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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025526
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240216BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240216BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240216BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240216BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240216BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04746
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129035
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】立川 克之
(72)【発明者】
【氏名】明本 斉
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DB66
5H127DC32
5H127DC42
5H127EE19
(57)【要約】
【課題】調圧弁の開度が小さくなるのに伴って生じる、カソード流路でのカソードガスの流量の急激な変化を抑制する。
【解決手段】燃料電池ユニット20は、アノード流路60aに供給されるアノードガスとカソード流路30aに供給されるカソードガスとの反応によって発電を行う燃料電池スタック21と、カソード流路30aの燃料電池スタック21よりも下流側に設けられ、座面に対して弁体が近づくことで開度が小さくなる調圧弁41と、弁体を移動させて調圧弁41の開度を制御する制御部80と、を有する。制御部80は、調圧弁41の開度が第1開度以下である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度を、調圧弁41の開度が第1開度より大きい開度である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度よりも遅い速度で、弁体を移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード流路に供給されるアノードガスとカソード流路に供給されるカソードガスとの反応によって発電を行う燃料電池スタックと、
前記カソード流路の前記燃料電池スタックよりも下流側に設けられ、座面に対して弁体が近づくことで開度が小さくなる調圧弁と、
前記弁体を移動させて前記調圧弁の開度を制御する制御部と、を有する燃料電池ユニットであって、
前記制御部は、前記調圧弁の開度が第1開度以下である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度を、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きい開度である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度よりも遅い速度で、前記弁体を移動させることを特徴とする燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記制御部は、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きい第2開度以上である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度を、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きくかつ前記第2開度より小さい場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度よりも速い速度で、前記弁体を移動させる請求項1に記載の燃料電池ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、前記調圧弁の開度を大きくするときは、前記調圧弁の開度が前記第1開度以下である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときよりも、速い速度で前記弁体を移動させる請求項1または請求項2に記載の燃料電池ユニット。
【請求項4】
前記調圧弁は、前記弁体が回転することで前記座面に対して前記弁体が近づくバタフライ弁である請求項1に記載の燃料電池ユニット。
【請求項5】
前記燃料電池スタックは、第1目標電力と、前記第1目標電力よりも小さい第2目標電力と、を含む複数の目標電力に切り替えられながら発電しており、
前記制御部は、前記目標電力が前記第1目標電力である場合に、前記調圧弁の開度を前記第1開度以下に制御する請求項1に記載の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の燃料電池ユニットは、燃料電池スタックと、調圧弁と、制御部と、を有する。燃料電池スタックは、アノード流路に供給されるアノードガスとカソード流路に供給されるカソードガスとの反応によって発電を行う。調圧弁は、カソード流路の燃料電池スタックよりも下流側に設けられている。制御部は、調圧弁の開度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-339845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
座面に対して弁体が近づくことで開度が小さくなる調圧弁においては、弁体が座面に比較的接近する所定開度から全閉までの低開度領域が調圧弁に存在する。低開度領域にて調圧弁の開度を小さくする場合、カソード流路の流路断面積のうちで弁体と座面との間でガスが流れる部分の断面積である有効断面積の変化の度合いが大きくなる。そのため、調圧弁を介して流れるカソード流路でのガスの流量が急激に変化する挙動が起こるおそれがある。こうした挙動は、燃料電池スタックでの出力低下に繋がるため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池ユニットは、アノード流路に供給されるアノードガスとカソード流路に供給されるカソードガスとの反応によって発電を行う燃料電池スタックと、前記カソード流路の前記燃料電池スタックよりも下流側に設けられ、座面に対して弁体が近づくことで開度が小さくなる調圧弁と、前記弁体を移動させて前記調圧弁の開度を制御する制御部と、を有する燃料電池ユニットであって、前記制御部は、前記調圧弁の開度が第1開度以下である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度を、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きい開度である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度よりも遅い速度で、前記弁体を移動させることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、調圧弁の開度が第1開度以下であるときに、調圧弁の開度が小さくなるのに伴って生じる、カソード流路でのカソードガスの流量の急激な変化を抑制できる。
【0007】
燃料電池ユニットにおいて、前記制御部は、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きい第2開度以上である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度を、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きくかつ前記第2開度より小さい場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度よりも速い速度で、前記弁体を移動させてもよい。
【0008】
上記構成によれば、調圧弁の開度を小さくする際に、調圧弁の開度が、第2開度以上であるとき、第1開度より大きくかつ第2開度より小さいとき、及び第1開度以下であるときで、段階的に弁体を移動させる速度を遅くできる。したがって、調圧弁の開度が第1開度より大きいときと第1開度以下であるときとの2段階で弁体を移動させる速度を変化させる場合よりも、調圧弁の開度が小さくなるのに伴う、カソード流路でのカソードガスの流量の急激な変化をさらに抑制できる。
【0009】
燃料電池ユニットにおいて、前記制御部は、前記調圧弁の開度を大きくするときは、前記調圧弁の開度が前記第1開度以下である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときよりも、速い速度で前記弁体を移動させてもよい。
【0010】
上記構成によれば、カソード流路でのカソードガスの流量の急激な変化が生じにくい調圧弁の開度を大きくするときには、弁体を早期に移動させることができるため、調圧弁の開度変化の応答性を高められる。
【0011】
燃料電池ユニットにおいて、前記調圧弁は、前記弁体が回転することで前記座面に対して前記弁体が近づくバタフライ弁であってもよい。
燃料電池ユニットにおいて、前記燃料電池スタックは、第1目標電力と、前記第1目標電力よりも小さい第2目標電力と、を含む複数の目標電力に切り替えられながら発電しており、前記制御部は、前記目標電力が前記第1目標電力である場合に、前記調圧弁の開度を前記第1開度以下に制御してもよい。
【0012】
上記構成によれば、弁体の移動速度の調整によって、カソード流路でのカソードガスの流量の急激な変化を抑制できるため、第1開度以下の調圧弁の開度領域を含めたより大きな開度の範囲で調圧弁の開度を調整することにより、目標電力を制御できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、調圧弁の開度が小さくなるのに伴って生じる、カソード流路でのカソードガスの流量の急激な変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における燃料電池ユニットの模式図である。
図2】調圧弁を示す模式図である。
図3】調圧弁を示す断面図である。
図4】調圧弁を示す断面図である。
図5】速度制御の処理手順を示すフローチャートである。
図6】時間と調圧弁の開度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、燃料電池ユニットを具体化した実施形態について図面にしたがって説明する。
図1に示すように、産業車両10は、負荷11と、電力変換部12と、キースイッチ13と、燃料電池ユニット20と、を備える。産業車両10は、例えば、フォークリフト又はトーイングトラクタである。
【0016】
負荷11は、電力によって駆動する装置である。負荷11は、例えば、電力によって駆動する電動機である。この電動機の駆動によって産業車両10は走行する。
電力変換部12は、燃料電池ユニット20から電力変換部12に入力された電力を変換して出力する。電力変換部12は、DC/DCコンバータ、及びインバータを含む。電力変換部12から出力された電力は負荷11に供給される。これにより負荷11は駆動する。
【0017】
キースイッチ13は、産業車両10のユーザによって操作される。ユーザによる操作によって、キースイッチ13はオンとオフとで切り替えられる。以下の説明において、キースイッチ13がオフされることをキーオフと称し、キースイッチ13がオンされることをキーオンと称する場合がある。
【0018】
<燃料電池ユニット>
燃料電池ユニット20は、カソード系30と、アノード系60と、希釈器69と、を有する。燃料電池ユニット20は、燃料電池スタック21と、制御部80と、を有する。燃料電池スタック21は、例えば、固体高分子形燃料電池である。燃料電池スタック21は、複数の燃料電池セル22を備える。燃料電池セル22は、アノードガスが供給されるアノード極と、カソードガスが供給されるカソード極と、アノード極とカソード極との間に配置されている電解質膜と、を備える。燃料電池セル22は、セパレータによって挟まれている。
【0019】
カソード系30は、カソード流路30aを備える。カソード流路30aは、燃料電池スタック21の内部を流れるカソード内部流路23を備える。カソード内部流路23にはカソードガスが流れる。カソード内部流路23は、例えば、燃料電池スタック21におけるカソード極に向かい合うセパレータに設けられている。カソード内部流路23は、流入口24と、流出口25と、を備える。カソードガスは、流入口24からカソード内部流路23に流入し、流出口25からカソード内部流路23外に流出する。
【0020】
アノード系60は、アノード流路60aを備える。アノード流路60aは、燃料電池スタック21の内部を流れるアノード内部流路26を備える。アノード内部流路26にはアノードガスが流れる。アノード内部流路26は、例えば、燃料電池スタック21におけるアノード極に向かい合うセパレータに設けられている。アノード内部流路26は、流入口27と、流出口28と、を備える。アノードガスは、流入口27からアノード内部流路26に流入し、流出口28からアノード内部流路26外に流出する。
【0021】
アノード内部流路26を流れるアノードガスと、カソード内部流路23を流れるカソードガスと、が反応することにより、燃料電池スタック21は発電を行う。言い換えると、燃料電池スタック21は、アノード流路60aに供給されたアノードガスとカソード流路30aに供給されたカソードガスとの反応によって発電を行う。なお、カソードガスは、酸化剤ガスである。酸化剤ガスとしては、例えば、空気中の酸素を挙げることができる。アノードガスは、燃料ガスである。燃料ガスとしては、例えば、水素ガスを挙げることができる。
【0022】
アノード系60は、タンク61と、アノードガス供給部62と、気液分離器65と、循環ポンプ66と、排気排水弁67と、を備える。アノード流路60aは、供給路63と、循環路64と、を備える。
【0023】
タンク61は、アノードガスを貯留している。アノードガス供給部62には、タンク61からアノードガスが供給される。アノードガス供給部62は、燃料電池スタック21に供給されるアノードガスの量を調整するための部材である。燃料電池スタック21に供給されるアノードガスの量は、アノードガス供給部62を制御することで調整可能である。アノードガス供給部62としては、例えば、インジェクタなどの電磁弁を用いることができる。
【0024】
供給路63は、アノードガス供給部62とアノード内部流路26の流入口27とを接続している。アノードガス供給部62から噴射されたアノードガスは、供給路63を通じて燃料電池スタック21に供給される。
【0025】
循環路64は、アノード内部流路26の流出口28と供給路63とを接続している。循環路64には、アノード排ガスが流れる。アノード排ガスは、未反応のアノードガスと、生成水と、を含む。生成水とは、燃料電池スタック21での発電によって生成される水である。循環路64は、アノード排ガスに含まれる未反応のアノードガスを供給路63に戻すための通路である。
【0026】
気液分離器65は、循環路64に設けられている。気液分離器65は、アノード排ガスをアノードガスと生成水とに分離する。アノード排ガスから分離された生成水は、気液分離器65に貯留される。
【0027】
循環ポンプ66は、循環路64に設けられている。循環ポンプ66は、気液分離器65によってアノード排ガスから分離されたアノードガスを供給路63に供給する。これにより、アノードガスが循環する。
【0028】
排気排水弁67は、気液分離器65に接続されている。排気排水弁67は、開状態と閉状態に切り替えられる。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65から生成水が排出される。排気排水弁67は、気液分離器65に貯留される生成水の量が閾値を上回った場合に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。排気排水弁67は、所定の時間間隔毎に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。
【0029】
気液分離器65は、希釈器69に接続されている。排気排水弁67が開状態になると、気液分離器65に貯留された生成水及びアノード排ガスが希釈器69に供給される。
カソード系30は、カソードガス吸入口31と、電動圧縮機32と、インタークーラ33と、封止弁40と、調圧弁41と、を備える。言い換えると、燃料電池ユニット20は、調圧弁41を有する。カソード流路30aは、カソード供給路34と、カソード排出路37と、を備える。
【0030】
カソードガス吸入口31は、燃料電池ユニット20にカソードガスを吸入するための吸入口である。カソードガスとして空気中の酸素を用いる場合、カソードガス吸入口31は大気に開放されていてもよい。カソードガス吸入口31は、カソードガスを貯蔵するガスボンベに接続されていてもよい。
【0031】
電動圧縮機32は、電動モータによって駆動する。電動圧縮機32は、燃料電池スタック21にカソードガスを供給する。詳細には、電動圧縮機32は、カソードガス吸入口31から供給されるカソードガスを圧縮して燃料電池スタック21に供給する。カソードガスは、カソードガス吸入口31から不図示のエアクリーナーを通って電動圧縮機32に供給されてもよい。電動圧縮機32から燃料電池スタック21に供給されたカソードガスは、カソード内部流路23を流れる。
【0032】
インタークーラ33には、電動圧縮機32から吐出されたカソードガスが供給される。インタークーラ33は、電動圧縮機32から供給されたカソードガスを冷却する。燃料電池スタック21に供給されるカソードガスは、インタークーラ33によって冷却された後のカソードガスである。
【0033】
カソード供給路34は、カソード流路30aのうち、燃料電池スタック21よりも上流側に位置する部分である。カソード供給路34は、電動圧縮機32とカソード内部流路23の流入口24とを接続している。カソード供給路34は、第1供給路35と、第2供給路36と、を含む。第1供給路35は、電動圧縮機32とインタークーラ33とを接続している。第2供給路36は、インタークーラ33とカソード内部流路23の流入口24とを接続している。
【0034】
カソード排出路37は、カソード流路30aのうち、燃料電池スタック21よりも下流側に位置する部分である。カソード排出路37は、カソード内部流路23の流出口25と希釈器69とを接続している。カソード排出路37は、カソード排ガスが流れる流路である。カソード排ガスは、燃料電池スタック21から排出されるカソードガスであって、生成水を含んだカソードガスである。カソード排ガスは、カソード排出路37から希釈器69に排出される。希釈器69は、気液分離器65から供給されたアノード排ガスをカソード排ガスによって希釈して大気中に排出する。
【0035】
封止弁40は、カソード供給路34に設けられている。本実施形態の封止弁40は、第2供給路36に設けられている。封止弁40は、第1供給路35に設けられていてもよい。封止弁40は、例えばカソード供給路34を封止するバタフライ弁である。封止弁40は、開状態と閉状態とに切り替えられる。封止弁40が開状態になると、カソード供給路34を介してカソード内部流路23にカソードガスが供給される。封止弁40が閉状態になると、カソード供給路34が封止される。
【0036】
<調圧弁>
調圧弁41は、カソード排出路37に設けられている。したがって、調圧弁41は、カソード流路30aの燃料電池スタック21よりも下流側に設けられている。調圧弁41は、バタフライ弁である。調圧弁41の開度が調整されることにより、燃料電池スタック21の内圧が調整される。調圧弁41の開度が小さいほど、燃料電池スタック21の内圧が高まる。調圧弁41が全閉にされると、カソード排出路37が封止される。
【0037】
図2に示すように、調圧弁41は、ボディ42と、シール部材44と、弁体48と、回転軸51と、減速機構52と、モータ54と、駆動装置55と、開度センサ58と、ストッパ59と、を備える。ボディ42は、ボディ42を貫通する流路43を備える。すなわち、ボディ42は筒状である。ボディ42がカソード排出路37に設けられることにより、流路43はカソード排出路37に連通している。
【0038】
シール部材44は、流路43に設けられている。シール部材44は、例えば、ゴム製である。シール部材44は、円環状である。シール部材44は、座面44aを有する。座面44aは、シール部材44の内周面である。シール部材44は、テーパ部45を備える。テーパ部45は、シール部材44のうち、シール部材44の軸線方向の第1端部46から第2端部47に向けて内径が小さくなる部分である。シール部材44は、ボディ42の内周面に沿って設けられている。
【0039】
弁体48は、流路43に設けられている。弁体48は、本体49と、連結部50と、を備える。本体49は、円板状である。本体49の直径は、テーパ部45の最大の内径よりも小さく、かつ、テーパ部45の最小の内径よりも大きい。
【0040】
回転軸51は、連結部50に設けられている。回転軸51の回転に伴い弁体48は回転する。回転軸51の回転に伴い弁体48が回転することによって、調圧弁41の開度が調整される。調圧弁41が全閉の場合、弁体48がシール部材44と密着する。これによって流路43が封止される。シール部材44は、弁体48をシールする。
【0041】
図3に示すように、調圧弁41において、座面44aから弁体48が離れることで開度が大きくなる。調圧弁41において、座面44aに対して弁体48が近づくことで開度が小さくなる。調圧弁41は、弁体48が回転することで座面44aに対して弁体48が近づく。
【0042】
流路43の流路断面積のうち、弁体48と座面44aの間でガスが流れる部分の断面積のことを、以下では調圧弁41の有効断面積とも称する。有効断面積は、座面44aに対して弁体48が近づくほど小さくなる。すなわち、調圧弁41の開度が小さくなるほど、調圧弁41の有効断面積は小さくなる。
【0043】
図4に示すように、調圧弁41には、調圧弁41の開度が座面44aに弁体48が接する開度であって調圧弁41が全閉ではない領域が存在する。この領域を、以下では低開度領域とも称する。弁体48が座面44aから離れた位置から座面44aに対して近づくように移動した後、弁体48が座面44aに接することで、調圧弁41の開度は低開度領域の開度となる。
【0044】
弁体48が座面44aから離れた位置から座面44aに接したタイミングにおいては、弁体48の周縁部のうちで、弁体48の周方向の一部が座面44aに接する。そのため、低開度領域においては、弁体48の周縁部のうちで座面44aに接していない部分と座面44aとの間にてガスの通過が可能であるため、調圧弁41の有効断面積は0(ゼロ)ではない。
【0045】
低開度領域において、調圧弁41の開度が小さく変更されると、弁体48は座面44aを押圧しながら移動する。このとき、シール部材44は、弁体48からの押圧を受けて変形する。これにより、低開度領域において調圧弁41の開度が小さくなるほど、弁体48の周縁部のうちで座面44aに接する部分の割合が増えるため、調圧弁41の有効断面積が小さくなる。調圧弁41の開度が全閉となると、弁体48の周縁部の全体が座面44aに接することにより、調圧弁41の有効断面積は0(ゼロ)となる。
【0046】
図2に示すように、減速機構52は、ギヤ53を備える。このギヤ53は、減速機構52が備える複数のギヤの1つである。減速機構52は、モータ54の駆動力を、ギヤ53を含む複数のギヤを介して回転軸51に伝達する。これにより、回転軸51が回転する。このように、ギヤ53はモータ54の駆動によって回転し、これにより弁体48が回転する。
【0047】
調圧弁41は、弁体48が閉じる方向に弁体48を付勢する不図示のスプリングを備える。モータ54から回転軸51に加わる力とスプリングからの力が釣り合う位置で、弁体48は保持される。調圧弁41の開度は、モータ54を制御することによって調整可能といえる。モータ54は、直流モータである。
【0048】
駆動装置55は、モータ54を駆動させる。詳細にいえば、駆動装置55は、モータ54に印加される電圧を変化させることによってモータ54の回転数を制御する。駆動装置55は、パルス幅変調方式である。駆動装置55は、スイッチング素子56を備える。スイッチング素子56は、モータ54に直列接続される。モータ54の電力源は、産業車両10に搭載される二次電池である。
【0049】
開度センサ58は、調圧弁41の開度を検出する。開度センサ58としては、例えば、ホール素子を用いることができる。開度センサ58としては、エンコーダを用いてもよい。
【0050】
ストッパ59は、ギヤ53の回転を規制する。弁体48が閉じる方向に回転軸51を回転させていくと、ギヤ53とストッパ59とが接触する。ギヤ53とストッパ59とが接触することによって回転軸51の回転も規制される。すなわち、弁体48が閉じる方向への弁体48の回転は、ギヤ53がストッパ59に接触する位置で停止する。調圧弁41の全閉とは、ギヤ53がストッパ59に接触する状態である。
【0051】
<制御部>
図1に示すように、制御部80は、プロセッサ81と、記憶部82と、を備える。記憶部82は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部82は、処理をプロセッサ81に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部82、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部80は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部80は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ81、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0052】
制御部80は、燃料電池ユニット20の制御を行う。例えば、制御部80は、燃料電池スタック21の出力電力[kW]を制御する。燃料電池スタック21の出力電力は、燃料電池スタック21に供給されるカソードガスの量と、燃料電池スタック21に供給されるアノードガスの量と、によって変化する。燃料電池スタック21の出力電力は、燃料電池スタック21の発電電力である。制御部80は、アノードガス供給部62を制御することで、燃料電池スタック21へのアノードガスの供給量を制御する。制御部80は、電動圧縮機32を制御することで、燃料電池スタック21へのカソードガスの供給量を制御する。
【0053】
制御部80は、燃料電池スタック21の発電についての制御を行う。制御部80は、燃料電池スタック21の発電状態と発電停止状態とを切り替える。発電状態は、低発電状態、中発電状態、及び高発電状態を含む。制御部80は、燃料電池スタック21の発電状態を遷移させることで、燃料電池スタック21の発電電力を段階的に変化させることができる。
【0054】
制御部80は、燃料電池スタック21の発電電力の目標値である目標電力Eを変更することにより、燃料電池スタック21の発電状態を切り替えている。燃料電池スタック21は、第1目標電力E1と、第2目標電力E2と、を含む複数の目標電力Eに切り替えられながら発電している。詳細には、燃料電池スタック21を高発電状態に制御するとき、制御部80は目標電力Eを第1目標電力E1として制御を行う。燃料電池スタック21を中発電状態に制御するとき、制御部80は目標電力Eを第2目標電力E2として制御を行う。燃料電池スタック21を低発電状態に制御するとき、制御部80は目標電力Eを第3目標電力E3として制御を行う。第3目標電力E3は、第2目標電力E2よりも小さい。第3目標電力E3は、例えば、3[kW]である。第2目標電力E2は、例えば、5[kW]である。第2目標電力E2は第1目標電力E1よりも小さい。第1目標電力E1は、例えば、8[kW]である。制御部80は、目標電力Eに応じて、燃料電池スタック21に供給されるカソードガスの量と、燃料電池スタック21に供給されるアノードガスの量と、を変更する。
【0055】
制御部80は、例えば、封止弁40の開度を制御する。制御部80は、キースイッチ13のオンとオフとを判定可能である。例えば、キースイッチ13がオンになった場合、キースイッチ13がオンになったことが産業車両10に搭載された不図示の車両制御装置から制御部80に通知される。同様に、キースイッチ13がオフになった場合、キースイッチ13がオフになったことが車両制御装置から制御部80に通知される。これにより、制御部80は、キースイッチ13のオンとオフとを判定することができる。
【0056】
図2に示すように、制御部80は、弁体48を移動させて調圧弁41の開度を制御する。詳細には、制御部80からのパルス波によって、駆動装置55はスイッチング素子56のスイッチングを行う。パルス波は、オン信号とオフ信号とが周期的に切り替わる信号である。パルス波の1周期におけるオン信号の割合をデューティと称する。制御部80は、デューティを調整することによってモータ54に印加される電圧を変化させる。制御部80は、モータ54を駆動させることによって調圧弁41の開度を調整することができる。
【0057】
図1に示すように、制御部80は、産業車両10がキーオフされると、アノードガスの供給、及びカソードガスの供給を停止することによって燃料電池スタック21の発電を停止する。制御部80は、アノード内部流路26を封止することによって、アノードガスの供給を停止する。アノード内部流路26の封止は、排気排水弁67を閉状態に維持することで行われる。
【0058】
制御部80は、カソード内部流路23を封止することによって、カソードガスの供給を停止する。カソード内部流路23の封止は、封止弁40及び調圧弁41を閉状態に維持することで行われる。
【0059】
制御部80は、産業車両10がキーオンされると、アノードガスの供給、及びカソードガスの供給を行うことによって燃料電池スタック21の発電を行う。カソードガスの供給が行われる際、制御部80は、封止弁40を開状態に維持するとともに、調圧弁41の開度を調整する。
【0060】
制御部80は、燃料電池スタック21の目標電力Eが大きいほど調圧弁41の開度が小さくなるように、調圧弁41の開度を調整する。制御部80は、燃料電池スタック21の目標電力Eが第1目標電力E1である場合に、調圧弁41の開度を第1開度A1以下に制御する。例えば、燃料電池スタック21の目標電力Eが第2目標電力E2及び第3目標電力E3のいずれかである状態から第1目標電力E1に切り替わった場合、制御部80は、調圧弁41の開度を低開度領域内の開度に変更する。燃料電池スタック21の目標電力Eが第1目標電力E1である間は、低開度領域内で調圧弁41の開度を調整する。これにより、制御部80は、調圧弁41の開度を第1開度A1以下に制御する。
【0061】
<速度制御>
調圧弁41の開度の調整と併せて、制御部80は速度制御を行う。速度制御において、制御部80は、調圧弁41の開度に応じて弁体48の移動速度を調整する。弁体48の移動速度は、調圧弁41の角速度[°/sec]である。制御部80は、開度センサ58からの検出値に基づいて、調圧弁41の開度の大きさを判断する。
【0062】
制御部80は、調圧弁41の開度を小さくするときに、第1速度SP1、第2速度SP2、及び第3速度SP3のいずれかに弁体48の移動速度を切り替える。詳細には、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である場合に調圧弁41の開度を小さくするとき、制御部80は弁体48の移動速度を第1速度SP1に設定する。調圧弁41が第1開度A1よりも大きい第2開度A2以上である場合に調圧弁41の開度を小さくするとき、制御部80は弁体48の移動速度を第2速度SP2に設定する。調圧弁41が第1開度A1より大きくかつ第2開度A2より小さい開度である場合に調圧弁41の開度を小さくするとき、制御部80は弁体48の移動速度を第3速度SP3に設定する。
【0063】
第1開度A1は、座面44aに弁体48が接する開度であって弁体48と座面44aの間でカソードガスが流れる開度である。第1開度A1は、低開度領域に含まれる調圧弁41の開度の中で、最も大きい開度である。
【0064】
第3速度SP3は、第2速度SP2よりも遅い速度である。第1速度SP1は、第2速度SP2及び第3速度SP3よりも遅い速度である。したがって、制御部80は、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度を、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きい開度である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度よりも遅い速度で、弁体48を移動させる。制御部80は、調圧弁41の開度が第2開度A2以上である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度を、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きくかつ第2開度A2より小さい場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度よりも速い速度で、弁体48を移動させる。
【0065】
本実施形態の制御部80は、調圧弁41の開度を大きくするときに、弁体48の移動速度を第2速度SP2に設定する。すなわち、制御部80は、調圧弁41の開度を大きくするときと、調圧弁41が第2開度A2以上である場合に調圧弁41の開度を小さくするときと、で弁体48を同じ速度で移動させる。したがって、制御部80は、調圧弁41の開度を大きくするときは、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である場合に調圧弁41の開度を小さくするときよりも、速い速度で弁体48を移動させる。
【0066】
次に、速度制御の処理手順の一例について図5を用いて説明する。図5に示す速度制御の処理は、例えばキーオンされたことを条件に、所定時間毎に繰り返し行われる。
図5に示すように、速度制御が開始されると、制御部80は、調圧弁41の開度を小さく変更するか否かを判断する(ステップS110)。調圧弁41の開度を小さく変更しないと判断すると(ステップS110:NO)、制御部80は、弁体48の移動速度を第2速度SP2に設定する(ステップS120)。なお、調圧弁41の開度を小さく変更しない場合とは、制御部80が調圧弁41の開度を大きく変更する場合と、制御部80が調圧弁41の開度を変更しない場合と、のいずれかである。ステップS120の処理を行った後、制御部80は本制御を終了する。
【0067】
調圧弁41の開度を小さく変更すると判断すると(ステップS110:YES)、制御部80は、調圧弁41の開度が第2開度A2以上であるか否かを判断する(ステップS130)。調圧弁41の開度が第2開度A2以上であると判断すると(ステップS130:YES)、制御部80は、弁体48の移動速度を第2速度SP2に設定して(ステップS120)、本制御を終了する。
【0068】
調圧弁41の開度が第2開度A2より小さいと判断すると(ステップS130:NO)、制御部80は、調圧弁41の開度が第1開度A1以下であるか否かを判断する(ステップS140)。調圧弁41の開度が第1開度A1より大きいと判断すると(ステップS140:NO)、制御部80は、弁体48の移動速度を第3速度SP3に設定する(ステップS150)。ステップS150の処理を行った後、制御部80は本制御を終了する。
【0069】
調圧弁41の開度が第1開度A1以下であると判断すると(ステップS140:YES)、制御部80は、弁体48の移動速度を第1速度SP1に設定する(ステップS160)。ステップS160の処理を行った後、制御部80は本制御を終了する。
【0070】
<調圧弁の開度と弁体の移動速度との関係>
図6に調圧弁41の開度の変化の一例を示す。図6の横軸は時間を示し、縦軸は調圧弁41の開度を示す。この例においては、調圧弁41が全開状態となる最大開度Amaxである状態から目標開度Atに調整される場合について説明する。
【0071】
時間t1において、目標開度Atが第1開度A1以下の所定の開度に設定されると、制御部80は、最大開度Amaxから目標開度Atへと調圧弁41の開度変更を開始する。調圧弁41の開度が第2開度A2以上である間は、制御部80は、弁体48の移動速度を第2速度SP2に設定することにより、第2速度SP2で弁体48が移動する。
【0072】
調圧弁41の開度が第2開度A2未満になると、制御部80は、弁体48の移動速度を第3速度SP3に設定することにより、第3速度SP3で弁体48が移動する。これにより、弁体48の移動速度が遅くなる。第3速度SP3で弁体48が移動するときは、第2速度SP2で弁体48が移動するときよりも、単位時間あたりの調圧弁41の開度の変化量が小さくなる。調圧弁41の開度が第1開度A1以下になるまでは、弁体48の移動速度が第3速度SP3に維持される。
【0073】
時間t2において、調圧弁41の開度が第1開度A1以下になると、制御部80は、弁体48の移動速度を第1速度SP1に設定することにより、第1速度SP1で弁体48が移動する。これにより、弁体48の移動速度が遅くなる。第1速度SP1で弁体48が移動するときは、第2速度SP2及び第3速度SP3のいずれかで弁体48が移動するときよりも、単位時間あたりの調圧弁41の開度の変化量が小さくなる。調圧弁41の開度が第1開度A1以下の間は、弁体48の移動速度が第1速度SP1に維持される。
【0074】
時間t3において、目標開度Atが最大開度Amaxに設定されると、制御部80は、弁体48の移動速度を第2速度SP2に設定することにより、第2速度SP2で弁体48が移動する。制御部80は、最大開度Amaxへと調圧弁41の開度変更を行う。
【0075】
[本実施形態の作用]
次に、本実施形態での作用について説明する。
調圧弁41の弁体48が座面44aに接する低開度領域にて調圧弁41の開度を小さくする場合、弁体48が座面44aに接していないときに調圧弁41の開度を小さくする場合よりも、有効断面積の変化の度合いが大きくなる。
【0076】
本実施形態では、調圧弁41の開度が第1開度A1以下であるときに調圧弁41の開度を小さくする場合、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きい開度であるときに調圧弁41の開度を小さくする場合よりも、遅い速度で弁体48を移動させる。調圧弁41が第1開度A1以下である低開度領域において、調圧弁41の開度が小さくなるのに伴ってカソード流路30aでのカソードガスの流量は変化するが、弁体48の移動速度を遅くすることでカソードガスの流量を緩やかに変化させることができる。
【0077】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)制御部80は、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度を、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きい開度である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度よりも遅い速度で、弁体48を移動させる。したがって、調圧弁41の開度が第1開度A1以下であるときに、調圧弁41の開度が小さくなるのに伴って生じる、カソード流路30aでのカソードガスの流量の急激な変化を抑制できる。
【0078】
(2)制御部80は、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きい第2開度A2以上である場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度を、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きくかつ第2開度A2より小さい場合に調圧弁41の開度を小さくするときの速度よりも速い速度で、弁体48を移動させる。そのため、調圧弁41の開度を小さくする際に、調圧弁41の開度が、第2開度A2以上であるとき、第1開度A1より大きくかつ第2開度A2より小さいとき、及び第1開度A1以下であるときで、段階的に弁体48を移動させる速度を遅くできる。したがって、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きいときと第1開度A1以下であるときとの2段階で弁体48を移動させる速度を変化させる場合よりも、調圧弁41の開度が小さくなるのに伴うカソードガスの流量の急激な変化をさらに抑制できる。
【0079】
(3)制御部80は、調圧弁41の開度を大きくするときは、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である場合に調圧弁41の開度を小さくするときよりも、速い速度で弁体48を移動させる。そのため、カソード流路30aでのカソードガスの流量の急激な変化が生じにくい調圧弁41の開度を大きくするときには、弁体48を早期に移動させることができるため、調圧弁41の開度変化の応答性を高められる。
【0080】
(4)燃料電池スタック21は、第1目標電力E1と、第1目標電力E1よりも小さい第2目標電力E2と、を含む複数の目標電力Eに切り替えられながら発電している。制御部80は、目標電力Eが第1目標電力E1である場合に、調圧弁41の開度を第1開度A1以下に制御する。弁体48の移動速度の調整によって、カソード流路30aでのカソードガスの流量の急激な変化を抑制できるため、第1開度A1以下の調圧弁41の開度領域を含めたより大きな開度の範囲で調圧弁41の開度を調整することにより、目標電力Eを制御できる。
【0081】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0082】
○ 燃料電池スタック21の目標電力Eには、第1目標電力E1、第2目標電力E2、及び第3目標電力E3に加えて、1以上の目標電力Eが含まれてもよい。燃料電池スタック21の目標電力Eに第3目標電力E3が含まれていなくてもよい。要するに、燃料電池スタック21は、第1目標電力E1と、第1目標電力E1よりも小さい第2目標電力E2と、を含む複数の目標電力Eに切り替えられながら発電するものであればよい。
【0083】
○ 燃料電池スタック21の目標電力Eは、第1目標電力E1及び第2目標電力E2といった異なる値に切り替えられず、一定の電力であってもよい。
○ 調圧弁41としては、座面44aに対して弁体48が近づくことで開度が小さくなる弁であれば、グローブ弁やボール弁といったバタフライ弁以外の弁を採用可能である。
【0084】
○ 調圧弁41の開度を大きくするときの弁体48の移動速度は、第3速度SP3など、第2速度SP2未満の速度であってもよい。調圧弁41の開度を大きくするときの弁体48の移動速度は、第1速度SP1以下であってもよい。
【0085】
○ 制御部80は、調圧弁41の開度を小さくするときの弁体48の移動速度として、第1速度SP1、第2速度SP2、及び第3速度SP3に加えて、これら以外の1以上の速度に設定してもよい。例えば、制御部80は、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きくかつ第2開度A2より小さい場合に調圧弁41の開度を小さくするとき、調圧弁41の開度が小さくなるほど遅くなるように、弁体48の移動速度を複数の速度に変化させてもよい。例えば、制御部80は、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である場合に調圧弁41の開度を小さくするとき、調圧弁41の開度が小さくなるほど遅くなるように、弁体48の移動速度を複数の速度に変化させてもよい。
【0086】
○ 調圧弁41の開度が第2開度A2以上である場合に調圧弁41の開度を小さくするときと、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きくかつ第2開度A2より小さい場合に調圧弁41の開度を小さくするときと、で弁体48の移動速度を同じにしてもよい。要するに、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である場合に調圧弁41の開度が小さくなるときは、調圧弁41の開度が第1開度A1より大きい開度である場合に調圧弁41の開度が小さくなるときよりも、遅い速度で弁体48が移動すればよい。
【0087】
○ 第1速度SP1、第2速度SP2、及び第3速度SP3は弁体48を移動させる速度の上限値であってもよい。すなわち、これら上限値の速度以下にて弁体48の移動速度を制御してもよい。この場合、調圧弁41の開度が第2開度A2以上であるときに調圧弁41の開度を小さくするとき、弁体48の移動速度の下限値は第2速度SP2より速い速度に設定される。調圧弁41の開度が第1開度A1より大きくかつ第2開度A2より小さいときに調圧弁41の開度を小さくするとき、弁体48の移動速度の下限値は第1速度SP1より速い速度に設定される。
【0088】
○ 制御部80による速度制御は、キーオンが行われることに限られず、ユーザによる任意の操作によって行ってもよい。例えば、燃料電池ユニット20に設けられたレバー、スイッチ、押しボタン、タッチパネルなどの操作によって速度制御が行われてもよい。
【0089】
○ 燃料電池ユニット20は、乗用車、船舶、鉄道などに搭載されていてもよい。
○ 燃料電池ユニット20は、定置式の発電装置として用いられてもよい。
実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
【0090】
<付記1>
アノード流路に供給されるアノードガスとカソード流路に供給されるカソードガスとの反応によって発電を行う燃料電池スタックと、
前記カソード流路の前記燃料電池スタックよりも下流側に設けられ、座面に対して弁体が近づくことで開度が小さくなる調圧弁と、
前記弁体を移動させて前記調圧弁の開度を制御する制御部と、を有する燃料電池ユニットであって、
前記制御部は、前記調圧弁の開度が第1開度以下である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度を、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きい開度である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度よりも遅い速度で、前記弁体を移動させることを特徴とする燃料電池ユニット。
【0091】
<付記2>
前記制御部は、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きい第2開度以上である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度を、前記調圧弁の開度が前記第1開度より大きくかつ前記第2開度より小さい場合に前記調圧弁の開度を小さくするときの速度よりも速い速度で、前記弁体を移動させる<付記1>に記載の燃料電池ユニット。
【0092】
<付記3>
前記制御部は、前記調圧弁の開度を大きくするときは、前記調圧弁の開度が前記第1開度以下である場合に前記調圧弁の開度を小さくするときよりも、速い速度で前記弁体を移動させる<付記1>または<付記2>に記載の燃料電池ユニット。
【0093】
<付記4>
前記調圧弁は、前記弁体が回転することで前記座面に対して前記弁体が近づくバタフライ弁である<付記1>~<付記3>のいずれか一つに記載の燃料電池ユニット。
【0094】
<付記5>
前記燃料電池スタックは、第1目標電力と、前記第1目標電力よりも小さい第2目標電力と、を含む複数の目標電力に切り替えられながら発電しており、
前記制御部は、前記目標電力が前記第1目標電力である場合に、前記調圧弁の開度を前記第1開度以下に制御する<付記1>~<付記4>のいずれか一つに記載の燃料電池ユニット。
【符号の説明】
【0095】
A1…第1開度、A2…第2開度、E…目標電力、E1…第1目標電力、E2…第2目標電力、20…燃料電池ユニット、21…燃料電池スタック、30a…カソード流路、41…調圧弁、44a…座面、48…弁体、60a…アノード流路、80…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6