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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025527
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】アンモニアエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 27/02 20060101AFI20240216BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20240216BHJP
   F23C 13/08 20060101ALI20240216BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240216BHJP
   F02M 31/04 20060101ALI20240216BHJP
   F02M 31/13 20060101ALI20240216BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240216BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F02M27/02 Z
C01B3/04 B
F23C13/08
F02M21/02 K
F02M31/04 C
F02M31/13 301Z
F01N3/24 B
F02M25/00 F
F02M25/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129038
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀人
【テーマコード(参考)】
3G091
3K065
【Fターム(参考)】
3G091AA19
3G091AB03
3G091AB04
3K065TC07
3K065TD05
3K065TK03
3K065TL08
3K065TN17
(57)【要約】
【課題】改質器からアンモニアエンジンに供給されるガス中の水素濃度を高める。
【解決手段】吸気流路12は、アンモニアエンジン11に空気を供給する。改質器23は、アンモニアガスを燃焼する燃焼部41と、アンモニアガスを改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質部42と、を有する。第1供給部は、空気流路にアンモニアガスを供給する。第2供給部は、改質部42にアンモニアガスを供給する。改質ガス流路31は、改質部42により生成された改質ガスを吸気流路に導入する。改質器23は、筐体と、筐体の内部に位置する筒状の区画壁と、を有する。筐体の内部は、区画壁の内部に位置する第1区画室と、区画壁と筐体との間に位置する第2区画室と、に区画される。燃焼部41は、第1区画室に位置する。改質部42は、第2区画室に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料としてアンモニアガスを用いるアンモニアエンジンと、
前記アンモニアエンジンに空気を供給する吸気流路と、
アンモニアガスを燃焼する燃焼部と、アンモニアガスを改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質部と、を有する改質器と、
前記燃焼部に空気を供給する空気流路と、
前記空気流路中の空気を加熱する加熱部と、
前記空気流路にアンモニアガスを供給する第1供給部と、
前記改質部にアンモニアガスを供給する第2供給部と、
前記改質部により生成された前記改質ガスを前記吸気流路に導入する改質ガス流路と、を備え、
前記改質器は、筐体と、前記筐体の内部に位置する筒状の区画壁と、を有し、
前記筐体の内部は、前記区画壁の内部に位置する第1区画室と、前記区画壁と前記筐体との間に位置する第2区画室と、に区画され、
前記燃焼部は、前記第1区画室に位置し、
前記改質部は、前記第2区画室に位置する、ことを特徴とするアンモニアエンジンシステム。
【請求項2】
前記アンモニアエンジンから排気ガスが排出される排気流路と、
前記燃焼部により生成された排出ガスが前記燃焼部から排出される排出ガス流路と、
前記排気流路に設けられ、前記排気流路中の排気ガスに残留するアンモニアガスを酸化する三元触媒と、を備え、
前記排出ガス流路は、前記排気流路のうちで前記三元触媒よりも上流に接続される、請求項1に記載のアンモニアエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のアンモニアエンジンシステムは、燃料としてアンモニアガスを用いるアンモニアエンジンと、アンモニアエンジンに空気を供給する吸気流路と、改質器と、改質ガス流路と、を備える。改質器は、アンモニアガスの燃焼を行うとともに、アンモニアガスを改質して水素を含有した改質ガスを生成する。改質ガス流路は、改質器により生成された改質ガスを吸気流路に導入する。吸気流路を流れる空気と共に改質ガスがアンモニアエンジンに導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-42707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアエンジンでの燃焼の安定化を目的として、改質器からアンモニアエンジンに水素濃度のより高いガスを供給することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するアンモニアエンジンシステムは、燃料としてアンモニアガスを用いるアンモニアエンジンと、前記アンモニアエンジンに空気を供給する吸気流路と、アンモニアガスを燃焼する燃焼部と、アンモニアガスを改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質部と、を有する改質器と、前記燃焼部に空気を供給する空気流路と、前記空気流路中の空気を加熱する加熱部と、前記空気流路にアンモニアガスを供給する第1供給部と、前記改質部にアンモニアガスを供給する第2供給部と、前記改質部により生成された前記改質ガスを前記吸気流路に導入する改質ガス流路と、を備え、前記改質器は、筐体と、前記筐体の内部に位置する筒状の区画壁と、を有し、前記筐体の内部は、前記区画壁の内部に位置する第1区画室と、前記区画壁と前記筐体との間に位置する第2区画室と、に区画され、前記燃焼部は、前記第1区画室に位置し、前記改質部は、前記第2区画室に位置する、ことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、燃焼部と改質部とは互いに隔絶されている。改質器において、燃焼部が生成した排出ガスと、改質部が生成した改質ガスと、は互いに混合されない。排出ガスと混合されない状態で、改質ガスを改質部から改質ガス流路に導入できる。改質ガスは、改質ガス流路から吸気流路に導入した後、吸気流路中の空気と共にアンモニアエンジンに供給される。したがって、燃焼部と改質部とが互いに隔絶されないために排出ガスと混合された改質ガスがアンモニアエンジンに供給される場合と比較して、改質器からアンモニアエンジンに供給されるガス中の水素濃度を高められる。
【0007】
アンモニアエンジンシステムにおいて、前記アンモニアエンジンから排気ガスが排出される排気流路と、前記燃焼部により生成された排出ガスが前記燃焼部から排出される排出ガス流路と、前記排気流路に設けられ、前記排気流路中の排気ガスに残留するアンモニアガスを酸化する三元触媒と、を備え、前記排出ガス流路は、前記排気流路のうちで前記三元触媒よりも上流に接続されてもよい。
【0008】
上記構成によれば、排出ガスは燃焼部でのアンモニアガスの燃焼によって生成されるため、燃焼部から排出ガス流路に高温の排出ガスが排出される。排出ガス流路は、排気流路のうちで三元触媒よりも上流に接続されている。そのため、排気流路のうちで三元触媒より上流に排出ガス流路から高温の排出ガスが導入される。したがって、高温の排出ガスが三元触媒に流入することにより、排出ガスの熱によって三元触媒の暖機を促進できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、改質器からアンモニアエンジンに供給されるガス中の水素濃度を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態におけるアンモニアエンジンシステムの模式図である。
図2】改質器の断面図である。
図3】変更例におけるアンモニアエンジンシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、アンモニアエンジンシステムを具体化した一実施形態について図1及び図2を用いて説明する。
<アンモニアエンジンシステムの概略構成>
図1に示すように、アンモニアエンジンシステム10は、アンモニアエンジン11と、吸気流路12と、排気流路13と、を備えている。本実施形態のアンモニアエンジンシステム10は、エンジン式の車両に搭載されている。
【0012】
アンモニアエンジン11は、燃料としてアンモニア(NH)ガスを用いる。アンモニアエンジン11は、燃焼室11aを有している。アンモニアエンジン11は、例えば4気筒エンジンであり、例えば4つの燃焼室11aを有する。
【0013】
吸気流路12は、アンモニアエンジン11に空気を供給する流路である。吸気流路12は燃焼室11aに接続されている。吸気流路12を流れる空気は、燃焼室11aに供給される。
【0014】
排気流路13は、アンモニアエンジン11から排気ガスが排出される流路である。排気流路13は燃焼室11aに接続されている。燃焼室11aにて発生した排気ガスは、排気流路13に排出された後、排気流路13を流れる。
【0015】
アンモニアエンジンシステム10は、エアクリーナ19を備えている。エアクリーナ19は、空気に含まれる塵及び埃等の異物を除去する。エアクリーナ19は、吸気流路12の端部に接続されている。エアクリーナ19によって異物が除去された空気が吸気流路12に流入する。
【0016】
アンモニアエンジンシステム10は、排気触媒ユニット16を備えている。排気触媒ユニット16は、排気流路13に設けられている。排気触媒ユニット16は、三元触媒17と、SCR触媒18と、を有している。
【0017】
三元触媒17は、排気流路13を流れる排気ガスに残留するアンモニアガスを酸化することにより、排気ガスからアンモニアガスを除去する。三元触媒17は、排気ガスの熱によって活性化される。
【0018】
SCR触媒18は、排気流路13における三元触媒17よりも下流側に配置されている。SCR触媒18は、選択式還元触媒(Selective Catalytic Reduction)である。SCR触媒18は、排気流路13を流れる排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)をアンモニアにより窒素(N)に還元する。さらに、SCR触媒18は、三元触媒17を通過したアンモニアを捕集して除去する。
【0019】
アンモニアエンジンシステム10は、アンモニアタンク21と、気化器22と、改質器23と、を備えている。アンモニアタンク21は、液体状態のアンモニアである液体アンモニアを貯蔵する。気化器22は、アンモニアタンク21に貯蔵された液体アンモニアを気化させることにより、アンモニアガスを生成する。
【0020】
アンモニアエンジンシステム10は、メインインジェクタ14と、スロットルバルブ15と、を備えている。メインインジェクタ14は、例えば電磁式の噴射弁である。メインインジェクタ14は、気化器22と接続される。気化器22からメインインジェクタ14にアンモニアガスが供給される。メインインジェクタ14は、吸気流路12内にアンモニアガスを噴射することにより、吸気流路12にアンモニアガスを供給する。メインインジェクタ14から吸気流路12に供給されたアンモニアガスは、吸気流路12を流れる空気と共に燃焼室11aに流入する。
【0021】
スロットルバルブ15は、吸気流路12に設けられている。スロットルバルブ15は、例えば電磁式の流量制御弁である。スロットルバルブ15によって吸気流路12の開度が調整されることにより、吸気流路12から燃焼室11aに供給される空気の量が調整される。
【0022】
アンモニアエンジンシステム10は、改質器23を備えている。改質器23は、アンモニアガスを燃焼する燃焼部41と、アンモニアガスを改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質部42と、を有する。
【0023】
アンモニアエンジンシステム10は、空気流路24を備えている。空気流路24は、吸気流路12と改質器23とに接続されている。具体的には、空気流路24の一端は、吸気流路12におけるスロットルバルブ15よりも上流側に接続されている。空気流路24の他端は、改質器23の燃焼部41に接続されている。空気流路24は、燃焼部41に空気を供給する流路である。
【0024】
アンモニアエンジンシステム10は、送風装置25を備えている。送風装置25は、例えばブロアである。送風装置25は、空気流路24に設けられている。送風装置25の駆動に伴って負圧が発生することにより、空気流路24を介して改質器23に供給される空気の流量が調整される。
【0025】
アンモニアエンジンシステム10は、アンモニア流路26と、第1改質インジェクタ27と、第2改質インジェクタ28と、を備えている。アンモニア流路26は、改質器23の外部と改質器23との間で延びている。アンモニア流路26は、改質器23の改質部42に接続されている。
【0026】
第1改質インジェクタ27及び第2改質インジェクタ28は、例えば電磁式の噴射弁である。第1改質インジェクタ27及び第2改質インジェクタ28は、気化器22と接続される。気化器22から第1改質インジェクタ27及び第2改質インジェクタ28の各々に、アンモニアガスが供給される。
【0027】
第1改質インジェクタ27は、空気流路24にアンモニアガスを噴射する。詳細には、第1改質インジェクタ27は、空気流路24のうち、送風装置25よりも下流の箇所に向けてアンモニアガスを噴射する。第1改質インジェクタ27は、空気流路24にアンモニアガスを供給する第1供給部として機能する。第1改質インジェクタ27から空気流路24に供給されたアンモニアガスは、空気流路24を流れる空気と共に燃焼部41に流入する。
【0028】
第2改質インジェクタ28は、アンモニア流路26にアンモニアガスを噴射する。第2改質インジェクタ28からアンモニア流路26に噴射されたアンモニアガスは、アンモニア流路26を通って改質器23の改質部42に供給される。アンモニア流路26及び第2改質インジェクタ28は、改質部42にアンモニアガスを供給する第2供給部として機能する。
【0029】
アンモニアエンジンシステム10は、加熱部29を備えている。加熱部29は、空気流路24に設けられている。詳細には、加熱部29は、空気流路24のうち、第1改質インジェクタ27からアンモニアガスが供給される箇所よりも下流側に設けられている。加熱部29は、空気流路24中の空気を加熱する。加熱部29は例えば電気ヒータである。詳細には、例えば加熱部29は、不図示の発熱体及び電源を有する。電源によって発熱体を通電することにより、加熱部29は、空気流路24中の空気と共に空気流路24中のアンモニアガスを加熱する。加熱部29による加熱を受けて昇温した空気及びアンモニアガスは、空気流路24から改質器23の燃焼部41に供給される。
【0030】
アンモニアエンジンシステム10は、改質ガス流路31を備えている。改質ガス流路31は、改質器23の改質部42と吸気流路12とを接続している。具体的には、改質ガス流路31の一端は、改質部42に接続され、改質ガス流路31の他端は、吸気流路12におけるスロットルバルブ15より下流側に接続されている。改質ガス流路31は、改質部42により生成された改質ガスを吸気流路12に導入する流路である。
【0031】
アンモニアエンジンシステム10は、クーラ32と、冷却水流路33と、を備えている。クーラ32は、改質ガス流路31に設けられている。クーラ32は、改質ガス流路31を流れる改質ガスを冷却する。クーラ32によって冷却された改質ガスが、改質ガス流路31を通って吸気流路12に導入される。これにより、改質ガスの熱によるスロットルバルブ15等の吸気系部品の損傷を抑制できる。改質ガスの冷却に伴って改質ガスの体積膨張が抑制されるため、吸気流路12から燃焼室11aに空気が流入しやすくなっている。
【0032】
冷却水流路33は、クーラ32の内部と気化器22の内部との間で冷却水を循環させる流路である。クーラ32の内部にて、改質ガス流路31を流れる改質ガスと冷却水流路33を流れる冷却水とで熱交換させることにより、クーラ32は改質ガス流路31を流れる改質ガスを冷却する。改質ガスとの熱交換により昇温した冷却水は、冷却水流路33を通って気化器22の内部に供給される。昇温した冷却水が気化器22の内部にて冷却水流路33を流れることにより、気化器22の内部が温められる。これにより、気化器22による液体アンモニアの気化を促進できる。気化器22の内部に位置する冷却水流路33を流れる間に、冷却水の温度は低下する。こうして温度が低下した冷却水が、冷却水流路33を通ってクーラ32の内部に供給される。
【0033】
アンモニアエンジンシステム10は、排出ガス流路34を備えている。排出ガス流路34は、改質器23の燃焼部41と排気流路13とを接続している。具体的には、排出ガス流路34の一端は、燃焼部41に接続され、排出ガス流路34の他端は、排気流路13における三元触媒17よりも上流に接続されている。燃焼部41により生成された排出ガスは、燃焼部41から排出ガス流路34に排出される。排出ガスは、排出ガス流路34を流れた後、排出ガス流路34から排気流路13における三元触媒17よりも上流部分に導入される。
【0034】
アンモニアエンジンシステム10は、温度センサ35と、イグニッションスイッチ36と、制御ユニット37と、を備えている。温度センサ35は、改質器23の温度を検出する。温度センサ35は、例えば改質器23の改質部42の温度を検出する。車両の運転者によってイグニッションスイッチ36が操作されると、イグニッションスイッチ36は制御ユニット37に操作信号を出力する。制御ユニット37は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。
【0035】
<制御ユニットによる制御>
制御ユニット37は、例えば、温度センサ35の検出値とイグニッションスイッチ36の操作信号と、に基づいて、各種制御を行う。制御ユニット37は、メインインジェクタ14、スロットルバルブ15、送風装置25、第1改質インジェクタ27、第2改質インジェクタ28、及び加熱部29の電源等を制御する。
【0036】
制御ユニット37は、アンモニアエンジン11を始動させる始動制御を実行する。制御ユニット37は、イグニッションスイッチ36の操作信号に基づいてイグニッションスイッチ36がオン操作されたと判断したことを条件に始動制御を行う。
【0037】
始動制御において、制御ユニット37は、第1改質インジェクタ27及び第2改質インジェクタ28からアンモニアガスを噴射させる。制御ユニット37は、送風装置25を駆動させるとともに、加熱部29の発熱体を通電するように加熱部29の電源を制御する。続いて、始動制御において、制御ユニット37は、アンモニアエンジン11をクランキングさせるように不図示のスタータモータを制御することにより、アンモニアエンジン11が始動する。さらに、始動制御において、制御ユニット37は、メインインジェクタ14からアンモニアガスを噴射させるとともに、スロットルバルブ15を開弁状態にする。
【0038】
始動制御において、制御ユニット37は、温度センサ35の検出値に基づいて、改質器23の温度が規定温度以上であるかどうかを判断する。規定温度とは、アンモニアガスの燃焼が可能となる温度であり、例えば200℃程度である。制御ユニット37は、改質器23の温度が規定温度以上であると判断したときは、加熱部29の発熱体の通電を停止させるように加熱部29の電源を制御する。
【0039】
アンモニアエンジン11の始動後、制御ユニット37は、アンモニアエンジン11が停止されるまで、上記始動制御を継続して行ってもよい。その際、制御ユニット37は、スロットルバルブ15の開度を調整してもよい。制御ユニット37は、所定のタイミングでメインインジェクタ14からアンモニアガスを噴射させてもよい。制御ユニット37は、送風装置25の駆動を制御することにより、エアクリーナ19から空気流路24に導入される空気量を調整してもよい。制御ユニット37は、第1改質インジェクタ27及び第2改質インジェクタ28の噴射タイミングを適宜変更しつつ、第1改質インジェクタ27及び第2改質インジェクタ28からアンモニアガスを噴射させてもよい。制御ユニット37は、温度センサ35の検出値に基づいて、送風装置25の駆動制御や、第1改質インジェクタ27及び第2改質インジェクタ28の噴射タイミングの変更を行ってもよい。
【0040】
制御ユニット37は、アンモニアエンジン11を停止させる停止制御を実行する。制御ユニット37は、イグニッションスイッチ36の操作信号に基づいてイグニッションスイッチ36がオフ操作されたと判断したことを条件に停止制御を行う。
【0041】
停止制御において、制御ユニット37は、メインインジェクタ14、第1改質インジェクタ27、及び第2改質インジェクタ28からのアンモニアガスの噴射を停止させる。その後、制御ユニット37は、送風装置25の駆動を停止させるとともに、スロットルバルブ15を閉弁状態にする。これにより、アンモニアエンジン11が停止される。
【0042】
<燃焼部でのアンモニアガスの燃焼>
送風装置25の駆動に伴って、エアクリーナ19から空気流路24に空気が導入される。第1改質インジェクタ27は空気流路24にアンモニアガスを供給する。加熱部29は、空気流路24中の空気及びアンモニアガスを加熱する。加熱部29による加熱を受けて、昇温した空気及びアンモニアガスが空気流路24から燃焼部41に供給される。
【0043】
燃焼部41においては、アンモニアガスが燃焼するとともに、その燃焼熱によって燃焼部41が昇温する。具体的には、下記の式1のように、アンモニアガスと空気中の酸素とが化学反応することにより、燃焼部41にてアンモニアの燃焼反応が起こる。
【0044】

NH+3/4O→3/2HO+1/2N+Q…(式1)

アンモニアの燃焼反応によって、燃焼部41は、水分(HO)及び窒素(N)を含む排出ガスを生成する。排出ガスは、燃焼部41から排出ガス流路34に排出された後、排出ガス流路34を介して排気流路13に排出される。
【0045】
<改質部での改質ガスの生成>
アンモニアの燃焼反応に伴って燃焼部41が昇温すると、燃焼部41から改質部42への伝熱によって改質部42が昇温する。改質部42の温度が改質可能な温度に達すると、改質部42によるアンモニアガスの改質が開始される。上記改質可能な温度とは、例えば300℃~400℃程度である。アンモニアガスの改質においては、具体的には、下記式2のように、改質部42における熱によりアンモニアが水素(H)と窒素とに分解される改質反応が起こる。
【0046】

NH→3/2H+1/2N-Q…(式2)

改質反応によって、改質部42は、水素及び窒素を含有した改質ガスを生成する。改質ガスは、改質部42から改質ガス流路31に導入されたのち、改質ガス流路31を介して吸気流路12に供給される。
【0047】
<改質ガスの燃焼室への供給>
改質ガス流路31から吸気流路12に供給された改質ガスは、吸気流路12中の空気及びメインインジェクタ14から吸気流路12に供給されたアンモニアガスと共に、燃焼室11aに供給される。アンモニアガスと改質ガス中の水素とが燃焼室11aにて混合されるため、燃焼室11aにてアンモニアガスが燃焼しやすくなる。燃焼室11aにおいて、アンモニアガスは改質ガス中の水素と共に燃焼する。
【0048】
<改質器の詳細>
図2に示すように、改質器23は、筐体43を有する。筐体43は、例えばステンレス製である。筐体43は、円筒状の第1筐体部44と、平板状の第2筐体部45と、を有する。第2筐体部45は、第1筐体部44の軸線L1の延びる方向における第1筐体部44の両端に位置する。第2筐体部45は、軸線L1の延びる方向における第1筐体部44の両端の開口を塞いでいる。第1筐体部44及び第2筐体部45によって、筐体43の内部空間が区画形成されている。改質器23は、不図示の断熱部材を有してもよい。断熱部材は、筐体43の外部から筐体43を覆うように位置してもよい。
【0049】
改質器23は、区画壁46を有する。区画壁46は、例えばステンレス製である。区画壁46は、筐体43の内部に位置する。区画壁46は、円筒状である。第1筐体部44の軸線L1と、区画壁46の軸線L2とは互いに一致している。
【0050】
軸線L2の延びる方向における区画壁46の両端は、第2筐体部45に繋がっている。これにより、第2筐体部45は、軸線L2の延びる方向における区画壁46の両端の開口を塞いでいる。第2筐体部45及び区画壁46によって、第1区画室S1が区画形成される。第1区画室S1は、区画壁46の内部に位置する。第1区画室S1は、区画壁46の軸線L2の延びる方向に延びる円柱状をなす。
【0051】
区画壁46の外面46aは、第1筐体部44の内面44aから離れている。第1筐体部44、第2筐体部45、及び区画壁46によって、第2区画室S2が区画形成される。第2区画室S2は、区画壁46と筐体43との間に位置する。詳細には、第2区画室S2は、区画壁46の外面46aと第1筐体部44の内面44aとの間に位置する。第2区画室S2は、区画壁46の軸線L2の延びる方向に延びる円筒状をなす。筐体43の内部は、第1区画室S1と第2区画室S2とに区画されている。第2区画室S2は、区画壁46を介して、第1区画室S1の周りを囲むように位置している。
【0052】
燃焼部41は、第1区画室S1に位置する。燃焼部41は、第1区画室S1に充填されたペレット状の燃焼触媒である。燃焼触媒は、例えば、発生する窒素酸化物が少ない低NOxの触媒が好ましい。特に燃焼触媒は、1wt%Pd-10Cu/Z5-90H触媒(京都大学江口研が開発、第122回触媒討論会で発表)が好ましい。この触媒は、約200℃以上でアンモニアを燃焼可能であり、400~700℃では窒素酸化物がほとんど発生せず、700~800℃付近までは発生する窒素酸化物が少ない傾向を有する。
【0053】
改質部42は、第2区画室S2に位置する。改質部42は、第2区画室S2に充填されたペレット状の改質触媒である。燃焼触媒は、例えば、Ru/MgOベース触媒(産総研が開発、Applied Catalysis Aに論文掲載)が好ましい。この触媒は、500℃以上で99.5%以上の分解性能を有し、650℃でも優れた熱安定性を示す。
【0054】
[作用]
次に、本実施形態における作用について説明する。
燃焼部41においては、アンモニアガスが燃焼することによる燃焼熱によって燃焼部41が昇温する。アンモニアの燃焼反応によって、燃焼部41は排出ガスを生成する。燃焼部41の昇温に伴って、区画壁46を介して燃焼部41から改質部42への伝熱が生じる。この伝熱に伴って、改質部42が昇温する。改質部42の昇温に伴って、改質部42に改質反応が起こることにより、改質部42は水素を含有した改質ガスを生成する。
【0055】
筐体43の内部は、区画壁46の内部に位置する第1区画室S1と、区画壁46と筐体43との間に位置する第2区画室S2と、に区画されている。燃焼部41は、第1区画室S1に位置している。改質部42は、第2区画室S2に位置している。そのため、燃焼部41と改質部42とは互いに隔絶されている。改質器23において、燃焼部41が生成した排出ガスと、改質部42が生成した改質ガスと、は互いに混合されない。排出ガスと混合されない状態で、改質ガスを改質部42から改質ガス流路31に導入できる。
【0056】
[効果]
上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)筐体43の内部は、区画壁46の内部に位置する第1区画室S1と、区画壁46と筐体43との間に位置する第2区画室S2と、に区画されている。燃焼部41は、第1区画室S1に位置している。改質部42は、第2区画室S2に位置している。そのため、排出ガスと混合されない状態で、改質ガスを改質部42から改質ガス流路31に導入できる。改質ガスは、改質ガス流路31から吸気流路12に導入した後、吸気流路12中の空気と共にアンモニアエンジン11に供給される。したがって、燃焼部41と改質部42とが互いに隔絶されないために排出ガスと混合された改質ガスがアンモニアエンジン11に供給される場合と比較して、改質器23からアンモニアエンジン11に供給されるガス中の水素濃度を高められる。
【0057】
(2)排出ガスは燃焼部41でのアンモニアガスの燃焼によって生成されるため、燃焼部41から排出ガス流路34に高温の排出ガスが排出される。排出ガス流路34は、排気流路13のうちで三元触媒17よりも上流に接続されている。そのため、排気流路13のうちで三元触媒17より上流に排出ガス流路34から高温の排出ガスが導入される。したがって、高温の排出ガスが三元触媒17に流入することにより、排出ガスの熱によって三元触媒17の暖機を促進できる。
【0058】
(3)第2区画室S2は、区画壁46を介して、第1区画室S1の周りを囲むように位置している。そのため、第1区画室S1に位置する燃焼部41から筐体43の外部の空気への伝熱が生じにくいため、燃焼部41で生じた熱を効率よく改質部42に伝えられる。したがって、改質部42を早期に昇温できるため、改質部42にて早期に改質ガスを生成できる。
【0059】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
図3に示すように、クーラ52を排出ガス流路34に設けてもよい。冷却水流路33は、クーラ32,52の内部と気化器22の内部との間で冷却水を循環させる。クーラ52は、排出ガス流路34を流れる排出ガスを冷却する。クーラ52によって冷却された排出ガスが、排出ガス流路34を通って排気流路13に導入される。この場合の排出ガス流路34は、排気流路13のうちでSCR触媒18よりも下流に接続してもよい。
【0061】
○ 温度センサ35は、改質器23の燃焼部41の温度を検出してもよい。温度センサ35は、燃焼部41及び改質部42の両方の温度を検出してもよい。
○ 第1筐体部44の軸線L1と区画壁46の軸線L2とは互いにずれていてもよい。この場合の軸線L1及び軸線L2は互いに平行でなくてもよい。
【0062】
○ 筐体43は、内部に空間が形成される形状であれば適宜形状を変更可能である。例えば、第1筐体部44は、矩形筒状などの円筒状以外の筒状であってもよい。
○ 区画壁46は、区画壁46の周方向における少なくとも一部に、区画壁46の内部に突出するフィンを有してもよい。この場合、フィンを有さない区画壁46と比較して、区画壁46の内面の表面積が増大する。そのため、区画壁46を介して燃焼部41から改質部42への伝熱がより促進される。区画壁46は、矩形筒状などの円筒状以外の筒状であってもよい。
【0063】
○ 軸線L2の延びる方向における区画壁46の両端の開口は、筐体43とは別部材の閉塞壁によって塞いでもよい。この場合の閉塞壁は、例えば、軸線L2の延びる方向において、筐体43と接していてもよいし、筐体43から離れていてもよい。軸線L2の延びる方向において閉塞壁が筐体43から離れている場合、第2区画室S2は閉塞壁と筐体43との間の空間を含む。改質部42は、閉塞壁と筐体43との間に位置してもよい。
【0064】
○ 空気流路24は吸気流路12に接続されていなくてもよい。この場合、例えば、吸気流路12とは異なる経路から空気流路24に空気が流入してもよい。
○ アンモニアエンジンシステム10は、第1改質インジェクタ27に代えて、流量調整弁を備えてもよい。この場合、気化器22と空気流路24とを接続するアンモニアガス流路をアンモニアエンジンシステム10に設け、このアンモニアガス流路に流量調整弁を設ける。流路調整弁を開弁させることにより、アンモニアガス流路から空気流路24にアンモニアガスが供給される。この変更例においては、アンモニアガス流路及び流量調整弁が第1供給部に相当する。
【0065】
○ アンモニアエンジンシステム10は、第2改質インジェクタ28に代えて、流量調整弁を備えてもよい。この場合、アンモニア流路26を気化器22と改質部42とに接続し、アンモニア流路26に流量調整弁を設ける。流量調整弁を開弁させることにより、アンモニア流路26から改質部42にアンモニアガスが供給される。この変更例においては、アンモニア流路26及び流量調整弁が第2供給部に相当する。
【0066】
○ アンモニアエンジンシステム10は、ハイリッド式の車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
S1…第1区画室、S2…第2区画室、10…アンモニアエンジンシステム、11…アンモニアエンジン、12…吸気流路、13…排気流路、17…三元触媒、23…改質器、24…空気流路、26…アンモニア流路、27…第1改質インジェクタ、28…第2改質インジェクタ、29…加熱部、31…改質ガス流路、34…排出ガス流路、41…燃焼部、42…改質部、43…筐体、46…区画壁。
図1
図2
図3