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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002544
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】光給電システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20231228BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20231228BHJP
   H04B 10/07 20130101ALI20231228BHJP
【FI】
H04B10/80 160
H04J14/02
H04B10/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101789
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500343371
【氏名又は名称】一般社団法人日本下水道光ファイバー技術協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菊池 信彦
(72)【発明者】
【氏名】田所 秀之
(72)【発明者】
【氏名】益子 英昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 智裕
(72)【発明者】
【氏名】栗原 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 昌郎
(72)【発明者】
【氏名】一色 充也
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AD01
5K102AL01
5K102AN02
5K102AN03
5K102LA06
5K102LA24
5K102LA35
5K102LA52
5K102MH02
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH15
5K102MH22
5K102PB11
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH48
5K102PH49
5K102PH50
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】光ファイバ回線の未使用区間ができる場合でも、従来通り端点間で光回線試験を行う。
【解決手段】光給電システムは、給電光を送出する光給電装置と、給電光の一部を受光しその電力を利用して動作する一以上のノード装置と、地理的に離れた第一及び第二の地点結び、かつ、第一及び第二の地点間の通過地点である第三の地点で光給電装置と接続する、光ファイバ回線と、を含む。第三の地点から第一の地点の間の区間または第三の地点から第二の地点の間の区間のうちの、一方が光給電に利用する給電区間、他方が未使用区間である。光ファイバ回線の第三の地点で、給電区間と未使用区間が光学的に接続されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電光を送出する光給電装置と、
前記給電光の一部を受光しその電力を利用して動作する一以上のノード装置と、
地理的に離れた第一及び第二の地点結び、かつ、前記第一及び第二の地点間の通過地点である第三の地点で光給電装置と接続する、光ファイバ回線と、を含み、
前記第三の地点から前記第一の地点の間の区間または前記第三の地点から第二の地点の間の区間のうちの、一方が光給電に利用する給電区間、他方が未使用区間であり、
前記光ファイバ回線の前記第三の地点で、前記給電区間と前記未使用区間が光学的に接続されている、光給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光給電システムであって、
前記給電区間と前記未使用区間の光学的接続は、前記光ファイバ回線の前記給電区間と前記未使用区間を含む区間における光ファイバの端点間での光回線試験に利用される、光給電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の光給電システムであって、
光分岐器を含み、
前記光分岐器は、
共通光ポート、第一の光ポート、及び第二の光ポートを含み、
前記共通光ポートに入力される光信号を、一定の強度比で前記第一の光ポート及び前記第二の光ポートに分離して出力し、
前記第一の光ポート及び前記第二の光ポートに入力された信号を合成して前記共通光ポートに出力し、
前記共通光ポートは前記光ファイバ回線の前記給電区間側に接続され、前記第一の光ポートは前記光給電システムに接続され、前記第二の光ポートは前記光ファイバ回線の前記未使用区間側に接続されている、光給電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の光給電システムであって、
前記未使用区間が給電光の進行方向の下流側であり、前記未使用区間の下流側端点において光終端処理を実行する、光給電システム。
【請求項5】
請求項3に記載の光給電システムであって、
前記第二の光ポートに出力する光信号分岐比は、50%から1%の間である、光給電システム。
【請求項6】
請求項1に記載の光給電システムであって、
光分岐器を含み、
前記光分岐器は、
共通光ポート、第一の光ポート、及び第二の光ポートを含み、
前記共通光ポートに入力される光信号を、前記光給電装置で利用する第一の波長域の光信号と前記第一の波長域と異なる第二の波長域の光信号とに分離し、前記第一の波長域の光信号を前記第一の光ポートに、前記第二の波長域の光信号を前記第二の光ポートに、出力し、
前記第一の光ポートに入力された前記第一の波長域の光信号と、前記第二の光ポートに入力された前記第二の波長域の光信号とを合成して、前記共通光ポートに出力し、
前記共通光ポートは前記光ファイバ回線の前記給電区間側に接続され、前記第一の光ポートは前記光給電システムに接続され、前記第二の光ポートは前記光ファイバ回線の前記未使用区間側に接続されている、光給電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の光給電システムであって、
前記の第二の波長域は光回線試験に用いられる、光給電システム。
【請求項8】
請求項6に記載の光給電システムであって、
前記第一の波長域が1.4μmより長波長でありかつ前記第二の波長域が1.4μm以下の短波長である、または、前記第一の波長域が1.2μm以下の短波長でありかつ前記第二の波長域が1.2μmより長波長である、光給電システム。
【請求項9】
請求項1に記載の光給電システムであって、
前記給電光が光分岐器でノード装置に順次分岐される梯子型構成、前記給電光が光スターカプラで分岐されるスター型構成、またはこれらの組み合わせで構成される、光給電システム。
【請求項10】
請求項7に記載の光給電システムであって、
前記光給電システムの動作中に光回線試験を実施し、前記光回線試験で取得した光回線情報を中央局に集約する手段を含む、光給電システム。
【請求項11】
請求項1に記載の光給電システムに含まれ、光回線試験に用いる光信号の入出力に用いる光ポートを含むノード装置。
【請求項12】
請求項1に記載の光給電システムに含まれ、光回線試験に用いる光信号の入出力に用いる光ポートを含む光給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光給電システムに関し、特に、光ファイバを用いて電力伝送を行う光給電技術と光ファイバ回線の健全性を確認する光回線試験に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは細いガラス線中に光を伝送する媒体であり、電気ケーブルに比べて長さあたりの高周波信号の伝送損が極めて少ないという特徴から、数mから数1000kmもの長距離にわたる信号伝送媒体として広く用いられている。本発明で取り扱う光給電は、このような通信用光ファイバを電力伝送に利用する技術である。光給電送電側となる光給電装置には半導体レーザなどの大出力光源を配置し電力を光に変換して光ファイバに入力して伝送する。受電側装置(以下、本文中ではノード装置と呼称)では、光ファイバから得られる出力光をフォトダイオードなどの光検出器を用いて受光し再び電力に変換し、必要な場合にはこれを蓄積することで、子機の動作電力として利用することができる。
【0003】
エネルギ伝送に適用する場合には、光ファイバは電気ケーブルよりも伝送損失が大きく、また受電側での光信号と電気信号の変換効率が低い(20~30%程度)などの不利な点も存在する。このため親機内に配置される光給電用光源には大きな出力強度が必要となり、例えば出力数100mWから1Wを超えるような大出力半導体レーザなどが用いられている。しかしながら、特に通信用光ファイバは光を伝送する中心コアの径が数ミクロンと小さく、強い光を入射するとコア部分が融解してしまうため入射可能な光電力は一般に数W以下に制限される。
【0004】
これらの制限から光給電は利用可能な電力範囲に制限があり、一般的に広く用いられる技術ではない。しかしながら、光ファイバは電気的に絶縁されているため防爆性が極めて高く、電磁的な干渉を受けにくい、耐腐食性が高いなどの利点を持つ。このように電気ケーブルの利用が困難な場合や、遠隔地やへき地などで他に適当な電源が無い場合などは、光給電が有効な電力伝送技術として用いられる。
【0005】
さらに光給電では光ファイバを給電装置と複数のノード装置間の通信媒体として利用することも可能であるため、電波が届きにくく有線の通信回線が確保しにくい僻地や地下、ビル内、プラント、海底、砂漠、山中、土中などにおける利用にも有利である。実際の光給電技術の利用例としては、遠隔センシングなどがありパイプラインやプラント、橋梁や鉄道などのインフラにおけるセンシングデータの収集、カメラによる遠隔監視などがある。
【0006】
図1は従来の光給電システムの構成図であり、特開2021-19444号公報「光給電システム」(特許文献1)の図5に開示された、複数のノード装置に給電を行う光給電システムの例を示している。本例は、ひとつの光給電装置100に受電側として4個のノード装置110-1、110-2、110-3及び110-4を、光ファイバ回線106を介して接続した1:4の光給電システムである。光給電装置100の内部には、給電光源101が配置されており、光ファイバ回線106を介して給電光104を送出している。また送信部102及び受信部103は、光ファイバを介してノード装置110-1~110-4と通信するための上下通信光105を送受信するために用いられる。
【0007】
本例では明示されていないが、これらの光信号の伝送には光ファイバ回線106中の複数の光ファイバ芯線を用いてもよいし、それぞれ波長の差異を設けて波長多重することにより光ファイバ回線106中の一本の光ファイバ芯線を用いて下流の複数のノード装置と接続することも可能である。
【0008】
光ファイバ回線106の先には光分岐器(光スプリッタ、光カプラとも呼称)107-1~107-3が配置されており、それぞれ上流から送信されてた給電光104を一定の比率で分岐してノード装置110-1~110-4に分配するとともに、各ノード装置の送受する上下通信光105を分配、合成する役割を果たしている。ノード装置110-1~110-4の内部には給電光104を受光する受電部111-1~111-4が配置されており、受光された給電光104を電気エネルギに変換してノード装置110-1~110-4の動作に利用している。
【0009】
一方、本発明で取り扱う光ファイバの回線試験は、光ファイバ回線の定期的な保守や工事の前後などに実施される健全性確認法のひとつである。光ファイバ回線は比較的障害や劣化に強い点が特徴のひとつであるが、地震や近隣の土木工事の際の切断や破損、被覆の破損による経時劣化などにより損失の増加、通信断や通信品質の低下などの障害を生じる可能性がある。
【0010】
このため回線の重要度などに応じて、常時、一定間隔ないしは工事の前後などのタイミングで、光パルス反射試験(OTDR)や参照光信号を伝送して損失を測定する等の光回線試験などを実施し、損失係数や損失量、損失の発生点などに異常や変化が無いかの確認を実施する。このためには上流側と下流側の両端点間で光ファイバ回線全長を通じての損失や接続性の確認を行うのが望ましい。なおOTDR試験であれば光ファイバの上流ないしは下流のどちらか一方から光パルスを入射して一方向のみの反射試験を行うことも可能であるが、光ファイバ損失係数を正確に求めたり断線時に障害点から先の情報を調べるには双方向からOTDR試験を行うことが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-19444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決する第一の課題は、従来の光ファイバ給電システムでは、既設ファイバ回線などに光給電システムを接続した際に未使用の光ファイバ区間が発生し、光回線試験が困難になる点がある。以下、図2を利用して本課題について説明を行う。
【0013】
光給電システムは給電装置100とノード装置110との間の光給電や通信に光ファイバ回線が必要である。このために専用の光ファイバ回線を敷設する場合もあるが、一般にはコスト低減や工事の短縮、簡略化などの観点から、回線の一部に自社ないしは他社保有の既設(ないしは新設)の光ファイバ回線を利用する場合が考えられる。本図では光給電装置100は局舎120に配置されている。また局舎近くの中継所121-1から中継所121-2に向けて光ファイバケーブル123が敷設されており、その途中に光接続箱124が配置される。
【0014】
ノード装置110の設置場所は光接続箱124の近傍とする。光ファイバケーブル123中の光ファイバ回線128(2つの区間128-1と128-2に切断する前)の端点は局舎121-1、局舎121-2中に設置された光成端箱122-1、122-2などに収容されている。本例の光給電装置100は設置場所が中継所121-1に近接しており、このようなケースでは光給電装置100から光ファイバを光接続箱122-1まで伸ばして、光コネクタ127-1経由で光ファイバ回線128-1に接続することが可能となる。
【0015】
一方、ノード装置110から光ファイバ回線128の端点までは距離があるため、光接続箱内部で光ファイバ回線を切断し、光給電装置100側の光ファイバ回線128-1とノード装置110への延長光ファイバケーブル130をスプライス131で接続することで、光給電装置100とノード装置110間が光ファイバ経由で接続される。この際、光ファイバ回線128-1は光給電システムの利用する給電区間、光ファイバ回線128-2は未使用区間となる。
【0016】
例においては、図2中の光ファイバ回線126に限ればその前後から回線試験が実施可能であるが、光ファイバ回線126を切断して、中間にセンサノードを設けたり途中から光給電専用の回線に分岐する場合などはこの限りではない。
【0017】
このような接続形態の課題としては、光ファイバ回線128-1と128-2間に光回線試験の適用が困難となる点が挙げられる。例えば、両回線間は切断されて非導通となっているため、参照光による回線全体の損失試験は実施不可能である。光パルス反射試験の場合、端点となる光コネクタ127-1からは給電区間128-1、光コネクタ127-2からは未使用区間128-2の情報を得ることができるが、やはり導通の確認ができず、またどちらも片方向の光反射試験となるため光ファイバの損失係数を正確に測定できず、障害やその兆候を見逃す可能性があるという課題が考えられる。
【0018】
また第二の課題としては回線試験の工数削減、回線状況の把握精度の向上がある。光ファイバ給電システムを設置することで前述のような光ファイバ回線の切断や未利用区間が発生した場合、区間ごとの部分的な光パルス反射試験などによる試験は可能であるものの、回線ごとにあらかじめノード装置の設置有無、断線位置などの情報を把握し、必要に応じて試験手順を変更する必要が生じるため、回線試験の手間が増えるとともに正確性が低下するという課題がある。
【0019】
そこで本発明の目的は、上記の問題点を解決し、簡易な構成で光ファイバ回線の光回線試験を可能として、保守性や回線状態の把握精度を向上する光給電システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題は、前記のように光ファイバ回線の途中に光給電システムを接続し、一方が光給電に利用する給電区間、他方が未使用区間となる場合に、給電区間と未使用区間が光学的に接続されるように構成することで解決できる。
【0021】
給電システムは、給電光を送出する光給電装置と、前記給電光の一部を受光しその電力を利用して動作する一以上のノード装置と、地理的に離れた第一及び第二の地点結び、かつ、前記第一及び第二の地点間の通過地点である第三の地点で光給電装置と接続する、光ファイバ回線と、を含む。前記第三の地点から前記第一の地点の間の区間または前記第三の地点から第二の地点の間の区間のうちの、一方が光給電に利用する給電区間、他方が未使用区間であり、前記光ファイバ回線の前記第三の地点で、前記給電区間と前記未使用区間が光学的に接続されている。
【0022】
前記光学的接続は、例えば、共通光ポート、第一の光ポート、第二の光ポートの3つの光ポートをもつ光分岐器を利用し、共通光ポートを前記光ファイバ回線の給電区間側に接続し、かつ前記光分岐器の第一の光ポートを前記光給電システムに接続し、かつ第二の光ポートを前記光ファイバ回線の未使用区間側に接続することで実現できる。なお光分岐器を用いる場合、未使用区間が給電光の進行方向の下流側となると未使用区間となる光ファイバ回線の端点に給電光が漏れる可能性があるため、光終端処理を行うのが望ましく、また光分岐回路の分岐としては、第二の光ポートに出力する光信号分岐比が50%から1%の間とすると容易に実現可能となる。
【0023】
また前記の光学的接続は、第一、第二の波長域の光信号の入出力に用いる共通光ポート、第一の波長域の光信号の入出力に用いる第一の光ポート、第二の波長域の光信号の入出力に用いる第二の光ポートの3つの光ポートをもつ光波長分岐器を利用し、このうち共通光ポートを前記光ファイバ回線の給電区間側に接続し、第一の光ポートを前記光給電システムに接続し、第二の光ポートを前記光ファイバ回線の未使用区間側に接続することでも実現できる。この場合には、第一の光波長域を光給電装置の送受する光信号の波長域として、第二の波長域を光回線試験用とすると本発明の実現性が大きく向上する。
【0024】
具体的な波長域の割り当てとしては、第一の波長域が1.4umより長波長側、第二の波長域を1.4um以下の短波長側する構成、及び第一の波長域を1.2um以下の短波長側、第二の波長域を1.2umより長波長側とすることができる。
【0025】
また光給電装置とノード装置のネットワークトポロジーは1:1接続に限るものではなく、光分岐器を用いてノード装置を順次分岐接続する多段の梯子型構成、光スターカプラを利用したスター型構成やこれらの組み合わせで構成した場合にも、利用する各光ファイバ回線に未使用区間が生じた場合にはそれぞれ個別に前述の光接続デバイスを配置することで本発明が適用可能になる。
【0026】
さらに回線状態のリアルタイム及び集中管理を行うには、本発明の光波長分岐器を用いた構成では光ファイバ回線の上流側と下流側の両方に光回線試験装置を配置すれば、光給電装置の動作中も常時ないしは一定の間隔でリアルタイムの光回線試験が可能であり、得られた回線情報を中央局に集約すればよい。
【0027】
また前述の光接続デバイスの設置の際には光接続デバイスを光給電装置やノード装置の内部に内蔵し、回線試験に用いる光ポートを備えることでも達成できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様では、光給電システムに光ファイバ回線の一部を利用し未使用区間ができる場合でも、従来の通りの端点間で光回線試験を行うことが可能となり、回線状況の把握精度向上、保守工数の低減の効果がある。特に未使用区間部分を含めて劣化や断線の発生などが把握でき、回線の現状復帰や配線変更の確実性や即応性が向上し、工事費用や不稼働期間を削減できるという効果がある。
【0029】
本発明の一態様の光接続デバイスに光分岐器を用いた場合、安価かつ波長依存性の無い構成で上記を実現できるという効果があり、その際は下流側の光終端処理を行うことで安全性を高める効果がある。また光分岐回路の第二の光ポートに出力する光信号の分岐比が50%から1%の間とすることで、本構成の実用性を高めることが可能となる。
【0030】
また前記の光接続デバイスに光波長分岐器を用いた場合には、給電光に代表される光給電システムの用いる光信号、及び回線試験光の損失をきわめて小さくできるとともに、下流への給電光の漏れを防ぎ安全性を向上できるという効果がある。特に回線試験に光パルス反射試験を用いる場合には、距離分解能が低下せず、回線障害点を正確に検出できるという効果がある。
【0031】
また本発明は様々なネットワーク形態にも適用可能であり、光ファイバ回線数や装置数を節約できるという効果がある。また光給電装置が利用中でも常時ないしは定期的に回線状態が監視可能になるため、障害状況の把握精度がさらに向上し、故障復旧時間の短縮や信頼性の向上を図ることが可能になるという効果がある。
【0032】
また前記光接続デバイスを光給電装置やノード装置の内部に内蔵することで、設置スペースや工事費用の削減、部品管理工数の低減、故障防止などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】従来の光給電システムの構成図である。
図2】従来の光給電システムにおいて発生し得る課題を示す説明図である。
図3】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
図4】本発明の第2の実施例を示す構成図である。
図5】本発明の第2の実施例における光回線試験の説明図である。
図6】本発明の第3の実施例を示す構成図である。
図7】本発明の第3の実施例における光波長分岐器の説明図である。
図8】本発明の第4の実施例を示す構成図である。
図9】本発明の第5の実施例を示す構成図である。
図10】本発明の第5の実施例におけるノード装置の構成図である。
図11】本発明の第6の実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の幾つかの実施例を、図面を参照して説明する。
【実施例0035】
図3は、本発明の第1の実施例における光給電システムを示す構成図であり、本発明の基本的な実施形態を示している。本図は、光給電装置100に2台のノード装置110-1、110-2を梯子型に縦続接続して光給電を行う構成例であり、光ファイバケーブル130-1及び130-2の途中に光接続箱(一般にはジャンクションボックス、スプライスボックスとも呼称)124-1、124-2を設け、それぞれ切断点125-1、125-2で内部の光ファイバ回線128、129を切断して切断部から光ファイバを引き出してその先にノード装置を接続している。
【0036】
このうち上流のノード装置110-1の接続部では、光分岐器(光スプリッタ、もしくは光カプラ)200を設けて光ファイバ回線128-1から送信された給電光204を所定の分岐比で第一の分岐給電光205と第二の分岐給電光206に分岐し、前者をノード装置110-1に供給するとともに、後者を光ファイバ回線128-2に戻して下流のノード装置110-2に供給する。
【0037】
本部分の構成は従来の光給電システムでも用いられる通常の給電光の分岐である。本例の構成では、光ノード装置110-1は光ファイバ回線128-1と128-2の中間に設置されてはいるが、どちらもともにノード装置への給電経路として用いられるため、本明細書の未使用区間に該当しないためである。
【0038】
一方、ノード装置110-2は最下流のノード装置であり、切断部125-2より上流側の光ファイバ回線129-1が給電区間、下流側の光ファイバ回線129-2が未使用区間に該当する。図中の光接続デバイス201は、光学的接続の実現手段であり、光ファイバ回線129-1を介して送出される第二の分岐給電光206をノード装置110-2に供給するとともに、切断部の上流側の光ファイバ回線129-1(給電区間)と下流側の光ファイバ回線129-2(未使用区間)の光学的な接続を実現する。
【0039】
本構成によって、未使用の光ファイバ回線129-2を含む光ファイバ回線の端点間、例えば、光コネクタ127-2と光コネクタ127-3の間の区間、もしくは光コネクタ127-1と127-3の間の区間で、一方向ないしは双方向の光パルス試験や、参照光を用いた光損失測定などの光ファイバ回線試験が実施可能となる。図3は、光試験のための信号の例として、光試験信号202-1、202-2を示す。
【0040】
このように光分岐カプラ200を用いた従来の光給電装置の接続と、本実施例の光接続デバイス201を用いた配置は構成上の類似性は高いものの、本光接続デバイスによって光給電装置で利用しない未使用区間に意図的に光接続を構成することで光端点間での光ファイバ回線試験を実現可能にするという新しい効果を企図するものである。
【0041】
なお本明細書では給電光及び給電光の経路として用いる光ファイバ回線のみを例示して本願の適用を説明しているが、現実の光給電システムでは、光給電装置100とノード装置110間の上下の光通信などにさらに別の光信号や光ファイバ回線を利用するケースが考えられる。
【0042】
このうち上下通信光と給電光をすべて時間多重や波長多重などの多重化技術を適用して一本の光ファイバ多重化して伝送するケースであれば、光給電システムの利用する光ファイバ回線数は1本(光ケーブル中の利用芯線数=1本)のみとなり、本図通りの構成が適用可能となる。
【0043】
仮に同一光ケーブル中の複数の光ファイバ回線(例えば光ファイバ芯線2本や3本)を利用する場合には、おのおの光ファイバ回線について本発明を適用することで、これら全ての光回線への本発明の企図する回線試験を実施可能とできる。この際、厳密には用途に応じて各光ファイバ回線の呼称を給電区間ではなく通信区間などに読み替えてもかまわない。
【0044】
また本図では光接続箱124-1や124-2を光ファイバケーブル130-1や130-2の途中に配置した構成を図示しているが、実際には光接続箱124-2が物理的に異なる2本の光ファイバケーブルを接続する構成であったり、本光接続箱が複数の光ファイバケーブルの接続点であり、その内部で異なる光ファイバケーブル中の光ファイバ芯線を接続する構成であってもかまわない。
【0045】
実際に敷設される光ファイバケーブルは数100m~数kmなどの一定長の光ファイバケーブルを接続することで構成されており、本図等で一続きに見える光ファイバケーブルであっても途中に複数個所の接続箱や接続箇所が設けられて、物理的に異なる光ファイバケーブルを連結して構成されている場合もある。これらの連結点のうち日常の保守作業等でアクセスが容易なように光コネクタ等を取り付けてある点が本明細書に記す光ファイバの端点であり、一般には局舎内や施設内に設置された光成端箱122(パッチパネル、コネクタ盤等)に収容されているケースが多い。
【0046】
なお一部には損失の低減や保守的な理由で引き込み先の設備や装置などに直結されていたり、損失を減らす目的で成端箱内で他の回線と直接スプライス接続されている場合や、末端局として未加工の光ファイバ末端を開放したままの場合もあるがこれらも回線試験の際に利用可能な場合には端点とみなすことができる。
【実施例0047】
図4は本発明の第2の実施例を示す構成図であり、前述の光接続デバイスとして光分岐器200を利用した構成をより具体的に示したものである。本構成は光ファイバケーブル123-1と123-2の中間に設置された光接続箱124から光ファイバを取り出してノード装置110を設置した例である。本ノード装置110は上流の局舎120に設置された光給電装置100から給電を受けて動作する。
【0048】
給電光204は、本図には図示していないがいくつかの中継所ないし光成端箱や光ファイバケーブル等を通過したのちに、上流側の中継所121-1に設置された光成端箱122-1内部の光コネクタ127-3によって給電区間となる光ファイバ回線128-1に接続される。またノード装置110下流にはノード存在しないため、下流側の光ファイバ回線128-2は未使用区間である。
【0049】
一方、光ファイバケーブル123-1、123-2中には、光給電システムで利用しない他の光ファイバ回線126なども含まれており、光接続箱122中では光ファイバ回線128だけを給電区間となる上流側の光ファイバ回線128-1と、未使用区間となる下流側の光ファイバ回線128-2に切断し、それぞれをスプライス133によって光分岐器200の共通光ポート207、第二の光ポート209に接続している。光分岐器200の残る第一の光ポートはノード装置110に接続される。
【0050】
本構成では共通光ポート207と第二の光ポート209の間には、第一の光ポートと第二の光ポートへの光分岐回路の分岐比に応じて一定の光損失が発生し、光損失は理想的には9:1の光分岐器を用いた場合には損失はおよそ10dB、99:1の場合には20dBとなる。このように上流側の光ファイバ回線128-1と下流側の光ファイバ回線128-2の間にはある程度の損失が発生するが光接続性が維持されるいるため、両者を含む光端点間、例えば上流側の光コネクタ127-1と下流側の光コネクタ127-4の間で光回線試験が実施可能となる。
【0051】
この際、あまり下流側への光分岐を小さくしすぎると、光分岐器の損失と回線の障害によって生じる損失の区別がつかなくなったり、光パルス試験の距離分解能が大きく劣化してしまうなどの悪影響がある。光パルス試験機の分解能は測定区間の損失が3dBでおよそ1m、13dBでおよそ5m、23dBで50mに劣化するため、現実的な分解能を得るためには光分岐比は最低でも99:1以上とする必要がある。この表現の第一項の「99」は上流側の第一の光ポートへの分岐の比率を示し、第二項の「1」は下流側の第二の光ポートへの分岐の比率を示す。光分岐比は最低でも99:1以上は、下流側への比率がこの値以上であることを示す。
【0052】
また一方で、ノード装置110に供給される給電光205の強度も同様に光分岐器200の分岐比によって減少してしまう。給電光205の受ける損失は分岐比が1:1の場合で約3dB(50%の給電光が無駄となる)、9:1の場合におよそ0.5dB、99:1の場合には0.05dBとなる。このため、光分岐器200を光接続デバイスとして利用する際の分岐比は、例えば、1:1~99:1の間となる。つまり、下流側の光ポートに出力する光信号分岐比が50%から1%の間である。
【0053】
また本構成の問題点のひとつとしては、光給電システムを運用中に、下流の未使用の光ファイバ回線128-2にも給電光の一部が分岐されて光コネクタ127-4から放出される点が挙げられる。光給電でノード装置に供給される光強度は数mWから数100mWと非常に高いため、前記のような分岐比でも下流側光ファイバ回線128-2に漏れ出す給電光206の強度が高く、光成端箱122-2内での焼損事故や保守作業員の安全性の問題が生じる可能性がある。
【0054】
このため、本構成においては下流側の未使用の光ファイバ回線128-2の端点となる光コネクタ127-2に光終端器210を接続し給電光206が外部に漏出しないように運用するのが重要となる。なお本システムで光通信などに他の光ファイバ回線を利用する場合には、おのおの光ファイバ回線への光終端の必要性は、各光回線中を伝送される光信号の向きや強度によって個々に判断可能である。
【0055】
なお本図では光分岐器200はノード装置110と光接続箱124の中間に配置しているが、その配置場所や配置方法は任意であり、例えば光接続箱124やノード装置110の内部に収納したり、独立の収納箱等を設けて設置しても構わない。また光接続箱124、光分岐器200、ノード装置110の間の接続には適宜、任意の長さ、芯数、本数の光ファイバケーブルを用いて配線することが可能である。
【0056】
図5は本発明の第2の実施例における光回線試験の説明図である。本構成で光ファイバ回線128-1、128-2に光回線試験を行う際には、光給電システムを停止し、上流側の光コネクタ127-3と下流側の光コネクタ127-4に上流側光試験装置211、ならびに下流側光試験装置212を接続することで実現できる。光回線試験としては、前述のような片方向ないしは双方向の光パルス反射試験や参照光を用いた光損失測定などのように光ファイバ回線全体での導通と損失を評価する試験が適用可能である。
【0057】
本構成では光給電装置の設置によって生じる光未使用部分も含めて、従来どおりに光ファイバ回線全体の損失検査が可能となる。これによって将来光給電システムを取り外し光ファイバ回線128-1と128-2を再接続して復旧する場合や、光給電システムを未使用の光ファイバ回線128-2を利用してさらに下流に延長したりする際にも、光ファイバ区間128-2を含めた健全性や可用性が保障可能となる。
【0058】
また同一光ファイバケーブル中の他の光ファイバ回線126に新たに機器を設置したりするなどの近隣の工事の際にも、他の回線と同じ光成端箱122-1、122-2から同一の手続きの回線試験で光ファイバ回線128-1、128-2の健全性が確認できるため、工事の影響による未使用区間での回線障害などを把握し、即座に復旧することも可能となる。
【実施例0059】
図6は本発明の第3の実施例を示す構成図であり、前述の光接続デバイスとして光波長分岐器(光波長スプリッタ、ないしは光波長カプラ)を利用した例であり、光給電システムの利用する波長とは異なる波長で光ファイバ回線の未使用部の接続性を保ち、光回線試験を可能とする構成である。
【0060】
図7は光波長分岐器200の説明図であり、共通光ポート221、波長域λpの光を入出力する第一の光ポート222、波長域λcの光を入出力する第二の光ポートの3つの光ポートを備えており、共通光ポート221から入出力される光信号を波長域ごとに分離して2つの光ポート222、223のいずれかからから入出力することが可能である。以下、本明細書では原則的に波長域λpを給電光の波長域、波長域λcを光回線試験用の波長域とする。
【0061】
図6において光給電装置100から出力された給電光204(波長域λp)は、光ファイバ回線128-1を通過後に共通光ポート221から光波長分岐器220に入力されたのちに第一の光ポート222から出力されてノード装置110に供給される。本構成では、波長分岐器の特性により波長域λpの給電光の第二の光ポートへの漏れはほぼゼロとなるため、上記第2の実施例に比べてノード装置に向かう給電光の分岐損失を極めて小とできるという利点がある。また、光給電システムの運用中に下流の光コネクタ127-4からの漏れる給電光の強度もほぼゼロとできるので安全性が向上し、前述の光終端器も不要とできるなどの利点もある。
【0062】
また波長域λcにおいては、光ファイバ回線128-1と128-2の導通があるため、波長域λcを用いることで上流の光コネクタ127-3と下流の光コネクタ127-4間で光パルス試験や光損失測定などの光回線試験が実施可能である。
【0063】
上記の説明では波長域λpを給電光の波長域としているが、光給電システムが上下通信などにも光信号を用いる場合には、波長域λp内にこれらの光信号も含まれるようにすることで、給電光と上下通信光の経路を一致させて、光給電装置とノード装置間の光信号を一括して接続することが可能となる。
【0064】
波長割り当ての一例としては、波長域λpとして給電光に1.48μm帯の光源を利用する場合、上下通信光に1.5μm帯や1.6μm帯が、また波長域λcとして1.3μm帯を割り当てることが可能である。この場合には波長域λpを、1.48~1.6μm域とし、波長域λcを1.3μm帯とすることで、容易に長分離機が実現できる。このような波長割り当ては、市販の光パルス試験装置では一般的に1.3μm帯と1.5μm帯の光源を備えていることからも実現が容易であり、また1.48~1.5μm域は光ファイバの損失が小さく長距離の光給電システムが構築しやすいこと、これらの波長帯が商用光通信で広く用いられるため高性能の波長分岐器が入手しやすいことなどの利点もある。
【0065】
上記のような波長割り当てを行う場合には光波長分岐器を1.4μmより長波長側を光給電システムの利用波長、1.4μm以下の短波長側を回線試験用に利用するのが有効である。また別の実施形態としては給電光の光電変換効率の高い可視光域ないしは近赤外光を給電光に利用するシステム構成が考えられる。このようなケースでは波長1.2μm以下の短波長側を光給電システムで、1.2μmより長波長側を光回線試験に利用するのが有効である。
【0066】
また本願では明示的に示していないが、光給電装置とノード装置の接続に、複数の光ファイバを用いる場合には給電光、上下通信光などが利用するすべての光ファイバ回線についてそれぞれ個別に本発明を適用し、給電区間と未使用区間の光学的接続を保つことで回線試験が可能となる。この際に用いる光接続デバイスはすべて同一である必要はなく、光ファイバ中を伝送される光信号の波長や特性に応じて異なるデバイスを選定することも可能である。
【0067】
例えば、給電損失の低減や下流回線への漏れ光防止の観点からは給電光の伝送に用いる光ファイバ回線の光学的接続には波長分岐カプラの利用が有利であり、またこれらの影響が低い上下通信用の光ファイバ回線に適用する場合は光分岐器を利用しても問題を生じにくい。
【実施例0068】
図8は本発明の第4の実施例を示す構成図であり、1台の給電装置100に光スターカプラ230を接続して給電光104-2を2分岐し、2台のノード装置110-1、110-2をスター型に接続した構成例である。また本例では、給電装置100の配置される局舎120に既存の光ファイバ回線が接続されておらず、延長光ファイバ回線130を設置して近隣の通信キャリアの商用光ファイバ回線128の途中から乗り入れるケースを想定している。本図で乗り入れ点となるのは光ファイバ回線128-1と128-2の途中にある光接続箱124-1であり、本構成の場合では光ファイバ回線128-1が未使用区間、128-2が給電区間となる。
【0069】
上記の発生した未利用の光ファイバ回線128-1でも光回線試験が従来どおりの光回線試験を実施可能とするため、本実施例では光接続箱124-1の内部に光分岐回路200-1を配置し、光試験用に光ファイバ回線128-1と128-2を光学的に接続するとともに、給電光用の光経路として光ファイバ回線128-3と128-1を接続している。これによって従来どおりに光成端箱122-1と光成端箱122-2間で、光ファイバ回線128-1、128-2間の回線試験が実施可能となる。
【0070】
なお本例のように、給電光を乗り入れることで発生した未使用光ファイバ回線128-1は給電光の進行方向と逆向きのため、強度の高い給電光の漏れ光が発生しない。このため光コネクタ127-1には必ずしも光終端処理を行う必要性はない。また光分岐器200-1の代わりに、前述の例のように光波長分岐器を利用し、給電光波長域λpと異なる波長域λcで光ファイバ回線128-1と128-2間の回線試験用の光接続性を保つ構成としてもかまわない。
【0071】
光ファイバ回線128-2を通過して光スターカプラ230に入力された給電光104-2は2分岐され、それぞれ光中継箱124-2、124-3の近傍に取り付けた2台のノード装置110-1、110-2に分配される。これらのノード装置の取り付けの際にはそれぞれ光ファイバ回線の切断が生じており、図8中の光ファイバ回線129-2、及び129-4が未使用区間となる。
【0072】
このようにスター型配置の場合には分岐先の光ファイバ回線でそれぞれ未使用区間が生じる可能性があるが、それぞれ個別に本発明を適用することで光回線試験が実施可能となる。本図においては、光分岐回路200-2を配置することで切断された光ファイバ回線128-1と128-2間を光学的に接続するとともに、また波長分岐器220を配置して切断された光ファイバ回線129-3と129-4間の光接続を実現している。
【0073】
光回線試験は、例えば光ファイバ回線128-1、128-2においては光コネクタ127-1と127-2間で、光ファイバ回線129-1、129-2においては光コネクタ127-3と127-5間で、光ファイバ回線129-3、129-4においては光コネクタ127-4と127-6間で実施することで、本システムで利用するすべての光ファイバ回線の健全性が確認できる。
【0074】
なお本例ではスターカプラの分岐数を2としたが分岐数をさらに増やすことに問題はなく、給電光に余裕があればさらに各ノード装置110-1、110-2に給電光を分岐する光分岐器を備えノード装置を縦続接続するなど、任意のネットワーク構成で本発明の適用が可能である。いずれの場合も、上流側の光給電装置や各分岐の末端のノード装置の接続の際に光ファイバ回線の切断によって未使用区間が発生すれば、都度本例のように光接続デバイスを配置すればよい。また本例では、光分岐器、光波長分岐器を本実施例の光接続デバイスとして混在して用いたが、すべて同一の方式としたり、損失や光反射などの特性、必要性に応じて適宜選定すればよい。
【0075】
また光スターカプラ230の配置場所も、光成端箱122中に限るものではなく光給電装置100に内蔵したり、光接続箱124への配置、独立部品として局舎120の内部や光ケーブルの分岐部などに直接配置してもかまわない。いずれの場合も、光回線試験の実施が容易に可能となるように、適宜光コネクタを設けてアクセスの容易な光成端箱内に収容するのが望ましい。
【実施例0076】
図9は本発明の第5の実施例であり、既存の光ファイバケーブル123の途中から、本システム専用の延長光ファイバケーブル130-1~3からなる別経路に分岐し、その途中に3台のノード装置110-1~3を配置するドロップ型のネットワーク構成例である。
【0077】
本構成では、ドロップ経路を分岐する光接続箱124-1内で、既存の光ファイバ回線128が給電区間となる上流側光ファイバ回線128-1と、未使用区間となる下流側光ファイバ回線128-2に分割される。本図ではその間に光波長分岐器220-1を配置し、光試験用の波長域λcで光ファイバ回線128-1と128-2間の光学的接続を維持するように、かつ給電光204-1がドロップ経路となる延長光ケーブル130-1内部の光ファイバ回線129に迂回される構成となっている。
【0078】
なお本図のようなドロップ型のネットワーク構成においては、光波長分岐器220-1の代わりに光分岐器を用いると光パルス反射試験の実施に制約が生じる場合がある。仮に、光分岐器を用いた構成とした場合、上流の光コネクタ127-1から光ファイバ回線128-1、128-2の光反射試験を実施すると、光ファイバ回線128-2からの反射光と、ドロップ側経路の光ファイバ回線129の反射光が重畳されてしまうため回線障害の判定が困難となる。このため本図のような長尺なドロップ型の分岐を行うケースでは、ドロップ点での光学的な接続に波長分岐器を用いる構成とし、給電光と異なる波長で光パルス反射試験を実施する構成が有効である。
【0079】
図9では光給電システムの利用する光ファイバ回線129についても全長にわたって光回線試験が可能となるよう、末端のノード装置110-3の接続される光接続箱124-4から近隣にある光成端箱122-2に至る新たな光ファイバケーブル130-4を設置している。本ケーブル内部の未使用の光ファイバ回線235と光ファイバ回線129の間は、ノード装置110-3の内部に配置した光分岐器200-3によって波長域λpで光学的に接続される。
【0080】
延長光ファイバケーブル130-1に迂回された給電光はノード装置の接続点となる光接続箱124-2、124-3、124-4でノード装置接続用の光ファイバケーブル231-1、231-2、231-3を経由してノード装置110-1、110-2、110-3に引き込まれ、光分岐回路200-1、200-2、200-3で一部を受電部111-1、111-2、111-3に分離してノード装置の動作用の電力に利用されるとともに、他方を再びノード装置接続用の光ファイバケーブル231-1、231-2、231-3を経由で光接続箱124-2、124-3、124-4に戻り、再度下流の光ファイバケーブル130-2、130-3、130-4に送信される。
【0081】
光ファイバケーブル130-4は前述のように給電システムの使用する光ファイバ回線129の回線試験用であり、内部の未使用光ファイバ回線235は通常は未使用であり、接続先の光成端箱122-2の内部では光コネクタ127-3からの給電光204-5の漏れを防ぐために光終端器210を配置している。光ファイバ回線129の健全性確認の際には、光給電装置100を停止して光コネクタ127-1から切り離し、光コネクタ127-1と127-3間で給電光波長域λpを用いた回線試験を実施すればよい。これによって光給電システムの利用する光ファイバ回線129(追加した未使用光ファイバ回線235を含む)全体の損失測定や両側からの光反射試験が可能となる。
【0082】
なお図9では、光接続箱の内部に光波長分岐器220-1を配置した構成としているが、光接続箱や光成端箱などの汎用性、共用性の高い場所に、特定の光給電システム専用の部品を配置することは保守性、管理責任の明確化、安全性、信頼性、耐環境性などの面で必ずしも好ましくない。この観点からは、本実施例で新たに導入した光分岐器や光波長分岐器などの光接続デバイスや光スターカプラなどは光給電装置ないしは、ノード装置と同一個所や内部に設置するのが望ましい。
【0083】
図10は本発明の第5の実施例におけるノード装置の構成図であり、上記の観点から図9の構成図中に示したノード装置110-1の内部に光波長分岐器220-1の機能を取り込んだ構成である。入力光コネクタ232は、上流の給電装置からの光ファイバ回線の接続に用いるコネクタであり、給電光と試験光を入力光とする。内部には回線試験波長域λcの分離用の光波長分岐器220-1、下流のノード装置への給電光の分岐用の光分岐器200-1が配置されており、回線試験用光コネクタ233は光ファイバ回線の切断で発生した下流側の未使用光ファイバ(図9中の128-2)に、また下流光給電用光コネクタ234はさらに下流のノード装置に向かうドロップ用光ファイバ回線への接続に利用すればよい。
【0084】
なお本ノード装置を図9のノード装置110-1として利用する場合には、図9の光波長分岐器をそのままノード装置110-1に移動することで実現可能であり、この際途中の光ファイバケーブル130-1、231-1中には図10のノード装置の回線試験用光コネクタ233から図9中の未使用の光ファイバ回線182-2に戻る光ファイバ回線を追加する必要がある。これと同様の考え方で図9の給電装置100の内部に光波長分岐器220-1を取り込むことも可能である。
【実施例0085】
図11は本発明の第6の実施例を示す構成図であり、光ファイバ回線の状態を常時監視ないしは常時測定可能とし、その結果を中央監視装置240に集約する常時監視システムを構築した例である。本図には光給電装置100に1台のノード装置110が接続されており、ノード装置110は光ケーブル128-1と128-2の中間の光接続箱124から、ノード装置接続用光ファイバケーブル231を介して接続されている。
【0086】
本構成では、光給電システムの動作中も常時光回線試験を可能とするために、光給電システムの用いる波長域λpとは異なる波長域λcを用いて回線試験を行うものとし、光給電装置100の内部に配置した光波長分波器220-1及び、ノード装置110内部に配置した光波長分波器220-2によって回線試験用の光信号と光給電装置用の光信号の波長域λp/λcを波長分離、合波することで、光給電システムと回線試験装置の入出力する光信号間の干渉を防いでいる。
【0087】
本図で局舎120-1に設置された、光給電装置100には前述の光波長分波器220-1が内蔵されており、光給電装置100の筐体には回線試験用光コネクタ233-1が設けられている。本コネクタには送信側回線試験装置241から送出される波長域λcの監視用光信号が入力され、光給電装置100の送出する波長域λpの給電光と合波されたのちに、光コネクタ127-1から出力され、光成端箱122-1を経由して光ファイバ回線128-1に導かれる。
【0088】
また光接続箱124の内部では、給電区間である上流側の光ファイバ回線128-1と未使用区間である下流側の光ファイバ回線128-2を2芯のノード装置接続用光ファイバケーブル231によってノード装置110の設置場所まで延長し、光コネクタ127-3、監視試験用光コネクタ233-2を介してノード装置110に接続している。このようにノード装置を光コネクタで接続すると、機器の設置や交換が容易となり保守性が向上するが、一般に光給電システムのノード装置は地下施設や管渠内など電源供給やアクセスの困難な場所に設置されるため、本コネクタは日常の光回線試験への利用には必ずしも適していない。
【0089】
ノード装置110の内部には光波長分岐器220-2が内蔵されており、光ファイバ回線128-1から送信される光信号のうち給電光を含む波長域のλpの光信号を受光部111に導き、また波長域λcの監視信号成分を監視試験用光コネクタ233-2から未使用区間の光ファイバ回線128-2に送出する。
【0090】
局舎120-2には光ファイバ回線128-2の端点が収容される光接続箱122-2が配置されており、光ファイバ回線128-2には光コネクタ127-2を介して受信側回線試験装置242が接続される。
【0091】
図11の回線試験装置は、送信側回線試験装置241から波長域λcの一定強度の監視光を送出し、同時に受信側回線試験装置242にて波長域λcの監視光の受信強度を測定することでその間の光ファイバ回線の損失を測定、監視し、回線情報や異常損失の発生に対する警報などを、回線情報243-1や243-2として発出する。本構成の監視光の経路は、光ファイバ回線128-1、128-2を通過するだけでなく、光給電装置からノード装置に至る給電光の経路をすべて包含しているため、光ファイバ回線128と光給電システムの給電経路の健全性を同時に監視することが可能になる。
【0092】
また上記で得られた回線情報243は、光給電装置100から送出される光給電システムのエラーや故障情報などから成る機器情報244とともに中央監視装置240に集約される。これによって光ファイバネットワークや設置した光給電システムの障害や故障などの状況がリアルタイムで一括監視可能となり、光ファイバネットワーク及び光給電システム双方の可用性や信頼性向上、故障復旧の迅速化などに寄与することが可能となる。
【0093】
なお本発明における回線試験装置の構成や動作は上記に限るものではなく、例えば受信側回線試験装置242から送出した監視光の強度を送信側回線試験装置241で測定したり、双方から交互に送出、強度測定を行うことも可能であるし、またこれらの監視装置の片側ないしは双方から光パルス試験を行うことも可能である。測定頻度も、常時、一定間隔、または中央監視装置からの要請の都度など様々な実装が可能である。
【0094】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0095】
また、上記の各構成・機能・処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード等の記録媒体に置くことができる。
【0096】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、光ファイバ給電技術を用いて給電装置から遠隔配置された複数のノード装置に向かって同時に給電と上下の光通信を行い、多点での監視やデータ収集、情報通信などを行う光給電システムに対して適用することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
100:光給電装置、101:給電光源、102:送信部
103:受信部、104:給電光、105:上下通信光
106、光ファイバケーブル、107:光分岐器
110:ノード装置、111:受電部
120:局舎、121:中継所、122:光成端箱
123:光ファイバケーブル
124:光接続箱、125:光ファイバ回線の切断点
126:他の光ファイバ回線
127:光コネクタ
128:光ファイバ回線、129:光ファイバ回線
130:延長光ファイバケーブル
133:スプライス、134:切断部
200:光分岐器、201:光接続デバイス
202:光試験信号
204:給電光、205:第一の分岐給電光、206:第二の分岐給電光
207:共通光ポート、208:第一の光ポート、209:第二の光ポート
210:光終端器
211:上流側試験装置、212:下流側試験装置、213:下り方向の試験光
220:光波長分岐器
221:共通光ポート、222:第一の光ポート、223:第二の光ポート
230:光スターカプラ、231:ノード装置接続用光ファイバケーブル
232:入力光コネクタ、233:回線試験用光コネクタ
234:下流光給電用光コネクタ、235:未使用光ファイバ
240:中央監視装置、241:送信側回線試験装置、242:受信側回線試験装置
243:回線情報、244:機器情報
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図2
図3
図4
図5
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図9
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