(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025418
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】膜天井
(51)【国際特許分類】
E04B 9/22 20060101AFI20240216BHJP
E04B 9/26 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E04B9/22 A
E04B9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128842
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】522173789
【氏名又は名称】株式会社TRA・K
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮里 光一
(57)【要約】
【課題】施工性を向上させた膜天井を提供すること。
【解決手段】膜天井は、鋸歯形状の第一噛合せ部が内周面に形成された凹部を下部に有し、建物内の固定部材に固定される膜定着用型材と、外周面に形成され、第一噛合せ部と噛合う鋸歯形状の第二噛合せ部と第二噛合せ部の下部に設けられたツマミ部とを有し、膜定着用型材の凹部に挿入される嵌合ピースと、凹部の内周面と嵌合ピースの外周面との間に端部が挟まれて定着される膜材と、を備え、嵌合ピースは、ツマミ部が内側に移動することで幅が狭くなり、第二噛合せ部が第一噛合せ部と噛合う状態が解除された際に、上方に押し上げられることで上方向に移動し、下方に引っ張られることで下方向に移動するように構成されており、膜材の端部が凹部の内周面と嵌合ピースの外周面との間に挟まれた状態で、嵌合ピースが上下方向に移動することで、膜材の張力調整が可能となるように構成されているものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸歯形状の第一噛合せ部が内周面に形成された凹部を下部に有し、建物内の固定部材に固定される膜定着用型材と、
外周面に形成され、前記第一噛合せ部と噛合う鋸歯形状の第二噛合せ部と前記第二噛合せ部の下部に設けられたツマミ部とを有し、前記膜定着用型材の前記凹部に挿入される嵌合ピースと、
前記凹部の内周面と前記嵌合ピースの外周面との間に端部が挟まれて定着される膜材と、を備え、
前記嵌合ピースは、
前記ツマミ部が内側に移動することで幅が狭くなり、前記第二噛合せ部が前記第一噛合せ部と噛合う状態が解除された際に、上方に押し上げられることで上方向に移動し、下方に引っ張られることで下方向に移動するように構成されており、
前記膜材の端部が前記凹部の内周面と前記嵌合ピースの外周面との間に挟まれた状態で、前記嵌合ピースが上下方向に移動することで、前記膜材の張力調整が可能となるように構成されている
膜天井。
【請求項2】
前記膜定着用型材は、
上部の側面に設けられ、ボルトの頭部が配置される側部空間を有する側部レールを備えた
請求項1に記載の膜天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物内の天井の内装材として用いられる膜天井に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天井は上部の構造材を覆い、かつ建物内の美観を高めるためにクロス張りあるいはボード張り等の仕上げ材によって仕上げられている。また、天井は一般に水平面で構成され、仕上げ材の自重を考慮した取り付けを行うため、使用する内装材料に応じたしっかりとした下地材の施工が必要となってくる。また、クロス内装張り等の場合には下地の良否により仕上げの出来映えが大きく左右するため、下地工事を含め、手間のかかる作業となっていた。そこで、迅速な施工が行え、取り付け後も見栄えのよい膜天井の取付構造が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、枠体フレームの周縁に形成された膜材定着溝内に膜材の端部を定着して枠体フレームに内装膜材が張設された複数枚の膜天井ユニットを、膜天井ユニットに取着された吊りピースを介して、天井構造材の前記吊りピースに対応する位置に固定されたフレーム固定ピースに係止させるとともに、見切り縁化粧材で、膜天井ユニットで覆われた天井見切り部分を覆って取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、枠体フレームの周縁に形成された膜材定着溝内に膜材の端部を定着して前記枠体フレームに内装膜材が張設された複数枚の膜天井ユニットを工場等であらかじめ作成し、その後、膜材を設置する建物内の天井に設けられたフレーム固定ピースに係止させている。しかしながら、特許文献1の構造では、建物内で膜材の張力調整(張り具合の調整)ができず、膜天井ユニットをフレーム固定ピースに係止させた後で膜材の張力調整が生じた場合は、膜天井ユニットをフレーム固定ピースから取り外して工場等に搬送してから行う必要があり、施工性がよくないという課題があった。
【0006】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたもので、施工性を向上させた膜天井を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る膜天井は、鋸歯形状の第一噛合せ部が内周面に形成された凹部を下部に有し、建物内の固定部材に固定される膜定着用型材と、外周面に形成され、前記第一噛合せ部と噛合う鋸歯形状の第二噛合せ部と前記第二噛合せ部の下部に設けられたツマミ部とを有し、前記膜定着用型材の前記凹部に挿入される嵌合ピースと、前記凹部の内周面と前記嵌合ピースの外周面との間に端部が挟まれて定着される膜材と、を備え、前記嵌合ピースは、前記ツマミ部が内側に移動することで幅が狭くなり、前記第二噛合せ部が前記第一噛合せ部と噛合う状態が解除された際に、上方に押し上げられることで上方向に移動し、下方に引っ張られることで下方向に移動するように構成されており、前記膜材の端部が前記凹部の内周面と前記嵌合ピースの外周面との間に挟まれた状態で、前記嵌合ピースが上下方向に移動することで、前記膜材の張力調整が可能となるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る膜天井によれば、膜天井を設置した状態で容易に膜材の張力調整を行うことができるため、膜材の張力調整が生じた場合でも膜天井を建物内の固定部材から取り外して工場等に搬送する必要がないため、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る膜天井の設置態様を上方から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る膜天井を正面側から見た斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る膜天井の膜定着用型材の正面模式図である。
【
図4】実施の形態1に係る膜天井の嵌合ピースの正面模式図である。
【
図5】実施の形態1に係る膜天井の施工状態を示す正面模式図である。
【
図6】実施の形態1に係る膜天井の施工状態を示す平面模式図である。
【
図7】実施の形態1に係る膜天井の第1変形例の膜定着用型材の正面模式図である。
【
図8】実施の形態1に係る膜天井の第1変形例の施工状態を示す正面模式図である。
【
図9】実施の形態1に係る膜天井の第2変形例の膜定着用型材の正面模式図である。
【
図10】実施の形態1に係る膜天井の第2変形例の施工状態を示す正面模式図である。
【
図11】実施の形態1に係る膜天井の膜材を示す平面模式図である。
【
図12】実施の形態1に係る膜天井の膜材の膜定着手順を示す第1図である。
【
図13】実施の形態1に係る膜天井の膜材の膜定着手順を示す第2図である。
【
図14】実施の形態1に係る膜天井の膜材の膜定着手順を示す第3図である。
【
図15】実施の形態1に係る膜天井の膜材の膜定着手順を示す第4図である。
【
図16】実施の形態2に係る膜天井の設置態様を上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に係る膜天井を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本開示を限定するものではない。これらの方向を示す用語は、特に明示しない限り、膜天井を正面視した場合の方向を意味している。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る膜天井100の設置態様を上方から見た斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る膜天井100を正面側から見た斜視図である。
図1に示すように、実施の形態1に係る膜天井100は、建物内の上部の梁401に固定された固定部材200に固定され、建物内の天井面を構成するものである。
【0012】
固定部材200は、建物内の上部の梁401に固定されるものであり、梁401から下方(Y方向)に延びた束材210と、束材210の下端に設けられ、水平方向の第一方向(X方向)に延びた野縁受け220と、梁401と束材210との間に斜めに設けられそれらを補強する方杖材230とを備えている。この固定部材200は、水平方向の第二方向(Z方向)に間隔を空けて複数設けられている。なお、図示しないが、固定部材200が水平方向の第一方向(X方向)に間隔を空けて複数設けられていてもよい。この場合、固定部材200は、野縁受け220が水平方向の第二方向(Z方向)に延びる向きに配置される。
【0013】
梁401と束材210、梁401と方杖材230、および、束材210と方杖材230は、それぞれクランプ240を介してボルト等で固定されている。
【0014】
図1および
図2に示すように、膜天井100は、建物内の上部の梁401等の構造材を覆う略矩形状の膜材10と、水平方向の第一方向(X方向)に延び、膜材10の端部を定着する膜定着用型材20と、膜定着用型材20の凹部21に嵌合される略逆V字状の嵌合ピース30と、同一面内に隣接して配置されることにより、膜定着用型材20の下部開口を覆う平板状の化粧プレート40とを備えている。膜定着用型材20は、野縁受け220の下端にクランプ240を介してボルト固定されている。この膜定着用型材20は、例えば4本が矩形に配置され、膜材10の4つの端部をそれぞれ定着する。また、膜材10は、複数が同一面内に隣接して配置されることにより、建物内の全体あるいは一部の天井面を構成する。
【0015】
図3は、実施の形態1に係る膜天井100の膜定着用型材20の正面模式図である。膜定着用型材20は、アルミニウムで構成されており、
図3に示すように、凹部21と、位置合わせ部22と、化粧プレート固定部23と、上部レール24と、側部レール25とを備えている。ここで、膜定着用型材20がアルミニウムで構成されているのは、膜定着用型材20を建物の形状に合わせてカットしやすくするためである。凹部21は、膜定着用型材20の下部に設けられ、下面が開口した凹形状を有している。この凹部21は、嵌合ピース30が配置される下部空間21aと、内周面に形成された鋸歯形状の第一噛合せ部21bとを有する。位置合わせ部22は、膜定着用型材20の幅方向における一方の側部の下部から下方に突出して設けられている。化粧プレート固定部23は、膜定着用型材20の幅方向における一方の側部と対向する他方の側部の下部に形成されたネジが挿入される穴である。上部レール24は、膜定着用型材20の上部の幅方向中央に設けられ、上面が開口した凹形状を有している。この上部レール24は、ボルト500の頭部501が配置される上部空間24aを有する。側部レール25は、膜定着用型材20の上部の側面に設けられ、側面が開口した凹形状を有している。この側部レール25は、ボルト500の頭部501が配置される側部空間25aを有する。
【0016】
図4は、実施の形態1に係る膜天井100の嵌合ピース30の正面模式図である。嵌合ピース30は、アルミニウムで構成されており、
図4に示すように、外周面に形成され、第一噛合せ部21bと噛合う鋸歯形状の第二噛合せ部31と、第二噛合せ部31の下部に設けられたツマミ部32とを有する。また、嵌合ピース30は、下面が開口し、内部空間30aが形成されている。ここで、嵌合ピース30がアルミニウムで構成されているのは、外力によって嵌合ピース30を弾性変形しやすくするためである。
【0017】
図5は、実施の形態1に係る膜天井100の施工状態を示す正面模式図である。
図6は、実施の形態1に係る膜天井100の施工状態を示す平面模式図である。なお、
図5においては、下部空間21a内の膜材10の態様を省略している。
図5に示すように、凹部21の下部空間21aに嵌合ピース30が挿入され、凹部21の内周面と嵌合ピース30の外周面とで膜材10を挟んで定着させる。このとき、膜定着用型材20の第一噛合せ部21bと嵌合ピース30の第二噛合せ部31とが噛合うことで、嵌合ピース30が凹部21の下部空間21a内で動かないようになっている。また、膜定着用型材20の化粧プレート固定部23に、化粧プレート40がネジ固定されることで、膜定着用型材20の凹部21の開口を覆うようになっている。また、上部レール24の上部空間24aには、野縁受け220と膜定着用型材20とを固定する際に用いられるボルト500の頭部501が配置されるようになっている。また、側部レール25の側部空間25aには、膜定着用型材20と火打材250(
図6参照)とを固定する際に用いられるボルト500の頭部501が配置されるようになっている。つまり、膜定着用型材20に側部レール25が設けられているため、膜定着用型材20と火打材250とを固定する際にビスではなくボルト500で固定することができ、強度を向上させることができる。ここで、火打材250は、隣り合う膜定着用型材20の間に斜めに設けることで、膜定着用型材20の水平方向の変位を拘束する部材である。例えば、
図6に示すように、4本の膜定着用型材20が矩形に配置された際に、各膜定着用型材20の水平方向の変位を拘束するため、その矩形の各角部に火打材250が設けられる。
【0018】
ここで、嵌合ピース30のツマミ部32を摘まんで内側に移動させて嵌合ピース30の幅を狭くした状態で嵌合ピース30を上方に押し上げることで、膜定着用型材20の各凹部21の下部空間21aに嵌合ピース30を挿入することができる。また、嵌合ピース30のツマミ部32を摘まんで内側に移動させて嵌合ピース30の幅を狭くした状態で嵌合ピース30を下方に引っ張ることで、膜定着用型材20の各凹部21の下部空間21aから嵌合ピース30を取り外すことができる。
【0019】
図7は、実施の形態1に係る膜天井100の第1変形例の膜定着用型材20Aの正面模式図である。
図8は、実施の形態1に係る膜天井100の第1変形例の施工状態を示す正面模式図である。なお、
図8においては、下部空間21a内の膜材10の態様を省略している。
図3に示す膜定着用型材20に関して、代わりに膜定着用型材20Aを用いてもよい。膜定着用型材20では、凹部21および側部レール25をそれぞれ1つ有しているが、膜定着用型材20Aでは、
図7に示すように、凹部21および側部レール25を左右対称となる位置にそれぞれ2つ有している。
【0020】
図8に示すように、膜定着用型材20の各凹部21の下部空間21aに嵌合ピース30がそれぞれ挿入される。そして、左側の凹部21の内周面と左側の嵌合ピース30の外周面、および右側の凹部21の内周面と右側の嵌合ピース30の外周面で、膜材10をそれぞれ挟んで定着させる。このとき、膜定着用型材20の第一噛合せ部21bと嵌合ピース30の第二噛合せ部31とが噛合うことで、嵌合ピース30が凹部21の下部空間21a内で動かないようになっている。また、膜定着用型材20の化粧プレート固定部23に、化粧プレート40がネジ固定されることで、膜定着用型材20の左右の凹部21の開口を両方とも覆うようになっている。また、上部レール24の上部空間24aには、野縁受け220と膜定着用型材20とを固定する際に用いられるボルト500の頭部501が配置されるようになっている。また、左側の側部レール25の側部空間25aおよび右側の側部レール25の側部空間25aには、膜定着用型材20と火打材250とを固定する際に用いられるボルト500の頭部501がそれぞれ配置されるようになっている。
【0021】
図9は、実施の形態1に係る膜天井100の第2変形例の膜定着用型材20Bの正面模式図である。
図10は、実施の形態1に係る膜天井100の第2変形例の施工状態を示す正面模式図である。なお、
図10においては、下部空間21a内の膜材10の態様を省略している。
図3に示す膜定着用型材20に関して、代わりに膜定着用型材20Bを用いてもよい。膜定着用型材20Bは、
図9に示すように、膜定着用型材20Bと同様に凹部21および側部レール25を左右対称となる位置にそれぞれ2つ有しているが、膜定着用型材20Aでは、左右の凹部21がそれぞれ鉛直方向に設けられているのに対し、膜定着用型材20Bでは、左右の凹部21がそれぞれ斜め方向に設けられている。つまり、膜定着用型材20Bでは、正面視して左右の凹部21が略V字状になるように設けられている。
【0022】
図10に示すように、膜定着用型材20の各凹部21の下部空間21aに嵌合ピース30がそれぞれ挿入される。そして、左側の凹部21の内周面と左側の嵌合ピース30の外周面、および右側の凹部21の内周面と右側の嵌合ピース30の外周面で、膜材10をそれぞれ挟んで定着させる。このとき、膜定着用型材20の第一噛合せ部21bと嵌合ピース30の第二噛合せ部31とが噛合うことで、嵌合ピース30が凹部21の下部空間21a内で動かないようになっている。また、膜定着用型材20の化粧プレート固定部23に、下方に延びた側壁部を左右端部に有する化粧プレート40Bがネジ固定されることで、膜定着用型材20の左右の凹部21の開口を両方とも覆うようになっている。また、上部レール24の上部空間24aには、野縁受け220と膜定着用型材20とを固定する際に用いられるボルト500の頭部501が配置されるようになっている。また、左側の側部レール25の側部空間25aおよび右側の側部レール25の側部空間25aには、膜定着用型材20と火打材250とを固定する際に用いられるボルト500の頭部501がそれぞれ配置されるようになっている。
【0023】
図11は、実施の形態1に係る膜天井100の膜材10を示す平面模式図である。膜材10は、例えば不燃材料で構成されており、
図11に示すように、矩形の主部11と、主部11の四つの側方に設けられた矩形の端部12a~12dとを有する。主部11と各端部12a~12dとの間には罫書きライン13a~13dがそれぞれ設けられており、各罫書きライン13の中央にはセンターマーキング14a~14dがそれぞれ設けられている。なお、以下において、端部12a~12dの総称を端部12とし、罫書きライン13a~13dの総称を罫書きライン13とし、センターマーキング14a~14dの総称をセンターマーキング14とする。
【0024】
図12は、実施の形態1に係る膜天井100の膜材10の定着手順を示す第1図である。
図13は、実施の形態1に係る膜天井100の膜材10の定着手順を示す第2図である。
図14は、実施の形態1に係る膜天井100の膜材10の定着手順を示す第3図である。
図15は、実施の形態1に係る膜天井100の膜材10の定着手順示す第4図である。なお、
図12~
図14中の矢印A1およびA2は、それぞれ膜材10および嵌合ピース30の動く方向を示しており、
図12~
図15中の別の矢印は、膜材10に設けられた罫書きライン13の位置を示している。
【0025】
次に、実施の形態1に係る膜天井100の膜材10の定着手順について説明する。なお、以下の説明では、膜材10の4つの端部12を矩形に配置された4本の固定部材200に定着する手順について説明する。
【0026】
まず始めに、膜材10の第一の端部12aを第一の膜定着用型材20の凹部21の下部空間21aに挿入した状態で、嵌合ピース30を凹部21の下部空間21aに、その長手方向に沿って複数挿入して、凹部21の内周面と嵌合ピース30の外周面とで膜材10の第一の端部12aを挟んで仮止めする。そして、凹部21の下部空間21aに挿入されている嵌合ピース30を上方向に移動させ、膜材10の第一の端部12a側に設けられている第一の罫書きライン13aの位置を第一の膜定着用型材20の位置合わせ部22の位置に大まかに合わせる(
図12、
図13参照)。
【0027】
次に、第一の端部12aと対向する第二の端部12b側(
図11の太矢印方向)に膜材10を延ばす。膜材10の第二の端部12bを第二の膜定着用型材20の凹部21の下部空間21aに挿入した状態で、嵌合ピース30を凹部21の下部空間21aに、その長手方向に沿って複数挿入して、凹部21の内周面と嵌合ピース30の外周面とで膜材10の第二の端部12bを挟んで仮止めする。そして、凹部21の下部空間21aに挿入されている嵌合ピース30を上方向に移動させ、膜材10の第二の端部12b側に設けられている第二の罫書きライン13bの位置を第二の膜定着用型材20の位置合わせ部22の位置に大まかに合わせる(
図12、
図13参照)。
【0028】
次に、膜材10の第三の端部12cを第三の膜定着用型材20の凹部21の下部空間21aに挿入した状態で、嵌合ピース30を凹部21の下部空間21aに、その長手方向に沿って複数挿入して、凹部21の内周面と嵌合ピース30の外周面とで膜材10の第三の端部12cを挟んで仮止めする。そして、凹部21の下部空間21aに挿入されている嵌合ピース30を上方向に移動させ、膜材10の第三の端部12c側に設けられている第三の罫書きライン13cの位置を第三の膜定着用型材20の位置合わせ部22の位置に大まかに合わせる(
図12、
図13参照)。
【0029】
次に、膜材10の第三の端部12cと対向する第四の端部12dを第四の膜定着用型材20の凹部21の下部空間21aに挿入した状態で、嵌合ピース30を凹部21の下部空間21aに、その長手方向に沿って複数挿入して、凹部21の内周面と嵌合ピース30の外周面とで膜材10の第四の端部12dを挟んで仮止めする。そして、凹部21の下部空間21aに挿入されている嵌合ピース30を上方向に移動させ、膜材10の第四の端部12d側に設けられている第四の罫書きライン13dの位置を第四の膜定着用型材20の位置合わせ部22の位置に大まかに合わせる(
図12、
図13参照)。
【0030】
次に、第一の端部12a側のセンターマーキング14aから第三の端部12c側に向けて順番(
図11の細矢印[1]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力(張り具合)を調整する。ここで、膜材10の張力を調整するとは、膜定着用型材20の位置合わせ部22に対して罫書きライン13が傾いているのを真っ直ぐにしつつ、膜材10の各部分の張力の違いでシワができている場合に、各部分の張力を均等にして膜材10にできているシワを無くすことである。また、嵌合ピース30を上方向に移動させることで、その嵌合ピース30に挟まれている部分における膜材10の張力は大きくなる。一方、嵌合ピース30を下方向に移動させることで、その嵌合ピース30に挟まれている部分における膜材10の張力は小さくなる。次に、第一の端部12a側のセンターマーキング14aから第四の端部12d側に向けて順番(
図11の細矢印[2]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力を調整する。
【0031】
次に、第二の端部12b側のセンターマーキング14bから第三の端部12c側に向けて順番(
図11の細矢印[3]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力を調整する。次に、第二の端部12b側のセンターマーキング14bから第四の端部12d側に向けて順番(
図11の細矢印[4]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力を調整する。
【0032】
次に、第三の端部12c側のセンターマーキング14cから第一の端部12a側に向けて順番(
図11の細矢印[5]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力を調整する。次に、第三の端部12c側のセンターマーキング14cから第二の端部12b側に向けて順番(
図11の細矢印[6]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力を調整する。
【0033】
次に、第四の端部12d側のセンターマーキング14dから第一の端部12a側に向けて順番(
図11の細矢印[7]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力を調整する。次に、第四の端部12d側のセンターマーキング14dから第二の端部12b側に向けて順番(
図11の細矢印[8]方向)に、凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させて膜材10の張力を調整する。
【0034】
上記のように膜材10の全体の張力を調整した後、膜材10の各端部12a~12dにおいて凹部21の下部空間21aからはみ出ている部分、つまり余長部分をカットする(
図14参照)。
【0035】
最後に、膜定着用型材20の化粧プレート固定部23に、化粧プレート40をネジ固定する(
図15参照)。このように、化粧プレート40を設けることで、膜定着用型材20の凹部21の開口および膜材10の端部12が隠れるため、意匠性を向上させることができる。
【0036】
ここで、膜定着用型材20の凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させる方法について説明する。嵌合ピース30を上方向に移動させる場合、嵌合ピース30のツマミ部32を摘まんで内側に移動させて嵌合ピース30の幅を狭くして、第二噛合せ部31が第一噛合せ部21bと噛合う状態を解除した状態で、嵌合ピース30を上方に押し上げる。一方、嵌合ピース30を下方向に移動させる場合、嵌合ピース30のツマミ部32を摘まんで内側に移動させて嵌合ピース30の幅を狭くして、第二噛合せ部31が第一噛合せ部21bと噛合う状態を解除した状態で、嵌合ピース30を下方に引っ張る。このようにすることで、膜定着用型材20の凹部21の下部空間21a内で嵌合ピース30を上下方向に移動させることができる。
【0037】
以上、実施の形態1に係る膜天井100は、鋸歯形状の第一噛合せ部21bが内周面に形成された凹部21を下部に有し、建物内の固定部材200に固定される膜定着用型材20と、外周面に形成され、第一噛合せ部21bと噛合う鋸歯形状の第二噛合せ部31と、第二噛合せ部31の下部に設けられたツマミ部32とを有し、膜定着用型材20の凹部21に挿入される嵌合ピース30と、凹部21の内周面と嵌合ピース30の外周面との間に端部12が挟まれて定着される膜材10と、を備え、嵌合ピース30は、ツマミ部32が内側に移動することで幅が狭くなり、第二噛合せ部31が第一噛合せ部21bと噛合う状態が解除された際に、上方に押し上げられることで上方向に移動し、下方に引っ張られることで下方向に移動するように構成されており、膜材10の端部12が凹部21の内周面と嵌合ピース30の外周面との間に挟まれた状態で、嵌合ピース30が上下方向に移動することで、膜材10の張力調整が可能となるように構成されているものである。
【0038】
実施の形態1に係る膜天井100によれば、膜天井100を設置する建物内で容易に膜材10の張力調整を行うことができるため、施工性を向上させることができる。また、工場等での事前の膜天井100の組み立て作業および膜材10の張力調整作業などが不要であり、工場等での内作費用を低減できるため、製造コストを抑えることができる。また、膜天井100の各部材を事前に組み立てずに済むため、膜天井100を設置する建物へ持ち運びしやすい。また、膜定着用型材20に対して嵌合ピース30をかしめずに固定する構造となっており、膜定着用型材20から嵌合ピース30の取り外しが容易である。そのため、膜材10の取り替えが容易であり、さらには膜天井100の膜材10以外の部材、つまり、膜定着用型材20、嵌合ピース30、および、化粧プレート40の再利用が可能となる。
【0039】
また、実施の形態1に係る膜天井100において、膜定着用型材20は、上部の側面に設けられ、ボルト500の頭部501が配置される側部空間25aを有する側部レール25を備えたものである。
【0040】
実施の形態1に係る膜天井100によれば、膜定着用型材20に側部レール25が設けられているため、膜定着用型材20と火打材250とを固定する際にビスではなくボルト500で固定することができ、強度を向上させることができる。
【0041】
実施の形態2.
以下、実施の形態2について説明するが、実施の形態1と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0042】
図16は、実施の形態2に係る膜天井100の設置態様を上方から見た斜視図である。
図16に示すように、実施の形態2に係る膜天井100は、建物内の壁402に設けられた固定部材300に固定される。
【0043】
固定部材300は、壁402に固定される壁面支持部材310と、膜定着用型材20同士を繋げるコーナー固定部材320とを備えている。膜定着用型材20は、壁面支持部材310の下面にボルト固定されている。また、隣り合う膜定着用型材20と膜定着用型材20とは、コーナー固定部材320でボルト固定されている。
【0044】
実施の形態3.
以下、実施の形態3について説明するが、実施の形態1および2と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1および2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0045】
実施の形態3に係る膜天井100は、一部が建物内の天井の梁401に設けられた固定部材200に固定され、残りの一部が建物内の壁402に設けられた固定部材300に固定される。
【符号の説明】
【0046】
10 膜材、11 主部、12 端部、12a~12d 端部、13 罫書きライン、13a~13d 罫書きライン、14 センターマーキング、14a~14d センターマーキング、20 膜定着用型材、20A 膜定着用型材、20B 膜定着用型材、21 凹部、21a 下部空間、21b 第一噛合せ部、22 位置合わせ部、23 化粧プレート固定部、24 上部レール、24a 上部空間、25 側部レール、25a 側部空間、30 嵌合ピース、30a 内部空間、31 第二噛合せ部、32 ツマミ部、40 化粧プレート、40B 化粧プレート、100 膜天井、200 固定部材、210 束材、220 野縁受け、230 方杖材、240 クランプ、250 火打材、300 固定部材、310 壁面支持部材、320 コーナー固定部材、401 梁、402 壁、500 ボルト、501 頭部。