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特開2024-25437殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、及び製造装置
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  • 特開-殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、及び製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025437
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20240216BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240216BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240216BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20240216BHJP
   D06M 11/46 20060101ALI20240216BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20240216BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20240216BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/12 101
D06M11/46
D06M11/83
D06M15/564
D06M15/59
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128885
(22)【出願日】2022-08-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521461834
【氏名又は名称】株式会社進め
(74)【代理人】
【識別番号】100207066
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 毅
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 司
【テーマコード(参考)】
4H011
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA07
4H011DA15
4H011DA16
4H011DH05
4L031AA18
4L031AB31
4L031BA04
4L031BA09
4L031CB10
4L031DA12
4L033AA07
4L033AB04
4L033AC10
4L033AC11
4L033CA50
4L033CA55
4L033DA06
(57)【要約】
【課題】光が存在しない場所でも長時間にわたって殺菌効果を持続できると共に、生体適合性が高く、しかも製造コストを低減することができる殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の一態様の殺菌剤は、銀イオンを吸着した二酸化チタンを含む殺菌剤であって、前記殺菌剤は、さらに熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーを含むことにより生体適合性を有し、かつ、前記二酸化チタンは100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満であることにより、ナノ粒子による環境毒性を有しないことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンを吸着した二酸化チタンを含む殺菌剤であって、
前記殺菌剤は、さらに熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーを含むことにより生体適合性を有し、かつ、
前記二酸化チタンは100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満であることにより、ナノ粒子による環境毒性を有しないことを特徴とする殺菌剤。
【請求項2】
銀イオンの少なくとも一部が銀酸化物、水酸化銀又は銀元素の少なくとも一つの状態で、かつ、二酸化チタンに吸着した状態で存在していることを特徴とする請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の殺菌剤を化学繊維からなる繊維材に適用し、繊維上で継続して細菌の伝播が遮断可能な継続殺菌効果を有することを特徴とする抗感染性繊維材。
【請求項4】
請求項3に記載の抗感染性繊維材を用いることを特徴とする抗感染性繊維製品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の殺菌剤を化学繊維からなる繊維製品に付着させたことを特徴とする抗感染性繊維製品。
【請求項6】
粒径が100nm未満のナノ銀を使用することなく、銀を電気分解することよって銀イオンを含む溶液を調整する銀イオン溶液を調製する工程と、
前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる工程と、
前記銀イオインを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーとを混合して樹脂エマルジョンを調製する工程と、
を含むことを特徴とする殺菌剤の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の殺菌剤の製造方法により製造した樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機によって化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる工程を含むことを特徴とする抗感染性繊維材又は抗感染性繊維製品の製造方法。
【請求項8】
銀イオンを含む溶液を調製する銀イオン調製部と、
前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる銀イオン吸着部と、
前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーと、を混合して樹脂エマルジョンを調製する樹脂エマルジョン調製部と、
を含むことを特徴とする殺菌剤の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の製造装置により調製された樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機により化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを、前記化学繊維からなる繊維材、又は前記化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる付着部を含むことを特徴とする抗感染性繊維材又は抗感染性繊維製品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体ないし液体の形態の抗菌剤は公知である。固体の抗菌剤として、光触媒の酸化還元力を利用した光触媒関連技術が知られている。また、米国EPAでは固体の殺菌剤として銅若しくは銅合金を初めて承認している。通常の光触媒は、光触媒自体が不溶性であるために長期間作用させることができるが、紫外光が存在しているときにのみ作用し、暗所では作用しない。また、光触媒は細菌という有機物の一つである蛋白質をラジカルによって分解するが、二酸化チタンという固体を繋ぎとめるため樹脂バインダーを用いる必要がある。この樹脂バインダーは有機物であり、更には繊維に使用した場合繊維自体も有機物であるため、光触媒が樹脂バインダーや繊維自体を分解してしまうため、実際は実用的ではない。一方、アルコール、次亜塩素酸塩といった液体の抗菌剤は、通常は光を必要とせずに作用し、直ちに周囲の環境に対して優れた抗菌効果を奏するが、すぐに気化ないし蒸発してしまうために短期間しか作用しない。また、一般的に液体の抗菌剤は効果が一過性であって継続性がないため、殺菌効果に即効性が要求されるため、多くの液体の抗菌剤には毒性を有しており、それ故に環境に負荷を与えるという欠点を有している。
【0003】
下記特許文献1には、光触媒に加え、銀イオンを抗菌剤として用いることが記載されている。特許文献1では、バインダーとしてポリアクリル酸類を用いて、アセチルアセトン錯体又はアミノ酸錯体により銀イオンを架橋することにより、抗菌剤として繊維に銀イオンを加えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-042642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、バインダーとしてポリアクリル酸類を用いているが、ポリアクリル酸類は粘度が高く、また硬化特性があるため、加工が難しいという問題がある。またメイラード反応に起因して硬化後に意図しない褐色化するおそれがある。さらに、バインダーを製造するために必要とされる大量のアンモニアの使用は環境負荷がかかり、また、バインダー系のコストが高いという問題点がある。また、特許文献1では、アセチルアセトン錯体又はアミノ酸錯体により銀イオンを架橋しているが、これらの錯体においては、銀イオンを様々な環境下で長期間安定して保持しておくことが困難であった。また、銀イオンを、錯体を介して架橋することによるコストアップも生じていた。
【0006】
さらに、特許文献1では、殺菌繊維に対して抗菌材として光触媒を使用しているが、例えば光触媒活性の高い光触媒二酸化チタン触媒は、細胞毒性のない抗菌材であるが、光が存在するような場所では、触媒を担持した基材や有機物をボロボロに崩してしまうという課題を有している。例えば、メディカルテキスタイルの分野では、例えば米国FDAの登録要件を満たすためには、厳しい生体適合性が求められ、繊維に対して抗菌効果を付加する場合の抗菌材だけではなく、バインダー、架橋剤、その他の添加材等の全ての材料に対して、生体適合性があること、特に細胞毒性が無いことが求められる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決すべくなされたものである。すなわち、本発
明は、光が存在しない場所でも長時間にわたって殺菌効果を持続できると共に、生体適合性があり、しかも製造コストを低減することができる殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の殺菌剤は、銀イオンを吸着した二酸化チタンを含む殺菌剤であって、前記殺菌剤は、さらに熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーを含むことにより生体適合性を有し、かつ、前記二酸化チタンは100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満であることにより、ナノ粒子による環境毒性を有しないことを特徴とする。本発明の一態様の殺菌剤は、銀イオンを高密度に吸着した二酸化チタンを含む高機能殺菌特性を持った殺菌剤である。生体適合性としては、細胞毒性、皮膚感査性、及び皮膚刺激性が挙げられるが、本発明の一態様の殺菌剤では、細胞毒性、皮膚感査性、及び皮膚刺激性のいずれの問題も無く、生体適合性に優れている。
【0009】
二酸化チタンは、白色で高い光遮蔽性を有するため、各種顔料として広い用途において使用されている。二酸化チタンの触媒活性は製造時の焼成条件等により調整されるものであり、この中で、顔料として使用されている二酸化チタンは、塗料や化粧品等に使用されるので、周囲の有機物の分解を避けるために光触媒活性が低いものとされている。また、これらの顔料には、二酸化チタンの光触媒活性をより抑制するため、表面を無機材料によって被覆したものも存在する。
【0010】
本発明で用いる二酸化チタン粒子は、例えば顔料として使用されている二酸化チタンのように、殺菌用の光触媒として用いられるものよりも、光触媒活性が小さいものである。光触媒活性が小さい二酸化チタン粒子を用いることで、光が存在する場所において光触媒活性による殺菌効果を奏するが、本発明で用いる二酸化チタン粒子の触媒活性は所定の範囲内に限定されているため、繊維材を劣化させる等の悪影響を及ぼすことがない。しかも、市販の顔料用の二酸化チタン粒子は、殺菌用の二酸化チタンよりも光触媒活性は小さいが、安価であり経済的となる。二酸化チタンとしては、粒子の粒径が100nm以上1μm以下であり、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満であるものを使用することにより、ナノ粒子による環境毒性を有しない殺菌剤を得ることができる。二酸化チタンの粒子径は100nm以上、1μm以下の間で正規分布に従い分布しているが、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満、すなわち、本態様の殺菌剤は、実質ナノ粒子を含んでいない。このため、ナノ粒子による生体適合性に関する問題、特に細胞毒性がなく、同様に、皮膚刺激性、及び、皮膚感作性等の問題もない。
【0011】
このような光触媒活性の小さい二酸化チタン粒子に吸着されている銀イオンは、光の存在の有無に関わらず、抗菌効果を奏することに加え、抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性を有する。しかも、本態様の殺菌剤で用いられている二酸化チタン粒子は、光触媒活性が小さいにしても一応の光触媒活性を有しているため、光の存在下においては、二酸化チタン粒子が吸着している銀イオンの働きと相まって、良好にウイルス、菌、カビ等の死骸や、アレルゲン、臭気物、さらには汚れをも分解することができる。そのため、本態様の殺菌剤は、光の存在の有無に関わらず、長時間に亘って、良好な抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を有するものとなる。
【0012】
本発明の一態様の抗菌性繊維材で用いられている、二酸化チタンに吸着された銀イオンは、水分中にほとんど溶け出さない。銀イオンの溶け出す量は数ppb程度である。特に、繊維に樹脂バインダーで固定された場合には水に十日間浸漬させた場合でも銀イオンの溶出量は数ppb以内(具体的には1ppb程度)である。銀イオンは二酸化チタン表面に高濃度で強固に吸着固定されて再溶出しないため、本態様の殺菌剤では、銀イオンを表面に吸着して固体の状態で銀イオンの殺菌機能と、光触媒としての二酸化チタンの殺菌機能の両方を発揮する、高機能殺菌特性を持つことができる。このため、主として、ウイルス、菌、カビ等の死骸や、アレルゲン、臭気物、汚れが分解される。また、銀イオンがほとんど溶け出さないことから、本発明の一態様の剤は長時間に亘って、抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を有する。
【0013】
高濃度、特に限定されるものではないが、例えば7.5~30ppm程度の銀イオン溶液中で、二酸化チタンに高密度で銀イオンを吸着させる。例えば、30ppmの銀イオン水に二酸化チタン粉末を入れると、銀イオン水の銀イオン濃度が数ppb程度まで低下する。その後、二酸化チタンを銀イオン水から取り出して乾燥させ、再び水に入れると、その水の銀イオン濃度は数ppb程度と僅かであり、銀イオンが再溶出していないことが実証された。このように、二酸化チタンは銀イオンを電子的な機能により吸着し、液体中にも再溶出しないように長時間にわたり銀イオンを保持し続けることが分かった。従来の殺菌剤では銀イオンが液体の状態で存在していたが、本態様の殺菌剤では銀イオンを二酸化チタンに吸着させることで固体の殺菌剤とした。固体の殺菌剤とすることにより、接触による細菌の伝播を継続して遮断することができるので、抗感染性を持つ。
【0014】
この二酸化チタンの銀イオンを吸着する性質を利用し、殺菌剤として銀イオンを吸着した二酸化チタンを用い、この二酸化チタンを熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーにより例えば繊維材や繊維製品に付着されることができる。銀イオンは二酸化チタン表面に高密度で吸着保持されているため、繊維に加工しても再溶出する事は数PPBレベルであり、この事も相まって継続性を持った高機能抗菌剤になっている。銀イオンが二酸化チタンに吸着されて保持され続けているため、この二酸化チタンが付着した繊維材や繊維製品では、光が存在しない場所でも長時間にわたって抗菌効果を持続できると共に、生体適合性がある。水系の樹脂バインダーの熱硬化型の架橋剤としては、生体適合性がある架橋剤、例えばポリカルボジイミド系架橋剤を用いることができる。
【0015】
このように、光触媒を銀イオンの吸着に利用すれば、光触媒自体の触媒活性による殺菌効果に加え、さらに銀イオンによる殺菌効果が利用できて、光が存在しない場所でも、所望の殺菌効果を長期間にわたり持続することができる。ところが、従来から用いられていた、アルミナ等のセラミックスでは、銀イオンを吸着する機能はない。本発明者は様々な光触媒の分析を通して、二酸化チタン、例えば顔料に用いられる触媒活性が低い二酸化チタンが、銀イオンを吸着し、長時間安定して銀イオンを保持するという性質を見出すことにより、本発明の一態様の殺菌剤では、触媒活性が低い二酸化チタンに銀を吸着させるに至った。さまざまな光触媒が存在する中で、本発明において二酸化チタンの銀イオン吸着機能に着目した点は、他の銀イオン系抗菌剤にはない優れた特徴である。
【0016】
従来は、光触媒と共に吸着材としてヒドロキシアパタイト(HAp)粒子が使用されることがあったが、本発明の一態様の抗菌性繊維材においては、ヒドロキシアパタイト等の吸着材は必要ない。ただし、本実施形態では、抗菌材にヒドロキシアパタイトを添加することもできる。このように、ヒドロキシアパタイトは必ずしも必須の成分ではないので、除外してもよい。ただし、ヒドロキシアパタイトは各種成分の吸着材として周知のものであるため、ヒドロキシアパタイトを用いることにより、抗菌活性や菌の減少率を高めることが期待できる。
【0017】
従来ナノ銀が殺菌効果を有することが知られていたが、ナノ銀は環境負荷が問題となっており、本発明の一態様の抗菌性繊維材では、ナノ銀は用いていないため、環境毒性の問題がない。本態様の殺菌剤は、銀粒子を用いる場合と比べると、銀の使用量を低減できると共に、銀粒子を粉砕化する必要が無く、さらに、ナノ銀による環境負荷の問題もないため、コスト面だけでなく、安全面でも有効である。本発明の一態様の抗菌性繊維材では安価に銀イオン水を調製して、二酸化チタンに銀イオンを吸着させることにより、安全性と経済性を両立させた。
【0018】
加えて、本発明の一態様の殺菌剤においては、二酸化チタン粒子の光触媒活性が通常の光触媒活性を有する二酸化チタンよりも小さいものを利用できるため、この場合、光が存在する場所であっても、抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を維持した状態で、基材である繊維に悪影響を及ぼすことが無く、繊維材の寿命を適宜に長く保つことができるようになる。
【0019】
また、本発明の一態様の殺菌剤は、銀イオンを二酸化チタンに吸着しており、銀イオンが再溶出されることがなく、さらに、銀イオンを新たに発生させる銀粒子を有していないので、周囲環境に不必要な銀イオンを放出することが無く、環境に対する負荷となることがない。100ppb以下の銀イオンは飲料水にも認められているとはいえ、過剰な銀イオンは環境負荷となるおそれがある。本態様の殺菌剤では、銀イオンが二酸化チタンに吸着されていて再溶出されないため、継続的に抗感染性感を有するが、銀イオンが過剰に環境に影響を及ぼすことがない。
【0020】
本発明の一態様の殺菌剤には、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーが用いられており、この架橋剤としては生体適合性のあるもの、例えば、ポリカルボジイミド系架橋剤を用いることができる。例えば、ポリカルボジイミド系架橋剤等の熱硬化型の架橋剤を適用した水系樹脂バインダーは、生体適合性に優れており、細胞毒性を有しない。二酸化チタンを繊維に付着するためのバインダーとしては、安全性の高い水系樹脂バインダーを使用する。本発明の一態様の殺菌剤においては、水系樹脂バインダーとしては、例えば水系ウレタン樹脂バインダーを利用することにより、化学繊維にも対応可能で、かつ、二酸化チタンを長期間安定して繊維に保持することができる。
【0021】
ところが、従来の水系の架橋剤には樹脂エマルジョンの硬化が難しいという問題があった。例えば、高温条件が必要となったり、硬化速度が速すぎたり、ポットライフが短かったりするため、樹脂材に対して二酸化チタンを均一に安定して付着させることが困難であった。また、常温硬化が可能である、イソシアネート系の架橋剤には、高い細胞毒性が認められた。そこで、本発明の一態様の殺菌剤においては、架橋剤としては、水性樹脂用架橋剤であり、熱硬化型の架橋剤である架橋剤として、例えばポリカルボジイミド系(Polycarbodiimide)を使用することにより、細胞毒性の問題を解消し、かつ、硬化させ易い特性を実現した。ポリカルボジイミド系安全性架橋剤は、安全性が高く、かつ、VOC規制への対応が可能で、環境負荷を低減できる。カルボキシ基含有水性樹脂の架橋剤は、カルボキシ基含有水性樹脂である水系ウレタン樹脂(ポリウレタンディスパージョン、PUD)の架橋に適している。水系樹脂バインダーは、ウレタン樹脂に限定され得るものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂など他の種類の水系樹脂であってもよい。
【0022】
例えば、日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライト水性樹脂用架橋剤V-02、V-02-L2、SV-02、V-04、V-10、E-02、E-05」を用いることができる。カルボジライト水性樹脂用架橋剤は、変異原性(Ames試験)は陰性であり、LD50(実験動物としてラットを用いて、経口、経皮による投与によって半数が死亡すると推定される量)は2,000mg/kg以上であり、揮発性有機化合物VOCフリーである。熱硬化型ではあるが、水系ウレタン樹脂バインダーを硬化させる際の低温反応性に優れている。また、ポットライフが長いため繊維への二酸化チタンの付着加工がし易く、しかも、耐久性、耐薬品性、密着性を向上できる。
【0023】
細胞毒性対策バインダーとしては、水系ウレタン樹脂バインダーであるウレタンエマルジョンと熱硬化型のポリカルボジイミド系の架橋剤を使用し、防腐剤を添加していないものを使用した結果、細胞毒性がないことが確認できた。一方で、比較例においては、一般に流通されている、DIC株式会社のウレタン樹脂バインダーである「U-29K」では、例えば架橋剤に起因すると推定される細胞毒性が確認された。例えば、従来使用されている、常温硬化が可能である、イソシアネート系の架橋剤には、高い細胞毒性が認められる。
【0024】
本発明の第2の態様の殺菌剤においては、銀イオンの少なくとも一部が銀酸化物、水酸化銀又は銀元素の少なくとも一つの状態で存在していてもよい。
【0025】
溶液中で二酸化チタン粒子の表面に金、銀、白金及び銅から選択された少なくとも一つの金属イオンを吸着させた後、乾燥すると、吸着された金属イオンは、水分がなくなるに伴って一部が自然に水酸化物(酸化物の水和物)を経て酸化物に変化し、さらには特に周囲の光によって一部が光分解して対応する金属元素となる。銀酸化物、水酸化銀又は銀元素の状態で二酸化チタンに吸着されている銀イオンは、周囲の湿度によって再び銀イオン化する。このため、光が存在しない場所でも長時間にわたって殺菌効果を持続できると共に、生体適合性があり、しかも製造コストを低減することができる殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、製造装置を提供することができる。また、光の存在の有無に関わらず、良好な抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を維持することができる。また、二酸化チタン粒子に吸着された銀イオンは、一部が銀酸化物、水酸化銀又は銀元素の少なくとも一つの状態となったとしても、二酸化チタンに吸着された状態が維持される。
【0026】
本発明の第3の態様の抗感染性繊維材は、第1又は第2の態様の殺菌剤を化学繊維からなる繊維材に適用し、繊維上で継続して細菌の伝播が遮断可能な継続抗菌効果を有することを特徴とする。ここで、継続抗菌効果とは、例えば抗感染性繊維材を100回以上洗濯しても、殺菌効果が持続することをいう。後述の実験例で示されているように、本態様の抗感染性繊維材では、例えば洗濯回数300回でも殺菌効果が持続するため、繊維材に殺菌剤を再度付加するための再処理が不要となる。繊維材としては、メディカルテキスタイルの分野にも対応できるように、細胞毒性の観点から、化学繊維を用いる。天然繊維は必ずしも細胞毒性の観点からの安全性が確保されているとはいえない。例えば綿の種子には、ゴシポール(gossypol)という毒性物質が含まれていることが知られている等、メディカルテキスタイルの分野では、木綿等の天然繊維についても細胞毒性が問題とされる。さらに、繊維材は柔軟性、加工性、その他使用目的に応じて種々の化学薬品を使用して処理されている場合が多いため、繊維材を事前に十分に洗浄しておくことが必要である。例えば、綿の医療用ガーゼでは、細胞毒性の問題を解消するためには前処理が手間となり、コストが高くなってしまう。
【0027】
本発明の第3の態様の抗感染性繊維材においては、繊維材としてナイロン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、アクリル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリクラール繊維、ポリ乳酸繊維等の化学繊維を用いた。ポリカルボジイミド系架橋剤を適用した水系樹脂バインダーは、化学繊維に対する二酸化チタンの付着についても高い機能性を有する。化学繊化学繊維の例えばポリエステル(商標名「テトロン」)の実験例あり。)維を使用することにより、繊維材に関する細胞毒性の問題を解消することができる。例えば、ポリエステル(商標名「テトロン」)では、細胞毒性がないことが確認された。
【0028】
本発明の第3の態様では、抗感染性繊維材として特定されているが、従来には抗感染性を有する抗感染性繊維材というものは前例がなく、各国において国レベルで正式に認可したという前例がほとんどない。これは殺菌効果の基準が厳しく、99.99%の持続的な殺菌効果が求められるところ、本態様の殺菌剤を適用した抗感染性繊維材、又は抗感染性繊維製品においては、接触による細菌の伝播を遮断すること、及び、持続的な殺菌効果を実現し、さらに、洗濯しても殺菌効果を持続することができる。
【0029】
耐性菌の問題に対応するためには、99.99%という高い継続性を持った殺菌機能が求められるが、従来には即効性がある殺菌剤は存在したが、持続的を発揮することは難しかったが、本態様の殺菌剤では継続性があり、長時間にわたって殺菌効果を継続するため、耐性菌対策としてもきわめて有用である。一方で、細胞毒性のない繊維材、繊維製品が求められていることから、本態様の抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品繊維では、化学繊維、例えばポリエステルを採用し、殺菌効果に加えて、細胞毒性の問題も同時に回避することにより、抗感染性を有する抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品を実現した。
【0030】
99.99%(以下「4log」ともいう)の高い継続性を持った殺菌機能によれば、殺菌効果を長期間にわたって担保できるために、耐性菌も発生しにくい。しかも本態様の抗感染性繊維材は、300回の洗濯に耐えられ、しかも、99.99%の殺菌性能が持続する。これば、米国FDAの基準である、99.99%の殺菌性能を満たす。繊維製品は一般的には洗濯回数300回程度で廃棄されるため、300回の洗濯に耐えられ、しかも、99.99%の殺菌性能が持続する本態様の抗感染性繊維材は、一度殺菌剤を付加する加工を行えば、その後に殺菌剤を再度付加するような再加工の必要がない。本態様の抗感染性繊維材に細菌を接触させる接触時間が18~24時間程度で、99.99%の殺菌効果が得られ、接触による細菌感染の伝播を遮断することができる。自然環境においては、細菌に対して、長期間にわたり殺菌効果を発揮することが重要である。また、本態様の抗感染性繊維材は、汚れた環境、例えば雑菌のいるような環境において、さらに対象とする細菌の増殖を抑える抗菌性能にも優れている。
【0031】
本発明の第4の態様の殺菌性繊維製品は、第3の態様の抗感染性繊維材を用いることを特徴とする。また、本発明の第5の態様の抗感染性繊維製品は、第1又は第2の態様の殺菌剤を化学繊維からなる繊維製品に付着させたことを特徴とする。
【0032】
本態様の殺菌剤を適用した繊維製品によれば、光が存在しない場所でも長時間にわたって抗菌効果を持続できると共に、生体適合性が高く、かつ、抗菌材が繊維素材に対して悪影響を及ぼすことがなく、しかもコストを低減することができる抗菌性繊維材を提供することができる。また、係る態様の抗菌性繊維材は、抗菌効果の他にも、光の存在の有無にかかわらず、長時間に亘って良好な抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を有する。また、長時間にわたって殺菌効果を継続するため、耐性菌対策としてもきわめて有用であると共に、細胞毒性のない繊維材、繊維製品が求められていることから、本態様の抗感染性繊維製品では、化学繊維、例えばポリエステルを採用し、殺菌効果に加えて、細胞毒性の問題も同時に回避することにより、抗感染性を有する抗感染性繊維製品を実現した。
【0033】
本発明の第6の態様の殺菌剤の製造方法では、粒径が100nm未満のナノ銀を使用することなく、銀を電気分解することよって銀イオンを含む溶液を調整する銀イオン溶液を調製する工程と、前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる工程と、前記銀イオインを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーとを混合して樹脂エマルジョンを調製する工程と、を含むことを特徴とする。銀イオン溶液を調製する工程において、二酸化チタンの分散をし易くするために、銀イオン溶液に分散剤を含んだ溶液を調製する。銀イオン溶液中に分散された二酸化チタンに銀イオンを吸着させる。
【0034】
係る態様の殺菌剤の製造方法によれば、光が存在しない場所でも長時間にわたって殺菌効果を持続できると共に、生体適合性が高く、しかも製造コストを低減することができる殺菌剤を製造することができる。また、粒径が100nm未満のナノ銀を使用することがないため、ナノ銀による環境毒性の問題がない。
【0035】
また、係る態様の製造方法の銀イオンを含む溶液を調製する工程では、例えば銀金属板を陽極とし、白金金属板を陰極として短時間電気分解を行って蒸留水中に銀イオンを存在させた。これにより、安価に効率的に銀イオンを含む溶液を調製することができる。
【0036】
また、係る態様の製造方法の溶液中で二酸化チタンに銀イオインを吸着させる工程では、二酸化チタンが銀イオンを吸着し、長時間にわたり安定して銀イオンを保持する性質を利用して、他の吸着材等の他の添加材を添加する必要がなく、二酸化チタンに銀イオンを吸着することができる。例えば、30ppmの銀イオン水に二酸化チタン粉末を入れると、銀イオン水の銀イオン濃度が数ppb程度まで低下する。その後、二酸化チタンを銀イオン水から取り出して乾燥させ、再び水に入れると、その水の銀イオン濃度は数ppb程度と僅かであり、銀イオンが再溶出していないことが実証された。このように、二酸化チタンは銀イオンを吸着し、液体中にも再溶出しないように長時間にわたり銀イオンを保持し続けることが分かった。
【0037】
また、係る態様の製造方法の熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーとしては、水系樹脂バインダーの具体例としては、例えば水系ウレタン樹脂バインダーを使用し、架橋剤としては、ポリカルボジイミド系架橋剤を適用することができる。ポリカルボジイミド系架橋剤は、カルボキシ基との低温反応性に優れており、水系ウレタン樹脂バインダーを硬化させ、繊維材に対して、銀イオンを吸着した二酸化チタンを、均一に安定して付着させ易い。係る工程において、基布となる繊維材を洗濯して予め毒性のある物質を洗い流しておくこと、水系樹脂バインダー及び架橋剤として細胞毒性のないものを選択すること、繊維材に付着する抗菌材として銀イオンを吸着した二酸化チタンを用いることが重要である。また、繊維材にも細胞毒性がない基材として、化学繊維を選択することができる。化学繊維に対しても、上述の細胞毒性対策バインダーが適用できる。
【0038】
低温反応性に優れた熱硬化型の架橋剤を用いることにより、係る工程を簡素な装置により実施することが可能であり、例えば、70℃~150℃程度の温度によって水系樹脂バインダーを硬化させることができる。例えば、
(1)抗菌剤を繊維材に加工した後の滅菌処理として、120℃で4時間の乾熱滅菌処理をする方法、
(2)回転ドラム式加工機としてのドラム式洗濯機を利用して、水系樹脂バインダーに架橋剤及び銀イオンを吸着した二酸化チタンを所定の軟水に混合した混合溶液中で基材を攪拌して、基材に二酸化チタンを付着させる方法、
(3)所定のパターンが形成されたスクリーンマスクを通してスクリーン印刷法により繊維材の原反に混合溶液を付着させる方法、
(4)上記混合溶液をスプレー状に噴霧した後、乾燥して、繊維材の原反に殺菌性を付与する方法、又は、
(5)所定の容器内で混合溶液に繊維材の原反を浸漬した後に脱水、乾燥することにより、繊維材の原反に殺菌性を付与する方法、
(6)繊維工場等における大規模染色加工機を使用する方法
等が採用できる。(1)の方法について、オートクレープによる滅菌処理を行うと、抗菌効果が低減又は消滅するおそれがあるので、滅菌処理の際の条件を適切に、例えば120℃で4時間に設定する必要がある。
【0039】
上記混合溶液に用いる軟水の硬度は、60以下とすることが好ましく、より長い処理時間を確保するために好ましい水の硬度は40以下であり、さらに水の硬度は30以下であると、混合溶液処理を行い、乾燥させた後に混合溶液の凝集が、より少なくなり、好ましい。
【0040】
本発明の第7の態様の抗感染性繊維材又は抗感染性繊維製品の製造方法は、第6の態様の殺菌剤の製造方法により調製した樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機によって化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる工程を含むことを特徴とする。
【0041】
係る抗感染性繊維材又は抗感染性繊維製品の製造方法では、特殊な製造設備、例えば繊維工場における大規模染色加工機のような大規模な設備等は必要なく、回転ドラム式加工機として例えば市販のドラム式洗濯機を利用した製造が可能となる。ドラム式洗濯機内に加工対象である繊維材又は繊維製品を入れて、水分を含ませた後に、調製された樹脂エマルジョン樹脂をスプレーし、ドラム式洗濯機によりタンブリングして繊維材又は繊維製品に殺菌剤を吸着させ、すなわち、化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで殺菌剤が入り込むように付着させ、最後にドラム式洗濯機の乾燥機能により乾燥させることで、殺菌剤を繊維材又は繊維製品に適用することができる。繊維材又は繊維製品に付着された殺菌剤は、洗濯しても保持されることが実験により確認された。例えば、300回の洗濯後にも抗菌活性値が維持され、殺菌効果が維持されていることが確認された。300回の洗濯後も99.99%の殺菌効果が持続するので、繊維材又繊維製品に対して殺菌剤を付加するための加工を一回だけ行えばすむため、殺菌剤を追加で付与するような再加工がほとんど不要である。そして、再加工が不要であることによって、本態様の抗感染性繊維材又は抗感染性繊維製品は、経済効果も高く、細菌に対する安全性を継続的に担保でき、また、汚れに対する洗濯回数の低減効果もあるため、従来にはない相乗的な経済効果が得られる。
【0042】
ドラム式洗濯機による別の加工例を説明する。この別の加工例では、殺菌剤をスプレーするのではなく、殺菌剤と軟水との混合溶液を用いる。回転ドラム式加工機としては、例えばコインランドリー等で使用されているようなドラム式洗濯機を用い、内部のドラムに本態様の殺菌剤(樹脂エマルジョン)と所定の軟水との混合溶液を供給及び排出するための手段を設けたものである。混合溶液を供給及び排出するための手段としては、市販のドラム式洗濯機に備えられている、ドラム内に水を供給する水供給管路と、ドラムから水を排出するための排水管路とが設けられているので、これらの管路に対して、必要に応じて本態様の殺菌剤と所定の軟水との混合溶液を供給する管路と、内部の使用剤の混合溶液を排出する管路とを接続し、さらに、それぞれ電磁弁及び電動ポンプを設けることにより、混合溶液の流出入を制御することもできる。
【0043】
洗濯後ないし清浄な乾燥状態の加工前の繊維材又は繊維製品に対して本態様の殺菌剤による加工処理を行うには、加工前の繊維材又は繊維製品をドラム内に入れ、所定量の混合溶液を供給するとともに、通常の洗濯の場合と同様にドラム41を回転(数回転程度~2、3分程度)させることにより、加工前の繊維材又は繊維製品を十分に混合溶液に浸し、繊維材又は繊維製品の撚糸の間まで殺菌剤が入り込むように付着させる。
【0044】
その後、ドラムに残留している混合溶液を回収して、さらに通常の洗濯の場合と同様に脱水処理を行う。脱水処理を終えた後、ドラム式洗濯機の乾燥機能により、又は、別の乾燥機により、70℃~150℃程度で乾燥処理を行うことにより、繊維材又は繊維製品に対して本態様の殺菌剤を適用することができる。
【0045】
本発明の第8の態様の殺菌剤の製造装置は、銀イオンを含む溶液を調製する銀イオン調製部と、前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる銀イオン吸着部と、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーと、を混合して樹脂エマルジョンを調製する樹脂エマルジョン調製部と、を含むことを特徴とする。
【0046】
係る態様の殺菌剤の製造装置によれば、光が存在しない場所でも長時間にわたって殺菌効果を持続できると共に、生体適合性が高く、しかも製造コストを低減することができる殺菌剤を製造することができる。
【0047】
本発明の第9の態様の抗感染性繊維材又は抗感染性繊維製品の製造装置は、第8の態様の製造装置により調製された樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機により化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを、前記化学繊維からなる繊維材、又は前記化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる付着部を含むことを特徴とする。
【0048】
係る抗感染性繊維材又は抗感染性繊維製品の製造装置によれば、特殊な製造設備、例えば繊維工場における大規模染色加工機のような大規模な設備等は必要なく、回転ドラム式加工機として例えば市販のドラム式洗濯機を利用した製造が可能となる。また、繊維材又は繊維製品に付着された殺菌剤は、洗濯しても保持されることが実験により確認された。
【発明の効果】
【0049】
以上述べたように、本発明の一態様の殺菌剤によれば、光が存在しない場所でも長時間にわたって殺菌効果を持続できると共に、生体適合性が高く、しかも製造コストを低減することができる殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、及び製造装置を提供することができる。また、抗菌効果以外にも、抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を有し、長時間に亘ってウイルス、菌、カビ等の死骸や、アレルゲン、臭気物、さらには汚れをも分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本実施形態の抗感染性繊維材に使用される抗菌材の抗菌機能の説明図である。
図2】本実施形態の抗感染性繊維材の生体適合性の実験結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明に係る実施形態の殺菌剤、抗感染性繊維材、抗感染性繊維製品、製造方法、及び製造装置について、各種実験例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実験例は、本発明の技術思想を具体化するための例を示すものであって、本発明の実施形態をこれらの実験例に限定することを意図するものではない。本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0052】
本実施形態の抗菌性繊維材は、銀イオンを吸着した二酸化チタンにより、抗菌効果の他にも、光の存在の有無にかかわらず、長時間に亘って良好な抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を有するものである。このため、本実施形態の抗菌性繊維材は、殺菌性繊維材料も含むものである。以下の説明において、抗菌という用語の他に、殺菌という用語を用いることもあるが、銀イオンを吸着した二酸化チタンには殺菌効果があり、同時に、抗菌効果、すなわち、菌の増殖を抑える効果もある。本実施形態の殺菌剤は、高濃度の銀イオンが酸化チタン表面に吸着されているという構造であり、二酸化チタン自体にも光触媒としての殺菌効果があることに加え、銀イオンによる殺菌効果が加えられているものであるため、高い殺菌機能を継続的に発揮することができる。
【0053】
[実験例1]二酸化チタンによる銀イオンの吸着
金属銀を純水中で電気分解した銀イオン水中に、触媒活性が低い二酸化チタン、例えば顔料用のアナターゼ型二酸化チタンを浸漬して、二酸化チタンに銀イオンが吸着することを実験により確認した。別途銀金属板を陽極とし、白金金属板を陰極として短時間電気分解を行って蒸留水中に銀イオンを存在させた。各条件での銀イオン濃度測定値を表1に示す。なお、銀イオン濃度測定条件は、次のとおりである。
評価装置:プラズマ質量分析装置 アジレント・テクノロジー株式会社 Agilent 7800
遠心分離条件:17,000rpm-2Hr
Agイオン測定値:N=3の平均値
【0054】
【表1】
【0055】
No1に示されているように、金属銀を純水中で電気分解して、銀イオン濃度7.5ppmの銀イオン水(Agイオン水)を調製した。No2に示されているように、電気分解により得られた銀イオン水中の銀イオンの大部分が、二酸化チタン(TiO)に吸着され、銀イオン濃度が7.5ppm(No1)から1.5ppb(No2)に低下している。No2で銀イオンを吸着した二酸化チタンを純水に浸漬しても、銀イオンはほとんど再溶出しなかった(No3参照)。No4の銀吸着TiOとしては、株式会社信州セラミック製の二酸化チタンに銀金属粒子を結合させた抗菌剤を用いており、二酸化チタンが銀イオンを吸着していることが分かる。ここで、No4の銀吸着TiOについて、特に限定されるものではないが、銀金属粒子の平均粒径は、例えば100nm~50μm程度、二酸化チタン粒子の平均粒径は、100nm~50μm程度、ヒドロキシアパタイト粒子の平均粒径は、100nm~50μm程度とすることができる。
【0056】
また、No4において二酸化チタンに吸着された銀イオンは、二酸化チタンが純水に浸漬された後も、ほとんど再溶出しない(No5参照)。No6に示されるように、二酸化チタン80%とハイドロキシアパタイト(HAP)20%(スラリー濃度35%)をNo1の銀イオン水に浸漬すると、銀イオンのほとんどが二酸化チタンないしハイドロキシアパタイトに吸着され、このように吸着された銀イオンは純水に浸漬してもほとんど再溶出されないことが分かった(No7、No8)。
【0057】
銀イオンを吸着された二酸化チタン及びヒドロキシアパタイトを乾燥させると、乾燥中に、二酸化チタン及びヒドロキシアパタイト中に吸着されていた銀イオンは、水分の存在により一部が水酸化銀(AgOHないしAgO・HO)を経て酸化銀(AgO)にまで変化し、さらに外部光の存在によって水酸化銀ないし酸化銀の一部が光分解されて銀原子となる。すなわち、乾燥状態では、二酸化チタンに吸着されていた銀イオンは、一部が水酸化銀及び酸化銀として存在する他、さらに一部が個別に目視ができないとしても元々存在していた銀金属に加えて追加の銀金属元素として存在するようになる。そして、各状態で存在している銀イオンは、僅かな湿度により、銀イオンの態様に戻り、この銀イオンは二酸化チタンの触媒活性と共に、抗菌作用を奏する。
【0058】
二酸化チタンに銀イオンを吸着させる際、所定期間静置する方法によって行ったが、短時間で吸着させるために、手動撹拌法、機械的撹拌法、超音波照射法、不活性ガスのバブリング法又はボールミルによる撹拌法を採用することもできる。
【0059】
本実施形態では、ベース部材としての二酸化チタンやヒドロキシアパタイトに銀イオンを吸着させた例を示したが、銀イオンだけでなく、金イオン(Au3+)、白金イオン(Pt2+)、銅イオン(Cu2+)を吸着させてもよい。また、銀イオンを電気分解によって供給する例を示したが、銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオンの場合には硝酸銀(AgNO)、塩化金(AuCl)、塩化白金(PtCl)、塩化第2銅(CuCl)ないし硝酸第二銅(Cu(NO)等を溶解した水溶液によって供給してもよい。
【0060】
このようにして、本実施形態の抗菌材は、銀イオン水中で二酸化チタンに銀イオンを吸着させて製造される。二酸化チタンの粒径は、100nm~1μmの範囲内であり、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満となるように設計している。本実施例の抗菌剤使用する二酸化チタンの粒度分布の一例を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2では、二酸化チタンの粒径の下限である100nm(0.1μm)以下の粒子の重量分布は0.2%であり、実質的にナノ粒子を含んでいない。重量平均径は300nm程度であり、粒度分布は確率分布に従い、100nm~600nmの範囲内となっている。二酸化チタンの粒径の上限値は特に限定されるものではないが、粒径が大きすぎると繊維材への付着性の観点からは望ましくないので、1μmを上限とし、さらに望ましくは粒径の上限を600nm程度とすることもできる。二酸化チタンの粒子径が100nm以上であると、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーである水系樹脂エマルジョンに分散し易いという利点もある。
【0063】
本実施形態の殺菌剤に使用される抗菌材は白色であり、繊維材に付着させた場合にも計時による繊維の変色は無く、品質の安定性が優れている。二酸化チタンには電気分解された銀イオンが吸着されているので、銀金属粒子を含まないため、銀金属粉末による黒色化も生じない。
【0064】
[実験例2]バインダーの生体適合性
実験例2では、本実施形態の抗感染性繊維材に使用される殺菌剤のバインダーの生体適合性を確認した。特に、細胞毒性がないことを確認した。本実施形態のバインダーには、生体適合性対策品のバインダーである、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーが用いられる。水系樹脂バインダーとしては、例えばウレタン樹脂バインダーを用いることができるが、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂バインダー、ポリエステル樹脂バインダーでもよい架橋剤としては、生体適合性のある水系の熱硬化型架橋剤、例えばポリカルボジイミド系架橋剤を用いる。生体適合性対策品であるので、防腐剤等は含まれていない。本実施形態の抗感染性繊維材に使用される殺菌剤のバインダーは、表3で示されているように生体適合性を有する。本実験例では、ウレタン樹脂バインダーとして「EVAFANOL HA-207」を、熱硬化型のポリカルボジイミド系の架橋剤として「NK ASSIST CI-02」を使用した。
【0065】
本実施形態において、生体適合性の評価基準として、ISO 10993-5に基づいて評価を行った。評価基準となる5段階のGradeは、次のとおりである。
Grade 0: Reactivity=None (散在性に細胞内に顆粒が認められる。細胞の融解は無い。)
Grade 1: Reactivity=Slight (球形で接着性が弱まり、細胞内顆粒の見られない細胞が全体の20%以下。細胞の融解がかれに見られる。)
Grade 2: Reactivity=Mild (球形で細胞内顆粒の見られない細胞が全体の20%より多く、50%以下。細胞の融解や細胞間の空隙は広範囲には見られない。)
Grade 3: Reactivity=Moderate (球形化又は融解する細胞が全体の50%より多く、70%未満。)
Grade 4: Reactivity=Severe (殆ど全ての細胞が融解する。)
【0066】
【表3】
【0067】
[比較例2-1]比較例のバインダーの細胞毒性
これに対し、通常に流通されているバインダーである、DIC製のU-29Kバインダーには表4に示されているように、細胞毒性が認められ、生体適合性がないことが分かった。U-29Kバインダーには常温硬化型架橋剤(硬化剤)として、イソシアネート系が含まれている。
【0068】
【表4】
【0069】
[実験例4]洗濯強度
実験例4では、本実施形態の抗感染性繊維材の洗濯耐性を確認した。国産ポリエステル100%(テトロン)の洗濯条件は、一般社団法人繊維評価技術協会SEKマーク繊維製品の洗濯方法(標準選択法)に基づいた。この洗濯方法は、JIS L0217の洗濯方法103に準ずる、次の(1)~(5)の工程を含む。
(1)液温40℃の水30Lに対して40mlの割合で「JAFET標準配合洗剤」を添加、洗濯液を洗濯水槽の一番上の水位線まで入れる。
(2)この洗濯液に浴比が1:30になるように試料及び必要に応じて負荷布を入れて運転を開始する。
(3)5分間処理した後、運転を止め、試料及び負荷布を脱水機で脱水し、次に洗濯液を常温の新しい水に替えて、同一の浴比で2分間すすぎを行う。
(4)2分間のすすぎを行った後、運転を止め試料と負荷布を脱水し、再び2分間すすぎを行い、脱水する。
(5)上記(1)~(4)の工程を所定回数繰り返す。繰り返し洗濯を行った後に乾燥を80℃以下で行う。
【0070】
繊維加工条件は下記(a)~(d)とする。
(a)加工繊維基布:国産ポリエステル100%(テトロン)。
(b)殺菌剤:電気分解した銀イオン水中で、二酸化チタン(チタン工業製のKA-10C)に銀イオンを吸着させた。
(c)樹脂バインダー:水系ウレタン樹脂エマルジョン、ポリカルボジイミド系架橋剤を使用。防腐剤無し。
(d)繊維加工条件:固定量は固形分で4g/mとして、乾燥条件は150℃で1分間。
【0071】
表5に本実施形態の本実施形態の抗感染性繊維材の黄色ブドウ球菌に対する洗濯回数に応じた抗菌活性値を示す。黄色ブドウ球菌の耐洗濯抗菌効果を基準に沿って評価した結果、本実施形態の抗感染性繊維材は、300回以上の洗濯に十分に耐えられることが分かった。また、対象試料では培養によって黄色ブドウ球菌数が大幅に増加しているのに対し、本実施形態の抗感染性繊維材では培養後の黄色ブドウ球菌数が、0.1%以下まで減少している。すなわち、99.99%(4log)の殺菌効果を有している。なお、使用菌種は、黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus NBRC12732である。また、本実験例(表5及び表6)では、界面活性剤(Tween80)を添加した試験菌懸濁液を使用した。また、試験片は120℃で4時間乾熱殺菌後に試験に供した。
【0072】
【表5】
【0073】
表6に本実施形態の本実施形態の抗感染性繊維材の大腸菌に対する洗濯回数に応じた抗菌活性値を示す。大腸菌の耐洗濯抗菌効果を基準に沿って評価した結果、本実施形態の抗感染性繊維材は、300回以上の洗濯に十分に耐えられることが分かった。また、対象試料では培養によって大腸菌数が大幅に増加しているのに対し、本実施形態の抗菌繊維材では培養後の大腸菌数が、0.1%以下まで減少している。すなわち、99.99%(4log)の殺菌効果を有している。なお、使用菌種は、大腸菌Escherichia coli NBRC3301である。
【0074】
【表6】
【0075】
[実験例5]繊維材の生体適合性について
実験例5では、本実施形態の抗感染性繊維材に使用される繊維材の生体適合性について確認した。メディカルテキスタイルの分野では、通常の使用時よりも厳しい生体適合性が求められ、細胞毒性に対する基準も厳しい。実験例5では、国産ポリエステル100%(テトロン)の生体適合性を、様々な種類の繊維材の場合の比較例と共に示す。国産ポリエステル100%(テトロン)としては、市販のベッドシーツ(洗浄後)を使用した。
【0076】
本実施形態の抗感染性繊維材では、繊維材としては、メディカルテキスタイルの分野にも対応できるように、生体適合性の観点から、化学繊維を用いることが望ましい。天然繊維は必ずしも生体適合性の観点からの安全性が確保されているとはいえない。表7は、国産ポリエステル100%(テトロン)の細胞毒性の検査の結果である。また、図2は、本実施形態の抗感染性繊維材の生体適合性の実験結果の写真である。
【0077】
表7及び図2に示したとおり、例えば本実験例で示した国産ポリエステル100%(テトロン)の繊維材には、細胞毒性がないことが確認された。この結果、本実験例の国産ポリエステル100%の繊維材は、メディカルテキスタイルの分野の基準における生体適合性が合格の水準を満たしていることが分かった。
【0078】
【表7】
【0079】
これに対して、[比較例5-1]-[比較例5-7]の繊維材については、細胞毒性が認められるため、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0080】
[比較例5-1]「カナキン3号」
従来から評価用標準基布として使用されている綿からなるカナキン3号の未洗濯品の評価結果を表8に示す。評価用未洗濯標準基布綿100%には細胞毒性があることから、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0081】
【表8】
【0082】
[比較例5-2]T社製 綿100%ベッドシーツ(洗浄前)
T社製 綿100%ベッドシーツの未洗濯品の評価結果を表9に示す。T社製 綿100%ベッドシーツの未洗濯品には細胞毒性があることから、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0083】
【表9】
【0084】
[比較例5-3]T社製 綿100%ベッドシーツ(洗浄後)
T社製 綿100%ベッドシーツの洗浄後の評価結果を表10に示す。T社製 綿100%ベッドシーツの洗浄後のものにも細胞毒性があることから、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0085】
【表10】
【0086】
[比較例5-4]「ポリエステルと綿との混紡(米国製)」
米国で市販されている繊維材である、ポリエステルと綿との混紡について評価した結果、表11に示すように細胞毒性があることから、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0087】
【表11】
【0088】
[比較例5-5]ポリエステル50%+綿50%の市販のベッドシーツ(洗浄後)
実験例5では、国産ポリエステル100%(テトロン)繊維材には、細胞毒性がないことが確認された。比較例5-5では、ポリエステル50%+綿50%の市販のベッドシーツ(洗浄後)の細胞毒性を評価した。この結果、表12に示すように、比較例5-5のポリエステル50%+綿50%の市販のベッドシーツ(洗浄後)は、細胞毒性があることから、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0089】
【表12】
【0090】
[比較例5-6]T社製 綿100%ベッドシーツ生地(界面活性剤処理ボイル)
T社製 綿100%ベッドシーツ生地をポリソルベート-80と炭酸ナトリウムで洗浄したものについての細胞毒性の評価結果を表13に示す。指定された処方で洗浄しても、細胞毒性が認められたため、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0091】
【表13】
【0092】
[比較例5-7]評価機関の綿100%評価基準生地(界面活性剤処理ボイル)
評価機関の綿100%評価基準生地をポリソルベート-80と炭酸ナトリウムで洗浄したものについての細胞毒性の評価結果を表14に示す。指定された処方で洗浄することによって、僅かな洗浄効果は得られたが、依然として細胞毒性が認められたため、メディカルテキスタイルの分野の基準では生体適合性が合格の水準には届かなかった。
【0093】
【表14】
【0094】
以上、本発明に係る実施形態の抗菌性繊維材、製品、及び、殺菌性繊維材又は殺菌性繊維製品の製造方法について、各種実験例及び比較例を用いて詳細に説明したが、各種実験例は、本発明の技術思想を具体化するための例を示すものであって、本発明の実施形態をこれらの実験例に限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。例えば、本発明の一態様の抗菌繊維材に用いた抗菌剤は、繊維材以外、例えば、木、布、プラスチック、金属、セラミック、コンクリート等といった対象物にも使用可能であり、かあつ、コーティング等を通して接着することもでき、これらは内側の充填材として使用することもできる。本発明の一態様の抗菌剤は、水、有機溶剤、接着剤等といった分散剤に分散させることで有益な材とすることもできる。また、本発明の一態様の銀イオンを吸着させた二酸化チタンを用いた抗菌剤は、印刷用インク及び塗料の形態をとることもできる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンを吸着した二酸化チタンを含む殺菌剤であって、
前記殺菌剤は、さらに熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーを含み、生体適合性を有し、かつ、
前記二酸化チタンは100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満であり、ナノ粒子による環境毒性を有しないことを特徴とする殺菌剤。
【請求項2】
銀イオンの少なくとも一部が銀酸化物、水酸化銀又は銀元素の少なくとも一つの状態で、かつ、二酸化チタンに吸着した状態で存在していることを特徴とする請求項1に記載の殺菌剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の殺菌剤を化学繊維からなる繊維材に適用し、繊維上で継続して細菌の伝播が遮断可能な継続殺菌効果を有することを特徴とする抗感染繊維材。
【請求項4】
請求項3に記載の抗感染性繊維材を用いることを特徴とする抗感染繊維製品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の殺菌剤を化学繊維からなる繊維製品に付着させたことを特徴とする抗感染繊維製品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の殺菌剤を適用したことを特徴とする抗感染用製品。
【請求項7】
粒径が100nm未満のナノ銀を使用することなく、銀を電気分解することよって銀イオンを含む溶液を調整する銀イオン溶液を調製する工程と、
前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる工程と、
前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーとを混合して樹脂エマルジョンを調製する工程と、
を含むことを特徴とする殺菌剤の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の殺菌剤の製造方法における樹脂エマルジョンを調製する工程により樹脂エマルジョンを製造し、得られた該樹脂エマルジョンを、製品に付着する工程を含むことを特徴とする抗感染用製品の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の殺菌剤の製造方法における樹脂エマルジョンを調製する工程により樹脂エマルジョンを製造し、得られた該樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機によって化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる工程を含むことを特徴とする抗感染繊維材又は抗感染繊維製品の製造方法。
【請求項10】
銀イオンを含む溶液を調製する銀イオン調製部と、
前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる銀イオン吸着部と、
前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーと、を混合して樹脂エマルジョンを調製する樹脂エマルジョン調製部と、
を含むことを特徴とする殺菌剤の製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載の製造装置を含み、さらに、該製造装置における樹脂エマルジョン調製部において調製された樹脂エマルジョンを製品に付着させる付着部を有することを特徴とする抗感染用製品の製造装置。
【請求項12】
請求項10に記載の製造装置における樹脂エマルジョン調製部において調製された樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機により化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを、前記化学繊維からなる繊維材、又は前記化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる付着部を含むことを特徴とする抗感染繊維材又は抗感染繊維製品の製造装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一態様の殺菌剤は、銀イオンを吸着した二酸化チタンを含む殺菌剤であって、
前記殺菌剤は、さらに熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーを含み、生体適合性を有し、かつ、前記二酸化チタンは100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満であり、ナノ粒子による環境毒性を有しないことを特徴とする。本発明の一態様の殺菌剤は、銀イオンを高密度に吸着した二酸化チタンを含む高機能殺菌特性を持った殺菌剤である。生体適合性としては、細胞毒性、皮膚感査性、及び皮膚刺激性が挙げられるが、本発明の一態様の殺菌剤では、細胞毒性、皮膚感査性、及び皮膚刺激性のいずれの問題も無く、生体適合性に優れている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明の第3の態様の抗感染繊維材は、第1又は第2の態様の殺菌剤を化学繊維からなる繊維材に適用し、繊維上で継続して細菌の伝播が遮断可能な継続抗菌効果を有することを特徴とする。ここで、継続抗菌効果とは、例えば抗感染性繊維材を100回以上洗濯しても、殺菌効果が持続することをいう。後述の実験例で示されているように、本態様の抗感染繊維材では、例えば洗濯回数300回でも殺菌効果が持続するため、繊維材に殺菌剤を再度付加するための再処理が不要となる。繊維材としては、メディカルテキスタイルの分野にも対応できるように、細胞毒性の観点から、化学繊維を用いる。天然繊維は必ずしも細胞毒性の観点からの安全性が確保されているとはいえない。例えば綿の種子には、ゴシポール(gossypol)という毒性物質が含まれていることが知られている等、メディカルテキスタイルの分野では、木綿等の天然繊維についても細胞毒性が問題とされる。さらに、繊維材は柔軟性、加工性、その他使用目的に応じて種々の化学薬品を使用して処理されている場合が多いため、繊維材を事前に十分に洗浄しておくことが必要である。例えば、綿の医療用ガーゼでは、細胞毒性の問題を解消するためには前処理が手間となり、コストが高くなってしまう。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本発明の第3の態様の抗感染繊維材においては、繊維材としてナイロン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、アクリル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリクラール繊維、ポリ乳酸繊維等の化学繊維を用いた。ポリカルボジイミド系架橋剤を適用した水系樹脂バインダーは、化学繊維に対する二酸化チタンの付着についても高い機能性を有する。化学繊化学繊維の例えばポリエステル(商標名「テトロン」)の実験例あり。)維を使用することにより、繊維材に関する細胞毒性の問題を解消することができる。例えば、ポリエステル(商標名「テトロン」)では、細胞毒性がないことが確認された。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
本発明の第3の態様では、抗感染繊維材として特定されているが、従来には抗感染性を有する抗感染繊維材というものは前例がなく、各国において国レベルで正式に認可したという前例がほとんどない。これは殺菌効果の基準が厳しく、99.99%の持続的な殺菌効果が求められるところ、本態様の殺菌剤を適用した抗感染繊維材、又は抗感染繊維製品においては、接触による細菌の伝播を遮断すること、及び、持続的な殺菌効果を実現し、さらに、洗濯しても殺菌効果を持続することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
耐性菌の問題に対応するためには、99.99%という高い継続性を持った殺菌機能が求められるが、従来には即効性がある殺菌剤は存在したが、持続的を発揮することは難しかったが、本態様の殺菌剤では継続性があり、長時間にわたって殺菌効果を継続するため、耐性菌対策としてもきわめて有用である。一方で、細胞毒性のない繊維材、繊維製品が求められていることから、本態様の抗感染繊維材、抗感染繊維製品繊維では、化学繊維、例えばポリエステルを採用し、殺菌効果に加えて、細胞毒性の問題も同時に回避することにより、抗感染性を有する抗感染繊維材、抗感染繊維製品を実現した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
99.99%(以下「4log」ともいう)の高い継続性を持った殺菌機能によれば、殺菌効果を長期間にわたって担保できるために、耐性菌も発生しにくい。しかも本態様の抗感染繊維材は、300回の洗濯に耐えられ、しかも、99.99%の殺菌性能が持続する。これば、米国FDAの基準である、99.99%の殺菌性能を満たす。繊維製品は一般的には洗濯回数300回程度で廃棄されるため、300回の洗濯に耐えられ、しかも、99.99%の殺菌性能が持続する本態様の抗感染繊維材は、一度殺菌剤を付加する加工を行えば、その後に殺菌剤を再度付加するような再加工の必要がない。本態様の抗感染繊維材に細菌を接触させる接触時間が18~24時間程度で、99.99%の殺菌効果が得られ、接触による細菌感染の伝播を遮断することができる。自然環境においては、細菌に対して、長期間にわたり殺菌効果を発揮することが重要である。また、本態様の抗感染繊維材は、汚れた環境、例えば雑菌のいるような環境において、さらに対象とする細菌の増殖を抑える抗菌性能にも優れている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本発明の第4の態様の抗感染用繊維製品は、第3の態様の抗感染繊維材を用いることを特徴とする。また、本発明の第5の態様の抗感染繊維製品は、第1又は第2の態様の殺菌剤を化学繊維からなる繊維製品に付着させたことを特徴とする。また、本発明の第6の態様の抗感染用繊維製品は、第1又は第2の態様の殺菌剤を適用したことを特徴とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
本態様の殺菌剤を適用した繊維製品によれば、光が存在しない場所でも長時間にわたって抗菌効果を持続できると共に、生体適合性が高く、かつ、抗菌材が繊維素材に対して悪影響を及ぼすことがなく、しかもコストを低減することができる抗感染用繊維材を提供することができる。また、係る態様の抗感染用繊維材は、抗菌効果の他にも、光の存在の有無にかかわらず、長時間に亘って良好な抗ウイルス性、抗アレルゲン性、殺菌性、防かび性又は抗臭気物質性のいずれか少なくとも1つの性質を有する。また、長時間にわたって殺菌効果を継続するため、耐性菌対策としてもきわめて有用であると共に、細胞毒性のない繊維材、繊維製品が求められていることから、本態様の抗感染繊維製品では、化学繊維、例えばポリエステルを採用し、殺菌効果に加えて、細胞毒性の問題も同時に回避することにより、抗感染性を有する抗感染繊維製品を実現した。また、本発明の第6の態様の抗感染用繊維製品も、同様の効果を奏する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
本発明の第の態様の殺菌剤の製造方法では、粒径が100nm未満のナノ銀を使用することなく、銀を電気分解することよって銀イオンを含む溶液を調整する銀イオン溶液を調製する工程と、前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる工程と、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーとを混合して樹脂エマルジョンを調製する工程と、を含むことを特徴とする。銀イオン溶液を調製する工程において、二酸化チタンの分散をし易くするために、銀イオン溶液に分散剤を含んだ溶液を調製する。銀イオン溶液中に分散された二酸化チタンに銀イオンを吸着させる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
本発明の第8の態様の抗感染用製品の製造方法は、第7の態様の殺菌剤の製造方法における樹脂エマルジョンを調製する工程により樹脂エマルジョンを製造し、得られた該樹脂エマルジョンを、製品に付着する工程を含むことを特徴とする。
本発明の第の態様の抗感染繊維材又は抗感染繊維製品の製造方法は、第の態様の殺菌剤の製造方法における樹脂エマルジョンを調製する工程により樹脂エマルジョンを製造し、得られた該樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機によって化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる工程を含むことを特徴とする態様の殺菌剤の製造方法により調製した樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機によって化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる工程を含むことを特徴とする。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
係る抗感染繊維材又は抗感染繊維製品の製造方法では、特殊な製造設備、例えば繊維工場における大規模染色加工機のような大規模な設備等は必要なく、回転ドラム式加工機として例えば市販のドラム式洗濯機を利用した製造が可能となる。ドラム式洗濯機内に加工対象である繊維材又は繊維製品を入れて、水分を含ませた後に、調製された樹脂エマルジョン樹脂をスプレーし、ドラム式洗濯機によりタンブリングして繊維材又は繊維製品に殺菌剤を吸着させ、すなわち、化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで殺菌剤が入り込むように付着させ、最後にドラム式洗濯機の乾燥機能により乾燥させることで、殺菌剤を繊維材又は繊維製品に適用することができる。繊維材又は繊維製品に付着された殺菌剤は、洗濯しても保持されることが実験により確認された。例えば、300回の洗濯後にも抗菌活性値が維持され、殺菌効果が維持されていることが確認された。300回の洗濯後も99.99%の殺菌効果が持続するので、繊維材又繊維製品に対して殺菌剤を付加するための加工を一回だけ行えばすむため、殺菌剤を追加で付与するような再加工がほとんど不要である。そして、再加工が不要であることによって、本態様の抗感染繊維材又は抗感染繊維製品は、経済効果も高く、細菌に対する安全性を継続的に担保でき、また、汚れに対する洗濯回数の低減効果もあるため、従来にはない相乗的な経済効果が得られる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
本発明の第10の態様の殺菌剤の製造装置は、銀イオンを含む溶液を調製する銀イオン調製部と、前記溶液中で、100nm以上、1μm以下の粒径を有しており、100nm以下の粒子の重量分布が0.3%未満である二酸化チタンに銀イオンを吸着させる銀イオン吸着部と、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンと、熱硬化型の架橋剤を適用した水系の樹脂バインダーと、を混合して樹脂エマルジョンを調製する樹脂エマルジョン調製部と、を含むことを特徴とする。
本発明の第11の態様の抗感染用製品の製造装置は、第10の態様の製造装置を含み、さらに、該製造装置における樹脂エマルジョン調製部において調製された樹脂エマルジョンを製品に付着させる付着部を有することを特徴とする。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
本発明の第12の態様の抗感染繊維材又は抗感染繊維製品の製造装置は、第10の態様の製造装置により調製された樹脂エマルジョンを、回転ドラム式加工機により化学繊維からなる繊維材、又は化学繊維からなる繊維製品に適用して、前記銀イオンを吸着させた二酸化チタンを、前記化学繊維からなる繊維材、又は前記化学繊維からなる繊維製品の撚糸の間まで入り込むように付着させる付着部を含むことを特徴とする。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
係る抗感染繊維材又は抗感染繊維製品の製造装置によれば、特殊な製造設備、例えば繊維工場における大規模染色加工機のような大規模な設備等は必要なく、回転ドラム式加工機として例えば市販のドラム式洗濯機を利用した製造が可能となる。また、繊維材又は繊維製品に付着された殺菌剤は、洗濯しても保持されることが実験により確認された。