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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025517
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】加速空洞及び加速空洞の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 7/18 20060101AFI20240216BHJP
   H05H 13/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H05H7/18
H05H13/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129023
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 優志
(72)【発明者】
【氏名】重岡 伸之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲郎
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085BA05
2G085EA04
(57)【要約】
【課題】容易に製造可能な加速空洞及び加速空洞の製造方法を提供する。
【解決手段】加速空洞は、導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面状の分割面で複数に分割された分割部材を接合した状態で形成される筐体と、筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、筐体の内部においてセル部ごとに連通部を囲う位置に配置され、軸線方向でそれぞれのセル部の内側に向けて突出し、軸線方向の先端部側から基端部側に向けて、中心軸を基準とする径方向に広がる形状に形成された突出部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面状の分割面で複数に分割された分割部材を接合した状態で形成される筐体と、
前記筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、
前記筐体の内部において前記セル部ごとに前記連通部を囲う位置に配置され、前記軸線方向でそれぞれの前記セル部の内側に向けて突出し、前記軸線方向の先端部側から基端部側に向けて前記分割面から前記中心軸の軸回り方向に離れるほど前記径方向に広がるように形成された突出部と
を備える加速空洞。
【請求項2】
前記突出部は、前記基端部を構成する基端側湾曲部と、前記先端部を構成する先端側湾曲部と、前記基端側湾曲部と前記先端側湾曲部とを接続する接続部とを有し、
前記基端側湾曲部と前記接続部との間、前記先端側湾曲部と前記接続部との間は、滑らかに接続される
請求項1に記載の加速空洞。
【請求項3】
前記中心軸を通る平面による断面視において、
前記基端側湾曲部は、円弧状であり、
前記接続部は、直線部分を含む
請求項2に記載の加速空洞。
【請求項4】
前記中心軸の軸回り方向について前記分割面から所定角度φとなる位置において、前記先端側湾曲部と前記接続部との接続位置は、当該接続位置における接線に直交する第1仮想直線と、前記中心軸に垂直な第2仮想直線との角度をα(φ)とし、nを正の実数とすると、
α(φ)∝(sinφ)
を満たすように設定される
請求項2又は請求項3に記載の加速空洞。
【請求項5】
導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面状の分割面で複数に分割された分割部材を接合した状態で形成される筐体と、
前記筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、
前記筐体の内部において前記セル部ごとに前記連通部を囲う位置に配置され、前記軸線方向でそれぞれの前記セル部の内側に向けて突出する突出部と
を備える加速空洞の製造方法であって、
前記分割面に対応する被加工面を有する母材の当該被加工面を切削することで、複数の前記セル部及び前記連通部に対応する凹部を形成する工程と、
前記被加工面側から前記凹部に切削工具を挿入することで、前記中心軸の軸線方向の先端部側から基端部側に向けて当該中心軸を基準とする径方向に広がる形状となるように前記突出部に対応する部分を形成する工程と
を含む加速空洞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加速空洞及び加速空洞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速空胴は、高周波が入力されることで内部に加速電界を発生させ、電子等の荷電粒子を加速させる。このような加速空洞として、例えば中心軸の軸方向に並ぶ複数のセル部が設けられ、セル部同士が連通部により連通され、セル部ごとに連通部を囲う位置にいわゆるノーズコーンと呼ばれる突起が設けられた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-107499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上記のような加速空洞を製造する際、中心軸に沿った平面上の分割面で複数に分割された分割部材を予め形成し、当該分割部材同士を分割面で接合して形成する手法が提案されている。当該手法を行う場合、特許文献1に記載のような突起(ノーズコーン)を有する加速空洞においては、容易に製造可能であることが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、容易に製造可能な加速空洞及び加速空洞の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る加速空洞は、導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面状の分割面で複数に分割された分割部材を接合した状態で形成される筐体と、前記筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、前記筐体の内部において前記セル部ごとに前記連通部を囲う位置に配置され、前記軸線方向でそれぞれの前記セル部の内側に向けて突出し、前記軸線方向の先端部側から基端部側に向けて、前記中心軸を基準とする径方向に広がる形状に形成された突出部とを備える。
【0007】
本開示に係る加速空洞の製造方法は、導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面状の分割面で複数に分割された分割部材を接合した状態で形成される筐体と、前記筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、前記筐体の内部において前記セル部ごとに前記連通部を囲う位置に配置され、前記軸線方向でそれぞれの前記セル部の内側に向けて突出する突出部とを備える加速空洞の製造方法であって、前記分割面に対応する被加工面を有する母材の当該被加工面を切削することで、複数の前記セル部及び前記連通部に対応する凹部を形成する工程と、前記被加工面側から前記凹部に切削工具を挿入することで、前記中心軸の軸線方向の先端部側から基端部側に向けて当該中心軸を基準とする径方向に広がる形状となるように前記突出部に対応する部分を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、容易に製造可能な加速空洞及び加速空洞の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る加速空洞の一例を示す平面図である。
図2図2は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図3図3は、図1におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
図4図4は、突出部の一例を示す斜視図である。
図5図5は、1つの分割部材における単位突出部の一例を示す斜視図である。
図6図6は、図3におけるC-C断面に沿った構成を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る加速空洞の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、凹部形成工程の一例を示す図である。
図9図9は、突出部形成工程の一例を示す図である。
図10図10は、他の例に係る加速空洞を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る加速空洞及び加速空洞の製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る加速空洞100の一例を示す平面図である。図2は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。図3は、図1におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
【0012】
図1から図3に示す加速空洞100は、高周波が入力されることで内部に加速電界を発生させ、線源BSから出射される電子等の荷電粒子Mを加速させる。加速空洞100及び線源BSを用いて、加速器ACが構成される。加速器ACは、例えば高エネルギー物理学実験や放射光施設などの学術分野、放射線治療又は検査などの医療分野、非破壊検査などの工業分野等の各種分野において用いられる。なお、以下の説明において、加速空洞100における方向のうち中心軸AXの軸線方向を説明する場合、線源BS側(荷電粒子Mが入射する側)を入射側と表記し、入射側の反対側(荷電粒子が出射する側)を出射側と表記する。
【0013】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る加速空洞100は、筐体10と、セル部20と、突出部30とを備える。
【0014】
筐体10は、導電性を有する筒形状である。筐体10は、複数の分割部材11を接合した状態で形成される。分割部材11は、中心軸AXに沿った平面状の分割面12を有する。各分割部材11は、分割面12同士が対向した状態で接合される。各分割部材11は、対向する分割面12同士の間に隙間を空けた状態で設けられる。本実施形態では、筐体10が上下方向に2つに分割された構成を例に挙げて説明する。筐体10の分割数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。分割部材11は、全体的に互いに対向する部分が丸みを帯びた形状を有している。このため、電圧が局所的に印加されることが抑制される。
【0015】
セル部20は、筐体10の内部に形成される。セル部20は、筐体10の中心軸AXの軸線方向に並んだ状態で配置される。セル部20は、荷電粒子を通過させる連通部21により互いに連通される。連通部21は、中心軸AXに沿って形成される。セル部20は、上下の分割部材11のそれぞれに設けられる単位セル部23を組み合わせることで構成される。また、連通部21は、上下の分割部材11のそれぞれに設けられる単位連通部24を組み合わせることで構成される。
【0016】
突出部30は、筐体10の内部においてセル部20ごとに設けられる。突出部30は、連通部21を囲う位置に配置される。突出部30は、中心軸AXの軸線方向の入射側及び出射側の両側に配置される。各セル部20において入射側に設けられる突出部30は、中心軸AXの軸線方向の出射側に向けて突出する。また、各セル部20において出射側に設けられる突出部30は、中心軸AXの軸線方向の入射側に向けて突出する。すなわち、突出部30は、それぞれセル部20の内側に向けて突出する。突出部30は、上下の分割部材11のそれぞれに設けられる単位突出部33を組み合わせることで構成される。
【0017】
図4は、突出部30の一例を示す斜視図である。図4は、突出部30を先端部32側から見た構成を示している。
【0018】
突出部30は、中心軸AXの軸線方向の先端部32側から基端部31側に向けて、中心軸AXを基準とする径方向に広がる形状に形成される。径方向は、中心軸AXの軸線方向から見た場合の放射方向である。
【0019】
突出部30は、分割部材11ごとに設けられる単位突出部33により構成される。図5は、1つの分割部材11における単位突出部33の一例を示す斜視図である。単位突出部33は、分割面12から中心軸AXの軸回り方向に離れるほど径方向に広がるように形成される。なお、図4及び図5において、後述する基端側湾曲部34a、先端側湾曲部34b、接続部34cの境界を示す仮想線が示されているが、実際には当該境界線は視認されない状態である。
【0020】
図6は、図3におけるC-C断面に沿った構成を示す図である。図6では、分割面12から中心軸AXの軸回り方向に最も離れた位置(図5におけるφ=90°の位置)における単位突出部33の断面を示している。図6において、単位突出部33の外周面34は、基端側湾曲部34aと、先端側湾曲部34bと、接続部34cとを有する。
【0021】
基端側湾曲部34aは、基端部31を構成する部分である。基端側湾曲部34aは、例えば図6の断面形状において所定の径Rを有する円弧状である。径Rについては予め設定することができる。
【0022】
先端側湾曲部34bは、先端部32を構成する部分である。先端側湾曲部34bは、例えば円弧状等、任意の曲線状に形成される。先端側湾曲部34bの形状については、予め設定してもよいし、後述する接続位置34dに応じて設定してもよい。
【0023】
接続部34cは、基端側湾曲部34aと先端側湾曲部34bとを接続する。接続部34cは、例えば一部に直線部分を含んでもよい。なお、接続部34cは、全体が直線状であってもよいし、直線部分を含まない形状であってもよい。接続部34cの形状については、予め設定してもよいし、後述する接続位置34dに応じて設定してもよい。
【0024】
基端側湾曲部34aと接続部34cとの間は、滑らかに接続される。また、先端側湾曲部34bと接続部34cとの間は、滑らかに接続される。
【0025】
中心軸AXの軸回り方向について分割面12から所定角度φとなる位置において、先端側湾曲部34bと接続部34cとの接続位置34dは、以下のように設定することができる。つまり、接続位置34dにおける接線に直交する第1仮想直線L1と、中心軸AXに垂直な第2仮想直線L2との角度をα(φ)とすると、
α(φ)∝(sinφ)
を満たすように接続位置34dが設定される(ただし、nは正の実数である)。本実施形態において、nの値を例えば自然数とすることができる。nの値が自然数である場合、例えばn=6とすることができる。なお、nの値が自然数である場合には、6に限定されず5以下又は7以上であってもよい。
【0026】
また、第2仮想直線L2と接続部34cとの間の角度θについては、φ=90°で最小値となるように任意に設定することができる。図6に示す例において、θ=60°としているが、この値に限定されない。
【0027】
次に、上記のように構成された加速空洞100の製造方法について説明する。図7は、本実施形態に係る加速空洞100の製造方法の一例を示すフローチャートである。図7に示すように、本実施形態に係る加速空洞100の製造方法は、凹部形成工程S10と、突出部形成工程S20と、接合工程S30とを含む。
【0028】
図8は、凹部形成工程S10の一例を示す図である。図8では、1つのセル部20について代表させて示している。図8に示すように、凹部形成工程S10では、分割面12に対応する被加工面52を有する母材50の当該被加工面52を切削することで、複数のセル部20及び連通部21に対応する凹部51を形成する。
【0029】
図9は、突出部形成工程S20の一例を示す図である。図9では、図8と同様に1つのセル部20について代表させて示している。図9に示すように、突出部形成工程S20では、被加工面52側から凹部51に切削工具Tを挿入することで、中心軸AXの軸線方向の先端部32側から基端部31側に向けて当該中心軸AXを基準とする径方向に広がる形状となるように突出部30に対応する単位突出部33を形成する。母材50に単位突出部33を形成することにより、分割部材11が形成される。
【0030】
単位突出部33の形状が先端部32側から基端部31側に向けて当該中心軸AXを基準とする径方向に広がる形状であるため、切削工具Tを挿入して単位突出部33のうち被加工面52から中心軸AXの軸回り方向に離れた位置を切削する際、切削工具Tと単位突出部33との干渉を抑制できる。
【0031】
接合工程S30では、形成された分割部材11同士を接合する。分割部材11は、分割面12同士が所定の隙間を空けた状態で対向するように接合する。分割部材11同士を接合することにより、加速空洞100が形成される。
【0032】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0033】
図10は、他の例に係る加速空洞200を示す図である。図10に示すように、加速空洞200は、筐体110が3つ以上の分割部材111を有する構成であってもよい。図10に示す例において、分割部材111は、4つ設けられる。4つの分割部材111は、中心軸AXを通る平面により中心軸AXの軸回り方向について等しい寸法に分割された構成である。セル部120は、4つの分割部材111のそれぞれに設けられる単位セル部123を組み合わせることで構成される。また、連通部121は、4つの分割部材111のそれぞれに設けられる単位連通部124を組み合わせることで構成される。
【0034】
加速空洞200において、1つの分割部材111について、分割面112が互いに直交するように2つ設けられる。この場合、突出部130は、分割面112から中心軸AXの軸回り方向に離れるほど径方向に広がるように形成される。つまり、それぞれの分割部材111において、単位突出部133は、中心軸AXの軸回り方向について、2つの分割面112との間の角度が45°となる方向に向けて径方向に外周面134が広がるように形成される。
【0035】
なお、図10では、加速空洞200の分割数が4つの場合を例に挙げて説明したが、加速空洞の分割数が3又は5以上の場合においても同様の説明が可能である。
【0036】
ここで、加速空洞の分割数をMとすると、突出部30の先端側湾曲部34bと接続部34cとの接続位置34dについて、
α(φ)∝(sinφ)
を満たす場合、φの値が0以上、π/2M未満となる範囲、及びφの値がπ/M以上、3π/2M未満となる範囲においては、φの値が大きくなるに従ってα(φ)の値が大きくなる、すなわちα(φ)が単調増加となる。
【0037】
一方、φの値がπ/2M以上、π/M未満となる範囲、及びφの値が3π/2M以上、2π/M未満となる範囲においては、φの値が大きくなるに従ってα(φ)の値が小さくなる、すなわちα(φ)が単調減少となる。
【0038】
以上のように、本開示の第1態様に係る加速空洞は、導電性を有する筒形状であり、中心軸AXに沿った平面状の分割面12で複数に分割された分割部材11を接合した状態で形成される筐体10と、筐体10の内部に当該筐体10の中心軸AXの軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部21により互いに連通された複数のセル部20と、筐体10の内部においてセル部20ごとに連通部21を囲う位置に配置され、軸線方向でそれぞれのセル部20の内側に向けて突出し、軸線方向の先端部32側から基端部31側に向けて分割面12から中心軸AXの軸回り方向に離れるほど径方向に広がるように形成された突出部30とを備える加速空洞100である。
【0039】
この構成によれば、突出部30の形状が先端部32側から基端部31側に向けて中心軸AXを基準とする径方向に広がる形状である。このため、分割部材11を製造する場合において、切削工具Tを挿入して単位突出部33のうち被加工面52から中心軸AXの軸回り方向に離れた位置を切削する際、切削工具Tと単位突出部33との干渉を抑制できる。したがって、容易に製造可能な加速空洞100を提供できる。
【0040】
本開示の第2態様に係る加速空洞は、第1態様に係る加速空洞において、突出部30が、基端部31を構成する基端側湾曲部34aと、先端部32を構成する先端側湾曲部34bと、基端側湾曲部34aと先端側湾曲部34bとを接続する接続部34cとを有し、基端側湾曲部34aと接続部34cとの間、先端側湾曲部34bと接続部34cとの間が、滑らかに接続される。
【0041】
この構成によれば、基端側湾曲部34aと接続部34cとの間、先端側湾曲部34bと接続部34cとの間が滑らかに接続されるため、突出部30の全体が滑らかな面により形成される。したがって、加速空洞100の使用時に、突出部30において過度に電圧がかかる部分が発生することを抑制できる。
【0042】
本開示の第3態様に係る加速空洞は、第2態様に係る加速空洞において、中心軸AXを通る平面による断面視において、基端側湾曲部34aは、円弧状であり、接続部34cは、直線部分を含む。
【0043】
この構成によれば、突出部30の基端部31側が径方向に広がった構成を容易に設計することができる。
【0044】
本開示の第4態様に係る加速空洞は、第2態様又は第3態様に係る加速空洞において、中心軸AXの軸回り方向について分割面12から所定角度φとなる位置において、先端側湾曲部34bと接続部34cとの接続位置34dは、当該接続位置34dにおける接線に直交する第1仮想直線と、中心軸AXに垂直な第2仮想直線との角度をα(φ)とし、nを正の実数とすると、
α(φ)∝(sinφ)
を満たすように設定される。
【0045】
この構成によれば、突出部30の先端部32側の設計を容易かつ適切に行うことができる。
【0046】
本開示の第5態様に係る加速空洞の製造方法は、導電性を有する筒形状であり、中心軸AXに沿った平面状の分割面12で複数に分割された分割部材11を接合した状態で形成される筐体10と、筐体10の内部に当該筐体10の中心軸AXの軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部21により互いに連通された複数のセル部20と、筐体10の内部においてセル部20ごとに連通部21を囲う位置に配置され、軸線方向でそれぞれのセル部20の内側に向けて突出する突出部30とを備える加速空洞の製造方法であって、分割面12に対応する被加工面52を有する母材の当該被加工面52を切削することで、複数のセル部20及び連通部21に対応する凹部51を形成する工程と、被加工面52側から凹部51に切削工具Tを挿入することで、中心軸AXの軸線方向の先端部32側から基端部31側に向けて当該中心軸AXを基準とする径方向に広がる形状となるように突出部30に対応する単位突出部33を形成する工程とを含む。
【0047】
この構成によれば、単位突出部33の形状が先端部32側から基端部31側に向けて当該中心軸AXを基準とする径方向に広がる形状であるため、切削工具Tを挿入して単位突出部33のうち被加工面52から中心軸AXの軸回り方向に離れた位置を切削する際、切削工具Tと単位突出部33との干渉を抑制できる。したがって、容易に製造可能な加速空洞100の製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0048】
10 筐体
11,111 分割部材
12,112 分割面
20 セル部
21 連通部
30,130 突出部
31 基端部
32 先端部
33,133 単位突出部
34 外周面
34a 基端側湾曲部
34b 先端側湾曲部
34c 接続部
34d 接続位置
50 母材
51 凹部
52 被加工面
100,200 加速空洞
AC 加速器
AX 中心軸
BS 線源
L1 第1仮想直線
L2 第2仮想直線
M 荷電粒子
S10 凹部形成工程
S20 突出部形成工程
S30 接合工程
T 切削工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10