(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025542
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ピルガー圧延機の素管材制御機構及び素管材制御方法
(51)【国際特許分類】
B21B 21/06 20060101AFI20240216BHJP
B21B 13/18 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B21B21/06
B21B13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129058
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】514261993
【氏名又は名称】株式会社三益
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】島田 健
(72)【発明者】
【氏名】漆崎 茂
(57)【要約】
【課題】装置の軽量化を図り、装置の高速運転を可能にして生産効率の向上を実現する。
【解決手段】シャフト部材9に沿って移動可能な移動基台5aと、素管材Sを圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する分散チャック51と、回転駆動することによりシャフト部材9から反力を得て移動基台5aを進退させる送用駆動モーター641,642と、分散チャック51が把持する素管材Sを軸回転させる捻用駆動モーター643と、移動基台5a上に設置され、シャフト部材9を回転駆動させる送駆動手段とを備える。捻用駆動モーター643は、回転動力を分散チャック51へ伝達する環状の捻用タイミングベルト654が接続され、分散チャック51が把持する素管材Sを軸回転させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御機構であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されるロッド状のシャフト部材と、
前記シャフト部材に沿って移動可能な基台部と、
前記基台部上において、前記素管材を、前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する素材把持部と、
前記基台部上において前記シャフト部材に係合され、前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させる進退駆動部と、
前記基台部上において、前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる捻駆動手段と、
前記進退駆動部を回転駆動させる送駆動手段と
を備え、
前記捻駆動手段は、
回転動力を出力する捻用動力源と、
前記回転動力を前記素材把持部へ伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された回転動力により、前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる
ことを特徴とするピルガー圧延機の素管材制御機構。
【請求項2】
素管材の送り出し方向に沿って延設され、前記捻用動力源によって軸回転されるロッド状の伝達軸をさらに備え、
前記素材把持部は前記伝達軸に沿って複数配置され、
前記ベルト部材は、前記複数の素材把持部のそれぞれに対して設けられ、前記伝達軸の軸回転による回転動力を各素材把持部に伝達する
ことを特徴とする請求項1に記載のピルガー圧延機の素管材制御機構。
【請求項3】
前記伝達軸の断面形状に合致して前記伝達軸が挿通される挿通部を有し、且つ前記伝達軸に対して前記送り出し方向に摺動可能な摺動プーリーと、
前記捻用動力源の回転動力を摺動プーリーへ伝達する環状の動力源側ベルト部材と
をさらに備え、
前記捻用動力源は前記基台部外に設置され、
前記伝達軸はその断面が多角形状をなし、
前記ベルト部材は基台部とともに進退され、
前記摺動プーリーは、前記捻用動力源の進退に伴って前記伝達軸上を摺動しつつ、前記動力源側ベルト部材を介して前記回転動力を伝達する
ことを特徴とする請求項2に記載のピルガー圧延機の素管材制御機構。
【請求項4】
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御機構であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されるロッド状のシャフト部材と、
前記シャフト部材に沿って移動可能な基台部と、
前記基台部上において、前記素管材を、前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する素材把持部と、
前記基台部上において前記シャフト部材に係合され、前記シャフト部材の回転駆動により、前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させる進退駆動部と、
前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる捻駆動手段と、
前記シャフト部材を回転駆動させる送駆動手段と
を備え、
前記送駆動手段は、
前記基台部外に設置され、回転動力を出力する送用動力源と、
前記回転動力を伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された動力により、前記シャフト部材を回転駆動させる
ことを特徴とするピルガー圧延機の素管材制御機構。
【請求項5】
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御方法であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されたロッド状のシャフト部材に沿って移動可能な基台部を配置させ、
前記基台部上において、前記素管材を、素材把持部により前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する工程と、
前記基台部上において、前記シャフト部材に係合された進退駆動部を送駆動手段で回転駆動させることにより前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させるともに、前記基台部上において、前記素材把持部が把持する前記素管材を捻駆動手段により軸回転させる工程と
を含み、
前記捻駆動手段は、
回転動力を出力する捻用動力源と、
前記回転動力を前記素材把持部へ伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された動力により、前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる
ことを特徴とするピルガー圧延機の素管材制御方法。
【請求項6】
素管材の送り出し方向に沿って延設され、前記捻用動力源によって軸回転されるロッド状の伝達軸をさらに備え、
前記素材把持部は前記伝達軸に沿って複数配置され、
前記ベルト部材は、前記複数の素材把持部のそれぞれに対して設けられ、前記伝達軸の軸回転による回転動力を各素材把持部に伝達する
ことを特徴とする請求項5に記載のピルガー圧延機の素管材制御方法。
【請求項7】
前記伝達軸の断面形状に合致して前記伝達軸が挿通される挿通部を有し、且つ前記伝達軸に対して前記送り出し方向に摺動可能な摺動プーリーと、
前記捻用動力源の回転動力を摺動プーリーへ伝達する環状の動力源側ベルト部材と
をさらに備え、
前記捻用動力源は前記基台部外に設置され、
前記伝達軸はその断面が多角形状をなし、
前記ベルト部材は基台部とともに進退され、
前記摺動プーリーは、前記捻用動力源の進退に伴って前記伝達軸上を摺動しつつ、前記動力源側ベルト部材を介して前記回転動力を伝達する
ことを特徴とする請求項6に記載のピルガー圧延機の素管材制御方法。
【請求項8】
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御方法であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されたロッド状のシャフト部材に沿って移動可能な基台部を配置させ、
前記基台部上において、前記素管材を、素材把持部により前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する工程と、
前記基台部上において、前記シャフト部材に係合され、前記シャフト部材の回転駆動により、前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させるともに、前記素材把持部が把持する前記素管材を捻駆動手段により軸回転させる工程と
を含み、
前記シャフト部材を回転駆動させる送駆動手段は、
前記基台部外に設置され、回転動力を出力する送用動力源と、
前記回転動力を伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された動力により、前記シャフト部材を回転駆動させる
ことを特徴とするピルガー圧延機の素管材制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドピルガーなど、圧延ロール等によって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる金属素材を送り出し、圧延領域内において金属素材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御機構及び素管材制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野、次世代エネルギー分野、及び既存エネルギー分野等では、燃料噴射管などの自動車の各装置、水素ステーション設備、及び石油及びガスプラント等の各種設備における燃料効率化のため、特殊鋼、ステンレス、ニッケル合金、チタン等の高機能材料を加工したシームレス管の需要が、耐圧、耐蝕、耐熱、及び高精度などの観点から高まっている。
【0003】
このようなシームレス管は、金属製の管素材又は中実棒素材からなる金属素材を圧延することにより製造される。具体的に、シームレス管の製造としては、上下一対の圧延ロールを用いて圧延するコールドピルガーミルによる冷間圧延法などが知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1に開示された技術では、周面に孔型を形成された一対の孔型ロールを用い、孔型ロールの間には先端に向かって径が小さくなるテーパーを有するマンドレルが設けられる。この孔型ロールは、その軸心に設けられた回転軸でロールスタンドに支持されている。そして、管素材に冷間圧延を行う際、ロールスタンドに支持された孔型ロールがマンドレルに沿って往復移動することによって、往復回転しながら被加工材である管素材を圧延する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来の圧延装置は、金属素材を把持する機構が載置された基台部を孔型ロールに向けて前進駆動させる動力発生装置が装置外部に配置され、外部位置からシャフト部材を回転させる機構であるため、動力発生装置から基台部までのシャフト部材の長さによっては、シャフト部材に撓みが生じるため、シャフト部材を回転させるための動力発生装置に高い出力が要求される。
【0006】
すなわち、シャフト部材が尺化により、基台部上においてシャフト部材に螺合される箇所に生じるトルクや荷重が増大することとなり、これに耐えられるようにシャフト部材の径や強度を大きくする必要があった。これに伴い動力発生装置を大型化するとともに、高出力化しなければならず、延圧設備全体が大型化して設備の設置コストが増大してしまううえに、消費エネルギーも増大して運転コストも嵩むという問題があった。
【0007】
また、近年ではさらなる生産効率の向上が望まれているが、金属素材を送り出す機構、及び捻り回転させる機構など、装置各部が大型化すると動作時のイナーシャ(慣性モーメント)も大きくなり、それを制御するために装置がさらに重量化する傾向にあり、金属素材を送り出す機構の動作速度も高速化に一定の限界があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、コールドピルガーなど、金属製の管素材又は中実棒素材などの金属素材を圧延領域内に送り出して圧延するにあたり、装置の軽量化を図り、装置の高速運転を可能にして生産効率の向上を実現することができるピルガー圧延機の素管材制御機構及び素管材制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御機構であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されるロッド状のシャフト部材と、
前記シャフト部材に沿って移動可能な基台部と、
前記基台部上において、前記素管材を、前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する素材把持部と、
前記基台部上において前記シャフト部材に係合され、前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させる進退駆動部と、
前記基台部上において、前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる捻駆動手段と、
前記進退駆動部を回転駆動させる送駆動手段と
を備え、
前記捻駆動手段は、
回転動力を出力する捻用動力源と、
前記回転動力を前記素材把持部へ伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された回転動力により、前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる
ことを特徴とする。
【0010】
また、第1の発明は、
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御方法であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されたロッド状のシャフト部材に沿って移動可能な基台部を配置させ、
前記基台部上において、前記素管材を、素材把持部により前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する工程と、
前記基台部上において、前記シャフト部材に係合された進退駆動部を送駆動手段で回転駆動させることにより前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させるともに、前記基台部上において、前記素材把持部が把持する前記素管材を捻駆動手段により軸回転させる工程と
を含み、
前記捻駆動手段は、
回転動力を出力する捻用動力源と、
前記回転動力を前記素材把持部へ伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された動力により、前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる
ことを特徴とする。
【0011】
上記発明では、
素管材の送り出し方向に沿って延設され、前記捻用動力源によって軸回転されるロッド状の伝達軸をさらに備え、
前記素材把持部は前記伝達軸に沿って複数配置され、
前記ベルト部材は、前記複数の素材把持部のそれぞれに対して設けられ、前記伝達軸の軸回転による回転動力を各素材把持部に伝達する
ことを特徴とすることが好ましい。
【0012】
上記発明では、前記伝達軸の断面形状に合致して前記伝達軸が挿通される挿通部を有し、且つ前記伝達軸に対して前記送り出し方向に摺動可能な摺動プーリーと、
前記捻用動力源の回転動力を摺動プーリーへ伝達する環状の動力源側ベルト部材と
をさらに備え、
前記捻用動力源は前記基台部外に設置され、
前記伝達軸はその断面が多角形状をなし、
前記ベルト部材は基台部とともに進退され、
前記摺動プーリーは、前記捻用動力源の進退に伴って前記伝達軸上を摺動しつつ、前記動力源側ベルト部材を介して前記回転動力を伝達する
ことを特徴とすることが好ましい。
【0013】
第2の発明は、
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御機構であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されるロッド状のシャフト部材と、
前記シャフト部材に沿って移動可能な基台部と、
前記基台部上において、前記素管材を、前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する素材把持部と、
前記基台部上において前記シャフト部材に係合され、前記シャフト部材の回転駆動により、前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させる進退駆動部と、
前記素材把持部が把持する前記素管材を軸回転させる捻駆動手段と、
前記シャフト部材を回転駆動させる送駆動手段と
を備え、
前記送駆動手段は、
前記基台部外に設置され、回転動力を出力する送用動力源と、
前記回転動力を伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された動力により、前記シャフト部材を回転駆動させる
ことを特徴とする。
【0014】
また、第2の発明は、
圧延ロールによって形成される圧延領域に向けて、金属製の管素材又は中実棒素材からなる素管材を送り出し、前記圧延領域内において、前記素管材の外周に押圧される凹部を有する孔型に把持させつつ、前記素管材を圧延するピルガー圧延機の素管材制御方法であって、
前記素管材の送り出し方向に沿って延設されたロッド状のシャフト部材に沿って移動可能な基台部を配置させ、
前記基台部上において、前記素管材を、素材把持部により前記圧延領域に臨ませて軸回転可能に把持する工程と、
前記基台部上において、前記シャフト部材に係合され、前記シャフト部材の回転駆動により、前記シャフト部材から反力を得て前記基台部を前記シャフト部材に沿って進退させるともに、前記素材把持部が把持する前記素管材を捻駆動手段により軸回転させる工程と
を含み、
前記シャフト部材を回転駆動させる送駆動手段は、
前記基台部外に設置され、回転動力を出力する送用動力源と、
前記回転動力を伝達する環状のベルト部材と
を備え、
前記ベルト部材を介して伝達された動力により、前記シャフト部材を回転駆動させる
ことを特徴とする。
【0015】
上記発明において、
前記シャフト部材には前記送り出し方向に沿ってネジ部が刻設され、
前記進退駆動部は、前記シャフト部材のネジ部に螺合される螺合部を有し、前記螺合部を回転させることにより前記シャフト部材から反力を得て進退させる
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、この発明によれば、シャフト部材に沿って移動可能な基台部におい素材把持部及び進退駆動部を配置するとともに、これらの駆動手段も基台部上に設置するため、シャフト部材及び金属素材に係合する部分と、これらの動力源との距離を短く且つ一定にすることができる。この結果、本実施形態によれば、コールドピルガーなど、金属製の管素材又は中実棒素材などの金属素材を圧延領域内に送り出して圧延するにあたり、装置の軽量化を図り、装置の高速運転を可能にして生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る圧延装置全体を示す模式図であり、同図(a)は、圧延装置の上面図であり、同図(b)は、圧延装置の側面図である。
【
図2】実施形態に係る搬送部の構造の上面図である。
【
図3】実施形態に係る搬送部の構造の右側面図である。
【
図4】実施形態に係る搬送部の構造の左側面図である。
【
図5】実施形態に係る搬送部の構造の正面図である。
【
図6】実施形態に係る搬送部の構造の背面図である。
【
図7】実施形態に係る搬送部の構造を正面側から観た斜視図である。
【
図8】実施形態に係る搬送部の構造を背面側から観た斜視図である。
【
図9】実施形態に係る搬送部における駆動機構のみを示す斜視図である。
【
図10】実施形態に係る送出チャックを示す斜視図である。
【
図11】実施形態に係る送出チャックを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(圧延装置の全体構成)
以下に添付図面を参照して、本発明に係るピルガー圧延機100の実施形態を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るピルガー圧延機100全体を示す模式図であり、同図(a)はピルガー圧延機100の上面図であり、同図(b)はピルガー圧延機100の側面図である。なお、本実施形態においては、筒状の管素材を圧延する場合を例にするが、本発明は、これに限定するものではなく、例えば、内部に空間を有さない金属製の中実棒素材にも適用することができる。
【0019】
なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
図1(a)及び(b)に示すように、ピルガー圧延機100は、圧延ロール1,1によって形成される圧延領域に向けて、金属製の素管材Sを送り出し、圧延領域内において金属素材を圧延する圧延機である。具体的にこのピルガー圧延機100は、上下一対の圧延ロール1、1が組み込まれたロールスタンド2と、このロールスタンド2を往復移動させる主駆動部3と、先端部に先細テーパーが形成されたマンドレル4と、素管材Sを保持しつつ素管材Sを間欠的に所定量ずつ送り出すとともに、素管材Sを所定量軸回転させる搬送部6及び移動チャック部5と、圧延後の製品管Pを把持する出側把持部8とを備えている。
【0021】
ロールスタンド2に組み込まれた一対の圧延ロール1、1は、上下に配置されており、その上下に配置された圧延ロール1、1間が圧延領域となっている。また、一対の圧延ロール1、1は、いずれも図示は省略するが、その軸端に装着されたピニオンがスタンドフレームに固定配置されたラックに噛合されており、ロールスタンド2の往復移動に伴って正逆回転するようになっている。
【0022】
圧延ロール1の外周面には、曲率半径が円周方向に順次小さくされた孔型(凹部)1aが形成され、この孔型1aに把持させつつ素管材Sを圧延する。この孔型1aは、素管材Sの外周に押圧される凹部を有しており、この孔型1aの凹部とマンドレル4の先細テーパー部とで、素管材Sの外径と肉厚を縮小圧延するようになっている。なお、孔型1aには途中にアイドル区間を介在させている。アイドル区間は、搬送部6によって素管材Sを送り出し且つ回転させる区間である。
【0023】
主駆動部3は、ロールスタンド2を往復移動させる駆動手段であって、主駆動部3の両側部に設けられ、図示しないモーターによって中心軸を中心として回転する回転体31,31と、各回転体31とロールスタンド2とに連結され、回転体31の回転力をロールスタンド2に伝達させる推力ロッド32とを備えている。この回転体31,31が回転すると、推力ロッドによって回転体31,31の回転力が推進力に変換されてロールスタンド2に伝達され、ロールスタンド2は矢印方向で往復運動するようになっている。
【0024】
マンドレル4は、素管材Sの内部に挿通される断面円形のロッド状の部材であり、圧延ロール1、1の素管材Sに対する外部からの押圧に対して、素管材Sの内部から反力を与えるようになっている。マンドレル4は、マンドレル4を支持するマンドレル支持パイプ41の先端に取り付けられており、マンドレル支持パイプ41は、複数の移動チャック部5によって保持されている。搬送部6は、図示しないシリンダーによって開閉自在であり、常時はマンドレル支持パイプ41を把持し、マンドレル4が軸長方向に位置移動しないように固定している。
【0025】
シャフト保持部69とロールスタンド2との間には、素管材Sの送り出し方向に沿って延設される一対のシャフト部材9が配置されている。シャフト部材9は、両端がシャフト保持部69とロールスタンド2とによって回転可能に支持されたロッド状のネジ部材であり、シャフト部材9の外周面には雄ネジが刻設され、この雄ネジには、各移動チャック部5において螺合部92が螺合接続されている。これによりシャフト部材9が軸回転されることにより、各螺合部92が圧延領域に向かって移動可能に連結されている。
【0026】
このシャフト部材9と平行となるように、断面六角形状をなす伝達軸50が敷設されている。この伝達軸50は、素管材Sの送り出し方向に沿って延設され、捻用動力源である捻用駆動モーター643によって軸回転されるロッド状の部材であり、搬送部6上においてプーリー91が嵌合され、動力源側タイミングベルト653を介して捻用駆動モーター643により軸回転されるようになっている。また、伝達軸50には、各移動チャック部5において摺動プーリー94が摺動可能にそれぞれ嵌合されている。この摺動プーリー94は、伝達軸50の断面形状に合致して伝達軸50が挿通される挿通部94aを有しており、この挿通部94aに挿通された伝達軸50に対して送り出し方向に摺動可能な部材である。
【0027】
詳述すると、プーリー91は、搬送部6の基台部62上において、動力源側タイミングベルト653を介して、捻用駆動モーター643の回転動力を伝達する。本実施形態での伝達軸50は、その断面が六角形状に形成されるとともに、挿通部91aの断面が六角形状に形成されている。これにより接続部91は、動力源側タイミングベルト653を介して回転動力を伝達する。なお、伝達軸50は、支持壁622を貫通され、支持壁622の壁面において接続部91を軸支している。
【0028】
一方、移動チャック部5の移動基台5a上において、摺動プーリー94は、捻用タイミングベルト654を介して、伝達軸50からの回転動力を伝達する。本実施形態での伝達軸50は、その断面が六角形状に形成されるとともに、挿通部94aの断面が六角形状に形成されている。これにより摺動プーリー94は、伝達軸50の軸方向には摺動するが、周方向には摺動しないようになり、結果的に摺動プーリー94は、移動基台5aの進退に伴って伝達軸50上を摺動しつつ、捻用タイミングベルト654を介して回転動力を移動チャック部5上のチャック511,512に伝達する。なお、伝達軸50は、支持壁622を貫通され、支持壁522の壁面において摺動プーリー94とともに軸支されている。
【0029】
搬送部6は、素管材Sを中途で保持するとともに、搬送部6の内部に設置されている駆動源により所定のタイミングで素管材Sを、間欠的に捻りつつ一定の長さだけ送り出す駆動部となっている。搬送部6では、基台部62上において、シャフト部材9を軸回転させる送駆動手段の動力源としての送用駆動モーター641及び642が備えられており、これら送用駆動モーター641及び642によってシャフト部材9が回転駆動され、その回転力は、シャフト部材9を介して各移動チャック部5の螺合部92に伝達され、螺合部92により各チャック512の移動基台5aが進退される。
【0030】
さらに、搬送部6では、基台部62上において、伝達軸50を軸回転させる捻駆動手段の動力源としての捻用駆動モーター643が備えられており、この捻用駆動モーター643によって伝達軸50が回転駆動され、その回転力は、伝達軸50を介して各移動チャック部5の分散チャック51に伝達され、素管材Sが間欠的に軸回転される。
【0031】
移動チャック部5は、素管材Sを保持して、シャフト部材9及び伝達軸50を介して搬送部6側に設置されている駆動源によって所定のタイミングで素管材Sを捻りつつ一定の長さだけ送り出す駆動機構であり、素管材Sの送り出し方向に沿って前進及び後退が可能となっている。この搬送部6では、搬送部6側に備えられた伝達軸50を軸回転させる捻駆動手段の動力源としての捻用駆動モーター643によって、伝達軸50が回転駆動され、その回転力は、移動基台5a上において、各移動チャック部5の分散チャック51に伝達され、素管材Sが間欠的に軸回転される。この素管材Sが間欠的に軸回転されることにより素管材Sの外周が均一に縮小圧延される。
【0032】
出側把持部8は、図示しないシリンダーとによってそれぞれ開閉自在であり、常時は圧延中の素管材Sと製品管Pを、その軸長方向への摺動は許容するが、周方向へは摺動不能な状態に把持し、製品管Pと一体となって回転するようになっている。なお、出側把持部8のシリンダーには、管を変形させないために、管寸法(外径と肉厚)と材質に基づいて予め求められた把持力が得られる圧力の液体(油)が供給される。
【0033】
上記のように構成されたピルガー圧延機100では、ロールスタンド2が一往復する間に正逆回転する上下一対の圧延ロール1、1と、先細テーパーのマンドレル4とで素管材Sに縮径減肉加工を施し、製品管Pに成形する。その際、素管材Sは、ロールスタンド2が所定の回数、往復する毎に、搬送部6及び移動チャック部5によってロールスタンド2の側へ一定長ずつ送り出される。また、これと同時に、素管材Sとマンドレル4は、搬送部6及び移動チャック部5によってその軸心周りに所定の角度だけ回転させられる。上記の搬送部6及び移動チャック部5による素管材Sの送り出しは、通常、圧延ロール1、1の孔型1a,1aのアイドル区間に素管材Sが位置するときに行われる。
【0034】
このような各装置の駆動は、CPU等で構成される制御装置(図示せず)によって制御されており、例えば、素管材Sの送り出し量の調整は、この制御装置を用いて搬送部6内の駆動モーターの回転数をクランク軸の回転に同期シーケンス制御することで行われる。ただし、クランク軸に歯車機構を用いて機械的に連結されたピルガー圧延機では、歯車機構の歯車比を変えるなどして行ってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、駆動モーター毎にモータートルク又は電流値を検出するセンサーが設けられているとともに、これらモータートルク又は電流値の下限値が設定されている。そして、タイミングベルトが切れた場合にモーター負荷(モータートルク)が急激に小さくなることを検知したとき、主駆動部3における圧延動作を停止させる。特に、送用タイミングベルト651,652が切れた場合には、機械は稼働しているが、生産は進まなくなるため、センサーによりこれを検知して即座に動作を停止して、速やかに普及させることが望ましい。また、捻用タイミングベルト654が切れた場合には、異常圧延となり高価なマンドレルが破損するため、直ちに検知して圧延動作を停止させることにより、マンドレル等の破損を回避することが望ましい。
【0036】
(搬送部の構成)
次いで、搬送部6の構成について詳述する。
図2~
図8に搬送部6の構成を示し、
図9に本実施形態に係る搬送部6に備えられた動力系のみを示す。これらの図に示すように、搬送部6は、主として、基台部62上に、送用駆動モーター641及び642と、シャフト部材9(9a,9b)とともに進退駆動部を構成する接続部411及び412と、捻駆動手段の動力源である捻用駆動モーター643とを備えている。
【0037】
本実施形態において、上述した各駆動モーター641,642及び643は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電動機であって、図示しない電源コード等を介して電力が供給されることで回転駆動される。送用駆動モーター641,642は、シャフト部材9とともに進退駆動部を構成する接続部411及び412を軸回転させる駆動源であり、捻用駆動モーター643は、伝達軸50を軸回転させる駆動源である。
【0038】
上記基台部62は、固定配置される台座であり、水平な板状の台座624と、それを支持する脚部623とから構成されている。また、基台部62の台座624上には、支持壁621及び622が垂直に且つシャフト部材9の延設方向に直交するように立設されている。
【0039】
捻用駆動モーター643は、捻駆動手段を構成する捻用動力源であり、基台部62上において、接続部91に挿通された断面六角形状の伝達軸50を軸回転させる。この捻用駆動モーター643は、支持壁622に固定されているとともに、その回転軸643aを支持壁622に貫通させ、支持壁622の反対側の面においてプーリー663を軸支している。これにより、捻用駆動モーター643は、支持壁622から反力を得てプーリー663を回転させる。
【0040】
一方、送用駆動モーター641は、支持壁621に固定されているとともに、その回転軸641aを支持壁621に貫通させ、支持壁621の反対側の面においてプーリー661を軸支している。これにより、送用駆動モーター641は、支持壁621から反力を得てプーリー661を回転させる。他方、駆動モーター642は、支持壁622に固定されているとともに、その回転軸642aを支持壁622に貫通させ、支持壁622の反対側の面においてプーリー662を軸支している。これにより、駆動モーター642は、支持壁622から反力を得てプーリー662を回転させる。
【0041】
また、本実施形態において、送駆動手段は、送用駆動モーター641及び642に接続されたプーリー661及び662のそれぞれに掛け回される環状の送用タイミングベルト651及び652を備えている。これら送用タイミングベルト651及び652は、プーリーの外周に形成された歯に係合される多数の歯が形成された無端状(環状)のベルト部材であり、本実施形態では、高強度ゴムを使用し、芯線にはグラスファイバーやアラミド繊維を使用した高強度の一般的なベルトを用いる。また、送用タイミングベルト651及び652としては、高強度ウレタンを使用した低速高トルク域に特化したさらに高強度なベルトを用いることが好ましい。
【0042】
そして、送用タイミングベルト651及び652は、プーリー661及び662から、接続部411及び412の外周部に配置されたプーリー421及び422に駆け回れ、送用駆動モーター641及び642からの回転動力が、プーリー661及び662それぞれから各送用タイミングベルト651及び652に伝達され、送用タイミングベルト651及び652を介して伝達された動力により、プーリー421及び422を介して接続部411及び412が軸回転される。接続部411及び412はシャフト部材9に固定されており、接続部411及び412が回転駆動することにより、各前方・後方シャフト9a及び9bが軸回転される。
【0043】
他方、捻用駆動モーター643は、捻駆動手段を構成する捻用動力源であり、基台部62上において、進退駆動部を構成する伝達軸50を回転駆動させる。捻用駆動モーター643は、支持壁622に固定されているとともに、その回転軸643aを支持壁622に貫通させ、支持壁622の反対側の面においてプーリー663を軸支している。これにより、捻用駆動モーター643は、支持壁622から反力を得てプーリー663を回転させる。
【0044】
上記進退駆動部を構成する接続部411,412は、基台部62上においてシャフト部材9(9a,9b)に係合され、回転駆動することによりシャフト部材9から反力を得て、基台部62をシャフト部材9に沿って進退させる機構である。具体的に、本実施形態における接続部411,412は、円柱状の部材であり、その内部中空部に挿通されたシャフト部材9と固着されている。本実施形態においてシャフト部材9は、搬送部6の前方と後方とで前方・後方シャフト9a及び9bに分割されており、前方・後方シャフト9a及び9bのそれぞれに固着されている。これにより、前方・後方シャフト9a及び9bは、送用駆動モーター641及び642によってそれぞれ独立して回転駆動される。
【0045】
また、本実施形態では、捻用駆動モーター643の回転軸643aにプーリー663が接続されており、このプーリー663には、環状の動力源側タイミングベルト653が掛け回されている。動力源側タイミングベルト653は、プーリーの外周に形成された歯に係合される多数の歯が形成された無端状(環状)のベルト部材であり、本実施形態では、高強度ゴムを使用し、芯線にはグラスファイバーやアラミド繊維を使用した高強度の一般的なベルトを用いる。また、動力源側タイミングベルト653としては、高強度ウレタンを使用した低速高トルク域に特化したさらに高強度なベルトを用いることが好ましい。
【0046】
そして、送用タイミングベルト651及び652は、プーリー661及び662から、シャフト部材9に螺合された接続部411,412の外周部に配置されたプーリー421及び422に駆け回され、送用駆動モーター641及び642からの回転動力が、プーリー661及び662を介して送用タイミングベルト651及び652に伝達される。この送用タイミングベルト651及び652により伝達された動力によって、プーリー421,422を介して接続部411,412が回転され、この接続部411,412の雌ネジ部によって回転力がシャフト部材9に沿って前進・後退する動力に変換される。
【0047】
(送出チャック部の構成)
次いで、移動チャック部5の構成について詳述する。
図10~
図11に移動チャック部5の構成を示す。これらの図に示すように、本実施形態では、捻用動力源である捻用駆動モーター643の動力が、伝達軸50を介して、複数のチャック512における捻り動作として供給される。移動チャック部5はこの複数の素材把持部として、素管材の送り出し方向に沿って複数配置される駆動機構であり、各タイミングベルトは、複数の移動チャック部5のそれぞれに備えられ、伝達軸50の軸回転による回転動力を各素材把持部である各分散チャック51に伝達する。具体的に、各移動チャック部5は、移動基台5a上に、素材把持部としての分散チャック51と、捻駆動手段であるプーリー・タイミングベルト機構と、送駆動手段である送出油圧シリンダー52とから概略構成される。
【0048】
本実施形態において、上記プーリー・タイミングベルト機構は、伝達軸50の回転駆動力を、素材把持部である分散チャック51に伝達する機構であり、送出油圧シリンダー52は、油圧力により分散チャック51を前後に進退させる進退駆動機構である。また、移動基台5a上において、シャフト部材9には螺合部92が螺合されており、シャフト部材9(9a又は9b)が軸回転されることによって、螺合部92がシャフト部材9から反力を得てシャフト部材9に沿って進退し、移動基台5aが水平移動される。
【0049】
上記移動基台5aは、素管材Sの送り出し方向に沿って延設されるロッド状のシャフト部材9に沿って移動可能な台座である。移動基台5aは、ガイドブロック5cを介して、シャフト部材9と平行に敷設されたガイドレール5b上に載置され、ガイドレール5b上を水平移動するようになっている。また、移動基台5a上には支持壁521及び522が垂直に且つシャフト部材9の延設方向に直交するように立設されている。
【0050】
分散チャック51は、移動基台5a上において、素管材Sを圧延領域にあるロールスタンド2に臨ませて軸回転可能に把持する素材把持部である。この分散チャック51は、内部に素管材Sが挿通され、挿通された素管材Sを外方から分割されたチャック511及び512により締め付けるようにして把持する構造となっている。また、分散チャック51は、移動基台5a上において、支持壁521及び522に固定されており、これら支持壁521及び522から反力を得られるように支持されている。
【0051】
そして、分散チャック51は、支持壁521及び522を介して移動基台5aから反力を得て素管材Sを保持し、素管材Sをロールスタンド2に臨ませるとともに、素管材Sを所定の角度ずつ間欠的に軸回転させる機構であり、移動基台5aの前方、すなわちロールスタンド2と対向する側と、移動基台5aの後方側に複数配置されている。
【0052】
これらの分散チャック51は、素管材Sが挿通されて、チャック511及び512により把持することで素管材Sを保持している。また、一方のチャック512の外周部には、動力伝達機能としてのプーリー96が一体的に取り付けられている。このプーリー96は、伝達軸50からの回転動力を分散チャック51全体に伝達する。この回転動力が分散チャック51に伝達されると、分散チャック51は、チャック511及び512で把持した素管材Sを内部のマンドレル4を中心として間欠的に回転させるようになっている。
【0053】
伝達軸50は、素管材Sの送り出し方向に沿って延設され、捻用動力源である捻用駆動モーター643によって軸回転されるロッド状の部材であり、本実施形態に係る伝達軸50は、摺動プーリー94が摺動可能に嵌合されている。この摺動プーリー94は、伝達軸50の断面形状に合致して伝達軸50が挿通される挿通部94aを有するとともに、挿通された伝達軸50に対して送り出し方向に摺動可能な部材である。
【0054】
この摺動プーリー94の回転は、移動基台5a上において、捻用タイミングベルト654を介して、分散チャック51側のプーリー96に伝達される。本実施形態において伝達軸50は、その断面が六角形状に形成されるとともに、挿通部91aも断面が六角形状に形成されている。これにより摺動プーリー94は、伝達軸50の軸方向には摺動するが、周方向には摺動しないようになり、結果的に摺動プーリー94は、移動基台5aの進退に伴って伝達軸50上を摺動しつつ、捻用タイミングベルト654を介して回転動力を分散チャック51に伝達する。
【0055】
なお、捻用タイミングベルト654は、プーリー94及びプーリー96に掛け回されにあたり、回転軸95aで支持壁522に軸支されたアイドリングプーリー95にも掛け回されて、略三角形状の周回軌道上を周回する。この捻用タイミングベルト654は、各プーリーの外周に形成された歯に係合される多数の歯が形成された無端状(環状)のベルト部材であり、本実施形態では、高強度ゴムを使用し、芯線にはグラスファイバーやアラミド繊維を使用した高強度の一般的なベルトを用いる。また、捻用タイミングベルト654としては、高強度ウレタンを使用した低速高トルク域に特化したさらに高強度なベルトを用いることが好ましい。
【0056】
そして、上記捻用タイミングベルト654は、プーリー94から、プーリー95と、分散チャック51の外周部に配置されたプーリー96と、アイドリングプーリー95とに駆け回れ、伝達軸50からの回転動力が、プーリー94から捻用タイミングベルト654に伝達され、捻用タイミングベルト654を介して伝達された動力により、プーリー96を介して分散チャック51のチャック511及び512が把持する素管材Sが軸回転される。
【0057】
一方、移動基台5a上において、シャフト部材9には螺合部92が螺合されている。この螺合部92は支持壁521に固定されており、シャフト部材9(9a又は9b)が軸回転されることによって、螺合部92がシャフト部材9から反力を得てシャフト部材9に沿って進退し、この螺合部92の進退に伴って支持壁521を前方又は後方に向けて押圧し、この押圧力が支持壁521から移動基台5aへ伝達されて、移動基台5aが水平移動される。
【0058】
他方、送出油圧シリンダー52は、送駆動手段を構成する送用動力源であり、油圧により素管材Sの送り出し方向に沿って伸縮することにより、垂直アーム53を支持ピン53aを支点として回動させて分散チャック51を前進させ、分散チャック51に把持された素管材Sを、圧延領域へ向けて送り出す機構である。詳述するとこの送出油圧シリンダー52は、後方の係合部52bで支持部材56に連結されるとともに、前方の係合部52aには垂直アーム53が連結され、この垂直アーム53が支持部材56によって支持されることにより、送出油圧シリンダー52は、全体として水平に保持されている。
【0059】
垂直アーム53は、剛性を有する細長の部材であり、その中途部位において、支持部材56の先端側に支持ピン53aにより回動可能に連結されているとともに、下端側が分散チャック51の先端部55に連結された連結部54に接続されている。分散チャック51の先端部55は、素管材Sを把持する把持手段の前方部分を構成する部材であり、この先端部55の外周に、先端部55と同心円状の環状部材である連結部54が嵌合されている。この環状の連結部54は、先端部55の外径よりも若干大きな内径を有しており、支持ピン54aにより先端部55に対して僅かに前後に傾斜できるようになっている。
【0060】
そして、このような機構により、送出油圧シリンダー52が短縮されると先端側の係合部52aが後退されて垂直アーム53の上端側も後退されることとなる。垂直アーム53は支持ピン53aで軸支されていることから、垂直アーム53の上端側が後退されると、これに反して垂直アーム53の後端側が前方へ迫り出されるようになり、環状の連結部54が前進され、この連結部54に支持ピン54aを介して接続された分散チャック51の先端部55が前方へ押し出されるようになる。これにより分散チャック51に把持された素管材Sが前方、すなわち圧延領域へ向けて送り出されることとなる。
【0061】
(圧延方法)
次いで、本発明に係る圧延方法について説明する。上述したピルガー圧延機100を動作させることによって、本発明の圧延方法を実施することができる。以下に、ピルガー圧延機100の動作、及び圧延方法の実施について詳述する。本実施形態に係る圧延方法では、圧延ロール1,1によって形成される圧延領域に向けて、金属素材である素管材Sを送り出し、圧延領域内において素管材Sを圧延する。
【0062】
このとき、マンドレル4をマンドレル支持パイプ41に取り付けるとともに、マンドレル支持パイプ41をシャフト保持部69に固定保持させる。併せてマンドレル4及びマンドレル支持パイプ41を圧延前の素管材Sに挿通させる。その後、素管材Sを、各移動チャック5のチャック511及び512で保持するとともに、素管材Sの先端部分を、ロールスタンド2内の圧延ロール1,1によって形成される圧延領域に向けて配置させる。
【0063】
また、素管材Sの送り出し方向に沿ってロッド状のシャフト部材9が延設されているとともに、このシャフト部材9に各移動チャック5上の螺合部92が螺合されており、シャフト部材9(9a,9b)を回転駆動させることによりシャフト部材9に沿って螺合部92とともに基台部62が前後に移動可能となっている。
【0064】
そして、基台部62上には、送駆動手段である送用駆動モーター641及び642と捻駆動手段である捻用駆動モーター643とが搭載されており、これら各駆動モーターを圧延動作に対応させて間欠的に駆動させる。これら駆動モーター641、642及び643が駆動すると、基台部62から反力を得ながら各プーリー661、662及び663が間欠的に回転を始める。
【0065】
プーリー663が回転されると、動力源側タイミングベルト653を介して、プーリー93に動力が伝達され、接続部91が回転する。接続部91は伝達軸50に係合され、回転駆動することにより伝達軸50が軸回転される。
【0066】
一方、プーリー661、662が回転されると、送用タイミングベルト651,652を介してプーリー421及び422に動力が伝達され、接続部411,412が回転される。接続部411,412には、前方・後方シャフト9a及び9bがそれぞれ挿通されているとともに、接続部411,412がシャフト部材9の外周面に固着されている。接続部411,412が回転されることにより、前方・後方シャフト9a及び9bがそれぞれ軸回転される。
【0067】
他方、搬送部6の前方及び後方において、素管材Sの送り出し方向に沿って前方・後方シャフト9a及び9bが延設されているとともに、この前方・後方シャフト9a及び9bに各移動チャック5上の螺合部92が螺合されており、シャフト部材9(9a,9b)を回転駆動させることによりシャフト部材9に沿って螺合部92とともに基台部62が前後に移動される。
【0068】
移動基台5a上において伝達軸50が延設されており、伝達軸50が圧延動作に対応させて間欠的に駆動される。伝達軸50が回転されると、摺動プーリー94が回転され、摺動プーリー94が回転すると、捻用タイミングベルト654を介して、プーリー96に動力が伝達され、チャック511及び512が回転される。
【0069】
また、移動基台5a上において前方・後方シャフト9a又は9bには、螺合部92の雌ネジ部が螺合され、前方・後方シャフト9a又は9bが回転駆動することによりシャフト部材9から反力を得て、螺合部92が進退され、これにより基台部62をシャフト部材9に沿って進退させる。具体的に、螺合部92は、前方・後方シャフト9a又は9bが挿通されているとともに、支持壁521により螺合部92が支持された状態において、螺合部92の雌ネジ部に挿通された前方・後方シャフト9a又は9bの外周面に刻設されたネジ部と螺合接続されている。
【0070】
この螺合部92としての雌ネジ部材は、前方・後方シャフト9a又は9bが捻用駆動モーター643によって回転駆動されることにより、前方・後方シャフト9a又は9bから反力を得て前方・後方シャフト9a又は9bに沿って進退し、この螺合部92の進退に伴って支持壁521を前方又は後方に向けて押圧し、この押圧力が支持壁521から移動基台5aへ伝達されて、移動基台5aが素管材Sの送り出し方向に水平移動される。移動基台5aが素管材Sの送り出し方向に移動すると、分散チャック51は、移動基台5aから反力を得て素管材Sを保持するとともに、素管材Sを圧延領域に順次送り込ませる。
【0071】
この際、移動基台5aの移動と同期させて、捻用駆動モーター643を回転駆動させることで、プーリー663が回転し、捻用タイミングベルト654を介して、伝達軸50が軸回転される。伝達軸50が軸回転されることにより、各移動チャック部5に動力が伝達され、移動基台5a上において伝達軸50が回転されると、摺動プーリー94が回転され、摺動プーリー94が回転すると、捻用タイミングベルト654を介して、プーリー96に動力が伝達され、チャック511及び512が回転される。チャック511及び512が回転されることにより、チャック511及び512に把持されたマンドレル支持パイプ41及び素管材Sが軸回転され、素管材Sが捻られることとなる。
【0072】
このように、素管材S及びマンドレル支持パイプ41を軸回転させて捻りつつ、圧延領域に臨ませると、素管材Sは、内部にマンドレル4が挿通されつつ進行される。素管材Sの先端部分が圧延ロール1,1によって形成される圧延領域に配置されると、マンドレル4を芯にして、上下2個のテーパー溝つきの圧延ロール1,1が水平方向に前転後転を繰り返すことで素管材Sは圧延されて、目的の径及び肉厚となった製品管Pが製造される。なお、搬送部6における素管材Sの送り出しや軸回転(捻り)は、圧延ロール1,1の往復駆動サイクルと制御部の制御によって同期化されており、圧延ロール1,1が戻る間に素管材Sを少しづつ間欠的に送られる。
【0073】
特に、本実施形態では、シャフト部材9が搬送部6の前後で前方シャフト9a及び後方シャフト9bに2分割されており、一方のシャフト側の移動チャック5で素管材Sを把持して捻りつつ前進させている間に、他方のシャフト側の移動チャック5では、素管材Sの把持を開放して移動範囲後端のホームポジションまで後退させる。そして、一方のシャフト側が素管材Sを把持して移動範囲中の先端に到達する際、他方の後端まで後退された移動チャック5側で素管材Sを把持し、一方の移動範囲先端に到達した側での素管材Sの把持を開放する。
【0074】
その後、他方の後端まで後退された側の移動チャック5で素管材Sを把持しつつ前進させている間に、一方の把持を開放した側の移動チャック5を移動範囲後端のホームポジションまで後退させる。このように、一方の移動チャック5で素管材Sを把持しつつ前進させ、その間に他方の移動チャック5を移動範囲後端のホームポジションまで後退させることにより、移動チャック5による把持状態を常に確保しつつ、素管材Sの送り出しを連続的に行うことができる。
【0075】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、素管材Sを圧延領域に対して送り出す際、基台部62上に固定された捻用駆動モーター643の駆動力を、移動チャック5を移動させる推力に用いる。このとき、移動チャック5の移動基台5aと一体的にシャフト部材9に沿って移動するとともに、駆動対象である素管材Sを把持した分散チャック51も移動チャック5の移動基台5aとともに移動することとなる。また、移動基台5aの移動と同期させて、移動チャック部5側に固定された送用駆動モーター641及び642を回転駆動させ、移動基台5a上において分散チャック51に把持されたマンドレル支持パイプ41及び素管材Sを軸回転させて、素管材Sに捻りを加える。
【0076】
本実施形態によれば、駆動力の伝達に、環状のベルト部材とプーリーを介して行うため、従来のギアを組み合わせて動力を伝達する構造と比べて、駆動系の軽量化を図ることができ、より高速化を実現することができる。詳述すると、基台上での取合いの関係上、駆動モーターと被駆動軸を同一軸上に配置できないことから、従来では、この軸間距離を埋めるためにギアが大径化又は中間アイドルギアを追加する必要があり、これによりイナーシャ(慣性モーメント)が大きくなり、高速化の妨げとなっていた。
【0077】
これに対し、本実施形態では、タイミングベルトを使用することにより、重量のあるギアを用いることなく、アルミ合金等のように比重の小さい材質のプーリーを用いることができる。このプーリーは必要最小限の径で且つ必要強度も小さくてよいことから、イナーシャを格段に小さくすることができる。また、プーリーは、ギアと異なりバックラッシュがないことから、位置決め性能が向上され、金属間の衝撃音が低減され、作業環境の改善にも貢献しうる。
【0078】
これらの結果、駆動系の各装置のサイズや出力能力を抑えることができ、動作の高速化にる生産効率を高めることができるとともに、省エネルギーをも実現させることができる。特に、本実施形態では、シャフト部材9を2分割して、移動チャック部5の前方及び後方において、一方の移動チャック5で素管材Sを把持しつつ前進させ、その間に他方の移動チャック5を移動範囲後端のホームポジションまで後退させることにより、移動チャック5による把持状態を常に確保しつつ、素管材Sの送り出しを連続的に行う。このため、
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0079】
P…製品管
S…素管材
1,1…圧延ロール
1a,1a…孔型
2…ロールスタンド
3…主駆動部
4…マンドレル
5…移動チャック部
5a…移動基台
5b…ガイドレール
5c…ガイドブロック
6…搬送部
8…出側把持部
9…シャフト部材
9a…前方シャフト
9b…後方シャフト
31,31…回転体
32…推力ロッド
41…マンドレル支持パイプ
50…伝達軸
51…分散チャック
52…送出油圧シリンダー
52a…係合部
52b…係合部
53…垂直アーム
53a…支持ピン
54…連結部
54a…支持ピン
55…先端部
56…支持部材
62…基台部
69…シャフト保持部
91…接続部
91a…挿通部
92…螺合部
94…摺動プーリー
94a…挿通部
95…アイドリングプーリー
95a…回転軸
100…ピルガー圧延機
411,412…接続部
421,422,661,662,663…プーリー
511,512…チャック
521,522,621,622…支持壁
623…脚部
624…台座
641,642…送用駆動モーター
641a,642a,643a…回転軸
643…捻用駆動モーター
651,652…送用タイミングベルト
653…動力源側タイミングベルト
654…捻用タイミングベルト