(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025451
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】釘打機及び釘打機用ドライバー
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20240216BHJP
B25C 1/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128912
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】503174420
【氏名又は名称】株式会社ファインスティールエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】今泉 桂次郎
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068CC02
3C068CC07
3C068DD20
3C068JJ20
(57)【要約】
【課題】 装置重量を低減できるとともに、釘の打ち込み時の反動による使用者の負担を低減できる釘打機及び釘打機用ドライバーを提供することを目的とする。
【解決手段】 釘打機1は、シリンダ4と、ピストン5と、シリンダ4内に形成された蓄圧室7と、ピストン5に連結されたドライバー8を備える。ドライバー8は、釘101を打撃する部分である先端部21と、ピストン5に固定される基端部22と、先端部21と基端部22の間の中間部23を備える。先端部21と基端部22は中実に形成される一方で、中間部23には中空部23Bが設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に打ち込まれる釘に打撃を加える軸状部材であるドライバーと、
前記ドライバーを前記釘に向けて駆動する駆動手段と
を備えた釘打機において、
前記ドライバーは、前記釘に衝突する先端部と、前記先端部と反対側の基端部と、前記先端部と前記基端部の間に配置された中間部とを備え、
前記先端部及び前記基端部を中実とする一方で、前記中間部に中空部を設けた釘打機。
【請求項2】
前記駆動手段が前記ドライバーを前記釘に向けて駆動する駆動力は、前記ドライバーが前記釘に衝突したときに前記釘に付与される運動量が、前記釘の打ち込みに必要な打撃力を与えるように調整されている請求項1に記載の釘打機。
【請求項3】
前記駆動手段は、
前記ドライバーの前記基端部が固定されるピストンと、
前記ピストンが摺動可能に収容されるシリンダと、
前記ピストン内の前記ドライバーと反対側に設けられて圧縮ガスが封入された蓄圧室と、
前記釘の打ち込みを行わないときには、前記シリンダ及び前記ドライバーを前記蓄圧室側に引き戻して前記シリンダ及び前記ドライバーを待機位置に保持する一方で、前記釘を打ち込むときには、前記シリンダ及び前記ドライバーの待機位置への保持を解除して、前記蓄圧室からの圧力を前記シリンダ及び前記ドライバーに作用させる戻し機構と
を備えた請求項1に記載の釘打機。
【請求項4】
前記駆動手段は、電動モータと、前記電動モータに電力を供給するバッテリーとを備えた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の釘打機。
【請求項5】
対象物に打ち込まれる釘に打撃を加える軸状部材である釘打機用ドライバーにおいて、
前記釘に衝突する先端部と、
前記先端部と反対側の基端部と、
前記先端部と前記基端部の間の中間部と
を備え、
前記先端部及び前記基端部を中実とする一方で、前記中間部に中空部を設けた釘打機用ドライバー。
【請求項6】
前記中空部に、前記中間部を長手方向に貫通する貫通穴を設け、前記貫通穴の内部を前記中空部とした請求項5に記載の釘打機用ドライバー。
【請求項7】
前記中空部に前記中間部を構成する部材よりも軽量の部材を充填した請求項5に記載の釘打用ドライバー。
【請求項8】
前記中空部内に、前記中間部の機械的強度を向上させるための補強構造を備えた請求項5に記載の釘打用ドライバー。
【請求項9】
前記補強構造として、前記中空部内に補強用管状部材を配置した請求項8に記載の釘打用ドライバー。
【請求項10】
前記補強構造として、前記中間部の前記中空部側の表面に複数の突起部を形成した請求項8に記載の釘打用ドライバー。
【請求項11】
前記補強構造として、前記中空部内にハニカム構造を配置した請求項8に記載の釘打用ドライバー。
【請求項12】
前記先端部は、前記中間部を構成する部材よりも、剛性及び耐摩耗性の高い部材で形成されている請求項5に記載の釘打機用ドライバー。
【請求項13】
前記先端部と前記基端部と前記中間部は、別部材として形成され、溶接又はロウ付けにより互いに接合されている請求項5に記載の釘打機用ドライバー。
【請求項14】
前記中間部は、ハイテン鋼から形成されている請求項5に記載の釘打機用ドライバー。
【請求項15】
前記中間部の外周面に、耐摺動摩耗性を高めるための表面処理を施した請求項14に記載の釘打機用ドライバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築作業等における釘の打ち込みに用いられる釘打機及び釘打機用ドライバーに関する。
【背景技術】
【0002】
建築作業の現場においては、従来から、木材等の建築部材に釘を打ち込むために、様々な釘打機が用いられてきている。このような釘打機には、一般に、対象物に打ち込まれる釘に打撃を与えるための槌部材(ドライバー)と、このドライバーを駆動するための駆動手段が備えられる。
【0003】
このような釘打機としては、例えば特許文献1(特開2001-25980号公報)に開示されているように、釘打機本体をエアホースでコンプレッサーに接続し、コンプレッサーからの空気圧でドライバーを駆動する釘打機が、従来から広く用いられている。
【0004】
一方、近年、釘打機内に電動式駆動機構(電動モータ及びバッテリー)を内蔵し、この駆動機構によってドライバーを駆動することにより、面倒なエアホースの取り回しを不要として、使い勝手を向上させた釘打機も提案されている。例えば、特許文献2(特開2007-216339号公報)には、フライホイールを用いた駆動手段で釘の打ち込みを行う電動式釘打機が開示されている。また、特許文献3(特開2021-160028号公報)及び特許文献4(特開2021-171899号公報)には、ガスシリンダを用いた駆動手段により釘の打ち込みを行うとともに、ラック及びピニオンを用いた電動式のドライバー戻し機構を備えた釘打機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-25980号公報
【特許文献2】特開2007-216339号公報
【特許文献3】特開2021-160028号公報
【特許文献4】特開2021-171899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献2~4に開示されているような電動式釘打機は、電動モータやバッテリーが内蔵されている分だけ、装置重量が重くなってしまう問題点がある。これは、釘打機を手で持って作業をする使用者にとって負担となる。また、釘打機は、ドライバーによる打撃により釘を打ち込むものであるので、使用者には打ち込み時の反動や振動が作用し、これも使用者にとって大きな負担となっていた。
【0007】
本発明は、以上のような課題に着目してなされたもので、装置重量を低減できるとともに、釘の打ち込み時の反動による使用者の負担を低減できる釘打機及び釘打機用ドライバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対象物に打ち込まれる釘に打撃を加える軸状部材であるドライバーと、前記ドライバーを前記釘に向けて駆動する駆動手段とを備えた釘打機において、前記ドライバーは、前記釘に衝突する先端部と、前記先端部と反対側の基端部と、前記先端部と前記基端部の間に配置された中間部とを備え、前記先端部及び前記基端部を中実とする一方で、前記中間部に中空部を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
前記駆動手段が前記ドライバーを前記釘に向けて駆動する駆動力は、前記ドライバーが前記釘に衝突したときに前記釘に付与される運動量が、前記釘の打ち込みに必要な打撃力を与えるように調整されるのが望ましい。
【0010】
前記駆動手段は、前記ドライバーの前記基端部が固定されるピストンと、前記ピストンが摺動可能に収容されるシリンダと、前記ピストン内の前記ドライバーと反対側に設けられて圧縮ガスが封入された蓄圧室と、前記釘の打ち込みを行わないときには、前記シリンダ及び前記ドライバーを前記蓄圧室側に引き戻して前記シリンダ及び前記ドライバーを待機位置に保持する一方で、前記釘を打ち込むときには、前記シリンダ及び前記ドライバーの待機位置への保持を解除して、前記蓄圧室からの圧力を前記シリンダ及び前記ドライバーに作用させる戻し機構とを備えたものとすることができる。
【0011】
前記駆動手段は、電動モータと、前記電動モータに電力を供給するバッテリーとを備えてもよい。
【0012】
また、本発明は、対象物に打ち込まれる釘に打撃を加える軸状部材である釘打機用ドライバーにおいて、前記釘に衝突する先端部と、前記先端部と反対側の基端部と、前記先端部と前記基端部の間の中間部とを備え、前記先端部及び前記基端部を中実とする一方で、前記中間部に中空部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
前記中空部に、前記中間部を長手方向に貫通する貫通穴を設け、前記貫通穴の内部を前記中空部としてもよい。
【0014】
前記中空部に前記中間部を構成する部材よりも軽量の部材を充填してもよい。
【0015】
前記中空部内に、前記中間部の機械的強度を向上させるための補強構造を備えてもよい。
【0016】
前記補強構造として、前記中空部内に補強用管状部材を配置してもよい。
【0017】
前記補強構造として、前記中間部の前記中空部側の表面に複数の突起部を形成してもよい。
【0018】
前記補強構造として、前記中空部内にハニカム構造を配置してもよい。
【0019】
前記先端部は、前記中間部を構成する部材よりも、剛性及び耐摩耗性の高い部材で形成されていてもよい。
【0020】
前記先端部と前記基端部と前記中間部は、別部材として形成され、溶接又はロウ付けにより互いに接合されていてもよい。
【0021】
前記中間部は、ハイテン鋼から形成されていてもよい。
【0022】
前記中間部の外周面に、耐摺動摩耗性を高めるための表面処理を施してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の釘打機(例えば釘打機1)によれば、釘(例えば釘101)を打撃する部材であるドライバー(例えばドライバー8)に、中実の先端部(例えば先端部21)及び基端部(例えば基端部22)と、中空部(例えば中空部23B)を有する中間部(例えば中間部23)を備えたので、ドライバーは中空部の分だけ軽量化される。したがって、釘打機の重量を小さくでき、使用者の負担を低減できる。また、打撃部材であるドライバーが軽量となるので、釘の打ち込み時における使用者への反動も小さくなり、この点でも使用者の負担を低減できる。一方、ドライバーは、軽量化された分だけ移動速度が速くできるため、釘の打ち込み時に、ドライバーを含む構成(例えばドライバー・アッセンブリ9)から釘に付与される運動量(力積)は、釘の打ち込みに必要な大きさを確保できる。したがって、針の打ち込みに必要な打撃力を適切に確保しつつ、軽量化されて使用者の負担の小さな釘打機を構成できるという実用上好ましい大きな効果を奏するものである。
【0024】
また、駆動手段の駆動力(例えば蓄圧室7内のガスの圧力)が調整されるようにすれば、ドライバーの速度を適切に調整して、ドライバーによる打撃力を容易に適正化することができる。
【0025】
また、ドライバーの基端部が固定されるピストン(例えばピストン5)と、ピストンが摺動可能に収容されるシリンダ(例えばシリンダ4)と、シリンダ内に形成される蓄圧室(例えば蓄圧室7)と、ピストン及びドライバーを待機位置に戻す戻し機構を備えれば、釘の打ち込み時におけるドライバーの速度の調整が必要な場合でも、蓄圧室内のガス圧を調整することにより容易に対応することができる。
【0026】
また、駆動手段(戻し機構)が電動モータとバッテリーを備えるようにすれば、使い勝手の良い電動式の釘打機を構成できる一方で、重量のある電動モータとバッテリーが備えられたのに対して、ドライバーが軽量化されているので、装置の重量が大きくなり過ぎないようにできる。
【0027】
また、本発明の釘打機用ドライバー(例えばドライバー8)によれば、中実の先端部(例えば先端部21)及び基端部(例えば基端部22)と、中空部(例えば中空部23B)を有する中間部(例えば中間部23)を備えたので、ドライバーは中空部の分だけ軽量化され、釘打機の重量を小さくでき、使用者の負担を低減できる。また、釘の打ち込み時における使用者への反動も小さくなり、この点でも使用者の負担を低減できる。一方、ドライバーは、軽量化された分だけ移動速度が速くできるため、釘の打ち込み時に、ドライバーを含む構成(例えばドライバー・アッセンブリ9)から釘に付与される運動量(力積)は、釘の打ち込みに必要な大きさを確保できる。したがって、針の打ち込みに必要な打撃力を適切に確保しつつ、軽量化されて使用者の負担の小さな釘打機を構成することができる。
【0028】
また、中空部に、中間部を長手方向に貫通する貫通穴(例えば貫通穴23A)を設け、貫通穴の内部を中空部とすれば、中空部を中間部の長手方向の全体にわたるものとできるので、中空部を最大限に大きなものとでき、ドライバーの重量を大きく低減することができる。また、中間部に形成される開口は、長手方向両端だけである(側方に開口が形成されない)ので、中間部の機械的強度が低減し過ぎることはなく、打撃部材として十分な機械的強度を有するドライバーを構成できる。
【0029】
また、中空部に中間部を構成する部材よりも軽量の部材を充填すれば、ドライバーの軽量化を図りつつ、中間部に十分な機械的強度を確保できる。
【0030】
また、中空部内に中間部の機械的強度を向上させるための補強構造を備えれば、ドライバーの重量増加を抑えつつ、中間部の機械的強度を高めることができる。
【0031】
また、補強構造として、中空部内に補強用管状部材(例えば補強用管状部材31)を配置すれば、補強用管状部材が中間部を内側から堅固に支えるので、中間部の機械的強度を高めることができる。
【0032】
また、補強構造として、中間部の前記中空部側の表面に複数の突起部(例えばリブ32)を形成すれば、新たに補強用の部材を追加することなく、中間部の機械的強度を高めることができる。
【0033】
また、補強構造として、中空部内にハニカム構造(例えばハニカム構造33)を配置すれば、軽量のシート部材(例えば円筒形シート部材33A、波状シート部材33B)から形成されたハニカム構造を用いて、重量増加を最小限に抑えつつ、中間部の機械的強度を高めることができる。
【0034】
また、先端部を中間部よりも剛性及び耐摩耗性の高い部材で形成すれば、ドライバーを軽量化しつつ、適切な打撃を行え、耐久性の高いドライバーを構成できる。
【0035】
先端部と基端部と中間部を別部材とし、溶接又はロウ付けにより互いに接合されるようにすれば、各部材の製造(特に中間部における中空部の形成)を容易に行うことができるとともに、各部材を組み合わせたドライバーは、十分な機械的強度を有するものとできる。
【0036】
また、中間部をハイテン鋼で形成すれば、中間部に十分な機械的強度を確保しつつ、中間部に対する中空部の形成を問題なく行うことができる。
【0037】
また、中間部の外周面に、耐摺動摩耗性を高めるための表面処理を施せば、中間部をハイテン鋼で形成したとしても、中間部に十分な耐摺動摩耗性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施形態における釘打機の全体構成を示す一部断面図であり、ドライバーが待機位置にある状態を示す図である。
【
図2】同じく釘打機の全体構成を示す一部断面図であり、ドライバーが釘を打ち込んだ状態を示す図である。
【
図4】同じくドライバーの断面図であり、ドライバーの貫通穴(中空部)内に、補強構造として補強用管状部材を備えた実施形態を示す図である。
【
図5】同じくドライバーの断面図であり、ドライバーの貫通穴の内表面に、補強構造として複数のリブを形成した実施形態を示す図である。
【
図6】同じくドライバーの断面図であり、ドライバーの貫通穴(中空部)内に、補強構造としてハニカム構造を備えた実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1及び
図2には、本発明の実施形態における釘打機の全体構成を示す。図示されるように、釘打機1は、釘101を対象物102(例えば木材等の建材)に打ち込むための装置であり、本体ケース2と、本体ケース2に一体に設けられたハンドル3を備えている。
【0040】
本体ケース2には、シリンダ4が内蔵されており、シリンダ4内には、ピストン5が摺動可能に配置されている。ピストン5の外周にはリング溝5Aが形成されており、このリング溝5Aには、シールリング6が設けられる。これにより、シリンダ4内のピストン5の上方には、気密性の保たれた蓄圧室7が形成されている。蓄圧室7には、所定圧に圧縮されたガス(例えば圧縮空気)が封入されており、この圧縮ガスの圧力(ガスシリンダのバネ力)によりピストン5が駆動されるようになっている。
【0041】
ピストン5には、対象物102に打ち込まれる釘101に打撃を加える軸状の槌部材(打撃部材)であるドライバー8が固定されており、シリンダ4の開口部4A側(蓄圧室7と反対側)に向けて延びている。ピストン5とドライバー8により、ドライバー・アッセンブリ9が構成される。ドライバー・アッセンブリ9の詳細については、
図3とともに後述する。
【0042】
シリンダ4の開口部4Aには、案内部材10が固定されている。案内部材10には、本体ケース2から延び出す案内ノーズ10Aが備えられる。案内ノーズ10Aには、長手方向を貫通する案内通路10Bが形成されており、この案内通路10B内をドライバー8が動き得るようになっている。
【0043】
釘打機1は、釘101を供給するための釘マガジン11を備えている。釘マガジンは、案内ノーズ10Aに隣接して配置されており、次回の打撃で打ち込まれるべき釘101が、案内ノーズ10Aの案内通路10Bの所定位置に、釘マガジン11から供給されるようになっている。
【0044】
案内部材10のシリンダ4側には、ダンパー12が設けられている。ダンパー12は、シリンダ4の開口部4A内に配置され、釘101の打ち込み時にシリンダ4の開口部4A側に駆動されてきたピストン5と衝突して衝撃を吸収する部材であり、ピストン5のそれ以上の移動を禁止するストッパとしても機能するものである。
【0045】
釘打機1には、駆動ユニット13が設けられている。駆動ユニット13内には、電動モータを含む駆動機構(図示せず)が内蔵されている。駆動機構は、ドライバー・アッセンブリ9をシリンダ4内に後退させた待機位置(
図1に示す位置)まで引き戻して保持する戻し機構として構成され、電動モータで駆動されるようになっている。なお、戻し機構によるドライバー・アッセンブリ9の保持は、ハンドル3に設けられたトリガースイッチ3Aの操作により解除されるようになっている。
【0046】
なお、戻し機構の具体的な構成としては、例えば上記特許文献3(特開2021-160028号公報)又は特許文献4(特開2021-171899号公報)等に開示されたラック及びピニオンを利用した機構等、任意の周知の機構を用いればよい。また、電動モータに電力を供給するバッテリーは、例えば、駆動ユニット13又はハンドル3の内部に配置すればよい。
【0047】
このような構成により、釘101を対象物102に打ち込むときには、
図1に示すように、ドライバー・アッセンブリ9が待機位置に保持された状態の釘打機1を、案内ノーズ10Aの先端部10Cが対象物102の打ち込み位置に配置されるようにセットする。この状態で、トリガースイッチ3Aを操作して、ドライバー・アッセンブリ9の保持を解除することにより、
図2に示すように、シリンダ4の蓄圧室7が圧縮ガスのガス圧により急激に拡大し、ドライバー・アッセンブリ9が案内通路10B内の釘101に向けて押し出される。この結果、釘101の頭部がドライバー8の先端部21により打撃され、釘101が、案内ノーズ10Aの先端部10Cから打ち出され、対象物102内に打ち込まれるようになっている。
【0048】
図3には、ドライバー・アッセンブリ9の詳細を示す。図示されるように、ドライバー・アッセンブリ9は、略円筒形状のピストン5と、軸状の部材であるドライバー8から構成されている。ドライバー8は、ピストン5側に配置される基端部21と、基端部21と反対側に配置される先端部22と、基端部21と先端部22の間に配置される中間部23の3つの部分から構成されている。基端部21、中間部23、先端部22は、独立した別部材として製造され、例えば溶接やロウ付けにより互いに接合されている。
【0049】
基端部21は、中間部23と反対側に延び出す嵌合部21Aを備えており、嵌合部21Aがピストン5に形成された嵌合穴5Bに嵌合した状態で、ピストン5に固定されている。基端部21は、例えばアルミニウム等の金属材料から形成され、内部に空洞を有さない中実部材として構成される。すなわち、基端部21は、ドライバー8とピストン5の連結部であり、釘打機1の作動時に大きな曲げモーメントが作用し得る部分であるので、中実の部材として構成され、機械的強度が確保されることにより、ドライバー8の破損(例えば、基端部21において折れてしまうこと)が適切に防止されるようになっている。
【0050】
先端部22は、釘101の打ち込みに際して、釘101の頭部に衝突して釘101に打撃を加える部分であり、例えば超鋼(超硬合金)等の剛性や耐摩耗性の高い金属材料から形成され、内部に空洞を有さない中実部材として構成されている。
【0051】
なお、先端部22は、釘101を打撃する部分であるため、ドライバー8の他の部分と比較して、特に高い剛性や耐摩耗性が要求されるが、ドライバー8の他の部分(中間部23及び基端部21)には、先端部22ほどの剛性や耐摩耗性は要求されない。したがって、先端部22は、ドライバー8の残りの部分に対して、非常に長さの短い部分(例えば1/15程度の長さの部分)となっている。
【0052】
中間部23は、ドライバー8の長さの大部分を占める長尺の軸部分である。中間部23には、中間部23を長手方向に貫通する貫通穴23Aが設けられ、この貫通穴23Aの内側に、中間部23の長手方向の全域にわたる中空部23Bが形成されている。これにより、ドライバー8は、全体が中実に形成された場合と比較して、中間部23の中空部23Bの分だけ重量が軽くなる。また、中間部23に形成される穴は、長手方向の貫通穴23A(長手方向の両端にのみ開口がある穴)であるので、中間部23の機械的強度が必要以上に低下することはなく、ドライバー8には槌部材(打撃部材)として十分な機械的強度が確保される。
【0053】
ドライバー8の中間部23は、例えば、ハイテン鋼(高張力鋼)、肌焼き鋼、ばね鋼、SK材等の金属で形成されている。なお、従来、ドライバーを構成する材料としては、耐衝撃性、圧縮強度、靭性、耐摺動摩耗性等を考慮して、主としてダイス鋼が用いられていた。しかしながら、本発明のようにドライバー8の中間部23を中空構造とする場合(すなわち、中間部23に貫通穴23A(中空部23B)を形成する場合)、中間部23をダイス鋼で形成することは難しい(ドライバーを形成するための型枠自体がダイス鋼からなっているため、中空構造を作ろうとすると、強度的に型枠の方が耐えられない)。このため、本発明では、ドライバー8の中間部23を構成する材料として、上記のような金属を用いている。特に、中間部23をハイテン鋼で形成することにより、中間部23に中空構造を問題なく形成できるとともに、十分な機械的強度(耐衝撃性、圧縮強度、靭性等)を確保することもできる。
【0054】
ドライバー8の中間部23をハイテン鋼等の上記材料で形成した場合、中間部23の表面の耐摺動摩耗性を高めるために、中間部23の外周面に表面処理を施すようにしてもよい。これにより、ハイテン鋼等からなる中間部23の外周面に、ダイス鋼と比較して遜色のない耐摺動摩耗性を持たせることができる。
【0055】
このように、本実施形態のドライバー8(ドライバー・アッセンブリ9)は軽量化されているが、釘101の打ち込みに十分な打撃力は確保することができる。すなわち、ドライバー・アッセンブリ9は、軽量化した分だけ移動速度が速くなるため、ドライバー・アッセンブリ9から釘101に付与される運動量(力積)は、釘101の打ち込みに必要な大きさを確保することができる。したがって、本実施形態の釘打機1及びドライバー8によれば、釘101の打ち込みに支障が生じることなく、釘打機1を軽量化することができる。
【0056】
特に、本実施形態の釘打機1のように蓄圧室7のガス圧(ガススプリング)でドライバー・アッセンブリ9を付勢する場合、蓄圧室7からのガス漏れがないので、例えば外部のコンプレッサーからの圧縮空気を駆動力とする場合等と比較して、エネルギーロスが小さい。したがって、蓄圧室7内の圧縮ガスの圧力の設定を、中空部23Bを備えないドライバー・アッセンブリにおける場合の設定から大きく変更しなくても、ドライバー・アッセンブリ9に十分な速度を確保し得ると考えられる。
【0057】
なお、ドライバー・アッセンブリ9に十分な速度が得られない場合には、駆動手段の駆動力を調整することにより、ドライバー・アッセンブリ9の速度を高めるようにすればよい。一方、ドライバー・アッセンブリ9の速度を低くする方が適当な場合には、逆に蓄圧室7内の圧縮ガスの圧力を小さくすればよい。本実施形態の釘打機1においては、蓄圧室7内の圧縮ガスの圧力を変更し、ガススプリングのバネ力を調整することにより、ドライバー・アッセンブリ9の速度を容易に調整することができる。
【0058】
このように、本実施形態の釘打機1によれば、中間部23に中空部23Bを有するドライバー8を備えたので、釘101の打ち込みに必要な打撃力を確保しつつ釘打機1の重量を軽量化することができる。したがって、釘打機1の重量に起因する使用者の負担を軽減することができる。これは、特に、電動モータやバッテリーを内蔵して、その分重量が重くなった釘打機1において有効である。
【0059】
また、釘打機1の使用時に、釘101の打ち込みのために動作する部分であるドライバー・アッセンブリ9の重量が小さくなった分、使用者に作用する反動を小さくすることができ、この点でも使用者の負担を低減することができる。
【0060】
また、ドライバー8は、基端部21、先端部22、中間部23の3つの独立した別部材を組み合わせて構成されるので、各部材の製造(例えば、中間部23における貫通穴23Aの加工)は容易に行うことができる。また、基端部21、先端部22、中間部23は、互いに溶接又はロウ付けにより十分な接合強度で接合されるので、ドライバー8は、全体として十分な機械的強度を有し、打撃部材(槌部材)として適切に機能する。
【0061】
なお、本実施形態では、中空部23Bを空洞のままとしているが、必要に応じて、中空部23Bに中間部23を構成する材料よりも軽い材料(例えば樹脂)を充填する構成を採用することもできる。これにより、中間部23を、全体を同一材料からなる中実部材とした場合よりも軽量化しつつ、空洞のままである場合よりも、機械的強度を高めることができる。
【0062】
また、
図4から
図6に示すように、中空部23B内に、中間部23の機械的強度(耐衝撃性、圧縮強度、靭性等、潰れたり曲がったりしないための強度)を向上させるための補強構造を備えることも可能である。このような補強構造を設けることにより、中間部23の重量を、中空部23Bが存在しない中実の場合よりも軽量化しつつ、中間部23の機械的強度を十分に高めることができる。
【0063】
図4には、このような補強構造として、中空部23B内に配置される補強用管状部材31を備え、二重管構造とした実施形態を示す。図示されるように、補強用管状部材31には、円筒形状の管を中心軸側に押し潰した複数(本実施形態では5個)の凹部31Aが形成されており、これらの屈曲部31Aの間に、複数(本実施形態では5個)の略同一形状(管の肉厚を重ね合わせた形状)の凸部31Bが形成されている。このような構成により、補強用管状部材31は、複数の凸部31Bの先端部において貫通穴23Aの内周面に当接し、中間部23を内側から支持する。これにより、中間部23の機械的強度が補強されるようになっている。
【0064】
なお、複数の凸部31Bは、管の周方向に等間隔で(対称形で均等に)形成されている。これにより、中間部23は、補強用管状部材31により、周方向に偏りなく、全体が堅固に支えられるようになっている。
【0065】
図5には、補強構造として、貫通穴23Aの内周面に、中間部23の軸方向(長手方向)に延びる複数の突起部(本実施形態ではリブ32)を形成して、中間部23を異形管とした実施形態を示す。リブ32は、例えば略三角形断面の山形形状を有しており、貫通穴23Aの周方向全体に均等に配置されている。これら多数のリブ32により、中間部23の剛性が高められる。このように、補強構造としてリブ構造(多数のリブ32)を採用することにより、新たな補強用の部材を追加することなく、中間部23の機械的強度を補強することができる。
【0066】
図6には、補強構造として、中空部23B内に配置されるハニカム構造33を備えた実施形態を示す。ハニカム構造33は、中間部23と同心の複数の円筒形シート部材33Aと、円筒形シート部材33Aの間に配置された波状シート部材33Bから構成されている。複数の円筒形シート部材33Aは、互いに異なる内径を有し、同心円状に入れ子状態に配置されている。波状シート部材33Bは、隣接する円筒形シート部材33Aに対して、波の上端と下端をそれぞれ接触させた状態で配置されている。
【0067】
このように、補強構造としてハニカム構造33を採用することにより、中間部23の周方向全体をバランスよく堅固に補強することができる。また、ハニカム構造33を構成する円筒形シート部材33A及び波状シート部材33Bは軽量にできるので、ハニカム構造33を設けたことによるドライバー8の重量増加は、最小限に抑えることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、上記実施形態の内容に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ガスシリンダ式の釘打機1を例にとって説明してきたが、本発明の適用範囲は、このような形態に限られない。本発明は、釘打機本体とは独立したコンプレッサーからの空気圧でドライバーを駆動するタイプの釘打機や、釘方向に向けた駆動を含めてドライバーの駆動を全て電動モータで行うタイプの釘打機にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、建築作業等に用いられる釘打機に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 釘打機
2 本体ケース
3 ハンドル
3A トリガースイッチ
4 シリンダ
5 ピストン
5A リング溝
5B 嵌合穴
6 シールリング
7 蓄圧室
8 ドライバー
9 ドライバー・アッセンブリ
10 案内部材
10A 案内ノーズ
10B 案内通路
10B 案内ノーズの先端部
11 針マガジン
12 ダンパー
13 駆動ユニット
21 ドライバーの基端部
21A 嵌合部
22 ドライバーの先端部
23 ドライバーの中間部
23A 貫通穴
23B 中空部
31 補強用管状部材
31A 凹部
31B 凸部
32 リブ
33 ハニカム構造
33A 円筒形シート部材
33B 波状シート部材
101 釘
102 対象物