(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025422
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】医療用長尺部材の保持具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/02 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
A61M25/02 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128850
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大宮 由裕
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敬成
(72)【発明者】
【氏名】大山 峻
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA07
4C267AA12
4C267AA28
4C267BB20
4C267BB31
4C267CC09
4C267HH07
4C267HH15
(57)【要約】
【課題】医療用長尺部材に対するダメージを抑制しつつ保持できる、医療用長尺部材の保持具を提供する。
【解決手段】この保持具10は、第1部材20と、第1部材20に対し相対回転可能な第2部材40と、一部が第1部材20及び第2部材40に固定される、伸縮性材料からなる伸縮性摩擦部材50とを有し、伸縮性摩擦部材50は、第1部材20に対して第2部材40を相対回転させることでねじれて、第1部材20に対する固定部分と第2部材40に対する固定部分との間の中間部55が、医療用長尺部材1の外周に密着して保持し、前記相対回転させた状態で、第1部材20に対して第2部材40の、ねじりが戻る方向への回転を規制する回り止め部を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用長尺部材の外周に配置される第1部材と、
前記医療用長尺部材の外周に配置され且つ前記第1部材に対して相対回転可能とされた第2部材と、
前記医療用長尺部材の外周に配置されると共に、一部が前記第1部材及び前記第2部材に固定される、伸縮性材料からなる伸縮性摩擦部材とを有しており、
前記伸縮性摩擦部材は、前記第1部材に対して前記第2部材を相対回転させることでねじれて、前記第1部材に対する固定部分と前記第2部材に対する固定部分との間の中間部が、前記医療用長尺部材の外周に密着して、前記医療用長尺部材を保持し、
前記相対回転させた状態で、前記第1部材に対して前記第2部材の、ねじりが戻る方向への回転を規制する回り止め部を有することを特徴とする医療用長尺部材の保持具。
【請求項2】
前記第1部材、前記第2部材、及び前記伸縮性摩擦部材には、その一端から他端に向けて軸方向の全長に亘り延びるスリットがそれぞれ形成されており、
各スリットは、前記第1部材に対して前記第2部材を相対回転させる前の状態において、互いに整合して、前記医療用長尺部材を挿通可能となるように構成されている請求項1記載の医療用長尺部材の保持具。
【請求項3】
前記第1部材は筒状をなしており、
前記第2部材は筒状をなし、且つ、前記第1部材に対して同軸的に配置される請求項1記載の医療用長尺部材の保持具。
【請求項4】
前記医療用長尺部材の保持具は、前記医療用長尺部材を挿通する部材の挿入部に固定可能とされている請求項1~3のいずれか1つに記載の医療用長尺部材の保持具。
【請求項5】
前記医療用長尺部材の保持具は、前記医療用長尺部材のトルクデバイスとして用いられるものであって、前記第1部材又は前記第2部材に把持部が設けられている請求項1~3のいずれか1つに記載の医療用長尺部材の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用長尺部材を保持する、医療用長尺部材の保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮下で動脈と静脈とを吻合して、動脈血を直接静脈に流入させアクセスのしやすい静脈血管を怒張させたり、動静脈間にグラフト(人工血管)を吻合したりすることで、血液透析(人工透析)に必要な体外循環血流量の確保を容易にする、シャント手術が行われている。ただし、上記のような血液透析治療を続けることで、シャント部周辺に閉塞や狭窄がみられることがあった。そのため、このような閉塞部や狭窄部を拡張する治療(シャントPTA)を行う際に、例えば、バルーンカテーテル等の医療用長尺部材が使用されている。
【0003】
ところで、上記のようなシャント部周辺の閉塞部や狭窄部の拡張治療時(シャントPTA))において、バルーンカテーテル等の医療用長尺部材を使用する場合、一定時間、医療用長尺部材が移動しないように保持する必要がある。この場合、医療用長尺部材を人体に対してテープ等を介して保持したり、或いは、別体の保持具を用いて、医療用長尺部材を保持したりすることもある。
【0004】
後者のものとして、例えば、下記特許文献1には、医療用カテーテルを固定するための、固定具が記載されている。この固定具は、カテーテルとの摩擦力によって該カテーテルの長さ方向の移動を制御するストッパ部と、リング状、脚状或いは板状に形成されて皮膚に接触する固定部とからなり、ストッパ部のカテーテル外周に嵌め込まれる内腔が、その中心軸線と同一の中心軸線をもった第1内腔部と、該第1内腔部の中心軸線と僅かな角度で傾斜して連接された第2内腔部とで形成され、カテーテルの外周面との間の摩擦抵抗を大きくして滑り難くした構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の固定具の場合、ストッパ部の内部は、第1内腔部に対して第2内腔部が傾斜しているため、ストッパ部内に医療用カテーテルが挿入されると、該医療用カテーテルが屈曲した状態で保持されることになる(特許文献1の
図2参照)。この場合、医療用カテーテルにダメージを与えるおそれがある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、医療用長尺部材に対するダメージを抑制しつつ、医療用長尺部材を保持することができる、医療用長尺部材の保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る医療用長尺部材の保持具は、医療用長尺部材の外周に配置される第1部材と、前記医療用長尺部材の外周に配置され且つ前記第1部材に対して相対回転可能とされた第2部材と、前記医療用長尺部材の外周に配置されると共に、一部が前記第1部材及び前記第2部材に固定される、伸縮性材料からなる伸縮性摩擦部材とを有しており、前記伸縮性摩擦部材は、前記第1部材に対して前記第2部材を相対回転させることでねじれて、前記第1部材に対する固定部分と前記第2部材に対する固定部分との間の中間部が、前記医療用長尺部材の外周に密着して、前記医療用長尺部材を保持し、前記相対回転させた状態で、前記第1部材に対して前記第2部材の、ねじりが戻る方向への回転を規制する回り止め部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1部材に対して第2部材を相対回転させることで、伸縮性材料からなる伸縮性摩擦部材がねじれて、その中間部が医療用長尺部材の外周に密着して、医療用長尺部材を保持するので、医療用長尺部材に対するダメージを抑制しつつ保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る医療用長尺部材の保持具の第1実施形態を示しており、その分解斜視図である。
【
図3】同保持具で医療用長尺部材を保持する工程を示しており、その第1工程の斜視図である。
【
図4】同保持具で医療用長尺部材を保持する際の第1工程であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA-A矢視線における断面図である。
【
図5】(a)は、
図4(a)のB-B矢視線における断面図、(b)は、第1部材に対して第2部材を回転させる前の、回り止め部の拡大説明図、(c)は、第1部材に対して第2部材を回転させた後の、回り止め部の拡大説明図である。
【
図6】同保持具で医療用長尺部材を保持する際の第2工程であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【
図7】同保持具で医療用長尺部材を保持する際の第3工程であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【
図8】同保持具の使用状態を示す断面説明図である。
【
図9】本発明に係る医療用長尺部材の保持具の第2実施形態を示しており、その斜視図である。
【
図10】本発明に係る医療用長尺部材の保持具の第3実施形態を示しており、(a)はその正面図、(b)は横断面図である。
【
図11】同保持具で医療用長尺部材を保持する際の第1工程であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)のD-D矢視線における断面図、(c)は横断面図である。
【
図12】同保持具で医療用長尺部材を保持する際の第2工程であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【
図13】本発明に係る医療用長尺部材の保持具の第4実施形態を示しており、その斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(長尺部材の保持具の第1実施形態)
以下、
図1~8を参照して、本発明に係る医療用長尺部材の保持具の、第1実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、この実施形態における医療用長尺部材の保持具10(以下、単に「保持具10」ともいう)は、医療用長尺部材1(
図3参照、以下単に「長尺部材1」ともいう)を保持するものである。
【0013】
図4を併せて参照すると、この保持具10は、長尺部材1の外周に配置される第1部材20と、長尺部材1の外周に配置され且つ第1部材20に対して相対回転可能とされた第2部材40と、長尺部材1の外周に配置されると共に、一部が第1部材20及び第2部材40に固定される、伸縮性材料からなる伸縮性摩擦部材50(以下、単に「摩擦部材50」ともいう)とを有している。
【0014】
この実施形態では、摩擦部材50の一部である一端51が第1部材20の内面に固定されると共に、同じく摩擦部材50の一部である他端53が第2部材40に固定されるようになっている(
図4(a)参照)。なお、摩擦部材50の一端51が、本発明における「第1部材に対する固定部分」をなしており、摩擦部材50の他端53が、本発明における「第2部材に対する固定部分」をなしている。
【0015】
また、摩擦部材50は、第1部材20に対して第2部材40を相対回転させることでねじれて、
図7に示すように、第1部材20に対する固定部分(ここでは摩擦部材50の一端51)と第2部材40に対する固定部分(ここでは摩擦部材50の他端53)との間の中間部55が、長尺部材1の外周に密着して、同長尺部材1を保持するものとなっている。
【0016】
更に、第1部材20に対して第2部材40を相対回転させた状態で、第1部材20に対して第2部材40の、ねじりが戻る方向への回転を規制する回り止め部を有する(ここでは
図5(b),(c)に示す第1回り止め突部33及び第2回り止め突部45を指す。これについては後述する)。
【0017】
図8に示すように、この保持具10が保持する長尺部材1は、この実施形態の場合、筒状をなしたバルーンカテーテルとなっている。
【0018】
また、バルーンカテーテルとされた長尺部材1は、所定長さで延びる鞘状をなしたシース2に挿通されるようになっている(
図8参照)。このシース2が、図示しない穿刺針等を介して皮膚8を通って、血管等の管状器官9内に挿入されるようになっている。また、シース2の延出方向の基端側には、コネクタ3が装着されている。そして、保持具10は、長尺部材1を保持すると共に、コネクタ3に固定されるようになっている。なお、上記のシース2が、本発明における「医療用長尺部材を挿通する部材」をなし、コネクタ3の基端開口部が、本発明における「挿入部」をなしている。
【0019】
また、コネクタ3の外周所定箇所には、シース2内に生理食塩水や薬液等の流体を注入するための、流体注入チューブ4が連結されている。更に、コネクタ3の基端開口部には、長尺部材1を挿通可能とした膜体5が、キャップ6を介して抜け止め保持されている。また、コネクタ3の基端外周からは、保持具10との固定用の、一対の突起7,7が突設されている。
【0020】
なお、以下の説明において、「一端部」や「一端」とは、医療用長尺部材の保持具を使用する使用者の、手元から遠い方の端部(遠位端部)を意味し、「他端部」や「他端」とは、上記の一端部や一端とは反対側の端部(使用者の手元に近い近位端部)を意味する。ただし、
図10~12に示す第3実施形態の伸縮性摩擦部材50Bを除くものとする。
【0021】
そして、この実施形態における第1部材20は、所定長さで延びる略円筒状をなした本体21を有している。
【0022】
また、本体21の延出方向の一端部外周からは、径方向外方に向けて、環状をなしたフランジ部23が張り出しており、該フランジ部23を介して、本体21よりも拡径した拡径部25が設けられている。
【0023】
図4や
図5(a)に示すように、拡径部25の内周には、第1部材20の軸方向に沿って形成された一対の軸方向溝27,27と、該軸方向溝27,27の軸方向他端側において、第1部材20の周方向に沿って形成され、且つ、軸方向溝27,27に連通した一対の周方向溝29,29とが設けられている。
【0024】
そして、コネクタ3の一対の突起7,7に、第1部材20の一対の軸方向溝27,27を位置合わせして、コネクタ3に対して第1部材20を押し込んだ後、コネクタ3に対して第1部材20を所定方向に回転させることで、一対の突起7,7が一対の周方向溝29,29に入り込んで、
図8に示すように、コネクタ3の基端部側に第1部材20が抜け止め固定されるようになっている。
【0025】
また、本体21の延出方向の他端面からは、本体21の外径よりも縮径した、環状の凸部形状をなした環状凸部31が突出している。
図5(b),(c)に示すように、前記環状凸部31の外周の所定箇所からは、外周が凸曲面状(略半円形状)をなした第1回り止め突部33が突設されている。
【0026】
一方、第2部材40は筒状をなしており、第1部材20に対して同軸的に配置されるものとなっている(
図2参照)。
【0027】
具体的には、この実施形態の第2部材40は、所定長さで延びる略円筒状をなした本体41を有している。この本体41は、第1部材20の本体21に適合する外径及び内径で形成されている(
図4参照)。また、本体41は、その延出方向の一端部が、第1部材20の延出方向の他端部に対向して配置される(
図2参照)。更に、本体41の一端部内周には、第1部材20の環状凸部31が入り込む、環状の凹部形状をなした環状凹部43が形成されている。
【0028】
また、
図5(b),(c)に示すように、環状凹部43の内周面からは、外周が凸曲面状(略半円形状)をなした第2回り止め突部45が突設されていると共に、該第2回り止め突部45に対して所定長さ離れた位置から、外周が略四角形状をなした過回転防止ストッパ47が突設されている。なお、第2回り止め突部45と、過回転防止ストッパ47との周方向間隔は、第1回り止め突部33が入り込むことが可能な寸法となっている。
【0029】
図5(b)は、第1部材20及び第2部材40の相対回転前の状態が示されている。この状態では、第1回り止め突部33の周方向一側部からやや離れた箇所に、過回転防止ストッパ47が位置している。
【0030】
上記状態から、例えば、第1部材20を把持固定して、第2部材40を
図3や
図5(b)に示すR1方向に回転させると、摩擦部材50の中間部55がねじられつつ(
図6(b),
図7(b)参照)、
図5(c)に示すように、第1回り止め突部33を第2回り止め突部45が乗り越えて、第1回り止め突部33が、第2回り止め突部45と過回転防止ストッパ47との間に入り込む。この際、第2部材40をR1方向に更に回転させようとしても、過回転防止ストッパ47が第1回り止め突部33に当接するので、第2部材40の過回転が防止されるようになっている。
【0031】
そして、第1部材20に対する回転動作を終了し、第2部材40から手を離すと、中間部55がねじられた摩擦部材50が、その復元力によって、ねじりが戻る方向に回転するので、
図5(c)のR2に示す方向に、第1部材20に対して第2部材40が回転しようとする。この際、第1回り止め突部33に第2回り止め突部45が当接するので、第2部材40の、R2方向への回転が規制されることになる。
【0032】
なお、
図5(c)に示す状態から、第1部材20及び第2部材40を軸方向に離間するように移動させると、第1回り止め突部33と第2回り止め突部45とが軸方向に位置ずれして、第2回り止め突部45が、第1回り止め突部33に当接した状態が解除される。その結果、第2部材40の、R2方向への回転規制が解除され、相対回転前の状態にすることができるようになっている。
【0033】
以上のように、この実施形態では、第1部材20側に設けた第1回り止め突部33と、第2部材40側に設けた第2回り止め突部45とが、本発明における「回り止め部」をなしている。
【0034】
次に、摩擦部材50について説明する。
【0035】
この摩擦部材50は、例えば、ゴムや、弾性エラストマー、伸縮性を有する繊維又は合成樹脂等の、伸縮性を有し且つ長尺部材1の外周に対して摩擦力を発揮し得る材料で形成されている。
【0036】
図1に示すように、この実施形態における摩擦部材50は、上記材料で形成された所定長さで延びる略円筒状をなしている。また、摩擦部材50は、第1部材20及び第2部材40の内側(内部空間)に挿入可能な寸法で形成されている。
【0037】
そして、
図4に示すように、摩擦部材50は、延出方向の一端部側が第1部材20内に挿入されて、摩擦部材50の一部である一端51の外周が、第1部材20の本体21の一端部内周に接着剤等を介して固定されると共に、延出方向の他端部側が第2部材40内に挿入されて、摩擦部材50の一部である他端53の外周が、第2部材40の本体41の他端部内周に接着剤等を介して固定される。その結果、第1部材20及び第2部材40に摩擦部材50が取付けられる。すなわち、第1部材20と第2部材40とが、摩擦部材50を介して互いに相対回転可能なように一体化して、保持具10が構成されるようになっている。
【0038】
また、摩擦部材50の、第1部材20に対する固定部分である一端51と、第2部材40に対する固定部分である他端53との間に位置する中間部55は、第1部材20や第2部材40に対して遊離しており(第1部材20や第2部材40に固定されていない)、第1部材20に対する第2部材40の相対回転時にねじれて、長尺部材1の外周に密着可能となっている。
【0039】
更に
図4に示すように、第1部材20と第2部材40とが摩擦部材50を介して一体化して保持具10が構成された状態では、摩擦部材50の中間部55は、長尺部材1の外周から径方向に一定距離を空けて離間するようになっている(第1部材20及び第2部材40の内周からも離間する)。
【0040】
また、上記中間部55は、一端51との間に、摩擦部材50の一端面に向けて次第に拡径するテーパ状をなしたテーパ部57を有すると共に、他端53との間に、摩擦部材50の他端面に向けて次第に拡径するテーパ状をなしたテーパ部57とを有している。
【0041】
保持具10で長尺部材1を保持するには、例えば、次のようにする。
【0042】
まず、
図3や
図4に示すように、長尺部材1を、保持具10の一端側又は他端側の一方の開口から挿入すると共に、保持具10の一端側又は他端側の他方の開口から挿出させて、第1部材20、第2部材40、摩擦部材50の内側(内部空間)に長尺部材1を挿通させ、保持具10を長尺部材1の外周に配置する。その後、第1部材20を把持固定して、第2部材40を
図3や
図5(b)に示すR1方向に回転させていく(ねじっていく)。
【0043】
すると、摩擦部材50の、第1部材20に固定された一端51に対して、他端53が、第2部材40の回転に伴って回転するので、摩擦部材50の中間部55がねじられていき、
図6(b)に示すように、テーパ部57に螺旋状のヒダやシワが生じるように、中間部55が変形すると共に、
図6(a)に示すように、中間部55の所定部分が、長尺部材1の外周に巻付いて密着していく。
【0044】
更に第1部材20に対して第2部材40をR1方向に回転させていくと、摩擦部材50の中間部55が一層ねじられて、
図7(b)に示すように、テーパ部57の螺旋状のヒダやシワが増大するように、中間部55が更に変形すると共に、
図7(a)に示すように、中間部55が長尺部材1の外周に更に巻付いて、長尺部材1の外周に対する摩擦部材50の中間部55の密着量が増大する。その結果、保持具10が長尺部材1を保持することになる。
【0045】
(変形例)
以上説明した実施形態における医療用長尺部材の保持具や、同保持具を構成する第1部材、第2部材、伸縮性摩擦部材等の、形状や構造、レイアウトなどは、上記態様に限定されるものではない。
【0046】
また、医療用長尺部材は、バルーンカテーテル以外にも、ガイドワイヤや、シース、医療用チューブ、チューブステント等であってもよい。
【0047】
更に、本発明における「医療用長尺部材を挿通する部材」は、この実施形態の場合、シース2となっているが、医療用長尺部材を挿通する部材としては、例えば、内視鏡を構成するチューブ(複数のルーメンを有するチューブ)や、カテーテル、医療用チューブ等であってもよい。
【0048】
また、本発明における「挿入部」は、この実施形態の場合、コネクタ3の基端開口部となっているが、挿入部としては、例えば、内視鏡を構成するチューブの、複数のルーメンの基端開口部等であってもよい。
【0049】
この実施形態の場合、第1部材、第2部材、伸縮性摩擦部材は、医療用長尺部材の外周全部を囲むような略円筒状をなしているが、これに限定されず、医療用長尺部材の外周に配置可能であればよい。例えば、第1部材や第2部材を、角筒状や、C字枠状、U字枠状等としてもよい。
【0050】
また、この実施形態の伸縮性摩擦部材50は、一端51が第1部材20に固定され、他端53が第2部材40に固定されているが、第1部材20や第2部材40との固定部分は、一端51や他端53でなくともよい。すなわち、伸縮性摩擦部材は、その一部が第1部材及び第2部材に固定されて、第1部材に対して第2部材を相対回転させたときにねじれて、中間部が医療用長尺部材の外周に密着する構成であればよく、例えば、帯状に延びるような形状であってもよい。
【0051】
また、この実施形態の場合、保持具を医療用長尺部材の外周に配置するにあたり、保持具の延出方向両端に位置する開口から医療用長尺部材を挿入しているが、例えば、第1部材や第2部材の外周に、軸方向に延びるスリットを形成して、該スリットから医療用長尺部材を保持具内に挿入してもよい(これについては第2実施形態で説明する)。
【0052】
更に、この実施形態の場合、第1部材及び第2部材は同軸的に配置される筒状となっているが、例えば、第1部材又は第2部材の一方の部材を筒状とし、他方の部材を、一方の部材に対して相対回転可能な枠状形状等としてもよい(これについては第3実施形態で説明する)。
【0053】
また、この実施形態の保持具10の場合、長尺部材1を保持すると共に、シース2に装着されたコネクタ3の基端部側に抜け止め固定されるようになっているが、医療用長尺部材の保持具としては、医療用長尺部材を保持可能なものであればよい。
【0054】
更に、本発明における「回り止め部」は、この実施形態の場合、第1部材20側に設けた第1回り止め突部33と、第2部材40側に設けた第2回り止め突部45とからなるが(突部と突部とからなる構造)、回り止め部としては、例えば、一方の部材に凸部を設け、他方の部材に、凸部が嵌合する凹部を設けたりしてもよく、特に限定されない。
【0055】
(作用効果)
次に、上記構造からなる保持具10の作用効果について説明する。
【0056】
この実施形態における保持具10は、例えば、血液透析治療を続けることで、シャント部周辺に閉塞や狭窄がみられた場合に、閉塞部や狭窄部を拡張する治療(シャントPTA)を行う際に用いられる、バルーンカテーテル等の医療用長尺部材1を保持するものとして利用することができる。なお、医療用長尺部材としては、例えば、胆管、膵管、血管、尿管、気管等の各種の管状器官や、体腔等の人体組織の所定位置に、ステント等を留置したりする際に用いられるものであってもよく、特に限定されない。また、保持具で保持する医療用長尺部材の種類や、保持具の使用箇所は特に限定されない。
【0057】
この実施形態の場合、上記長尺部材1は、
図8に示すように、シース2に装着されたコネクタ3の基端開口部に挿入された状態となっている。
【0058】
そして、この長尺部材1を保持具10で保持する際には、保持具10の一端側開口、すなわち、第1部材20の一端側の開口(拡径部25側の開口)から長尺部材1を挿入し、摩擦部材50の内側を挿通させ、保持具10の他端側開口(第2部材40や摩擦部材50の他端側開口)から挿出させて、長尺部材1の外周に保持具10を配置する。
【0059】
その後、コネクタ3の一対の突起7,7に、第1部材20の一対の軸方向溝27,27を位置合わせして、コネクタ3に対して第1部材20を押し込んだ後、コネクタ3に対して第1部材20を所定方向に回転させて、コネクタ3の基端部側に第1部材20を抜け止め固定する。
【0060】
そして、第1部材20を把持固定して、第2部材40を
図3や
図5(b)に示すR1方向に回転させていくと、摩擦部材50の中間部55のテーパ部57が、螺旋状に変形すると共に(
図6(b)参照)、中間部55が長尺部材1の外周に密着する(
図6(a)参照)。その後、テーパ部57が更に螺旋状に変形すると共に(
図7(b)参照)、中間部55が長尺部材1の外周に更に巻付いて、その密着量が増大し(
図7(a)参照)、保持具10で長尺部材1を保持することができる。
【0061】
なお、この実施形態では、第1部材20を把持固定して、第2部材40を回転させるようにしたが、第2部材40を把持固定して、第1部材20を回転させるようにしてもよく、第1部材20に対して第2部材40を相対回転させればよい。
【0062】
また、上記の第1部材20に対する第2部材40の回転動作に伴って、第1回り止め突部33を第2回り止め突部45が乗り越えて、第1回り止め突部33が、第2回り止め突部45と過回転防止ストッパ47との間に入り込む(
図5(c)参照)。そのため、中間部55がねじられた摩擦部材50の復元力によって、第2部材40が、摩擦部材50の中間部55のねじりが戻る方向(R2方向への回転)に回転しようとしても、第1回り止め突部33に第2回り止め突部45が当接するので、ねじりが戻る方向への回転が規制される。
【0063】
以上のように、この保持具10においては、保持具10を長尺部材1の外周に配置した後、第1部材20に対して第2部材40を相対回転させると、摩擦部材50の中間部55が、長尺部材1の外周に密着して、長尺部材1を保持すると共に、相対回転させた状態では、回り止め部(第1回り止め突部33及び第2回り止め突部45)によって、第1部材20に対して第2部材40の、摩擦部材50のねじりが戻る方向への回転が規制されるため、長尺部材1を保持具10でしっかりと保持することができる。
【0064】
そして、この保持具10においては、第1部材20に対して第2部材40を相対回転させることで、伸縮性材料からなる摩擦部材50がねじれて、その中間部55が長尺部材1の外周に密着して、長尺部材1を保持するので、長尺部材1に対するダメージを抑制しつつ保持することができる。
【0065】
また、第1部材20に対する第2部材40の相対回転時における、ねじり量を増やすことで、長尺部材1が小径の場合であっても、摩擦部材50の中間部55を長尺部材1の外周に密着させることができるので、長尺部材1の外径変化に柔軟に対応して汎用性を高めることができる。
【0066】
上記効果に加えて、摩擦部材50のねじり量によって、長尺部材1に対する保持具10の保持力を容易に調整することができる。すなわち、第1部材20に対する第2部材40の、相対回転する量を少なくすれば、摩擦部材50のねじり量は減るため、長尺部材1に対する保持具10の保持力を低く保つことができる。一方、第1部材20に対する第2部材40の、相対回転する量を多くすれば、摩擦部材50のねじり量は増えるため、長尺部材1に対する保持具10の保持力を高めることができる。
【0067】
なお、保持具10による、長尺部材1の保持状態を解除する際には、以下のようにする。すなわち、
図5(c)に示す、第1回り止め突部33と第2回り止め突部45とが当接した状態から、第1部材20及び第2部材40を軸方向に離間するように移動させる。すると、第2回り止め突部45と第1回り止め突部33との当接状態が解除されるので、第2部材40の、R2方向への回転規制が解除されて、相対回転前の状態にすることができ、保持具10による、長尺部材1の保持状態を解除することができる。
【0068】
更に、この実施形態においては、第1部材20は筒状をなしており、第2部材40は筒状をなし、且つ、第1部材20に対して同軸的に配置されている。
【0069】
上記態様によれば、第1部材20及び第2部材40が共に筒状をなしているので、その剛性を高めることができる。その結果、第1部材20に対して第2部材40を相対回転させて、摩擦部材50の中間部55をねじるときに、両部材20,40を把持しやすくなり、両部材20,40を回転操作しやすくなる。
【0070】
また、第1部材20及び第2部材40が共に筒状をなしているため、製造しやすい。更に、第1部材20及び第2部材40が共に筒状となっているので、例えば、第1部材20に対して第2部材40を360°以上回転させて、摩擦部材50をねじる操作に対応しやすくなり、長尺部材1を保持具10で、よりしっかりと保持することができる。
【0071】
また、この実施形態においては、保持具10は、長尺部材1を挿通する部材(シース2)の挿入部(コネクタ3の基端開口部)に固定可能とされている。
【0072】
上記態様によれば、
図8に示すように、長尺部材1を挿通する部材の挿入部に対して、保持具10を固定することができるので、挿入部に対して、長尺部材1の挿入位置を固定することができる。
【0073】
(長尺部材の保持具の第2実施形態)
図9には、本発明に係る長尺部材の保持具の、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0074】
この実施形態の長尺部材の保持具10A(以下、単に「保持具10A」という)は、第1部材20A、第2部材40A、及び伸縮性摩擦部材50A(以下、単に「摩擦部材50A」ともいう)に、一端から他端に向けて軸方向の全長に亘り延びるスリット35,49,59がそれぞれ形成されている。
【0075】
すなわち、第1部材20A、第2部材40A、摩擦部材50Aには、その周方向所定箇所において、各部材20A,40A,50Aの延出方向の一端から他端に向けて、軸方向の全長に亘って延びるスリット35,49,59がそれぞれ形成されている。
【0076】
また、各スリット35,49,59は、第1部材20Aに対して第2部材40Aを相対回転させる前の状態において、互いに整合して、長尺部材1を挿通可能となるように構成されている。
【0077】
この実施形態によれば、第1部材20A、第2部材40A、摩擦部材50Aに設けたスリット35、49,59をそれぞれ整合させることで、これらのスリット35,49,59から長尺部材1を挿通可能となる。そのため、長尺部材1の径方向側(横方向側)から、保持具10Aを長尺部材1の外周に配置することができ、長尺部材1に保持具10Aを保持させる際の、作業性を向上させることができると共に、利便性を向上させることができる。
【0078】
(長尺部材の保持具の第3実施形態)
図10~12には、本発明に係る長尺部材の保持具の、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0079】
この実施形態の長尺部材の保持具10B(以下、単に「保持具10B」という)は、第1部材20Bと、第2部材40Bと、伸縮性摩擦部材50B(以下、単に「摩擦部材50B」ともいう)とを有している。
【0080】
図10(a)に示すように、第1部材20Bには、その周方向所定箇所において、延出方向の一端から他端に向けて、軸方向の全長に亘って延びる長尺部材挿通スリット37が形成されている。この長尺部材挿通スリット37から、長尺部材1を第1部材20内に挿通可能となっている。
【0081】
また、第1部材20Bの一端部側には、第1部材20Bの周方向に沿って、第2部材回転用スリット39が形成されている。この第2部材回転用スリット39は、第1部材20
Bの一端部側であって、長尺部材挿通スリット37の長手方向に沿った一側辺に近接した位置から、長尺部材挿通スリット37の長手方向に沿った他側辺に近接した位置に至る範囲に形成されている(
図10(a),
図11(b)参照)。
【0082】
一方、第2部材40Bは、
図10(b)に示すように、略C字枠状をなした本体41Bと、該本体41Bの周方向一端部外周から突出した突起状をなした操作レバー42とを有している。第2部材40Bの本体41Bは、第1部材20Bの一端部内周に回転可能に配置される。また、第2部材40Bの操作レバー42は、第1部材20Bの第2部材回転用スリット39の内部開口から挿入されて、該第2部材回転用スリット39の外部開口から挿出されている(
図11(b)参照)。その結果、操作レバー42を介して、第2部材40Bを、第1部材20Bの周方向に沿って回転可能となっている。
【0083】
更に、摩擦部材50Bは、第2実施形態の摩擦部材50Aと同様に、スリット59が形成されていると共に(
図10(b)参照)、
図11(a)に示すように、一端51が第1部材20Bの他端内周に固定され、且つ、他端53が、第2部材40Bの本体41Bの内周に固定されている。
【0084】
そして、この実施形態においては、第1部材20Bを把持固定して、第2部材40Bを
図11(b)に示すように回転させていくと、テーパ部57に螺旋状のヒダ等が生じるように、摩擦部材50Bの中間部55が変形すると共に(
図11(c)参照)、中間部55が長尺部材1の外周に密着する(
図11(a)参照)。更に第2部材40Bを回転させると、テーパ部57のヒダ等が増大するように中間部55が更に変形して(
図12(b)参照)、中間部55が長尺部材1の外周に更に巻付いて、その密着量が増大し(
図12(a)参照)、保持具10Bが長尺部材1を保持することができる。
【0085】
(長尺部材の保持具の第4実施形態)
図13には、本発明に係る長尺部材の保持具の、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0086】
この実施形態の長尺部材の保持具10C(以下、単に「保持具10C」という)は、医療用長尺部材1のトルクデバイスとして用いられるものとなっている。
【0087】
この保持具10Cは、基本的に第2実施形態の保持具10Aと同様の構造となっており(各部材20A,40A,50Aにスリット35,49,59を設けた構造)、更に第2部材40Aの他端から、把持部48が延設されている。なお、この把持部48にも、第2部材40Aと同様に、スリット48aが形成されている。
【0088】
そして、この実施形態においては、第1部材20A、第2部材40A、摩擦部材50A、把持部48に設けたスリット35、49,59,48aをそれぞれ整合させて、これらのスリット35,49,59,48aから長尺部材1を挿通した後、第1部材20Aに対して第2部材40Aを回転させることで、摩擦部材50Aを介して保持具10Cで長尺部材1を保持することができる。
【0089】
この際、把持部48が長尺部材1の外周に配置されるので、この把持部48を把持することで、保持具10C全体を把持しやすくなり、保持具10Aをトルクデバイスとして利用することができる。
【0090】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 医療用長尺部材(長尺部材)
10,10A,10B,10C 医療用長尺部材の保持具(保持具)
20,20A,20B 第1部材
33 第1回り止め突部(回り止め部)
35 スリット
40,40A,40B 第2部材
45 第2回り止め突部(回り止め部)
48 把持部
49 スリット
50,50A,50B 伸縮性摩擦部材(摩擦部材)
51 一端
53 他端
55 中間部
59 スリット