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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025396
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】印刷物およびカラーチャート
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/02 20060101AFI20240216BHJP
   G09F 5/04 20060101ALI20240216BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B41M1/02
G09F5/04 G
B42D15/00 331Z
B42D15/00 341C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128800
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA01
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB22
2H113CA15
2H113CA25
2H113CA44
2H113FA51
2H113FA54
(57)【要約】
【課題】凸版印刷により印刷される画像の印刷ムラが抑制される印刷物およびカラーチャート、を提供する。
【解決手段】カラーチャートは、凸版印刷により印刷媒体に印刷される画像20を備える。画像20は、第1網点パターン42により画像が表わされる第1画像領域32と、第2網点パターン41により画像が表わされ、第1方向110において第1画像領域32と隣接し、第1方向110と直交する第2方向に帯状に延びる第1バー領域31とを含む。第1網点パターン42および第2網点パターン41は、少なくとも1つのカラーの網点から構成されている。その少なくとも1つのカラーは、第2網点パターン41における網点面積率が第1網点パターン42における網点面積率よりも大きくなるカラーを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体と、
凸版印刷により前記印刷媒体に印刷される画像とを備え、
前記画像は、
第1網点パターンにより画像が表わされる第1画像領域と、
第2網点パターンにより画像が表わされ、第1方向において前記第1画像領域と隣接し、前記第1方向と直交する第2方向に帯状に延びる第1バー領域とを含み、
前記第1網点パターンおよび前記第2網点パターンは、少なくとも1つのカラーの網点から構成され、
前記少なくとも1つのカラーは、前記第2網点パターンにおける網点面積率が前記第1網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなるカラーを含む、印刷物。
【請求項2】
前記第1画像領域は、前記第1方向に延びる一対の辺と、前記第2方向に延びる一対の辺とにより囲まれた矩形形状を有し、
前記第1方向における前記第1画像領域の長さは、前記第1方向における前記第1バー領域の長さよりも大きく、
前記第2方向における前記第1画像領域の長さは、前記第2方向における前記第1バー領域の長さと等しい、請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記カラーの前記第1網点パターンにおける網点面積率は、0%を越え60%未満の範囲であり、
前記カラーの前記第2網点パターンにおける網点面積率は、60%以上100%以下の範囲である、請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の印刷物を用いたカラーチャートであって、
前記第1方向および前記第2方向にマトリクス状に並ぶ複数のカラーパッチを備え、
前記画像は、
第3網点パターンにより画像が表わされる第2画像領域と、
第4網点パターンにより画像が表わされ、前記第1方向において前記第2画像領域と隣接し、かつ、前記第1画像領域および前記第2画像領域の間に配置され、前記第2方向に帯状に延びる第2バー領域とをさらに含み、
前記第3網点パターンおよび前記第4網点パターンは、前記少なくとも1つのカラーの網点から構成され、
前記少なくとも1つのカラーは、前記第4網点パターンにおける網点面積率が前記第3網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなる前記カラーを含み、
前記複数のカラーパッチは、前記第1方向に並び、前記第1画像領域および前記第2画像領域にそれぞれ対応する第1カラーパッチおよび第2カラーパッチを含む、カラーチャート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷物およびカラーチャートに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2002-287640号公報(特許文献1)には、被印刷体の片面に上から縦一列に、網点面積率で0%から100%まで10%刻みで複数のパッチが配列され、これらパッチ群の列が、右から左側横に、網点面積率で0%から100%まで10%刻みで配列されたプロセスインキ黄(Y)で印刷されたグラビア印刷用特色見本チャートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-287640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、各種印刷物の色見本として利用されるカラーチャートが知られている。カラーチャートは、照らし合わせる印刷物と同一の印刷方法により作製されるため、フレキソ印刷等の凸版印刷用のカラーチャートは、凸版印刷によって作製される。
【0005】
このような凸版印刷によるカラーチャートの作製においては、凹凸が設けられた刷版の凸部分にインクを乗せ、刷版から印刷媒体にインクを転写することによって、網点パターンによる画像を印刷媒体に形成する。しかしながら、印刷が、非印刷領域から、網点パターンによる画像が印刷される画像領域に移行するとき、画像領域の入口で印圧が増大する現象が起こり得る。この場合、画像領域において印圧が局所的に増大した箇所で網点の面積が大きくなってしまい、網点面積率のばらつきに起因した印刷ムラが発生する。結果、同一カラーパッチ内で色ムラが生じることになり、色見本としてのカラーチャートの品質が低下する。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、凸版印刷により印刷される画像の印刷ムラが抑制される印刷物、および、そのような印刷物を用いたカラーチャートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]印刷媒体と、凸版印刷により上記印刷媒体に印刷される画像とを備え、上記画像は、第1網点パターンにより画像が表わされる第1画像領域と、第2網点パターンにより画像が表わされ、第1方向において上記第1画像領域と隣接し、上記第1方向と直交する第2方向に帯状に延びる第1バー領域とを含み、上記第1網点パターンおよび上記第2網点パターンは、少なくとも1つのカラーの網点から構成され、上記少なくとも1つのカラーは、上記第2網点パターンにおける網点面積率が上記第1網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなるカラーを含む、印刷物。
【0008】
このように構成された印刷物によれば、凸版印刷による印刷が、第1方向において第1バー領域および第1画像領域と挙げた順に進行する場合を想定すると、第1バー領域に、第2網点パターンにおける網点面積率が第1網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなるカラーにより第2網点パターンを印刷することによって、第1画像領域の入口における印圧の増大を抑制することができる。これにより、そのカラーの第1網点パターンにおける網点面積率のばらつきを抑え、第1画像領域における印刷ムラの発生を抑制できる。
【0009】
[2]上記第1画像領域は、上記第1方向に延びる一対の辺と、上記第2方向に延びる一対の辺とにより囲まれた矩形形状を有し、上記第1方向における上記第1画像領域の長さは、上記第1方向における上記第1バー領域の長さよりも大きく、上記第2方向における上記第1画像領域の長さは、上記第2方向における上記第1バー領域の長さと等しい、[1]に記載の印刷物。
【0010】
このように構成された印刷物によれば、矩形形状を有する第1画像領域に対して隣接して配置される第1バー領域を、第1画像領域の辺に沿って延び、第1画像領域よりも小面積のバー形状とすることによって、第1画像領域における画像と本来関わりのない第1バー領域における画像を目立たなくすることができる。
【0011】
[3]上記カラーの上記第1網点パターンにおける網点面積率は、0%を越え60%未満の範囲であり、上記カラーの上記第2網点パターンにおける網点面積率は、60%以上100%以下の範囲である、[1]または[2]に記載の印刷物。
【0012】
このように構成された印刷物によれば、第1網点パターンにおける網点面積率が0%を越え60%未満の範囲である場合、印刷ムラが特に認識され易いため、第1画像領域における印刷ムラの発生を抑制する効果がより有効に奏される。また、第2網点パターンにおける網点面積率が60%以上100%以下の範囲である場合、第1画像領域の入口における印圧の増大をより効果的に抑制することができる。
【0013】
[4]上記第1方向における上記第1バー領域の長さは、0.01mm以上0.1mm以下の範囲である、[1]から[3]のいずれかに記載の印刷物。
【0014】
このように構成された印刷物によれば、第1方向における第1バー領域の長さが0.01mm以上である場合、第1画像領域の入口における印圧の増大をより効果的に抑制することができる。第1方向における第1バー領域の長さが0.1mm以下である場合、第1画像領域における画像と本来関わりのない第1バー領域における画像を目立たなくすることができる。
【0015】
[5]上記凸版印刷は、水性フレキソ印刷である、[1]から[4]のいずれかに記載の印刷物。
【0016】
このように構成された印刷物によれば、水性フレキソ印刷により印刷媒体に印刷される画像において、印刷ムラの発生を抑制できる。
【0017】
[6][1]から[5]のいずれかに記載の印刷物を用いたカラーチャートであって、上記第1方向および上記第2方向にマトリクス状に並ぶ複数のカラーパッチを備え、上記画像は、第3網点パターンにより画像が表わされる第2画像領域と、第4網点パターンにより画像が表わされ、上記第1方向において上記第2画像領域と隣接し、かつ、上記第1画像領域および上記第2画像領域の間に配置され、上記第2方向に帯状に延びる第2バー領域とをさらに含み、上記第3網点パターンおよび上記第4網点パターンは、上記少なくとも1つのカラーの網点から構成され、上記少なくとも1つのカラーは、上記第4網点パターンにおける網点面積率が上記第3網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなる上記カラーを含み、上記複数のカラーパッチは、上記第1方向に並び、上記第1画像領域および上記第2画像領域にそれぞれ対応する第1カラーパッチおよび第2カラーパッチを含む、カラーチャート。
【0018】
このように構成された印刷物によれば、凸版印刷によるカラーチャートの印刷が、第1方向において第1バー領域、第1画像領域(第1カラーパッチ)、第2バー領域および第2画像領域(第2カラーパッチ)と挙げた順に進行する場合を想定すると、第1バー領域に、第2網点パターンにおける網点面積率が第1網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなるカラーにより第2網点パターンを印刷することによって、第1カラーパッチの入口における印圧の増大を抑制し、第2バー領域に、第4網点パターンにおける網点面積率が第3網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなるカラーにより第4網点パターンを印刷することによって、第2カラーパッチの入口における印圧の増大を抑制することができる。これにより、そのカラーの第1網点パターンにおける網点面積率のばらつき、および、そのカラーの第3網点パターンにおける網点面積率のばらつきを抑え、第1カラーパッチおよび第2カラーパッチの各カラーパッチにおける色ムラの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように、この発明に従えば、凸版印刷により印刷される画像の印刷ムラが抑制される印刷物、および、そのような印刷物を用いたカラーチャートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態におけるカラーチャートを示す平面図である。
図2図1中のカラーチャートの作製工程を示す図である。
図3図1中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲のカラーチャートを拡大して示す平面図である。
図4図2中の2点鎖線IVで囲まれた範囲の印刷工程を示す図である。
図5】比較例における印圧の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0022】
図1は、この発明の実施の形態におけるカラーチャートを示す平面図である。図1を参照して、まず、カラーチャート100の基本的な構成と、その製造方法とについて説明する。カラーチャート100は、印刷媒体51を有する。
【0023】
印刷媒体51は、シート体からなる。印刷媒体51は、特に限定されず、たとえば、紙、合成紙(白色フィルム)、不透明フィルムまたは透明フィルムである。印刷媒体51は、その平面視において、矢印110に示される第1方向(以下、「第1方向110」という)に延びる一対の辺と、第1方向110と直交する矢印120に示される第2方向(以下、「第2方向120」という)に延びる一対の辺とに囲まれた矩形形状をなしている。
【0024】
カラーチャート100は、画像20をさらに有する。画像20は、凸版印刷により印刷媒体51に印刷されている。画像20は、凸版印刷による網点パターンにより表わされている。
【0025】
本実施の形態では、画像20の印刷に、凸版印刷の一種である水性フレキソ印刷が用いられている。画像20は、印刷媒体51に対して、表刷りされてもよいし、裏刷りされてもよい。画像20が裏刷りされる場合、たとえば、透明フィルムからなる印刷媒体51の裏面に画像20が印刷され、透明フィルム越しに画像20が視認される。
【0026】
印刷媒体51には、画像20として、複数のカラーパッチ21と、複数の罫線26とが印刷されている。
【0027】
各カラーパッチ21は、第1方向110に延びる一対の辺と、第1方向110と直交する第2方向120に延びる一対の辺とに囲まれた矩形形状をなしている。カラーパッチ21の形状および大きさは、複数のカラーパッチ21間で互いに同じである。各カラーパッチ21の大きさは、測色機で測定可能な面積以上(たとえば、5mm角以上の面積)であることが好ましい。
【0028】
カラーパッチ21は、複数のカラー(一般的には、2~4色)から選択される少なくとも1つのカラーの網点により構成されている。図1中には、一例として、2つのカラー(マゼンタMおよびイエローY)の組み合わせの網点により構成されるカラーパッチ21が示されている。複数のカラーパッチ21は、マゼンタMの網点面積率と、イエローYの網点面積率との組み合わせが、複数のカラーパッチ21の間で異なるように作製されている。
【0029】
なお、カラーパッチ21の印刷には、プロセスカラーが用いられてもよいし、特色が用いられてもよい。プロセスカラーの種類は、特に限定されず、たとえば、シアンC、マゼンタM、イエローYおよびブラックKの4色であってもよいし、これらにオレンジOおよびグリーンGを加えた6色であってもよいし、さらにバイオレットVを加えた7色であってもよい。
【0030】
複数のカラーパッチ21は、第1方向110および第2方向120の2方向にマトリクス状に並んでいる。複数のカラーパッチ21は、マゼンタMの網点面積率が0%から100%までの範囲で10%刻みで変化するように第1方向110に並んでいる。複数のカラーパッチ21は、イエローYの網点面積率が0%から100%までの範囲で10%刻みで変化するように第2方向120に並んでいる。
【0031】
罫線26は、第1方向110において一定の幅を有しながら、第2方向120に直線状に延びている。罫線26の形状および大きさは、複数の罫線26間で互いに同じである。罫線26は、第2方向120に延びるカラーパッチ21の辺に沿って延びている。罫線26は、第1方向110において互いに隣り合うカラーパッチ21間に配置されている。罫線26およびカラーパッチ21は、第1方向110において交互に並んで設けられている。
【0032】
罫線26は、バー形状の画像であり、カラーパッチ21と同じカラーの組み合わせ(マゼンタMおよびイエローY)の網点により構成されている。
【0033】
図2は、図1中のカラーチャートの作製工程を示す図である。図1および図2を参照して、カラーチャート100の作製には、長尺状のシート材料151が用いられる。ロール状に巻かれたシート材料151が、その長手方向に沿って搬送され、その搬送されるシート材料151に対して、凸版印刷(水性フレキソ印刷)による印刷工程が実行される。
【0034】
水性フレキソ印刷による印刷工程には、樹脂製の刷版56が用いられる。刷版56は、円筒形状を有し、その外周面には、複数の凸部57が設けられている。シート材料151は、回転する刷版56の直下を搬送される。この間、刷版56からシート材料151に対して印圧を作用させることによって、凸部57の頂部に付着されたインク200(後出の図4を参照)がシート材料151の表面に転写される。
【0035】
刷版56は、刷版56Mと、刷版56Yとを含む。刷版56Mおよび刷版56Yは、シート材料151の搬送方向に並んで設けられている。刷版56Mは、マゼンタMのインク200をシート材料151に転写する。刷版56Yは、イエローYのインク200をシート材料151に転写する。
【0036】
印刷工程において画像20が印刷されたシート材料151は、切断装置58によりシート材料151の短手方向に沿って切断される。これにより、複数のカラーチャート100が順々に得られる。
【0037】
このような作製工程を経るカラーチャート100において、第1方向110がシート材料151の長手方向(シート材料151の搬送方向)に対応し、第2方向120がシート材料151の短手方向に対応している。
【0038】
すなわち、シート材料151が刷版56(56M,56Y)の直下を搬送される間、第1方向110に並ぶカラーパッチ21および罫線26が、その並び順に従って交互に印刷される。より特定的には、マゼンタMの網点面積率が0%のカラーパッチ21の上側の辺に沿って延びる罫線26が最初に印刷され、マゼンタMの網点面積率が0%のカラーパッチ21が次に印刷される。続いて、罫線26およびカラーパッチ21が交互に印刷され、マゼンタMの網点面積率が100%のカラーパッチ21が最後に印刷される。第2方向120に並ぶ複数のカラーパッチ21は、同時に印刷され、第2方向120に並ぶ複数の罫線26は、同時に印刷される。
【0039】
続いて、カラーチャート100に印刷される画像20のより具体的な構成について説明する。図3は、図1中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲のカラーチャートを拡大して示す平面図である。図4は、図2中の2点鎖線IVで囲まれた範囲の印刷工程を示す図である。図4中には、図3中に示される範囲の画像の印刷時のシート材料151および刷版56(56M)の状態が模式的に示されている。
【0040】
図3および図4を参照して、画像20は、第1画像領域32と、第1バー領域31と、第2画像領域34と、第2バー領域33とを有する。
【0041】
第1画像領域32および第2画像領域34の各領域は、カラーパッチ21に対応している。第1画像領域32では、第1網点パターン42により画像が表わされている。第2画像領域34では、第3網点パターン44により画像が表わされている。第1網点パターン42および第3網点パターン44の各網点パターンは、マゼンタMおよびイエローYの網点から構成されている。
【0042】
図3中には、代表的に、第1画像領域32が、マゼンタMおよびイエローYの網点面積率が(20%,20%)である第1カラーパッチ21Aに対応し、第2画像領域34が、マゼンタMおよびイエローYの網点面積率が(30%,20%)である第2カラーパッチ21Bに対応する場合が示されている。
【0043】
第1バー領域31および第2バー領域33の各バー領域は、罫線26に対応している。第1バー領域31では、第2網点パターン41により画像が表わされている。第2バー領域33では、第4網点パターン43により画像が表わされている。第2網点パターン41は、第1網点パターン42と同じカラーの組み合わせの網点から構成されている。第4網点パターン43は、第3網点パターン44と同じカラーの組み合わせの網点から構成されている。第2網点パターン41および第4網点パターン43の各網点パターンは、マゼンタMおよびイエローYの網点から構成されている。
【0044】
第1バー領域31は、第1方向110において第1画像領域32と隣接している。第1バー領域31は、第2方向120に帯状に延びている。
【0045】
第2方向120における第1バー領域31の長さは、第2方向120における第1画像領域32の長さと同じである。第1方向110における第1バー領域31の長さ(幅)は、第2方向120における第1バー領域31の長さよりも小さい。第1方向110における第1バー領域31の長さ(幅)は、第1方向110における第1画像領域32の長さよりも小さい。
【0046】
第2バー領域33は、第1方向110において第2画像領域34と隣接している。第2バー領域33は、第2方向120に帯状に延びている。
【0047】
第2バー領域33は、第1方向110において、第1画像領域32および第2画像領域34の間に配置されている。第1バー領域31、第1画像領域32、第2バー領域33および第2画像領域34は、挙げた順に、第1方向110に並んでいる。
【0048】
第2方向120における第2バー領域33の長さは、第2方向120における第2画像領域34の長さと同じである。第1方向110における第2バー領域33の長さ(幅)は、第2方向120における第2バー領域33の長さよりも小さい。第1方向110における第2バー領域33の長さ(幅)は、第1方向110における第2画像領域34の長さよりも小さい。
【0049】
図4中のシート材料151の表面上には、第1バー領域31、第1画像領域32、第2バー領域33および第2画像領域34を構成するマゼンタMの網点が示されている。図3および図4に示されるように、画像20の印刷時、シート材料151が回転する刷版56Mの直下を搬送されるのに伴って、マゼンタMのインク200がシート材料151に転写され、第1バー領域31、第1画像領域32、第2バー領域33および第2画像領域34が、挙げた順に印刷される。また同様に、図3に示されるように、シート材料151が回転する刷版56Yの直下を搬送されるのに伴って、イエローYのインク200がシート材料151に転写され、第1バー領域31、第1画像領域32、第2バー領域33および第2画像領域34が、挙げた順に印刷される。
【0050】
マゼンタMの第2網点パターン41における網点面積率は、マゼンタMの第1網点パターン42における網点面積率よりも大きく、イエローYの第2網点パターン41における網点面積率は、イエローYの第1網点パターン42における網点面積率よりも大きい。
【0051】
図3に示されるように、第1バー領域31において第2網点パターン41を構成するマゼンタMおよびイエローYの網点面積率が(ma,ya)であり、第1画像領域32において第1網点パターン42を構成するマゼンタMおよびイエローYの網点面積率が(Ma,Ya)である場合に、(ma,ya)は、ma>Ma、および、ya>Yaの関係を満たすように設定されている。一例として、(Ma,Ya)=(20%,20%)である場合に、(ma,ya)=(80%,80%)であってもよいし、(ma,ya)=(80%,70%)であってもよい。
【0052】
マゼンタMの第4網点パターン43における網点面積率は、マゼンタMの第3網点パターン44における網点面積率よりも大きく、イエローYの第4網点パターン43における網点面積率は、イエローYの第3網点パターン44における網点面積率よりも大きい。
【0053】
図3に示されるように、第2バー領域33において第4網点パターン43を構成するマゼンタMおよびイエローYの網点面積率が(mb,yb)であり、第2画像領域34において第3網点パターン44を構成するマゼンタMおよびイエローYの網点面積率が(Mb,Yb)である場合に、(mb,yb)は、mb>Mb、および、yb>Ybの関係を満たすように設定されている。一例として、(Mb,Yb)=(30%,20%)である場合に、(mb,yb)=(80%,80%)であってもよいし、(mb,yb)=(80%,70%)であってもよい。
【0054】
なお、カラーチャート100は、第1方向110および第2方向120にマトリクス状に配置された全てのカラーパッチ21に付随して、上記の関係を満たすバー領域を備える必要はない。たとえば、罫線26におけるマゼンタMおよびイエローYの網点面積率が(80%,80%)で統一されている場合を想定すると、第1方向110においてマゼンタMの網点面積率が70%以下、かつ、第2方向120においてイエローYの網点面積率が70%以下の範囲のカラーパッチ21および罫線26が、本発明における「第1画像領域」、「第2画像領域」、「第1バー領域」または「第2バー領域」に対応している。
【0055】
また、たとえば、カラーパッチ21が3つのカラー(マゼンタM、イエローYおよびシアンC)の組み合わせから構成される場合を想定する。第1画像領域32において第1網点パターン42を構成するマゼンタM、イエローYおよびシアンCの網点面積率が(Ma,Ya,Ca)であり、第1バー領域31において第2網点パターン41を構成するマゼンタM、イエローYおよびシアンCの網点面積率が(ma,ya,ca)である場合に、(ma,ya,ca)は、ma>Ma、ya>Yaおよびca>Caの関係を満たすように設定される。一例として、(Ma,Ya,Ca)=(30%,20%,40%)である場合に、(ma,ya,ca)=(80%,80%,80%)であってもよいし、(ma,ya,ca)=(70%,80%,90%)であってもよい。
【0056】
図5は、比較例における印圧の変化を示すグラフである。図5を参照して、本比較例では、図3中に示される画像20の範囲において、第1バー領域31および第2バー領域33に替わって、網点パターンによる画像が印刷されない第1非印刷領域131および第2非印刷領域133がそれぞれ設けられている。
【0057】
この場合、凸版印刷(水性フレキソ印刷)による印刷が、第1非印刷領域131から第1画像領域32に移行するとき、および、第2非印刷領域133から第2画像領域34に移行するとき、第1画像領域32および第2画像領域34の各画像領域の入口で印圧が増大する現象が発生する。これにより、第1画像領域32および第2画像領域34の各画像領域において印圧が局所的に増大した箇所で網点の面積が大きくなってしまい、網点パターンの網点面積率のばらつきに起因した色ムラが発生する。
【0058】
図3および4を参照して、これに対して、本実施の形態では、第1画像領域32の手前の第1バー領域31に、第2網点パターン41における網点面積率が第1網点パターン42における網点面積率よりも大きくなるマゼンタMおよびイエローYにより第2網点パターン41を印刷することによって、第1画像領域32の入口における印圧の増大を抑制することができる。また、第2画像領域34の手前の第2バー領域33に、第4網点パターン43における網点面積率が第3網点パターン44における網点面積率よりも大きくなるマゼンタMおよびイエローYにより第4網点パターン43を印刷することによって、第2画像領域34の入口における印圧の増大を抑制することができる。したがって、第1画像領域32および第2画像領域34において、色ムラのない適正に配色されたカラーパッチ21を作製することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、第1バー領域31を、第1画像領域32の辺に沿って延び、第1画像領域32よりも小面積のバー形状とし、第2バー領域33を、第2画像領域34の辺に沿って延び、第2画像領域34よりも小面積のバー形状とすることによって、カラーパッチ21と本来関わりのない第1バー領域31および第2バー領域33を目立たなくすることができる。
【0060】
マゼンタMおよびイエローYの各カラーの第1網点パターン42における網点面積率は、0%を越え60%未満の範囲であり、マゼンタMおよびイエローYの各カラーの第2網点パターン41における網点面積率は、60%以上100%以下の範囲であることが好ましい。マゼンタMおよびイエローYの各カラーの第3網点パターン44における網点面積率は、0%を越え60%未満の範囲であり、マゼンタMおよびイエローYの各カラーの第4網点パターン43における網点面積率は、60%以上100%以下の範囲であることが好ましい。
【0061】
マゼンタMおよびイエローYの各カラーの第1網点パターン42(第3網点パターン44)における網点面積率が0%を越え60%未満の範囲である場合、色の濃淡が薄いことに起因して色ムラが特に認識され易いため、第1画像領域32(第2画像領域34)における色ムラの発生を抑制する効果がより有効に奏される。また、マゼンタMおよびイエローYの各カラーの第2網点パターン41(第4網点パターン43)の網点面積率が60%以上100%以下の範囲である場合、第1画像領域32(第2画像領域34)の入口における印圧の増大をより効果的に抑制することができる。
【0062】
第1方向110における第1バー領域31および第2バー領域33の各長さは、0.01mm以上0.1mm以下の範囲であることが好ましい。バー領域を印刷するカラー(マゼンタMおよびイエローY)の網点面積率は、複数の罫線26の間で互いに同じであることが好ましい。
【0063】
第1方向110における第1バー領域31(第2バー領域33)の長さが0.01mm以上である場合、第1画像領域32(第2画像領域34)の入口における印圧の増大をより効果的に抑制することができる。第1方向110における第1バー領域31(第2バー領域33)の長さが0.1mm以下である場合、カラーパッチ21と本来関わりのない第1バー領域31(第2バー領域33)における画像を目立たなくすることができる。
【0064】
カラーチャート100は、たとえば、顧客が要求するデザインの色を選定する場面で使用される。
【0065】
具体的には、印刷機を用いて、カラーチャート100を作製する。次に、カラーチャート100の各カラーパッチ21の色を測色機で読み取り、そのデータをコンピュータに入力する。次に、コンピュータ内で、カラーチャート100の各カラーパッチ21の色データと、顧客デザインの色データとを対比することにより、顧客デザインの色データと一致する、または、近似するカラーパッチ21の色データを選定する。選定されたカラーパッチ21の色データから、印刷機により顧客デザインの色を再現するためのプロセスカラーの種類と、各プロセスカラーの網点面積率とを特定する。
【0066】
なお、カラーチャート100は、上記に限られず、カラーチャート100の各カラーパッチ21と、顧客デザインの色とを目視により対比することで、顧客デザインの色に対応するカラーパッチ21を選定する場合に使用されてもよい。
【0067】
本実施の形態では、各カラーパッチ21に色ムラが生じず、カラーパッチ21の色が適正に表現されているため、顧客デザインの色に対応するカラーパッチ21を選定し易くなる。
【0068】
なお、本発明では、第1網点パターンおよび第2網点パターンの網点を構成する少なくとも1つのカラーのうち、第2網点パターンにおける網点面積率が第1網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなり、第4網点パターンにおける網点面積率が第3網点パターンにおける網点面積率よりも大きくなるカラーが1つでも存在すればよい。
【0069】
本実施の形態に照らした場合、マゼンタMおよびイエローYの少なくともいずれか一方が、第2網点パターン41における網点面積率が第1網点パターン42における網点面積率よりも大きくなり、第4網点パターン43における網点面積率が第3網点パターン44における網点面積率よりも大きくなる条件を満たせばよい。たとえば、(Ma,Ya)=(20%,80%)である場合に、(ma,ya)=(90%,90%)であってもよいし、(ma,ya)=(80%,80%)であってもよいし、(ma,ya)=(70%,70%)であってもよい。また、(Mb,Yb)=(30%,80%)である場合に、(mb,yb)=(90%,90%)であってもよいし、(mb,yb)=(80%,80%)であってもよいし、(mb,yb)=(70%,70%)であってもよい。
【0070】
上記の場合において、第1網点パターン42における網点面積率が60%未満の範囲であるカラーについてのみ、第2網点パターン41における網点面積率が第1網点パターン42における網点面積率よりも大きくなるように第1バー領域31が設けられてもよいし、第3網点パターン44における網点面積率が60%未満の範囲であるカラーについてのみ、第4網点パターン43における網点面積率が第3網点パターン44における網点面積率よりも大きくなるように第2バー領域33が設けられてもよい。
【0071】
画像領域が、網点面積率が0%を越え60%未満の範囲である少なくとも1つのカラーにより印刷されている場合に、その画像領域に沿って、網点面積率が60%以上100%以下の範囲であるその少なくと1つのカラーにより印刷されるバー領域が設けられることが好ましい。
【0072】
また、本実施の形態では、本発明における印刷物がカラーチャートに用いられる場合を説明したが、これに限られない。本発明は、たとえば、ラベル、パッケージまたはパウチなどの印刷物に適用されてもよい。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
20 画像、21,21A,21B カラーパッチ、26 罫線、31 第1バー領域、32 第1画像領域、33 第2バー領域、34 第2画像領域、41 第2網点パターン、42 第1網点パターン、43 第4網点パターン、44 第3網点パターン、51 印刷媒体、56,56M,56Y 刷版、57 凸部、58 切断装置、100 カラーチャート、110 第1方向、120 第2方向、131 第1非印刷領域、133 第2非印刷領域、151 シート材料、200 インク。
図1
図2
図3
図4
図5