(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025570
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】リソソーム局在性鉄イオンキレート化剤、リソソーム局在性フェロトーシス阻害剤、抗酸化剤細胞保護方法
(51)【国際特許分類】
C07C 211/49 20060101AFI20240216BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240216BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240216BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240216BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240216BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20240216BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20240216BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240216BHJP
C07C 233/43 20060101ALI20240216BHJP
C07C 271/16 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C07C211/49 CSP
A61P25/16
A61P25/28
A61P39/06
A61K31/137
A61K31/136
A61K31/135
A61P43/00 105
C07C233/43
C07C271/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129099
(22)【出願日】2022-08-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日 令和 3年 8月15日 掲載アドレス https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0891584921004755?via%3Dihub
(71)【出願人】
【識別番号】518148478
【氏名又は名称】シーシーアイホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】森田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】古田 享史
(72)【発明者】
【氏名】竹森 洋
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA16
4C206ZB21
4C206ZC52
4H006AA01
4H006AB21
4H006AB82
4H006AB83
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BU26
4H006BV25
4H006RA06
4H006RB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リソソーム局在性鉄イオンキレート剤、リソソーム局在性フェロトーシス阻害剤、抗酸化剤、及び細胞保護方法への関与を期待できる化合物を提供すること。
【解決手段】下式で表されるジメチルアニリン誘導体。
(R
1は、H、C1~10のアルキル基、アリル基、ヘテロアリル基、アラルキル基等;R
2は、独立してH、C1~10のアルキル基等;R
3は、H、又はメチル基;R
2とR
3は、互いに結合して環を形成してもよく、そのときにはR
2とR
3は一体となって、エチレン基又はプロパン-1,3-ジイル基になる;Yは独立してp位又はm位に結合したアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、アミノアルコキシ基、アルコキシカルボニルアミノ基等;l=0~3、m=1~3、n=1~3)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジメチルアニリン誘導体。
(式(1)中R
1は、水素、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、カルボキシアルキル基、アリル基、アラルキル基、又はカルバミドメチル基を表す。R
2、R
3は、独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基を表す(なお、R
2が炭素数1~10のアルキル基の場合、R
2が結合した炭素は不斉炭素になるが、(R)体、(S)体及びラセミ体のいずれでも活性には影響しない。)。なおR
2とR
3は、互いに結合して環を形成してもよく、そのときにはR
2とR
3は一体となって、エチレン基、又はプロパン-1,3-ジイル基になる。Yはそれぞれ独立して、p位又はm位に結合したアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、アミノアルコキシ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ハロゲンから選ばれた1種以上である。そして、l=0~3、m=1~3、n=0~3である。)
【請求項2】
下記式(2)~(5)のいずれかで表される請求項1記載のジメチルアニリン誘導体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項3】
請求項1又は2に記載のジメチルアニリン誘導体を含む抗酸化剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のジメチルアニリン誘導体を含むリソソーム局在性鉄イオンキレート化剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のジメチルアニリン誘導体を含むリソソーム局在性フェロトーシス阻害剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のジメチルアニリン誘導体を使用する細胞保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソソーム局在性鉄イオンキレート剤、リソソーム局在性フェロトーシス阻害剤、抗酸化剤細胞保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、中枢神経系における神経細胞の減少や異常タンパク質の蓄積等により、認知機能・運動機能等が低下する疾患である。これらの神経変性疾患における神経細胞死は、酸化ストレスに関連した幾つかのメカニズムによって引き起こされる可能性が指摘されている(非特許文献1)。
スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素などの活性酸素種(Reactive Oxygen Species)は、主に好気性呼吸の副産物としてミトコンドリア内で、また、酸化的タンパク質フォールディングの副産物として小胞体内で生成される。活性酸素種は、通常、生体内の抗酸化機構により除去される。しかし、加齢など種々の要因により防御機構の機能が低下すると、活性酸素種の生成と除去との均衡が崩れて活性酸素種が蓄積し、細胞が酸化ストレスに曝される。そして、過剰な酸化ストレスに晒された細胞は、プログラムされた細胞死が誘導されるが、この細胞死にはオキシトーシス(oxytosis)、フェロトーシス(ferroptosis)の2種類が報告されている。
【0003】
オキシトーシスは過剰なグルタミン酸、フェロトーシスはエラスチンにより誘導される細胞死である。
グルタミン酸とエラスチンは、シスチン/グルタミン酸アンチポーター(システム Xc-)の阻害剤であり、細胞外の過剰なグルタミン酸、またはエラスチンによりシステム Xc-が阻害され、細胞内のグルタチオン(GSH)が減少する。グルタチオン(GSH)は、生体内に存在する最も一般的な抗酸化物質であり、細胞内のグルタチオンが枯渇することにより、活性酸素種の生成と脂質過酸化が進行し、最終的にオキシトーシス、またはフェロトーシスが引き起こされる。オキシトーシスとフェロトーシスとは、鉄依存性の細胞死機構であり、アポトーシス、ネクローシス、オートファジー等の他の細胞死とは形態的、生化学的、遺伝的に異なる機構で誘導される。オキシトーシスとフェロトーシスは、ともにシステム Xc-の阻害により発生する酸化ストレス誘発性細胞死であるが、細胞死の過程には違いがあると考えられる。しかしながら、フェロトーシスを抑制する剤がオキシトーシスを抑制し、オキシトーシスを抑制する剤がフェロトーシスを抑制することが報告されており、オキシトーシスとフェロトーシスとは、その発生機構に共通性を有することが示唆されている(非特許文献2)。
【0004】
現在、神経変性疾患の有効な治療法は見出されていない。抗酸化物質を用いた治療戦略の臨床効果はわずかであり、トコフェロール、アスコルビン酸、コエンザイムQ10などの抗酸化物質により神経変性疾患の治療を試みた臨床試験は、いずれも期待外れの結果に終わっている。
そこで、活性酸素種の発生を抑制し、神経細胞を酸化ストレスから保護する低分子化合物を、神経変性疾患の治療に用いることが期待されており、本発明者らは、オキシインドール化合物GIF-0726-rが、酸化ストレスに対する神経保護作用を持つことを報告している(非特許文献3、4)。
本研究では、さらに立体異性体を含む15種類の化合物を同定し、サブマイクロモル濃度でグルタミン酸およびエラスチンによる細胞死に対する保護作用を確認した。興味深いことに、これらの化合物はN,N-ジメチルアニリンを共通の構造として持ちながら、もはやオキシインドール環を含んでいない。我々は、N,N-ジメチルアニリン誘導体であるGIF-2114(式(2)の化合物)とGIF-2197-r(式(11)の化合物)の細胞内局在性を蛍光プローブを用いて調べた。その結果、これらの化合物が後期エンドソーム・リソソームに局在し、有意な神経細胞保護作用を示す可能性が示唆された。今後の試験と改良により、神経保護効果のあるN,N-ジメチルアニリン誘導体の臨床への応用が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】L.M.Sayre,G.Perry,M.A.Smith,“Oxidative stress and neurotoxicity”,Chemical-reserch in Toxicology,2008,21,1,172-188
【非特許文献2】J.Lewerenz,G.Ates,A.Methner,M.Conrad,P.Maher,“Oxytosis/Ferroptosis-(Re-) emerging-roles for oxidative stress-dependent non-apoptotic cell death in diseases of the central nervous system”,Frontiers in Neuroscience,2018,12,214
【非特許文献3】Y.Hirata,C.Yamada,Y.Ito,S.Yamamoto,H.Nagase,K.Oh-Hashi,K.Furuta,“Novel oxindole derivatives prevent oxidative stress-induced cell death in mouse hippocampal HT22cells”,Neuropharmacology,2018,135,242-252
【非特許文献3】Y.Hirata,Y.Ito,M.Takashima,K.Yagyu,K.Oh-Hashi,H.Suzuki,M.Sawada,“Novel oxindole-curcumin hybrid compound for antioxidative stress and neuroprotection”,ACS Chemical Neuroscience,20,2011,1,76-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、リソソーム局在性鉄イオンキレート剤、リソソーム局在性フェロトーシス阻害剤、抗酸化剤、細胞保護方法への関与を期待できる化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.下記式(1)で表されるジメチルアニリン誘導体。
(式(1)中R
1は、水素、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、カルボキシアルキル基、アリル基、アラルキル基、又はカルバミドメチル基を表す。R
2、R
3は、独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基を表す(なお、R
2が炭素数1~10のアルキル基の場合、R
2が結合した炭素は不斉炭素になるが、(R)体、(S)体及びラセミ体のいずれでも活性には影響しない。)。なおR
2とR
3は、互いに結合して環を形成してもよく、そのときにはR
2とR
3は一体となって、エチレン基、又はプロパン-1,3-ジイル基になる。Yはそれぞれ独立して、p位又はm位に結合したアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、アミノアルコキシ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ハロゲンから選ばれた1種以上である。そして、l=0~3、m=1~3、n=0~3である。)
2.下記式(2)~(5)のいずれかで表される1.記載のジメチルアニリン誘導体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
3.1.又は2.に記載のジメチルアニリン誘導体を含む抗酸化剤。
4.1.又は2.に記載のジメチルアニリン誘導体を含むリソソーム局在性鉄イオンキレート化剤。
5.1.又は2.に記載のジメチルアニリン誘導体を含むリソソーム局在性フェロトーシス阻害剤。
6.1.又は2.に記載のジメチルアニリン誘導体を使用する細胞保護方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リソソーム局在性鉄イオンキレート剤、リソソーム局在性フェロトーシス阻害剤、抗酸化剤、細胞保護方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】グルタミン酸(a)またはエラスチン(b)の存在下での、細胞死を示す図
【
図2-1】グルタミン酸(a)またはエラスチン(b)による活性酸素生成と脂質過酸化に対する効果を示す図
【
図4】グルタミン酸またはエラスチンに対する効果を蛍光プローブを用いて示した図
【
図5】N,N-ジメチルアニリン誘導体の細胞内での局在を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<式(1)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記式(1)で表される化合物である。なお、本発明の化合物を単に「ジメチルアニリン誘導体」とする場合がある。
(式(1)中R
1は、水素、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、カルボキシアルキル基、アリル基、アラルキル基、又はカルバミドメチル基を表す。R
2、R
3は、独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基を表す(なお、R
2が炭素数1~10のアルキル基の場合、R
2が結合した炭素は不斉炭素になるが、(R)体、(S)体及びラセミ体のいずれでも活性には影響しない。)。なおR
2とR
3は、互いに結合して環を形成してもよく、そのときにはR
2とR
3は一体となって、エチレン基、又はプロパン-1,3-ジイル基になる。Yはそれぞれ独立して、p位又はm位に結合したアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、アミノアルコキシ基、アルコキシカルボニルアミノアルコキシ基、ハロゲンから選ばれた1種以上である。そして、l=0~3、m=1~3、n=0~3である。)
【0011】
上記の式(1)で表される化合物におけるR1について、炭素数1~10のアルキル基は、直鎖及び分岐鎖、脂環式からなるいずれでも良く、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-へプチル基、イソへプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基が挙げられる。
炭素数1~10のアラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0012】
上記の式(1)で表される化合物におけるR2について、炭素数1~10のアルキル基は、直鎖及び分岐鎖、脂環式からなるもののいずれでも良く、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-へプチル基、イソへプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基が挙げられる。
【0013】
上記の式(1)で表される化合物におけるYについて、炭素数1~10のアルキル基は、直鎖及び分岐鎖、脂環式からなるもののいずれでも良く、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-へプチル基、イソへプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基が挙げられる。
炭素数1~10のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数1~10のアルキルアミノ基は、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、i-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、イソヘキシルアミノ基、sec-ヘキシルアミノ基、n-へプチルアミノ基、イソへプチルアミノ基、sec-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、イソオクチルアミノ基、sec-オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、シクロノニルアミノ基、シクロデシルアミノ基等が挙げられる。
炭素数1~10のジアルキルアミノ基は、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジi-プロピルアミノ基、ジn-ブチルアミノ基、さらに環状アミノ基であるピロリジニル基、メチルピロリジニル基、エチルピロリジニル基、モルホニル基、メチルモルホニル基、エチルモルホニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられる。
炭素数1~10のアミノアルコキシ基は、アミノエトキシ基、n-アミノプロポキシ基、アミノイソプロポキシ基、アミノブトキシ基、アミノオクチルオキシ基、アミノ2-エチルヘキシルオキシ基、アミノシクロヘキシルオキシ基、ジメチルアミノエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基、ピロリジニルエトキシ基、ピペリジニルエトキシ基、モルホリノエトキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノアルコキシ基は、メトキシカルボニルアミノエトキシ基、エトキシカルボニルアミノエトキシ基、プロポキシカルボニルアミノエトキシ基、t-ブトキシカルボニルアミノエトキシ基、ペンチルオキシカルボニルアミノエトキシ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノエトキシ基、ベンジルオキシカルボニルアミノエトキシ基等が挙げられる。
アシルアミノ基は、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブタノイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、2-オキソピロリジニル基等が挙げられる。
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
R2とR3について-R2とR3は一体となって、エチレン基又はプロパン-1,3-ジイル基になる場合には、正確にはR2とR3は上記に示したアルキル基にはならない。
【0014】
以下に、上記式(1)で表される化合物に包含される式(2)~(5)で表される化合物を示す。
<式(2)で表される化合物>
【化1】
<式(3)で表される化合物>
【化2】
<式(4)で表される化合物>
【化3】
<式(5)で表される化合物>
【化4】
【0015】
<その他の化合物の例>
上記の式(2)~(5)以外に例示できる化合物としては、下記の式(6)~(16)が挙げられる。
<式(6)で表される化合物>
【化5】
<式(7)で表される化合物>
【化6】
<式(8)で表される化合物>
【化7】
<式(9)で表される化合物>
【化8】
<式(10)で表される化合物>
【化9】
<式(11)で表される化合物>
【化10】
<式(12)で表される化合物>
【化11】
<式(13)で表される化合物>
【化12】
<式(14)で表される化合物>
【化13】
<式(15)で表される化合物>
【化14】
<式(16)で表される化合物>
【化15】
【実施例0016】
<合成例>
上記の化合物は、第二級または第三級アミン構造を有しており、一般的なアルキルアミンの合成法によって合成することができる。
1.アルデヒド/ケトンとアミンとの還元アミノ化反応
3.アミンとハロアルカン/スルホン酸エステルとの求核置換反応
4.イミン、アミドの還元反応
【0017】
<式(2)及び式(5)で表されるジメチルアニリン誘導体(以下、場合により「式(2)の化合物」、「式(5)の化合物」といい、他の化合物も同様とする。)の合成>
(E)-N,N-ジメチル-4-[3-(2-フェニルエチルアミノ)-1-プロペニル]アニリン:
4-(ジメチルアミノ)桂皮アルデヒド(500mg、2.85mmol)のメタノール(14mL)溶液に2-フェニルエチルアミン(359μL、2.85mmol)、無水硫酸マグネシウム(860mg)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(215mg、5.70mmol)を加えたのち、室温で30分間反応させた。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮して標記化合物(783mg)を得た。この化合物は精製せずに次の反応に使用した。
【0018】
式(2)の化合物(E)-N,N-ジメチル-4-[3-(2-フェニルエチルアミノ)-1-プロペニル]アニリン(200mg)をメタノール(2mL)に溶解し、酢酸(1mL)、パラホルムアルデヒド(43mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(189mg、2.85mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣(112mg、380μmol)を酢酸エチル(3mL)に溶解し、Pd/C(10%、12mg)を加え、1気圧(バルーン)の水素雰囲気下、室温で8時間15分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、淡黄色油状の式(4)の化合物(93mg、44%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:1.98―2.08(m、2H、ArCH2CH
2
CH2)、2.58―2.66 and 2.78―3.08(complex、8H、ArCH2 and NCH2)、2.93(s、6H、N(CH3)2)、6.69(d、J=8.2Hz、2H、ArH)、7.05(d、J=8.2Hz、2H、ArH)、7.14―7.34(complex、5H、ArH)
【0019】
式(5)の化合物(E)-N,N-ジメチル-4-[3-(2-フェニルエチルアミノ)-1-プロペニル]アニリン(300mg、1.01mmol)をメタノール(10mL)に溶解し、Pd/C(10%、30mg)を加え、1気圧(バルーン)の水素雰囲気下、室温で17時間反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、淡黄色油状の式(5)の化合物(102mg、32%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ: 1.75(quin、J=7.4Hz、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、2.52(t、J=7.4Hz、2H、Ar
CH
2
CH
2CH
2)、2.63(t、J=7.4Hz、2H、ArCH
2CH
2C
H
2
)、2.76―2.9(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、6.67(d、J=8Hz、2H、ArH)、7.02(d、J=8Hz、2H、ArH)、7.17―7.31(complex、5H、ArH)
【0020】
<式(3)の化合物の合成>
下記式(12)の化合物の合成と同様の手法により、下記式(10)化合物(170mg)から式(3)の化合物(30%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.72―1.86(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、1.94―2.07(complex、2H、ArCH
2C
H
2
CHN)、2.17(s、3H、NCH
3)、2.39―2.63(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.72―2.82(m、1H、ArCH
2)、2.86―2.93(m、1H、ArCH
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、4.42(t、J=7.2Hz、1H、ArCHN)、6.68(d、J=8.8Hz、ArH)、7.06(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.16―7.2(complex、3H、ArH)、7.32―7.37(br m、1H、ArH)
【0021】
<式(4)の化合物の合成>
4-[3-(ベンジルアミノ)プロピル]-N,N-ジメチルアニリン:
3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロパナール(181mg、1.02mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液にベンジルアミン(0.40mL、0.366mmol)とトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(622mg、2.93mmol)を加え、室温で3日間反応させた。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1/4)にて精製し、黄色油状の標記化合物(165mg、60%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:1.79(quin、J=7.6Hz、2H、ArCH2CH
2
CH2)、2.56(t、J=7.6Hz、2H、ArCH2CH2CH
2
)、2.66(t、J=7.6Hz、2H、ArCH
2
CH2CH2)、2.90(s、6H、N(CH3)2)、3.76(s、2H、PhCH2N)、6.68(d、J=8.7Hz、2H、ArH)、7.04(d、J=8.7Hz、2H、ArH)、7.2―7.33(complex、5H、ArH)
【0022】
式(4)の化合物
4-[3-(ベンジルアミノ)プロピル]-N,N-ジメチルアニリン(49mg、0.183mmol)のジクロロメタン溶液(1mL)にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(58.3mg、0.275mmol)、ホルマリン(37%水溶液、186μL)を加え、室温で3時間撹拌した。さらに、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(61.7mg)を加えて1時間40分反応させたのち、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トリエチルアミン=100/3)にて精製し、黄色油状の式(4)の化合物(20.7mg、40%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.79(quin、J=7.6Hz、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、2.17(s、3H、NCH
3)、2.40(t、J=7.6Hz、2H、ArCH
2CH
2C
H
2
)、2.54(t、J=7.6Hz、2H、ArC
H
2
CH
2CH
2)、2.90(s、6H、N(CH
3)
2)、3.47(s、2H、PhCH
2N)、6.68(d、J=8.7Hz、2H、ArH)、7.05(d、J=8.7Hz、2H、ArH)、7.26―7.31(complex、5H、ArH)
【0023】
<式(6)の化合物の合成>
(E)-4-3-((3-メトキシベンジル)(メチル)アミノ)-1-プロペニル)-N,N-ジメチルアニリン
4-(ジメチルアミノ)桂皮アルデヒド(200mg、1.14mmol)のメタノール(5mL)溶液に、3-メトキシベンジルアミン(146μL、1.14mmol)と無水硫酸マグネシウム(343mg)を加え、室温で45分間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(215mg、5.70mmol)を加え、冷却バスを取り除いて2時間反応させた。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣(330mg)の一部(150mg)をメタノール(4mL)に溶解し、酢酸(1mL)、パラホルムアルデヒド(30mg)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(133mg、2.02mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン/トリエチルアミン=75/25/1)にて精製し、淡黄色油状の標記化合物(87mg、2段階で55%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:2.22(s、3H、NCH3)、2.93(s、6H、N(CH3)2)、3.1―3.18(br、2H、NCH
2
CH)、3.50(br s、2H、ArCH2N)、3.80(s、3H、OCH3)、6.04―6.15(m、1H、CH2CH=CH)、6.42(d、J=15Hz、1H、CH2CH=CHAr)、6.66(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、6.75―6.8(br d、J=7.3Hz、1H、ArH)、6.85―6.95(br、2H、ArH)、7.16―7.3(complex、3H、ArH)
【0024】
式(6)(E)-4-(3-((3-メトキシベンジル)(メチル)アミノ)-1-プロペニル)-N,N-ジメチルアニリン(70mg、225μmol)の酢酸エチル(3mL)溶液にPd/C(10%、7mg)を加え、1気圧(バルーン)の水素雰囲気下、室温で1時間20分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=3/1)にて精製し、黄色油状の式(6)の化合物(45mg、63%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.73(quin、J=7.5Hz、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、2.12(s、3H、NCH
3)、2.34(t、J=7.5Hz、2H、ArC
H
2
CH
2CH
2)、2.48(t、J=7.5Hz、2H、ArCH
2CH
2C
H
2
N)、2.84(s、6H、N(CH
3)
2)、3.39(s、2H、ArCH
2N)、3.74(s、3H、OCH
3)、6.62(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、6.7―6.74(m、1H、ArH)、6.83(d、J=8.1Hz、1H、ArH)、6.83(s、1H、ArH)、6.99(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.15(t、J=8.1Hz、1H、ArH)
【0025】
<式(7)の化合物の合成>
3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-1-プロパノール:
4-(ジメチルアミノ)桂皮アルデヒド(1.37g、7.82mmol)の酢酸エチル(28mL)溶液にPd/C(10%、含水、90mg)を加え、水素雰囲気下、室温で3.5時間反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した。その残渣をメタノール(22mL)に溶解し、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(132mg、3.49mmol)を添加して15分間反応させた。反応液を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=2/1)にて精製し、薄黄色油状の標記化合物(1.23g、88%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.81―1.89(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、2.61(t、J=7.8Hz、2H、ArC
H
2
CH
2CH
2)、2.90(s、6H、N(CH
3)
2)、3.63―3.69(br m、2H、C
H
2
OH)、6.69(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.07(d、J=8.8Hz、2H、ArH)
【0026】
4-(3-ブロモプロピル)-N,N-ジメチルアニリン:
3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)-1-プロパノール(438mg、2.44mmol)のジクロロメタン(8mL)溶液に四臭化炭素(1.22g、3.68mmol)、トリフェニルホスフィン(638mg、2.43mmol)を順次加え、0℃で3時間反応させた。反応液を水に注ぎ込み、ジクロロメタンで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮して得られた残渣にジエチルエーテル/ヘキサン混合液(1/4)を加え、ろ過した。ろ液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1/10)にて精製し、黄色油状の標記化合物(384mg、65%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:2.11(quin、J=7Hz、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、2.67(t、J=7Hz、ArC
H
2
CH
2CH
2)、2.91(s、6H、N(CH
3)
2)、3.38(t、J=7Hz、2H、ArCH
2CH
2C
H
2
Br)、6.69(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.06(d、J=8.8Hz、2H、ArH)
【0027】
式(7)の化合物
(S)-1-フェニルエチルアミン(59μL、458μmol)のTHF(0.8mL)溶液にアルゴン雰囲気下、0℃でブチルリチウム(2.63Mヘキサン溶液、200μL、526μmol)を加えて10分間撹拌した。続いて、THF(1.2mL)に溶解した4-(3-ブロモプロピル)-N,N-ジメチルアニリン(111mg、458μmol)を加え、0℃で1.5時間反応させた。反応液を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をジエチルエーテル(1.5mL)に溶解し、0℃でブチルリチウム(2.63Mヘキサン溶液、260μL、684μmol)を加えて30分間撹拌したのち、ヨウ化メチル(46μL、733μmol)を滴下して、さらに30分間反応させた。反応液を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、黄色油状の式(7)の化合物(58.4mg、2段階で43%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.33(d、J=6.6Hz、3H、PhCH(C
H
3
)N)、1.73(quin、J=7.5Hz、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、2.16(s、3H、NCH
3)、2.28―2.36(m、1H、ArC
H
2CH
2CH
2)、2.4―2.54(complex、3H、ArC
H
2CH
2C
H
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、3.56(q、J=6.6Hz、PhC
H(CH
3)N)、6.67(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.02(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.19―7.26(m、1H、ArH)、7.28―7.31(4H、ArH)
【0028】
<式(8)の化合物の合成>
式(7)で表されるジメチルアニリン誘導体化合物の合成と同様の手法により、(R)-1-フェニルエチルアミン(58μL、448μmol)から式(7)の化合物(48.7mg、37%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.33(d、J=6.6Hz、3H、PhCH(C
H
3
)N)、1.73(quin、J=7.5Hz、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、2.16(s、3H、NCH
3)、2.27―2.35(m、1H、ArC
H
2CH
2CH
2)、2.4―2.54(complex、3H、ArC
H
2CH
2C
H
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、3.56(q、J=6.6Hz、PhC
H(CH
3)N)、6.67(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.02(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.19―7.26(m、1H、ArH)、7.28―7.31(4H、ArH)
【0029】
<式(9)の化合物の合成>
3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロパナール(20mg、112μmol)のメタノール(0.5mL)溶液に(R)-1-アミノインダン塩酸塩(20mg、118μmol)とトリエチルアミン(16μL、115μmol)を加え、室温で3時間反応させた。反応液を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(6.4mg)を加え、30分間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/トリエチルアミン=100/1)にて精製し、淡黄色油状の式(9)の化合物IX-5(23mg、71%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ: 1.76―1.88(complex、3H、ArCH
2C
H
2
CH
2 and ArCH
2C
H
2CHN)、2.33―2.43(m、1H、ArCH
2C
H
2CHN)、2.53―2.66(m、2H、ArCH
2)、2.72―3.04(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.91(s、6H、N(CH
3)
2)、4.22(t、J=6.6Hz、1H、ArCHN)、6.70(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.07(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.15―7.26(complex、3H、ArH)、7.29―7.34(m、1H、ArH)
【0030】
<式(10)の化合物の合成>
4-(ジメチルアミノ)桂皮アルデヒド(400mg、2.28mmol)のメタノール(10mL)溶液に(S)-1-アミノインダン(301μL、2.28mmol)と無水硫酸マグネシウム(686mg)を加え、室温で2時間35分撹拌した。反応液を0℃に冷却して水素化ホウ素ナトリウム(172mg、4.56mmol)を加えたのち、室温で60時間反応させた。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣(653mg)を酢酸エチル(10mL)に溶解し、Pd/C(en)(65mg)を加え、1気圧(バルーン)の水素雰囲気下、室温で17時間30分反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン/トリエチルアミン=400/100/1)にて精製し、黄色油状の式(10)の化合物(520mg、79%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ: 1.75―1.91(complex、3H、ArCH
2C
H
2
CH
2 and ArCH
2C
H
2CHN)、2.33―2.43(m、1H、ArCH
2C
H
2CHN)、2.54―2.67(m、2H、ArCH
2)、2.72―3.04(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.92(s、6H、N(CH
3)
2)、4.23(t、J=6.6Hz、1H、ArCHN)、6.70(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.08(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.15―7.25(complex、3H、ArH)、7.31―7.34(m、1H、ArH)
【0031】
<式(11)の化合物の合成>
N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-1-インダニルアミン:
4-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチルアニリン(226mg、1.27mmol)のベンゼン(5mL)溶液に、1-インダノン(143mg、1.07mmol)、モレキュラーシーブ(3A、153mg)、オルトチタン酸テトライソプロピル(452μL)を加え、70℃で5時間40分反応させた。反応液を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(74mg、1.96mmol)、メタノール(5mL)を加えたのち、室温で22時間撹拌した。反応液にアンモニア水を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン/トリエチルアミン=400/100/1)にて精製し、薄黄色油状の標記化合物(250mg、79%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:1.76―1.87(complex、3H、ArCH2CH
2
CH2 and ArCH2CH
2CHN)、2.32―2.42(m、1H、ArCH2CH
2CHN)、2.52―2.66(m、2H、ArCH2)、2.71―3.02(complex、4H、ArCH2 and NCH2)、2.90(s、6H、N(CH3)2)、4.21(t、J=6.6Hz、1H、ArCHN)、6.69(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.06(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.14―7.23(complex、3H、ArH)、7.28―7.33(m、1H、ArH)
【0032】
式(11)の化合物
N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-1-インダニルアミン(127mg、433μmol)のメタノール(1.5mL)溶液にパラホルムアルデヒド(66mg、2.17mmol)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(45mg、650μmol)を加え、室温で15時間10分反応させた。反応液に塩酸(1M)を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、薄黄色油状の式(11)の化合物(55.4mg、42%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.72―1.85(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、1.96―2.08(complex、2H、ArCH
2C
H
2
CHN)、2.17(s、3H、NCH
3)、2.39―2.63(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.72―2.82(m、1H、ArCH
2)、2.85―2.94(m、1H、ArCH
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、4.42(t、J=7.2Hz、1H、ArCHN)、6.68(d、J=8.8Hz、ArH)、7.06(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.16―7.20(complex、3H、ArH)、7.32―7.37(br m、1H、ArH)
【0033】
<式(12)の化合物の合成>
式(12)の化合物:
式(9)の化合物(26mg、88μmol)のメタノール(0.35mL)溶液にパラホルムアルデヒド(26mg)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(8.2mg、130μmol)を加えたのち、室温で1時間45分反応させた。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン/トリエチルアミン=83/17/3)にて精製し、黄色油状の式(12)の化合物(15mg、56%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.72―1.85(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、1.96―2.06(complex、2H、ArCH
2C
H
2
CHN)、2.17(s、3H、NCH
3)、2.38―2.63(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.72―2.82(m、1H、ArCH
2)、2.86―2.93(m、1H、ArCH
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、4.41(t、J=7.4Hz、1H、ArCHN)、6.68(d、J=8.8Hz、ArH)、7.06(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.16―7.21(complex、3H、ArH)、7.32―7.37(br m、1H、ArH)
【0034】
<式(13)の化合物の合成>6-ニトロ-1-インダノン:
1-インダノン(420mg、3.44mmol)を濃硫酸(3.5mL)に溶解して0℃に冷却し、濃硫酸(1mL)に溶解した硝酸カリウム(348mg、3.44mmol)を加え、0℃で3時間、さらに室温で15時間反応させた。反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下して中和し、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて精製し、標記化合物(266mg、46%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:2.82(t、J=6Hz、2H、ArCOCH2)、3.26(t、J=6Hz、2H、ArCH2)、7.65(d、J=8.3Hz、1H、ArH)、8.43(br d、J=8.3Hz、1H、ArH)、8.54(br s、1H、ArH)
【0035】
6-アセタミド-1-インダノン:
6-ニトロ-1-インダノン(103mg、581μmol)のメタノール(1mL)溶液にPd/C(10%、含水、12mg)を加え、1気圧(バルーン)の水素雰囲気下、室温で14時間反応させた。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した残渣を無水酢酸(1.5mL)に溶解し、室温で28時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて精製し、白色固体の標記化合物(52mg、47%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:2.20(s、3H、CH
3CO)、2.69(t、J=5.8Hz、2H、ArCOCH
2)、3.09(t、J=5.8Hz、2H、ArCH
2)、7.42(br d、J=8Hz、1H、ArH)、7.65(s、1H、ArH)、7.94(br s、1H、ArNHCO)、8.04(dt、J=2 and 8Hz、1H、ArH)
【0036】
N-(1-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}インダン-6-イル)アセタミド:
4-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチルアニリン(49.1mg,275μmol)のベンゼン(1mL)溶液に6-アセタミド-1-インダノン(32.3mg、171μmol)とオルトチタン酸テトライソプロピル(104μL)を加え、70℃で5時間40分反応させた。反応液を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(22mg、581μmol)、メタノール(1mL)を加えたのち、室温で18時間30分撹拌した。反応液にアンモニア水を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、薄黄色油状の標記化合物(29.1mg、48%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:1.74―1.84(complex、3H、ArCH2CH
2
CH2 and ArCH2CH
2CHN)、2.15(s、3H、CH3CO)、2.3―2.41(m、1H、ArCH2CH
2CHN)、2.5-2264(m、2H、ArCH2)、2.67―2.78(complex、3H、ArCH2 and NCH2)、2.88―2.91(1H、NCH2)、2.90(s、6H、N(CH3)2)、4.15(t、J=6.6Hz、1H、ArCHN)、6.70(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.07(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.13(d、J=8Hz、1H、ArH)、7.19(br s、1H、ArNHCO)、7.28(s、1H、ArH)、7.35(d、J=8Hz、1H、ArH)
【0037】
式(13)の化合物
N-(1-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}インダン-6-イル)アセタミド(28mg、80μmol)のメタノール(0.3mL)溶液にパラホルムアルデヒド(26.1mg、869μmol)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(6.3mg、100μmol)を加え、室温で15時間10分反応させた。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、薄黄色油状の式(13)の化合物(13.3mg、45%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.71―1.84(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、1.94―2.05(m、2H、ArCH
2C
H
2
CHN)、2.14 and 2.14(each s、each 3H、NCH
3 and CH
3CO)、2.4―2.63(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.68―2.77(m、1H、NCH
2)、2.8―2.88(m、1H、NCH
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、4.37(t、J=7Hz、1H、ArCHN)、6.68(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.06(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.12(d、J=8.4Hz、1H、ArH)、7.2(s,1H、ArH)、7.27(s、1H、ArNHCO)、7.52(d、J=8.4Hz、1H、ArH)
【0038】
<式(14)の化合物の合成>N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-6-ニトロ-1-インダニルアミン:
4-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチルアニリン(96.7mg、542μmol)のベンゼン(1mL)溶液に、6-ニトロ-1-インダノン(80mg、452μmol)、オルトチタン酸テトライソプロピル(160μL、542μmol)を加え、室温で3時間30分反応させた。反応液に水素化ホウ素ナトリウム(25.6mg、678μmol)とエタノール(1mL)を加えたのち、室温で2時間30分撹拌した。反応液にアンモニア水(28%、35μL)を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=3/1、トリエチルアミン3%)にて精製し、赤褐色油状の標記化合物(71.2mg、47%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:1.82(quin、J=7.2Hz、2H、ArCH2CH
2
CH2N)、1.84―1.92(m、1H、ArCH2CH
2CHN)、2.42―2.51(m、1H、ArCH2CH
2CHN)、2.55―2.64(m、2H、ArCH2)、2.68―2.79(m、2H、NCH2)、2.8―2.9(m、1H、ArCH
2CH2CHN)、2.90(s、6H、N(CH3)2)、3.0―3.09(m、1H、ArCH
2CH2CHN)、4.25(t、J=6.8Hz、1H、ArCHN)、6.68(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.06(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.32(d、J=8.4Hz、1H、ArH)、8.07(dd、J=2.4 and 8.4Hz、1H、ArH)、8.14(br d、J=2.4Hz、1H、ArH)
【0039】
式(14)の化合物
N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-6-ニトロ-1-インダニルアミン(41mg、121μL)のジクロロメタン(2mL)溶液にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(76.9mg、363μmol)とホルマリン(37%水溶液、75μL)を加え、室温で17時間反応させた。反応液に水を加え、ジクロロメタンで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、赤褐色油状の式(14)の化合物(30.3mg、71%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.75―1.88(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2N)、2.05―2.14(m、2H、ArCH
2C
H
2
CHN)、2.17(s、3H、NCH
3)、2.38―2.48(m、2H、ArCH
2)、2.49―2.64(m、2H、NCH
2)、2.8―3.01(complex、2H、ArC
H
2
CH
2CHN)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、4.44(t、J=7.4Hz、1H、ArCHN)、6.67(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.05(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.29(d、J=8.4Hz、1H、ArH)、8.06(dd、J=2.4 and 8.4Hz、1H、ArH)、8.17 (br s、1H、ArH)
【0040】
<式(15)の化合物の合成>N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-5-メトキシ-1-インダニルアミン:
4-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチルアニリン(52.8mg、296μmol)のベンゼン(1mL)溶液に、5-メトキシ-1-インダノン(38.5mg、237μmol)、オルトチタン酸テトライソプロピル(104μL、350μmol)を加え、70℃で5時間20分反応させた。反応液を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(21.1mg、558μmol)、メタノール(1mL)を加えたのち、室温で16時間分撹拌した。反応液にアンモニア水を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、薄黄色油状の標記化合物(47.7mg、62%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:1.76―1.87(complex、3H、ArCH2CH
2
CH2 and ArCH2CH
2CHN)、2.31―2.41(m、1H、ArCH2CH
2CHN)、2.5-2264(m、2H、ArCH2)、2.72(t、J=7.4Hz、2H、NCH2)、2.73―2.81(m、1H、ArCH
2CH2CHN)、2.90(s、6H、N(CH3)2)、2.9―3.0(m,1H、ArCH
2CH2CHN)、3.78(s、3H、OCH3)、4.16(t、J=6.2Hz、1H、ArCHN)6.69(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、6.73(d、J=8.2Hz、1H、ArH)、6.76(s、1H、ArH)、7.06(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.20(d、J=8.2Hz、1H、ArH)
【0041】
式(15)N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-5-メトキシ-1-インダニルアミン(28.8mg、88.8μmol)のメタノール(0.3mL)溶液にパラホルムアルデヒド(14.2mg、473μmol)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(8.4mg、134μmol)を加え、室温で14時間反応させた。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、薄黄色油状の標記化合物(24.6mg、82%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.71―1.83(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、1.97―2.06(m、2H、ArCH
2C
H
2
CHN)、2.16(s、3H、NCH
3)、2.37―2.63(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.71―2.8(m、1H、ArC
H
2CH
2CHN)、2.83―2.9(m,1H、ArC
H
2CH
2CHN)、2.90(s、6H、N(CH
3)
2)、3.79(s、3H、OCH
3)、4.36(t、J=7Hz、1H、ArCHN)、6.68(d,J=8.8Hz、2H、ArH)、6.73(s、1H、ArH)、6.73―6.76(1H、ArH)、7.05(d、J=8.8Hz、2H、ArH)、7.21―7.26(1H、ArH)
【0042】
<式(16)の化合物の合成>5-(2-ブロモエトキシ)-1-インダノン:
5-ヒドロキシ-1-インダノン(745mg、5.03mmol)を酢酸エチル(15mL)に溶解させたのち、酢酸エチル(15mL)に懸濁させた炭酸カリウム(2.45g)、1,2-ジブロモエタン(3.27mL)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(121mg)を順次加え、24時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷したのちに氷水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、白色固体の標記化合物(1.06g、83%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:2.67(m、2H、COCH2)、3.08(br t、J=6Hz、2H、ArCH2)、3.66(t、J=6.4Hz、2H、BrCH2)、4.35(t、J=6.4Hz、2H、OCH2)、6.89―6.93(br m,2H、ArH)、7.69(d、J=9.2Hz、1H、ArH)
【0043】
5-(2-アジドエトキシ)-1-インダノン:
5-(2-ブロモエトキシ)-1-インダノン(410mg、1.61mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解させ、アジ化ナトリウム(129mg)を加えて35分間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷したのちに水に注ぎ込み、ジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、赤褐色固体の標記化合物(346mg、99%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:2.66―2.7(m、2H、COCH2)、3.09(br t、J=6Hz、2H、ArCH2)、3.63(t、J=5Hz、2H、N3CH2)、4.21(t、J=5Hz、2H、OCH2)、6.90―6.94(br m、2H、ArH)、7.70(d、J=9.2Hz、1H、ArH)
【0044】
5-(2-アジドエトキシ)-N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-N-メチル-1-インダニルアミン:
5-(2-アジドエトキシ)-1-インダノン(109mg、0.5mmol)のメタノール(2mL)溶液に、室温でメチルアミン塩酸塩(101mg)と酢酸ナトリウム(123mg)を加え、30分間撹拌した。続いて、反応溶液にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(63mg)を加え、30時間加熱還流させた。反応液を室温まで放冷したのちに水に注ぎ込み、ジクロロメタンで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮し、薄褐色油状の5-(2-アジドエトキシ)-N-メチル-1-インダニルアミン(118mg)を得た。得られたメチルアミン体(118mg)を1,2-ジクロロエタン(2mL)に溶解し、3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロパナール(88mg)とトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(185mg)を加え、室温で23時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/酢酸エチル=1/1)にて精製し、薄黄色油状の標記化合物(161mg、82%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:1.72―1.85(m、2H、ArCH2CH
2
CH2)、2.03(br q、J=7.6Hz、2H、ArCH2CH
2
CH)、2.16(s、3H、NCH3)、2.38―2.64(complex、4H、ArCH2 and NCH2)、2.72―2.9(complex、2H、ArCH2)、2.90(s、6H、N(CH3)2)、3.58(t、J=4.6Hz、2H、CH2N3)、4.14(t、J=4.6Hz、2H、ArOCH2)、4.36(t、J=6.9Hz、1H、ArCHN)、6.69(d、J=8.2Hz、2H、ArH)、6.76(s、1H、ArH)、6.76―6.78(1H、ArH)、7.06(d、J=8.2Hz、2H、ArH)、7.23―7.26(1H、ArH)
【0045】
式(16)5-(2-アジドエトキシ)-N-{3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]プロピル}-N-メチル-1-インダニルアミン(23.5mg、60μmol)のメタノール(0.4mL)溶液にPd/C(10%、含水、4.2mg)を加え、1気圧(バルーン)の水素雰囲気下、室温で3時間50分反応させた。続いて、反応液に二炭酸ジ-tert-ブチル(15.5μL、72μmol)を加え、室温で17時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)にて精製し、薄黄色油状の式(16)の化合物(20.1mg、72%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ:1.43(s、9H、OC(CH
3)
3)、1.72―1.84(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH
2)、1.96―2.05(m、2H、ArCH
2C
H
2
CH)、2.15(s、3H、NCH
3)、2.36―2.62(complex、4H、ArCH
2 and NCH
2)、2.7―2.79(m、1H、ArCH
2)、2.8―2.9(m、1H、ArCH
2)、2.89(s、6H、N(CH
3)
2)、3.46―3.55(m、2H、BocNHC
H
2
)、3.99(t、J=5Hz、2H、ArOCH
2)、4.35(t、J=6.8Hz、1H、ArCHN)、6.68(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、6.72(s、1H、ArH)、6.71―6.75(1H、ArH)、7.05(d、J=8.6Hz、2H、ArH)、7.22(d、J=8Hz、1H、ArH)
【0046】
候補化合物のオキシトーシスおよびフェロトーシスに対する細胞保護活性を、マウス海馬HT22細胞を用いて評価した。
HT22細胞2~3×10
4個を48wellプレートにまき、DMEM培地(Waco Pure Chemicals)(5%FBS(HyClone Laboratories))で37℃、5%CO
2のインキュベーターで1日培養した。(以降の実験における細胞培養は、同様の条件で行なった。)その後、グルタミン酸またはエラスチンの存在下で各化合物で処理した。
培地中のlactate dehydrogenase(LDH)活性をCytotoxicity Detection Kit(Takara Bio)で測定することによって細胞死の割合を測定した。細胞死の割合は、100×(培地中のLDH量-ブランク)/(細胞を1%TritonX-100で処理した際の総LDH量-ブランク)で計算した。
約220化合物のうち、GIF-2114、-2115、-2232、-2108、-2212、-2211、-2027、-2112、-2197-r、-2196、-2239-r、-2226-r、-2241-r、-2249-rは0.01または0.1または1.0または10μMでオキシトーシスを有意に抑制した(
図1(a))。さらに、GIF-2114、-2115、-2196、-2197-rは0.01または0.1または1.0μMでフェロトーシスも有意に抑制した(
図1(b))。
【0047】
なお、GIF-2011は、以下の化合物であり、
【化16】
GIF-2014は、以下の化合物であり、
【化17】
GIF-2071は、以下の化合物であり、
【化18】
GIF-2145は、以下の化合物であり、
【化19】
GIF-2071-rは、以下の化合物である。
【化20】
【0048】
GIF-2114(式(2)の化合物)、GIF-2115(式(3)の化合物)、GIF-2196(式(12)の化合物)、GIF-2197-r(式(11)の化合物)は最も高い効果を発揮し、有効濃度は10nMであった。
式(3)、(11)、(12)は立体異性体で、式(3)はR型、式(12)はS型、式(11)はラセミ体である。
立体異性体は、グルタミン酸およびエラスチンによる細胞死を同程度に減少させることから、N原子周辺の立体障害は細胞保護に影響を与えないことが示唆された。
【0049】
N,N-ジメチルアニリン誘導体による細胞保護作用の分子基盤を解析するために、グルタミン酸およびエラスチンによる活性酸素生成と脂質過酸化反応に対する効果を調べた。
【0050】
<活性酸素生成>
HT22細胞を12wellプレートに1.1×104cell/wellでまき、各化合物の存在下でグルタミン酸またはエラスチンで処理し、それぞれ10時間または8時間培養した。その後活性酸素の検出試薬であるMitoSOX (Thermo Fisher Science、5μM)を加え、37℃で15分培養した。その後培地をDMEM(Thermo Fisher Science)(血清フリー、フェノールレッドフリー)に置き換え、蛍光顕微鏡(BZ-X810、キーエンス)を用いて蛍光を測定した。蛍光強度はKeyence image measurement systemと解析ソフト(BZ-X Analyzer、キーエンス)を用いて定量化した。
【0051】
<脂質過酸化反応>
MitoSOX(濃度5μM)の代わりに脂質過酸化検出薬であるBODIPY C11(Thermo Fisher Science、1μM)を加え、37℃で30分培養した以外は上記と同様にして蛍光を測定した。
グルタミン酸とエラスチンはミトコンドリアの活性酸素生成と脂質過酸化反応を増加させるが、GIF-2011、-2014、-2071-r、-2145、-2171は1μMで、GIF-2114(式(2)の化合物)、GIF-2115(式(3)の化合物)、GIF-2196(式(12)の化合物)、GIF-2197-r(式(11)の化合物)は0.1μMでそれらをほぼ完全に阻止した(
図2-1)のa~dにおいて、グルタミン酸やエラスチンによる処理をした場合に対してP値が0.0001以下((
図2-1)のa~dにおける具体的数値を
図2-2に示す。))。
【0052】
Fe2+イオンは、フェントン反応により過酸化水素から強力な酸化剤ヒドロキシラジカルを生成する触媒であり、オキシトーシス/フェロトーシスの重要な調節因子である。
Fe2+イオン特異的蛍光プローブであるFerroOrangeを用いて、N,N-ジメチルアニリン誘導体がFe2+イオンに作用して活性酸素レベルを低下させることができるかどうかを評価した。
【0053】
HT22細胞を12wellプレートに1.1×10
4cell/wellでまき、1日培養した。その後、1μMのGIF-2011、-2014、-2071-r、-2145、-2171または
図3bの濃度のGIF-2114(式(2)の化合物)、GIF-2115(式(3)の化合物)、GIF-2196(式(12)の化合物)、GIF-2197-r(式(11)の化合物)を加えて、16時間培養した。そして細胞内でのFe
2+の挙動を可視化するために、細胞をFerroOrange(Goryo Chemical Inc.、1μM)を含むHBSS(Hank’s balanced salt solution)を用いて、37℃で30分CO
2インキュベーターで染色した。培地をHBSSに交換した後、上記と同様にして蛍光を測定した。
ポジティブコントロールとしてFe
2+キレート剤として知られるデフェロキサミン(DFO、10μM)を使用した(
図3a)。
【0054】
GIF-2011、-2014、-2071-r、-2145、-2171は1μMでFerroOrange蛍光を抑制した(
図3a)。一方、最も強力な誘導体であるGIF-2114(式(2)の化合物)、GIF-2115(式(3)の化合物)、GIF-2196(式(12)の化合物)、GIF-2197-r(式(11)の化合物)は0.01μMでFerroOrange蛍光を抑制することが分かった(
図3b、c)。
DFOが、オキシトーシスとフェロトーシスを抑制した(
図3d)ことから、グルタミン酸によるオキシトーシスとエラスチンによるフェロトーシスを防ぐには、Fe
2+イオン除去が有効であることが示されるので、上記の結果と併せて本発明の各化合物がオキシトーシスとエラスチンによるフェロトーシスの抑制に効果があること、つまり鉄イオンキレート化剤及びフェロトーシス阻害剤として機能することが示唆される。
【0055】
次に、HT22細胞のグルタミン酸誘導性細胞死に対するGIF-2115(式(3)の化合物)とGIF-2228-rの効果とin vitroでのFe
2+イオンの効果を比較検討した。
GIF-2228-rはGIF-2115(式(3)の化合物)と類似の構造を持つが、NMe
2基を持たない(
図3e)。
GIF-2228-rはGIF-2115(式(3)の化合物)ほど効果的にはグルタミン酸による細胞死を防げなかった(
図3f)。
またin vitroでGIF-2228-rまたはGIF-2115(式(3)の化合物)の存在下でのFerroOrange蛍光の挙動を測定した。50mMのHEPESバッファー中に100μMのGIF-2228-rまたはGIF-2115(式(3)の化合物)、DFOと100μMのFeSO
4、と1μMのFerroOrangeを加え、532nmの光の励起下で一分ごとに572nmの光の強さを測定した。
その結果GIF-2115(式(3)の化合物)はDFOよりも効果的にin vitroでのFerroOrange蛍光を抑制したが、GIF-2228-rはFerroOrange蛍光に影響を与えなかった(
図3g)。
【0056】
これらの結果は、NMe2構造がFe2+イオンとの相互作用により活性酸素量を減少させ、酸化ストレスの防止に重要な役割を担っていることを示唆している。
すべてのN,N-ジメチルアニリン誘導体はin vitroで強力なFe2+結合能を示した。
【0057】
GIF-2114(式(2)の化合物)とGIF-2197-r(式(11)の化合物)を細胞がどのように輸送するか、そしてそれが細胞保護にどう関係するかを分析するために、GIF-2114(式(2)の化合物)とGIF-2197-r(式(11)の化合物)の蛍光プローブであるGIF-2264とGIF-2250-rをそれぞれ作製した。
GGIF-2114(式(2)の化合物)とGIF-2197-r(式(11)の化合物)にそれぞれ蛍光性4-methyla- mino-7-nitro-2,1,3-benzoxadiazole (NBD-NHMe) 基を付加してGIF-2264とGIF-2250-rを合成した。
【0058】
GIF-2264とGIF-2250-rの細胞保護能を検証するために、HT22細胞を上述の手法で
図4の濃度のGIF-2264とGIF-2250-rの存在下でグルタミン酸またはエラスチンで24時間処理し、細胞死の割合を測定した(
図4a、b、d,e)。
その結果、GIF-2264とGIF-2250-rはそれぞれGIF-2114(式(2)の化合物)とGIF-2197-r(式(11)の化合物)よりも保護作用が弱いことがわかった。これは蛍光タグが立体障害を介して抗フェロトーシス性に何らかの影響を及ぼしている可能性を示唆している。そしてGIF-2264よりもGIF-2250-rが有用である可能性も示唆された。
【0059】
次にHT22細胞2×10
5個を35mm/glass base dishにまき、DMEM(5%FBS)で24時間培養した。
細胞のミトコンドリアを染色するために下記構造式で示されるMitoMM2(0.5μM)で15分染色し、その後1μMのGIF-2264とGIF-2250-rで37℃、15分染色した。その後、蛍光顕微鏡(BZ-X810、キーエンス)のセクショニング機能を用いて蛍光画像を観察した。
(MitoMM2)
小胞体を染色するために、ER-Tracker
TMBlue-White DPX(Thermo Fisher Science、0.5μM)で30分染色後、培地をDMEM(5%FBS)に交換し、その後1μMのGIF-2264とGIF-2250-rで37℃、15分染色した。その後培地をDMEM(Thermo Fisher Science)(血清フリー、フェノールレッドフリー)に置き換え、蛍光顕微鏡(BZ-X810、キーエンス)のセクショニング機能を用いて蛍光画像を観察した。
リソソームを染色するために、LysoBrite
TMRed (ATT Bioquest、1μM)と1μMのGIF-2264とGIF-2250-rで37℃、30分染色した。その後培地をDMEM(Thermo Fisher Science)(血清フリー、フェノールレッドフリー)に置き換え、蛍光顕微鏡(BZ-X810、キーエンス)のセクショニング機能を用いて蛍光画像を観察した。
【0060】
GIF-2264とGIF-2250-rを含む培地は蛍光を発しないため、培地を交換することなくGIF-2264とGIF-2250-rの緑色蛍光を観察することが可能であった。グルタミン酸またはエラスチンで処理したHT22細胞は、8時間で丸くなり始め、細胞死を開始した。しかしGIF-2264とGIF-2250-rを添加すると、これらの化合物は核周辺領域に局在し、細胞の形態変化を完全に防ぐことができた(
図4c、f)。
【0061】
次にGIF-2264またはGIF-2250-rと後期エンドソーム/リソソームマーカーであるCD63-又はRab7との共局在性を調べた。
CD63-mCherryまたはRab7-mCherryをHT22細胞にトランスフェクションすると、核周辺に点状の赤色蛍光が観察された(
図5a、b)。これらのシグナルはGIF-2264またはGIF-2250-rが発する緑色蛍光と重なり、GIF-2264またはGIF-2250-rが後期エンドソーム/リソソームに局在していることが示唆された。
【0062】
またGIF-2264またはGIF-2250-rのリソソームへのターゲティングおよび局在は、生細胞においてLysoBrite(リソソーム、赤色蛍光)、ER-Tracker(小胞体、青色蛍光)またはMitoMM2(ミトコンドリア、赤色蛍光)を用いてさらに検証した。
GIF-2264またはGIF-2250-rの緑色蛍光はLysoBriteの赤色蛍光と重なったが、ER-TrackerやMitoMM2は重ならなかった(
図5c)ことから、これらは後期エンドソーム/リソソームに優先的に局在していることが示唆された。つまり、本発明のGIF化合物はリソソーム局在性鉄イオンキレート化剤及びリソソーム局在性フェロトーシス阻害剤として機能すると考えられる。
【0063】
これらの結果を総合すると、後期エンドソーム/リソソームがオキシトーシスやフェロトーシスに対する潜在的な標的であることが示唆される。
上記の蛍光プローブを用いた結果の通り、GIF-2114(式(2)の化合物)とGIF-2197r(式(11)の化合物)が後期リソソーム/エンドソームに集積することは、HT22細胞をオキシトーシス/フェロトーシスから保護する上で重要であることが示唆された。
【0064】
細胞保護作用を有する本発明のN,N-ジメチルアニリン誘導体は、既知の化合物とは異なるメカニズムで、より強力な神経細胞保護作用を有することがわかった。GIF-2114(式(2)の化合物)、GIF-2115(式(3)の化合物)、GIF-2196(式(12)の化合物)、GIF-2197-r(式(11)の化合物)はそれ自身は抗酸化物質ではないが、後期エンドソーム/リソソームに局在する。その結果、これらの4種の化合物は、低い有効濃度であっても、細胞内の鉄平衡と活性酸素の生成を調節することでフェロトーシスおよびオキシトーシスを制御し、細胞を保護できると考えられる。
N,N-ジメチルアニリン誘導体のこれらの特性は、酸化ストレス関連疾患の治療にあたり、さらなる開発の候補となり得る。さらに、蛍光プローブであるGIF-2264またはGIF-2250-rは、化合物自体の蛍光が培養液中で消光するため、後期エンドソーム/リソソームや、エクソソームなどの細胞外小胞体のイメージング化に有用なツールとなり得る。