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特開2024-25458搬送制御装置、搬送装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025458
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】搬送制御装置、搬送装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/16 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B65H19/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128921
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】落合 満樹
【テーマコード(参考)】
3F064
【Fターム(参考)】
3F064AA01
3F064AA03
3F064AA05
3F064AA06
3F064AA08
3F064BB05
3F064BB11
3F064BB15
3F064BB24
3F064BB35
(57)【要約】
【課題】挿継における被搬送物の切断に伴う外乱の悪影響を低減できる搬送制御装置等を提供する。
【解決手段】搬送制御装置30は、第1被搬送物21に第2被搬送物22を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物22と重複する当該第1被搬送物21を切断する切断部14を備える搬送装置10を制御する搬送制御装置30であって、第1被搬送物21を搬送する第1モータの第1駆動データを取得する駆動データ取得部31と、第1駆動データを入力として、切断部14による第1被搬送物21の切断に伴う外乱を推定する外乱推定部32と、外乱に基づいて、第2被搬送物22を搬送する第2モータの第2駆動データに関する指令を補正する指令補正部33と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被搬送物に第2被搬送物を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物と重複する当該第1被搬送物を切断する切断部を備える搬送装置を制御する搬送制御装置であって、
前記第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データから、前記第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定し、当該外乱を踏まえて前記第2被搬送物を搬送する第2モータを制御する搬送制御装置。
【請求項2】
前記第1駆動データを取得する駆動データ取得部と、
前記第1駆動データを入力として、前記切断部による前記第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定する外乱推定部と、
前記外乱に基づいて、前記第2被搬送物を搬送する第2モータの第2駆動データに関する指令を補正する指令補正部と、
を更に備える請求項1に記載の搬送制御装置。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記切断部による前記第1被搬送物の切断の前に、当該第1被搬送物および前記第2被搬送物を接触させる接触部を更に備え、
前記駆動データ取得部は、少なくとも、前記接触部による前記第1被搬送物および前記第2被搬送物の接触と、前記切断部による当該第1被搬送物の切断の間に前記第1駆動データを取得する、
請求項2に記載の搬送制御装置。
【請求項4】
前記指令補正部は、少なくとも、前記切断部による前記第1被搬送物の切断の後の前記第2駆動データに関する指令を補正する、請求項2または3に記載の搬送制御装置。
【請求項5】
前記第1駆動データは、前記第1モータのトルクおよび回転速度の少なくともいずれかの、測定値および指令値の少なくともいずれかを含む、請求項2または3に記載の搬送制御装置。
【請求項6】
前記第2駆動データは、前記第2モータのトルクおよび回転速度の少なくともいずれかを含む、請求項5に記載の搬送制御装置。
【請求項7】
前記第1被搬送物および前記第2被搬送物はシート状である、請求項1から3のいずれかに記載の搬送制御装置。
【請求項8】
第1被搬送物に第2被搬送物を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物と重複する当該第1被搬送物を切断する切断部を備える搬送装置であって、
前記第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データから、前記第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定し、当該外乱を踏まえて前記第2被搬送物を搬送する第2モータを制御する搬送制御装置を備える搬送装置。
【請求項9】
第1被搬送物に第2被搬送物を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物と重複する当該第1被搬送物を切断する切断部を備える搬送装置を制御する搬送制御方法であって、
前記第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データを取得する第1取得ステップと、
前記第1駆動データを入力として、前記切断部による前記第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定する外乱推定ステップと、
前記外乱に基づいて、前記第2被搬送物を搬送する第2モータの第2駆動データに関する指令を補正する指令補正ステップと、
を備える搬送制御方法。
【請求項10】
第1被搬送物に第2被搬送物を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物と重複する当該第1被搬送物を切断する切断部を備える搬送装置を制御する搬送制御プログラムであって、
前記第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データを取得する第1取得ステップと、
前記第1駆動データを入力として、前記切断部による前記第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定する外乱推定ステップと、
前記外乱に基づいて、前記第2被搬送物を搬送する第2モータの第2駆動データに関する指令を補正する指令補正ステップと、
をコンピュータに実行させる搬送制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被印刷物または被搬送物としての紙の搬送機構を含むオフセット印刷機が開示されている。このオフセット印刷機は、運転開始後の推定した外乱に基づいて、湿し水を適切に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-57879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷機や塗工機等の処理装置における被処理物または被搬送物の搬送装置では、「古い」被搬送物(以下では「第1被搬送物」とも表される)に対して「新しい」被搬送物(以下では「第2被搬送物」とも表される)を挿し継いで、処理装置をほとんど停止させることなく新旧の被搬送物を切り替える「挿継」(被搬送物が巻取紙等の紙の場合は特に「紙継」と表される)が行われることがある。挿継直後は第1被搬送物および第2被搬送物が重複するため、余分な第1被搬送物がカッター等の切断部によって切断される。このような切断時および/または切断前の第1被搬送物および第2被搬送物の接触時の衝撃等は、搬送装置を制御する搬送制御装置にとって外乱となり、特に挿継後の「新しい」第2被搬送物の搬送制御に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、挿継における被搬送物の切断に伴う外乱の悪影響を低減できる搬送制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の搬送制御装置は、第1被搬送物に第2被搬送物を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物と重複する当該第1被搬送物を切断する切断部を備える搬送装置を制御する搬送制御装置であって、第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データから、第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定し、当該外乱を踏まえて第2搬送物を搬送する第2モータを制御する。
【0007】
この態様では、「古い」第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データに基づいて、当該第1被搬送物の切断に伴う外乱が推定される。そして、この外乱に基づいて、「新しい」第2被搬送物を搬送する第2モータが制御されるため、挿継における(第1)被搬送物の切断に伴う外乱の悪影響を低減できる。
【0008】
本発明の別の態様は、搬送装置である。この装置は、第1被搬送物に第2被搬送物を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物と重複する当該第1被搬送物を切断する切断部を備える搬送装置であって、第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データから、第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定し、当該外乱を踏まえて第2被搬送物を搬送する第2モータを制御する搬送制御装置を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様は、搬送制御方法である。この方法は、第1被搬送物に第2被搬送物を挿し継いだ後に、当該第2被搬送物と重複する当該第1被搬送物を切断する切断部を備える搬送装置を制御する搬送制御方法であって、第1被搬送物を搬送する第1モータの第1駆動データを取得する第1取得ステップと、第1駆動データを入力として、切断部による第1被搬送物の切断に伴う外乱を推定する外乱推定ステップと、外乱に基づいて、第2被搬送物を搬送する第2モータの第2駆動データに関する指令を補正する指令補正ステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、挿継における被搬送物の切断に伴う外乱の悪影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】被搬送物を搬送する搬送装置と、それを制御する搬送制御装置の構成を模式的に示す。
図2】被搬送物を搬送する搬送装置と、それを制御する搬送制御装置の構成を模式的に示す。
図3】被搬送物を搬送する搬送装置と、それを制御する搬送制御装置の構成を模式的に示す。
図4】被搬送物を搬送する搬送装置と、それを制御する搬送制御装置の構成を模式的に示す。
図5】被搬送物を搬送する搬送装置と、それを制御する搬送制御装置の構成を模式的に示す。
図6】被搬送物を搬送する搬送装置と、それを制御する搬送制御装置の構成を模式的に示す。
図7】搬送制御装置の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態とも表す)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1図6は、被搬送物20を搬送する搬送装置10と、それを制御する搬送制御装置30の構成を模式的に示す。被搬送物20としては、紐やワイヤ等の線状のものや、紙、布、フィルム、箔、ゴム等の面状またはシート状のものが例示される。本実施形態では、シート状の基材を被搬送物20として搬送方向(図1において概ね左から右に向かう方向)に搬送するロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式の搬送装置10について説明する。搬送装置10は、搬送される被搬送物20に対して任意の処理を施す装置、例えば、被搬送物20にコーティング等の塗工処理を施すコータまたは塗工機、被搬送物20に印刷を施す印刷機、被搬送物20に張力を印加して延伸する延伸装置等の一部でもよい。本実施形態では搬送装置10が塗工機の一部であるものとする。
【0015】
搬送装置10は、旧軸21(第1巻出しローラ)から巻き出される第1被搬送物としての「古い」被搬送物20(以下では「第1被搬送物21」とも表される)や、新軸22(第2巻出しローラ)から巻き出される第2被搬送物としての「新しい」被搬送物20(以下では「第2被搬送物22」とも表される)を搬送方向に搬送する。旧軸21および新軸22の後段に設けられる張力制御部としてのダンサ11は、各軸21、22から巻き出された第1被搬送物21、第2被搬送物22を所望の張力に制御または維持する。図示は省略するが、ダンサ11の後段には、被搬送物20に塗工処理を施す塗工処理部や、塗工処理後の被搬送物20をロール状に巻き取る巻取りローラが設けられる。
【0016】
搬送装置10では、旧軸21からの第1被搬送物21に対して新軸22からの第2被搬送物22を挿し継いで、搬送装置10および塗工機をほとんど停止させることなく新旧の被搬送物21、22を切り替える挿継(被搬送物20が巻取紙等の紙の場合は紙継)が行われる。このような挿継を行うための機構として、搬送装置10は旋回部12および接触部13を備える。
【0017】
旋回部12は、例えば、支点121の周りに図1図6の紙面内を回転可能なターレットとして構成できる。ターレットの各端(図1における右端および左端)には、それぞれ旧軸21および新軸22が固定されている。図1の状態では、搬送装置10側(右側)にある旧軸21から第1被搬送物21が巻き出され、搬送装置10によって搬送方向(右方)に搬送されている。詳細については後述するが、支点121と対向する位置(図1における上方)に設けられるガイドローラ122も、旋回部12またはターレットと一体的に回転可能である。
【0018】
接触部13は、図4図5に関して後述するように、切断部14による第1被搬送物21の切断の前に、当該第1被搬送物21および第2被搬送物22を接触させる。接触部13は、被搬送物20および/または新軸22の方(図1における略上方)に駆動可能なアーム131と、当該アーム131が駆動された状態で図における時計回り方向に押圧可能または回転可能な押圧ローラ132を備える。図4図5に示されるように、押圧ローラ132は被搬送物20を新軸22に対して押圧する(換言すれば、押圧ローラ132は新軸22との間で被搬送物20を挟み込む)。
【0019】
図1図6は、旧軸21(第1被搬送物21)から新軸22(第2被搬送物22)への挿継の一連の流れを模式的に示す。図1の状態では、旧軸21から第1被搬送物21が巻き出されて搬送されているが、旧軸21の残量が所定値未満になったため新軸22への挿継が開始される。具体的には、図2に示されるように、旋回部12またはターレットが、支点121を中心として図における時計回り方向に回転駆動される。これに続く図3では、旧軸21が支点121より搬送装置10と反対側(左側)に移動し、その代わりに新軸22が支点121より搬送装置10側(右側)に移動している。この時、引き続き旧軸21から巻き出されている第1被搬送物21は、ターレットと一体的に回転移動したガイドローラ122によってガイドまたは中継されて搬送装置10に受け渡される。
【0020】
図4は、旋回部12またはターレットの旋回が完了した状態を示す。旋回前の図1と比較して、旧軸21と新軸22の位置が入れ替わっている。この時点では、引き続き旧軸21から第1被搬送物21が巻き出されているが、これに加えて新軸22からの第2被搬送物22の巻出しも開始されている。このように旧軸21および新軸22から同時に巻き出されている第1被搬送物21および第2被搬送物22の挿継または接着のために、接触部13のアーム131が被搬送物20(第1被搬送物21および第2被搬送物22の重複部分を含む)および/または新軸22の方に駆動され、更に押圧ローラ132が被搬送物20を新軸22に対して押圧する。新軸22上の第2被搬送物22の巻出し開始位置の近傍には接着テープ等の不図示の接着材が設けられているため、押圧ローラ132および新軸22に挟み込まれて押圧されることで、第1被搬送物21および第2被搬送物22が強固に接着される。このように、新軸22の第2被搬送物22が旧軸21の第1被搬送物21に挿し継がれる。
【0021】
続く図5では、挿継後の第2被搬送物22と重複する挿継前の第1被搬送物21が、カッター等の切断部14によって切断される。この結果、挿継完了後の図6では、搬送装置10側(右側)にある新軸22のみから第2被搬送物22が巻き出され、搬送装置10によって搬送方向(右方)に搬送される。なお、図4および図5の接着時および切断時には上方の接着位置または押圧位置にあった接触部13は、挿継完了後の図6では挿継開始前の図1と同様に下方の待避位置に戻されている。
【0022】
以上のような挿継処理において、図4における接触部13のアーム131や押圧ローラ132の被搬送物20および/または新軸22への接触時の衝撃等や、図5における切断部14による第1被搬送物21の切断時の衝撃等は、搬送装置10の搬送制御にとって外乱となり、特に挿継後の「新しい」第2被搬送物22の搬送制御に悪影響を及ぼす恐れがある。そこで、本実施形態では、挿継における第1被搬送物21の切断に伴う外乱の悪影響を低減できる搬送制御装置30を提供する。
【0023】
搬送制御装置30は、駆動データ取得部31と、外乱推定部32と、指令補正部33を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0024】
駆動データ取得部31は、第1被搬送物21を搬送する第1モータ(図1図6では不図示)の第1駆動データを取得する。第1モータは、旧軸21を図における反時計回り方向に回転駆動する。詳細については後述するが、駆動データ取得部31によって取得される第1駆動データは、第1モータおよび/または旧軸21のトルクおよび回転速度の少なくともいずれかの、測定値および指令値の少なくともいずれかを含む。
【0025】
外乱推定部32は、駆動データ取得部31によって取得された第1駆動データを入力として、切断部14(図5)による第1被搬送物21の切断に伴う外乱を推定する。ここで、第1被搬送物21の切断に伴う外乱とは、切断部14による切断時(図5)の衝撃等に限らず、当該切断に先立って接触部13が被搬送物20および/または新軸22に接触した際(図4)の衝撃等による外乱も含む。このように、外乱推定部32が切断部14による切断時および切断前の外乱を推定できるように、駆動データ取得部31は、少なくとも、図4における接触部13による第1被搬送物21および第2被搬送物22の接触(具体的には、押圧ローラ132と新軸22の間に挟み込まれることによる第1被搬送物21および第2被搬送物22の接触)と、図5における切断部14による第1被搬送物21の切断の間に、第1駆動データを連続的または間欠的に取得するのが好ましい。
【0026】
なお、図1図3において点線で示されているように、駆動データ取得部31および/または外乱推定部32は、図4における接触部13による第1被搬送物21および第2被搬送物22の接触の前は停止していてもよい。一方、図1図3の間も駆動データ取得部31および外乱推定部32を稼働させれば、例えば、旋回部12またはターレットの旋回または回転や、図3のようなガイドローラ122と第1被搬送物21との接触に伴う外乱も推定できる。これらの外乱も、切断部14による第1被搬送物21の切断あるいは挿継のために行われる動作に伴うものであるため、「切断部14による第1被搬送物21の切断に伴う外乱」に該当する。また、図6において点線で示されているように、駆動データ取得部31および/または外乱推定部32は、挿継完了後は停止していてもよい。
【0027】
外乱推定部32は、例えば、オブザーバまたは状態観測器によって構成される。このような外乱推定部32は、入力としての第1駆動データ(第1モータおよび/または旧軸21のトルクおよび回転速度の少なくともいずれかの測定値および指令値の少なくともいずれか)と、出力としての外乱推定結果を対応付ける数理モデルを備える。このような数理モデルは、人工知能による機械学習によって構築されたものでもよい。
【0028】
指令補正部33は、外乱推定部32によって推定された外乱(切断部14による第1被搬送物21の切断に伴う外乱)に基づいて、第2被搬送物22を搬送する第2モータ(図1図6では不図示)の第2駆動データに関する指令を補正する。第2モータは、新軸22を図における反時計回り方向に回転駆動する。詳細については後述するが、指令補正部33によって指令が補正される第2駆動データは、第2モータおよび/または新軸22のトルクおよび回転速度の少なくともいずれかを含む。
【0029】
図6において実線で示されているように、指令補正部33は、少なくとも、切断部14による第1被搬送物21の切断(図5)の後の第2駆動データに関する指令を補正する。好ましくは、図4および図5において実線で示されているように、指令補正部33は、新軸22の回転すなわち第2被搬送物22の巻出しが開始された後に、これらの駆動に直接的に寄与する第2駆動データに関する指令を補正する。一方、図1図3において点線で示されているように、指令補正部33は、新軸22の回転すなわち第2被搬送物22の巻出しが開始される前は停止していてもよい。
【0030】
図7は、搬送制御装置30の実施例を示す。本図における上側には旧軸21すなわち第1被搬送物21の第1制御系が模式的に示されており、本図における下側には新軸22すなわち第2被搬送物22の第2制御系が模式的に示されている。なお、図示の便宜上、第1制御系および第2制御系が異なる制御系として示されるが、同様の構成要素(例えば、名称が同一のもの)の全部または一部を共通化した包括的な一つの制御系として構成されてもよい。
【0031】
旧軸21は、減速機411を介して第1モータ41によって回転駆動される。第1モータ41の回転位置や回転速度は、ロータリエンコーダ等の回転検出器412によって検出される。同様に、新軸22は、減速機421を介して第2モータ42によって回転駆動される。第2モータ42の回転位置や回転速度は、ロータリエンコーダ等の回転検出器422によって検出される。
【0032】
第1モータ41の速度およびトルクを制御する第1制御系は、張力補正部511と、速度偏差演算部512と、速度制御部513と、電流制御部514を備える。張力補正部511には、第1モータ41の速度指令が入力され、ダンサ11によって検出された第1被搬送物21の張力に応じて補正される。速度偏差演算部512は、張力補正部511によって張力補正が施された速度指令から、回転検出器412によって測定された第1モータ41の回転速度を減算することで、第1モータ41の速度偏差(第1モータ41の回転速度の指令値と測定値の差)を演算する。速度制御部513は、速度偏差演算部512によって演算された第1モータ41の速度偏差に基づいて、第1モータ41のトルク指令を生成する。電流制御部514は、速度制御部513によって生成されたトルク指令から、不図示のトルクセンサ等によって測定された第1モータ41のトルクを減算することで、第1モータ41のトルク偏差(第1モータ41のトルクの指令値と測定値の差)を演算し、当該トルク偏差に基づいて第1モータ41に供給する電流を決定する。
【0033】
第2モータ42の速度およびトルクを制御する第2制御系は、第1制御系と同様に、張力補正部521と、速度偏差演算部522と、速度制御部523と、電流制御部524を備える。張力補正部521には、第2モータ42の速度指令が入力され、ダンサ11によって検出された第2被搬送物22の張力に応じて補正される。速度偏差演算部522は、張力補正部521によって張力補正が施された速度指令から、回転検出器422によって測定された第2モータ42の回転速度を減算することで、第2モータ42の速度偏差(第2モータ42の回転速度の指令値と測定値の差)を演算する。速度制御部523は、速度偏差演算部522によって演算された第2モータ42の速度偏差に基づいて、第2モータ42のトルク指令を生成する。電流制御部524は、速度制御部523によって生成されたトルク指令から、不図示のトルクセンサ等によって測定された第2モータ42のトルクを減算することで、第2モータ42のトルク偏差(第2モータ42のトルクの指令値と測定値の差)を演算し、当該トルク偏差に基づいて第2モータ42に供給する電流を決定する。
【0034】
第2モータ42の速度およびトルクを制御する第2制御系には、第1被搬送物21から第2被搬送物22への挿継に伴う外乱の悪影響を低減するために、外乱推定部32、指令補正部33、トルク引継部34が更に設けられてもよい。
【0035】
トルク引継部34は、図5において第1被搬送物21が切断部14によって切断される直前の旧軸21(第1モータ41)のトルクを、新軸22(第2モータ42)に引き継ぐために設けられる。具体的には、図7において第1制御系における電流制御部514で検知された切断直前の第1モータ41のトルクが、第2制御系におけるトルク引継部34に提供される。トルク引継部34は、電流制御部514から受け取った切断直前の第1モータ41のトルクを、切断直後または挿継直後の第2モータ42のトルク指令の初期値として採用してもよい。このように、切断直前または挿継直前の第1モータ41のトルクが、切断直後または挿継直後の第2モータ42のトルクに引き継がれるため、切断前後における急激なトルクの変動を防止できる。
【0036】
外乱推定部32は、前述のように、駆動データ取得部31によって取得された第1モータ41の第1駆動データを入力として、第1被搬送物21から第2被搬送物22への挿継に伴う外乱を推定する。図7の例では、第1モータ41の回転速度の測定値を第1駆動データとして取得する回転検出器412、第1モータ41の回転速度の指令値を第1駆動データとして取得する速度制御部513(張力補正部511および/または速度偏差演算部512でもよい)、第1モータ41のトルクの測定値を第1駆動データとして取得する不図示のトルクセンサ等、第1モータ41のトルクの指令値を第1駆動データとして取得する電流制御部514(速度制御部513でもよい)、の少なくともいずれかが駆動データ取得部31として機能し、外乱推定部32に各種の第1駆動データを提供する。
【0037】
このような第1モータ41の第1駆動データに加えてまたは代えて、外乱推定部32は、第2モータ42の第2駆動データを入力として、第1被搬送物21から第2被搬送物22への挿継に伴う外乱を推定してもよい。図4図5に示されるように、挿継動作における接触部13による接触や切断部14による切断に伴う外乱の影響は、旧軸21(第1モータ41)側だけでなく新軸22(第2モータ42)側にも現れる。そこで、第1モータ41の第1駆動データに加えて第2モータ42の第2駆動データも併せて考慮する外乱推定部32によれば、第1被搬送物21から第2被搬送物22への挿継に伴う外乱を更に高精度に推定しうる。なお、第2モータ42の第2駆動データを取得する駆動データ取得部としては、第2モータ42の回転速度の測定値を取得する回転検出器422、第2モータ42の回転速度の指令値を取得する速度制御部523、第2モータ42のトルクの測定値を取得する不図示のトルクセンサ等、第2モータ42のトルクの指令値を取得する電流制御部524が例示される。
【0038】
指令補正部33は、前述のように、外乱推定部32によって推定された挿継に伴う外乱に基づいて、第2モータ42の第2駆動データに関する指令を補正する。具体的には、指令補正部33は、速度制御部523によって生成された第2モータ42のトルク指令またはトルク引継部34によって第1モータ41から引き継がれたトルク指令の初期値を、外乱推定部32によって推定された挿継に伴う外乱に基づいて補正する。
【0039】
なお、図示は省略するが、外乱推定部32および指令補正部33の機能は、第2モータ42の第2制御系に限らず、第1モータ41の第1制御系に設けられてもよい。この場合の指令補正部33は、外乱推定部32が挿継前および/または挿継時に取得された第1モータ41の第1駆動データおよび/または第2モータ42の第2駆動データを入力として推定した外乱に基づいて、第1モータ41の第1駆動データに関する指令を補正する。図4図5に示されるように、新軸22の第2被搬送物22が搬送経路に乗った後も、切断部14によって切断されるまでの間は第1被搬送物21の搬送動作が継続されるため、第1制御系において外乱の悪影響を低減することで第1モータ41の回転動作を安定化するメリットがある。
【0040】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0041】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0042】
10 搬送装置、12 旋回部、13 接触部、14 切断部、21 第1被搬送物、22 第2被搬送物、30 搬送制御装置、31 駆動データ取得部、32 外乱推定部、33 指令補正部、34 トルク引継部、41 第1モータ、42 第2モータ。
図1
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図5
図6
図7