(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025537
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】熱電発電モジュール及び熱電発電ユニット
(51)【国際特許分類】
H10N 10/817 20230101AFI20240216BHJP
H10N 10/17 20230101ALI20240216BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20240216BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L35/08
H01L35/32 Z
H01L35/30
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129050
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 正和
(72)【発明者】
【氏名】岸澤 利彦
(57)【要約】
【課題】封止性の低下を抑え、断線の可能性を低減し、発電出力の低下を抑えること。
【解決手段】熱電発電モジュール10は、シート状に形成された第1基材11と、シート状に形成された第2基材12と、第1基材11と第2基材12との間に配置された複数の熱電変換素子21と、第1基材11と熱電変換素子21との間に配置された複数の第1電極22と、第2基材12と熱電変換素子21との間に配置された複数の第2電極23と、第1基材11と第2基材12とを接合する接合部Aと、を備え、熱電変換素子21、複数の第1電極22、及び複数の第2電極23が接合部Aにより封止され、接合部Aは、第1基材11と第2基材12との少なくともどちらかを折り曲げた状態で接合することにより、第1基材11と第2基材12とを折り曲げずに接合した状態に比べて、接合部Aの接合面積及び厚さを増大させている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成された第1基材と、
シート状に形成された第2基材と、
前記第1基材と前記第2基材との間に配置された複数の熱電変換素子と、
前記第1基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第1電極と、
前記第2基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第2電極と、
前記第1基材と前記第2基材とを接合する接合部と、
を備え、
前記熱電変換素子、前記複数の第1電極、及び前記複数の第2電極が接合部により封止され、
前記接合部は、前記第1基材と前記第2基材との少なくともどちらかを折り曲げた状態で接合する、
熱電発電モジュール。
【請求項2】
前記第1基材と前記第2基材との間に配置された複数の前記第1電極及び前記第2電極の外縁部から前記接合部までの長さをa1、前記接合部の長さをa2、前記第1基材の上面側と前記第2基材の下面側との間の長さをbとすると、a1+a2>bとなる、
請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の熱電発電モジュールと、
前記熱電発電モジュールの前記第1基材側に配置される受熱板と、
前記熱電発電モジュールと前記受熱板との間に介在する第1伝熱部材と、
前記熱電発電モジュールの前記第2基材側に配置される冷却板と、
前記熱電発電モジュールと前記冷却板との間に介在する第2伝熱部材と、
を備える、熱電発電ユニット。
【請求項4】
前記接合部は、前記受熱板と前記冷却板との間に位置し、前記受熱板と前記冷却板とから離間している、
請求項3に記載の熱電発電ユニット。
【請求項5】
前記接合部を前記受熱板と前記冷却板に支持する支持部材を備える、
請求項3又は4に記載の熱電発電ユニット。
【請求項6】
前記接合部は、前記受熱板から離間している、
請求項3に記載の熱電発電ユニット。
【請求項7】
前記接合部を前記冷却板に支持する支持部材を備える、
請求項3又は4に記載の熱電発電ユニット。
【請求項8】
前記接合部は、前記冷却板から離間している、
請求項3に記載の熱電発電ユニット。
【請求項9】
前記接合部を前記受熱板に支持する支持部材を備える、
請求項3又は8に記載の熱電発電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電発電モジュール及び熱電発電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電発電モジュールは、焼却や熱処理を行う工場及び設備などで使用されるため、風雨に晒される環境下、高湿及び高温環境下、並びに粉塵下で稼働する。このため、電位差が生じる熱電発電モジュールは、水及び粉塵が電路となり短絡が生じやすい。そこで、熱電発電モジュールは、水及び粉塵が内部に侵入しないように、外周部が封止される。また、熱電発電モジュールは、常温から300℃程度までの昇降温が繰り返される。このため、熱電発電モジュールの封止構造は、耐熱性及び耐温度サイクル性が求められる。
【0003】
複数の熱電素子と、これらの熱電素子の周囲を囲う外側封止枠と、熱電素子および外側封止枠に亘って連続して覆う薄膜シートと、締結手段の周囲を囲う内側封止枠とを有する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、異種材料である薄膜シートと封止枠とを半田接合しているため、材料の熱膨張係数の違いにより変形や反りが発生する可能性がある。それにより、封止性が低下する可能性、及び、熱電発電モジュールが断線する可能性がある。また、外側封止枠が受熱板及び冷却板と近接しているため、外側封止枠を伝って熱リークするおそれがある。これにより、熱電発電モジュールの発電出力が低下する可能性がある。
【0006】
本開示は、封止性の低下を抑え、断線の可能性を低減し、発電出力の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従えば、シート状に形成された第1基材と、シート状に形成された第2基材と、前記第1基材と前記第2基材との間に配置された複数の熱電変換素子と、前記第1基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第1電極と、前記第2基材と前記熱電変換素子との間に配置された複数の第2電極と、前記第1基材と前記第2基材とを接合する接合部と、を備え、前記熱電変換素子、前記複数の第1電極、及び前記複数の第2電極が接合部により封止され、前記接合部は、前記第1基材と前記第2基材との少なくともどちらかを折り曲げた状態で接合することにより、前記第1基材と前記第2基材とを折り曲げずに接合した状態に比べて、接合部の接合面積及び厚さを増大させている、熱電発電モジュールが提供される。
【0008】
本開示に従えば、上記の熱電発電モジュールと、前記熱電発電モジュールの前記第1基材側に配置される受熱板と、前記熱電発電モジュールと前記受熱板との間に介在する第1伝熱部材と、前記熱電発電モジュールの前記第2基材側に配置される冷却板と、前記熱電発電モジュールと前記冷却板との間に介在する第2伝熱部材と、を備える、熱電発電ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、封止性の低下を抑え、断線の可能性を低減し、発電出力の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。
【
図5】
図5は、変形例1の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。
【
図6】
図6は、変形例2の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。
【
図7】
図7は、変形例3の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。
【
図8】
図8は、変形例4の熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、変形例5の熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、変形例6の熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、変形例7の熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する複数の実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
実施形態においては、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、及び「下」の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、熱電発電ユニット1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。左右方向と前後方向と上下方向とは直交する。
【0013】
(実施形態)
[熱電発電ユニット]
図1は、実施形態に係る熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。熱電発電ユニット1は、熱電発電モジュール10と、高温板である受熱板2と、低温板である冷却板3と、第1伝熱部材4と、第2伝熱部材5とを備える。
【0014】
受熱板2は、熱電発電モジュール10の第1基材11側に配置される。受熱板2は、熱源から熱を受け、面内温度分布が少ない状態で熱電発電モジュール10へ伝熱させる。受熱板2は、例えば、銅又はアルミニウムなどの、熱伝導率の高い金属材料で構成されている。
【0015】
受熱板2は、第1基材11上に配置される第1電極22の下面側に位置する第1伝熱部材4と面で接触している。受熱板2は、矩形の板状の部材である。受熱板2は、熱伝導性が高い材料によって形成されている。受熱板2は、熱源となる設備に設置される。受熱板2は、熱源となる設備からの熱を受けとる。受熱板2の熱は、図示しない伝熱部材を介して、熱電発電モジュール10に伝導される。
【0016】
受熱板2は、熱電発電モジュール10の第1基材11と向かい合う面と反対側の面、言い換えると、熱源側の面である受熱面に、表面処理が施されていてもよい。受熱面は、周縁部と中央部とで輻射率が異なるように表面処理されていてもよい。実施形態では、受熱面は、周縁部より中央部の輻射率が高くなるように表面処理が施されている。
図1において、表面処理が施された表面処理部は、符号7で模式的に示されている。
【0017】
冷却板3は、熱電発電モジュール10の第2基材12側に配置される。冷却板3は、熱電発電モジュール10の片面を冷却し、温度差を維持して効率よく発電を行う。冷却板3は、例えば、銅又はアルミニウムなどの、熱伝導率の高い金属材料で構成されている。
【0018】
冷却板3は、第2基材12上に配置される第2電極23の上面側に位置する第2伝熱部材5と面で接触している。冷却板3は、上下方向において、受熱板2と向かい合い、離間して設置される。冷却板3は、矩形の板状の部材である。冷却板3は、熱伝導性が高い材料によって形成されている。冷却板3は、熱電発電モジュール10からの熱を受けとる。冷却板3の熱は、熱電発電ユニット1の周囲に放熱されるか、又は水冷される。
【0019】
第1伝熱部材4は、熱電発電モジュール10と受熱板2との間に介在する。第1伝熱部材4は、熱電発電モジュール10と受熱板2との間の空気層を埋めて、接触熱抵抗を低減し伝熱性を向上させる。第1伝熱部材4は、例えば、カーボン又はシリコンなどでシート状に形成されている。
【0020】
第2伝熱部材5は、熱電発電モジュール10と冷却板3との間に介在する。第2伝熱部材5は、熱電発電モジュール10と冷却板3との間の空気層を埋めて、接触熱抵抗を低減し伝熱性を向上させる。第2伝熱部材5は、例えば、カーボン又はシリコンなどでシート状に形成されている。
【0021】
第1伝熱部材4及び第2伝熱部材5は、シート状の部材に限定されない。第1伝熱部材4及び第2伝熱部材5は、例えば、伝熱グリースでもよい。
【0022】
熱電発電ユニット1は、熱電発電モジュール10を、受熱板2と冷却板3とで上下方向に挟んだ状態で締結部材6によって締結されている。
【0023】
[熱電発電モジュール]
図2は、実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。
図3は、
図2の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。
図4は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第1基材を模式的に示す平面図であり、上方から見た図である。熱電発電モジュール10は、受熱板2と冷却板3との間に設置される。熱電発電モジュール10は、受熱板2と冷却板3とによって両側(図中の上下)に温度差を与えることによって、ゼーベック効果により発電する。
【0024】
図2、
図3に示すように、熱電発電モジュール10は、第1基材11と、第2基材12と、第1基材11と第2基材12との間に配置される熱電変換素子21とを備える。以下の説明に用いる各図における熱電変換素子21、第1電極22及び第2電極23の配置は模式的に示すものである。
【0025】
第1基材11及び第2基材12のそれぞれは、電気絶縁材料によって形成される。
図4に示すように、第1基材11は、例えば、シート状のポリイミドで構成される。第2基材12は、図示を省略しているが、第1基材11と同様に、例えば、シート状のポリイミドで構成される。第1基材11及び第2基材12のそれぞれは、可撓性を有する。実施形態において、第1基材11と第2基材12とは、矩形状に形成されている。第1基材11と第2基材12とは、熱電変換素子21を挟んで向かい合う。実施形態において、第2基材12は、第1基材11よりも上方に配置される。
【0026】
実施形態では、第1基材11と第1伝熱部材4、第2基材12と第2伝熱部材5とは、それぞれ接合されていない。
【0027】
第1基材11の周縁部は、曲げ部11bで折り返されている。第1基材11の先端部11aと先端部11cとは、上下方向に離間している。第1基材11の先端部11aと先端部11cとの間に、第2基材12の先端部12aを挟んでいる。言い換えると、第1基材11は、先端部11a、曲げ部11b及び先端部11cで、第2基材12の先端部12aを挟んでいる。
【0028】
第2基材12は、周縁部が、第1基材11に向かって、言い換えると、第1基材11に近づくように曲げられている。第2基材12の先端部12aは、第1基材11の先端部11a、曲げ部11b及び先端部11cで挟まれている。
【0029】
第1基材11の先端部11a、曲げ部11b及び先端部11c及び第2基材12の先端部1を接合した部分を接合部Aという。接合部Aにおいて、上下方向の下方から、第1基材11の先端部11a、第2基材12の先端部12a、及び第1基材11の先端部11cが重なった状態で接合されている。第1基材11の先端部11a、第2基材12の先端部12a、及び第1基材11の先端部11cは、樹脂接着剤で接合されている。
【0030】
第1基材11と第2基材12とが接合された部分を、接合部Aという。接合部Aは、上下方向視において、面方向に整列された複数のpn素子対の周囲を囲んで枠状に配置される。接合部Aは、第1基材11及び第2基材12の周縁部に配置されている。矩形状の第1基材11及び第2基材12においては、4辺が接合部Aである。
【0031】
実施形態では、接合部Aは、冷却板3から離間し、受熱板2側に位置する。
【0032】
熱電変換素子21は、第1基材11の上面側と第2基材12の下面側との間に1つ以上配置される。複数の熱電変換素子21は、複数の第1電極22及び第2電極23によって接続される。
【0033】
熱電変換素子21は、熱電材料によって形成される。熱電変換素子21を形成する熱電材料として、マンガンケイ化物系化合物(Mn-Si)、マグネシウムケイ化物系化合物(Mg-Si-Sn)、スクッテルダイト系化合物(Co-Sb)、ハーフホイスラ系化合物(Zr-Ni-Sn)、及びビスマステルル系化合物(Bi-Te)が例示される。熱電変換素子21は、マンガンケイ化物系化合物、マグネシウムケイ化物系化合物、スクッテルダイト系化合物、ハーフホイスラ系化合物、又はビスマステルル系化合物から選択される1つの化合物により構成されてもよいし、少なくとも2つの化合物の組み合わせにより構成されてもよい。
【0034】
熱電変換素子21は、p型素子21Pと、n型素子21Nとを含む。p型素子21P及びn型素子21Nのそれぞれは、所定面内に複数配置される。前後方向において、p型素子21Pとn型素子21Nとは交互に配置される。左右方向において、p型素子21Pとn型素子21Nとは交互に配置される。
【0035】
第1電極22及び第2電極23は、導電性を有する金属により形成される。第1電極22は、第1基材11と熱電変換素子21との間に配置されている。第1電極22は、第1基材11の上面に設けられる。第1電極22は、第1基材11の上面と平行な所定面内において複数設けられる。第2電極23は、第2基材12と熱電変換素子21との間に配置されている。第2電極23は、第2基材12の下面に設けられる。第2電極23は、第2基材12の下面と平行な所定面内において複数設けられる。
【0036】
第1電極22及び第2電極23は、隣接する一対のp型素子21P及びn型素子21Nのそれぞれに接続される。第1電極22及び第2電極23は、複数の熱電変換素子21を直列に接続する。第1電極22及び第2電極23により複数の熱電変換素子21が直列に接続された直列回路が形成される。p型素子21P及びn型素子21Nが第1電極22及び第2電極23を介して電気的に接続されることにより、pn素子対が構成される。複数のpn素子対が第1電極22及び第2電極23を介して直列に接続されることにより、複数の熱電変換素子21を含む直列回路が構成される。
【0037】
熱電変換素子21に電流が供給されることにより、熱電発電モジュール10がペルチェ効果により吸熱又は発熱する。第1基材11と第2基材12との間に温度差が与えられることにより、熱電発電モジュール10は、ゼーベック効果により発電する。
【0038】
第1基材11上に配置される第1電極22の下面は、熱電発電モジュール10の加熱面である。第2基材12上に配置される第2電極23の上面は、熱電発電モジュール10の冷却面である。
【0039】
上記のように構成された熱電発電モジュール10から、図示しない端部電極及びリード線を介して、回路の電力が外部に取り出される。
【0040】
このように封止された熱電発電モジュール10の内部は、脱気して負圧にするか、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、または乾燥空気が充填されるのが好ましい。封止された熱電発電モジュール10の内部は、不活性液体またワニスを充填してもよい。不活性液体は、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)などである。
【0041】
[封止方法及び作用]
第1基材11と第2基材12とを重ねた状態で周縁部である接合部Aが、樹脂接着剤で接合される。これにより、第1基材11と第2基材12とは、周縁部である接合部Aにおいて、封止される。
【0042】
[効果]
実施形態では、接合部Aは、第1基材11と第2基材12との少なくともどちらかを折り曲げた状態で接合することにより、第1基材11と第2基材12とを折り曲げずに接合した状態に比べて、接合部Aの接合面積及び厚さを増大させている。実施形態では、異種材料の封止枠を使用しないため、熱膨張係数の違いによる熱変形、反りなどが発生しにくく、耐久性を維持しやくすることができる。実施形態によれば、封止性が低下する可能性、及び、熱電発電モジュール10が断線する可能性を低減できる。
【0043】
実施形態では、熱電変換素子21が配置されている熱電発電モジュール10の中央部と比較して、熱電発電モジュール10の外周部の封止部分である接合部Aは、上下方向の厚みが薄くなり、接合部Aと受熱板2との間に隙間が生まれる。実施形態によれば、接合部Aを、冷却板3から離間して配置することができる。このため、実施形態は、接合部Aにおいて、受熱板2から冷却板3への熱リークを抑えることができる。実施形態によれば、熱電発電モジュール10の発電出力が低下する可能性を低減できる。
【0044】
実施形態は、第1基材11と第2基材12とを、接着剤又は樹脂材料で構成されたシール材及び枠部材などの封止部材を使用せず、樹脂接着剤によって接合できる。実施形態は、封止部材の経年による劣化が生じない。実施形態によれば、風雨に晒される環境下、高湿及び高温環境下、並びに粉塵下で、封止性を長期にわたって維持できる。このように、実施形態は、耐熱温度の低い接着剤及び樹脂材料を使用しないので、耐熱性及び耐温度サイクル性を向上できる。
【0045】
実施形態は、風雨に晒される環境下、高湿及び高温環境下、並びに粉塵下で、長期間に亘って、短絡原因となる水及び粉塵が熱電発電モジュール10の内部に侵入することを規制できる。実施形態は、高温環境下で長期間に亘って、絶縁を維持した状態で熱電発電をできる。このようにして、実施形態によれば、水分の侵入による故障の発生を抑制して、安定して発電できる。
【0046】
このように実施形態によれば、封止性の低下を抑え、断線の可能性を低減し、発電出力の低下を抑えることができる。
【0047】
実施形態は、例えば、熱電発電モジュール10を一体リフロー成型によって製造した場合、フラックスが残留しやすい。実施形態によれば、残留したフラックスにより、蒸気がぬけやすいので、電極面のふくれを抑制できる。
【0048】
実施形態は、第1基材11と第2基材12とを折り曲げずに接合した状態に比べて、接合部Aの接合面積及び厚さを増大させることができる。これにより、実施形態は、接合部Aの厚さがあるので、片側ヒーターの場合にも反りを抑えることができる。
【0049】
(変形例1)
図5は、変形例1の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。変形例1は、接合部Aの構成が実施形態と異なる。
【0050】
変形例1では、接合部Aは、受熱板2から離間し、冷却板3側に位置する。
【0051】
第1基材11は、周縁部が、第2基材12に向かって、言い換えると、第2基材12に近づくように曲げられている。第1基材11の先端部11aは、第2基材12の先端部12a、曲げ部12b及び先端部12cで挟まれている。
【0052】
第2基材12の周縁部は、曲げ部12bで折り返されている。第2基材12の先端部12aと先端部12cとは、上下方向に離間している。第2基材12の先端部12aと先端部12cとの間に、第1基材11の先端部11aを挟んでいる。言い換えると、第2基材21は、先端部21a、曲げ部21b及び先端部21cで、第1基材11の先端部11aを挟んでいる。
【0053】
第2基材12の先端部12a、曲げ部12b及び先端部12c及び第1基材11の先端部11aを接合した部分を接合部Aという。接合部Aにおいて、上下方向の下方から、第2基材12の先端部12c、第1基材11の先端部11a、及び第2基材12の先端部12aが重なった状態で接合されている。第2基材12の先端部12a、第1基材11の先端部11a、及び第2基材12の先端部12cは、樹脂接着剤で接合されている。
【0054】
接合部Aは、第1基材11及び第2基材12の周縁部に配置されている。矩形状の第1基材11及び第2基材12においては、4辺が接合部Aである。
【0055】
熱電発電モジュール10の周縁部の寸法、具体的には、接合部A及びその周辺部の寸法は、次のようにしてもよい。第1基材11と第2基材12との間に配置された、複数の第1電極22及び第2電極23の外縁部から接合部Aまでの長さをa1とする。接合部Aの長さをa2とする。第1基材11の上面側と第2基材12の下面側との間の長さをbとする。このとき、a1+a2>bとなるように、a1、a2及びbを設定してもよい。
【0056】
変形例によれば、接合部Aを、受熱板2から離間して配置することができる。変形例は、接合部Aにおいて、受熱板2から冷却板3への熱リークを抑えることができる。
【0057】
変形例は、第1電極22及び第2電極23の外縁部から接合部Aまでの長さをa1、接合部Aの長さをa2、第1基材11の上面側と第2基材12の下面側との間の長さをbとして、a1+a2>bとなるように、a1、a2及びbを設定する。変形例によれば、接合部Aが自重によって下がり、第1基板11に接触することを抑えることができる。
【0058】
(変形例2)
図6は、変形例1の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。変形例2は、接合部Aの構成が実施形態と異なる。
【0059】
変形例2では、接合部Aは、受熱板2及び冷却板3から離間する。言い換えると、接合部Aは、受熱板2及び冷却板3の上下方向(厚さ方向)の中間部に位置する。
【0060】
第1基材11は、周縁部が、第2基材12に向かって、言い換えると、第2基材12に近づくように曲げられている。第1基材11の先端部11aは、第2基材12の先端部12a、曲げ部12b及び先端部12cで挟まれている。
【0061】
第2基材12は、周縁部が、第1基材11に向かって、言い換えると、第1基材11に近づくように曲げられている。第1基材11の周縁部及び第2基材12の周縁部は、互いに近づくように形成されている。
【0062】
第2基材12の周縁部は、曲げ部12bで折り返されている。第2基材12の先端部12aと先端部12cとは、上下方向に離間している。第2基材12の先端部12aと先端部12cとの間に、第1基材11の先端部11aを挟んでいる。言い換えると、第2基材21は、先端部21a、曲げ部21b及び先端部21cで、第1基材11の先端部11aを挟んでいる。
【0063】
第2基材12の先端部12a、曲げ部12b及び先端部12c及び第1基材11の先端部11aを接合した部分を接合部Aという。接合部Aにおいて、上下方向の下方から、第2基材12の先端部12c、第1基材11の先端部11a、及び第2基材12の先端部12aが重なった状態で接合されている。第2基材12の先端部12a、第1基材11の先端部11a、及び第2基材12の先端部12cは、樹脂接着剤で接合されている。
【0064】
接合部Aは、第1基材11及び第2基材12の周縁部に配置されている。矩形状の第1基材11及び第2基材12においては、4辺が接合部Aである。
【0065】
第1基材11と第2基材12との間に配置された、複数の第1電極22及び第2電極23の外縁部から接合部Aまでの長さをa1とする。接合部Aの長さをa2とする。第1基材11の上面側と第2基材12の下面側との間の長さをbとする。このとき、a1+a2>bとなるように、a1、a2及びbを設定してもよい。
【0066】
変形例によれば、接合部Aを、受熱板2及び冷却板3から離間して配置することができる。変形例は、接合部Aにおいて、受熱板2から冷却板3への熱リークを抑えることができる。
【0067】
変形例は、第1電極22及び第2電極23の外縁部から接合部Aまでの長さをa1、接合部Aの長さをa2、第1基材11の上面側と第2基材12の下面側との間の長さをbとして、a1+a2>bとなるように、a1、a2及びbを設定する。変形例によれば、接合部Aが自重によって下がり、第1基板11に接触することを抑えることができる。
【0068】
(変形例3)
図7は、変形例3の熱電発電モジュールの接合部の部分拡大図である。変形例3は、接合部Aの構成が実施形態と異なる。
【0069】
第1基材11の周縁部は、曲げ部11bで折り返されている。第1基材11の先端部11aと先端部11cとは、上下方向に離間している。第1基材11の先端部11cが、第2基材12の先端部12cと接合されている。
【0070】
第2基材12の周縁部は、曲げ部12bで折り返されている。第2基材12の先端部12aと先端部12cとは、上下方向に離間している。第2基材12の先端部12cが、第1基材11の先端部11cと接合されている。
【0071】
接合部Aにおいて、上下方向の下方から、第1基材11の先端部11a、第1基材11の先端部11c、第2基材12の先端部12c、及び第2基材12の先端部12aが並んでいる。第1基材11の先端部11cと、第2基材12の先端部12cとが、樹脂接着剤で接合されている。
【0072】
変形例によれば、第1基材11と第2基材12とを折り曲げずに接合した状態に比べて、接合部Aの接合面積及び厚さを増大させることができる。
【0073】
(変形例4)
図8は、変形例4の熱電発電モジュールを模式的に示す断面図である。変形例4は、接合部Aの構成が実施形態と異なる。
【0074】
第1基材11と第2基材12とは、一枚のシート状の基材10Sを折り曲げて構成されている。変形例では、曲げ部10Saの下方側を第1基材11とし、上方側を第2基材12とする。
【0075】
接合部Aは、基材10Sの曲げ部10Saを除く周縁部に配置されている。矩形状の基材10Sにおいては、3辺が接合部Aであり、1辺が曲げ部10Saになる。
【0076】
実施形態は、接合部Aの面積を低減できる。実施形態は、封止性を向上できる。
【0077】
(変形例5)
図9は、変形例5の熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。変形例5は、支持部材2Sを備える点が実施形態と異なる。変形例5では、熱電発電モジュール10は、実施形態と同様に構成されている。変形例5において、接合部Aは、冷却板3から離間し、受熱板2側に位置する。
【0078】
支持部材2Sは、受熱板2の上面に配置されている。支持部材2Sは、接合部Aを受熱板2に支持する。支持部材2Sは、例えば、接合部Aを支持部材2Sに設けられたスリットに挟んで支持してもよいし、または、接合部Aを支持部材2Sに接着剤で接着して支持してもよい。支持部材2Sが接合部Aを支持する方法は限定されない。
【0079】
変形例によれば、接合部Aを、冷却板3から離間して配置することができる。変形例は、接合部Aにおいて、受熱板2から冷却板3への熱リークを抑えることができる。
【0080】
(変形例6)
図10は、変形例6の熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。変形例6は、支持部材3Sを備える点が変形例1と異なる。変形例6では、熱電発電モジュール10は、変形例2と同様に構成されている。変形例6において、接合部Aは、受熱板2から離間し、冷却板3側に位置する。
【0081】
支持部材3Sは、冷却板3の下面に配置されている。支持部材3Sは、接合部Aを冷却板3に支持する。支持部材3Sは、例えば、接合部Aを支持部材3Sに設けられたスリットに挟んで支持してもよいし、または、接合部Aを支持部材3Sに接着剤で接着して支持してもよい。支持部材3Sが接合部Aを支持する方法は限定されない。
【0082】
変形例によれば、接合部Aが自重によって下がることを抑えることができる。変形例は、接合部Aの上下方向の位置を支持できる。
【0083】
(変形例7)
図11は、変形例7の熱電発電ユニットを模式的に示す断面図である。変形例7は、支持部材2S及び支持部材3Sを備える点が変形例2と異なる。変形例7では、熱電発電モジュール10は、変形例2と同様に構成されている。接合部Aは、受熱板2と冷却板3との間に位置し、受熱板2及び冷却板3から離間する。
【0084】
支持部材2Sは、受熱板2の上面に配置されている。支持部材3Sは、冷却板3の下面に配置されている。支持部材2Sは、支持部材3Sとともに接合部Aを上下方向に挟んで支持する。言い換えると、支持部材2Sと支持部材3Sとは、接合部Aを受熱板2と冷却板3とに支持する。支持部材2S及び支持部材3Sが、接合部Aを支持する方法は限定されない。
【0085】
変形例によれば、接合部Aが自重によって下がることを抑えることができる。変形例は、接合部Aの上下方向の位置を支持できる。
【0086】
(その他の変形例)
上記の変形例5、変形例6、変形例7は、支持部材2Sと支持部材3Sとの少なくともどちらかによって、接合部Aを支持するものとして説明したが、接合部Aを支持する方法はこれに限定されない。接合部Aは、第1基材11と第2基材12との少なくともどちらかを、受熱板2と冷却板3との少なくともどちらかに接着剤によって接着してもよい。
【0087】
上記の変形例では、第1基材11と第2基材12との少なくともどちらかを折り返して接合部Aを形成する構成について説明したが、第1基材11と第2基材12との折り返す形状はこれらに限定されない。例えば、第1基材11を、第2基材12から離間する方向に折り返してもよい。第2基材12を、第1基材11から離間する方向に折り返してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…熱電発電ユニット、2…受熱板、3…冷却板、4…第1伝熱部材、5…第2伝熱部材、6…締結部材、7…表面処理部、10…熱電発電モジュール、11…第1基材、12…第2基材、21…熱電変換素子、21P…p型素子、21N…n型素子、22…第1電極、23…第2電極、A…接合部。