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特開2024-25459診断装置、モータ制御装置、診断方法、診断プログラム
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  • 特開-診断装置、モータ制御装置、診断方法、診断プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025459
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】診断装置、モータ制御装置、診断方法、診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20240216BHJP
【FI】
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128922
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 弘
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501BB08
5H501DD04
5H501JJ03
5H501JJ12
5H501LL07
5H501LL35
5H501LL52
(57)【要約】
【課題】非連続的な異常を適切に検知できる診断装置等を提供する。
【解決手段】診断装置30は、検出器21が検出した検出データを、当該検出器21と接続されたデータ取得部12が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得部311と、検出器21が検出した検出データを、データ取得部12が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得部312と、異常頻度と正常頻度の差が異常判定閾値より大きい場合に異常を判定する異常判定部32と、を備える。正常頻度取得部311および異常頻度取得部312は、データ取得部12が検出データを正常に取得できなかった場合に異常頻度を表す一方向に計数し、データ取得部12が検出データを正常に取得できた場合に正常頻度を表す一方向と逆の他方向に計数するカウンタ31によって構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器が検出した検出データを、当該検出器と接続されたデータ取得部が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得部と、
前記検出器が検出した検出データを、前記データ取得部が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得部と、
前記異常頻度と前記正常頻度に基づいて異常を判定する異常判定部と、
を備える診断装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記異常頻度と前記正常頻度の差が異常判定閾値より大きい場合に異常を判定する、請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記正常頻度取得部および前記異常頻度取得部は、前記データ取得部が前記検出データを正常に取得できなかった場合に前記異常頻度を表す一方向に計数し、前記データ取得部が前記検出データを正常に取得できた場合に前記正常頻度を表す前記一方向と逆の他方向に計数するカウンタによって構成され、
前記異常判定部は、前記カウンタの計数値が前記異常判定閾値を前記一方向に超える場合に異常を判定する、
請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記カウンタは、前記一方向において計数値の一方の限界を有する、請求項3に記載の診断装置。
【請求項5】
前記カウンタは、前記他方向において計数値の他方の限界を有する、請求項3または4に記載の診断装置。
【請求項6】
前記検出器は、モータの回転位置を前記検出データとして検出する、請求項1から4のいずれかに記載の診断装置。
【請求項7】
モータを制御するモータ制御装置であって、
検出器と接続され、当該検出器が検出した検出データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記検出データに基づいて前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記検出器が検出した検出データを、前記データ取得部が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得部と、
前記検出器が検出した検出データを、前記データ取得部が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得部と、
前記異常頻度と前記正常頻度に基づいて異常を判定する異常判定部と、
を備えるモータ制御装置。
【請求項8】
検出器が検出した検出データを、当該検出器と接続されたデータ取得部が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得ステップと、
前記検出器が検出した検出データを、前記データ取得部が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得ステップと、
前記異常頻度と前記正常頻度に基づいて異常を判定する異常判定ステップと、
を備える診断方法。
【請求項9】
検出器が検出した検出データを、当該検出器と接続されたデータ取得部が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得ステップと、
前記検出器が検出した検出データを、前記データ取得部が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得ステップと、
前記異常頻度と前記正常頻度に基づいて異常を判定する異常判定ステップと、
をコンピュータに実行させる診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンコーダ等の位置検出器で検出されたモータの回転位置を取得するデータ取得部を備えるモータ駆動装置が開示されている。位置検出器とデータ取得部の間の通信異常を判定するために、一回(単発)の通信異常を判定するための単発用閾値と、複数回に亘って連続する通信異常を判定するための連続用閾値が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-278820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連続用閾値による判定では、通信異常が複数回に亘って連続する必要があるため、非連続的、断続的、間欠的に発生する通信異常等が見落とされる恐れがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、非連続的な異常を適切に検知できる診断装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の診断装置は、検出器が検出した検出データを、当該検出器と接続されたデータ取得部が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得部と、検出器が検出した検出データを、データ取得部が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得部と、異常頻度と正常頻度に基づいて異常を判定する異常判定部と、を備える。
【0007】
この態様では、データ取得部によって検出データが正常に取得されなかった異常頻度と、データ取得部によって検出データが正常に取得された正常頻度に基づいて異常が判定される。非連続的な異常も異常頻度として適切に考慮される。
【0008】
本発明の別の態様は、モータ制御装置である。この装置は、モータを制御するモータ制御装置であって、検出器と接続され、当該検出器が検出した検出データを取得するデータ取得部と、データ取得部が取得した検出データに基づいてモータを駆動するモータ駆動部と、検出器が検出した検出データを、データ取得部が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得部と、検出器が検出した検出データを、データ取得部が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得部と、異常頻度と正常頻度に基づいて異常を判定する異常判定部と、を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様は、診断方法である。この方法は、検出器が検出した検出データを、当該検出器と接続されたデータ取得部が正常に取得できた正常頻度を取得する正常頻度取得ステップと、検出器が検出した検出データを、データ取得部が正常に取得できなかった異常頻度を取得する異常頻度取得ステップと、異常頻度と正常頻度に基づいて異常を判定する異常判定ステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非連続的な異常を適切に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】モータ制御装置の構成を模式的に示す。
図2】カウンタおよび異常判定部による異常判定の例を示す。
図3】診断装置の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態とも表す)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る診断装置30を含んでもよいモータ制御装置10の構成を模式的に示す。モータ制御装置10は、回転動力を生成するモータ20の制御および/または駆動を担う。モータ20の不図示の固定子のコイル等は、モータ制御装置10におけるモータ駆動部11から印加される直流または交流の駆動電流に基づいて、回転磁界を発生させる。モータ20の不図示の回転子の永久磁石やコイル等は、固定子が発生させた回転磁界からの磁力を受ける。この結果、モータ20において、回転子が固定子に対して回転駆動され、回転動力が生成される。
【0015】
モータ20には、回転子の回転位置(回転角度)や回転速度を検出可能なロータリエンコーダやホール素子等の磁気センサ等の検出器21が併設されている。なお、モータ20はリニアモータとして構成されてもよい。この場合の検出器21は、モータ20の固定子(典型的には直線状の軌道を構成する)に対して直線移動可能な可動子の並進位置や並進速度を検出可能なリニアエンコーダ等として構成されてもよい。
【0016】
モータ制御装置10におけるデータ取得部12は、モータ20における検出器21と有線または無線によって通信可能に接続されている。データ取得部12は、検出器21が検出して送信したモータ20の駆動位置(回転子の回転位置やリニア可動子の並進位置)や駆動速度(回転子の回転速度やリニア可動子の並進速度)の検出データを受信する。データ取得部12によって正常に受信(取得)された検出器21の検出データは、モータ駆動部11に提供される。このため、モータ駆動部11は、検出器21によって検出されたモータ20の駆動位置や駆動速度に応じて、モータ20の回転子や可動子を所望の駆動状態に制御または維持するための適切な駆動電流をモータ20の固定子に印加できる。
【0017】
データ取得部12が検出器21の検出データを正常に受信するためには、検出器21が正常に動作しており、かつ、検出器21とデータ取得部12の間の通信が正常に行われる必要がある。以下で詳述する本実施形態に係る診断装置30によれば、検出器21の動作異常や、検出器21とデータ取得部12の間の通信異常(すなわち、検出器21とモータ制御装置10の間の通信異常)を効果的に検知できる。
【0018】
診断装置30は、カウンタ31と異常判定部32を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現されてもよい。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。なお、本実施形態の例では、診断装置30全体がモータ制御装置10に含まれているが、診断装置30の全部または一部の構成要素は、モータ制御装置10外に設けられてもよい。
【0019】
カウンタ31は、正常頻度取得部311および異常頻度取得部312を実現するための一つの実装例である。従って、以下で記述する正常頻度取得部311および異常頻度取得部312の機能の一部または全部が実現される限り、これらの実装態様がカウンタ31に限定されるものではない。
【0020】
正常頻度取得部311は、検出器21が検出したモータ20の検出データを、データ取得部12が正常に取得できた正常頻度を取得する。ここで、正常頻度とは、データ取得部12によるデータ取得(検出器21からのデータ受信)が少なくとも複数回含まれる任意の期間における、全データ取得回数に対する正常取得回数の割合と相関のある任意の形式の情報である。例えば、データ取得部12によるデータ取得が「100回」含まれる期間において、そのうち「75回」が正常取得であった場合、その割合「75%」自体が正常頻度として取得されてもよい。
【0021】
異常頻度取得部312は、検出器21が検出したモータ20の検出データを、データ取得部12が正常に取得できなかった異常頻度を取得する。ここで、異常頻度とは、前述の正常頻度取得部311が正常頻度を取得する期間と実質的に同等の期間(多少のずれがあってもよい)における、全データ取得回数に対する異常取得回数(あるいは正常取得失敗回数)の割合と相関のある任意の形式の情報である。例えば、データ取得部12によるデータ取得が「100回」含まれる期間において、そのうち「25回」が異常取得であった場合、その割合「25%」自体が異常頻度として取得されてもよい。
【0022】
正常頻度取得部311および異常頻度取得部312がカウンタ31によって実装される場合、データ取得部12が検出器21の検出データを正常に取得できなかった場合に異常頻度取得部312に関する異常頻度を表す一方向(以下では正方向とするが負方向でもよい)に計数(カウントアップ)され、データ取得部12が検出器21の検出データを正常に取得できた場合に正常頻度取得部311に関する正常頻度を表す一方向と逆の他方向(以下では負方向とするが正方向でもよい)に計数(カウントダウン)される。つまり、カウンタ31は、データ取得部12における異常取得の度に「+1」カウントアップし、データ取得部12における正常取得の度に「-1」カウントダウンする。なお、異常取得の際のカウントアップ量および正常取得の際のカウントダウン量は互いに異なっていてもよい。特に、異常取得の際のカウントアップ量を正常取得の際のカウントダウン量より大きくする(例えば、カウントアップ量を「+2」とし、カウントダウン量を「-1」とする)ことで、異常取得に対する「重み付け」が可能となり、後述する異常判定部32による異常判定感度を高められる。
【0023】
異常判定部32は、異常頻度取得部312によって取得された異常頻度と正常頻度取得部311によって取得された正常頻度の差が、所定の異常判定閾値より大きい場合に異常(検出器21の動作異常や、検出器21とデータ取得部12の間の通信異常)を判定する。例えば、異常頻度取得部312によって所定期間に亘って取得された異常頻度「60%」と、正常頻度取得部311によって所定期間に亘って取得された正常頻度「40%」の差「20%」が、所定の異常判定閾値「10%」より大きいことをもって異常判定部32は異常を判定する。なお、異常判定部32は、異常頻度が正常頻度より高い場合に限らず、異常頻度が正常頻度より低い場合にも異常を判定しうる。例えば、異常判定閾値が「-30%」として設定されている場合、異常頻度取得部312によって所定期間に亘って取得された異常頻度「40%」と、正常頻度取得部311によって所定期間に亘って取得された正常頻度「60%」の差「-20%」が、所定の異常判定閾値「-30%」より大きいことをもって異常判定部32は異常を判定する。
【0024】
正常頻度取得部311および異常頻度取得部312がカウンタ31によって実装される場合、異常判定部32は、カウンタ31の計数値が異常判定閾値を正方向(一方向)に超える場合に異常を判定する。カウンタ31の計数値に対する異常判定閾値は、正、零、負の任意の値でよいが、以下の例では「10」とする。また、カウンタ31は、異常判定閾値「10」より正方向(一方向)において計数値の上限(一方の限界)を有し、異常判定閾値「10」より負方向(他方向)において計数値の下限(他方の限界)を有する。
【0025】
計数値の上限は、異常判定閾値(10)より大きい任意の値でよいが、異常判定閾値の1.5倍(15)と3倍(30)の間とするのが好ましく、異常判定閾値の1.5倍(15)と2.5倍(25)の間とするのが更に好ましい。以下の例では、計数値の上限を異常判定閾値の2倍の「20」とする。計数値の下限は、異常判定閾値(10)より小さい任意の値(正/零/負)でよいが、以下の例では説明の簡素化のみを目的として「0」とする。
【0026】
このようにカウンタ31に上限「20」および下限「0」が設定される場合、カウンタ31の計数値は「0」と「20」の間に制限される。例えば、カウンタ31の計数値が下限の「0」である時に、通常であれば「-1」のカウントダウンを伴うデータ取得部12における正常取得が起こったとしても、カウンタ31はカウントダウンせず計数値が「0」に維持される。一方、この状態でデータ取得部12における異常取得が起こった場合、カウンタ31は通常通り「+1」カウントアップし計数値が「1」に更新される。同様に、カウンタ31の計数値が上限の「20」である時に、通常であれば「+1」のカウントアップを伴うデータ取得部12における異常取得が起こったとしても、カウンタ31はカウントアップせず計数値が「20」に維持される。一方、この状態でデータ取得部12における正常取得が起こった場合、カウンタ31は通常通り「-1」カウントダウンし計数値が「19」に更新される。
【0027】
図2は、カウンタ31および異常判定部32による異常判定の例を示す。図2Aは、データ取得部12における正常取得と異常取得を二値で模式的に示す。図2Bは、カウンタ31の計数値を模式的に示す。図2Aにおいて「正常」と示される正常取得が起こると図2Bにおけるカウンタ31の計数値が「-1」カウントダウンする(計数値が下限の「0」であった場合は「0」に維持される)。また、図2Aにおいて「異常」と示される異常取得が起こると図2Bにおけるカウンタ31の計数値が「+1」カウントアップする(計数値が不図示の上限の「20」であった場合は「20」に維持される)。
【0028】
図2Aの例では、左から右への時間の経過につれて、異常取得が正常取得に対して優勢になる。換言すれば、異常頻度取得部312によって取得される異常頻度が、正常頻度取得部311によって取得される正常頻度より高い状態が継続する。このように、検出器21の動作異常や検出器21とデータ取得部12の間の通信異常に起因する異常取得が優勢な状態が継続すると、図2Bに示されるようにカウンタ31の計数値が正方向に徐々に蓄積または累積していく結果、異常判定閾値「10」を正方向に超える(すなわち「11」以上になる)。これを受けた異常判定部32は、図2Bにおいて「異常判定」と示されている時点で異常を的確に判定できる。
【0029】
図2Bにおける点線は、特許文献1に開示されている連続用閾値を適用した場合の比較例である。連続用閾値は連続している異常取得のみを考慮するため、図2Aのように非連続的、断続的、間欠的に正常取得が起こると、カウンタ31が「0」に「リセット」されてしまう。このため、異常取得が優勢であるにも関わらず、カウンタ31の計数値が異常判定閾値の「10」を超えることができず、異常が見落とされる恐れがある。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る診断装置30によれば、データ取得部12によって検出データが正常に取得されなかった異常頻度と、データ取得部12によって検出データが正常に取得された正常頻度の差に基づいて異常を的確に判定できる。特許文献1では見落とされる恐れがあった非連続的な異常も、異常頻度取得部312によって取得される異常頻度として適切に考慮される。
【0031】
また、カウンタ31の計数値に「20」等の上限および/または「0」等の下限が設けられることで、データ取得部12における異常取得および/または正常取得の過剰な蓄積または累積が防止される。例えば、モータ制御装置10およびモータ20が正常に動作している場合は、カウンタ31の計数値のカウントダウンを伴う正常取得が極めて高い頻度で継続すると考えられる。このような場合にカウンタ31の計数値に「0」等の下限が設けられないと、計数値の絶対値が負方向に際限なく増大してしまう。また、この状態から異常取得が優勢に変わったとしても、カウンタ31の計数値が異常判定閾値の「10」までカウントアップするまでに膨大な時間を要する。そこで、「0」等の下限を設けることによって、正常動作時にはカウンタ31の計数値が「0」に張り付き、異常発生時には速やかに異常判定閾値の「10」までカウントアップできる。
【0032】
同様に、モータ制御装置10および/またはモータ20に異常が発生している場合は、カウンタ31の計数値のカウントアップを伴う異常取得が極めて高い頻度で継続すると考えられる。このような場合にカウンタ31の計数値に「20」等の上限が設けられないと、計数値の絶対値が正方向に際限なく増大してしまう。また、この状態から異常が解消されて正常取得が優勢に変わったとしても、カウンタ31の計数値が正常値(下限)の「0」までカウントダウンするまでに膨大な時間を要する。そこで、「20」等の上限を設けることによって、異常動作時にはカウンタ31の計数値が「20」に張り付き、異常解消時には速やかに正常値の「0」までカウントダウンできる。
【0033】
図3は、本実施形態に係る診断装置30の処理例を示すフローチャートである。フローチャートにおける「S」はステップまたは処理を表す。S1では、データ取得部12において異常取得が起こったか否かが判定される。S1で「Yes」と判定された場合はS2に進み、カウンタ31の計数値が上限(例えば「20」)であるか否かが判定される。S2で「No」と判定された場合はS3に進み、S1で判定された異常取得に応じてカウンタ31の計数値がカウントアップする。続くS4では、カウンタ31の計数値が異常判定閾値(例えば「10」)より大きいか否かが判定される。S4で「Yes」と判定された場合はS5に進み、S1で判定された異常取得によってカウンタ31の計数値が異常判定閾値を超えたとして、異常判定部32が異常を判定する。S4で「No」と判定された場合はS1に戻る。
【0034】
S2で「Yes」と判定された場合はS6に進み、カウンタ31はカウントアップせずに計数値が上限に維持される。その後はS1に戻る。S1で「No」と判定された場合はS7に進み、カウンタ31の計数値が下限(例えば「0」)であるか否かが判定される。S7で「No」と判定された場合はS8に進み、S1で判定された正常取得に応じてカウンタ31の計数値がカウントダウンする。その後はS1に戻る。S7で「Yes」と判定された場合はS6に進み、カウンタ31はカウントダウンせずに計数値が下限に維持される。その後はS1に戻る。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0036】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0037】
10 モータ制御装置、11 モータ駆動部、12 データ取得部、20 モータ、21 検出器、30 診断装置、31 カウンタ、32 異常判定部、311 正常頻度取得部、312 異常頻度取得部。
図1
図2
図3