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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025388
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】車両用成形材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/24 20060101AFI20240216BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20240216BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B32B5/24
B32B27/12
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128775
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 正義
(72)【発明者】
【氏名】曾根 陽平
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA05
3D023BA07
3D023BB03
3D023BB21
3D023BB30
3D023BC01
3D023BD01
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AG00C
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK07
4F100AK07B
4F100AK25
4F100AK25D
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AT00B
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00D
4F100CB05
4F100CB05D
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01C
4F100DG15
4F100DG15A
4F100DG15C
4F100EJ42
4F100GB31
4F100JB16
4F100JB16B
4F100JH01
4F100JJ02
4F100JK04
4F100JL11
4F100JL11D
4F100JL13
4F100JL13D
(57)【要約】
【課題】車体の剛性性能と制振性能の向上を図ることができる車両用成形材を提供する。
【解決手段】車体パネルPと車両用内装材の間に配設される車両用成形材1である。車両用成形材1は、車体パネルの表面に沿った面形状の芯材5および芯材5の両面に積層された繊維層6,7を含んで、合成樹脂13で固化された成形体を有する。成形体の車体パネル側の全面には、車体パネルPと接する表面同士を接合可能な接合層9が積層されている。車両用成形材1は、車体パネルPに対し接合層9によって面接着されることで、車体パネルPの面剛性を補う補強部材として機能する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルと車両用内装材の間に配設される車両用成形材であって、
前記車体パネルの表面に沿った面形状の芯材と、前記芯材の両面に積層された繊維層とを含み、合成樹脂で固化された成形体と、
前記成形体の前記車体パネル側の全面に積層され、前記車体パネルと接する表面同士を接合可能な接合層と、を有し、
前記車体パネルに対し前記接合層によって面接着されることで、前記車体パネルの面剛性を補う補強部材として機能する、車両用成形材。
【請求項2】
車体パネルと車両用内装材の間に配設される車両用成形材であって、
熱可塑性樹脂で固化された繊維成形体からなり、前記車体パネルの表面に沿った面形状の芯材と、
前記成形体の前記車体パネル側の全面に積層され、前記車体パネルと接する表面同士を接合可能な接合層と、を有し、
前記車体パネルに対し前記接合層によって面接着されることで、前記車体パネルの面剛性を補う補強部材として機能する、車両用成形材。
【請求項3】
請求項1に記載された車両用成形材であって、
前記成形体は、
ウレタン樹脂を含んだ前記芯材と、
前記芯材の前記車体パネル側の面に熱硬化性樹脂を介して積層された、ガラス繊維を含む第1の繊維層と、
前記芯材の前記車両用内装材側の面に熱硬化性樹脂を介して積層された、ガラス繊維を含む第2の繊維層と、を有し、
前記第1の繊維層と前記接合層との間において、熱可塑性の接合用フィルムと前記接合用フィルムの前記接合層側の面に積層された保護用不織布とを有する、車両用成形材。
【請求項4】
請求項1に記載された車両用成形材であって、
前記成形体は、
ガラス繊維と熱可塑性樹脂を含んだ前記芯材と、
不織布からなる前記繊維層と、を有する、車両用成形材。
【請求項5】
請求項3に記載された車両用成形材であって、
前記第2の繊維層の前記車両用内装材側の面に積層された不織布層を有する、車両用成形材。
【請求項6】
請求項5に記載された車両用成形材であって、
前記不織布層の前記車両用内装材側に積層された遮熱フィルムを有する、車両用成形材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載された車両用成形材であって、
前記車体パネルは、車体の天井パネルであり、
前記天井パネルに対し前記接合層によって面接着される、車両用成形材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用成形材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の天井パネル等に、制振、遮音、断熱等の目的で種々の芯材が貼り合わされた構造が知られている。例えば、天井パネルにアスファルト制振材が貼りつけられた構造、段ボールの芯材が両面テープで天井パネルに貼りつけられた構造等がある。これらの天井パネルには、リンフォースメントと呼ばれる鉄製部材が複数架け渡されており、車体の剛性が確保されている。
【0003】
しかしながら、アスファルト制振材は重量が重く、天井パネルに対して貼り付けられる面積が制限される。そのため、車体の制振効果や面剛性が部分的になってしまう。また、段ボールの芯材は天井パネルの形状に合わせて賦形されたものではなく、歪み等の不具合が発生し易い。そこで、特許文献1には、複数のリンフォースメントを備えた天井パネルと基材の間に、発泡成形体が配設された構造が開示されている。この発泡成形体は、リンフォースメントを含む天井パネルの起伏に沿った形状とされ、リンフォースメントを覆うように配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5819699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように発泡成形体が車体パネルと基材の間に配設された構成では、制振効果は発揮されるが、面剛性の効果は小さいと考えられる。そこで、車体の面剛性と制振性能の両方を確保できる車両用成形材が望まれている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車体の剛性性能と制振性能の向上を図ることができる車両用成形材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用成形材の一つの特徴は、車体パネルと車両用内装材の間に配設される車両用成形材であって、前記車体パネルの表面に沿った面形状の芯材と、前記芯材の両面に積層された繊維層とを含み、合成樹脂で固化された成形体と、前記成形体の前記車体パネル側の全面に積層され、前記車体パネルと接する表面同士を接合可能な接合層とを有し、前記車体パネルに対し前記接合層によって面接着されることで、前記車体パネルの面剛性を補う補強部材として機能する。
【0008】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形材は、芯材の両面に繊維層が積層されて合成樹脂で固化された構成とされ、車体パネルの形状に合わせて任意の形状に賦形されている。車両用成形材は、車体パネルに対して接合層によって面接着されることで、車体パネルの面剛性を補う補強部材として機能する。これにより、車体パネルの強度の向上を図ることができる。また、車両用成形材と車体パネルの間において隙間の発生を抑えることができ、車体の制振性能の向上を図ることができる。さらに車両用成形材は、芯材と繊維層とが積層された構成であり、より広い面積で車体パネルに張り付けた場合であっても重量の増加を抑えることができる。すなわち、車体パネルの全面に対して車両用成形材を貼り付けることができ、車体パネルの全面に亘り面剛性と制振性能の効果を発揮させることができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用成形材の一つの特徴は、車体パネルと車両用内装材の間に配設される車両用成形材であって、熱可塑性樹脂で固化された繊維成形体からなり、前記車体パネルの表面に沿った面形状の芯材と、前記成形体の前記車体パネル側の全面に積層され、前記車体パネルと接する表面同士を接合可能な接合層とを有し、前記車体パネルに対し前記接合層によって面接着されることで、前記車体パネルの面剛性を補う補強部材として機能する。
【0010】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形材の芯材は、熱可塑性樹脂で固化された繊維成形体から構成され、車体パネルの形状に合わせて任意の形状に賦形されている。車両用成形材は、車体パネルに対して接合層によって面接着されることで、車体パネルの面剛性を補う補強部材として機能する。これにより、車体パネルの強度の向上を図ることができる。また、車両用成形材と車体パネルの間において車体パネルの全面に亘り隙間の発生を抑えることができ、車体の制振性能の向上を図ることができる。さらに、芯材を構成する繊維成形体は、より広い面積で車体パネルに張り付けた場合であっても重量の増加を抑えることができる。すなわち、車体パネルの全面に対して車両用成形材を貼り付けることができ、車体パネルの全面に亘り面剛性と制振性能の効果を発揮させることができる。
【0011】
上記車両用成形材について、前記成形体は、ウレタン樹脂を含んだ前記芯材と、前記芯材の前記車体パネル側の面に熱硬化性樹脂を介して積層された、ガラス繊維を含む第1の繊維層と、前記芯材の前記車両用内装材側の面に熱硬化性樹脂を介して積層された、ガラス繊維を含む第2の繊維層とを有し、前記第1の繊維層と前記接合層との間において、熱可塑性の接合用フィルムと前記接合用フィルムの前記接合層側の面に積層された保護用不織布とを有する構成であっても良い。
【0012】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形材は、ウレタン樹脂を含んだ芯材の両面に、ガラス繊維を含んだ第1と第2の繊維層が積層され、これらが熱硬化性樹脂によって接合し、一体に賦形されている。これにより、車両用成形材の形状が維持され、剛性をより高めることができる。よって、車両用成形材は車体パネルの面剛性を補う補強部材として機能し、鉄製の補強部材が少ない車体であっても、車体パネルの強度を確保することができる。すなわち、車両用成形材が補う強度に相当する鉄製の補強部材を減らした構成とすることができる。また、車両用成形材は、鉄製の補強部材よりも比重の軽い芯材と繊維層とが積層された構成である。そのため、車両用成形材を車体パネルと車両用内装材の間の制限された空間内に配設した場合、その部位における重量を減らすことができる。よって、車体パネルの面剛性向上と制振性能向上に加え、車体の軽量化を図ることができる。
【0013】
上記車両用成形材について、前記成形体は、ガラス繊維と熱可塑性樹脂を含んだ前記芯材と、不織布からなる前記繊維層と、を有する構成であっても良い。
【0014】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形材は、ガラス繊維と熱可塑性樹脂を含んだ芯材の両面に、不織布からなる繊維層が積層され、これらが一体に賦形されている。この車両用成形材を配設することにより、車体パネルの制振性能をより高めることができる。
【0015】
上記車両用成形材について、前記第2の繊維層の前記車両用内装材側の面に積層された不織布層を有する構成であっても良い。
【0016】
上記構成の一つの特徴及び利点は、第2の繊維層の車両用内装材側の面に、不織布層が設けられている。これにより、車両用成形材の吸音性能、遮音性能を高めることができる。
【0017】
上記車両用成形材について、前記不織布層の前記車両用内装材側に積層された遮熱フィルムを有する構成であっても良い。
【0018】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形材の車両用内装材側に遮熱フィルムが設けられている。これにより、車両用成形材の断熱性能をより高めることができる。
【0019】
上記車両用成形材について、前記車体パネルは車体の天井パネルであり、前記天井パネルに対し前記接合層によって面接着される構成であっても良い。
【0020】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用成形材が車体の天井パネルに配設され、天井パネルの面剛性を補う補強部材として機能する。車体の中でも大きな面積を占める天井パネルに車両用成形材を配設することにより、効果的に車体パネルの剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記構成をとることにより、車体の剛性性能と制振性能の向上を図ることができる車両用成形材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】車体の天井部分の骨格と天井パネルに貼り付けられた車両用成形材を、車室内の後方からみた図である。
図2】第1実施形態に係る車両用成形材の材料構成を示す縦断面図である。
図3】車両用成形材の車両用内装材側に遮熱フィルムを積層した例を示す図である。
図4】第2実施形態に係る車両用成形材の材料構成を示す縦断面図である。
図5】第3実施形態に係る車両用成形材の材料構成を示す縦断面図である。
図6】車両用成形材の評価試験方法を示す図である。
図7】車両用成形材の剛性性能を示す図である。
図8】車両用成形材の制振性能を示す図である。
図9】車両用成形材の断熱性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。本実施形態に係る車両用成形材として、車体の天井パネルP(車体パネル)に貼り合わされる天井用成形材1について説明する。図1に示すように、天井パネルPには、補強部材としてリンフォースメントRが車体の左右方向にかけ渡されている。リンフォースメントRの本数は、必要な車体の屋根の強度に応じて設定される。天井パネルPには、例えばこのリンフォースメントRで区切られた領域ごとに天井用成形材1を貼り合わせることができる。
【0024】
天井用成形材1は、車体の天井の厚さ方向において、天井パネルPと天井内装材(不図示)の間に配設される。図2に示すように、天井用成形材1は、芯材5と、芯材5の両面に積層された第1及び第2の繊維層6,7を含み、熱硬化性樹脂で固化された成形体を備えている。そして、成形体における第1の繊維層6の天井パネルP側(図2において示す上側)の全面には、境界層8と接合層9が積層されている。第2の繊維層7の天井内装材側(図2において示す下側)には、不織布層12が積層されている。
【0025】
芯材5は、天井用成形材1の形状保持と剛性確保のために設けられており、天井パネルPの表面に沿った面形状に成形されている。本実施形態に係る芯材5は、ウレタン樹脂発泡体からなる半硬質層のウレタンフォームが選択される。
【0026】
芯材5の天井パネルP側の面には第1の繊維層6が、天井内装材側の面には第2の繊維層7が、それぞれ熱硬化性接着剤13(熱硬化性樹脂)を介して積層されている。第1及び第2の繊維層6,7は、天井用成形材1の形状保持と剛性確保のために設けられている。これらの繊維層6,7は、表面に熱硬化性接着剤13が塗布、または含浸されており、芯材5の両面にそれぞれ接着されている。第1及び第2の繊維層6,7には、ガラス繊維マットが選択される。ガラス繊維マットは、無機繊維であるガラス繊維を適宜の長さに切断したチョップドストランドを適宜バインダーで固めることによりシート状に形成されている。
【0027】
これらの繊維層6,7は、ガラス繊維を切断することなくバインダーで固めたもの(コンテイニアスマット)であっても良い。またこれに代えて、スパンレース、スパンボンド不織布、ガラスペーパー、ガラス繊維織布でも良い。また、実施形態における目付量は、要求される強度、その他の種々の条件に適合するように目付量を選択し得る。
【0028】
これらの繊維層6,7に用いる繊維補強材は、チョップドストランド等の無機繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択して、アクリル等のバインダーまたはニードル加工によってシート状、マット状にしたものでも良い。
【0029】
熱硬化性接着剤13は、イソシアネート樹脂からなる熱硬化性樹脂が選択される。イソシアネートは、半硬質層のウレタンフォームからなる芯材5となじみやすいという観点から好適である。なお、熱硬化性接着剤13は、イソシアネート樹脂に限られず適宜選択できる。熱硬化性接着剤13は、スプレー、ロールコーター等によって塗布される。上記のように、熱硬化性樹脂を含んだ繊維層6,7と芯材5を積層させた構成とすることにより、天井用成形材1の強度を高めることができる。
【0030】
第1の繊維層6の天井パネルP側の面には、境界層8と接合層9が積層されている。接合層9は、天井用成形材1を天井パネルPに貼り合わせるために設けられている。また、境界層8は、第1の繊維層6と接合層9の間に積層されている。接合層9は、目付が粗いガラス繊維マット(第1の繊維層6)に接合層9としての粘着剤を直接塗布するのは困難であるため、境界層8を介して第1の繊維層6に積層されている。
【0031】
境界層8は、熱可塑性の接合用フィルム15と、保護用不織布16からなる2層の積層体で構成されている。接合用フィルム15には、例えばポリプロピレンフィルムが選択される。この接合用フィルム15によって、第1の繊維層6と保護用不織布16が接合されている。保護用不織布16には、例えばスパンボンド不織布が選択される。スパンボンド不織布は、粘着剤の付きが良く好適である。また、不織布が接着剤で固められており、天井用成形材1の剛性に寄与する。
【0032】
接合層9は、天井パネルPと接する表面同士を接合可能な構成とされる。具体的には、接合層9は、天井パネルPの表面と接着して、芯材5に繊維層6,7が積層された成形体を、天井パネルPに接合させることができる。接合層9として、例えばアクリル系粘着剤が選択される。粘着剤は、境界層8における保護用不織布16の表面に塗布されている。また接合層9には、スパイラル塗布、接着剤、テープ等を選択できる。
【0033】
第2の繊維層7の天井内装材側には不織布層12が積層されている。不織布層12は、目付が粗いガラス繊維マットのガラス繊維の露出を防ぎ、第2の繊維層7の表面を保護する。不織布層12には、例えばニードルパンチ不織布が選択される。
【0034】
天井用成形材1は、図3に示すように、不織布層12の表面(天井内装材側)に、遮熱フィルム18を積層させた構成としてもよい。遮熱フィルム18には、例えばアルミ蒸着シートを選択できる。遮熱フィルム18を設けることにより、車室内の温度上昇をより抑制できる。なお、不織布層12に代えて、遮熱フィルム18を第2の繊維層7に直接積層させた構成としても良い。
【0035】
天井用成形材1は、天井パネルPに対し接合層9によって面接着され、天井パネルPの面剛性を補う補強部材として機能する。天井用成形材1は、上記構成により断熱、制振、吸遮音、剛性、結露低減の複合的な性能を備えている。天井用成形材1は、リンフォースメントRを取り除いて天井パネルPの全面に貼り合わせることができる。既存のリンフォースメントRがかけ渡された車両であれば、リンフォースメントRの間のそれぞれの領域に天井用成形材1を貼り合わせても良い。
【0036】
<実施形態の効果(第1実施形態)>
上記第1実施形態に係る天井用成形材1(車両用成形材)は、芯材5の両面に繊維層6,7が積層されて熱硬化性樹脂(合成樹脂)で固化された構成とされ、天井パネルP(車体パネル)の形状に合わせて任意の形状に賦形されている。天井用成形材1は、天井パネルPに対して接合層9によって面接着されることで、天井パネルPの面剛性を補う補強部材として機能する。これにより、天井パネルPの強度の向上を図ることができる。また、天井用成形材1と天井パネルPの間において隙間の発生を抑えることができ、車体の制振性能の向上を図ることができる。さらに天井用成形材1は、芯材5と繊維層6,7とが積層された構成であり、より広い面積で天井パネルPに張り付けた場合であっても重量の増加を抑えることができる。すなわち、天井パネルPの全面に対して天井用成形材1を貼り付けることができ、天井パネルPの全面に亘り面剛性と制振性能の効果を発揮させることができる。
【0037】
天井用成形材1は、ウレタン樹脂を含んだ芯材5の両面にガラス繊維を含んだ第1と第2の繊維層6,7が積層され、これらが熱硬化性接着剤13(熱硬化性樹脂)によって接合し、一体に賦形されている。これにより、天井用成形材1の形状が維持され、剛性をより高めることができる。よって、天井用成形材1は天井パネルPの面剛性を補う補強部材として機能し、鉄製の補強部材が少ない車体であっても、天井パネルPの強度を確保することができる。すなわち、天井用成形材1が補う強度に相当する鉄製の補強部材を減らした構成とすることができる。また、天井用成形材1は、鉄製の補強部材よりも比重の軽い芯材5と繊維層6,7とが積層された構成である。そのため、天井用成形材1を天井パネルPと天井内装材(車両用内装材)の間の制限された空間内に配設した場合、その部位における重量を減らすことができる。よって、車体パネルの面剛性向上と制振性能向上に加え、車体の軽量化を図ることができる。
【0038】
天井用成形材1は、ウレタン樹脂発泡体からなる芯材5の両面にガラス繊維を含んだ繊維層6,7が積層され、これらが熱硬化性接着剤13によって接合し、一体に賦形された構成である。この天井用成形材1を配設することにより、車体の軽量化と天井パネルPの面剛性向上に加え、天井パネルPの制振性能を高めることができる。また、ウレタン樹脂発泡体とガラス繊維マットが積層された構成により、天井用成形材1の断熱性能を高めることができる。
【0039】
天井用成形材1は、第2の繊維層7の天井内装材側の面に、不織布層12が設けられている。これにより、天井用成形材1の吸音性能、遮音性能を高めることができる。また、天井用成形材1の天井内装材側に遮熱フィルム18が設けられている場合には、天井用成形材1の断熱性能をより高めることができる。
【0040】
第1の繊維層6と接合層9の間には、熱可塑性の接合用フィルム15と保護用不織布16からなる境界層8が設けられている。ガラス繊維を含んだ第1の繊維層6は目付が粗くなるが、境界層8を設けることで接合層9を積層させ易くすることができる。
【0041】
天井用成形材1(車両用成形材)は、車体の天井パネルPに配設され、天井パネルPの面剛性を補う補強部材として機能する。車体の中でも大きな面積を占める天井パネルPに天井用成形材1を配設することにより、効果的に車体の剛性を高めることができる。
【0042】
天井用成形材1は、補強部材のリンフォースメントRに代えて天井パネルPの全面に亘って配設できる。すなわち、天井用成形材1を天井パネルPに面接着させることで面剛性が確保されるため、リンフォースメントRを減らすことができる。鉄製の補強部材を減らすことにより、車体の軽量化を図ることができる。そして、天井用成形材1を天井パネルPの広い領域に亘って配設することができ、天井パネルPの剛性を均一的にすることができる。また、リンフォースメントRを取り除くことにより、車室空間を広くすることができる。すなわち、車室内において天井周辺のレイアウト設定の自由度が高まる。
【0043】
天井用成形材1を天井パネルPの表面の形状に沿った成形体とすることにより、天井用成形材1の歪みの発生を抑制できる。また、表面同士が粘着剤等で貼り合わされた天井用成形材1と天井パネルPの間の隙間を少なくすることができ、制振性能が向上する。すなわち車体の屋根から車室内に伝わる雨打ち音を小さくすることができる。また、天井用成形材1と天井パネルPの間の隙間を無くすことにより、結露の発生を抑制することができる。
【0044】
天井用成形材1は、断熱、制振、吸遮音、剛性、結露低減等の要求性能に応じて構成を変更できる。例えば、第1及び第2の繊維層6,7にガラスペーパーやスパンレース、スパンボンド不織布を用いることにより、天井用成形材1の軽量化や低コスト化を図ることができる。また、接合層9として、粘性液体のスパイラル塗布、接着剤、テープ等を用いることにより、剛性と制振性の向上、軽量化を図ることができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用成形材は、車体の天井パネルP(車体パネル)に貼り合わされる天井用成形材21であり、第1実施形態と同様に、車体の天井の厚さ方向において、天井パネルPと天井内装材(不図示)の間に配設される。なお、第1実施形態と共通する天井用成形材21の構成、作用等については説明を省略し、異なる構成等について説明する。
【0046】
図4に示すように、天井用成形材21は、天井パネルPの表面に沿った面形状の芯材23と、芯材23の両面に積層された繊維層24とが、熱可塑性樹脂27(合成樹脂)で固化された成形体を備えている。また、成形体の天井パネルP側の全面には、天井パネルPと接する表面同士を接合可能な接合層29が積層されている。
【0047】
芯材23は、天井用成形材21の形状保持と剛性確保のために設けられており、ガラス繊維26と熱可塑性樹脂27が混合された混綿材から構成されている。この混綿材は、クロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法、または抄紙法に代表される湿式法のいずれの製法を選択しても形成できる。上記乾式法における熱可塑性樹脂27は、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の熱可塑性合成繊維が選択され得る。湿式法(抄紙法)を用いる場合の熱可塑性樹脂27は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の粉末が選択され得る。ガラス繊維26は、芯材23の強度を高める繊維補強材として機能する。芯材23に含まれる繊維補強材は、ガラス繊維のほか、バサルト繊維、カーボン繊維、ケナフ(洋麻)、竹等の天然繊維が適宜選択され得る。
【0048】
芯材23の両面には、繊維層24として不織布が積層されている。この不織布は、芯材23に含まれるガラス繊維26の露出を防ぐために積層されるものであり、例えばスパンレース不織布が選択される。
【0049】
天井用成形材21の成形体は、芯材23と繊維層24からなる積層体を加熱軟化処理する加熱工程と、加熱工程で加熱された積層体をプレス型により両面から挟んで冷却しながら加圧するプレス成形工程を経て、天井パネルPの表面に沿った面形状に成形されている。すなわち、芯材23に含まれる熱可塑性樹脂27が加熱工程で熱溶融することによって、バインダーとして機能し、芯材23と繊維層24が接する面同士が接着されている。そして、成形工程における冷間プレスで熱可塑性樹脂が固化することにより、芯材23と繊維層24が一体に成形されている。
【0050】
接合層29は、例えばアクリル系粘着剤が選択される。粘着剤は、成形体の天井パネルP側における不織布の表面に塗布されている。また接合層29として、スパイラル塗布、接着剤、テープ等を選択できる。
【0051】
天井用成形材21は、天井内装材側に遮熱フィルムを設けた構成としても良い。これにより、天井用成形材21の断熱性能をより高めることができる。また、断熱、制振、吸遮音、剛性、結露低減等の要求性能に応じて、天井用成形材21の構成を適宜変更しても良い。
【0052】
<実施形態の効果(第2実施形態)>
上記第2実施形態に係る天井用成形材21(車両用成形材)は、芯材23の両面に繊維層24が積層されて熱可塑性樹脂(合成樹脂)で固化された構成とされ、天井パネルP(車体パネル)の形状に合わせて任意の形状に賦形されている。天井用成形材21は、天井パネルPに対して接合層29によって面接着されることで、天井パネルPの面剛性を補う補強部材として機能する。これにより、天井パネルPの強度の向上を図ることができる。また、天井用成形材21と天井パネルPの間において隙間の発生を抑えることができ、車体の制振性能の向上を図ることができる。さらに天井用成形材21は、芯材23と繊維層24とが積層された構成であり、より広い面積で天井パネルPに張り付けた場合であっても重量の増加を抑えることができる。すなわち、天井パネルPの全面に対して天井用成形材21を貼り付けることができ、天井パネルPの全面に亘り面剛性と制振性能の効果を発揮させることができる。
【0053】
天井用成形材21は、ガラス繊維26と熱可塑性樹脂27を含んだ芯材23の両面に、不織布からなる繊維層24が積層され、これらが一体に賦形されている。この天井用成形材21を配設することにより、天井パネルPの制振性能をより高めることができる。また、繊維層24として不織布が積層されることにより、天井用成形材21の吸音性能、遮音性能の向上を図ることができる。
【0054】
天井用成形材21は、天井パネルPの表面の形状に沿った成形体とすることにより、第1実施形態と同様に、天井用成形材21の歪みの発生を抑制できる。さらに、車体の屋根から車室内に伝わる雨打ち音を小さくすることができる。また、天井用成形材21と天井パネルPの間の隙間を無くすことにより、結露の発生を抑制できる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用成形材は、車体の天井パネルP(車体パネル)に貼り合わされる天井用成形材31であり、第1実施形態と同様に、車体の天井の厚さ方向において、天井パネルPと天井内装材(不図示)の間に配設される。なお、第1実施形態と共通する天井用成形材31の構成、作用等については説明を省略し、異なる構成等について説明する。
【0056】
図5に示すように、天井用成形材31は、天井パネルPの表面に沿った面形状の繊維成形体からなる芯材33を備えている。芯材33の天井パネルP側の全面には、天井パネルPと接する表面同士を接合可能な接合層37が積層されている。
【0057】
芯材33は、熱可塑性樹脂35で固化された繊維成形体から構成されている。芯材33には、例えば熱可塑性樹脂であるポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートを含んだ混綿材が選択される。芯材33は、加熱工程と成形工程を経て成形される。ポリエチレンテレフタレートは、ポリプロピレンより融点が高いため、加熱工程での加熱温度をポリプロピレンの溶融温度に合わせて設定することにより、ポリプロピレンのみが熱溶融してバインダーとして機能する。そして、成形工程において冷間プレスすることにより、ポリプロピレンが固化し、芯材33が成形されている。
【0058】
接合層37は、例えばアクリル系粘着剤が選択される。粘着剤は、芯材33の天井パネルP側の表面に塗布されている。また接合層37として、スパイラル塗布、接着剤、テープ等を選択できる。
【0059】
天井用成形材31は、天井内装材側に遮熱フィルムを設けた構成としても良い。これにより、天井用成形材31の断熱性能をより高めることができる。また、断熱、制振、吸遮音、剛性、結露低減等の要求性能に応じて、天井用成形材31の構成を適宜変更しても良い。
【0060】
<実施形態の効果(第3実施形態)>
天井用成形材31(車両用成形材)の芯材33は、熱可塑性樹脂35で固化された繊維成形体から構成され、天井パネルP(車体パネル)の形状に合わせて任意の形状に賦形されている。天井用成形材31は、天井パネルPに対して接合層37によって面接着されることで、天井パネルPの面剛性を補う補強部材として機能する。これにより、天井パネルPの強度の向上を図ることができる。また、天井用成形材31と天井パネルPの間において天井パネルPの全面に亘り隙間の発生を抑えることができ、車体の制振性能の向上を図ることができる。さらに、芯材33を構成する繊維成形体は、より広い面積で天井パネルPに張り付けた場合であっても重量の増加を抑えることができる。すなわち、天井パネルPの全面に対して天井用成形材31を貼り付けることができ、天井パネルPの全面に亘り面剛性と制振性能の効果を発揮させることができる。
【0061】
天井用成形材31は、天井パネルPの表面の形状に沿った繊維成形体とすることにより、第1実施形態と同様に、天井用成形材31の歪みの発生を抑制できる。さらに、車体の屋根から車室内に伝わる雨打ち音を小さくすることができる。また、天井用成形材31と天井パネルPの間の隙間を無くすことにより、結露の発生を抑制できる。
【0062】
[実施例]
以下、本発明の実施例とその効果について説明する。天井用成形材1の構成として、芯材5に粘着剤を使用して賦形したウレタン、第1及び第2の繊維層6,7にはイソシアネート樹脂を塗布したガラス繊維マットを用いた。また、境界層8にはポリプロピレンフィルムとスパンボンド不織布を用いた。スパンボンド不織布には、接合層9となるアクリル系粘着剤が塗布されている。第2の繊維層7の天井内装材側にはニードルパンチ不織布が積層されている。
【0063】
実施例に係る天井用成形材1を、天井パネルPに貼り合わせた状態を想定して、曲げ試験を行った。具体的は、150mm四方の平板状にした天井用成形材1と板金を貼り合わせたサンプルQを、図6に示すように2点支持する。支点間距離Lは100mmに設定されている。支持されたサンプルQの上方から負荷子Tで荷重をかけて3点曲げ試験を行い、たわみを測定した。図7は実施例、比較例1及び比較例2の剛性を示す図であり、縦軸は荷重(N)、横軸はたわみ(mm)である。なお、比較例1は従来の天井パネルPに用いられる板金のみ、比較例2は天井用成形材1のみのサンプルについて、同様に荷重とたわみを測定したものである。図7に示すように、実施例1では比較例1に比べて2倍程度の最大荷重が測定されている。すなわち、実施例の天井用成形材1を天井パネルPに貼り合わせた場合、剛性が向上する。
【0064】
次に、実施例に係る天井用成形材1を、リンフォースメントRを取り除いた天井パネルPに貼り合わせて、制振性能の評価試験を行った。図8は実施例と比較例3の制振性能を示す図であり、縦軸は振動の大きさ(dB)、横軸は音の周波数(Hz)である。比較例3は、従来のリンフォースメントRを備えた天井パネルPにフェルトを貼り合わせたものである。図8に示すように、実施例の天井用成形材1を天井パネルPに貼り合わせた場合、測定したほぼすべての周波数で、比較例3に比べて制振性能が維持または向上している。
【0065】
次に、実施例に係る天井用成形材1を天井パネルPに貼り合わせて、断熱性能の評価試験を行った。図9は実施例、比較例3及び比較例4における車室内の温度上昇の経過を示す図であり、縦軸が温度(℃)、横軸が経過時間(分)である。比較例4は、比較例3のフェルトに代えてシンサレート(登録商標)を用いたものである。図9に示すように、実施例の天井用成形材1を天井パネルPに貼り合わせた場合、比較例3及び比較例4に比べて車室内の温度上昇が抑えられている。例えば15分経過時では、比較例3に比べて実施例の温度上昇が60%程度に抑えられている。また、その後30分経過するまでの間においても、実施例において比較例3及び比較例4より低い温度に抑えられている。
【0066】
本発明に係る車両用成形材は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【0067】
上記実施形態の車両用成形材として、天井パネルPと天井内装材の間に配設される天井用成形材の例を示したが、これに限られず、車両の他の部位における車両用成形材としても適用できる。
【0068】
本発明に係る車両用成形材は、第1及び第2の繊維層として選択される材料構成に応じて、境界層、不織布層をそれぞれ設けない構成としても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 天井用成形材(車両用成形材)
5 芯材
6 第1の繊維層
7 第2の繊維層
8 境界層
9 接合層
12 不織布層
13 熱硬化性接着剤(熱硬化性樹脂)
15 接合用フィルム
16 保護用不織布
18 遮熱フィルム
21 天井用成形材(車両用成形材)
23 芯材
24 繊維層
26 ガラス繊維
27 熱可塑性樹脂
29 接合層
31 天井用成形材(車両用成形材)
33 芯材
35 熱可塑性樹脂
37 接合層
P 天井パネル(車体パネル)
R リンフォースメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9