(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025428
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20240216BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20240216BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20240216BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B60C13/00 E
B60C15/06 C
B60C9/08 L
B60C15/06 B
B60C15/06 Q
B60C15/00 K
B60C13/00 H
B60C15/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128858
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石崖 雄一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA33
3D131AA39
3D131BB03
3D131BC05
3D131BC31
3D131DA09
3D131DA34
3D131DA54
3D131GA11
3D131GA19
3D131HA03
3D131HA38
3D131KA05
3D131KA06
(57)【要約】
【課題】耐久性と軽量化との両立度を向上できる、タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2は、一対のビード8と、カーカス10と、一対の保護ゴム層6と、一対の補強ゴム層22とを備える。カーカス10のカーカスプライ42aは、プライ本体48aと、一対の折り返し部50aとを備える。補強ゴム層22は折り返し部50aと保護ゴム層6との間に位置する。ビード8のエイペックス40の外端PAは、径方向において、補強ゴム層22の外端PRSと内端PRUとの間に位置する。リム接触端PFから補強ゴム層22の外端PRSまでのゾーンにおける保護ゴム層6の厚さは、補強ゴム層22の径方向中心部分で薄く、その他の部分で厚い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
前記一対のビードの間を架け渡すカーカスと、
前記カーカスの軸方向外側に位置し、タイヤの側面を構成する一対の保護ゴム層と、
前記ビードの軸方向外側に位置する一対の補強ゴム層と
を備え、
前記カーカスが、カーカスコードを含むカーカスプライを備え、
前記カーカスプライが、前記一対のビードの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される一対の折り返し部とを備え、
前記補強ゴム層が前記折り返し部と前記保護ゴム層との間に位置し、
前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備え、
前記エイペックスの外端が、径方向において、前記補強ゴム層の外端と内端との間に位置し、
リム接触端から前記補強ゴム層の外端までのゾーンにおける前記保護ゴム層の厚さが、前記補強ゴム層の径方向中心部分で薄く、その他の部分で厚い、
タイヤ。
【請求項2】
前記保護ゴム層が、最大幅位置において基準厚さT0を有し、前記補強ゴム層の外端において外端厚さT1を有し、前記補強ゴム層の径方向中心部分において最小厚さT2を有し、前記リム接触端において接触厚さT3を有し、
前記補強ゴム層が、前記リム接触端において接触厚さTBを有し、
前記最小厚さT2が前記外端厚さT1よりも薄く、
前記外端厚さT1が前記基準厚さT0と同等であり、
前記接触厚さT3と前記接触厚さTBとの合計厚さT3Bが、前記基準厚さT0よりも厚い、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記最小厚さT2の前記外端厚さT1に対する比(T2/T1)が0.5以上であり、
前記合計厚さT3Bの前記基準厚さT0に対する比(T3B/T0)が3.0以上5.0以下である、
請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記補強ゴム層が、前記保護ゴム層が前記最小厚さT2を示す位置において中間厚さTAを有し、
前記最小厚さT2と前記中間厚さTAとの合計厚さT2Aの、前記外端厚さT1に対する比(T2A/T1)が0.5以上2.0以下である、
請求項2又は3に記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を30kPaに調整した基準状態において、前記側面の輪郭線が、最大幅位置の径方向外側に位置し外向きに膨らむ第一湾曲部と、前記最大幅位置の径方向内側に位置し外向きに膨らむ第二湾曲部と、前記第二湾曲部の径方向内側に位置し内向きに窪む逆湾曲部とを含み、
前記第一湾曲部、前記第二湾曲部及び逆湾曲部がそれぞれ円弧で表され、
前記逆湾曲部を表す円弧の半径Rrが、前記第一湾曲部を表す円弧の半径Rjよりも小さく、
前記逆湾曲部を表す円弧の半径Rrの、前記第一湾曲部を表す円弧の半径Rjに対する比(Rr/Rj)が0.50以上である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのビードはコアとエイペックスとで構成される。耐久性を向上させるために、例えば、下記の特許文献1が開示するように、エイペックスを小型化し、このエイペックスの軸方向外側に、カーカスプライの折り返し部を挟んで、補強ゴム層を設けることが検討される。この場合、ビード部の剛性を確保するために、補強ゴム層は硬質な架橋ゴムで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤはリムに組まれ、その内部に空気が充填される。これによりタイヤは膨張する。そのため、内圧調整されたタイヤの外側表面には歪みが生じる。
【0005】
タイヤは、その側面を構成する要素として保護ゴム層を備える。保護ゴム層は、リムに接触するクリンチと、クリンチの径方向外側に位置するサイドウォールとを備える。前述の補強ゴム層は保護ゴム層で覆われる。従来と同じ考え方で保護ゴム層の厚さを設定すると、タイヤの質量が増加する。
【0006】
補強ゴム層は保護ゴム層に比べて硬質である。そのため、従来と同じ考え方で保護ゴム層の厚さを設定すると、カーカスの外側に位置するゴム層の剛性は、補強ゴム層を含む部分で高まる。そのため、表面歪みの大きな部分と小さな部分との差が、補強ゴム層を設けていないタイヤに比べて拡大することが懸念される。補強ゴム層の中心位置よりも径方向外側部分において歪みが集中することが想定され、この場合、耐久性が低下する恐れがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、耐久性と軽量化との両立度を向上できる、タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの軸方向外側に位置し、タイヤの側面を構成する一対の保護ゴム層と、前記ビードの軸方向外側に位置する一対の補強ゴム層とを備える。前記カーカスは、カーカスコードを含むカーカスプライを備え、前記カーカスプライが、前記一対のビードの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される一対の折り返し部とを備える。前記補強ゴム層は前記折り返し部と前記保護ゴム層との間に位置する。前記ビードは、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備える。前記エイペックスの外端は、径方向において、前記補強ゴム層の外端と内端との間に位置する。リム接触端から前記補強ゴム層の外端までのゾーンにおける前記保護ゴム層の厚さは、前記補強ゴム層の径方向中心部分で薄く、その他の部分で厚い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性と軽量化との両立度を向上できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【
図4】タイヤの外側表面の輪郭の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0012】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0013】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を30kPaに調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、基準状態と称される。
【0014】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。
【0015】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0016】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0017】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0018】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
【0019】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の複素弾性率は、JIS K6394の規定に準拠して測定される。測定条件は以下の通りである。
初期歪み=10%
動歪み=±1%
周波数=10Hz
モード=伸長モード
温度=70℃
この測定では、試験片(長さ40mm×幅4mm×厚さ1mm)はタイヤからサンプリングされる。試験片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴムから試験片がサンプリングされる。
本発明において複素弾性率は、70℃での複素弾性率で表される。
【0020】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの軸方向外側に位置し、タイヤの側面を構成する一対の保護ゴム層と、前記ビードの軸方向外側に位置する一対の補強ゴム層とを備え、前記カーカスが、カーカスコードを含むカーカスプライを備え、前記カーカスプライが、前記一対のビードの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される一対の折り返し部とを備え、前記補強ゴム層が前記折り返し部と前記保護ゴム層との間に位置し、前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスと、を備え、前記エイペックスの外端が、径方向において、前記補強ゴム層の外端と内端との間に位置し、リム接触端から前記補強ゴム層の外端までのゾーンにおける前記保護ゴム層の厚さが、前記補強ゴム層の径方向中心部分で薄く、その他の部分で厚い。
【0021】
このようにタイヤを整えることにより、カーカスの外側に位置するゴム層の剛性が、補強ゴム層を含む部分で高まることが抑制される。タイヤの側面に生じる歪みが効果的に分散されるので、特定の部分に歪みが集中することが抑制される。このタイヤは耐久性を向上できる。保護ゴム層のボリュームが低減されるので、このタイヤは質量を低減できる。このタイヤは耐久性と軽量化との両立度を向上できる。
【0022】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤにおいて、前記保護ゴム層が、最大幅位置において基準厚さT0を有し、前記補強ゴム層の外端において外端厚さT1を有し、前記補強ゴム層の径方向中心部分において最小厚さT2を有し、前記リム接触端において接触厚さT3を有し、前記補強ゴム層が、前記リム接触端において接触厚さTBを有し、前記最小厚さT2が前記外端厚さT1よりも薄く、前記外端厚さT1が前記基準厚さT0と同等であり、前記接触厚さT3と前記接触厚さTBとの合計厚さT3Bが、前記基準厚さT0よりも厚い。
このようにタイヤを整えることにより、カーカスの外側に位置するゴム層の剛性が、補強ゴム層を含む部分で高まることが効果的に抑制される。タイヤの側面に生じる歪みが効果的に分散されるので、特定の部分に歪みが集中することが抑制される。このタイヤは耐久性を向上できる。保護ゴム層のボリュームが低減されるので、このタイヤは質量を低減できる。
【0023】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤにおいて、前記最小厚さT2の前記外端厚さT1に対する比(T2/T1)が0.5以上であり、前記合計厚さT3Bの前記基準厚さT0に対する比(T3B/T0)が3.0以上5.0以下である。
このようにタイヤを整えることにより、タイヤは、質量の低減を図りながら、耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0024】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記補強ゴム層が、前記保護ゴム層が前記最小厚さT2を示す位置において中間厚さTAを有し、前記最小厚さT2と前記中間厚さTAとの合計厚さT2Aの、前記外端厚さT1に対する比(T2A/T1)が0.5以上2.0以下である。
このようにタイヤを整えることにより、タイヤは、質量の低減を図りながら、耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0025】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載のタイヤにおいて、タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を30kPaに調整した基準状態において、前記側面の輪郭線が、最大幅位置の径方向外側に位置し外向きに膨らむ第一湾曲部と、前記最大幅位置の径方向内側に位置し外向きに膨らむ第二湾曲部と、前記第二湾曲部の径方向内側に位置し内向きに窪む逆湾曲部とを含み、前記第一湾曲部、前記第二湾曲部及び逆湾曲部がそれぞれ円弧で表され、前記逆湾曲部を表す円弧の半径Rrが、前記第一湾曲部を表す円弧の半径Rjよりも小さく、前記逆湾曲部を表す円弧の半径Rrの、前記第一湾曲部を表す円弧の半径Rjに対する比(Rr/Rj)が0.50以上である。
このようにタイヤを整えることにより、カーカスの外側に位置するゴム層の剛性が、補強ゴム層を含む部分で高まることが効果的に抑制される。タイヤの側面に生じる歪みが効果的に分散されるので、特定の部分に歪みが集中することが抑制される。このタイヤは耐久性を向上できる。保護ゴム層のボリュームが低減されるので、このタイヤは質量を低減できる。逆湾曲部に生じる表面歪みが過剰に大きくなることが抑制されるので、良好な耐久性が維持される。
【0026】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2を示す。このタイヤ2は、小形トラック等の車両に装着される。このタイヤ2は小形トラック用タイヤとも呼ばれる。
【0027】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図2は、
図1に示された断面の一部を示す。
図2はタイヤ2のビード部を示す。
図1及び2においてタイヤ2はリムR(正規リム)に組まれた状態にある。
【0028】
図1において径方向に延びる一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
図2及び3において軸方向に延びる実線BBLは、ビードベースラインである。ビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0029】
このタイヤ2の表面SFは、内側表面USFと、外側表面SSFとを備える。詳述しないが、内側表面USFはブラダー(又は剛体中子)で形づけられる。外側表面SSFはモールドで形づけられる。内側表面USFと外側表面SSFとの境界がトゥPTである。
【0030】
このタイヤ2は、トレッド4、一対の保護ゴム層6、一対のビード8、カーカス10、ベルト12、バンド14、一対のチェーファー16、一対のインスレーション18、インナーライナー20及び一対の補強ゴム層22を備える。
【0031】
トレッド4はカーカス10の径方向外側に位置する。トレッド4はトレッド面24において路面と接地する。トレッド4には溝26が刻まれる。トレッド面24はタイヤ2の外側表面の一部を構成する。
トレッド4は、ベース部28と、このベース部28の径方向外側に位置するキャップ部30とを備える。ベース部28は低発熱性の架橋ゴムで構成される。キャップ部30は耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムで構成される。キャップ部30がトレッド面24を含む。
【0032】
図1において符号TEはトレッド面24の端である。トレッド面24は外側表面SSFの一部をなす。外側表面SSFのうち、トレッド面24の端TEとトゥPTとの間の部分が側面32である。外側表面SSFは、トレッド面24と一対の側面32とを備える。
【0033】
それぞれの保護ゴム層6はカーカス10の軸方向外側に位置する。保護ゴム層6は、側面32の一部を構成する。
本発明において保護ゴム層6の厚さは、側面32の法線に沿って計測される。側面32に模様や文字等の装飾が側面32にある場合、保護ゴム層6の厚さは装飾がないと仮定して得られる仮想側面の法線に沿って測定される。
【0034】
符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端(以下、外端PW)である。模様や文字等の装飾が側面32にある場合、外端PWは、前述の仮想側面に基づいて特定される。
タイヤ2は外端PWにおいて最大幅を示す。外端PWは最大幅位置とも呼ばれる。正規状態のタイヤ2における第一の最大幅位置PWから第二の最大幅位置PWまでの軸方向距離が、このタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。
符号HWで示される長さは、ビードベースラインから最大幅位置PWまでの径方向距離である。径方向距離HWは、最大幅位置PWの径方向高さとも呼ばれる。
【0035】
保護ゴム層6は、サイドウォール34と、クリンチ36とを備える。
サイドウォール34はトレッド4の端に連なる。サイドウォール34はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール34は耐カット性が考慮された架橋ゴムで構成される。サイドウォール34は前述の最大幅位置PWを含む。サイドウォール34の複素弾性率は2.0MPa以上6.0MPa以下である。
クリンチ36はサイドウォール34の径方向内側に位置する。クリンチ36はリムRのフランジに接触する。クリンチ36は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムで構成される。クリンチ36はサイドウォール34よりも硬質である。クリンチ36の複素弾性率は10MPa以上15MPa以下である。
【0036】
それぞれのビード8はクリンチ36の軸方向内側に位置する。ビード8はリング状である。ビード8は、コア38と、エイペックス40とを備える。
【0037】
コア38は周方向にのびる。コア38は周方向に巻き回されたスチール製のワイヤを含む。エイペックス40はコア38の径方向外側に位置する。エイペックス40はコア38から径方向外向きにのびる。エイペックス40は外向きに先細りである。エイペックス40は硬質な架橋ゴムで構成される。エイペックス40の複素弾性率は60MPa以上90MPa以下である。
【0038】
符号HAで示される長さは、ビードベースラインからエイペックス40の外端PAまでの径方向距離である。径方向距離HAは、エイペックス40の径方向高さとも呼ばれる。
エイペックス40の径方向高さHAの、最大幅位置PWの径方向高さHWに対する比(HA/HW)は0.25以上0.40以下である。
【0039】
カーカス10は、トレッド4及び一対の保護ゴム層6の内側に位置する。カーカス10は一対のビード8の間、すなわち、第一のビード8と第二のビード8(図示されず)の間、を架け渡す。このタイヤ2のカーカス10はラジアル構造を有する。
【0040】
カーカス10は少なくとも1枚のカーカスプライ42を備える。このタイヤ2のカーカス10は2枚のカーカスプライ42からなる。第一のカーカスプライ42a及び第二のカーカスプライ42bは、それぞれのビード8で折り返される。
【0041】
第一のカーカスプライ42aはプライ本体48aと一対の折り返し部50aとを備える。プライ本体48aは一対のビード8の間を架け渡す。それぞれの折り返し部50aは、プライ本体48aに連なり、軸方向内側から外側に向かってビード8で折り返される。
第二のカーカスプライ42bはプライ本体48bと一対の折り返し部50bとを備える。プライ本体48bは一対のビード8の間を架け渡す。それぞれの折り返し部50bは、プライ本体48bに連なり、軸方向内側から外側に向かってビード8で折り返される。
【0042】
図1に示されたタイヤでは、第二のカーカスプライ42bの折り返し部50bの端は第一のカーカスプライ42aの折り返し部50aで覆われる。折り返し部50bの端は最大幅位置PWの径方向内側に位置し、折り返し部50aの端は最大幅位置PWの径方向外側に位置する。
【0043】
図示されないが、カーカスプライ42は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは赤道面と交差する。カーカスコードはポリエステル繊維からなるコード(ポリエステルコード)である。ナイロン繊維やレーヨン繊維からなるコードに比べて、ポリエステルコードは高い剛性を有する。カーカス10はタイヤ2の剛性を効果的に高める。
【0044】
ベルト12は3枚のベルトプライ44を備える。ベルト12が2枚のベルトプライ44で構成されてもよく、4枚のベルトプライ44で構成されてもよい。
3枚のベルトプライ44は、第一ベルトプライ44A、第二ベルトプライ44B及び第三ベルトプライ44Cである。これらベルトプライ44は径方向に並ぶ。
3枚のベルトプライ44のうち、第一ベルトプライ44Aが径方向において最も内側に位置し、第二ベルトプライ44Bが最も広い幅を有し、第三ベルトプライ44Cが最も狭い幅を有する。
【0045】
図示されないが、各ベルトプライ44は並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードはスチールコードである。
【0046】
バンド14は、径方向においてトレッド4とベルト12との間に位置する。バンド14はベルト12に積層される。
図示されないが、バンド14は、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードはトッピングゴムで覆われる。バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド14はジョイントレス構造を有する。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0047】
このタイヤ2のバンド14は2枚のフルバンド46を備える。2枚のフルバンド46は、径方向外側からベルト12全体覆う。
図示されないが、バンド14が1枚のフルバンド46で構成されてもよい。バンド14が、赤道面を挟んで軸方向に離して配置される一対のエッジバンドで構成されてもよい。バンド14がフルバンド46と一対のエッジバンドとで構成されてもよい。
【0048】
それぞれのチェーファー16は、ビード8の径方向内側に位置する。チェーファー16はリムRのシートに接触する。チェーファー16は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムで構成される。
【0049】
それぞれのインスレーション18は、サイドウォール34の軸方向内側に位置する。インスレーション18はプライ本体48bに積層される。インスレーション18の外端は、ベルト12の端の軸方向内側に位置し、プライ本体48bと第一ベルトプライ44Aとの間(すなわち、カーカス10とベルト12との間)に位置する。インスレーション18の内端は、エイペックス40の外端PAの径方向内側に位置し、プライ本体48bとエイペックス40との間に位置する。インスレーション18は架橋ゴムで構成される。
【0050】
インナーライナー20はカーカス10の内側に位置する。インナーライナー20は、架橋ゴムからなるインスレーション(図示されず)を介してカーカス10の内面に接合される。インナーライナー20はタイヤ2の内側表面USFを構成する。インナーライナー20は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー20はタイヤ2の内圧を保持する役割を有する。
【0051】
それぞれの補強ゴム層22は、ビード8の軸方向外側に位置する。補強ゴム層22は、第一のカーカスプライ42aの折り返し部50aと、保護ゴム層6との間に位置する。補強ゴム層22はその内面において折り返し部50aと接触する。補強ゴム層22はその外面において保護ゴム層6と接触する。
前述のエイペックス40の外端PAは、径方向において、補強ゴム層22の外端PRSと内端PRUとの間に位置する。補強ゴム層22の外端PRSは第二のカーカスプライ42bの折り返し部50bの端の径方向内側に位置する。
図1において符号PFで示される位置は、リムRと、側面32との接触面の径方向外端に対応する、側面32上の位置である。本発明においては、この位置PFがリム接触端である。補強ゴム層22の内端PRUはリム接触端PFの径方向内側に位置する。
【0052】
符号HRで示される長さは、ビードベースラインから補強ゴム層22の外端PRSまでの径方向距離である。径方向距離HRは、補強ゴム層22の径方向高さとも呼ばれる。
補強ゴム層22の径方向高さHRの、最大幅位置PWの径方向高さHWに対する比(HR/HW)は0.55以上0.70以下である。
【0053】
補強ゴム層22は硬質な架橋ゴムで構成される。補強ゴム層22の複素弾性率は60MPa以上90MPa以下である。
図1に示されたタイヤ2の補強ゴム層22はエイペックス40を構成する架橋ゴムと同じ架橋ゴムで構成される。
【0054】
子午線断面における補強ゴム層22の断面形状に特に制限はない。全体的に一様な厚さを有するように断面形状が整えられてもよいし、中央部分において厚く、中央部分から外側に向かって徐々に薄くなるように、その断面形状が整えられてもよい。
厚さコントロールが容易である観点から、シート状に形成されたゴムシート52を用いて補強ゴム層22が構成されるのが好ましい。
図1に示された補強ゴム層22は2枚のゴムシート52で構成されるが、補強ゴム層22を構成するゴムシート52の枚数に特に制限はない。補強ゴム層22が1枚のゴムシート52で構成されてもよく、3枚以上のゴムシート52で構成されてもよい。
1枚のゴムシート52で補強ゴム層22を構成する場合は、歪みが集中することを抑制する観点から、補強ゴム層22の外端PRS及び内端PRUに対応するゴムシート52の端部は先細り形状を有するのが好ましい。2枚以上のゴムシート52で補強ゴム層22を構成する場合は、
図1に示されるように、幅広のゴムシート52wの外側に幅狭のゴムシート52nを積層して、補強ゴム層22を構成するのが好ましい。この場合、幅狭のゴムシート52nの外端が幅広のゴムシート52wの外端の径方向内側に位置し、幅狭のゴムシート52nの内端が幅広のゴムシート52wの内端の径方向外側に位置するように、幅広のゴムシート52wに幅狭のゴムシート52nが積層されるのがより好ましい。
【0055】
補強ゴム層22は、保護ゴム層6を構成するサイドウォール34及びクリンチ36に比べて硬質である。そのため、補強ゴム層22を設けていない従来タイヤと同じように、保護ゴム層6の厚さを設定すると、カーカス10の外側に位置するゴム層の剛性は、補強ゴム層22を含む部分で高まる。そのため、表面歪みの大きな部分と小さな部分との差が、従来タイヤに比べて拡大することが懸念される。補強ゴム層22の中心位置RCよりも径方向外側部分において歪みが集中することが想定され、この場合、耐久性が低下する恐れがある。
ここでカーカス10の外側に位置するゴム層とは、サイドウォール部においてカーカス10の外側に位置する架橋ゴムからなる要素で構成される要素を意味する。
図1に示されたタイヤ2では、保護ゴム層6及び補強ゴム層22で構成される要素が、カーカス10の外側に位置するゴム層である。
【0056】
しかしこのタイヤ2では、リム接触端PFから補強ゴム層22の外端PRSまでのゾーンにおける保護ゴム層6の厚さは、補強ゴム層22の径方向中心部分で薄く、その他の部分で厚い。言い換えれば、このゾーンにおける保護ゴム層6は、補強ゴム層22の径方向中心部分において最小厚さを示す。
そのため、カーカス10の外側に位置するゴム層の剛性が、補強ゴム層22を含む部分で高まることが抑制される。タイヤ2の側面32に生じる歪みが効果的に分散されるので、特定の部分に歪みが集中することが抑制される。このタイヤ2は耐久性を向上できる。保護ゴム層6のボリュームが低減されるので、このタイヤ2は質量を低減できる。
このタイヤ2は、耐久性と軽量化との両立度を向上できる。
【0057】
図2において符号MRで示される長さは、補強ゴム層22の内端PRUから外端PRSまでの径方向距離である。距離MRは補強ゴム層22の径方向長さである。
軸方向にのびる実線LMは、補強ゴム層22の径方向長さMRの中心を示す直線である。符号RCで示される位置は、直線LMと補強ゴム層22の外面との交点である。本発明においては、交点RCが補強ゴム層22の径方向中心位置である。符号LCで示される直線は、補強ゴム層22の径方向中心位置RCを通る側面32の法線である。法線LCは基準線とも呼ばれる。
【0058】
符号M1で示される長さは、符号R1で示される補強ゴム層22の外面上の位置から補強ゴム層22の内端PRUまでの径方向距離である。本発明においては、径方向距離M1の、補強ゴム層22の径方向長さMRに対する比率は40%である。点線L1は位置R1を通り、法線LCに平行な直線である。点線L1は第一境界線とも呼ばれる。第一境界線L1は、補強ゴム層22の内端PRUからの径方向距離M1が補強ゴム層22の径方向長さMRの40%となる補強ゴム層22の外面上の位置を通り、基準線LCに平行な直線である。
【0059】
符号M2で示される長さは、符号R2で示される補強ゴム層22の外面上の位置から補強ゴム層22の内端PRUまでの径方向距離である。本発明においては、径方向距離M2の、補強ゴム層22の径方向長さMRに対する比率は45%である。点線L2は位置R2を通り、法線LCに平行な直線である。点線L2は第二境界線とも呼ばれる。第二境界線L2は、補強ゴム層22の内端PRUからの径方向距離M2が補強ゴム層22の径方向長さMRの45%となる補強ゴム層22の外面上の位置を通り、基準線LCに平行な直線である。
【0060】
符号M3で示される長さは、符号R3で示される補強ゴム層22の外面上の位置から補強ゴム層22の内端PRUまでの径方向距離である。本発明においては、径方向距離M3の、補強ゴム層22の径方向長さMRに対する比率は55%である。点線L3は位置R3を通り、法線LCに平行な直線である。点線L3は第三境界線とも呼ばれる。第三境界線L3は、補強ゴム層22の内端PRUからの径方向距離M3が補強ゴム層22の径方向長さMRの55%となる補強ゴム層22の外面上の位置を通り、基準線LCに平行な直線である。
【0061】
符号M4で示される長さは、符号R4で示される補強ゴム層22の外面上の位置から補強ゴム層22の内端PRUまでの径方向距離である。本発明においては、径方向距離M4の、補強ゴム層22の径方向長さMRに対する比率は60%である。点線L4は位置R4を通り、法線LCに平行な直線である。点線L4は第四境界線とも呼ばれる。第四境界線L4は、補強ゴム層22の内端PRUからの径方向距離M4が補強ゴム層22の径方向長さMRの60%となる補強ゴム層22の外面上の位置を通り、基準線LCに平行な直線である。
【0062】
本発明においては、第一境界線L1と第四境界線L4との間のゾーンが標準ゾーンZNとも呼ばれる。そして、第二境界線L2と第三境界線L3との間のゾーンが格別ゾーンとも呼ばれる。
【0063】
前述したように、保護ゴム層6は、補強ゴム層22の径方向中心部分において最小厚さを示す。耐久性と軽量化との両立度を効果的に向上できる観点から、標準ゾーンZNにおいて保護ゴム層6が、最小厚さを示すのが好ましく、格別ゾーンZSにおいて保護ゴム層6が、最小厚さを示すのがより好ましい。補強ゴム層22の径方向中心位置RCにおいて保護ゴム層6が、最小厚さを示すのがさらに好ましい。
【0064】
図3は
図1のビード部を示す。
図3において、符号RTで示される位置は補強ゴム層22の外面上の位置である。符号LTで示される直線は、位置RTを通る側面32の法線である。符号T2で示される長さは、法線LTに沿って計測される保護ゴム層6の厚さである。
図3に示されたタイヤ2の保護ゴム層6は、位置RTにおいて最小厚さT2を有する。位置RTは、保護ゴム層6が最小厚さT2を示す位置である。補強ゴム層22の径方向中心位置RCにおいて、保護ゴム層6が最小厚さT2を示す場合、保護ゴム層6が最小厚さT2を示す位置RTは補強ゴム層22の径方向中心位置RCと一致し、法線LTは法線LCと一致する。
【0065】
図3において、符号T0で示される長さは、最大幅位置PWを通る側面32の法線LWに沿って計測される保護ゴム層6の厚さである。符号T1で示される長さは、補強ゴム層22の外端PRSを通る側面32の法線LSに沿って計測される保護ゴム層6の厚さである。符号TAで示される長さは、法線LTに沿って計測される補強ゴム層22の厚さである。符号T3で示される長さは、リム接触端PFにおける側面32の法線LFに沿って計測される保護ゴム層6の厚さである。符号TBで示される長さは、法線LFに沿って計測される補強ゴム層22の厚さである。
保護ゴム層6は、最大幅位置PWにおいて厚さT0(以下、基準厚さT0)を有し、補強ゴム層22の外端PRSにおいて厚さT1(以下、外端厚さT1)を有し、補強ゴム層22の径方向中心部分において最小厚さT2を有し、リム接触端PFにおいて厚さT3(以下、接触厚さT3)を有する。
補強ゴム層22は、保護ゴム層6が最小厚さT2を示す位置RTにおいて厚さTA(以下、中間厚さTA)を有し、リム接触端PFにおいて厚さTB(以下、接触厚さTB)を有する。
【0066】
このタイヤ2では、保護ゴム層6の最小厚さT2が外端厚さT1よりも薄く、外端厚さT1が基準厚さT0と同等であり、接触厚さT3と接触厚さTBとの合計厚さT3Bが基準厚さT0よりも厚いのが好ましい。これにより、カーカス10の外側に位置するゴム層の剛性が、補強ゴム層22を含む部分で高まることが効果的に抑制される。タイヤ2の側面32に生じる歪みが効果的に分散されるので、特定の部分に歪みが集中することが抑制される。このタイヤ2は耐久性を向上できる。保護ゴム層6のボリュームが低減されるので、このタイヤ2は質量を低減できる。
【0067】
本発明において、外端厚さT1が基準厚さT0と同等であるとは、外端厚さT1の基準厚さT0に対する比(T1/T0)が0.95以上1.05以下の範囲にあることを意味する。
【0068】
このタイヤ2では、最小厚さT2の外端厚さT1に対する比(T2/T1)は0.5以上であるのが好ましい。これにより、補強ゴム層22の径方向中心部分における保護ゴム層6の厚さが適切に維持される。補強ゴム層22の径方向中心部分において保護ゴム層6が薄いことによる剛性への影響が効果的に抑制される。保護ゴム層6全体がタイヤ2の形状維持に必要な剛性を有する。このタイヤ2は耐久性を向上できる。この観点から、比(T2/T1)は0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。タイヤ2の質量を効果的に低減でき、タイヤ2の側面32に生じる歪みを効果的に分散できる観点から、比(T2/T1)は0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、合計厚さT3Bの基準厚さT0に対する比(T3B/T0)は3.0以上5.0以下であるのが好ましい。
比(T3B/T0)が3.0以上に設定されることにより、リム接触端における補強ゴム層22及び保護ゴム層6がビード部の剛性を高めることに貢献できる。このタイヤ2の耐久性はさらに高まる。この観点から、比(T3B/T0)は3.3以上であるのがより好ましい。
比(T3B/T0)が5.0以下に設定されることにより、カーカス10の外側に位置するゴム層のボリュームが適切に維持される。このゴム層による質量への影響が抑制される。この観点から、比(T3B/T0)は4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。
【0070】
タイヤ2が、質量の低減を図りながら、耐久性のさらなる向上を図ることができる観点から、最小厚さT2の外端厚さT1に対する比(T2/T1)は0.5以上であり、合計厚さT3Bの基準厚さT0に対する比(T3B/T0)は3.0以上5.0以下であるのがより好ましい。
【0071】
リム接触端PFにおける剛性を確保できる観点から、保護ゴム層6の、接触厚さT3の外端厚さT1に対する比(T3/T1)は2.0以上であるのが好ましい。
保護ゴム層6による質量への影響を抑えることができる観点から、比(T3/T1)は2.5以下であるのが好ましい。
【0072】
このタイヤ2では、最小厚さT2と中間厚さTAとの合計厚さT2Aの、外端厚さT1に対する比(T2A/T1)は0.5以上2.0以下であるのが好ましい。
比(T2A/T1)が0.5以上に設定されることにより、補強ゴム層22の径方向中心部分において、カーカス10の外側に位置するゴム層が薄くなりすぎることが抑制される。このゴム層が形状維持に必要な剛性を有する。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。この観点から、比(T2A/T1)は、1.0以上であるのがより好ましく、1.5以上であるのがさらに好ましい。
比(T2A/T1)が2.0以下に設定されることにより、タイヤ2の質量が効果的に低減され、タイヤ2の側面32に生じる歪みが効果的に分散される。この観点から、比(T2A/T1)は1.8以下であるのがより好ましい。
【0073】
図4は、タイヤ2の子午線断面における側面32の輪郭線の一部を示す。
図4に示された側面32の輪郭線は、基準状態において、例えば変位センサーを用いてタイヤ2の外面形状を計測することで得られる。側面32に装飾がある場合はこの装飾がないと仮定して、この輪郭線は表される。符号PWpで示される位置は、基準状態のタイヤ2における最大幅位置である。
【0074】
側面32の輪郭線は、複数の円弧を組み合わせて、必要あれば円弧同士を直線でつなぎながら構成される。
図4に示されるように、この側面32の輪郭線は、最大幅位置PWpの付近では外向きに膨らむ形状を有し、リムRに近い部分では内向きに窪む形状を有する。
詳細には、この輪郭線は、最大幅位置PWpの径方向外側に位置し外向きに膨らむ第一湾曲部54と、最大幅位置PWpの径方向内側に位置し外向きに膨らむ第二湾曲部56と、第二湾曲部56の径方向内側に位置し内向きに窪む逆湾曲部58とを含む。逆湾曲部58はリムRと第二湾曲部56との間に位置する。
【0075】
本発明において、外向きに膨らむとは、タイヤの内面側から外面側に向かって湾曲した形状を意味し、内向きに窪むとは、タイヤの外面側から内面側に向かって湾曲した形状を意味する。
【0076】
第一湾曲部54、第二湾曲部56及び逆湾曲部58はそれぞれ、円弧で表される。
図4において、符号Rjで示される矢印は第一湾曲部54の円弧の半径である。図示されないが、この円弧は、最大幅位置PWpを通り軸方向にのびる直線上に中心を有する。
符号Rkで示される矢印は第二湾曲部56の円弧の半径である。図示されないが、この円弧は、最大幅位置PWpを通り軸方向にのびる直線上に中心を有する。
第一湾曲部54の円弧と第二湾曲部56の円弧とは最大幅位置PWpにおいて接する。
符号Rrで示される矢印は逆湾曲部58の円弧の半径である。図示されないが、この円弧の中心は側面32の外側に位置する。
符号Pbで示される位置は、逆湾曲部58と第二湾曲部56との境界である。このタイヤ2では、逆湾曲部58の円弧と第二湾曲部56の円弧とは境界Pbで接する。逆湾曲部58の円弧と第二湾曲部56の円弧とが直線で繋げられてもよく、1又は2以上の外向きに膨らむ円弧で繋げられてもよい。なお、逆湾曲部58の円弧と第二湾曲部56の円弧との間が直線又は円弧を介して繋げられる場合、境界Pbは逆湾曲部58の円弧の端により表される。
【0077】
このタイヤ2では、好ましくは、逆湾曲部58を表す円弧の半径Rrは第一湾曲部54を表す円弧の半径Rjよりも小さい。言い換えれば、逆湾曲部58を表す円弧の半径Rrの、第一湾曲部54を表す円弧の半径Rjに対する比(Rr/Rj)は1.00未満であるのが好ましい。これにより、リム接触端PFから補強ゴム層22の外端PRSまでのゾーンにおける保護ゴム層6が、その厚さが、補強ゴム層22の径方向中心部分で薄く、その他の部分で厚くなるように構成される。カーカス10の外側に位置するゴム層の剛性が、補強ゴム層22を含む部分で高まることが抑制されるので、タイヤ2の側面32に生じる歪みが効果的に分散される。特定の部分に歪みが集中することが抑制されるので、このタイヤ2は耐久性を向上できる。保護ゴム層6のボリュームが低減されるので、このタイヤ2は質量を低減できる。この観点から、比(Rr/Rj)は0.90以下であるのがより好ましく、0.80以下であるのがさらに好ましい。
【0078】
このタイヤ2では、比(Rr/Rj)は0.50以上であるのが好ましい。これにより、タイヤ2に空気を充填して内圧を規定の内圧に調整した際、逆湾曲部58に生じる表面歪みが過剰に大きくなることが抑制される。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。この観点から、比(Rr/Rj)は0.56以上であるのがより好ましい。
【0079】
図4において符号HWpで示される長さは、ビードベースラインから最大幅位置PWpまでの径方向距離である。径方向距離HWpは、最大幅位置PWpの径方向高さとも呼ばれる。符号Hbで示される長さはビードベースラインから境界Pbまでの径方向距離である。
【0080】
このタイヤ2では、逆湾曲部58が、軽量化と、耐久性の向上とに効果的に貢献できる観点から、径方向距離Hbの、最大幅位置PWpの径方向高さHWpに対する比(Hb/PWp)は、0.30以上0.45以下であるのが好ましい。
【0081】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、耐久性と軽量化との両立度を向上できる、タイヤ2が得られる。
【実施例0082】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
[実施例1-2及び比較例1-3]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた小形トラック用タイヤ(タイヤサイズ=225/85R16)を得た。
基準厚さT0、外端厚さT1、最小厚さT2、接触厚さT3と接触厚さTBとの合計厚さT3B及び中間厚さTAを下記の表1に示される通りに設定した。側面の輪郭線に関し、第一湾曲部の半径Rjを表1に示される通りに設定した。実施例1-2及び比較例1-3の輪郭線には逆湾曲部は設けられていない。
【0084】
[実施例3-4]
側面の輪郭線に逆湾曲部を設けた他は実施例1と同様にして、実施例3-4のタイヤを得た。実施例3-4の逆湾曲部の円弧の半径Rrは下記の表1に示される通りである。
【0085】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=6.0J)に組み、空気を充填して内圧を正規内圧とした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。19.8kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤを、80km/hの速度で、ドラム(半径=1.7m)の上で走行させた。タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を測定した。その結果が、比較例1を100とした指数で下記表1に示されている。数値が大きいほど、損傷が生じにくく、耐久性に優れる。
【0086】
[軽量化]
カーカスの外側に位置する保護ゴム層及び補強ゴム層の質量を計測した。その結果が、比較例1を100とした指数で下記表1に示されている。数値が大きいほど、軽い。
【0087】
[両立度]
耐久性及び軽量化の両立度を確認するために、耐久性及び軽量化の指数の合計値を得た。その結果が下記の表1に示されている。数値が大きいほど、耐久性及び軽量化の両立度が向上している。
【0088】
【表1】
表1に示されるように、実施例では、耐久性と軽量化との両立度を向上できることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
トレッド4はカーカス10の径方向外側に位置する。トレッド4はトレッド面24において路面と接地する。トレッド4には溝26が刻まれる。トレッド面24はタイヤ2の外側表面SSFの一部を構成する。
トレッド4は、ベース部28と、このベース部28の径方向外側に位置するキャップ部30とを備える。ベース部28は低発熱性の架橋ゴムで構成される。キャップ部30は耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムで構成される。キャップ部30がトレッド面24を含む。
本発明においては、第一境界線L1と第四境界線L4との間のゾーンが標準ゾーンZNとも呼ばれる。そして、第二境界線L2と第三境界線L3との間のゾーンが格別ゾーンZSとも呼ばれる。