(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025565
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ノズル構造
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240216BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129092
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 蒼一郎
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AA32
2G052AD06
2G052BA14
2G052CA02
2G052CA18
2G052CA22
2G058CA02
2G058EA08
2G058ED10
2G058ED38
(57)【要約】
【課題】ノズルを検体吸引装置に容易に装着可能にすると共に、ノズルの動作時の姿勢を調整、安定させる。
【解決手段】ノズル構造10は、被押圧部32Aを有するノズル14と、調整部46を有すると共にノズル14を支持するホルダ16と、を備え、被押圧部32Aは、ノズル14と軸心を同一とした環状に形成され、調整部46は、ノズル14がホルダ16に支持された状態で、被押圧部32Aに対し被押圧部32Aの斜め上方に離間して対向し、被押圧部32Aが調整部46に当接したときの反力によりノズル14を中心軸側に戻す。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被押圧部を有するノズルと、
調整部を有すると共に前記ノズルを支持するホルダと、を備え、
前記被押圧部は、前記ノズルと軸心を同一とした環状に形成され、
前記調整部は、前記ノズルが前記ホルダに支持された状態で、前記被押圧部に対し前記被押圧部の斜め上方に離間して対向し、
前記被押圧部が前記調整部に当接したときの反力により前記ノズルを前記調整部の中心軸側に戻す、ノズル構造。
【請求項2】
前記ホルダは、上下に貫通し側方から前記ノズルの出し入れをするための開口部を有する、請求項1のノズル構造。
【請求項3】
前記ホルダに出し入れされる差込み子を更に有し、
前記ノズルは、前記差込み子に取り付けられたままで前記ホルダに出し入れされる請求項1に記載のノズル構造。
【請求項4】
前記ノズルの径方向において、前記ノズルと前記差込み子の間には、前記ノズルの傾きを許容すると共に、前記ノズルの最大傾き量を制限するための隙間が設けられている請求項3に記載のノズル構造。
【請求項5】
前記調整部と前記被押圧部は、それぞれ軸対称に構成され、
前記調整部は、円錐内面であり、
前記被押圧部は、前記円錐内面に対向する断面弧状面又はテーパ面である請求項1に記載のノズル構造。
【請求項6】
2(L-R)tanψ>(D-2R)の関係を満たす請求項4に記載のノズル構造。
ここで、
L:前記ホルダより下方に設けられ前記ホルダとは別に前記ノズルを支える支点から前記被押圧部の上端までの高さ
D:前記ノズルにおける前記被押圧部の径方向外側端の直径
R:被押圧部の断面形状の曲率半径
ψ:水平方向と調整部とがなす角度
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル構造に、特に生体検体を分析するための検体分析装置におけるノズル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
検体分析装置において、ノズルホルダから側方に上下一対の突出片が突設され、上方側突設片にサンプリングノズルの上端部が固定される構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、採血管等の検体容器から検体を吸引するサンプリングノズルは、上記した特許文献1のように、針状のサンプリングノズルを鉛直方向に上下動させ、密封検体容器における密閉用のゴム栓を突き刺して検体の吸引を行う。このためサンプリングノズルはゴム栓の穿刺時に反力を受け、ノズルホルダから外れる恐れがあるので、安定性が要求されている。またサンプリングノズルは細長い中空針状に形成されており、ゴム栓をはじめとする容器の蓋を上から正しく穿刺するためにサンプリングノズルに高い位置・姿勢精度が求められる。
【0005】
安定性及び精度を確保するために、特許文献1のように、ノズルをねじ等でノズルホルダに強固に固定し、一体的に動かせる機構が採用されている。これにより、ノズル機構は安定的かつ精度よく容器の蓋の上で動作することができる。
【0006】
一方、洗浄や部品交換等でノズルをホルダから取り外し、再び装置に装着する時には、取付け精度を保つために装着作業を慎重に行うことが不可欠である。上記した従来例のように、サンプリングノズルがねじ止めにより完全に固定されていると、ノズルの脱着や、ノズルが挿通されるOリング等の部材の交換の際に、工具が必要となり、簡便な脱着が困難である。
【0007】
本発明は、ノズルを検体分析装置に容易に装着可能にすると共に、ノズルの動作時の姿勢を精度よく鉛直方向に調整、安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係るノズル構造は、被押圧部を有するノズルと、調整部を有すると共に前記ノズルを支持するホルダと、を備え、前記被押圧部は、前記ノズルと軸心を同一とした環状に形成され、前記調整部は、前記ノズルが前記ホルダに支持された状態で、前記被押圧部に対し前記被押圧部の斜め上方に離間して対向し、前記被押圧部が前記調整部に当接したときの反力により前記ノズルを前記調整部の中心軸側に戻す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルを検体分析装置に容易に装着可能にすると共に、ノズルの動作時の姿勢を精度よく鉛直方向に調整、安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るノズル構造を示す斜視図である。
【
図2】ホルダからノズルを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】ノズルの先端と検体容器を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るノズル構造の要部を示す断面図である。
【
図7】被押圧部と調整部を幾何学的に模した図である。
【
図8】
図7における被押圧部の点Aの部分が調整部に当接した状態を示す拡大図である。
【
図9】
図7における被押圧部の点Bの部分が調整部に当接した状態を示す拡大図である。
【
図10】第2実施形態に係るノズル構造を示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係るホルダから差込み子を引き出し、ノズルを差込み子から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係るノズル本体が検体容器から抵抗反力を受け、被押圧部と調整部とが当接する様子を示す断面図である。
【
図13】第2実施形態に係るノズル構造の要部を示す断面図である。
【
図14】第3実施形態に係るノズル構造の要部を示す断面図である。
【
図15】第4実施形態に係るノズル構造の要部を示す断面図である。
【
図16】第5実施形態に係るノズル構造の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0012】
なお、各図に示す矢印Zは、鉛直方向であって、検体分析装置の上方向を示している。また、Z方向と直交する水平方向のうち、幅方向をX方向とし、Z方向とX方向とも直交する方向(奥行方向)を、Y方向とする。また、
図1に示す中心軸Z1は、鉛直方向にあり、座標系のZ方向と平行している。また、中心軸Z1に直交する面において、中心軸Z1を通る方向を径方向という。径方向において、中心軸Z1に向かう方向を内側、中心軸Z1から離れる方向を外側という。
【0013】
[第1実施形態]
(構成)
図1から
図9において、本実施形態に係るノズル構造10は、例えば、血液や尿等液体の生体検体などを吸引や吐出するための検体移送構造である。また、ノズル構造10は、例えば、全血等の検体中のヘモグロビン(HbA1c)の濃度を自動で測定する液体クロマトグラフィー装置等の検体分析装置に利用される。ノズル構造10は、ノズル支持機構12に支持され、ノズル支持機構12と共に検体容器と分析装置との間に検体を移送するように移動する。ノズル構造10は、ノズル支持機構12に対して上下に移動できる。ノズル支持機構12は、ベルトやレール等の移送手段により、検体と分析装置との間に移動できる。なお、ノズル構造10は、検体を移送する機構として分析装置とは別体に設けられてもよく、分析装置内の一つの機能ユニットとして配置されてもよい。本実施形態においては、ノズル構造10がノズル支持機構12を介して分析装置に設けられている。なお、ノズル構造10は、ノズル14と、ホルダ16とを有している。
【0014】
(ノズル14)
図1及び
図3に示すように、ノズル14は、内部が中空とされ、先端が鋭利な細長い針状部材であり、検体容器24を密封している蓋22を穿刺して検体容器24の内部に収容される検体(図示せず)を吸引可能な構造とされている。この検体容器24には、例えば採血管が挙げられる。ノズル14は、ノズル本体141と継手部34とを有する。
【0015】
ノズル本体141は、内部が全長に亘って、ノズル14の中心軸Z1に沿って延び、ノズル本体141の先端から継手部34に連通しているノズル貫通路とされている。すなわち、ノズル貫通路は、移送対象となる検体の流路である。また、
図3に示すように、ノズル本体141の先端には、ノズル本体141の内部のノズル貫通路と連通するノズル穴26が形成されている。
【0016】
なお、以後の説明において、ノズル穴26が形成されている、ノズル本体141の先端が向く方向を下側と言い、先端が向く方向の反対側を上側と言う場合がある。
【0017】
また、分析装置は、ノズル本体141の先端が検体容器24の蓋22を穿刺し、検体容器24の内部に先端を挿入した状態で、ノズル穴26を通して検体の吸引又は吐出を行う。
【0018】
なお、
図1に示されるように、検体吸引装置における検体容器24の設置位置の上側には、例えば押え板28が配置されている。押え板28には、ノズル14が通る貫通孔28Aが形成されている。押え板28は、後述するように、蓋22に穿刺したノズル14を、蓋22から引き抜く際に、摩擦力により検体容器24ごと上昇することを抑制するための部材である。
【0019】
図1、
図2に示すように、ノズル14の上側には、ノズル本体141と、検体や試薬液等を移送する用のチューブ(図示せず)とを接続する継手部34が設けられている。言い換えれば、継手部34は、検体容器24を穿刺するノズル本体141の先端と反対側の端部に設けられている。継手部34は、チューブを接続するチューブ接合部341、ノズル本体141を接続するためのノズル接合部342、及びチューブ接合部341とノズル接合部342との間に形成されている張出部32を有する。また、チューブ接合部341、張出部32及びノズル接合部342は、いずれも中心軸Z1を同心とした中空の円筒状に形成されている。また、ノズル接合部342とノズル本体141とは、
図4に示すように、分体で形成され、接続されて互いに固定されている。なお、ノズル接合部342とノズル本体141とは一体に形成されていてもよい。
【0020】
チューブ接合部341は、中空とされ、内側にねじ穴34Aが形成された部品である。ノズル接合部342には、ノズル本体141が嵌入されるノズル取付け穴34Bが形成されている。ねじ穴34A及びノズル取付け穴34Bは、連通穴34Cによりノズル本体141と連通している。すなわち、連通穴34Cは、ノズル取付け穴34Bにノズル本体141が取付けられている状態において、ノズル貫通路の一部ともいえる。ねじ穴34Aには、チューブ継手部36(
図1)が螺合可能となっている。このチューブ継手部36は、検体や試薬液を移送するためのチューブ(図示せず)をノズル14に接続するための部材である。
【0021】
張出部32は、継手部34の両端にあるチューブ接合部341とノズル接合部342よりノズル14の径方向の外側に張り出すように形成されている。ここで、張出部32の外径は、チューブ接合部341の外径、及びノズル接合部342の外径より大きい。
【0022】
張出部32には、上側の肩部(上表面と側面との境界となる部分)に断面が弧状になるように面取りされた(R面取りされた)被押圧部32Aが形成されている。被押圧部32Aは、例えば断面弧状面であり、球面の一部をなす形状であってもよい。また、被押圧部32Aの中心は、ノズル14の中心軸Z1と重なる。すなわち、平面視において、被押圧部32Aは、ノズル14と軸心を同一とした環状に形成されている。なお、被押圧部32Aは、断面円弧状を変えて、断面が直線状に傾斜するテーパ面とされていてもよい。
【0023】
(ホルダ16)
ホルダ16は、ノズル14を支持する部品であり、ホルダ16の予め定められた所定位置である取付け部161にノズル14が取付けられる。ホルダ16は、ノズル14と共に検体に対して相対運動することが可能である。なお、各実施形態において、ホルダ16におけるノズル14を支える機能を有する部分を支持部38と総称する。また、後述する他の実施形態では、ノズル14を支える機能を有する部品は異なる場合があるが、ノズル14がホルダ16に対して取付けられる位置は、変わらないものとする。
【0024】
本実施形態では、ホルダ16は、その側面から径方向に開口する開口部Kが形成されている。また、開口部Kは、上下貫通するように形成されている。この開口部Kにより、ノズル14はホルダ16に対し、ホルダ16の側面からノズル14の径方向に着脱される。ホルダ16の側方に開口する開口部Kは、ノズル14の出入り口ともいう。ノズル14の着脱方法の詳細は、後述する。
【0025】
続いて、本実施形態におけるホルダ16の構成を具体的に説明する。
図2に示すようにホルダ16は、下部体44と、下部体44の上に重ねて固定された上部体42とを有する。
【0026】
図2及び
図4に示すように、ホルダ16の上部体42には、上下に貫通すると共に側方に開口するスリット部48が形成されている。ホルダ16の下部体44には、上下に貫通すると共に側方に開口するスリット部49が形成されている。スリット部48は出入り口からノズルの取付け部161まで延伸する。言い換えれば、上部体42と下部体44は、重ねられた状態で、スリット部48とスリット部49により開口部Kを構成する。また言い換えれば、スリット部48は、上部体42に形成された第一案内溝部T1と、第一案内溝部T1よりも下方に形成された第二案内溝部T2とを有する。第二案内溝部T2は、X方向の幅が第一案内溝部T1及び、スリット部49よりも大きい。なお、ノズル14を出し入れする際に、ノズル14が通過するY方向の中心線Cから見ると、第一案内溝部T1、第二案内溝部T2、すなわちスリット部48は、いずれも中心線Cに対して軸対称とされている。また、第二案内溝部T2の下にあるスリット部49の幅は、張出部32の直径より小さい。
【0027】
なお、X方向における、ノズル14と開口部Kの各側壁との間には、隙間58が設けられている。隙間58は、後述するノズル14が中心線Cに沿って出し入れがし易くなるようノズル14の進行スペースを確保するとともに、後述するノズル14の姿勢調整にも寄与する。
【0028】
図5及び
図6に示されるように、ホルダ16の上部体42には、第一案内溝部T1と第二案内溝部T2との間に境界線481がある。境界線481に沿って一部が削り取られることで、調整部46が形成されている。
【0029】
調整部46は、Z方向から見てノズル14の中心軸Z1と重なる中心軸Z2を有し、後述するノズル14が取付けられた状態で径方向の内側が径方向の外側より高くなるように中心軸Z2を中心に形成された傾斜面である。また調整部46は、中心線Cに対して軸対称に形成される。
【0030】
なお、調整部46は、第一案内溝部T1と第二案内溝部T2との境界線481に沿ってノズル14の張出部32の周辺を囲むように形成されているが、
図2及び
図6に示されるように、開口部Kまでは延伸していない。言い換えれば、調整部46は、Y方向の奥側である取付け部161から、出入り口両端の境界端部までは若干回り込んだ円錐面と、境界端部に近づくほど幅が縮小する傾斜面とを有する部分である。開口部K側では、境界線の部分を削り込んだ量が減少するので、境界端部は調整部46よりスリット部48のX方向の中央に突出している。このスリット部48の出入り口の両端は、境界線481と繋がっており、境界線481は、境界端部ともいう。また言い換えれば、調整部46は、境界端部において、円錐面の調整部46よりX方向の中央に突出している部分として渡り部Wを有しているともいえる。なお、中心軸Z2は円錐面の中心軸となっている。
【0031】
スリット部48において、ノズル14の出入り口の両端部には、ノズル14の継手部34(
図5及び
図6参照)の差込みを容易にする、例えばスリット部48の開口を上方及び幅方向に広がるように形成されたガイド部52を有している。なお、ガイド部52の形状は、どのように形成されていてもよいが、一例として傾斜面や弧形面が考えられる。
【0032】
ここで、
図1及び
図2に示すように、取付け部161は、開口部KにおけるY方向の奥側にあり、Z方向において、ホルダ16を貫通している穴とされている。また、貫通穴としての取付け部161はZ方向において、中心軸がある。調整部46の中心軸Z2は、取付け部161の中心軸と重なっている。Z方向に継手部34とノズル本体141とを有するノズル14は、出入り口からY方向に沿ってスライドして出し入れ可能とされている。言い換えれば、ノズル14の出し入れ方向は、開口部KのX方向における中心線Cの延長する方向でもある。また言い換えれば、Y方向とは、ノズル14の出し入れ方向でもある。これによりホルダ16は、後述するように張出部32を介してノズル14を吊り下げて保持する。
【0033】
また、
図4に示すように、張出部32を下部体44に載せている場合、張出部32は、下部体44に上部体42の第二案内溝部T2の高さの範囲内に位置する。言い換えれば、張出部32の高さH1は、第二案内溝部T2の高さH2より低く、張出部32の上表面と第二案内溝部T2との間にある隙間Sが確保される。また言い換えれば調整部46は、ノズル14がホルダ16に支持された状態で、被押圧部32Aに対し被押圧部32Aの斜め上方に離間して対向している。更に言い換えれば、調整部46は、被押圧部32Aの上斜方にあり、所定距離である隙間Sをもって被押圧部32Aと対向する。
【0034】
検体吸引装置が有するノズル構造10の基本構造を上記のように説明した。次に、各構成の作用を説明する。
【0035】
(作用及び効果)
本実施形態に係るノズル構造10では、ノズル14は、
図1及び
図2に示されるように、開口部Kを経由することで、チューブ接合部341がスリット部48の第一案内溝部T1に沿い、張出部32がスリット部48の第二案内溝部T2に沿い、ノズル接合部342がスリット部49に沿って、ホルダ16に押し付けられて装着される。
【0036】
より具体的には、第二案内溝部T2の下にあるスリット部49の幅は、張出部32の直径より小さい。すなわち、張出部32が第二案内溝部T2に入り込み、第二案内溝部T2に沿ってホルダ16にある取付け部161まで押し付けられる際に、下部体44における第二案内溝部T2の側面より内部に突出した部分(突出部)が張出部32を支持し、張出部32が下部体44に掛けられる(
図4参照)。これにより、ノズル14は、開口部Kの内側面と距離を取りながら、下部体44の上表面をスライドすることで、全体の重力により下部体44の上表面に接触する。また、この状態では、下部体44がノズル14を支える。このようにノズル14がホルダ16の取付け部161まで差込まれることで、ノズル14の分析装置への取付けが完了する。
【0037】
ここで、ノズル構造10は、分析装置の駆動に伴い、Z方向において、先端が検体容器24に向かって下降する。下降中に、ノズル14が検体容器24の蓋22と接触し、穿刺しようとする状態で、ノズル14は、検体容器24の蓋22から抵抗反力を受ける。なお、このノズル14と蓋22とが接触したところは、本開示に係るノズル14の支点に相当する。このように、支点からの抵抗反力がノズル14をZ方向の上方に向かって働くことで、ノズル14の張出部32は、下部体44の上表面から離れ、被押圧部32Aが調整部46に向かって相対移動する。これにより、被押圧部32Aは、ホルダ16に対して上方へ移動し、調整部46、すなわち中心軸Z2を中心に形成され、径方向の内側に向かって上方に傾斜する傾斜面に当たる。
【0038】
ここで、被押圧部32A及び調整部46は、中心軸Z1及び中心軸Z2に対して対称に形成されているため、被押圧部32Aが調整部46から受ける抵抗反力は、いずれの水平方向から等しく受けやすい。言い換えれば、被押圧部32Aが調整部46から受ける抵抗反力がつり合うことにより、ノズル14は、鉛直方向に延びた姿勢になりやすい。そして、ノズル14は、鉛直方向に延びた姿勢を保たれた状態で、検体容器24に対して吸引と吐出を行う。
【0039】
ここで、ノズル14の先端から抵抗反力の方向が、必ず鉛直方向ではなく、鉛直方向からずれて作用し、いずれかの水平方向に偏る場合がある。この場合、ノズル14が鉛直方向からずれてしまい、ノズル14が傾斜してしまう。換言すれば、ノズル14は、ノズル14と接触する蓋22を支点として傾く。ノズル14が傾いた状態で検体を吸引又は吐出した場合には、検査の正確性を確保できないため、ノズル14を傾いた姿勢から鉛直方向に延びた姿勢に戻す必要がある。
【0040】
ここで、本実施形態では、
図4に示されるように、ノズル14の径方向において、ノズル14と開口部Kの内側面との間の隙間58は、ノズル14のある程度の傾きを許容すると共に、ノズル14の最大傾き量を制限する。すなわち、
図7の模式図に示すように、ノズル14が傾斜しながら、被押圧部32Aの片方である点Bは、傾斜方向から調整部46に当接する。そして、調整部46は、被押圧部32Aが当接したときの抵抗反力によりノズル14を調整部46の中心軸Z2側に戻そうと案内する。調整部46の案内により、ノズル14は、中心軸Z2側に戻し、全体として鉛直姿勢に戻る。これにより、ノズル14の水平位置の精度を高め、蓋22の中心に対する同軸性が確保される。このように、本実施形態によれば、ノズル14を簡単にホルダ16に押し込むことで容易に装着可能とすると共に、検体分析装置の駆動時において、安定的にノズル14の鉛直姿勢を保つことができる。
【0041】
また、
図7から
図9に基づき、ノズルの姿勢を調整可能となる条件を整理する。上述のように、調整部46が傾いたノズル14の中心軸Z1を鉛直方向に戻すことができるノズルの姿勢の条件を、調整可能条件と定義すると、調整可能条件は、
図7から
図9より、下記の式(1)となる。
【0042】
Ya’>Yb’
Ya+Yra-Yra’-Yθ+Yb>Yrb+Yrb’
Ya+Yb+Yra-Yrb-Yra’-Yrb’-Yθ>0
(Xa+Xb)tanψ+R(cosθ+sinθ-cosψ)-R(cosθ-sinθ-cosψ)-R(sinθ+sinψ-cosθ)tanψ-R(cosθ+sinθ-sinψ)tanψ-Dsinθ>0
(2Lsinθ)tanψ+2Rsinθ-R(2sinθ)tanψ-Dsinθ>0
(2L-2R)sinθ・tanψ+(2R-D)sinθ>0
(2L-2R)sinθ・tanψ>(D-2R)sinθ
2(L-R)tanψ>(D-2R)・・・(1)
【0043】
ここで、
L:ノズル先端(支点)の位置から被押圧部32Aの上端までの高さ
D:ノズル14における継手部34の張出部(被押圧部32Aの径方向外側端)の直径
R:被押圧部32AのR面取部の曲率半径
ψ:水平方向と調整部46とがなす角度
θ:ノズル14の傾き角度
である。
【0044】
上記式(1)に示される条件が満たされた場合、調整部46は、被押圧部32Aが当接したときの抵抗反力によりノズル14を中心線C、すなわちZ方向に戻す。言い換えれば、本実施形態ではノズル本体141が検体容器24から検体を吸引又は吐出する際のノズル14の姿勢変化を抑制することができる。またこれにより、ノズル14の水平位置の精度が高まり、蓋22の中心に対する同軸性を担保することができる。このように、本実施形態によれば、ノズル14を検体分析装置に装着する際に、水平位置の精度を確保することができると共に、ノズル14の動作時の姿勢が安定するため、ノズル14の先端を正確に蓋22に刺すことができる。
【0045】
[第2実施形態]
図10から
図13を以て第2実施形態を説明する。第1実施形態と同じ構造については、同じ番号を使用し、詳細説明を省略する。
【0046】
(構成)
第2実施形態に係るノズル構造20は、上部体42及び下部体44とは別体の差込み子18を有している。また、本実施形態では、ホルダ16より下方にノズル本体案内部54を更に有している。
【0047】
(ノズル本体案内部54)
ノズル本体案内部54には、ノズル本体141が貫通するOリング56が設けられている。このノズル本体案内部54とOリング56とを設置することで、ノズル14の先端を正確に検体容器24へ案内すること、検体容器24から抜き出すこと、及び先端を清掃することができる。
【0048】
ノズル本体案内部54とOリング56はノズル支持機構12に固定されている。Oリング56は、柔軟性のある材質で形成されている。ノズル本体141がOリング56を貫通している状態で上下移動する際に、ノズル本体141がOリング56に対して相対運動することが可能である。ただし、ノズル本体141とOリング56との間に生じる静摩擦力は、ノズル14に働く重力より大きく、ノズル14を支えることが可能とされている。
【0049】
(ホルダ16)
図13に示されるように、本実施形態では、ホルダ16の下部体44の上表面において、上表面が下に凹んだ差込み案内溝部44Aが形成されている。言い換えれば、上部体42と下部体44とが重ねられて固定された状態では、上部体42の下表面と下部体44上表面との間に空隙が形成される。また、差込み案内溝部44Aは、開口部KからY方向に延び、取付け部161まで延伸する。
【0050】
(差込み子18)
図10、
図11、
図13に示すように、差込み子18は、後述するようにノズル14が取付けられた状態でホルダ16に出し入れされる、例えば板状の部材である。この実施形態に係る差込み子18は、例えば水平部18Aと下方への折曲げ部18Bとを有している。水平部18Aには、差込み子18の差込み方向(
図11におけるY方向)とは異なる方向(
図11におけるX方向)に開口するスリット18Cが形成されている。スリット18CのY方向の幅は、ノズル本体141の外径より若干大きく、また、張出部32より小さく設定されている。スリット18Cの延伸方向は、ノズル14の差込み方向と平行してもよいが、ノズル14の不意脱出を防止するため、ノズル14の差込み方向と違う方向に延伸することが好ましい。本実施形態において、スリット18Cは、X方向に向かって延伸する。折曲げ部18Bは、作業者が差込み子18を操作する際の把持部である。なお、折曲げ部18Bの代わりに他の把持部が設けられていてもよい。
【0051】
また、スリット18Cの一部には、例えば内径がノズル本体141の外径も大きく、また、張出部32の外径より小さい、ノズル取付け穴18Dが中心線C上に形成されている。
【0052】
ここで、第2実施形態において、ノズル14は、スリット18Cを通じて差込み子18の所定のノズル取付け穴18Dに取付けられる。換言すれば、差込み子18の上表面において、ノズル取付け穴18Dの周辺がノズル14に対する支持部38となる。ノズル取付け穴18Dは、張出部32より直径が小さい円形貫通穴であり、ノズル接合部342の周囲を囲う。
【0053】
また、本実施形態では、
図10、
図12、
図13に示されるように、ノズル14の張出部32が差込み子18に支持され、差込み子18が下部体44の差込み案内溝部44Aに支持される。本実施形態では、差込み子18は、ノズル14を支持する支持部38に相当する。
【0054】
(作用及び効果)
ノズル14を装着する際に、まず、ノズル本体141の下部先端を、ノズル本体案内部54のOリング56に貫通させた状態で、ノズル14を差込み子18に取付ける。次に、差込み子18の折曲げ部18Bを把持しながら、差込み子18をホルダ16の差込み案内溝部44Aに差込む。これにより、ノズル14は、ノズル支持機構12へ取付けられる。言い換えれば、差込み子18は、差込み案内溝部44Aに掛けられる一方で、ノズル14は、差込み子18のノズル取付け穴18Dに掛けられる。なお、ノズル14が取付けられた状態では、ホルダ16の取付け部161、差込み子18の取付け穴18D、及びノズル本体案内部のOリング56は、Z方向において、中心が一致していることが好ましい、言い換えれば、中心軸Z2とOリングの中心軸が一致していることが好ましい。なお、装着する際に、ノズル14を取付け位置と姿勢に精密に合致させているかを考慮せず、中心軸Z1と、中心軸Z2とが一致しない状態でノズル14を装着しても、後述のように、ノズル14の移動中に中心を一致させることができる。またこの場合においても、Oリング56の摩耗も減少できる。
【0055】
例えば、
図10に示すように、ノズル構造20はノズル本体案内部54と同期に検体容器24の真上に移動させ、ノズル本体141を検体容器24に向かって下ろし、ノズル14を検体容器24の蓋22に穿刺させる。この状態では、ノズル本体141に対してOリング56により上向きの摩擦力が発生する。上述の通り、Oリング56とノズル14との間に発生する静摩擦力がノズル14に働く重力よりも大きいため、Oリング56は、ノズル14を差込み子18の上表面から持ち上げることになる。そして、Oリング56がノズル14を支え、張出部32は差込み子18の上表面から離れ、第1実施形態と同じように、被押圧部32Aが調整部46に近づく。
【0056】
図12に、ノズル本体141がOリング56から受ける摩擦力により被押圧部32Aと調整部46とが当接する状態を示す。なお、
図12ではノズル本体案内部54を透過してOリング56のみ図示している。
図12に示すように、ノズル14の被押圧部32Aが調整部46に当接した状態において、ノズル14は支持部38から離れ、Oリング56で支えられる。換言すれば、ノズル14は、Oリング56を支点として傾動可能となっている。そして、第1実施形態と同様に、調整部46と被押圧部32Aとの相互作用により、ノズル14の中心軸Z1を、取付け部161の中心軸Z2に一致させることができる。
【0057】
また、本実施形態において、式(1)におけるLの長さは、ノズル14とOリング56とが接触する位置から被押圧部32Aの上端までの高さに相当する。
【0058】
本実施形態では、上記の構造により、ノズル14を容易にホルダ16に装着することが可能となる。また本実施形態においても、検体分析装置の動作時に、Oリング56から受ける摩擦力によりノズル14を鉛直姿勢に戻せることもできるし、蓋22からの抵抗反力によりノズル14を鉛直姿勢に保つこともできる。
【0059】
[第3実施形態]
図14において、本実施形態に係るノズル構造30では、第1実施形態において、ホルダ16の支持部38が下部体44に設けられた円錐内面とされている。ノズル14の継手部34の下部外周面は、円錐内面である支持部38にフィットする円錐外面34Eとされている。本実施形態では、ノズル14とホルダ16とが円錐面同士で当接するので、ノズル14を押し込みやすくなる。
【0060】
他の部分については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
[第4実施形態]
図15において、本実施形態に係るノズル構造40では、第1実施形態における下部体44が省略され、差込み子18がホルダ16の上部体42の上に取付けられる構成となっている。ノズル14の継手部34には、差込み子18の厚さよりも若干上下方向に長い小径部34Fが設けられている。継手部34における小径部34Fの上側に位置する端面34Gが、差込み子18の上面に当接することで、ノズル14が支持されている。つまり、差込み子18の上面が支持部38に相当する。本実施形態では、第1実施形態と比較して部品点数が削減されているので、コスト減が可能である。
【0062】
[第5実施形態]
図16において、本実施形態に係るノズル構造50では、第4実施形態における差込み子18が省略され、ノズル14がホルダ16の上部体42に直接支持される構成となっている。具体的には、継手部34における小径部34Fの上側に位置する端面34Gが上部体42の上面に直接掛けられることで、ノズル14が支持されている。つまり、上部体42の上面が支持部38に相当する。本実施形態では、第4実施形態と比較して部品点数が削減されているので、コスト減が可能である。
【0063】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0064】
[他の実施形態]
上述の説明では調整部46と被押圧部32Aがそれぞれ中心軸Z1及び中心軸Z2に対して対称に構成され、調整部46が円錐内面であり、被押圧部32Aが該円錐内面に対向する断面弧状面又はテーパ面であるものとしたが、調整部46及び被押圧部32Aは、このような形状に限られない。調整部46は、被押圧部32Aが当接したときの抵抗反力によりノズル14の姿勢を調整できればよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10 ノズル構造
14 ノズル
16 ホルダ
18 差込み子
20 ノズル構造
22 蓋
24 検体容器
30 ノズル構造
32 張出部
32A 被押圧部
38 支持部
40 ノズル構造
46 調整部
50 ノズル構造
54 ノズル本体案内部
56 Oリング(支点の一例)
58 隙間