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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025488
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240216BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240216BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L29/78 655C
H01L29/78 655F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655G
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/91 C
H01L29/91 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128976
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】三塚 要
(57)【要約】
【課題】半導体装置のサージ電圧を抑制する。
【解決手段】半導体基板の下面と、ドリフト領域との間に設けられ、半導体基板の深さ方向において3つ以上のドーピング濃度ピークを有する、ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型のバッファ領域を備え、3つ以上のドーピング濃度ピークは、半導体基板の下面から最も離れた最深ピークと、半導体基板の下面に2番目に近い第2ピークとを含み、深さ方向において、第2ピークのピーク幅は、最深ピークのピーク幅の2倍以上である半導体装置を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の前記下面と、前記ドリフト領域との間に設けられ、前記半導体基板の深さ方向において3つ以上のドーピング濃度ピークを有する、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型のバッファ領域と
を備え、
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面から最も離れた最深ピークと、前記半導体基板の前記下面に2番目に近い第2ピークとを含み、
前記深さ方向において、前記第2ピークのピーク幅は、前記最深ピークのピーク幅の2倍以上である
半導体装置。
【請求項2】
前記第2ピークは、前記深さ方向において複数のサブピークを含み、
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面からの距離が2番目に大きい第2深ピークを含み、
前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記第2深ピークおよび前記最深ピークの距離よりも小さい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2ピークは、前記深さ方向において複数のサブピークを含み、
前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記最深ピークの半値全幅の2倍以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2ピークの前記深さ方向におけるドーピング濃度の分布は複数の窪部を有し、それぞれの前記サブピークの間に1つの前記窪部が配置され、
少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度は、前記複数のサブピークの前記ドーピング濃度の最大値の0.1倍より大きい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1谷部を含み、
少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度が、前記第1谷部の前記ドーピング濃度よりも高い
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記上面に最も近い最深谷部を含み、
少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度が、前記最深谷部の前記ドーピング濃度の2倍以上である
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピーク、前記下面に2番目に近い第2サブピーク、および、前記下面に3番目に近く、前記第2サブピークよりも低濃度の第3サブピークを含み、
前記第1サブピークに対する前記第2サブピークのドーピング濃度の比率よりも、前記第2サブピークに対する前記第3サブピークの前記ドーピング濃度の比率のほうが大きい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピーク、前記下面に2番目に近い第2サブピーク、および、前記下面に3番目に近く、前記第2サブピークよりも低濃度の第3サブピークを含み、
前記第1サブピークおよび前記第2サブピークの前記深さ方向における距離よりも、前記第2サブピークおよび前記第3サブピークの前記深さ方向における距離のほうが大きい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークを含み、
前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピークを含み、
前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記第1ピークおよび前記第1サブピークの距離よりも小さい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2ピークにおける前記サブピークの個数は4つ以下である
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2ピークの前記深さ方向におけるドーピング濃度の分布は、1つ以上のサブピークと、1つ以上のキンク部とを含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度は、前記1つ以上のサブピークの前記ドーピング濃度の最大値の0.1倍以上である
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1谷部を含み、
少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度が、前記第1谷部の前記ドーピング濃度よりも高い
請求項11または12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記上面に最も近い最深谷部を含み、
少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度が、前記最深谷部の前記ドーピング濃度の2倍以上である
請求項11または12に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークと、前記半導体基板の前記下面に3番目に近い第3ピークとを含み、
前記第2ピークのドーピング濃度は、前記第1ピークの前記ドーピング濃度より小さく、前記第3ピークの前記ドーピング濃度より大きい
請求項1から3、11および12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第2ピークの前記ピーク幅は、前記最深ピークの前記ピーク幅の5倍以下である
請求項1から3、11および12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークを含み、
前記第2ピークの前記ピーク幅は、前記深さ方向における前記第1ピークと前記最深ピークとの距離の0.5倍以下である
請求項1から3、11および12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の下面に、複数のドーピング濃度ピークを有するバッファ領域(またはフィールドストップ層)を設けた半導体装置が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
特許文献1 US2015/0214347
特許文献2 WO2018/135448
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、ターンオフ時におけるサージ電圧を抑制することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備えてよい。半導体装置は、前記半導体基板の前記下面と、前記ドリフト領域との間に設けられ、前記半導体基板の深さ方向において3つ以上のドーピング濃度ピークを有する、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型のバッファ領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面から最も離れた最深ピークと、前記半導体基板の前記下面に2番目に近い第2ピークとを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記深さ方向において、前記第2ピークのピーク幅は、前記最深ピークのピーク幅の2倍以上であってよい。
【0005】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークは、前記深さ方向において複数のサブピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面からの距離が2番目に大きい第2深ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記第2深ピークおよび前記最深ピークの距離よりも小さくてよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークは、前記深さ方向において複数のサブピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記最深ピークの半値全幅の2倍以下であってよい。
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークの前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の窪部を有し、それぞれの前記サブピークの間に1つの前記窪部が配置されてよい。上記いずれかの半導体装置において、少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度は、前記複数のサブピークの前記ドーピング濃度の最大値の0.1倍より大きくてよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置されてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1谷部を含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度が、前記第1谷部の前記ドーピング濃度よりも高くてよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置されてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記上面に最も近い最深谷部を含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度が、前記最深谷部の前記ドーピング濃度の2倍以上であってよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピーク、前記下面に2番目に近い第2サブピーク、および、前記下面に3番目に近く、前記第2サブピークよりも低濃度の第3サブピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1サブピークに対する前記第2サブピークのドーピング濃度の比率よりも、前記第2サブピークに対する前記第3サブピークの前記ドーピング濃度の比率のほうが大きくてよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピーク、前記下面に2番目に近い第2サブピーク、および、前記下面に3番目に近く、前記第2サブピークよりも低濃度の第3サブピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1サブピークおよび前記第2サブピークの前記深さ方向における距離よりも、前記第2サブピークおよび前記第3サブピークの前記深さ方向における距離のほうが大きくてよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記第1ピークおよび前記第1サブピークの距離よりも小さくてよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークにおける前記サブピークの個数は4つ以下であってよい。
【0014】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークの前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は、1つ以上のサブピークと、1つ以上のキンク部とを含んでよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度は、前記1つ以上のサブピークの前記ドーピング濃度の最大値の0.1倍以上であってよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置されてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1谷部を含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度が、前記第1谷部の前記ドーピング濃度よりも高くてよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置において、前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置されてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記上面に最も近い最深谷部を含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度が、前記最深谷部の前記ドーピング濃度の2倍以上であってよい。
【0018】
上記いずれかの半導体装置において、前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークと、前記半導体基板の前記下面に3番目に近い第3ピークとを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークのドーピング濃度は、前記第1ピークの前記ドーピング濃度より小さく、前記第3ピークの前記ドーピング濃度より大きくてよい。
【0019】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークの前記ピーク幅は、前記最深ピークの前記ピーク幅の5倍以下であってよい。
【0020】
上記いずれかの半導体装置において、前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピークの前記ピーク幅は、前記深さ方向における前記第1ピークと前記最深ピークとの距離の0.5倍以下であってよい。
【0021】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
図2図1における領域Dの拡大図である。
図3図2におけるe-e断面の一例を示す図である。
図4図3のf-f線におけるドーピング濃度分布300の一例を示す図である。
図5】ドーピング濃度ピーク210-2の近傍におけるドーピング濃度分布を示す図である。
図6】ドーピング濃度ピーク210-2の近傍におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
図7】比較例に係るドーピング濃度ピーク310-2のドーピング濃度分布を示す図である。
図8】実施例および比較例に係る、半導体装置のターンオフ時の電圧波形および電流波形を示している。
図9】ターンオフ時における電界強度E1の分布例を示す図である。
図10】ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
図11】凹部218およびキンク部216の深さ位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0025】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0026】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0027】
半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の上面までの領域を、上面側と称する場合がある。同様に、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の下面までの領域を、下面側と称する場合がある。
【0028】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0029】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0030】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をN、アクセプタ濃度をNとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はN-Nとなる。本明細書では、ネット・ドーピング濃度を単にドーピング濃度と記載する場合がある。
【0031】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。水素ドナーは、少なくとも空孔(V)および水素(H)が結合したドナーであってもよい。あるいは、シリコン半導体中の格子間シリコン(Si-i)と水素とが結合した格子間Si-Hも、電子を供給するドナーとして機能する。本明細書では、VOH欠陥または格子間Si-Hを水素ドナーと称する場合がある。
【0032】
本明細書において半導体基板は、N型のバルク・ドナーが全体に分布している。バルク・ドナーは、半導体基板の元となるインゴットの製造時に、インゴット内に略一様に含まれたドーパントによるドナーである。本例のバルク・ドナーは、水素以外の元素である。バルク・ドナーのドーパントは、例えばリン、アンチモン、ヒ素、セレンまたは硫黄であるが、これに限定されない。本例のバルク・ドナーは、リンである。バルク・ドナーは、P型の領域にも含まれている。半導体基板は、半導体のインゴットから切り出したウエハであってよく、ウエハを個片化したチップであってもよい。半導体のインゴットは、チョクラルスキー法(CZ法)、磁場印加型チョクラルスキー法(MCZ法)、フロートゾーン法(FZ法)のいずれかで製造されよい。本例におけるインゴットは、MCZ法で製造されている。MCZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は1×1017~7×1017/cmである。FZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は1×1015~5×1016/cmである。酸素濃度が高い方が水素ドナーを生成しやすい傾向がある。バルク・ドナー濃度は、半導体基板の全体に分布しているバルク・ドナーの化学濃度を用いてよく、当該化学濃度の90%から100%の間の値であってもよい。また、半導体基板は、リン等のドーパントを含まないノンドープ基板を用いてもよい。その場合、ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は例えば1×1010/cm以上、5×1012/cm以下である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は、好ましくは1×1011/cm以上である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は、好ましくは5×1012/cm以下である。尚、本発明における各濃度は、室温における値でよい。室温における値は、一例として300K(ケルビン)(約26.9℃)のときの値を用いてよい。
【0033】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。
【0034】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。本明細書では、N型領域のドーピング濃度をドナー濃度と称する場合があり、P型領域のドーピング濃度をアクセプタ濃度と称する場合がある。
【0035】
ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。本明細書において、単位体積当りの濃度表示にatоms/cm、または、/cmを用いる。この単位は、半導体基板内のドナーまたはアクセプタ濃度、または、化学濃度に用いられる。atоms表記は省略してもよい。
【0036】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0037】
CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0038】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0039】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10は、上面視において端辺162を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺162を有する。図1においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺162と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0040】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部160の上方には、エミッタ電極が設けられているが図1では省略している。活性部160は、上面視においてエミッタ電極で重なる領域を指してよい。また、上面視において活性部160で挟まれる領域も、活性部160に含めてよい。
【0041】
活性部160には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70、および、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80の少なくとも一方が設けられている。図1の例では、半導体基板10の上面における所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って、トランジスタ部70およびダイオード部80が交互に配置されている。本例の半導体装置100は逆導通型IGBT(RC-IGBT)である。
【0042】
図1においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本明細書では、上面視において配列方向と垂直な方向を延伸方向(図1ではY軸方向)と称する場合がある。トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0043】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲート配線までY軸方向に延長した延長領域81も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域81の下面には、コレクタ領域が設けられている。
【0044】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0045】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド164を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺162の近傍に配置されている。端辺162の近傍とは、上面視における端辺162と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0046】
ゲートパッド164には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド164は、活性部160のゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド164とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線を備える。図1においては、ゲート配線に斜線のハッチングを付している。
【0047】
本例のゲート配線は、外周ゲート配線130と、活性側ゲート配線131とを有している。外周ゲート配線130は、上面視において活性部160と半導体基板10の端辺162との間に配置されている。本例の外周ゲート配線130は、上面視において活性部160を囲んでいる。上面視において外周ゲート配線130に囲まれた領域を活性部160としてもよい。また、ゲート配線の下方には、ウェル領域が形成されている。ウェル領域とは、後述するベース領域よりも高濃度のP型領域であり、半導体基板10の上面からベース領域よりも深い位置まで形成されている。上面視においてウェル領域で囲まれる領域を活性部160としてもよい。
【0048】
外周ゲート配線130は、ゲートパッド164と接続されている。外周ゲート配線130は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0049】
活性側ゲート配線131は、活性部160に設けられている。活性部160に活性側ゲート配線131を設けることで、半導体基板10の各領域について、ゲートパッド164からの配線長のバラツキを低減できる。
【0050】
外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、活性部160のゲートトレンチ部と接続される。外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成された配線であってよい。
【0051】
活性側ゲート配線131は、外周ゲート配線130と接続されてよい。本例の活性側ゲート配線131は、活性部160を挟む一方の外周ゲート配線130から他方の外周ゲート配線130まで、活性部160をY軸方向の略中央で横切るように、X軸方向に延伸して設けられている。活性側ゲート配線131により活性部160が分割されている場合、それぞれの分割領域において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されてよい。
【0052】
半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部160に設けられたトランジスタ部の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0053】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と端辺162との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、外周ゲート配線130と端辺162との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0054】
図2は、図1における領域Dの拡大図である。領域Dは、トランジスタ部70、ダイオード部80、および、活性側ゲート配線131を含む領域である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52および活性側ゲート配線131を備える。エミッタ電極52および活性側ゲート配線131は互いに分離して設けられる。
【0055】
エミッタ電極52および活性側ゲート配線131と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図2では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。図2においては、それぞれのコンタクトホール54に斜線のハッチングを付している。
【0056】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。ダミートレンチ部30のダミー導電部は、エミッタ電極52およびゲート導電部と接続されなくてよく、エミッタ電極52の電位およびゲート導電部の電位とは異なる電位に制御されてもよい。
【0057】
活性側ゲート配線131は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ゲートトレンチ部40と接続する。活性側ゲート配線131は、Y軸方向におけるゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と接続されてよい。活性側ゲート配線131は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0058】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。図2においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金、例えばAlSi、AlSiCu等の金属合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0059】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、活性側ゲート配線131側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0060】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれは、配列方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0061】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの直線部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有してよい。図2における延伸方向はY軸方向である。
【0062】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部どうしを先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0063】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分39の間に設けられる。それぞれの直線部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、直線部分29と先端部31とを有していてもよい。図2に示した半導体装置100は、先端部31を有さない直線形状のダミートレンチ部30と、先端部31を有するダミートレンチ部30の両方を含んでいる。
【0064】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0065】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、半導体基板10の上面において、トレンチに沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60およびメサ部61のそれぞれを指している。
【0066】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。メサ部において半導体基板10の上面に露出したベース領域14のうち、活性側ゲート配線131に最も近く配置された領域をベース領域14-eとする。図2においては、それぞれのメサ部の延伸方向における一方の端部に配置されたベース領域14-eを示しているが、それぞれのメサ部の他方の端部にもベース領域14-eが配置されている。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14-eに挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10の上面との間に設けられてよい。
【0067】
トランジスタ部70のメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したエミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0068】
メサ部60におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0069】
他の例においては、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0070】
ダイオード部80のメサ部61には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部61の上面には、ベース領域14およびコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてベース領域14-eに挟まれた領域には、それぞれのベース領域14-eに接してコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてコンタクト領域15に挟まれた領域には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、コンタクト領域15に挟まれた領域全体に配置されてよい。
【0071】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、ベース領域14-eに挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール54は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、ベース領域14-eおよびウェル領域11に対応する領域には設けられない。コンタクトホール54は、メサ部60の配列方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0072】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板10の下面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。カソード領域82およびコレクタ領域22は、半導体基板10の下面23と、バッファ領域20との間に設けられている。図2においては、カソード領域82およびコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0073】
カソード領域82は、Y軸方向においてウェル領域11から離れて配置されている。これにより、比較的にドーピング濃度が高く、且つ、深い位置まで形成されているP型の領域(ウェル領域11)と、カソード領域82との距離を確保して、耐圧を向上できる。本例のカソード領域82のY軸方向における端部は、コンタクトホール54のY軸方向における端部よりも、ウェル領域11から離れて配置されている。他の例では、カソード領域82のY軸方向における端部は、ウェル領域11とコンタクトホール54との間に配置されていてもよい。
【0074】
図3は、図2におけるe-e断面の一例を示す図である。e-e断面は、エミッタ領域12およびカソード領域82を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0075】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38には、図2において説明したコンタクトホール54が設けられている。
【0076】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0077】
半導体基板10は、N型またはN-型のドリフト領域18を有する。ドリフト領域18は、トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれに設けられている。
【0078】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP-型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。
【0079】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0080】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0081】
蓄積領域16は、ベース領域14の下方に設けられている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN+型の領域である。すなわち蓄積領域16は、ドナー濃度がドリフト領域18よりも高い。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0082】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P-型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。メサ部61において、ベース領域14の下方に蓄積領域16が設けられていてもよい。
【0083】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれにおいて、ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを有してよい。濃度ピークのドーピング濃度とは、濃度ピークの頂点におけるドーピング濃度を指す。また、ドリフト領域18のドーピング濃度は、ドーピング濃度分布がほぼ平坦な領域におけるドーピング濃度の平均値を用いてよい。
【0084】
バッファ領域20は、半導体基板10の深さ方向(Z軸方向)において、2つ以上の濃度ピークを有してよい。バッファ領域20の濃度ピークは、例えば水素(プロトン)またはリンの化学濃度ピークと同一の深さ位置に設けられていてよい。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0085】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。コレクタ領域22は、ベース領域14と同一のアクセプタを含んでよく、異なるアクセプタを含んでもよい。コレクタ領域22のアクセプタは、例えばボロンである。
【0086】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。カソード領域82のドナー濃度は、ドリフト領域18のドナー濃度より高い。カソード領域82のドナーは、例えば水素またはリンである。なお、各領域のドナーおよびアクセプタとなる元素は、上述した例に限定されない。コレクタ領域22およびカソード領域82は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0087】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ベース領域14の下方まで設けられている。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0088】
上述したように、トランジスタ部70には、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が設けられている。ダイオード部80には、ダミートレンチ部30が設けられ、ゲートトレンチ部40が設けられていない。本例においてダイオード部80とトランジスタ部70のX軸方向における境界は、カソード領域82とコレクタ領域22の境界である。
【0089】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0090】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0091】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0092】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0093】
図4は、図3のf-f線におけるドーピング濃度分布300および水素化学濃度分布400の一例を示す図である。f-f線は、バッファ領域20を通過するZ軸と平行な線である。図4における横軸は、半導体基板10内における深さ位置(Z軸方向の位置)を示している。本明細書では、特に説明する場合を除き、半導体基板10の下面23をZ軸方向の基準位置として、下面23からの距離をZ軸方向の位置とする。
【0094】
バッファ領域20の上方にはドリフト領域18が設けられる。ドリフト領域18は、ドーピング濃度がほぼ一定であってよい。ドリフト領域18のドーピング濃度NDRは、バルク・ドナー濃度と一致してよい。他の例では、ドリフト領域18のドーピング濃度は、バルク・ドナー濃度より高くてもよい。ドリフト領域18とバッファ領域20との境界の深さ位置をZeとする。深さ位置Zeは、バッファ領域20からドリフト領域18に向かう方向において、ドーピング濃度が最初にNDRとなる深さ位置である。
【0095】
ドリフト領域18と下面23との間に、バッファ領域20が設けられる。バッファ領域20と下面23との間にはコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22は、ドーピング濃度のピークを有してよい。コレクタ領域22は下面23に接する。コレクタ領域22とバッファ領域20との境界の深さ位置をZ0とする。深さ位置Z0は、コレクタ領域22とバッファ領域20とが形成するPN接合の位置である。
【0096】
バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い3つ以上のドーピング濃度ピーク210を有する。図4の例ではドーピング濃度ピーク210の個数は4個であるが、ドーピング濃度ピーク210の個数はこれに限定されない。本例では、半導体基板10の下面23に近い順に、ドーピング濃度ピーク210-1、ドーピング濃度ピーク210-2、ドーピング濃度ピーク210-3、ドーピング濃度ピーク210-4が配置されている。下面23に最も近いドーピング濃度ピーク210-1は、第1ピークの一例である。下面23に2番目に近いドーピング濃度ピーク210-2は、第2ピークの一例である。下面23に3番目に近いドーピング濃度ピーク210-3は、第3ピークの一例である。また、下面23からの距離が2番目に大きいドーピング濃度ピーク210-3は、第2深ピークの一例でもある。下面23からの距離が最も大きいドーピング濃度ピーク210-4は、最深ピークの一例である。また、それぞれのドーピング濃度ピーク210の間には、1つの谷部220が配置されている。つまり深さ方向において隣り合って配置されたドーピング濃度ピーク210-k(ただしkは1以上の整数)と、ドーピング濃度ピーク210-(k+1)との間には、ドーピング濃度が極小値を示す谷部220-kが配置されている。谷部220-1は、半導体基板10の下面23に最も近い第1谷部の一例である。谷部220-3は、半導体基板10の上面21に最も近い最深谷部の一例である。谷部220は、ドーピング濃度が極小値を示す部分が、深さ方向に連続する平坦部を有してもよい。
【0097】
ドーピング濃度ピーク210-1、ドーピング濃度ピーク210-2、ドーピング濃度ピーク210-3、ドーピング濃度ピーク210-4の、それぞれのドーピング濃度の最大値をP1、P2、P3、P4とし、それぞれのピーク幅をW1、W2、W3、W4とする。また、それぞれのドーピング濃度ピーク210-kにおいて、ドーピング濃度が最大値Pkとなる深さ位置をZkとする。ドーピング濃度ピーク210-kのピーク幅Wkは、ドーピング濃度ピーク210-kにおいて、ドーピング濃度がα×Pk以上となる、連続した部分の深さ方向の長さであってよい。当該連続した部分には、ドーピング濃度が最大値Pkとなる深さ位置Zkが含まれる。係数αは、0.5であってよく、0.3であってよく、0.1であってよく、0.1より小さい値であってもよい。係数αは0.01であってもよい。係数αが0.5の場合、ドーピング濃度ピーク210-kのピーク幅は、ドーピング濃度ピーク210-kの半値全幅(FWHM)である。係数αは、それぞれのドーピング濃度ピーク210で共通とする。
【0098】
半導体装置100(本例ではトランジスタ部70)がターンオフすると、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが徐々に上昇しつつ、上面21側のPN接合(本例ではベース領域14と蓄積領域16によるPN接合)の深さ位置から下面23に向かって空間電荷領域(空乏層とも称される)が広がる。電圧Vceがピーク電圧近傍のときに、空間電荷領域が高濃度のドーピング濃度ピーク210に到達すると、コレクタ・エミッタ間電圧Vceの時間波形にサージ電圧が生じやすくなる。
【0099】
空間電荷領域がコレクタ領域22まで到達することを防止するために、ドーピング濃度ピーク210-1およびドーピング濃度ピーク210-2は比較的に高濃度に設定される場合がある。また、空間電荷領域がドーピング濃度ピーク210-1まで到達するようなドーピング濃度分布にすると、空間電荷領域がコレクタ領域22に到達してしまう可能性が高くなる。このため、電圧Vceがピーク電圧のときに、空間電荷領域がドーピング濃度ピーク210-2の近傍に到達するように、ドーピング濃度分布を設計する場合がある。このため、ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度が高いと、ターンオフ時のコレクタ・エミッタ間電圧Vceにおけるサージ電圧が高くなる場合がある。
【0100】
本例のドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅W2は、ドーピング濃度ピーク210-4のピーク幅W4の2倍以上である。ドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅W2を大きくすることで、ドーピング濃度ピーク210-2におけるドーピング濃度の深さ方向の積分値を維持しつつ、ドーピング濃度ピーク210-2の最大のドーピング濃度P2を小さくできる。このため、空間電荷領域がドーピング濃度ピーク210-2の近傍に到達したときのサージ電圧を低くできる。ピーク幅W2は、ピーク幅W4の2.5倍以上であってよく、3倍以上であってもよい。
【0101】
例えば、ドーピング濃度ピーク210-2を形成すべき深さ範囲において、複数の深さ位置のそれぞれにドーパントイオンを注入する。これにより、ドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅W2は大きくなる。また、当該深さ範囲に対するドーパントイオンの総ドーズ量を維持しつつ、それぞれの深さ位置に対するドーパントイオンのドーズ量を小さくでき、ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度P2を小さくできる。
【0102】
ドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅W2は、ドーピング濃度ピーク210-3のピーク幅W3の2倍以上であってよく、2.5倍以上であってよく、3倍以上であってもよい。ドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅W2は、ドーピング濃度ピーク210-1のピーク幅W1の2倍以上であってよく、2.5倍以上であってよく、3倍以上であってもよい。ドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅W2は、ドーピング濃度ピーク210-4のピーク幅W4とドーピング濃度ピーク210-3のピーク幅W3を足し合わせた値よりも大きくてよい。
【0103】
ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度P2は、ドーピング濃度ピーク210-1のドーピング濃度P1より小さくてよい。ドーピング濃度P2は、ドーピング濃度P1の1/10以下であってよく、1/50以下であってよく、1/100以下であってもよい。
【0104】
ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度P2は、ドーピング濃度ピーク210-3のドーピング濃度P3より大きくてよい。ドーピング濃度P2は、ドーピング濃度P3の2倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。ドーピング濃度P2は、ドーピング濃度P3の50倍以下であってよく、10倍以下であってもよい。ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度P2は、1×1015/cm以下もしくは未満であってよく、5×1014/cm以下であってよい。
【0105】
ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度P2は、ドーピング濃度ピーク210-4のドーピング濃度P4より大きくてよい。ドーピング濃度P2は、ドーピング濃度P4の2倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。ドーピング濃度P2は、ドーピング濃度P4の50倍以下であってよく、10倍以下であってもよい。
【0106】
一例として、ドーピング濃度の関係は、P1>P2>P3、且つ、P2>P4であってよい。P3>P4であってよく、P3<P4であってよく、P3=P4であってもよい。
【0107】
バッファ領域20が水素ドナーにより形成される場合に、バッファ領域20は水素化学濃度分布400を有してよい。水素化学濃度分布400は、ドーピング濃度ピーク210-kに対応する水素化学濃度ピーク510-kを有してよい。水素化学濃度分布400は、ドーピング濃度の谷部220-kに対応する水素化学濃度の谷部520-kを有してよい。
【0108】
水素化学濃度ピーク510-kの深さ位置は、ドーピング濃度ピーク210-kの深さ位置Zkと10%以下の誤差を含んで一致してよい。本明細書において濃度ピークの深さ位置とは、濃度ピークが極大値を示す位置(つまり頂点の位置)である。濃度ピークに、極大値を示す部分が深さ方向に連続する平坦部が存在する場合、濃度ピークの深さ位置は、当該平坦部の深さ方向の中央位置である。本明細書において深さ位置の誤差とは、下面23からの距離(μm)の誤差を指す。水素化学濃度ピーク510-kの半値全幅の深さ範囲内に、ドーピング濃度ピーク210-kの頂点が配置されてよく、ドーピング濃度ピーク210-kの半値全幅の深さ範囲内に、水素化学濃度ピーク510-kの頂点が配置されてもよい。
【0109】
水素化学濃度ピーク510-1は、ドーピング濃度ピーク210-1に対応してよい。水素化学濃度ピーク510-1の深さ位置は、ドーピング濃度ピーク210-1の深さ位置Z1と10%以下の誤差を含んで一致してよい。水素化学濃度ピーク510-1の半値全幅の深さ範囲内に、ドーピング濃度ピーク210-1の頂点が配置されてよく、ドーピング濃度ピーク210-1の半値全幅の深さ範囲内に、水素化学濃度ピーク510-1の頂点が配置されてもよい。
【0110】
水素化学濃度ピーク510-2は、ドーピング濃度ピーク210-2に対応してよい。水素化学濃度ピーク510-2の深さ位置は、ドーピング濃度ピーク210-2の深さ位置Z2と10%以下の誤差を含んで一致してよい。水素化学濃度ピーク510-2の半値全幅の深さ範囲内に、ドーピング濃度ピーク210-2の頂点が配置されてよく、ドーピング濃度ピーク210-2の半値全幅の深さ範囲内に、水素化学濃度ピーク510-2の頂点が配置されてもよい。
【0111】
水素化学濃度ピーク510-3は、ドーピング濃度ピーク210-3に対応してよい。水素化学濃度ピーク510-3の深さ位置は、ドーピング濃度ピーク210-3の深さ位置Z3と10%以下の誤差を含んで一致してよい。水素化学濃度ピーク510-3の半値全幅の深さ範囲内に、ドーピング濃度ピーク210-3の頂点が配置されてよく、ドーピング濃度ピーク210-3の半値全幅の深さ範囲内に、水素化学濃度ピーク510-3の頂点が配置されてもよい。
【0112】
水素化学濃度ピーク510-4は、ドーピング濃度ピーク210-4に対応してよい。水素化学濃度ピーク510-4の深さ位置は、ドーピング濃度ピーク210-4の深さ位置Z2と10%以下の誤差を含んで一致してよい。水素化学濃度ピーク510-4の半値全幅の深さ範囲内に、ドーピング濃度ピーク210-4の頂点が配置されてよく、ドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅の深さ範囲内に、水素化学濃度ピーク510-4の頂点が配置されてもよい。
【0113】
水素化学濃度の谷部520-kの深さ位置は、ドーピング濃度の谷部220-kの深さ位置と10%以下の誤差を含んで一致してよい。本明細書において谷部の深さ位置は、谷部が極小値を示す位置である。谷部に、極小値を示す部分が深さ方向に連続する平坦部が存在する場合、谷部の深さ位置は、当該平坦部の深さ方向の中央位置である。谷部520-kにおいて水素化学濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部220-kが配置されてよく、谷部220-kにおいてドーピング濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部520-kが配置されてもよい。
【0114】
水素化学濃度の谷部520-1は、ドーピング濃度の谷部220-1に対応してよい。谷部520-1の深さ位置は、谷部220-1の深さ位置と10%以下の誤差を含んで一致してよい。谷部520-1において水素化学濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部220-1が配置されてよく、谷部220-1においてドーピング濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部520-1が配置されてもよい。
【0115】
水素化学濃度の谷部520-2は、ドーピング濃度の谷部220-2に対応してよい。谷部520-2の深さ位置は、谷部220-2の深さ位置と10%以下の誤差を含んで一致してよい。谷部520-2において水素化学濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部220-2が配置されてよく、谷部220-2においてドーピング濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部520-2が配置されてもよい。
【0116】
水素化学濃度の谷部520-3は、ドーピング濃度の谷部220-3に対応してよい。谷部520-3の深さ位置は、谷部220-3の深さ位置と10%以下の誤差を含んで一致してよい。谷部520-3において水素化学濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部220-3が配置されてよく、谷部220-3においてドーピング濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に谷部520-3が配置されてもよい。
【0117】
図5は、ドーピング濃度ピーク210-2の近傍におけるドーピング濃度分布300および水素化学濃度分布400を示す図である。本例のドーピング濃度ピーク210-2は、深さ方向において異なる位置に配置された複数のサブピーク212を有する。図5の例では、ドーピング濃度ピーク210-2は、半導体基板10の下面23に近い順に、サブピーク212-1、サブピーク212-2、サブピーク212-3を有している。サブピーク212-1は、半導体基板10の下面23に最も近い第1サブピークの一例であり、サブピーク212-2は、下面23に2番目に近い第2サブピークの一例であり、サブピーク212-3は、下面に3番目に近い第3サブピークの一例である。また、それぞれのサブピーク212の間には、1つの窪部214が配置されている。つまり深さ方向において隣り合って配置されたサブピーク212-hと、サブピーク212-(h+1)との間には、ドーピング濃度が極小値を示す窪部214-hが配置されている。ただしhは1以上の整数である。hは2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよい。
【0118】
サブピーク212-hのドーピング濃度の最大値をP2-hとし、サブピーク212-hにおいてドーピング濃度が最大値P2-hとなる深さ位置をZ2-hとする。ドーピング濃度P2-2は、ドーピング濃度P2-1と同一であってよく、ドーピング濃度P2-1より小さくてよく、大きくてもよい。ドーピング濃度P2-3は、ドーピング濃度P2-2と同一であってよく、ドーピング濃度P2-2より小さくてよく、大きくてもよい。ドーピング濃度P2-3は、ドーピング濃度P2-1と同一であってよく、ドーピング濃度P2-1より小さくてよく、大きくてもよい。本例では、P2-1>P2-2>P2-3である。つまり、複数のサブピーク212-hのドーピング濃度P2-hは、下面23から離れるほど小さくなってよい。本例では、ドーピング濃度P2-1が、ドーピング濃度ピーク210-2におけるドーピング濃度の最大値であるが、他のドーピング濃度P2-hが、ドーピング濃度ピーク210-2におけるドーピング濃度の最大値であってもよい。深さ位置Z2-hは、ドーパントイオンを注入した位置に対応する。また、谷部220-kにおけるドーピング濃度の最小値をVkとし、窪部214-hにおけるドーピング濃度の最小値をDhとする。
【0119】
深さ方向において隣り合うサブピーク212-hと、サブピーク212-(h+1)の、深さ方向の間隔をLhとする。間隔Lhは、深さ位置Z2-hと、深さ位置Z2-(h+1)との距離である。
【0120】
それぞれの間隔Lhは、ドーピング濃度ピーク210-3とドーピング濃度210-4との深さ方向の距離(Z4-Z3)以下であってよい。間隔Lhが距離(Z4-Z3)以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよい。この場合、それぞれのサブピーク212の間の窪部214のドーピング濃度Dhは、α×P2-max以上であってよく、α×P2-maxより小さくてもよい。ドーピング濃度P2-maxは、サブピーク212-hのドーピング濃度P2-hのうち、最大のものを指している。間隔Lhが距離(Z4-Z3)の0.5倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよく、間隔Lhが距離(Z4-Z3)の0.25倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてもよい。
【0121】
それぞれの間隔Lhは、図3に示したドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅(つまり、α=0.5の場合のピーク幅W4)の2倍以下であってもよい。間隔Lhがピーク幅W4(ただしα=0.5)の2倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよい。この場合、それぞれのサブピーク212の間の窪部214のドーピング濃度Dhは、α×P2-max以上であってよく、α×P2-maxより小さくてもよい。間隔Lhがドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅の1.5倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよく、間隔Lhがドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅の1倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてもよい。
【0122】
図4において説明したように、ドーピング濃度がα×P2-max以上となる連続した部分を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてもよい。この場合、それぞれのサブピーク212の間の窪部214のドーピング濃度Dhは、α×P2-max以上である。この場合の間隔Lhは、距離(Z4-Z3)以下であってよく、距離(Z4-Z3)より大きくてもよい。間隔Lhは、ドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅以下であってよく、ドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅より大きくてもよい。また、間隔Lhが距離(Z4-Z3)以下である複数のサブピーク212を含み、且つ、サブピーク212の間の窪部214のそれぞれのドーピング濃度Dhがα×P2-max以上である範囲を、ドーピング濃度ピーク210-2としてもよい。また、間隔Lhがピーク幅W4(ただしα=0.5)以下である複数のサブピーク212を含み、且つ、サブピーク212の間の窪部214のそれぞれのドーピング濃度Dhがα×P2-max以上である範囲を、ドーピング濃度ピーク210-2としてもよい。
【0123】
それぞれの間隔Lhは、サブピーク212-1とドーピング濃度ピーク210-1との距離(例えば図4におけるZ2-Z1)よりも小さくてよい。それぞれの間隔Lhは、距離(Z2-Z1)の0.5倍以下であってよく、0.25倍以下であってもよい。
【0124】
それぞれの間隔Lhは、サブピーク212-3とドーピング濃度ピーク210-3との距離(例えば図4および図5におけるZ3-(Z2-3))よりも小さくてよい。それぞれの間隔Lhは、距離(Z3-(Z2-3))の0.5倍以下であってよく、0.25倍以下であってもよい。
【0125】
それぞれの間隔Lhは、ドーピング濃度ピーク210-3の半値全幅の2倍以下であってよく、1.5倍以下であってよく、1倍以下であってもよい。それぞれの間隔Lhは、ドーピング濃度ピーク210-1の半値全幅の2倍以下であってよく、1.5倍以下であってよく、1倍以下であってもよい。また、サブピーク212どうしが重ならないように、それぞれの間隔Lhは、1μm以上であってよく、2μm以上であってよく、3μm以上であってよく、4μm以上であってもよい。
【0126】
少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、複数のサブピーク212のドーピング濃度の最大値P2-maxの0.1倍より大きくてよく、0.2倍より大きくてよく、0.5倍より大きくてもよい。これにより、ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度分布の形状をより平坦化して、ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度の最大値を小さくできる。全ての窪部214-hのドーピング濃度Dhが、複数のサブピーク212のドーピング濃度の最大値P2-maxの0.1倍より大きくてよく、0.2倍より大きくてよく、0.5倍より大きくてもよい。
【0127】
少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、隣り合うサブピーク212-hのドーピング濃度P2-hの0.1倍より大きくてよく、0.2倍より大きくてよく、0.5倍より大きくてもよい。全ての窪部214-hのドーピング濃度Dhが、隣り合うサブピーク212-hのドーピング濃度P2-hの0.1倍より大きくてよく、0.2倍より大きくてよく、0.5倍より大きくてもよい。
【0128】
少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、谷部220-1のドーピング濃度V1よりも高くてよい。少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、ドーピング濃度V1の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。全ての窪部214-hのドーピング濃度Dhが、谷部220-1のドーピング濃度V1よりも高くてよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。窪部214のドーピング濃度Dhを高くすることで、ドーピング濃度ピーク210-2におけるドーピング濃度の積分値を維持しつつ、ドーピング濃度ピーク210-2における最大のドーピング濃度P2を小さくできる。それぞれの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、ドーピング濃度V1の10倍以下であってよく、8倍以下であってよく、6倍以下であってもよい。
【0129】
少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、谷部220-2のドーピング濃度V2よりも高くてよい。少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、ドーピング濃度V2の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。全ての窪部214-hのドーピング濃度Dhが、谷部220-2のドーピング濃度V2よりも高くてよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。窪部214のドーピング濃度Dhを高くすることで、ドーピング濃度ピーク210-2におけるドーピング濃度の積分値を維持しつつ、ドーピング濃度ピーク210-2における最大のドーピング濃度P2を小さくできる。それぞれの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、ドーピング濃度V2の10倍以下であってよく、8倍以下であってよく、6倍以下であってもよい。
【0130】
少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、最深谷部である谷部220-3のドーピング濃度V3よりも高くてよい。少なくとも1つの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、ドーピング濃度V3の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。全ての窪部214-hのドーピング濃度Dhが、谷部220-3のドーピング濃度V3よりも高くてよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。窪部214のドーピング濃度Dhを高くすることで、ドーピング濃度ピーク210-2におけるドーピング濃度の積分値を維持しつつ、ドーピング濃度ピーク210-2における最大のドーピング濃度P2を小さくできる。それぞれの窪部214-hのドーピング濃度Dhは、ドーピング濃度V3の10倍以下であってよく、8倍以下であってよく、6倍以下であってもよい。
【0131】
水素化学濃度分布400は、ドーピング濃度のサブピーク212-hに対応する水素サブピーク512-hを有してよい。水素化学濃度分布400は、ドーピング濃度の窪部214-hに対応する窪部514-hを有してよい。
【0132】
水素サブピーク512-hの深さ位置は、ドーピング濃度のサブピーク212-hの深さ位置Z2-hと10%以下の誤差を含んで一致してよい。水素サブピーク512-hの半値全幅の深さ範囲内に、サブピーク212-hの頂点が配置されてよく、サブピーク212-hの半値全幅の深さ範囲内に、水素サブピーク512-hの頂点が配置されてもよい。
【0133】
水素化学濃度の窪部514-hの深さ位置は、ドーピング濃度の窪部214-hの深さ位置と10%以下の誤差を含んで一致してよい。本明細書において窪部の深さ位置は、窪部が極小値を示す位置である。窪部に、極小値を示す部分が深さ方向に連続する平坦部が存在する場合、窪部の深さ位置は、当該平坦部の深さ方向の中央位置である。窪部514-hにおいて水素化学濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に窪部214-hが配置されてよく、窪部214-hにおいてドーピング濃度が極小値の2倍以下となる深さ範囲内に窪部514-hが配置されてもよい。
【0134】
図6は、ドーピング濃度ピーク210-2の近傍におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例のドーピング濃度ピーク210-2は、サブピーク212-3のドーピング濃度分布が、図5の例と相違する。他の部分は、図5の例と同様である。
【0135】
本例では、サブピーク212-1のドーピング濃度P2-1に対する、サブピーク212-2のドーピング濃度P2-2の比率(P2-2)/(P2-1)よりも、サブピーク212-2のドーピング濃度P2-2に対する、サブピーク212-3のドーピング濃度P2-3の比率(P2-3)/(P2-2)のほうが小さい。例えば、ドーピング濃度P2-2はドーピング濃度P2-1の75%~100%であり、ドーピング濃度P2-3はドーピング濃度P2-2の25%~50%であってよい。ドーピング濃度P2-3を、ドーピング濃度P2-2と谷部220-2のドーピング濃度V2の中間濃度にすることで、ドーピング濃度ピーク210-2の上面21側のスロープの傾きを緩やかにできる。これにより、空間電荷領域が当該スロープに到達したときのサージ電圧を抑制できる。
【0136】
サブピーク212-3のドーピング濃度P2-3は、α×P2-1より低くてもよい。ただし、サブピーク212-3とサブピーク212-2との距離L2は、ドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅以下である。本例では、ドーピング濃度ピーク210-2の下面23側の端部は、サブピーク212-1の頂点よりも下面23側において、ドーピング濃度が最初にα×P2-1となる点である。またドーピング濃度ピーク210-2の上面21側の端部は、サブピーク212-3の頂点よりも上面21側において、ドーピング濃度が最初にα×P2-3となる点である。
【0137】
サブピーク212-1とサブピーク212-2との距離L1よりも、サブピーク212-2とサブピーク212-3との距離L2のほうが大きくてよい。距離L2は、距離L1の1.2倍以上であってよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。ただし距離L2は、ドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅以下である。このような構成によっても、ドーピング濃度ピーク210-2の上面21側のスロープの傾きを緩やかにできる。これにより、空間電荷領域が当該スロープに到達したときのサージ電圧を抑制できる。
【0138】
ドーピング濃度ピーク210-2に含まれるサブピーク212の個数は4つ以下であってよい。サブピーク212の個数を多くしすぎると、ドーピング濃度ピーク210-2の深さ方向の幅が大きくなりすぎて、ドーピング濃度ピーク210-3まで到達してしまう場合がある。また、深さ方向における狭い範囲にサブピーク212を密集させすぎると、サブピーク212どうしが重なり、ドーピング濃度の最大値が大きくなってしまう。
【0139】
第2ピークのピーク幅W2は、ドーピング濃度ピーク210-4のピーク幅W4の5倍以下であってよい。ピーク幅W2を大きくしすぎると、ドーピング濃度ピーク210-2がドーピング濃度ピーク210-3まで到達してしまう場合がある。ピーク幅W2は、ピーク幅W4の4倍以下であってもよい。ピーク幅W2は、ピーク幅W1の5倍以下であってよく、4倍以下であってもよい。ピーク幅W2は、ピーク幅W3の5倍以下であってよく、4倍以下であってもよい。
【0140】
第2ピークのピーク幅W2は、ドーピング濃度ピーク210-1とドーピング濃度ピーク210-4との距離(Z4-Z1)の0.5倍以下であってよい。ピーク幅W2を大きくしすぎると、ドーピング濃度ピーク210-2がドーピング濃度ピーク210-3まで到達してしまう場合がある。ピーク幅W2は、距離(Z4-Z1)の0.4倍以下であってよく、0.3倍以下であってよく、0.2倍以下であってもよい。
【0141】
図7は、比較例に係るドーピング濃度ピーク310-2のドーピング濃度分布を示す図である。比較例に係る半導体装置は、図1から図6において説明した半導体装置100の構成において、ドーピング濃度ピーク210-2に代えて、ドーピング濃度ピーク310-2を有する。他の構造は半導体装置100と同様である。
【0142】
ドーピング濃度ピーク310-2は、単一の濃度ピークを含む。つまり、ドーピング濃度ピーク310-2は、複数のサブピーク212を含まない。ドーピング濃度ピーク310-2のピーク幅は、ドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅よりも小さい。ドーピング濃度ピーク310-2は、単一の深さ位置に対してドーパントイオンを注入して形成される。ドーピング濃度ピーク310-2に対するドーパントイオンのドーズ量と、ドーピング濃度ピーク210-2に対するドーパントイオンの総ドーズ量は、ほぼ同一である。つまりドーピング濃度ピーク210-2は、ドーピング濃度ピーク310-2に対するドーパントイオンのドーズ量を複数の深さ位置に分割して、それぞれの深さ位置にドーパントイオンを注入している。
【0143】
図8は、実施例および比較例に係る、半導体装置のターンオフ時の電圧波形および電流波形を示している。図8における横軸は時間であり、縦軸は、コレクタ・エミッタ間電圧Vce、および、コレクタ電流Icである。図8において、図7のドーピング濃度ピーク310-2を有する比較例の波形を破線で示し、ドーピング濃度ピーク210-2を有する実施例の波形を実線で示している。
【0144】
図8の破線で示すように、比較例のターンオフ時の電圧波形には、サージ部分312が生じている。これは、ターンオフ時の空間電荷領域が、高濃度のドーピング濃度ピーク310-2に到達したためと考えられる。これに対して図8の実線で示す実施例では、サージ部分312を抑制できている。これは、ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度の最大値を抑制したためと考えられる。また、サージ部分312以外の電圧波形および電流波形は、比較例と実施例でほぼ同等である。このため、実施例に係る半導体装置100は、電圧特性および電流特性への影響をほとんど生じさせずに、サージ電圧の発生を抑制できていることがわかる。半導体装置100によれば、ターンオフ時のサージ電圧を抑制でき、より高速なスイッチング動作を行うことができる。
【0145】
図9は、ターンオフ時における電界強度E1の分布例を示す図である。電界強度E1は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが所定のクランプ電圧Vcepのときの、電界強度である。本例のクランプ電圧Vcepは、図8に示したように、ターンオフ時のコレクタ・エミッタ間電圧Vceの最大値である。
【0146】
図9に示すように、クランプ電圧Vcep印加時の電界強度E1は、ドーピング濃度ピーク210-2の上面21側のスロープ近傍で、ほぼ0になっている。つまり、クランプ電圧Vcepが印加された場合、空間電荷領域はドーピング濃度ピーク210-2の上面21側のスロープまで到達する。このため、ドーピング濃度ピーク210-2の当該スロープの傾き、および、ドーピング濃度が大きいと、ターンオフ時におけるサージ電圧が大きくなってしまう。本例では、ドーピング濃度ピーク210-2のピーク幅を大きくして、ドーピング濃度の最大値を小さくしている。これにより、ドーピング濃度ピーク210-2の当該スロープの傾き、および、ドーピング濃度を小さくでき、サージ電圧を抑制できる。
【0147】
図10は、ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度分布の他の例を示す図である。ドーピング濃度ピーク210-2以外の構成は、図1から図9において説明した半導体装置100と同様である。
【0148】
本例のドーピング濃度ピーク210-2は、1つ以上のサブピーク212と、1つ以上のキンク部216とを有する。本例のドーピング濃度ピーク210-2も、複数の深さ位置にドーパントイオンを注入することで形成される。この場合でも、ドーピング濃度分布において、ドーパントイオンの注入位置の間に、ドーピング濃度が極小値を示す窪部214が観察されない場合がある。また、ドーパントイオンの注入位置に、ドーピング濃度が極大値を示すサブピーク212が観察されない場合がある。
【0149】
本例のドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度分布は、横軸を深さ位置、縦軸をドーピング濃度としたときに、分布曲線が下側に凸の形状になる1つ以上の凹部218と、分布曲線が上側に凸の形状になる1つ以上のキンク部216とを有する。凹部218-hは、図1から図9において説明した窪部214-hと同一の深さ位置に配置されてよい。凹部218-hは、図1から図9において説明した窪部214-hと同一のドーピング濃度を有してよい。
【0150】
キンク部216は、図1から図9において説明したサブピーク212に対応する。キンク部216が1つのサブピーク212よりも上面21側に配置されている場合、サブピーク212がサブピーク212-1に対応し、キンク部216-hは、サブピーク212-h(ただしhは2以上の整数)に対応している。キンク部216が1つのサブピーク212よりも下面23側に配置されている場合、キンク部216-hは、サブピーク212-h(ただしhは1以上の整数)に対応し、サブピーク212がサブピーク212-4に対応している。キンク部216は、図1から図9において説明した、対応するサブピーク212と同一の深さ位置に配置されてよい。キンク部216は、図1から図9において説明した、対応するサブピーク212と同一のドーピング濃度を有してよい。
【0151】
図10では、1つのサブピーク212よりも上面21側に、凹部218とキンク部216とが交互に配置されている。この場合の凹部218は、下面23から上面21に向かってドーピング濃度が連続して減少し、且つ、極小値を示さずにグラフ上で下側に凸の形状になっている。またキンク部216は、下面23から上面21に向かってドーピング濃度が連続して減少し、且つ、極大値を示さずにグラフ上で上側に凸の形状になっている。
【0152】
他の例では、1つのサブピーク212よりも下面23側に、凹部218とキンク部216とが交互に配置されていてもよい。この場合のキンク部216は、下面23から上面21に向かってドーピング濃度が連続して増加し、極大値を示さずにグラフ上で上側に凸の形状になっている。また凹部218は、下面23から上面21に向かってドーピング濃度が連続して増加し、且つ、極小値を示さずにグラフ上で下側に凸の形状になっている。
【0153】
他の例では、1つのサブピーク212と下面23との間、および、サブピーク212と上面21との間の両方に、凹部218およびキンク部216が配置されてもよい。また、2つのサブピーク212の間に、凹部218およびキンク部216が配置されてもよい。また、2つの窪部214の間に、凹部218およびキンク部216が配置されてもよい。
【0154】
図11は、凹部218およびキンク部216の深さ位置を説明する図である。図11は、ドーピング濃度の分布、ドーピング濃度の深さ位置による微分値、および、ドーピング濃度の深さ位置による二階微分値を示している。凹部218-hは、ドーピング濃度分布が極小値を示さず、且つ、ドーピング濃度の二階微分値が極大値maxhとなる深さ位置Z5-hの点であってよい。本例では凹部218-1および凹部218-2である。凹部218-hのドーピング濃度Mhは、深さ位置Z5-hにおけるドーピング濃度を用いてよい。キンク部216-hは、ドーピング濃度分布が極大値を示さず、且つ、ドーピング濃度の二階微分値が極小値minとなる深さ位置Z2-hの点であってよい。本例では1つのキンク部216-2である。キンク部216-hのドーピング濃度Khは、深さ位置Z2-hにおけるドーピング濃度を用いてよい。
【0155】
少なくとも1つのキンク部216-hのドーピング濃度Khは、1つ以上のサブピーク212のドーピング濃度の最大値P2を超えない範囲で最大値P2の0.1倍以上であってよい。ドーピング濃度Khは、ドーピング濃度P2の0.2倍以上であってよく、0.5倍以上であってもよい。全てのキンク部216-hのドーピング濃度Khが、最大値P2を超えない範囲で最大値P2の0.1倍以上であってよく、0.2倍以上であってよく、0.5倍以上であってもよい。ドーピング濃度Khは、最大値P2以下であってよい。それぞれのキンク部216-hのドーピング濃度Khは、1つ前のキンク部216-(h-1)のドーピング濃度Kh-1の0.1倍以上であってよく、0.2倍以上であってよく、0.5倍以上であってもよい。それぞれのキンク部216-hのドーピング濃度Khは、下面23側において隣り合う凹部218-hのドーピング濃度Mhの0.1倍以上であってよく、0.2倍以上であってよく、0.5倍以上であってもよい。
【0156】
少なくとも1つのキンク部216-hのドーピング濃度Khは、谷部220-1のドーピング濃度V1より高くてよい。ドーピング濃度Khは、ドーピング濃度V1の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。全てのキンク部216-hのドーピング濃度Khが、ドーピング濃度V1より大きくてよく、2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。ドーピング濃度Khは、ドーピング濃度V1の10倍以下であってよく、6倍以下であってもよい。
【0157】
少なくとも1つのキンク部216-hのドーピング濃度Khは、谷部220-3のドーピング濃度V3の2倍以上であってよい。ドーピング濃度Khは、ドーピング濃度V3の3倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。全てのキンク部216-hのドーピング濃度Khが、ドーピング濃度V3の2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってもよい。ドーピング濃度Khは、ドーピング濃度V3の10倍以下であってよく、6倍以下であってもよい。
【0158】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0159】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0160】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、90・・・エッジ終端構造部、100・・・半導体装置、130・・・外周ゲート配線、131・・・活性側ゲート配線、160・・・活性部、162・・・端辺、164・・・ゲートパッド、210・・・ドーピング濃度ピーク、212・・・サブピーク、214・・・窪部、216・・・キンク部、218・・・凹部、220・・・谷部、300・・・ドーピング濃度分布、310・・・ドーピング濃度ピーク、312・・・サージ部分、400・・・水素化学濃度分布、510・・・水素化学濃度ピーク、512・・・水素サブピーク、514・・・窪部、520・・・谷部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の前記下面と、前記ドリフト領域との間に設けられ、前記半導体基板の深さ方向において3つ以上のドーピング濃度ピークを有する、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型のバッファ領域と
を備え、
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面から最も離れた最深ピークと、前記半導体基板の前記下面に2番目に近い第2ピークとを含み、
前記深さ方向において、前記第2ピークのピーク幅は、前記最深ピークのピーク幅の2倍以上である
半導体装置。
【請求項2】
前記第2ピークは、前記深さ方向において複数のサブピークを含み、
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面からの距離が2番目に大きい第2深ピークを含み、
前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記第2深ピークおよび前記最深ピークの距離よりも小さい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2ピークは、前記深さ方向において複数のサブピークを含み、
前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記最深ピークの半値全幅の2倍以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2ピークの前記深さ方向におけるドーピング濃度の分布は複数の窪部を有し、それぞれの前記サブピークの間に1つの前記窪部が配置され、
少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度は、前記複数のサブピークの前記ドーピング濃度の最大値の0.1倍より大きい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1谷部を含み、
少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度が、前記第1谷部の前記ドーピング濃度よりも高い
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記上面に最も近い最深谷部を含み、
少なくとも1つの前記窪部の前記ドーピング濃度が、前記最深谷部の前記ドーピング濃度の2倍以上である
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピーク、前記下面に2番目に近い第2サブピーク、および、前記下面に3番目に近く、前記第2サブピークよりも低濃度の第3サブピークを含み、
前記第1サブピークに対する前記第2サブピークのドーピング濃度の比率よりも、前記第2サブピークに対する前記第3サブピークの前記ドーピング濃度の比率のほうが小さい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピーク、前記下面に2番目に近い第2サブピーク、および、前記下面に3番目に近く、前記第2サブピークよりも低濃度の第3サブピークを含み、
前記第1サブピークおよび前記第2サブピークの前記深さ方向における距離よりも、前記第2サブピークおよび前記第3サブピークの前記深さ方向における距離のほうが大きい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークを含み、
前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピークを含み、
前記深さ方向において隣り合う2つの前記サブピークの間隔は、前記第1ピークおよび前記第1サブピークの距離よりも小さい
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2ピークにおける前記サブピークの個数は4つ以下である
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2ピークの前記深さ方向におけるドーピング濃度の分布は、1つ以上のサブピークと、1つ以上のキンク部とを含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度は、前記1つ以上のサブピークの前記ドーピング濃度の最大値の0.1倍以上である
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1谷部を含み、
少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度が、前記第1谷部の前記ドーピング濃度よりも高い
請求項11または12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記バッファ領域の前記深さ方向における前記ドーピング濃度の分布は複数の谷部を有し、それぞれの前記ドーピング濃度ピークの間に1つの前記谷部が配置され、
前記複数の谷部は、前記半導体基板の前記上面に最も近い最深谷部を含み、
少なくとも1つの前記キンク部の前記ドーピング濃度が、前記最深谷部の前記ドーピング濃度の2倍以上である
請求項11または12に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークと、前記半導体基板の前記下面に3番目に近い第3ピークとを含み、
前記第2ピークのドーピング濃度は、前記第1ピークの前記ドーピング濃度より小さく、前記第3ピークの前記ドーピング濃度より大きい
請求項1から3、11および12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第2ピークの前記ピーク幅は、前記最深ピークの前記ピーク幅の5倍以下である
請求項1から3、11および12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記3つ以上のドーピング濃度ピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1ピークを含み、
前記第2ピークの前記ピーク幅は、前記深さ方向における前記第1ピークと前記最深ピークとの距離の0.5倍以下である
請求項1から3、11および12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記複数のサブピークは、前記半導体基板の前記下面に最も近い第1サブピーク、前記下面に2番目に近い第2サブピーク、および、前記下面に3番目に近く、前記第2サブピークよりも低濃度の第3サブピークを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1サブピークに対する前記第2サブピークのドーピング濃度の比率よりも、前記第2サブピークに対する前記第3サブピークの前記ドーピング濃度の比率のほうが小さくてよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、活性側ゲート配線131側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP型であり、ウェル領域11はP+型である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。メサ部61において、ベース領域14の下方に蓄積領域16が設けられていてもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
空間電荷領域がコレクタ領域22まで到達することを防止するために、ドーピング濃度ピーク210-1およびドーピング濃度ピーク210-2は比較的に高濃度に設定される場合がある。また、空間電荷領域がドーピング濃度ピーク210-1まで到達するようなドーピング濃度分布にすると、空間電荷領域がコレクタ領域22に到達してしまう可能性が高くなる。このため、電圧Vceがピーク電圧のときに、空間電荷領域がドーピング濃度ピーク210-2の近傍に到達するように、ドーピング濃度分布を設計する場合がある。ところが、ドーピング濃度ピーク210-2のドーピング濃度が高いと、ターンオフ時のコレクタ・エミッタ間電圧Vceにおけるサージ電圧が高くなる場合がある。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
水素化学濃度ピーク510-4は、ドーピング濃度ピーク210-4に対応してよい。水素化学濃度ピーク510-4の深さ位置は、ドーピング濃度ピーク210-4の深さ位置Z4と10%以下の誤差を含んで一致してよい。水素化学濃度ピーク510-4の半値全幅の深さ範囲内に、ドーピング濃度ピーク210-4の頂点が配置されてよく、ドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅の深さ範囲内に、水素化学濃度ピーク510-4の頂点が配置されてもよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
それぞれの間隔Lhは、ドーピング濃度ピーク210-3とドーピング濃度ピーク210-4との深さ方向の距離(Z4-Z3)以下であってよい。間隔Lhが距離(Z4-Z3)以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよい。この場合、それぞれのサブピーク212の間の窪部214のドーピング濃度Dhは、α×P2-max以上であってよく、α×P2-maxより小さくてもよい。ドーピング濃度P2-maxは、サブピーク212-hのドーピング濃度P2-hのうち、最大のものを指している。間隔Lhが距離(Z4-Z3)の0.5倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよく、間隔Lhが距離(Z4-Z3)の0.25倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0121】
それぞれの間隔Lhは、図に示したドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅(つまり、α=0.5の場合のピーク幅W4)の2倍以下であってもよい。間隔Lhがピーク幅W4(ただしα=0.5)の2倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよい。この場合、それぞれのサブピーク212の間の窪部214のドーピング濃度Dhは、α×P2-max以上であってよく、α×P2-maxより小さくてもよい。間隔Lhがドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅の1.5倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてよく、間隔Lhがドーピング濃度ピーク210-4の半値全幅の1倍以下である複数のサブピーク212の群を、1つのドーピング濃度ピーク210-2とみなしてもよい。