装置。
【請求項13】
前記評価装置は、
前記所定の日付が前記評価基準日より前に属する件数に応じた指標の平均変化率と、前記評価基準日より後に属する件数に応じた指標の平均変化率との比較に基づき、前記スコアを算出する、請求項12に記載の評価装置。
【請求項14】
前記所定の日付が前記評価対象基準日より後に属する件数に応じた指標の平均変化率が、前記所定の日付が前記評価対象基準日より前に属する件数に応じた指標の平均変化率より大きいほど、前記スコアが高い、請求項13に記載の評価装置。
【請求項15】
産業財産権の内容に応じて付与される分類について、前記分類と、評価基準日とに関連付けられて、前記分類の評価を示すスコアが記録されているデータベースに接続され、前記データベースに基づき評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記スコアは、前記分類に属する前記産業財産権における特定の手続に関連付けられた所定の日付が前記評価基準日に属する前記産業財産権の件数に応じた指標に基づき算出されており、
前記データベースには、前記スコアが、複数の前記分類の各々について、複数の評価基準日ごとに記録されており、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類と同じ前記分類で、かつ、前記評価対象基準日と同じ前記評価基準日に関連付けられた前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する、評価装置。
【請求項16】
複数の産業財産権について、特定の手続に関連付けられた所定の日付と、各々に付された分類とが関連付けられて記録されたデータベースに接続され、前記データベースを参照して、評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類に属する前記産業財産権における前記所定の日付が前記評価対象基準日に属する前記産業財産権の件数に応じた指標に基づき、前記分類の評価を示すスコアを算出し、
算出された前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する、評価装置。
【請求項17】
前記件数に応じた指標は、前記件数または前記件数から算出される割合である、請求項1、請求項3、請求項12、請求項15または請求項16に記載の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業財産権に付与される分類を評価する評価装置に関連する。本発明は、産業財産権を評価する評価装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、産業財産権である特許権や実用新案権の価値を、特許公開公報、特許公報、公開実用新案公報または実用新案公報の内容から評価する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば特許に付与されている特許分類の数は、特許の技術的な適用性の広さを示す指標として、特許評価に用いられる。しかしながら、本発明者は、同一の特許分類が付与された特許の動向は、その特許分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映する指標として、評価に用いることができることに気が付いた。
【0005】
本発明の目的は、産業財産権に付与される分類を評価する方法および当該分類の評価に基づいて産業財産権を評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る評価装置は、
産業財産権の内容に応じて付与される分類について、前記分類と、評価基準日とに関連付けられて、前記分類の評価を示すスコアが記録されているデータベースに接続され、前記データベースに基づき評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記スコアは、前記分類に属する前記産業財産権における特定の手続に関連付けられた所定の日付が前記評価基準日より前に属する前記産業財産権の件数に応じた指標と前記評価基準日より後に属する前記産業財産権の件数に応じた指標との比較に基づき算出されており、
前記データベースには、前記スコアが、複数の前記分類の各々について、複数の評価基準日ごとに記録されており、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類と同じ前記分類で、かつ、前記評価対象基準日と同じ前記評価基準日に関連付けられた前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する。
【0007】
本発明の一態様に係る評価装置は、
複数の産業財産権について、特定の手続に関連付けられた所定の日付と、各々に付された分類とが関連付けられて記録されたデータベースに接続され、前記データベースを参照して、評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類に属する前記産業財産権における前記所定の日付が前記評価対象基準日より前に属する前記産業財産権の件数に応じた指標と前記評価対象基準日より後に属する前記産業財産権の件数に応じた指標との比較に基づき、前記分類の評価を示すスコアを算出し、
算出された前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する。
【0008】
本発明の一態様に係る評価装置は、
複数の産業財産権について、特定の手続に関連付けられた所定の日付と、各々に付された分類とが関連付けられて記録されたデータベースに接続され、分類ごとに、前記分類の評価を示すスコアを算出する評価装置であって、
前記評価装置は、前記データベースを参照し、前記分類に属する前記産業財産権における特定の手続に関連付けられた所定の日付が評価基準日より前に属する前記産業財産権の件数に応じた指標と前記評価基準日より後に属する前記産業財産権の件数に応じた指標との比較に基づき、前記スコアを算出し、
前記評価装置は、複数の前記分類の各々について、複数の評価基準日ごとに、前記スコアを算出する。
【0009】
本発明の一態様に係る評価装置は、
産業財産権の内容に応じて付与される分類について、前記分類と、評価基準日とに関連付けられて、前記分類の評価を示すスコアが記録されているデータベースに接続され、前記データベースに基づき評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記スコアは、前記分類に属する前記産業財産権における特定の手続に関連付けられた所定の日付が前記評価基準日に属する前記産業財産権の件数に応じた指標に基づき算出されており、
前記データベースには、前記スコアが、複数の前記分類の各々について、複数の評価基準日ごとに記録されており、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類と同じ前記分類で、かつ、前記評価対象基準日と同じ前記評価基準日に関連付けられた前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する。
【0010】
本発明の一態様に係る評価装置は、
複数の産業財産権について、特定の手続に関連付けられた所定の日付と、各々に付された分類とが関連付けられて記録されたデータベースに接続され、前記データベースを参照して、評価対象の産業財産権を評価する評価装置であって、
前記評価装置は、
前記評価対象の産業財産権の分類である評価分類と、評価対象基準日とを取得し、
前記データベースを参照して、前記評価分類に属する前記産業財産権における前記所定の日付が前記評価対象基準日に属する前記産業財産権の件数に応じた指標に基づき、前記分類の評価を示すスコアを算出し、
算出された前記スコアに基づいて、前記評価対象の産業財産権を評価する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、産業財産権に付与される分類を評価する方法および当該分類の評価に基づいて産業財産権を評価する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る評価装置の構成を例示している。
【
図2】
図2は、産業財産権情報データベースの一例を示している。
【
図3】
図3は、制御部により実行される分類のスコア算出処理の一例を示している。
【
図4】
図4は、分類A63F13/69,510が付与された特許の出願件数を示す出願件数テーブルの一例を示している。
【
図5】
図5は、
図4の出願件数テーブルの出願件数の推移と2010年を評価基準日として算出された平均変化率を示したグラフを示している。
【
図6】
図6は、スコアデータベースに含まれる出願件数に関するスコアテーブルの一例を示している。
【
図7】
図7は、
図4の出願件数テーブルの出願件数の推移と2016年を評価基準日として算出された平均変化率を示したグラフを示している。
【
図8】
図8は、分類評価データベースの一例を示している。
【
図9】
図9は、4年次から6年次の維持年金の納付期限が到来する、分類A63F13/69,510が付与された特許の放棄率を示す放棄率テーブルの一例を示している。
【
図10】
図10は、
図9の放棄率テーブルの放棄率の推移を示したグラフを示している。
【
図11】
図11は、制御部により実行される評価スコア算出処理の一例を示している。
【
図12】
図12は、顧客が評価を希望する案件のリストの一例を示している。
【
図13】
図13は、本実施形態の変形例に係る評価装置の構成を例示している。
【
図14】
図14は、制御部により実行される評価スコア算出処理の一例を示している。
【
図15】
図15は、分類とその分類に関する異議申立てがなされた回数とを示すテーブルの一例を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照しつつ、本発明に係る実施形態の例について、以下詳細に説明する。
【0014】
(分類評価)
図1は、本実施形態に係る評価装置10の構成を例示している。評価装置10は、産業財産権に付与される分類を評価するための装置である。評価装置10は、分類の評価を示すスコア(以下、分類のスコアと称する)を算出する。
【0015】
本明細書において用いられる「産業財産権」という用語は、登録された産業財産権だけでなく、申請中であって未登録の産業財産権も含む。以下では、申請中の産業財産権も含めて、単に産業財産権と称する。
【0016】
産業財産権に付与される分類は、特許に付与される分類、実用新案に付与される分類、意匠に付与される分類、商標に付与される区分が含まれる。分類は、産業財産権の内容に応じて付与されるものであり、一つの産業財産権に対して一つまたは複数の分類が付与される。産業財産権に付与された分類は、その産業財産権の公報に掲載される。例えば、日本の特許公開公報や特許公報には、分類として、国際特許分類(IPC)および日本独自の特許分類(FIやFターム)が掲載されている。
【0017】
スコアは、数値やアルファベットで表される。例えば、評価が高いほどスコアの数値が高くなるようにスコアが設定されうる。
【0018】
図1に例示されるように、評価装置10は、記憶部11と制御部12を備えている。制御部12は、ネットワークを介して記憶部11に通信可能に接続されている。なお、制御部12は、記憶部11とともに一つの装置をなす構成としてもよい。
【0019】
記憶部11は、産業財産権情報データベース111と分類評価データベース112を含んでいる。産業財産権情報データベース111には、複数の産業財産権に関する情報が記録されている。産業財産権に関する情報には、例えば、出願国、権利の種別、出願番号、登録番号、出願人、権利者、分類、出願日、優先日、公開日、審査請求日、登録日、異議申立日、放棄日、維持年金納付に関する情報(納付期限日、納付状況など)などが含まれる。出願日、優先日、公開日、審査請求日、登録日、異議申立日、放棄日、納付期限日は、特定の手続に関連付けられた所定の日付の一例である。
【0020】
なお、「特定の手続に関連付けられた所定の日付」とは、特定の手続きがなされた日付だけでなく、特定の手続きがなされなかったことにより確定した日付が含まれる。例えば、放棄日には、積極的に放棄手続きを行った日または放棄手続きにより放棄が確定した日だけでなく、特定の手続きを行わなかったことにより放棄が確定した日が含まれる。特定の手続きを行わなかったことにより放棄が確定した日には、たとえば、審査請求手続きや指令書に対する応答を行わず放棄が確定した日、維持年金納付手続きが行われず権利が失効した日などが含まれる。
【0021】
図2は、産業財産権情報データベース111の一例を示している。産業財産権情報データベース111には、産業財産権ごとに、管理番号、出願国、権利の種別、分類、出願番号、出願日、公開日、審査請求日、登録日、放棄日、出願人の情報が含まれている。なお、
図2において、権利の種別において、Pは特許であり、Uは実用新案を示している。
【0022】
例えば
図1に示されるように、評価装置10は、通信ネットワーク20を介して、特許庁システム30に通信可能に接続されている。例えば、評価装置10は、通信ネットワーク20を介して、特許庁システム30から、定期的に、新たに公開または登録された産業財産権に関する情報や更新された産業財産権に関する情報を取得し、産業財産権情報データベース111に記録する。
【0023】
分類評価データベース112には、産業財産権の内容に応じて付与される分類について、スコアが、分類と評価基準日とに関連付けられて記録されている。評価基準日とは、スコアを算出する基準となった日である。スコアは、後述するように、制御部12に算出されて、分類評価データベース112に記録される。
【0024】
制御部12は、各分類について、複数の評価基準日ごとに、スコアを算出するように構成されている。具体的には、制御部12は、産業財産権情報データベース111を参照し、分類に属する産業財産権における特定の手続に関連付けられた所定の日付が評価基準日より前に属する産業財産権の件数に応じた指標と評価基準日より後に属する産業財産権の件数に応じた指標との比較に基づき、スコアを算出する。そして、制御部12は、算出したスコアを、分類と評価基準日とに関連付けて、分類評価データベース112に書き込む。
【0025】
図3は、制御部12により実行される分類のスコア算出処理の一例を示している。
図3では、産業財産権の出願件数および出願日を用いて、産業財産権に付与される分類のスコアが算出される方法が示されている。出願日は、特定の手続に関連付けられた所定の日付の一例である。出願件数は、件数に応じた指標の一例である。
【0026】
まず、
図3に例示されるように、制御部12は、産業財産権情報データベース111を参照して、所定の分類に属する産業財産権の出願日および出願件数で構成される出願件数テーブルを作成する(STEP1)。
【0027】
図4は、分類A63F13/69,510が付与された特許の出願件数を示す出願件数テーブルの一例を示している。例えば、制御部12は、
図2に示される産業財産権情報データベース111に基づいて、2005年から2019年までの各年の出願件数を算出する。
【0028】
続いて、
図3に示されるように、制御部12は、出願件数テーブルを参照して、所定の評価基準日を基準とする出願件数のトレンド比を算出する(STEP2)。出願件数のトレンド比は、出願日が評価基準日より前に属する出願件数(以下、前出願件数とも称する)と、出願日が評価基準日より後に属する出願件数(以下、後出願件数とも称する)との比率を示す値である。例えば、制御部12は、前出願件数の平均変化率と後出願件数の平均変化率との比率を、出願件数のトレンド比として算出する。
【0029】
例えば、
図4に示される出願件数テーブルにおいて、評価基準日が2010年に設定された場合、制御部12は、前出願件数の平均変化率として、評価基準日から過去5年の間に出願された特許出願の出願件数の平均変化率を算出する。具体的には、2006年から2010年に出願された特許出願の出願件数の合計(18+5+12+10+8)を2006年から2010年までの期間(5)で除算する。これにより、前出願件数の平均変化率は10.6となる。なお、前出願件数の平均変化率を算出する期間は過去5年に限定されず、適宜設定されうる。
【0030】
また、制御部12は、後出願件数の平均変化率として、評価基準日以降に出願された特許出願の出願件数の平均変化率を算出する。具体的には、2011年から2019年に出願された特許出願の出願件数の合計を2011年から2019年までの期間で除算する。これにより、後出願件数の平均変化率は63となる。なお、後出願件数の平均変化率を算出する期間は評価基準日から直近までの期間に限定されず、適宜設定されうる。
【0031】
図5は、
図4の出願件数テーブルの出願件数の推移と2010年を評価基準日として算出された平均変化率を示したグラフである。
図5において、棒グラフは出願件数を示しており、実線の折れ線グラフは出願件数の累積件数を示している。なお、2005年までの累積件数は100件として算出している。また、破線の折れ線グラフの傾きは、2010年を評価基準日として算出された平均変化率を示している。
図5に示されるように、出願件数は、2011年までは少なく、2012年以降は増加しているので、2010年を評価基準日とする後出願件数の平均変化率(2010年以降の破線の折れ線グラフの傾き)は、前出願件数の平均変化率(2010年以前の折れ線グラフの傾き)よりも大きくなっている。
【0032】
制御部12は、2010年を評価基準とした場合の出願件数のトレンド比を、63/10.6=5.94として算出する。なお、本例においては、評価基準日である2010年は、前出願件数の平均変化率を算出する際に用いられているが、後出願件数の平均変化率を算出する際に用いられてもよい。
【0033】
続いて、
図3に示されるように、制御部12は、算出した出願件数のトレンド比をスコアに変換する(STEP3)。例えば、
図1に例示されるように、評価装置10は、スコアデータベース113を含んでいる。スコアデータベース113には、トレンド比からスコアを算出するためのスコアテーブルが記録されている。
【0034】
図6は、スコアデータベース113に含まれる出願件数に関するスコアテーブルの一例を示している。スコアテーブルには、出願件数のトレンド比に対応してスコアが設定されている。本例においては、スコアは、0から5の数値を用いて表されている。スコアは、出願件数のトレンド比の値が大きくなるほどスコアが高くなるように設定されている。
【0035】
制御部12は、
図6に示されるスコアテーブルを参照して、算出した出願件数のトレンド比をスコアに変換する。具体的には、上述のように分類A63F13/69,510において評価基準日が2010年であるトレンド比は5.94であるので、制御部12は、分類A63F13/69,510において評価基準日が2010年であるスコアを5として算出する。
【0036】
続いて、
図3に示されるように、制御部12は、全ての評価基準日に対してスコアが算出されるかを判断する(STEP4)。制御部12は、全ての評価基準日に対してスコアが算出されていないと判断すると(STEP4においてNO)、STEP2へ戻り、全ての評価基準日に対してスコアが算出されるまで、スコアの算出を繰り返す。
【0037】
本例においては、制御部12は、
図4に示される出願件数テーブルの各出願日(2005年から2019年までの出願された年)を評価基準日として設定し、各評価基準日を基準とするスコアが算出されるまで、STEP2およびSTEP3を繰り返す。
【0038】
例えば、
図4に示される出願件数テーブルにおいて、評価基準日が2016年である場合、前出願件数の平均変化率は、2012年から2016年に出願された特許出願の出願件数に基づいて88.2として算出される。後出願件数の平均変化率は、2017年から2019年に出願された特許出願の出願件数に基づいて37.67として算出される。これにより、2016年を評価基準とした場合のトレンド比は、37.67/88.2=0.43となり、
図6に示されるスコアテーブルにより、分類A63F13/69,510において評価基準日が2016年であるスコアは0として算出される。
【0039】
図7は、
図4の出願件数テーブルの出願件数の推移と2016年を評価基準日として算出された平均変化率を示したグラフである。
図7においては、棒グラフは出願件数を示しており、実線の折れ線グラフは出願件数の累積件数を示している。また、破線の折れ線グラフの傾きは、2016年を評価基準日として算出された平均変化率を示している。
図7に示されるように、出願件数は、2012年から2016年までは増加しているが、2017年以降は減少している。これにより、2016年を評価基準日とする後出願件数の平均変化率(2016年以降の破線の折れ線グラフの傾き)は、前出願件数の平均変化率(2016年以前の折れ線グラフの傾き)よりも小さくなっている。
【0040】
続いて、
図3に示されるように、制御部12は、全ての評価基準日に対してスコアが算出されたと判断すると(STEP4においてYES)、全ての分類に対してスコアが算出されたかを判断する(STEP5)。制御部12は、全ての分類に対してスコアが算出されていないと判断すると(STEP5においてNO)、STEP1に戻り、全ての分類に対してスコアが算出されるまで、スコアの算出を繰り返す。
【0041】
そして、制御部12は、全ての分類に対してスコアが算出されると(STEP5においてYES)、算出されたスコアを、対応する分類と評価基準日とに関連付けて、分類評価データベース112に記録する。なお、分類評価データベース112にスコアを記録するタイミングは、各分類または各評価基準日でスコアが算出される度に行われてもよい。
【0042】
図8は、分類評価データベース112の一例を示している。分類評価データベース112には、分類ごとに、評価基準日、スコアの情報が含まれている。本例においては、
図4に示される出願件数テーブルおよび
図5に示されるスコアテーブルを用いて算出された2005年から2019年までの各年を評価基準日とするスコアが記録されている。例えば、分類A63F13/69,510について、2010年の評価基準日のスコアとしては5が記録されており、2016年の評価基準日のスコアとしては0が記録されている。
【0043】
ここで、同一分類に属する産業財産権の出願件数は、その分類に属する産業分野の導入期、成長期、熟期または減退期に応じて変動する傾向にある。例えば、ある産業分野が導入期または成長期にある場合には、その産業分野が属する分類が付与される産業財産権の出願件数は増加する傾向にある。一方、例えば、ある産業分野が成熟期または減退期にある場合には、その産業分野が属する分類が付与される産業財産権の出願件数は一定または減少する傾向にある。したがって、同一分類に属する産業財産権の出願件数の動向は、その分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映する指標となりうる。
【0044】
本実施形態に係る評価装置10によれば、同一分類に属する産業財産権における評価基準日よりも前に出願された出願件数と評価基準日よりも後に出願された出願件数との比較に基づいて、分類のスコアが算出されている。換言すれば、評価基準日の前後に出願された同一分類に属する産業財産権の出願件数の動向に基づいて、分類が評価されている。したがって、分類の評価として、その分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態においては、トレンド比が大きいほど、すなわち、後出願件数の平均変化率が前出願件数の平均変化率より大きいほど、スコアが高くなるように設定されている。例えば、
図5に見られるように、評価基準日(2010年)よりも後に出願された出願の件数が増加している場合には、後出願件数の平均変化率は前出願件数の平均変化率より大きくなる。一方、
図7に見られるように、評価基準日(2016年)よりも後に出願された出願の件数が減少している場合には、後出願件数の平均変化率は前出願件数の平均変化率より小さくなる。したがって、後出願件数の平均変化率が前出願件数の平均変化率より大きいほどスコアが高くなるように設定することにより、分類の評価として、その分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態においては、特許の出願件数に基づいて分類の評価が行われている。しかしながら、
図2の管理番号No.1とNo.5に例示されるように、特許と実用新案に対しては同じ分類が付与される場合には、特許の出願件数および実用新案の出願件数に基づいて、分類の評価が行われてもよい。
【0047】
なお、本実施形態においては、出願件数に基づいて分類のスコアが算出されている。しかしながら、公開件数、審査請求件数、登録件数、異議申立件数、放棄件数などの出願以外の手続きに関する件数に基づいて、スコアが算出されてもよい。この場合、
図3のSTEP1において、出願件数テーブルの代わりに、各年の公開件数、審査請求件数、登録件数、異議申立件数または放棄件数を示す、所定の件数テーブルが作成される。そして、STEP2において所定の件数テーブルからトレンド比が算出されて、STEP3において算出されたトレンド比がスコアに変換される。なお、公開件数、審査請求件数、登録件数、または異議申立件数に関するスコアは、例えば、トレンド比の値が大きくなるほど高くなるように設定されうる。あるいは、放棄件数に関するスコアは、トレンド比の値が大きくなるほどスコアが低くなるように設定されうる。
【0048】
例えば、公開件数は、出願件数と同様に、その分類に属する産業分野の導入期、成長期、熟期または減退期に応じて変動する傾向にある。例えば、審査請求件数、登録件数、異議申立件数または放棄件数は、その分類に属する産業分野の実施可能性や注目度により変動する傾向にある。したがって、これらの件数を用いてスコアを算出する場合にも、分類の評価として、その分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。
【0049】
また、スコアの算出には、件数の代わりに、例えば件数から算出される割合が用いられてもよい。件数から算出される割合の例としては、放棄率などが含まれる。放棄率は、例えば、維持年金納付期限が到来した特許の全件数に対する放棄(維持年金不納により権利失効または積極的な放棄)された件数の割合であり、放棄件数/(放棄件数+納付件数)×100により算出されうる。
【0050】
図9は、4年次から6年次の維持年金が到来する、分類A63F13/69,510が付与された特許の放棄率を示す放棄率テーブルの一例を示している。
図10は、
図9の放棄率テーブルの放棄率の推移を示したグラフである。例えば、2003年に4年次から6年次の維持年金の納付期限が到来する特許については納付件数が36件および放棄件数8件である。したがって、放棄率は、8/(36+8)×100=18.2% となる。
【0051】
例えば、
図3のSTEP1において、
図9に示される放棄率テーブルが作成され、STEP2において放棄率テーブルからトレンド比が算出される。放棄率のトレンド比は、納付期限日が評価基準日より前に属する放棄率と、納付期限日が評価基準日より後に属する放棄率との比率により算出される。そして、STEP3において算出されたトレンド比がスコアに変換される。放棄率に関するスコアは、例えば、トレンド比の値が大きくなるほど低くなるように設定されうる。
【0052】
例えば、納付期限日が評価基準日よりも前の特許の放棄率よりも評価基準日よりも後の特許の放棄率が大きい場合は、評価基準日以降において、その分類に属する産業分野の分野が減退期にあり、評価基準日の時点は減衰期の手前であるとことが推測できる。したがって、放棄率などの件数から算出される割合を用いてスコアを算出する場合にも、分類の評価として、その分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。
【0053】
なお、
図9では、4年次から6年次の維持年金の納付期限が到来する特許についての放棄率を算出している。しかしながら、3年次以前や7年次以降の複数の年次の納付期限が到来する特許のグループついて放棄率を算出してもよく、ある年次のみの納付期限が到来する特許についての放棄率が算出されてもよい。
【0054】
(産業財産権の評価)
本実施形態に係る評価装置10は、評価対象の産業財産権に付与された分類(以下、評価分類と称する)の評価に基づいて、評価対象の産業財産権の評価を行うように構成されてもよい。
【0055】
具体的には、評価装置10は、分類評価データベース112を参照して、評価対象の産業財産権に付与された評価分類と同じ分類のスコアに基づいて、評価対象の産業財産権の評価を示すスコア(以下、評価スコアと称する)を算出するように構成されうる。評価スコアは、数値やアルファベットで表される。例えば、評価が高いほど、評価スコアの数値が高くなるように評価スコアが設定されうる。
【0056】
図11は、このように構成される制御部12により実行される評価スコア算出処理の一例を示している。
図11では、評価対象の産業財産権の出願日を用いて評価スコアが算出される方法が示されている。評価対象の産業財産権の出願日は、評価対象基準日の一例である。
【0057】
まず、制御部12は、評価対象基準日と、評価対象の産業財産権に付与された評価分類と、を取得する(STEP11)。例えば、
図1に示されるように、評価装置10は、通信ネットワーク20を介して、顧客の端末40に接続されている。評価装置10は、顧客の端末40から、通信ネットワーク20を介して、評価対象基準日および評価分類を含む評価対象の産業財産権に関する情報を取得する。なお、顧客の端末40とは、顧客が所有する端末であってもよいし、顧客がログインした自身が所有していない端末であってもよい。端末とは、パーソナルコンピュータでもよいし、タブレット端末、携帯電話端末であってもよい。
【0058】
図12は、顧客が評価を希望する案件のリストの一例を示している。案件リストは、顧客により顧客の端末40上で作成され、顧客の端末40から制御部12へ送信される。本例においては、案件リストには、ユーザ管理番号、出願国、産業財産権の種別、分類、出願番号、出願日、および出願人の情報が含まれている。本例においては、制御部12は、案件リストから、評価対象基準日である出願日が2010年であり、評価対象の特許に付与された評価分類がA63F13/69,510およびA63F13/69,520であると判断する。なお、
図12の案件リストには、一つの評価対象の産業財産権の情報のみが含まれているが、複数の評価対象の産業財産権の情報が含まれていてもよい。
【0059】
続いて、制御部12は、分類評価データベース112を参照して、評価分類と同じ分類で、かつ、評価対象基準日と同じ評価基準日に関連付けられた、分類のスコアを取得する(STEP12)。本例においては、評価対象基準日が2010年であり、評価分類がA63F13/69,510およびA63F13/69,520であるので、制御部12は、
図8に示される分類評価データベース112を参照して、分類A63F13/69,510の評価対象日が2010年であるスコア(5)と、分類A63F13/69,520の評価対象日が2010年であるスコア(4)を取得する。
【0060】
続いて、制御部12は、取得した分類のスコアに基づいて、評価対象の産業財産権の評価スコアを算出する(STEP13)。本例においては、評価分類は二つ存在する(A63F13/69,510およびA63F13/69,520)ので、分類のスコアも二つ存在する(5および4)。制御部12は、例えば、複数の分類のスコアのうち最大の値を示すスコアを、評価対象の産業財産権の評価スコアとして用いる。本例においては、分類A63F13/69,520のスコア(4)よりも、分類A63F13/69,510のスコア(5)が大きいので、制御部12は、評価対象の特許の評価スコアを5として算出する。
【0061】
本実施形態の評価装置10によれば、評価対象の産業財産権に付与された評価分類の評価に基づいて評価対象の産業財産権が評価されるので、評価分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、制御部12は、複数の分類のスコアの中で最大の値を示すスコアに基づいて、評価対象の産業財産権の評価スコアを算出している。しかしながら、制御部12は、複数の分類のスコアの平均値に基づいて、評価スコアを算出するように構成されてもよい。このようにスコアの平均値を用いることにより、評価対象の産業財産権を総合的に評価できる。あるいは、平均値の代わりに、複数の分類のスコアの中央値やその他統計値に基づいて、評価スコアを算出するように構成されてもよい。あるいは、制御部12は、分類のスコアを算出するために用いられた出願件数が所定の数に満たない場合には、当該分類のスコアを考慮しないように構成されてもよい。これにより、評価対象の産業財産権の評価の精度の低下を抑制できる。
【0063】
(産業財産権の評価の変形例)
本実施形態に係る評価装置10は、評価対象の産業財産権の評価を行う際に、分類評価データベース112を参照して、予め算出された複数の分類のスコアの中から評価対象の産業財産権に付与された評価分類と同じ分類のスコアを取得している。しかしながら、評価装置10は、評価対象の産業財産権の評価を行う際に、評価対象の産業財産権に付与された評価分類のスコアを算出するように構成されてもよい。
【0064】
図13は、本実施形態の変形例に係る評価装置100の構成を例示している。なお、評価装置10の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0065】
評価装置100は、評価対象の産業財産権の評価を行う際に、評価対象の産業財産権に付与された評価分類の評価を行い、当該分類の評価に基づいて評価対象の産業財産権の評価を行うように構成されている。
【0066】
図13に例示されるように、評価装置100は、記憶部101と制御部102を備えている。制御部102は、ネットワークを介して記憶部101に通信可能に接続されている。なお、制御部102は、記憶部101とともに一つの装置をなす構成としてもよい。
【0067】
記憶部101は、産業財産権情報データベース111とスコアデータベース113を含んでいる。産業財産権情報データベース111には、複数の産業財産権に関する情報が記録されている。スコアデータベース113には、トレンド比から評価分類のスコアを算出するためのスコアテーブルが記録されている。
【0068】
図14は、制御部12により実行される評価スコア算出処理の一例を示している。
図14では、評価対象の産業財産権に付与された評価分類と同じ分類に属する産業財産権の出願件数および出願日と評価対象の産業財産権の出願日とを用いて、評価対象の産業財産権に付与された評価分類のスコアが算出される方法が示されている。出願日は、特定の手続に関連付けられた所定の日付の一例である。出願件数は、件数に応じた指標の一例である。評価対象の産業財産権の出願日は、評価対象基準日の一例である。
【0069】
まず、制御部12は、評価対象基準日と、評価対象の産業財産権に付与された評価分類と、を取得する(STEP21)。例えば、
図13に示されるように、評価装置10は、通信ネットワーク20を介して、顧客の端末40から取得した案件リストから、評価分類および評価対象基準日を含む評価対象の産業財産権に関する情報を取得する。例えば、
図12に示される案件リストから、制御部12は、評価対象基準日である出願日が2010年であり、評価対象の特許に付与された評価分類がA63F13/69,510およびA63F13/69,520であると判断する。
【0070】
続いて、制御部12は、産業財産権情報データベース111を参照して、評価分類と同じ分類に属する産業財産権の出願日および出願件数で構成される出願件数テーブルを作成する(STEP22)。本例においては、制御部12は、
図2に示される産業財産権情報データベース111を参照して、例えば、
図4に示される分類A63F13/69,510の出願件数テーブルを作成する。
【0071】
続いて、制御部12は、出願件数テーブルを参照して、評価対象基準日を基準とする出願件数のトレンド比を算出し(STEP23)、算出した出願件数のトレンド比をスコアに変換する(STEP24)。
【0072】
例えば、
図4に示される出願件数テーブルにおいて、制御部12は、前出願件数の平均変化率として、評価対象基準日である2010年から過去5年の間に出願された特許出願の出願件数の平均変化率を算出する。具体的には、2006年から2010年に出願された特許出願の出願件数の合計を2006年から2010年までの期間で除算する。これにより、前出願件数の平均変化率は10.6となる。
【0073】
また、制御部12は、後出願件数の平均変化率として、評価対象基準日である2010年以降に出願された特許出願の出願件数の平均変化率を算出する。具体的には、2011年から2019年に出願された特許出願の出願件数の合計を2011年から2019年までの期間で除算する。これにより、後出願件数の平均変化率は63となる。したがって、制御部12は、トレンド比を、5.94として算出する。
【0074】
そして、制御部12は、
図6に示されるスコアテーブルを参照し、評価分類である分類A63F13/69,510のスコアを5として算出する。
【0075】
続いて、
図14に示されるように、制御部12は、全ての評価分類に対してスコアが算出されるかを判断する(STEP25)。制御部12は、全ての評価分類に対してスコアが算出されていないと判断すると(STEP25においてNO)、STEP22へ戻り、全ての評価分類に対してスコアが算出されるまで、スコアの算出を繰り返す。
【0076】
例えば、
図12に示されるように、評価対象の産業財産権は、分類A63F13/69,510に加えて、分類A63F13/69,520も付与されている。したがって、制御部12は、評価対象である分類A63F13/69,520についても出願件数テーブルを作成する。そして、制御部12は、評価対象基準日である2010年を基準とする出願件数のトレンド比を求めて、
図6に示されるスコアテーブルを参照し、分類A63F13/69,520のスコアを算出する。
【0077】
そして、制御部12は、全ての評価分類に対してスコアが算出されると(STEP25においてYES)、算出された評価分類のスコアに基づいて、評価対象の産業財産権の評価スコアを算出する(STEP26)。本例のように、複数の評価分類が存在する場合には、制御部12は、例えば複数の評価分類のスコアのうち最大の値を示すスコアを、評価対象の産業財産権の評価スコアとして用いる。
【0078】
本実施形態の評価装置100によれば、評価対象の産業財産権に付与された評価分類の評価に基づいて評価対象の産業財産権が評価されるので、評価分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。また、評価対象の産業財産権に付与された評価分類についてのみスコアが算出されるので、評価対象の産業財産権に付与された評価分類以外の分類についてもスコアを算出する場合に比べて、制御部12の処理負担を減らすことができる。
【0079】
なお、本実施形態においては、出願件数に基づいて評価分類のスコアが算出されている。しかしながら、公開件数、審査請求件数、登録件数、異議申立件数、放棄件数などに基づいて、評価分類のスコアが算出されてもよい。あるいは、件数から算出される割合に基づいて、評価分類のスコアが算出されてもよい。件数から算出される割合の例としては、放棄率、占有率などが含まれる。占有率は、例えば、全出願件数に対する特定の出願人の出願件数の割合であり、特定の出願人の出願件数/全出願件数×100により算出されうる。占有率に基づいて評価分類のスコアが算出される場合には、制御部12は、
図12に示されるように評価対象の産業財産権に関する情報から出願人の情報を取得する。例えば、評価対象基準日よりも前に出願された特定の出願人の占有率よりも評価対象基準日よりも後に出願された特定の出願人の占有率が大きい場合は、評価基準日以降において、その分類に属する産業分野の分野における出願人による独占率が高くなっていることが推測できる。したがって、件数から算出される割合を用いて評価分類のスコアを算出する場合にも、その分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。
【0080】
これまで説明した様々な機能を有する制御部12および制御部102は、プロセッサ、非一時的記録手段、および一時的記録手段を備えている。非一時的記録手段、および一時的記録手段は、汎用メモリにより実現されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラム(コンピュータ可読命令)が記憶されうる。プロセッサは、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、無線通信ネットワークを介して外部サーバ装置からダウンロードされた後、汎用メモリにインストールされてもよい。
【0081】
プロセッサは、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。各プロセッサは、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0083】
上記の実施形態においては、評価装置10と評価装置100により、産業財産権の一例として、特許の分類の評価および特許の評価を行う方法について説明した。しかしながら、評価装置10と評価装置100は、特許の代わりにまたは加えて、実用新案、意匠または商標における分類の評価および実用新案、意匠または商標の評価を行うように構成されうる。
【0084】
上記の実施形態においては、評価装置10と評価装置100は、評価分類のスコアのみに基づいて評価対象の産業財産権の評価スコアを算出している。しかしながら、評価装置10と評価装置100は、評価分類のスコアに加えてさらに他の指標に基づいて、評価対象の産業財産権の評価スコアを算出するように構成されてもよい。
【0085】
上記の実施形態においては、評価基準日または評価対象基準日は、年単位で設定されている。しかしながら、評価基準日または評価対象基準日は、月単位、または、日単位で設定されてもよい。
【0086】
上記の実施形態においては、評価基準日は、所定の間隔ごと(本例においては、年単位)に設定されている。しかしながら、評価基準日は、例えば、ある期間は半年ごとに設定され、他の期間は年ごとに設定されてもよい。
【0087】
上記の実施形態においては、評価装置10と評価装置100は、日本の産業財産権について、分類の評価および評価対象の産業財産権の評価を行っている。しかしながら、評価装置10と評価装置100は、日本に代えてまたは加えて、外国の産業財産権について、分類の評価および評価対象の産業財産権の評価を行うように構成されてもよい。
【0088】
上記の実施形態においては、一つの産業財産権を1件としてカウントしている。しかしながら、ファミリーである複数の産業財産権を1件としてカウントしてもよい。ファミリーの例としては、分割出願と当該分割出願の元になった原出願、あるいは、最初に第一国で出願された出願と当該出願の優先権に基づく第二国での出願(例えば日本出願と当該日本出願の優先権に基づく外国出願)、PCT(Patent Cooperation Treaty)などの国際出願の移行国の出願群、EPなどの広域出願の指定国の出願群などが挙げられる。例えば、原出願と分割出願をそれぞれ1件として合計2件としてカウントするのではなく、原出願と分割出願をまとめて1件としてカウントする。
【0089】
上記の実施形態において、産業財産権情報データベース111は、評価装置10の記録部11に含まれているが、産業財産権情報データベース111は、評価装置10の外部に設けられてもよい。同様に、産業財産権情報データベース111は、評価装置100の記憶部101に含まれているが、評価装置100の外部に設けられてもよい。この場合、産業財産権情報データベース111は、例えば、特許庁システム30内に配置されうる。あるいは、産業財産権情報データベース111は、例えば、特許庁システム30から取得されたデータまたは当該データが加工されたデータが記録されたデータベース(例えば、商用データベースや評価装置10を使用する企業により作成されるデータベース)でもよい。評価装置10と評価装置100は、通信ネットワーク20を介して、産業財産権情報データベース111を参照するように構成されうる。
【0090】
上記の実施形態において、評価装置10と評価装置100は、分類の評価および評価対象の産業財産権の評価に加えて、他の手続きに関する処理を行うように構成されうる。例えば、評価装置10と評価装置100が産業財産権を維持するための維持年金の納付の管理を行う管理会社により使用される場合、評価装置10と評価装置100は、産業財産権の維持年金の納付の問い合わせを行うとともに、当該問い合わせ対象の産業財産権の評価スコアを算出し、算出した評価スコアを顧客に通知するように構成されうる。これにより、出願人または権利者は、評価スコアを参照しながら、維持年金納付の判断を行うことができる。なお、この場合、評価対象の産業財産権に関する情報は、記憶部11,101内に含まれる管理案件データベースから取得されうる。
【0091】
上記の実施形態においては、評価装置10と評価装置100は、評価対象の産業財産権の出願日を評価対象基準日に設定している。しかしながら、評価対象基準日は、評価対象の産業財産権における出願日とは異なる手続きに関連する日付に設定されてもよい。あるいは、評価対象基準日は、評価対象の産業財産権における手続きに関連する日付とは異なる日付に設定されてもよい。例えば、評価を行う日の直近の日を評価対象基準日に設定してもよい。例えば、
図5に示されるように評価対象の産業財産権の出願日(2010年)以降に急激に出願件数が伸びたものの、直近の出願件数が少なく、その分類が属する産業分野が衰退期を迎えている場合がある。この場合、評価対象の産業財産権の出願日(2010年)を評価対象基準日と設定すると評価分類のスコアは高くなり(例えば
図8に示されるように5となる)、2017年以降の出願件数の減少の影響を余り受けない。一方、例えば、
図7に示されるように、評価対象の産業財産権の出願日(2010年)よりも後の2016年を評価対象基準日とすると、評価分類のスコアは低くなり(例えば
図8に示されるように0となる)、2017年以降の出願件数の減少が反映される。このように、直近の日を評価対象基準日に設定することにより、評価分類に属する産業分野の直近の動向を反映して分類の評価を行うことができる。
【0092】
上記の実施形態において、評価装置10と評価装置100は、評価対象の産業財産権に付与された分類に利用廃止された分類が含まれている場合、評価対象の産業財産権の評価を行う際には利用廃止された分類のスコアは考慮されないように構成されてもよい。例えば、評価装置10と評価装置100は、利用廃止された分類のスコアを算出しないように構成されうる。あるいは、評価装置10と評価装置100は、分類のスコアを算出し、評価対象の産業財産権の評価を行う際に、利用廃止された分類のスコアを参照しないように構成されうる。なお、利用廃止された分類の情報については、特許庁システム30から取得可能である。例えば、評価装置10と評価装置100は、特許庁システム30から利用廃止された分類の情報を取得し、記憶部11に利用廃止された分類を記録するように構成されうる。
【0093】
例えば分類が廃止されている場合でも、特許庁システム30が提供する産業財産権に関する情報には廃止された分類は削除されずに残されたままの可能性がある。したがって、例えば廃止された分類について出願件数テーブルを作成する場合、分類が廃止された年以降の出願件数が0となるため、分類のスコアの評価の精度が低下する。したがって、廃止された分類を評価スコア算出に利用しないことにより、評価スコアの評価の精度の低下を抑制できる。
【0094】
上記の実施形態において、評価装置10と評価装置100は、評価対象の産業財産権に付与された分類が新設されてから所定期間経過していない場合、評価対象の産業財産権の評価スコアを算出する際には新設されてから所定期間経過していない分類のスコアは考慮されないように構成されてもよい。例えば、評価装置10と評価装置100は、新設された分類のスコアを算出しないように構成されうる。あるいは、例えば、評価装置10と評価装置100は、分類のスコアを算出した後、当該分類が新設された分類であると判断した場合には、評価対象の産業財産権の評価を行う際に、新設された分類のスコアを参照しないように構成されうる。なお、新設された分類の情報については、特許庁システム30から取得可能である。例えば、評価装置10と評価装置100は、特許庁システム30から新設された分類の情報を取得し、記憶部11に新設された分類を記録するように構成されうる。
【0095】
例えば新設された分類は過去の出願に対して遡及して再付与が行われるが、再付与までには数年かかる場合もある。したがって、例えば新設された分類について出願件数テーブルを作成する場合、新設された年以前の出願件数が0となるため、分類のスコアの評価の精度が低下する。したがって、新設された分類の評価については一定期間、評価スコアの算出に利用しないことにより、評価スコアの評価精度の低下を抑制できる。
【0096】
上記の実施形態においては、評価装置10と評価装置100は、評価対象基準日の前後に属する評価分類と同じ分類が付与された産業財産権の件数に応じた指標の比較に基づいて評価分類のスコアを算出している。しかしながら、評価装置10は、評価対象基準日に属する評価分類と同じ分類が付与された産業財産権の件数に応じた指標に基づいて評価分類のスコアを算出されるように構成されてもよい。この場合、
図4に示される出願件数データベースは作成されない。制御部12は、産業財産権情報データベース111を参照して、例えば評価対象基準日に出願された評価分類と同じ分類が付与された産業財産権の出願件数を算出し、算出された出願件数に基づいて評価分類のスコアを算出する。評価分類のスコアは、例えば、出願件数が多いほどスコアが高くなるように設定されうる。例えば
図5に示される出願件数において、2019年を評価対象基準日として設定し、2019年に出願された出願件数に基づいて評価分類のスコアが算出されてもよい。あるいは、例えば
図10に示される放棄率において、2022年を評価対象基準日として設定し、2022年に放棄された割合に基づいて評価分類のスコアが算出されてもよい。
【0097】
上記の実施形態において、評価装置10と評価装置100は、評価対象の産業財産権の評価分類と同じ分類に関する特定の手続きの回数に基づいて、評価対象の産業財産権を評価するように構成されてもよい。特定の手続きの回数の例としては、異議申立てがなされた回数、情報提供がなされた回数、訴訟が提起された回数または無効審判が行われた回数などが挙げられる。例えば、
図15に示されるように、評価装置10と評価装置100は、分類とその分類に関する異議申立てがなされた回数とが関連付けて記録されたテーブルを参照して、評価分類のスコアを算出するように構成されてもよい。例えば、異議申立て回数、情報提供回数、訴訟回数または無効審判回数が多い分類に属しているほど、その分類に属する産業分野の注目度が高いことを推測できる。したがって、特定の手続きの回数を用いてスコアを算出する場合にも、その分類に属する産業分野の流行りや廃りを反映した評価を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
10 評価装置
11 記憶部
12 制御部
20 通信ネットワーク
30 特許庁システム
40 顧客の端末
100 評価装置
101 記憶部
102 制御部
111 産業財産権情報データベース
112 分類評価データベース
113 スコアデータベース