(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025441
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】既存杭の撤去工法
(51)【国際特許分類】
E02D 9/02 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
E02D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128892
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山下 健一
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 裕季
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 風斗
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050DA03
(57)【要約】
【課題】工程の増加を抑制できる既存杭の撤去工法を提供する。
【解決手段】既存杭Pが埋められている地盤Gに、内径が既存杭Pの外径よりも大きい筒状のケーシング1を、既存杭Pの周囲に自硬性安定液Lを供給しながら差し込んでいき、前記既存杭Pを前記ケーシング1で包囲する縁切り工程と、前記ケーシング1の下端部に設けられている可動爪4を移動させ、前記可動爪4を前記既存杭Pの下端部よりも下方に位置させるか、または、前記下端部に一致させた上で、前記ケーシング1を上方に移動させることで前記既存杭Pを地盤Gから引き抜く引き抜き工程と、前記既存杭Pが引き抜かれた後の残存穴Hに、前記既存杭Pを取り除いた前記ケーシング1を再度配置させ、追加の自硬性安定液Lを供給して、前記ケーシング1を複数回上下動させることで、前記残存穴H内部の土砂Sと前記自硬性安定液Lとを撹拌する撹拌工程と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存杭が埋められている地盤に、内径が既存杭の外径よりも大きい筒状のケーシングを、既存杭の周囲に自硬性安定液を供給しながら差し込んでいき、前記既存杭を前記ケーシングで包囲する縁切り工程と、
前記ケーシングの下端部に設けられている可動爪を移動させ、前記可動爪を前記既存杭の下端部よりも下方に位置させるか、または、前記下端部に一致させた上で、前記ケーシングを上方に移動させることで前記既存杭を地盤から引き抜く引き抜き工程と、
前記既存杭が引き抜かれた後の残存穴に、前記既存杭を取り除いた前記ケーシングを再度配置させ、追加の自硬性安定液を供給して、前記ケーシングを複数回上下動させることで、前記残存穴内部の土砂と前記自硬性安定液とを撹拌する撹拌工程と、
を有する既存杭の撤去工法。
【請求項2】
前記ケーシングが、筒状の本体部と、前記本体部から径方向に突出しており前記撹拌工程における前記ケーシングの上下動に伴い前記土砂と前記自硬性安定液との撹拌をなす撹拌翼とを備える、請求項1に記載の既存杭の撤去工法。
【請求項3】
前記引き抜き工程で移動させられた状態と同じ状態とされた前記可動爪を、前記撹拌翼として用いる、請求項2に記載の既存杭の撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に埋設された既存杭を引き抜くことで撤去し、引き抜きにより地盤に形成された穴を埋め戻す、既存杭の撤去工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存杭の撤去工法として、例えば、本願特許出願人による特許文献1に記載の工法がある。この工法は、地盤から既存杭を縁切りするために用いられる筒状のケーシングの先端付近から地盤内の既存杭を引き抜いた後の残存穴を埋める自硬性安定液(セメントベントナイト液等)を噴射しながら、ケーシングで既存杭を包囲するように掘り下げ、ケーシングの先端が少なくとも既存杭の下端に達したら、ケーシングと既存杭とをそれぞれ引き抜き、噴射した自硬性安定液が滞留している残存穴に、さらに新たな自硬性安定液を注入して残存穴を埋めるものである。既存杭は、ワイヤーを引っ掛けることで引き抜かれる。また、特許文献2には、ケーシング下端部の内部に突出させたチャック爪に既存杭を引っ掛けることで、ケーシングを用いて既存杭を引き抜く工法(チャッキング工法)が記載されている。
【0003】
特許文献1には、残存穴に対して下側に滞留している土砂混じりの自硬性安定液と上側に滞留している新たに注入した自硬性安定液とをオーガースクリューで撹拌することが記載されている。このように撹拌を行うことにより、残存穴内部の土砂と自硬性安定液とを均一に混ざるようにできる。
【0004】
しかし、撹拌に関して記載された特許文献1に記載の構成では、既存杭を引き抜くに際して用いられるケーシングを、それが設けられていた工事装置(建設用重機等)から取り外し、オーガースクリューを取り付け直す必要があって、工程の増加を招いていた。特に既存杭の長さが長い場合、撤去に用いるケーシングの長さも長くなるので、オーガースクリューへの交換は大変になる。その結果、従来の工法で撹拌を行おうとすると、時間や費用が多くかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-23788号公報
【特許文献2】特許第3052135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、工程の増加を抑制できる既存杭の撤去工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、既存杭が埋められている地盤に、内径が既存杭の外径よりも大きい筒状のケーシングを、既存杭の周囲に自硬性安定液を供給しながら差し込んでいき、前記既存杭を前記ケーシングで包囲する縁切り工程と、前記ケーシングの下端部に設けられている可動爪を移動させ、前記可動爪を前記既存杭の下端部よりも下方に位置させるか、または、前記下端部に一致させた上で、前記ケーシングを上方に移動させることで前記既存杭を地盤から引き抜く引き抜き工程と、前記既存杭が引き抜かれた後の残存穴に、前記既存杭を取り除いた前記ケーシングを再度配置させ、追加の自硬性安定液を供給して、前記ケーシングを複数回上下動させることで、前記残存穴内部の土砂と前記自硬性安定液とを撹拌する撹拌工程と、を有する既存杭の撤去工法である。
【0008】
この構成によれば、縁切り工程及び引き抜き工程で用いたケーシングをそのまま利用して、撹拌工程にて、残存穴内部の土砂と自硬性安定液とを撹拌することができる。このため、従来用いられていたオーガースクリューのように、工事装置において撹拌のために治具を付け替える必要がない。
【0009】
また、前記ケーシングが、筒状の本体部と、前記本体部から径方向に突出しており前記撹拌工程における前記ケーシングの上下動に伴い前記土砂と前記自硬性安定液との撹拌をなす撹拌翼とを備えるものとできる。
【0010】
この構成によれば、ケーシングが撹拌翼を備えることにより、撹拌工程での土砂と自硬性安定液の撹拌を効率的にできる。
【0011】
また、前記引き抜き工程で移動させられた状態と同じ状態とされた前記可動爪を、前記撹拌翼として用いるものとできる。
【0012】
この構成によれば、ケーシングに設けられている可動爪を撹拌翼として用いることで、撹拌のための特別な構成を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、工事装置において撹拌のために治具を付け替える必要がない。このため、工程の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工法において、ケーシングを地盤に差し込む前(縁切り工程実施前)の状態を示す概略図である。
【
図2】前記工法における縁切り工程にて、ケーシングを地盤に差し込んで既存杭の周囲に配置させた状態を示す概略図である。
【
図3】(a)は、前記工法における引き抜き工程に先立ち、ケーシング下端部に設けられた可動爪を内部に突出させた閉じ状態とし、可動爪が既存杭の下端部に引っ掛かった状態を示す概略図であり、(b)は(a)の丸囲み部を拡大した概略図である。
【
図4】前記工法における引き抜き工程にて、ケーシングを地盤から引き出して、既存杭を引き抜いている途中の状態を示す概略図である。
【
図5】前記工法における引き抜き工程にて、ケーシングを地盤から引き出して、既存杭の引き抜きを完了した状態を示す概略図である。
【
図6】前記工法における撹拌工程にて、既存杭を取り外したケーシングを残存穴に差し込み、残存穴内部の土砂と自硬性安定液とを撹拌している状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明につき、一実施形態に係る既存杭Pの撤去工法を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。以下の説明における方向は、工法実施時の方向である。
【0016】
本実施形態の工法は、主に、縁切り工程、引き抜き工程、撹拌工程を有し、記載した順番で実施される。本実施形態の工法は公知の工事装置を用いて実施できる。工事装置は、例えば杭打機やクレーン等の建設用重機である。工事装置には、筒状(具体的には円筒状)のケーシング1が取り付けられる。
【0017】
ケーシング1は工事装置において、図示しない駆動源(エンジン、モータ、油圧ポンプ等)の駆動力を受けて上下動、及び、軸方向まわりの回転運動が可能とされている。ケーシング1としては、内径が撤去対象である既存杭Pの外径よりも大きいものが用いられる。ケーシング1の下端には、ケーシング1を回転させることで地盤Gを掘削できる掘削刃2が形成されている。各図は概略図のため、掘削刃2がケーシング1(本体部11)の下端面にのみ形成されているように図示されているが、これに限らず、掘削刃2がケーシング1(本体部11)から周方向に張り出して形成されていてもよい。また、ケーシング1の下端部には自硬性安定液Lをケーシング1の外部に出す液供給部3が設けられている。液供給部3には、自硬性安定液Lを供給する配管(図示しない)が接続されており、この配管は地上側の設備(自硬性安定液Lを供給するプラントを構成するタンク、ポンプ等)に接続されている。自硬性安定液Lとは、土砂Sと混ぜ合わされた状態で、混合物Mを硬化させるための液体であって、例えばベントナイト(粘土)とセメントミルク(硬化剤であるセメントと水の混合液)との混合体を用いることができる。自硬性安定液Lの組成はこれに限定されず、種々の硬化性を有する液体を用いることができる。また、自硬性安定液Lの性質を調整するための添加剤を加えることもできる。
【0018】
また、ケーシング1の下端部には可動爪4が設けられている。可動爪4は、円筒状であるケーシング1の本体部において、ケーシング1が有する内部空間に対して出没するように開閉可能に設けられている。本実施形態では径方向に対向して2個の可動爪4が設けられているが、数量は特に問わない。なお、複数の可動爪4を設ける場合、ケーシング1の本体部11において軸方向で一定の位置であって、周方向で等間隔に設けることが望ましい。本実施形態の可動爪4は、ケーシング1の本体部11に対して周方向に沿う回動軸を中心に回動し、ケーシング1の本体部11の内周面に対して径方向に出没するように構成されている。なお、可動爪4の出没方向はこれに限定されず、径方向及び周方向に対して傾斜した方向で出没するよう構成されていてもよい。可動爪4は、径内方向に突出させた状態(閉じ状態)で、既存杭Pの下端部よりも下方に位置させることができ、閉じ状態の可動爪4に既存杭Pを引っ掛けて(キャッチして)、ケーシング1と共に上方に引き上げることができる。つまり、工事装置によりケーシング1を引き上げることにより、既存杭Pが地盤Gから引き抜かれる。
【0019】
次に、本実施形態の工法における各工程について説明する。事前準備として、
図1に示すように、既存杭Pの上端が地盤Gから露出するように、油圧ショベル等を用いて、既存杭Pの周囲の地盤Gを掘り下げておく。
【0020】
縁切り工程では、
図1及び
図2に示すように、既存杭Pが埋められている地盤Gに、ケーシング1を差し込んでいく。差し込みは、ケーシング1の下端が既存杭Pの下端よりも下方に達するまで行われる。これにより、既存杭Pの側方全周をケーシング1で包囲する。ケーシング1の差し込みは、液供給部3から自硬性安定液Lを噴出させることで、既存杭Pの周囲に自硬性安定液Lを供給しながら行われる。
【0021】
引き抜き工程では、ケーシング1の可動爪4を移動させ、ケーシング1が有する内部空間に突出した閉じ状態とし、
図3(a)(b)に示すように、可動爪4を既存杭Pの下端部よりも下方に位置させた上で、
図4及び
図5に示すように、工事装置を駆動させてケーシング1を上方に移動させることで、既存杭Pを地盤Gから引き抜く。本実施形態では、可動爪4は可動範囲で最も閉じた状態とされる。なお、
図3(a)(b)に示したのは、既存杭Pの下端が平坦な形状の場合であって、既存杭Pの下端が尖っている場合(図示しない)、尖った部分の一部が可動爪4よりも下方に位置することがある。つまりこの場合は、可動爪4を既存杭Pの下端部に一致させた状態となる。引き抜き工程の完了後、地盤Gには、ケーシング1が掘削した残存穴Hが形成されている。そして、残存穴Hの下部には自硬性安定液L(土砂Sも混じっている)が溜まった状態となっている。ケーシング1を地盤Gから引き抜いた後、可動爪4をケーシング1が有する内部空間から退避させた開き状態とする。こうすることで、ケーシング1から既存杭Pを取り外す(抜く)ことができる。ケーシング1及び既存杭Pに付着していた土砂Sは、可能な範囲で集められて残存穴Hに戻される。想定した条件で土砂Sと自硬性安定液Lとの混合物Mを硬化させるためである。
【0022】
撹拌工程では、
図6に示すように、既存杭Pが引き抜かれた後の残存穴Hに、既存杭Pを取り除いたケーシング1を再度配置させ、追加の自硬性安定液Lを供給して、ケーシング1を複数回上下動させることで、残存穴Hの内部(空間)に位置しており、流動性を有した状態の土砂Sと自硬性安定液L(縁切り工程及び撹拌工程で供給された分の合計)とを撹拌する。ケーシング1を残存穴Hに配置させるに先立ち、可動爪4を開き状態から閉じ状態に戻しておく。この閉じ状態は、引き抜き工程における閉じ状態と同じ開度とされる。つまり、可動爪4を可動範囲で最も閉じた状態とする。
【0023】
撹拌工程では、例えば、ケーシング1を上下方向に3往復させる。そして、最初の1往復の途中で追加の自硬性安定液Lを供給する。上下動の範囲は、有効な撹拌力を土砂Sと自硬性安定液Lとに与えるために適宜設定できるが、確実な撹拌をなすためには、例えば、ケーシング1の下端が残存穴Hの上端から下端までの範囲を往復するように設定する。撹拌工程にかける時間は特に限定されないが、例えば3分以上行うことができる。上下動により、可動爪4の上下面が土砂Sと自硬性安定液Lとの混合物Mを掻くことになるので、有効に撹拌がなされる。また、上下動と共にケーシング1を回転させる。ケーシング1を回転させることで、可動爪4の側面も土砂Sと自硬性安定液Lとの混合物Mを掻くことになるので、更に有効に撹拌がなされる。また、ケーシング1を回転させることで、掘削刃2も撹拌に寄与させられる。既存杭Pが引き抜かれて残存穴Hに空間が生じるため、自硬性安定液Lは少なくとも既存杭Pの体積よりも多い体積量を追加供給する。この撹拌工程は引き抜き工程の直後に行ってもよいし、ある程度時間を置いて(ただし、引き抜き工程を行った当日内が望ましい)行ってもよい。もし、撹拌工程において自硬性安定液Lが残存穴Hからあふれ、残存穴Hの内部に存在する量が予定量よりも不足する場合には、適宜自硬性安定液Lを補充的に供給する。
【0024】
ここで、従来の「チャッキング工法」(例えば特許文献2に記載)では、既存杭の周囲を本実施形態と同様のケーシングで清水を噴射しながら掘削し、既存杭と地盤の縁切りを行う。その後、ケーシングの下端部で既存杭をキャッチして一緒に既存杭を引き上げる(同時に自硬性安定液を注入する)工法であったが、以下の問題があった。すなわち、この工法では、既存杭を引き上げる際、ケーシングと既存杭の間の清水と土の混じった泥水が、既存杭を撤去した時に残存穴に落下して自硬性安定液と混合し切らず、埋め戻し状態が不均一になっていた。このため、杭穴を新たに掘削する際に、過去に埋め戻しを行った部分に当たると、その部分の強度が小さいことから、杭穴が崩壊して埋まってしまう可能性があった。
【0025】
これに対して本実施形態の工法では、ケーシング1に設けられた液供給部3より、清水ではなく自硬性安定液Lを供給しつつケーシング1で縁切りを行う。そして、既存杭Pを引き抜いた後、可動爪4を閉じて自硬性安定液Lを供給しながら撹拌を行う。清水ではなく自硬性安定液Lを用いて縁切りを行うことで、単なる泥水ではなく、土を含む改良土(セメントベントナイト改良土)となる。更に、既存杭Pの引き抜き後に、自硬性安定液Lを残存穴Hに供給しながら十分に撹拌することで、土砂Sと自硬性安定液Lとの混合物Mが硬化した硬化物の、残存穴Hの内部における強度の均一性を確保できる。
【0026】
以上、本実施形態によれば、縁切り工程及び引き抜き工程で用いたケーシング1をそのまま利用して、撹拌工程にて、残存穴Hの内部の土砂Sと自硬性安定液Lとを撹拌することができる。このため、従来用いられていたオーガースクリューのように、工事装置において撹拌のために治具を付け替える必要がない。このため、工程の増加を抑制できる。従って、時間や費用を節約できる。
【0027】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0028】
例えば、ケーシング1が、筒状の本体部11と、本体部11から径方向(内径方向または外径方向)に突出しており撹拌工程におけるケーシング1の上下動に伴い土砂Sと自硬性安定液Lとの撹拌をなす撹拌翼とを備えるよう構成されていてもよい。ケーシング1が撹拌翼を備えることにより、撹拌工程での土砂Sと自硬性安定液Lの撹拌を効率的にできる。撹拌翼は、ケーシング1の本体部11に対して着脱可能な、別体の板状体(羽根のような薄肉のもの)やブロック状体(厚肉のもの)であってもよいし、ケーシング1の本体部11に出没可能に取り付けられていてもよい。前記実施形態における可動爪4は、既存杭Pをキャッチする機能を有すると共に、前記撹拌翼を兼ねたものであると言える。このため、本実施形態では前記「チャッキング工法」に用いられるケーシング1の構成をそのまま、撹拌機能を発揮するものとして利用でき、撹拌のための特別な(別途の)構成が不要でありコスト面で有利である。また、着脱式の撹拌翼では、ケーシング1から脱落するリスクがあるが、可動爪4を撹拌翼として用いれば、ケーシング1の本体部11から脱落する可能性を小さくできる。
【0029】
また、撹拌工程において、前記実施形態では、ケーシング1を回転させつつ上下移動させていたが、回転せずに上下移動だけをさせることもできる。また、可動爪4は、前記実施形態では最大の閉じ状態とされていたが、例えば撹拌強度の調整のため、中間的な閉じ状態で撹拌を行ってもよい。また、前記実施形態では、最初の1往復の途中で追加の自硬性安定液Lを供給していたが、2往復目、更に、3往復目以降にわたって自硬性安定液Lを供給してもよい。また、前記実施形態では、自硬性安定液Lを連続的に供給していたが、間欠的に供給することもできる。また、ケーシング1の液供給部3を用いずに、残存穴Hに直接追加の自硬性安定液Lを供給してもよい。また、例えば液供給部3から空気を噴出できるように構成しておき、撹拌工程において空気噴出を並行して行うことで、より強い撹拌を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ケーシング
2 掘削刃
3 液供給部
4 可動爪
11 ケーシングの本体部
P 既存杭
G 地盤
H 残存穴
L 自硬性安定液
S 土砂
M 混合物