(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002554
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】表面検査支援装置及び表面検査支援方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
G01N21/47 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101807
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 琴音
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG03
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】部品の表面や塗装面の光学異方性を効率よく検査すること。
【解決手段】表面検査支援装置10は、検査対象物100の表面Sからの正反射光L及び拡散光L1、L2を円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成された第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交する第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成された第3カラーフィルタ21cとで形成されているカラーフィルタ21を介して撮像センサ23で計測し、計測した緑色、赤色及び青色の光量に基づいて、検査対象物100の表面Sの拡散光ベクトル方向を算出し、算出した拡散光ベクトル方向を線分で表わす拡散光ベクトル方向画像を表示する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、
前記表面に光を照射する光源と、
前記光源から照射された光が前記表面で反射した正反射光及び拡散光が入射する第1の凸レンズと、
円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを含む十字構造のカラーフィルタ部と、
前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光及び前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光が入射する第2の凸レンズと、
前記第2の凸レンズを通過した拡散光を受光した画像を検査画像として取得する検査画像取得部と、
前記検査画像に含まれる第1の拡散光と前記第2の拡散光とに基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御手段と
を備える表面検査支援装置。
【請求項2】
前記第1のカラーフィルタは、第1の色の拡散光を通過させるフィルタであり、前記第2のカラーフィルタは、第2の色の拡散光を通過させるフィルタである請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、
前記検査画像に含まれる前記第1の色の第1の拡散光と、前記第2の色の前記第2の拡散光とに基づいて、前記検査画像を形成する画素ごとにベクトル方向を算出したベクトル方向に基づく画像を前記所定の表示部に表示制御する請求項2に記載の表面検査支援装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、
前記第1の色の第1の拡散光の光量と、前記第2の色の前記第2の拡散光の光量の逆正接関数を用いてベクトル方向に基づく画像を算出する請求項3に記載の表面検査支援装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、
前記ベクトル方向を結ぶ線分を合成したベクトル方向画像を前記所定の表示部に表示制御する請求項3に記載の表面検査支援装置。
【請求項6】
前記カラーフィルタ部は、
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとが直交する領域に形成され、前記第3の色の正反射光を通過させる第3のカラーフィルタをさらに備えた請求項2に記載の表面検査支援装置。
【請求項7】
前記第1カラーフィルタは、前記第1の色である赤色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、
前記第2カラーフィルタは、前記第2の色である青色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、
前記第3カラーフィルタは、前記第3の色である緑色の正反射光を通過させるカラーフィルタである請求項6に記載の表面検査支援装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、
前記第3のカラーフィルタを通過した正反射光の強度が所定の閾値以上である場合に、前記検査画像に含まれる前記第1の色の第1の拡散光と、前記第2の色の前記第2の拡散光とに基づいて、前記検査画像を形成する画素ごとにベクトル方向を算出したベクトル方向に基づく画像を前記所定の表示部に表示制御する請求項6又は7に記載の表面検査支援装置。
【請求項9】
前記部品の表面の角度を制御する角度制御部をさらに備える請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項10】
部品の表面に光を照射する光源と、
前記光源から照射された光が前記表面で反射した正反射光及び拡散光が入射する第1の凸レンズと、
円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを含む十字構造のカラーフィルタ部と、
前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光及び前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光が入射する第2の凸レンズと
を有する表面検査支援装置における表面検査支援方法であって、
前記第2の凸レンズを通過した拡散光を受光した画像を検査画像として取得する検査画像取得工程と、
前記検査画像に含まれる第1の拡散光と前記第2の拡散光とに基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御工程と
を含む表面検査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の表面や塗装面の面的な光学異方性を効率よく検査することができる表面検査支援装置及び表面検査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形部品の表面や車両の塗装面には、製造条件によって光学異方性が生じ、見る角度によって色合いが異なって見える場合がある。例えば、射出成形部品の場合には、金型内で溶融樹脂の合流部分が線状の跡となるウェルドラインという成型不良が発生する。
【0003】
このため、射出成型部品等の成型不良を検査する従来技術が知られており、例えば、テレセントリック性を有する光学系を用いて取得した画像データに基づいて物体に関する情報を取得する技術が知られている。例えば、特許文献1には、同心円状のカラーフィルタを介して画像データを取得し、撮像された光線の色を特定し、散乱角を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1によれば、散乱角を算出することができる反面で、同心円状のカラーフィルタを用いているために散乱角のベクトル方向を特定することができない。このため、部品の表面や塗装面の画像データを形成する各画素の画素方向を特定することができず、光学異方性を効率よく検査することが難しい。
【0006】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、部品の表面や塗装面の光学異方性を効率よく検査することができる表面検査支援装置及び表面検査支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、部品の表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、前記表面に光を照射する光源と、前記光源から照射された光が前記表面で反射した正反射光及び拡散光が入射する第1の凸レンズと、円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを含む十字構造のカラーフィルタ部と、前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光及び前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光が入射する第2の凸レンズと、前記第2の凸レンズを通過した拡散光を受光した画像を検査画像として取得する検査画像取得部と、前記検査画像に含まれる第1の拡散光と前記第2の拡散光とに基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御手段とを備える。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記第1のカラーフィルタは、第1の色の拡散光を通過させるフィルタであり、前記第2のカラーフィルタは、第2の色の拡散光を通過させるフィルタである。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御手段は、前記検査画像に含まれる前記第1の色の第1の拡散光と、前記第2の色の第2の拡散光とに基づいて、前記検査画像を形成する画素ごとにベクトル方向を算出したベクトル方向に基づく画像を前記所定の表示部に表示制御する。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御手段は、前記第1の色の第1の拡散光の光量と、前記第2の色の前記第2の拡散光の光量の逆正接関数を用いてベクトル方向に基づく画像を算出する。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御手段は、前記ベクトル方向を結ぶ線分を合成したベクトル方向画像を前記所定の表示部に表示制御する。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記カラーフィルタ部は、前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとが直交する領域に形成され、前記第3の色の正反射光を通過させる第3のカラーフィルタをさらに備えた。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記第1カラーフィルタは、前記第1の色である赤色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、前記第2カラーフィルタは、前記第2の色である青色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、前記第3カラーフィルタは、前記第3の色である緑色の正反射光を通過させるカラーフィルタである。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御手段は、前記第3のカラーフィルタを通過した正反射光の強度が所定の閾値以上である場合に、前記検査画像に含まれる前記第1の色の第1の拡散光と、前記第2の色の前記第2の拡散光とに基づいて、前記検査画像を形成する画素ごとにベクトル方向を算出したベクトル方向に基づく画像を前記所定の表示部に表示制御する。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記部品の表面の角度を制御する角度制御部をさらに備える。
【0016】
また、本発明は、部品の表面に光を照射する光源と、前記光源から照射された光が前記表面で反射した正反射光及び拡散光が入射する第1の凸レンズと、円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを含む十字構造のカラーフィルタ部と、前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光及び前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光が入射する第2の凸レンズとを有する表面検査支援装置における表面検査支援方法であって、前記第2の凸レンズを通過した拡散光を受光した画像を検査画像として取得する検査画像取得工程と、前記検査画像に含まれる第1の拡散光と前記第2の拡散光とに基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御工程とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品の表面や塗装面の面的な光学異方性を効率よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る表面検査支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したカラーフィルタの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、撮像カメラの構成と正反射光の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、検査対象物の表面の検査画像の撮像を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、撮像された検査画像及び光拡散ベクトル方向画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、ウェルドラインが存在する検査画像及び光拡散ベクトル方向画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、表面検査支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る表面検査支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、検査対象物の表面の検査画像の撮像を説明するための説明図(その1)である。
【
図11】
図11は、検査対象物の表面の検査画像の撮像を説明するための説明図(その2)である。
【
図12】
図12は、検査画像及び光拡散ベクトル方向画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る表面検査支援装置及び表面検査支援方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
[実施形態1]
<表面検査支援装置の構成>
まず、本実施形態1に係る表面検査支援装置の構成について説明する。
図1は、実施形態1に係る表面検査支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、表面検査支援装置10は、物体側テレセントリック光学系が形成された撮像カメラ16により、検査対象物100の表面Sからの正反射光及び拡散反射光を受信し、正反射光及び拡散反射光に基づいて表面Sの光拡散ベクトル方向を表示する。ここで検査対象物100は、樹脂で形成された樹脂形成部品である。なお、検査対象物100は、樹脂形成部品に限定されることはなく、他の材質で形成された部品でもよい。
【0021】
表面検査支援装置10は、入力部11、表示部12、記憶部13及び制御部14を有する。また、表面検査支援装置10は、光源15及び撮像カメラ16が接続されている。入力部11は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。表示部12は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。記憶部13は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスである。
【0022】
制御部14は、表面検査支援装置10の全体を制御する制御部であり、画像取得処理部14a、光拡散ベクトル方向算出部14b、画像生成部14c及び表示制御部14dを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、画像取得処理部14a、光拡散ベクトル方向算出部14b、画像生成部14c及び表示制御部14dのそれぞれに対応するプロセスを実行させることになる。
【0023】
画像取得処理部14aは、光源15及び撮像カメラ16を操作して検査対象物100の表面Sの表面画像を取得する。画像取得処理部14aは、光源15から平行光を照射させ、検査対象物100の表面Sで反射した正反射光及び拡散反射光を、物体側テレセントリック光学系を形成する大口径凸レンズ20及びカラーフィルタ21を介して撮像センサ23を用いて撮像し検査画像を取得する。
【0024】
ここでカラーフィルタ21の構造について説明する。
図2は、
図1に示したカラーフィルタの構成を示す図である。
図2に示すように、カラーフィルタ21は、円周上の一点及び中心点を通る領域(X軸)に形成され、第1の色(赤色R)の拡散光を通過させる第1カラーフィルタ21aと、該第1カラーフィルタ21aと直交する領域(Y軸)に形成され、第2の色(青色B)の拡散光を通過させる第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21aと該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成され、第3の色(緑色G)の正反射光を通過させる第3カラーフィルタ21cが形成されている。
【0025】
そして、第1カラーフィルタ21a、第2カラーフィルタ21b及び第3カラーフィルタ21c以外の部分は正反射光及び拡散光を遮光する遮光フィルタ21dが形成されている。
【0026】
図1にもどり、光拡散ベクトル方向算出部14bは、撮像カメラ16の撮像センサ23で撮像した検査画像を正反射光の成分である第3カラーフィルタを通過した光量が所定の閾値以上であった場合に、第1カラーフィルタを通過した拡散反射光(赤色R)の光量及び第2カラーフィルタを通過した拡散反射光(青色B)の光量の比率の逆正接関数を算出し、光拡散ベクトル方向を算出する処理部である。
【0027】
画像生成部14cは、光拡散ベクトル方向算出部14bで算出された各画素の光拡散ベクトル方向を線分で結び光拡散ベクトル方向を示す画像を生成する処理部である。表示制御部14dは、画像生成部14cで生成された光拡散ベクトル方向を表示部12に表示する処理を行う。
【0028】
光源15は、検査対象物100の表面Sに平行光を入射する白色光源であり、光源15から照射された平行光が検査対象物100の表面Sで反射した正反射光が、撮像カメラ16の光軸に対して平行になるような位置に設置されている。
【0029】
撮像カメラ16は、物体側テレセントリック光学系を形成し、光源15からの平行光の正反射光に平行な光軸をもち検査対象物100の表面Sからの反射光が入射される大口径凸レンズ20と、大口径凸レンズ20の像側焦点位置に配置されるカラーフィルタ21と、正反射光及び拡散光の光量を計測する撮像センサ23とを有する。
【0030】
<撮像カメラの構成>
次に、撮像カメラ16の構成について説明する。
図3及び
図4は、撮像カメラ16の構成と正反射光L及び拡散光L1、L2の一例を示す図である。
【0031】
図3及び
図4に示すように、撮像カメラ16には、光軸Cに平行な検査対象物100の表面Sからの正反射光Lをすべて入力できる大口径の入力領域を有して物体側テレセントリック光学系を形成する大口径凸レンズ20が検査対象物100側に設けられる。大口径凸レンズ20は、大口径であるため、光軸C方向の厚みが大きくなるので、フレネルレンズとすることが好ましい。
【0032】
大口径凸レンズ20の像側の焦点には、カラーフィルタ21が配置される。カラーフィルタ21は、大口径凸レンズ20の光軸Cに対して垂直に配置され、円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成され該第1の色(赤色R)を通過させる第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交し該第1の色とは異なる第2の色(青色B)を通過させる図示しない第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成され、該第3の色(緑色G)の正反射光を通過させる第3カラーフィルタ21cとが形成され、該第1カラーフィルタ21a、該第2カラーフィルタ21b及び第3カラーフィルタ21c以外の部分が遮光された遮光フィルタを有する。
【0033】
絞り凸レンズ22は、カラーフィルタ21を通過した光を撮像センサ23に結像させる。撮像センサ23は、拡散光(第1の色及び第2の色)と正反射光(第3の色)の光量を計測する。
【0034】
次に正反射光Lの光路について説明する。
図3に示すように、光源15から照射された照射光は、検査対象物100の表面Sにおいて正反射し、光軸Cに平行な光として大口径凸レンズ20に入射される。そして、正反射光Lは、大口径凸レンズの像側焦点に配置されているカラーフィルタ21の絞り穴に設置された第3カラーフィルタ21cを通過して絞り凸レンズ22に入射される。その後、正反射光Lは、絞り凸レンズ22で光軸Cに平行な光となり撮像センサ23に到達する。
【0035】
次に拡散光L1、L2の光路について説明する。ここでは、拡散光L1、L2は、X軸方向に拡散することとする。
図4に示すように、光源15から検査対象物100の表面Sの位置P1に照射された光は、表面Sにおいて、X軸方向に拡散光L1、L2のように拡散する。
【0036】
その後、拡散光L1、L2は、大口径凸レンズ20を介して、カラーフィルタ21のX軸方向に配置された第1カラーフィルタ21aを通過し、絞り凸レンズ22にて撮像センサ23の位置P2に結像される。なお、検査対象物100の表面Sの位置P1で正反射された正反射光Lは、カラーフィルタ21の中心部に設置された第3カラーフィルタ21cを通過して、撮像センサ23の位置P2に結像される。
【0037】
<拡散光ベクトル方向画像の生成>
次に拡散光ベクトル方向画像の生成について説明する。
図5は、検査対象物の表面の検査画像D1の撮像を説明するための説明図である。
図5に示すように、検査対象物100の表面Sからの正反射光L及び拡散光L1、L2は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ21、絞り凸レンズ22を介して撮像センサ23に結像される。検査対象物100の表面Sの全て表面が正反射する場合は、検査画像D1の第3カラーフィルタ21cを通過した緑色の光は、検査画像D1の全面で所定の閾値以上の光量が計測できる。
【0038】
また、同時に検査対象物100の表面Sの位置P1で拡散反射した拡散光L1、L2は、X軸方向のみに拡散した場合は、第1カラーフィルタ21aを通過するため、赤色の光として撮像センサ23の位置P2に結像する。
【0039】
光拡散ベクトル方向を算出する場合は、まず、撮像センサ23のある画素の第3カラーフィルタ21cを通過した正反射光(緑色の光)のレベルが所定の閾値以上であるか否かを判定する。正反射光のレベルが所定の閾値以上である場合に、第1カラーフィルタ21aを通過した赤色の光及び第2カラーフィルタ21bを通過した青色の光のレベルを計測し、赤色の光レベルと青色の光レベルの比率を算出し、その比率の逆正接関数を算出する。算出された逆正接関数の値が、選択した画素の拡散光のベクトル方向である。
【0040】
次に拡散光ベクトル方向画像について説明する。
図6は、撮像された検査画像及び光拡散ベクトル方向画像の一例を示す図である。ここで、検査画像D1における正反射光Lの緑色の光のレベルはすべての画素で閾値以上とする。
図6に示すように、第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過した拡散光からなる検査画像D2は、赤色及び青色とその中間色で構成されるカラー画像である。そして検査画像D2の全ての画素での赤色の光量と青色の光量の比率の逆正接関数を算出し、算出されたベクトル方向を線で結び光拡散ベクトル方向画像D3を生成する。
【0041】
次にウェルドラインが存在する場合の光拡散ベクトル方向画像について説明する。
図7は、ウェルドラインが存在する検査画像及び光拡散ベクトル方向画像の一例を示す図である。
図7に示すように、第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過した拡散光からなる検査画像D2は、ウェルドラインWが存在する位置で不連続なカラー画像となる。
【0042】
そして、検査画像D2の全ての画素で赤色の光量と青色の光量の比率の逆正接関数を算出し、算出されたベクトル方向を線で結び光拡散ベクトル方向画像D3を生成する。表面検査支援装置10は、生成された光拡散ベクトル方向画像D3を表示部12に表示することによって、検査対象物100の表面の状況を表示することができる。
【0043】
<表面検査支援装置10の処理手順>
次に、表面検査支援装置10の処理手順について説明する。
図8は、表面検査支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、表面検査支援装置10は、光源15より検査対象物100に平行光を照射する(ステップS101)。そして、表面検査支援装置10は、撮像センサ23により検査画像を取得する(ステップS102)。
【0044】
そして、表面検査支援装置10は、撮像した検査画像の緑色の信号が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS103)。緑色の信号が所定の閾値より小さい場合は(ステップS103;No)、ステップS105に移行する。一方、緑色の信号が所定の閾値以上である場合は(ステップS103;Yes)、赤色の光量と青色の光量の比率(B/R)の逆正接関数よりベクトル方向(位相)を算出する(ステップS104)。
【0045】
その後、表面検査支援装置10は、検査画像の全ての画素のベクトル方向の算出が完了したか否かを判定する(ステップS105)。全ての画素のベクトル方向の算出が完了していない場合は(ステップS105;No)、ステップS103に移行し、ベクトル方向の算出を継続する。
【0046】
一方、全ての画素のベクトル方向の算出が完了している場合は(ステップS105;Yes)、拡散光ベクトル方向画像を生成する(ステップS106)。そして、表面検査支援装置10は、生成した画像を表示し(ステップS107)、一連の処理を終了する。
【0047】
上述してきたように、本実施形態1では、表面検査支援装置10は、検査対象物100の表面Sからの正反射光L及び拡散光L1、L2を円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成された第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交する第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成された第3カラーフィルタ21cとで形成されているカラーフィルタ21を介して撮像センサ23で計測し、計測した緑色、赤色及び青色の光量に基づいて、検査対象物100の表面Sの拡散光ベクトル方向を算出し、算出した拡散光ベクトル方向を線分で表わす拡散光ベクトル方向画像を表示するようにしたので、部品の表面や塗装面の面的な光学異方性を効率よく検査することができる。
【0048】
[実施形態2]
ところで、上記実施形態1では、検査対象物100は、1つの表面Sで構成されている場合について説明したが、実施形態2では、検査対象物101は、表面S1及び表面S2の2つの表面から構成される場合について説明する。なお、実施形態1と同様の部位については、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明は省略する。ここで、検査対象物101は、樹脂で形成された樹脂形成部品である。なお、検査対象物101は、樹脂形成部品に限定されることはなく、他の物質で形成された部品でもよい。
【0049】
<表面検査支援装置30の構成>
図9は、実施形態2に係る表面検査支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、表面検査支援装置30は、入力部11、表示部12、記憶部13及び制御部34を有する。また、表面検査支援装置30は、光源15、撮像カメラ16及び角度変更部31が接続されている。入力部11は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。表示部12は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。記憶部13は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスである。
【0050】
制御部34は、表面検査支援装置30の全体を制御する制御部であり、画像取得処理部14a、光拡散ベクトル方向算出部14b、画像生成部14c、表示制御部14d及び検査対象物角度制御部34aを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、画像取得処理部14a、光拡散ベクトル方向算出部14b、画像生成部14c、表示制御部14d及び検査対象物角度制御部34aのそれぞれに対応するプロセスを実行させることになる。
【0051】
検査対象物角度制御部34aは、表面検査支援装置30に接続されている角度変更部31を制御し、検査対象物101の角度を制御する処理部である。検査対象物101は、S1及びS2の同一平面でない表面を有し、検査対象物角度制御部34aは、検査対象物101の表面S1の検査画像D1を取得する場合に、表面S1の検査画像D1において緑色の光量が最大になるように角度変更部31を制御する。また、検査対象物101の表面S2の検査画像D1を取得する場合は、表面S2の検査画像D1において緑色の光量が最大になるように角度変更部31を制御する。
【0052】
<検査画像の撮像について>
次に、表面検査支援装置30の検査画像の撮像について説明する。
図10及び
図11は、検査対象物101の表面の検査画像の撮像を説明するための説明図である。
図10に示すように、表面検査支援装置30は、図示しない光源から照射された平行光が検査対象物101のS2において、正反射光Lが光軸Cと平行な光として大口径凸レンズ20に入射される。
【0053】
一方、図示しない光源から照射された平行光は、検査対象物101のS1における正反射光Laは、大口径凸レンズ20の口径内に反射せず、撮像カメラ16で撮像することができない。したがって、検査対象物101の表面S2は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ21及び絞り凸レンズ22を介して撮像センサ23に結像し、検査画像D1は、表面S1の部分が暗い画像となる。
【0054】
次に、検査対象物101の表面S1の検査を行う場合には、
図11に示すように、検査対象物101の表面S1で反射した図示しない光源からの平行光が、正反射光Lとなるように、検査対象物101は、角度変更部31によりY軸を中心に反時計回りに角度θ回転させる。
【0055】
この場合、検査対象物101の表面S1で反射した正反射光Lは、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ21及び絞り凸レンズ22を介して撮像センサ23に結像し、検査対象物101の表面S2で反射した光は、大口径凸レンズ20の口径内に反射せず検査画像D1は、表面S2が暗い画像となる。
【0056】
<拡散光ベクトル方向画像の生成>
次に、表面検査支援装置30の光格段ベクトル方向画像の生成について説明する。
図12は、検査画像及び光拡散ベクトル方向画像の一例を示す図である。
図12に示すように、検査対象物101の表面S1を撮像した検査画像D1及び表面S2を撮像した検査画像D1の緑色の光量が所定の閾値以上である画素を合成し、検査画像D2を生成する。
【0057】
検査画像D2は、第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過した拡散光からなる画像である。そして検査画像D2の全ての画素での赤色の光レベルと青色の光レベルの比率の逆正接関数を算出し、算出されたベクトル方向を線で結び光拡散ベクトル方向画像D3を生成することができる。光拡散ベクトル方向画像D3は、表面S1と表面S2の境界BLを表わすこともできる。
【0058】
上述してきたように、本実施形態2では、表面検査支援装置30は、検査対象物101の表面S1及び表面S2からの正反射光L及び拡散光L1、L2を、検査対象物101の角度を制御することで、円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成された第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交する第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成された第3カラーフィルタ21cとで形成されているカラーフィルタ21を介して撮像センサ23で計測し、計測した緑色、赤色及び青色の光量に基づいて、検査対象物101の表面S1及び表面S2の拡散光ベクトル方向を算出し、算出した拡散光ベクトル方向を線分で表わす拡散光ベクトル方向画像を表示するようにしたので、部品の表面や塗装面の面的な光学異方性を効率よく検査することができる。
【0059】
なお、上記実施形態2では、検査対象物101を角度変更部31によりY軸を中心に角度の変更を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、検査対象物101を角度変更部31によりY軸及び/またはX軸を中心に角度の変更を行ってもよい。
【0060】
また、上記実施形態1及び実施形態2では、カラーフィルタ21の円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成された第1の色(赤色R)の第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交する第2の色(青色B)の第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成された第3の色(緑色G)の第3カラーフィルタ21cを配したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各フィルタの色は入れ替えてもよい。また、各色のフィルタをシャッタや局所的な絞り羽を配して正反射光L及び拡散光L1、L2の光量を計測するようにしてもよい。
【0061】
また、各色のカラーフィルタの代わりに透明で透過率が制御可能な液晶を利用し、不透過・透過の部位を順次高速に入れ替える構成にしてもよい。
【0062】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る表面検査支援装置及び表面検査支援方法は、部品の表面や塗装面の面的な光学異方性を効率よく検査する場合に適している。
【符号の説明】
【0064】
10、30 表面検査支援装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
14、34 制御部
14a 画像取得処理部
14b 光拡散ベクトル方向算出部
14c 画像生成部
14d 表示制御部
15 光源
16 撮像カメラ
20 大口径凸レンズ
21 カラーフィルタ
21a 第1カラーフィルタ
21b 第2カラーフィルタ
21c 第3カラーフィルタ
21d 遮光フィルタ
22 絞り凸レンズ
23 撮像センサ
31 角度変更部
34a 検査対象物角度制御部
100、101 検査対象物
BL 境界
C 光軸
D1、D2 検査画像
D3 光拡散ベクトル方向画像
L、La 正反射光
L1、L2 拡散光
P1、P2 位置
S、S1、S2 表面
W ウェルドライン