(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025455
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】動作条件提示装置及び動作条件提示方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20240216BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240216BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240216BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20240216BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20240216BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240216BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240216BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/367
G01R31/389
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128917
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】門田 行生
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA51
2G216BA61
5H030AS20
5H030FF22
5H030FF27
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】 蓄電池システムの総コストを最低にする動作条件を提示する動作条件提示装置を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る動作条件提示装置1は、複数の動作条件のそれぞれにおける蓄電池の劣化率を用いて、蓄電池の使用期間を演算する寿命演算部2と、複数の使用期間と、蓄電池の運用コストとを用いて、蓄電池が搭載される機器の運用期間において必要な蓄電池に関する総コストを、複数の動作条件の各々について演算するコスト演算部3と、複数の総コストを比較して、総コストが最低となる動作条件を選択する条件選択部4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動作条件のそれぞれにおける蓄電池の劣化率を用いて、前記蓄電池の使用期間を演算する寿命演算部と、
複数の前記使用期間と、前記蓄電池の費用とを用いて、前記蓄電池が搭載される機器の運用期間において必要な前記蓄電池に関する総コストを、複数の前記動作条件の各々について演算するコスト演算部と、
複数の前記総コストを比較して、前記総コストが最低となる前記動作条件を選択する条件選択部と、
を備えた動作条件提示装置。
【請求項2】
前記寿命演算部は、前記動作条件に対して前記蓄電池の使用可能容量値と内部抵抗値との少なくとも一方を出力する蓄電池モデルを用いて前記劣化率を演算し、前記蓄電池の使用開始から前記劣化率が所定の条件を満たす時点までの期間を前記使用期間とする、
請求項1記載の動作条件提示装置。
【請求項3】
前記劣化率は、前記蓄電池の容量劣化率若しくは内部抵抗劣化率の少なくとも一方を含み、
前記寿命演算部は、前記蓄電池の使用開始から前記容量劣化率が第1閾値以下になる時点までの期間若しくは、前記内部抵抗劣化率が第2閾値以上になる時点までの期間の少なくとも一方を前記使用期間とする、
請求項2記載の動作条件提示装置。
【請求項4】
前記動作条件は、前記蓄電池を使用するSOC範囲と、前記蓄電池の初期電池容量と、を含む
請求項3記載の動作条件提示装置。
【請求項5】
前記動作条件は、前記蓄電池を使用するSOC範囲を含み、
前記寿命演算部は、初期電池容量が同一である複数の前記蓄電池について、異なるSOC範囲で使用したときの前記劣化率を演算する、
請求項3記載の動作条件提示装置。
【請求項6】
前記寿命演算部は、
充放電電流値と環境温度と劣化特性と前記動作条件とを前記蓄電池モデルに入力し、
前記蓄電池モデルから得られる内部抵抗値若しくは使用可能容量値の少なくとも一方の値の変化から前記劣化率の傾きを算出する、
請求項4又は5記載の動作条件提示装置。
【請求項7】
前記寿命演算部は、前記動作条件が更新された場合、更新された前記動作条件における前記蓄電池の前記劣化率を用いて、前記蓄電池の前記使用期間を演算する、
請求項1記載の動作条件提示装置。
【請求項8】
複数の動作条件のそれぞれにおける蓄電池の劣化率を用いて、前記蓄電池の使用期間を演算し、
複数の前記使用期間と、前記蓄電池の運用コストとを用いて、前記蓄電池が搭載される機器の運用期間において必要な前記蓄電池に関する総コストを、複数の前記動作条件の各々について演算し、
複数の前記総コストを比較して、前記総コストが最低となる前記動作条件を選択する、
動作条件提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、動作条件提示装置及び動作条件提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池システムに搭載される蓄電池の寿命は、その動作条件に応じて変化することが知られている。蓄電池システムに搭載された蓄電池の寿命が短いと、蓄電池システムの運用期間における総コストが増加するため、蓄電池の適切な動作条件を選択することが望ましい。
【0003】
蓄電池の寿命は、SOC範囲や初期の蓄電池容量に応じて決まり、運用期間に応じて蓄電池システム全体にかかるコストが決まる。蓄電池システムの動作条件を予め設定することにより、当該蓄電池システムの運用コストを低く抑えることができる。
【0004】
従来、蓄電池システムの運用コストを最適化するために、複数の蓄電池の価格情報や蓄電池の寿命を算出し、当該複数の蓄電池への電流配分を決定するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、上記事情を鑑みて成されたものであって、蓄電池システムにおいて、蓄電池に関する総コストを最低にする動作条件を提示する動作条件提示装置及び動作条件提示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る動作条件提示装置は、複数の動作条件のそれぞれにおける蓄電池の劣化率を用いて、前記蓄電池の使用期間を演算する寿命演算部と、複数の前記使用期間と、前記蓄電池の運用コストとを用いて、前記蓄電池が搭載される機器の運用期間において必要な前記蓄電池に関する総コストを、複数の前記動作条件の各々について演算するコスト演算部と、複数の前記総コストを比較して、前記総コストが最低となる前記動作条件を選択する条件選択部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る動作条件提示装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る動作条件提示装置の動作条件提示処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る動作条件提示装置における動作条件が異なる複数の蓄電池の総コストのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る動作条件提示装置の動作条件提示処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る動作条件提示装置における動作条件が異なる複数の蓄電池の総コストのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る動作条件提示装置について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる図面において、各部の縮尺は適宜変更されている。また、以下の実施形態の説明に用いる図面において、説明のために、構成を適宜省略している場合がある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る動作条件提示装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の動作条件提示装置1は、蓄電池システムの運用期間において最低コストとなる動作条件を提示する装置である。
【0011】
本実施形態に係る動作条件提示装置1は、種々の蓄電池のそれぞれについて構築された蓄電池モデルを用いて、蓄電池システム(蓄電池が搭載された機器)の運用期間おいて最もコストが低くなる動作条件を提示する。しかし、これに限らず、例えば、実際の蓄電池を用いて上記処理を行うことも可能である。
【0012】
なお、蓄電池モデルは、外部からの入力値に応じて、蓄電池の電池容量(使用可能容量)と内部抵抗との少なくとも一方の値を出力する、テーブルや数式等である。蓄電池モデルは、例えば、予め測定された蓄電池の特性値を用いて作成することができる。
【0013】
動作条件提示装置1は、汎用コンピュータが備える構成を有していてもよい。例えば、動作条件提示装置1は、外部からの情報を受信し、外部に情報を送信する通信部と、蓄電池からの情報を記憶する記憶部と、を備える。通信部は、蓄電池から充放電電流値と環境温度を受信する。動作条件提示装置1は、使用者等が情報を入力する入力部と、使用者等に情報を出力する出力部と、を更に備えていてもよい。
【0014】
動作条件提示装置1は、寿命演算部2と、コスト演算部3と、条件選択部4と、バス通信線BLを備えている。
寿命演算部2とコスト演算部3とは、バス通信線BLを介して互いに接続されている。寿命演算部2とコスト演算部3とは、無線通信により互いに通信可能に構成されてもよい。
【0015】
また、コスト演算部3と条件選択部4とは、バス通信線BLを介して互いに接続されている。コスト演算部3と条件選択部4とは、無線通信により互いに通信可能に構成されてもよい。
【0016】
寿命演算部2は、予め用意された蓄電池モデルを備えている。寿命演算部2は、少なくとも1種類の蓄電池の蓄電池モデルを備えていればよい。寿命演算部2は、蓄電池モデルに、充放電電流値、SOC範囲、環境温度、初期電池容量(電池セル容量、並列数)及び劣化特性を入力し、蓄電池モデルから蓄電池の使用可能容量値と内部抵抗値との少なくとも一方を取得する。蓄電池の劣化特性は、蓄電池の動作条件に応じて変化する使用可能電池容量と内部抵抗との特性である。なお、本実施形態における動作条件は、SOC範囲と初期電池容量とを含む。
【0017】
寿命演算部2は、取得した使用可能容量値と内部抵抗値との変化量から蓄電池の劣化率(容量劣化率若しくは内部抵抗劣化率の少なくとも一方)を算出し、当該蓄電池の劣化率を用いて蓄電池の使用期間を演算する。寿命演算部2は、蓄電池の動作条件であるSOC範囲と初期電池容量とを変更し、複数の動作条件について蓄電池の劣化率を算出し、複数の動作条件のそれぞれにおける蓄電池の使用期間を演算する。寿命演算部2は、演算した使用期間をコスト演算部3へ出力する。
【0018】
蓄電池の劣化率としては、例えば、蓄電池の容量が減少する容量劣化率や蓄電池の内部抵抗が増加する内部抵抗劣化率を用いることができる。
蓄電池の容量劣化率は、蓄電池の使用開始時点において100%であって蓄電池の劣化が進むと小さくなる値であるものとし、蓄電池の初期電池容量に対する使用可能容量の割合を算出した値であってもよい。
【0019】
蓄電池の内部抵抗劣化率は、蓄電池の使用開始時点において0%であって蓄電池の劣化が進むと大きくなる値であるものとし、蓄電池の内部抵抗に対する初期の内部抵抗の割合を算出した値であってもよい。
また、容量劣化率や内部抵抗劣化率を組み合わせて算出された値であってもよい。
【0020】
なお、蓄電池の使用期間とは、蓄電池の使用開始(容量劣化率100%若しくは内部抵抗劣化率0%の少なくとも一方)から、蓄電池の劣化率が予め決められた条件を満たす時点までの期間をいい、ここで用いる条件は、予め蓄電池システムの設計者等により決定される。
【0021】
コスト演算部3には、蓄電池の使用期間、蓄電池システムの運用期間及びコスト(蓄電池費用)が入力される。蓄電池費用は、蓄電池の価格、蓄電池の交換に要する費用を含み、その他の蓄電池のメンテナンス費用を含んでいてもよい。
【0022】
コスト演算部3は、寿命演算部2が出力した複数の使用期間を取得し、入力された蓄電池費用と当該使用期間とを用いて、蓄電池システムの運用期間において必要な蓄電池に関する総コストを演算する。
【0023】
蓄電池に関する総コストは、例えば、蓄電池システムの運用期間が蓄電池の使用期間で割り切れる場合、(蓄電池システムの運用期間/蓄電池の使用期間)×蓄電池費用により算出することができ、蓄電池システムの運用期間が蓄電池の使用期間で割り切れない場合、((蓄電池システムの運用期間/蓄電池の使用期間)+1)×蓄電池費用により算出することができる。コスト演算部3は、複数の使用期間に紐づく複数の動作条件においてそれぞれ蓄電池に関する総コストを演算する。
【0024】
条件選択部4は、複数の動作条件に基づいて演算した複数の総コストを比較して、総コストが最低となる動作条件を少なくとも選択し、出力する。なお、条件選択部4は、総コストに基づいて複数の動作条件を選択して出力してもよい。
【0025】
以下、第1実施形態の動作条件提示装置1により、複数の動作条件の中から蓄電池にかかる総コストが最も小さくなる動作条件を選択する手順の一例について説明する。なお、以下の動作の説明における処理の内容は一例であって、同様の効果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
【0026】
図2は、第1実施形態に係る動作条件提示装置の動作条件提示処理の一例について説明するためのフローチャートである。
動作条件提示装置1は、蓄電池のSOC範囲と初期電池容量とを組み合わせた動作条件のパラメータリストを設定する(ステップS1)。パラメータリストは、例えばユーザにより入力された値に基づき、SOC範囲と初期電池容量と番号とを関連付けて設定される。パラメータリストの番号をn(nは自然数)とし、個数の最大値をn_maxとする。
【0027】
ステップS1において、動作条件提示装置1は、パラメータリストに含まれるSOC範囲SOC(n)を設定する。例えば、SOC範囲は、パラメータ番号がn=1のとき、SOC(1)=0-100、n=2のとき、SOC(2)=20-100等となる。
【0028】
また、ステップS1において、動作条件提示装置1は、蓄電池の初期電池容量CAP(n)を設定する。例えば、電池容量は、パラメータ番号がn=1のとき、CAP(1)=20、n=2のとき、CAP(2)=25等となる。
【0029】
次に、動作条件提示装置1は、ステップS1で設定したパラメータリストを参照し、n=1におけるSOC範囲を設定する(ステップS2)。同様に、動作条件提示装置1は、ステップS2で設定したパラメータリストを参照し、n=1における初期電池容量を設定する(ステップS3)。
【0030】
寿命演算部2は、ステップS2とステップS3で設定した動作条件を取得する。また、寿命演算部2は、充放電電流値と環境温度と劣化特性と動作条件と蓄電池モデルとを用いて使用期間を演算する(ステップS4)。
【0031】
寿命演算部2は、充放電電流値と環境温度と劣化特性と動作条件とを蓄電池モデルに入力し、内部抵抗値若しくは電池容量値の少なくとも一方の値の変化から劣化率の傾きを算出し、劣化率が予め設定された条件を満たす時点までの期間を算出する。
【0032】
具体的には、劣化率が容量劣化率である場合、寿命演算部2は、容量劣化率が予め設定された第1閾値以下になる時点までの期間を算出する。劣化率が内部抵抗劣化率である場合、寿命演算部2は、内部抵抗劣化率が予め設定された第2閾値以上になる時点までの期間を算出する。
【0033】
また、劣化率が容量劣化率及び内部抵抗劣化率である場合、寿命演算部2は、容量劣化率が第1閾値以下になる時点若しくは内部抵抗劣化率が第2閾値以上になる時点のより早く条件を満たした時点までの期間を算出する。なお、寿命演算部2は、容量劣化率が第1閾値以下になり且つ、内部抵抗劣化率が第2閾値以上となる時点までの期間を算出してもよい。
【0034】
なお、蓄電池の充放電電流、環境温度および劣化特性は、ユーザにより入力された値であり、蓄電池モデルは寿命演算部2に予め設定されているものとする。寿命演算部2は、蓄電池の運用開始時点から、算出時間までの期間を蓄電池の使用期間(寿命)としてコスト演算部3に出力する。
【0035】
コスト演算部3は、寿命演算部2が出力した蓄電池の使用期間を取得する。また、コスト演算部3は、蓄電池が搭載されている機器(蓄電池システム)を使用する使用者等により入力される運用期間と、当該蓄電池費用とを取得する。コスト演算部3は、取得した上記情報から蓄電池システムの運用期間中に必要な総コストCostを演算する(ステップS5)。
【0036】
具体的には、コスト演算部3は、蓄電池システムの運用期間中に、当該蓄電池を何回交換する必要があるかを使用期間から算出し、初期購入時を含む交換回数に蓄電池費用を乗算することにより、総コストCostを演算し、条件選択部4に出力する。
【0037】
条件選択部4は、予め設定された総コストの最低値Cost_minと上記コスト演算部3が出力した総コストCostを比較し、比較結果に応じた処理をする(ステップS6)。ステップS6において、比較結果が総コストの最低値Cost_minよりも総コストCostの方が小さい場合(ステップS6、YES)、条件選択部4は、総コストの最低値Cost_minを上記総コストCostに更新する(ステップS7)。
【0038】
条件選択部4は、総コストCostに対する動作条件のパラメータ番号nを総コストの最低値Cost_minのパラメータ番号iとして設定する(ステップS8)。
【0039】
一方で、ステップS6において、総コストCostが総コストの最低値Cost_min以上の場合(ステップS6、NO)、条件選択部4は、ステップS7とステップS8の処理をスキップし、ステップS9の処理に遷移する。
【0040】
条件選択部4は、現在のパラメータ番号nが、パラメータ番号の最大値n_maxであるか判定する(ステップS9)。条件選択部4は、現在のパラメータ番号nが、パラメータ番号の最大値n_max以下であると判定すると(ステップS9、NO)ステップS10の処理に遷移する。
【0041】
条件選択部4は、現在のパラメータ番号nの値を1増やし、パラメータ番号を更新する(ステップS10)。条件選択部4は、ステップS10で更新したパラメータ番号n+1をSOC範囲に適用し、SOC範囲(SOC(n+1))の値を、パラメータリストを参照し更新し、寿命演算部2に出力する(ステップS11)。
【0042】
条件選択部4は、上記と同様にパラメータ番号n+1を初期電池容量に適用し、初期電池容量(CAP(n+1))の値を、パラメータリストを参照し更新し、寿命演算部2に出力する(ステップS12)。
【0043】
動作条件提示装置1の動作条件提示処理は、パラメータリストのパラメータ番号nが予め設定されたパラメータ番号の最大値n_maxになるまで、ステップS4からステップS12の処理を繰り返す。
【0044】
条件選択部4は、現在のパラメータ番号nが、パラメータ番号の最大値n_maxと同一であると判定すると(ステップS9、YES)ステップS13の処理に遷移する。
【0045】
条件選択部4は、コスト演算部3が出力した総コストの最低値Cost_minとステップS8で設定したパラメータ番号nに対応する動作条件SOC(n)とCAP(n)の値を選択し、外部モニタ等に出力する(ステップS13)。
【0046】
図3は、第1実施形態に係る動作条件提示装置における動作条件が異なる複数の蓄電池の総コストのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図3において、線A1は、動作条件1(SOC範囲:0-100[%]、初期電池容量:X×1[Ah])を適用した蓄電池モデルの容量劣化率を示し、線A2は、動作条件1を適用した蓄電池モデルの総コストを示す。線B1は、動作条件2(SOC範囲:20-100[%]、初期電池容量:X×1.25[Ah])を適用した蓄電池モデルの容量劣化率を示し、線B2は、動作条件2を適用した蓄電池モデルの総コストを示す。
【0047】
線A1と線B1とを比較すると、線A1の方が線B1よりも早く容量劣化率の下限に達することから、動作条件1により蓄電池を使用したときには、動作条件2により蓄電池を使用したときよりも蓄電池の使用期間が短いことがわかる。また、線A2と線B2とを比較すると、運用期間終了時において、線A2(動作条件1)の方が線B2(動作条件2)よりも総コストが高いことがわかる。
【0048】
以上のことから、蓄電池システムの運用期間終了時点においては、動作条件1よりも動作条件2の方が蓄電池の交換頻度が少なく、動作条件2の方が、蓄電池費用が高くても、総コストは、動作条件2の方が低く抑えられる。
【0049】
本実施形態の動作条件提示装置1によれば、蓄電池の使用期間と蓄電池の総コストとを複数の動作条件で演算し、最低総コストとなる動作条件を選択可能になり、蓄電池を搭載する機器等のシステム構築前にシミュレーションによって、予め最適なSOC範囲及び蓄電池の電池容量を知ることが可能になる。
【0050】
上記のように、本実施形態の動作条件提示装置及び動作条件提示方法によれば、蓄電池システムにおいて、蓄電池に関する総コストを最低にする動作条件を提示することができる。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態の動作条件提示装置1の基本構成は、第1実施形態の
図1に示す動作条件提示装置1と同様であるので説明を省略する。
以下、第2実施形態の動作条件提示装置1により、複数の動作条件の中から蓄電池にかかる総コストが最も小さくなる動作条件を選択する手順の一例について説明する。なお、以下の動作の説明における処理の内容は一例であって、同様の効果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。なお、本実施形態における動作条件は、SOC範囲であり、蓄電池の初期電池容量は、すべて同一であるとする。
【0052】
図3は、第2実施形態に係る動作条件提示装置の動作条件提示処理の一例について説明するためのフローチャートである。
動作条件提示装置1は、蓄電池のSOC範囲を動作条件としてパラメータリストに設定する(ステップS14)。パラメータリストは、例えばユーザにより入力された値に基づき、SOC範囲と番号とを関連付けて設定される。パラメータリストの番号をn(nは自然数)とし、個数の最大値をn_maxとする。
【0053】
ステップS14において、動作条件提示装置1は、パラメータリストに含まれるSOC範囲SOC(n)を設定する。例えば、SOC範囲は、パラメータ番号がn=1のとき、SOC(1)=0-100、n=2のとき、SOC(2)=20-100等となる。
【0054】
次に、動作条件提示装置1は、ステップS1で設定したパラメータリストを参照し、n=1におけるSOC範囲を設定する(ステップS15)。動作条件提示装置1は、初期電池容量CAPを設定する(ステップS16)。なお、初期電池容量CAPは、運用期間において、基本的に更新されないものとする。
【0055】
寿命演算部2は、ステップS15で設定した動作条件を取得する。また、寿命演算部2は、充放電電流値と環境温度と劣化特性と動作条件と蓄電池モデルとを用いて使用期間を演算する(ステップS17)。
【0056】
寿命演算部2は、充放電電流値と環境温度と劣化特性と動作条件とを蓄電池モデルに入力し、内部抵抗値若しくは電池容量値の少なくとも一方の値の変化から劣化率の傾きを算出し、劣化率が予め設定された条件を満たす時点までの期間を算出する。
【0057】
具体的には、劣化率が容量劣化率である場合、寿命演算部2は、容量劣化率が予め設定された第1閾値以下になる時点までの期間を算出する。劣化率が内部抵抗劣化率である場合、寿命演算部2は、内部抵抗劣化率が予め設定された第2閾値以上になる時点までの期間を算出する。
【0058】
また、劣化率が容量劣化率及び内部抵抗劣化率である場合、寿命演算部2は、容量劣化率が第1閾値以下になる時点若しくは内部抵抗劣化率が第2閾値以上になる時点のより早く条件を満たした時点までの期間を算出する。なお、寿命演算部2は、容量劣化率が第1閾値以下になり且つ、内部抵抗劣化率が第2閾値以上となる時点までの期間を算出してもよい。
【0059】
なお、蓄電池の充放電電流、環境温度および劣化特性は、ユーザにより入力された値であり、蓄電池モデルは寿命演算部2に予め設定されているものとする。寿命演算部2は、蓄電池の運用開始時点から、算出時間までの期間を蓄電池の使用期間(寿命)としてコスト演算部3に出力する。
【0060】
コスト演算部3は、寿命演算部2が出力した蓄電池の使用期間を取得する。また、コスト演算部3は、蓄電池が搭載されている機器等(蓄電池システム)を使用する使用者等により入力される運用期間と、当該蓄電池費用とを取得する。コスト演算部3は、取得した上記情報から蓄電池システムの運用期間中に必要な総コストCostを演算する(ステップS18)。
【0061】
具体的には、コスト演算部3は、蓄電池システムの運用期間中に、当該蓄電池を何回交換する必要があるかを使用期間から算出し、初期購入時を含む交換回数に蓄電池費用を乗算することにより、総コストCostを演算し、条件選択部4に出力する。
【0062】
条件選択部4は、予め設定された総コストの最低値Cost_minと上記コスト演算部3が出力した総コストCostを比較し、比較結果に応じた処理をする(ステップS19)。ステップS19において、比較結果が総コストの最低値Cost_minよりも総コストCostの方が小さい場合(ステップS19、YES)、条件選択部4は、総コストの最低値Cost_minを上記総コストCostに更新する(ステップS20)。
【0063】
条件選択部4は、総コストCostに対する動作条件のパラメータ番号nを総コストの最低値Cost_minのパラメータ番号iとして設定する(ステップS21)。
【0064】
一方で、ステップS19において、総コストCostが総コストの最低値Cost_min以上の場合(ステップS19、NO)、条件選択部4は、ステップS20とステップS21の処理をスキップし、ステップS22の処理に遷移する。
【0065】
条件選択部4は、現在のパラメータ番号nが、パラメータ番号の最大値n_maxであるか判定する(ステップS22)。条件選択部4は、現在のパラメータ番号nが、パラメータ番号の最大値n_max以下であると判定すると(ステップS22、NO)ステップS23の処理に遷移する。
【0066】
条件選択部4は、現在のパラメータ番号nの値を1増やし、パラメータ番号を更新する(ステップS23)。条件選択部4は、ステップS23で更新したパラメータ番号n+1をSOC範囲に適用し、SOC範囲(SOC(n+1))の値を、パラメータリストを参照し更新し、寿命演算部2に出力する(ステップS24)。
【0067】
動作条件提示装置1の動作条件提示処理は、パラメータリストのパラメータ番号nが予め設定されたパラメータ番号の最大値n_maxになるまで、ステップS17からステップS24の処理を繰り返す。
【0068】
条件選択部4は、現在のパラメータ番号nが、パラメータ番号の最大値n_maxと同一であると判定すると(ステップS22、YES)ステップS25の処理に遷移する。
条件選択部4は、コスト演算部3が出力した総コストの最低値Cost_minとステップS21で設定したパラメータ番号nに対応する動作条件SOC(n)の値を選択し、外部モニタ等に出力する(ステップS25)。
【0069】
図5は、第2実施形態に係る動作条件提示装置における動作条件が異なる複数の蓄電池の総コストのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図5において、線C1は、動作条件3(SOC範囲:20-100[%])を適用した蓄電池モデルの容量劣化率を示し、線C2は、動作条件3を適用した蓄電池モデルの総コストを示す。線D1は、動作条件4(SOC範囲:11-100[%])を適用した蓄電池モデルの容量劣化率を示し、線D2は、動作条件4を適用した蓄電池モデルの総コストを示す。
【0070】
線C1と線D1とを比較すると、線D1の方が線C1よりも早く容量劣化率の下限に達することから、動作条件4により蓄電池を使用したときには、動作条件3により蓄電池を使用したときよりも蓄電池の使用期間が短いことがわかる。一方で、線C2と線D2とを比較すると、運用期間終了時において、総コストは、線C2(動作条件3)と線D2(動作条件4)で同一である。
【0071】
以上のことから、蓄電池システムの運用期間終了時点においては、動作条件3と動作条件4の蓄電池の交換頻度は同一であり、総コストも同一になる。総コストが同一の場合、動作条件であるSOC範囲の最大値である動作条件4が選択される。
【0072】
本実施形態の動作条件提示装置1によれば、蓄電池の使用期間と蓄電池の総コストとを複数の動作条件で演算し、最低総コストとなる動作条件を選択可能になる。また、運用期間において、蓄電池の初期電池容量が同一であり、最低総コストも同一である場合であっても、動作条件であるSOC範囲の最大値を選択することで蓄電池システムを効率よく使用できる。
【0073】
上記のように、本実施形態の動作条件提示装置及び動作条件提示方法によれば、蓄電池システムにおいて、蓄電池に関する総コストを最低にする動作条件を提示することができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0075】
例えば、上述の実施形態の動作条件提示装置及び動作条件提示方法では、蓄電池システムの運用期間を固定して蓄電池に関する総コストが最低となる動作条件を提示したが、例えば、所定の動作条件における総コストが最低となる運用期間を提示するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…動作条件提示装置
2…寿命演算部
3…コスト演算部
4…条件選択部