(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025435
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240216BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240216BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240216BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/205
H01L21/302 101G
C23C14/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128882
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【テーマコード(参考)】
4K029
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K029JA01
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB29
5F045EJ03
5F045EM05
5F045EM09
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA04
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB79
(57)【要約】
【課題】絶縁性を向上させることができる保持装置を提供すること。
【解決手段】保持面11と、保持面11とは反対側に設けられる下面12と、下面12に開口し底面15bに金属製のパッド60が設けられた有底孔15と、を備える板状部材10と、上面21と、上面21とは反対側に設けられる下面22と、上面21と下面22を貫通して有底孔15に連通する貫通孔25と、を備える金属製のベース部材20と、下面12と上面21との間に配置され、板状部材10とベース部材20とを接合する接合層40と、貫通孔25に配置され、板状部材10に接合される環状の絶縁スリーブ30と、を有し、板状部材10の保持面11上に半導体ウエハWを保持する静電チャック1において、絶縁スリーブ30は、金属製の接合部31を介してパッド60と接合されているとともに、接合層40に接触している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、前記第2の面に設けられた金属製のパッドと、を備える板状部材と、
第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面と、前記第3の面と前記第4の面を貫通する貫通孔であって、前記金属製のパッドに対応する位置に配置される貫通孔と、を備える金属製のベース部材と、
前記第2の面と前記第3の面との間に配置され、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合層と、
前記貫通孔に配置され、前記板状部材に接合される環状の絶縁部材と、を有し、
前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記絶縁部材は、金属製の接合部を介して前記パッドと接合されているとともに、前記接合層に接触している
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載する保持装置において、
前記板状部材は、前記第2の面に開口し底面に前記金属製のパッドが設けられた有底孔を有し、
前記絶縁部材の外周面と前記有底孔の内周面との間に、樹脂が充填された樹脂部が設けられている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する保持装置において、
前記絶縁部材は、径方向外側へ突出する環状の鍔部を有し、
前記接合層は、
前記第2の面と前記第3の面との間に配置される第1接合部と、
前記鍔部のうち前記ベース部材側の面と前記第3の面との間に配置される第2接合部と、を有し、
前記鍔部のうち前記ベース部材側の面が前記板状部材の前記第2の面から突出し、前記第2接合部に接触している
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載する保持装置において、
前記絶縁部材は、径方向外側へ突出する環状の鍔部を有し、
前記鍔部は、前記板状部材側へ突出して前記パッドを囲むように形成された環状凸部を有する
ことを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載する保持装置において、
前記板状部材を構成する材料の熱膨張率と前記ベース部材を構成する材料の熱膨張率が異なり、
前記絶縁部材の外周面と前記貫通孔との間に隙間が形成されている
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持装置として、例えば、特許文献1に記載された静電チャックが知られている。この静電チャックは、対象物を保持する載置台(板状部材)と、載置台に接合された金属製のベースプレート(ベース部材)とを備えている。載置台の内部には、静電電極が配置されており、この静電電極には載置台の底面に設けられた接続電極が接続されている。
【0003】
一方、ベースプレートには貫通孔が形成されており、貫通孔内に給電端子が配置されている。この給電端子は、載置台に備わる接続電極に接合されている。そして、接続電極及び給電端子とベースプレートとの間の絶縁性を確保するため、ベースプレートの貫通孔内に筒状絶縁部品(絶縁部材)が配置されている。この筒状絶縁部品は、樹脂接着剤を用いて載置台に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の静電チャックでは、絶縁部材を板状部材に固定するために樹脂接着剤が使用されているため、この樹脂製接着剤によって板状部材とベース部材との間における熱移動が阻害されてしまう。そのため、絶縁部材が配置された部分において、板状部材とベース部材との間における熱伝導性が悪くなるため、板状部材の保持面における均熱性を低下させるおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、絶縁部材の配置部分における板状部材とベース部材との間の熱伝導性を向上させることができる保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、前記第2の面に設けられた金属製のパッドと、を備える板状部材と、
第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面と、前記第3の面と前記第4の面を貫通する貫通孔であって、前記金属製のパッドに対応する位置に配置される貫通孔と、を備える金属製のベース部材と、
前記第2の面と前記第3の面との間に配置され、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合層と、
前記貫通孔に配置され、前記板状部材に接合される環状の絶縁部材と、を有し、
前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記絶縁部材は、金属製の接合部を介して前記パッドと接合されているとともに、前記接合層に接触していることを特徴とする。
【0008】
このように絶縁部材が板状部材に金属製の接合部を介して接合されることにより、板状部材と絶縁部材との間における熱移動が、金属を介して行われるため促進される。また、絶縁部材が接合層に接触しているため、絶縁部材と接合層との間における熱移動を促進することができる。従って、絶縁部材の配置部分において、絶縁部材及び接合層を介する、板状部材とベース部材との間における熱移動が促進されるため、板状部材とベース部材との間の熱伝導性を向上させることができる。
【0009】
上記した保持装置において、
前記板状部材は、前記第2の面に開口し底面に金属製のパッドが設けられた有底孔を有し、
前記絶縁部材の外周面と前記有底孔の内周面との間に、樹脂が充填された樹脂部が設けられていることが好ましい。
【0010】
このような樹脂部を設けることにより、絶縁部材と板状部材との間に配置されるパッドなどの金属部分を樹脂部によって封止することができるため、パッドなどの金属部分と金属製のベース部材との間の絶縁性を向上させることができる。その結果として、絶縁部材の厚さを薄くすることができるため、ベース部材の貫通孔の径を小さくすることができ、板状部材の第1の面における均熱性を向上させることができる。なお、板状部材とベース部材との間における熱移動は、絶縁部材及び接合層を介して行われるため、樹脂部を設けても熱伝導性が悪化することはない。
【0011】
また、樹脂部に無機材料、金属粉、金属繊維、金属箔等のフィラーを混入してもよい。これにより、樹脂部の熱伝導性を向上させることできるため、板状部材と絶縁部材との間の熱伝導性をより向上させることができる。
【0012】
上記したいずれかの保持装置において、
前記絶縁部材は、径方向外側へ突出する環状の鍔部を有し、
前記接合層は、
前記第2の面と前記第3の面との間に配置される第1接合部と、
前記鍔部のうち前記ベース部材側の面と前記第3の面との間に配置される第2接合部と、を有し、
前記鍔部のうち前記ベース部材側の面が前記板状部材の前記第2の面よりも突出し、前記第2接合部に接触していることが好ましい。
【0013】
絶縁部材に鍔部を設けることにより、絶縁部材と板状部材との金属接合の面積を大きくすることができるため、板状部材と絶縁部材との間における熱移動を更に促進させることができる。そして、鍔部のうちベース部材(接合層)側の面が板状部材の第2の面よりも突出し、接合層(詳細には第2接合部)に接触しているため、絶縁部材が接合層に接触する面積を大きくすることができる。そのため、絶縁部材と接合層との間における熱移動を更に促進させることができる。
【0014】
これらのことから、絶縁部材及び接合層を介する板状部材とベース部材との間における熱移動を更に促進することができる。従って、板状部材とベース部材との間の熱伝導性をより向上させることができる。
【0015】
上記したいずれかの保持装置において、
前記絶縁部材は、径方向外側へ突出する環状の鍔部を有し、
前記鍔部は、前記板状部材側へ突出して前記パッドを囲むように形成された環状凸部を有することが好ましい。
【0016】
このような環状凸部を設けることにより、絶縁部材と板状部材との間に配置されるパッドなどの金属部分を絶縁部材で囲い込むことができるため、パッドなどの金属部分と金属製のベース部材との間の絶縁距離が長くなり、絶縁性を更に向上させることができる。
【0017】
上記したいずれかの保持装置において、
前記板状部材を構成する材料の熱膨張率と前記ベース部材を構成する材料の熱膨張率が異なり、
前記絶縁部材の外周面と前記貫通孔との間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0018】
板状部材とベース部材とに熱膨張差があるため、保持装置の温度が上昇/下降する際に、熱膨張差によって絶縁部材が貫通孔の内周面(ベース部材)に接触することで、絶縁部材や絶縁部材と板状部材との接合部分が損傷するおそれがある。
【0019】
そこで、絶縁部材と貫通孔との間に隙間を設けることにより、熱膨張差によって絶縁部材が貫通孔の内周面に接触することを防ぐことができるため、絶縁部材や絶縁部材と板状部材との接合部分の損傷を防止することができる。これにより、絶縁部材によって絶縁を確保することができるため、絶縁性が向上する。
【0020】
また、絶縁部材によって絶縁を確保することができるため、絶縁部材の外周面と貫通孔との間に設ける隙間を、熱膨張差によって絶縁部材が貫通孔の内周面(ベース部材)に接触しない限界まで小さくすることができる。つまり、ベース部材の貫通孔の小径化を図ることができる。その結果として、板状部材の第1の面における均熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、絶縁部材の配置部分における板状部材とベース部材との間の熱伝導性を向上させることができる保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の静電チャックの概略斜視図である。
【
図2】第1実施形態の静電チャックのXZ断面の概略構成図である。
【
図6】絶縁スリーブの板状部材への固定手順を示す図である。
【
図7】第2実施形態の静電チャックにおける絶縁スリーブの接合部付近のXZ断面の概略構成図である。
【
図8】第3実施形態の静電チャックにおける絶縁スリーブの接合部付近のXZ断面の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示に係る実施形態である保持装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、保持装置として、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置など)やエッチング装置(プラズマエッチング装置など)といった半導体製造装置に使用される静電チャックを例示して説明する。
【0024】
そこで、本実施形態の静電チャック1について、
図1~
図5を参照しながら説明する。本実施形態の静電チャック1は、半導体ウエハW(対象物)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウエハWを固定するために使用される。
図1に示すように、静電チャック1は、板状部材10と、ベース部材20と、板状部材10とベース部材20とを接合する接合層40とを有する。
【0025】
以下の説明においては、説明の便宜上、
図1に示すようにXYZ軸を定義する。ここで、Z軸は、静電チャック1の軸線方向(
図1において上下方向)の軸であり、X軸とY軸は、静電チャック1の径方向の軸である。
【0026】
板状部材10は、
図1に示すように、円形の部材であり、セラミックスにより形成されている。セラミックスとしては、様々なセラミックスが用いられるが、強度や耐摩耗性、耐プラズマ性等の観点から、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al
2O
3)または窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックスが用いられることが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。板状部材10の直径は、例えば150mm~350mm程度であり、板状部材10の厚さは、例えば2mm~6mm程度である。
【0027】
図1、
図2に示すように、板状部材10は、半導体ウエハWを保持する保持面11と、板状部材10の厚み方向(Z軸方向に一致する方向、上下方向)について保持面11とは反対側に設けられる下面12とを備えている。この保持面11上に半導体ウエハWが保持される。なお、保持面11は本開示の「第1の面」の一例であり、下面12は本開示の「第2の面」の一例である。
【0028】
また、
図2に示すように、板状部材10は、その内部にチャック電極50を備えている。チャック電極50は、Z軸方向視で、例えば略円形をなしており、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。チャック電極50は本開示の「内部電極」の一例である。このチャック電極50には、ビア61が接続されている。このビア61は、チャック電極50から下面12側にZ軸方向へ延びるように配置されている。
【0029】
そして、板状部材10の下面12には、有底孔15が形成されている。この有底孔15は、下面12側に開口する円形凹部であり、Z軸方向視で、後述するベース部材20の貫通孔25に重なる領域が、保持面11側へ凹んだ形状をなしている。また、有底孔15の直径は、例えば7mm~8mmである。この有底孔15の底面15bには、パッド60が配置されている。Z軸方向視におけるパッド60の形状は、例えば、略円形である。
【0030】
このパッド60の上面には、チャック電極50に接続されたビア61の他端が接続されている。これにより、パッド60は、ビア61を介して、チャック電極50に電気的に接続されている。パッド60及びビア61は、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。なお、本実施形態では、パッド60は、
図2に示すように、厚さ方向(Z軸方向)の全体が板状部材10から露出しているが、パッド60の下面が板状部材10から露出している限りにおいて、パッド60における厚さ方向の一部分又は全体が、板状部材10に埋設されていてもよい。そして、パッド60の下面(露出面)に、外部電源に接続するための給電端子62が接合(ロウ付け)されており、外部電源から給電端子62、パッド60、ビア61を介して、チャック電極50に電力が供給される。
【0031】
ここで、パッド60は、給電端子62と接合する他、後述する絶縁スリーブ30に設けられた接合部31とも接合している。詳細には、パッド60の中央部分で給電端子62と接合し、パッド60の外周部分で接合部31と接合している。つまり、本実施形態のパッド60は、
図3に示すように、円板形状をなしており、給電端子62を接合するためのパッドと、絶縁スリーブ30を接合するためのパッドとを兼ねている。なお、パッド60は、
図3に示す形状に限られることはなく、
図4に示すように、給電端子62と接合する円形状の端子用パッド60aと、絶縁スリーブ30と接合する円環形状の絶縁スリーブ用パッド60bとで構成することもできる。
【0032】
ベース部材20は、
図1に示すように円柱状、詳しくは、直径の異なる2つの円柱が、大きな直径の円柱状の上面部の上に小さな直径の円柱状の下面部が載せられるようにして、中心軸を共通にして重ねられて形成された段付きの円柱状である。このベース部材20は、金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。
【0033】
そして、
図1、
図2に示すように、ベース部材20は、上面21と、Z軸方向について上面21とは反対側に設けられる下面22と、を備えている。なお、上面21は本開示の「第3の面」の一例であり、下面22は本開示の「第4の面」の一例である。
【0034】
ベース部材20の直径は、上段部が例えば150mm~300mm程度であり、下段部が例えば180mm~350mm程度である。また、ベース部材20の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば20mm~50mm程度である。
【0035】
なお、ベース部材20には、冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)を流すための冷媒流路が形成されており、冷媒流路内に冷媒を流すことにより、ベース部材20が冷却され、これにより、接合層40を介して板状部材10が冷却されるようになっている。
【0036】
そして、ベース部材20には、上面21と下面22との間を厚み方向(Z軸方向、
図2において上下方向)に貫通する円筒形状の貫通孔25が形成されている。この貫通孔25内には、給電端子62と絶縁スリーブ30が配置されている。絶縁スリーブ30は、環状の部材であり、給電端子62を覆うように配置され、有底孔15側の端部が接合部31により板状部材10に接合されている。なお、絶縁スリーブ30及び接合部31の詳細については後述する。
【0037】
接合層40は、板状部材10の下面12とベース部材20の上面21との間に配置され、板状部材10とベース部材20とを接合している。この接合層40を介して、板状部材10の下面12とベース部材20の上面21とが熱的に接続されている。なお、接合層40の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば0.1~1.0mm程度である。
【0038】
接合層40は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂接着剤により構成されている。この接合層40には、
図2に示すように、絶縁スリーブ30が配置される貫通孔45が形成されている。つまり、有底孔15と貫通孔25との間に、円筒形状の貫通孔45が形成されている。貫通孔45は、有底孔15及び貫通孔25と同軸であり、有底孔15と貫通孔45と貫通孔25とが、Z軸方向(静電チャック1の軸線方向)に連なって配置されて、パッド60及び給電端子62が配置される端子孔65が形成されている。なお、本実施形態では、貫通孔45の径は、貫通孔25の径とほぼ同じであり、有底孔15の径よりも小さくなっている。
【0039】
この接合層40は、第1接合部41と第2接合部42とを有している。第1接合部41は、板状部材10の下面12とベース部材20の上面21との間に配置されている部分である。第2接合部42は、後述する絶縁スリーブ30の鍔部32の下面32b(ベース部材20側の面)とベース部材20の上面21との間に配置されている部分である(
図5参照)。
【0040】
ここで、端子孔65内の構成について、
図2及び
図5を参照しながら説明する。
図2に示すように、端子孔65内には、パッド60、給電端子62、及び絶縁スリーブ30が配置されている。絶縁スリーブ30は、給電端子62を覆うように配置され、有底孔15側で板状部材10に対してロウ付けにより接合されており、その先端がベース部材20の下面22に位置している。つまり、絶縁スリーブ30は、ベース部材20の下面22まで延びて貫通孔25の全域に配置されている。なお、絶縁スリーブ30と貫通孔25及び貫通孔45との間には、一定の隙間Sが形成されている。
【0041】
絶縁スリーブ30は、板状部材10と同様にセラミックスにより形成されており、
図5に示すように、径方向外側へ張り出す鍔部32を備えている。この鍔部32は、有底孔15内に位置している。鍔部32の板状部材10側の面(上面)32aには、接合部31が設けられている。接合部31は、金属材料により形成されており、鍔部32の上面32aとほぼ同じ形状(円環形状)をなしている。この接合部31がパッド60に対してロウ材によって接合されることにより、絶縁スリーブ30が板状部材10に固定されている。つまり、本実施形態では、絶縁スリーブ30の板状部材10に対する固定が、従来のように樹脂接着剤ではなく、金属接合材(ロウ材)を利用して行われている。
【0042】
そこで、絶縁スリーブ30の板状部材10への固定手順について、
図6を参照して簡単に説明する。給電端子62及び絶縁スリーブ30を準備し、板状部材10に対して、給電端子62及び絶縁スリーブ30を固定位置に配置する。これにより、絶縁スリーブ30内に給電端子62が挿入された状態で、絶縁スリーブ30の鍔部32が、板状部材10の有底孔15内に配置される。このとき、絶縁スリーブ30に備わる接合部31及び給電端子62の端面62aと板状部材10に備わるパッド60との間に、ロウ材70が配置される。これにより、絶縁スリーブ30の接合部31及び給電端子62の端面62aが、ロウ材70を介してパッド60に接触した状態となる。この状態で加熱することにより、ロウ材70によって接合部31及び端面62aがパッド60にロウ付けされて、絶縁スリーブ30及び給電端子62がパッド60に接合される結果、絶縁スリーブ30が板状部材10に固定される。
【0043】
そして、樹脂部80となる樹脂を、鍔部32の外周面32cと有底孔15の内周面15aとの間に充填して硬化させることにより、板状部材10に固定された絶縁スリーブ30の外周面と有底孔15の内周面との間に樹脂部80を設けている。この樹脂部80により、接合部31、ロウ材70、及びパッド60の金属部分が封止されており、給電端子62及び絶縁スリーブ30が固定された状態の板状部材10において絶縁が確保されている。
【0044】
また、絶縁スリーブ30が板状部材10に固定された状態において、絶縁スリーブ30の鍔部32の下面32bは、板状部材10の下面12よりも突出している。本実施形態では、絶縁スリーブ30の鍔部32の下面32bが板状部材10の下面12から、例えば5~10μm程度突出している。そのため、静電チャック1では、絶縁スリーブ30(鍔部32の下面32b)が接合層40(第2接合部42)を圧縮した状態で接触し、鍔部32の下面32bと外周側面が接合層40(第2接合部42)に食い込んでいる。つまり、接合層40において、第1接合部41の厚さよりも第2接合部42の厚さが小さくなっている。
【0045】
このような構成を有する静電チャック1では、絶縁スリーブ30が配置された部分(端子孔65の部分)において、板状部材10とベース部材20との間における熱伝導性が悪くなる。そのため、端子孔65の直上部分が温度特異点になりやすく、板状部材10の保持面11における均熱性を低下させるおそれがある。なお、端子孔65の部分において板状部材10とベース部材20との間での熱移動は、絶縁スリーブ30及び接合層40を介して行われる。
【0046】
そこで、本実施形態の静電チャック1では、絶縁スリーブ30の鍔部32の上面32aに金属材料で形成した接合部31を設け、接合部31を板状部材10のパッド60にロウ材70により接合して、絶縁スリーブ30を板状部材10に固定している。そのため、板状部材10と絶縁スリーブ30との間における熱移動が、金属を介して行われるため促進される。
【0047】
また、本実施形態の静電チャック1では、絶縁スリーブ30に鍔部32を設けているため、絶縁スリーブ30と板状部材10との接合部分(金属部分)の面積を大きくすることができる。さらに、静電チャック1では、パッド60を給電端子62を接合するためのパッドと、絶縁スリーブ30を接合するためのパッドとを兼用するように一体で形成しているため、金属接合部分の面積を増やすことができる。これらのことにより、板状部材10と絶縁スリーブ30との間における熱移動を更に促進させることができる。
【0048】
そして、本実施形態の静電チャック1では、絶縁スリーブ30における鍔部32の下面32bが、接合層40(第2接合部42)を圧縮した状態で接触し、鍔部32の下面32bと外周側面が接合層40(第2接合部42)に食い込んでいるため、絶縁スリーブ30が接合層40に接触する面積が大きくなる。そのため、絶縁スリーブ30と接合層40との間における熱移動を促進することができる。
【0049】
このように静電チャック1では、板状部材10と絶縁スリーブ30との間、及び絶縁スリーブ30と接合層40との間におけるそれぞれの熱移動を促進することができる。そのため、絶縁スリーブ30が配置されている端子孔65の部分において、絶縁スリーブ30及び接合層40を介する、板状部材10とベース部材20との間における熱移動を促進することができ、板状部材10とベース部材20との間における熱伝導性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態の静電チャック1では、絶縁スリーブ30における鍔部32の外周面32cと有底孔15の内周面15aとの間に樹脂部80が設けられている。そのため、樹脂部80により、接合部31、ロウ材70、及びパッド60の金属部分が封止されているので、静電チャック1における絶縁性を向上させることができる。これにより、絶縁スリーブ30の厚さを薄くすることができるため、ベース部材20の貫通孔25の径を小さくすることができ、板状部材10の保持面11における均熱性を向上させることができる。なお、板状部材10とベース部材20との間における熱移動は、絶縁スリーブ30及び接合層40を介して行われるため、樹脂部80を設けても熱伝導性が悪化することはない。
【0051】
そして、絶縁スリーブ30は、ベース部材20の下面22まで延びて貫通孔25の全域に配置されている。これにより、ベース部材20の貫通孔25の内周面全域が絶縁スリーブ30で覆われるため、静電チャック1における絶縁性を一層向上させることができる。
【0052】
なお、樹脂部80に無機材料、金属粉、金属繊維、金属箔等のフィラーを混入することにより、樹脂部80の熱伝導性を向上させることできる。これにより、板状部材10と絶縁スリーブ30との間の熱伝導性をより向上させることができる。このようなフィラーを混入することにより樹脂部80が硬くなってしまうが、板状部材10と絶縁スリーブ30との熱膨張差が小さく、また有底孔15の径が小さいため、静電チャック1の温度が上昇/下降する際に、熱膨張/収縮による板状部材10と絶縁スリーブ30との変形量にほとんど差が生じないため、樹脂部80が損傷することはない。
【0053】
そして、絶縁スリーブ30によって絶縁を確保することができるため、絶縁スリーブ30の外周面と貫通孔25との間に設ける隙間Sを、熱膨張差によって絶縁スリーブ30が貫通孔25の内周面に接触しない限界まで小さくすることができる。これにより、ベース部材20の貫通孔25の小径化を図ることができるため、板状部材10の保持面11における均熱性を向上させることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態の静電チャック1によれば、絶縁スリーブ30が板状部材10に金属製の接合部31を介して接合されているため、板状部材10と絶縁スリーブ30との間における熱移動が、金属を介して行われるので促進される。また、絶縁スリーブ30が接合層40に接触しているため、絶縁スリーブ30と接合層40との間における熱移動を促進することができる。従って、絶縁スリーブ30の配置部分(端子孔65付近)において、絶縁スリーブ30及び接合層40を介する、板状部材10とベース部材20との間における熱移動が促進されるため、板状部材10とベース部材20との間における熱伝導性を向上させることができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と基本的な構成は同じであるが、絶縁スリーブ30及び有底孔15の形状が、第1実施形態とは異なる。そこで、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0056】
図7に示すように、第2実施形態の静電チャック1aでは、絶縁スリーブ30に環状凸部33が備わり、有底孔15に環状溝16が形成されている。環状凸部33は、絶縁スリーブ30の鍔部32の上面32a側の外周部に、板状部材10側へ突出してパッド60、ロウ材70、及び接合部31を囲むように形成されている。環状溝16は、有底孔15の底面15bの外周部に形成されており、環状凸部33に対応して保持面11側へ凹んだ形状をなしている。これにより、有底孔15の環状溝16内に、絶縁スリーブ30の環状凸部33が入り込んで配置される。なお、
図7では、第2実施形態の静電チャック1aにおける絶縁スリーブ30の接合部周辺(
図2に示すA部に相当する部分)を示している。
【0057】
このような環状凸部33を設けることにより、絶縁スリーブ30と板状部材10との間に配置されるパッド60、ロウ材70、及び接合部31の金属部分を絶縁スリーブ30で囲い込むことができるため絶縁距離が長くなる。そのため、樹脂部80を設けなくても、絶縁性を向上させることができる。もちろん、本実施形態において、第1実施形態と同様に、樹脂部80を設けてもよい。
【0058】
そして、本実施形態の静電チャック1aでも、絶縁スリーブ30が板状部材10に金属製の接合部31を介して接合されているため、板状部材10と絶縁スリーブ30との間における熱移動が促進される。また、絶縁スリーブ30が接合層40に接触しているため、絶縁スリーブ30と接合層40との間における熱移動を促進することができる。従って、絶縁スリーブ30の配置部分(端子孔65付近)において、絶縁スリーブ30及び接合層40を介する、板状部材10とベース部材20との間における熱移動が促進されるため、板状部材10とベース部材20との間における熱伝導性を向上させることができる。
【0059】
[第3実施形態]
最後に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と基本的な構成は同じであるが、絶縁スリーブ30に鍔部32が形成されていない点が第1実施形態とは異なる。そこで、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0060】
図8に示すように、第3実施形態の静電チャック1bでは、絶縁スリーブ30に鍔部が形成されておらず、絶縁スリーブ30の端面30aに接合部31が設けられている。そして、この接合部31が板状部材10のパッド60に対してロウ材70によってロウ付されて固定されている。このように絶縁スリーブ30に鍔部32がない場合でも、絶縁スリーブ30を板状部材10に対して金属部分を介して接合することができる。また、本実施形態では、絶縁スリーブ30に鍔部がないため、接合層40の貫通孔45の内周面を絶縁スリーブ30の外周面に接触させることにより、絶縁スリーブ30を接合層40に接触させている。なお、
図8では、第3実施形態の静電チャック1bにおける絶縁スリーブ30の接合部周辺(
図2に示すA部に相当する部分)を示している。
【0061】
このように本実施形態の静電チャック1bでも、絶縁スリーブ30が板状部材10に接合部31を介して接合されているため、板状部材10と絶縁スリーブ30との間における熱移動が促進される。また、絶縁スリーブ30が接合層40に接触しているため、絶縁スリーブ30と接合層40との間における熱移動を促進することができる。従って、絶縁スリーブ30の配置部分(端子孔65付近)において、絶縁スリーブ30及び接合層40を介する、板状部材10とベース部材20との間における熱移動が促進されるため、板状部材10とベース部材20との間における熱伝導性を向上させることができる。
【0062】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、端子孔65としてチャック電極50の端子孔を例示しているが、チャック電極50に限らず、高周波電極やヒータ電極などの端子孔においても本開示を適用することができる。
【0063】
また、上記の実施形態では、接合層40として樹脂接着剤により構成されているものを例示したが、接合層40は、金属接合材により構成されているものであってもよい。金属接合材としては、例えば、金属粉末や金属箔を用いて接合する金属接着剤や、金属繊維、ポーラス材、網目構造体などの金属メッシュとロウ材で構成されるもの、あるいは、複数の柱状金属片とロウ材で構成されるもの等を使用することができる。金属接着剤、金属メッシュや金属片を形成する金属としては、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅、真鍮、これらの合金、又はステンレス鋼などを使用することができる。なお、接合層40として、金属接合材により構成されているものを使用する場合には、絶縁性を確保するために樹脂部80を設けることが好ましい。
【0064】
また、上記の第1及び第2実施形態では、絶縁スリーブ30と貫通孔45との間に一定の隙間Sが形成されている場合を例示したが、第3実施形態のように、隙間Sを設けずに接合層40の貫通孔45の内周面を絶縁スリーブ30の外周面に接触させてもよい。これにより、絶縁スリーブ30と接合層40との間における熱移動をより促進することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 静電チャック
10 板状部材
11 保持面
12 下面
15 有底孔
20 ベース部材
21 上面
22 下面
25 貫通孔
30 絶縁スリーブ
31 接合部
32 鍔部
33 環状凸部
40 接合層
41 第1接合部
42 第2接合部
60 パッド
80 樹脂部
S 隙間
W 半導体ウエハ