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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002558
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】防振材
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20231228BHJP
   F16F 3/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F16F15/04 F
F16F3/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101814
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】山下 仁崇
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA03
3J048BB01
3J048BD01
3J048CB01
3J048DA01
3J048EA13
3J059AA07
3J059AC03
3J059BA64
3J059BB05
3J059BB08
3J059BC04
3J059BC06
3J059BD01
3J059CA01
3J059EA13
3J059GA30
3J059GA41
(57)【要約】
【課題】 荷重に応じて防振性能が適切に発揮される防振材を提供する。
【解決手段】 振動体1の下方に配置され、振動体1の振動の伝播を抑制する防振材21であって、防振材21に対して振動体1の荷重が作用していない状態において、高さが互いに異なる複数の部分21a、21b、21cを備え、荷重が鉛直方向に防振材21に対して作用した場合に、複数の部分のうち、高さが最も大きい部分から順に、荷重の大きさに応じた数の部分が、荷重を受けて圧縮する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体の下方に配置され、前記振動体の振動の伝播を抑制する防振材であって、
前記防振材に対して前記振動体の荷重が作用していない状態において、高さが互いに異なる複数の部分を備え、
前記荷重が鉛直方向に前記防振材に対して作用した場合に、前記複数の部分のうち、高さが最も大きい部分から順に、前記荷重の大きさに応じた数の部分が、前記荷重を受けて圧縮する、防振材。
【請求項2】
前記防振材は、前記複数の部分をなす複数の防振材断片を組み合わせて構成され、
前記防振材において、前記複数の防振材断片のうち、隣り合う2つの防振材断片が、互いに当接している、請求項1に記載の防振材。
【請求項3】
前記複数の部分の各々は、前記荷重を受ける頂面と、下端に位置する底面とを有し、
前記複数の部分の各々の頂面は、水平な平面であり、
前記複数の部分の各々の底面は、水平な平面であり、鉛直方向において同じ位置にある、請求項1に記載の防振材。
【請求項4】
前記防振材を鉛直方向から見た場合に前記防振材の中心を通り、且つ、鉛直方向に平行な線を前記防振材の中心線とする場合において、
前記中心線を含む切断面にて切断された前記防振材の断面形状が、前記中心線を基準に対称な形状である、請求項1に記載の防振材。
【請求項5】
前記隣り合う2つの防振材断片のうち、一方の防振材断片は、他方の防振材断片の外側に配置されて前記他方の防振材断片を取り囲んでいる、請求項2に記載の防振材。
【請求項6】
前記複数の部分は、鉛直方向において前記防振材を上側から見た場合に、より内側に位置する内側部分と、より外側に位置する外側部分とを含み、
前記防振材に対して前記荷重が作用していない状態において、前記内側部分の高さが前記外側部分の高さより大きい、請求項1に記載の防振材。
【請求項7】
前記複数の部分が、3つ以上の部分である、請求項1に記載の防振材。
【請求項8】
前記複数の防振材断片には、互いに材質の異なる2以上の防振材断片が含まれる、請求項2に記載の防振材。
【請求項9】
前記複数の部分は、鉛直方向において前記防振材を上側から見た場合に、より内側に位置する内側部分と、より外側に位置する外側部分とを含み、
前記防振材に対して前記荷重が作用していない状態において、前記内側部分の高さが前記外側部分の高さより小さい、請求項1に記載の防振材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振材に係り、特に、振動体の下方に配置され、振動体の振動の伝播を抑制する防振材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内において洗濯機等の機器が利用される際、その機器の運転に伴って振動が発生することがある。このような機器由来の振動が建物の床又は壁等に伝播されると、騒音や揺れが発生する虞がある。その対策として、機器と床面との間に防振機構を設置することは、既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、防振機構の一例として、洗濯機用の振動低減装置が記載されている。振動低減装置は、振動発生源となる可動体を収納する筐体と、防振材を有する床に接地された防振架台と、筐体と防振架台との間に配置された支持部と、を有する。特許文献1に記載された振動低減装置によれば、比較的簡易な構成により、床面に伝播する振動を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-139106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の振動低減装置では、防振架台に使用される防振材が、直方体又は立方体形状である。一方、防振材の剛性は、防振材の各辺の寸法等の形状に応じて決まる。そして、特許文献1の振動低減装置では、振動発生源である洗濯機が運転した際、洗濯物の量や洗濯槽内の水量等の変化によって防振材に作用する荷重は変化するが、直方体又は立方体形状である防振材の剛性は変化しない。これにより、洗濯機と防振材を含む系全体の固有振動数が変化し、変化後の固有振動数が適切でないと、防振性能が正常に発揮されない虞がある。以上のことから、振動発生源(以下、振動体ともいう)の荷重が運転条件等に応じて変化した場合にも、安定して防振性能を発揮し得る防振材が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、荷重に応じて防振性能が適切に発揮される防振材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の防振材によれば、振動体の下方に配置され、振動体の振動の伝播を抑制する防振材であって、防振材に対して振動体の荷重が作用していない状態において、高さが互いに異なる複数の部分を備え、荷重が鉛直方向に防振材に対して作用する場合に、複数の部分のうち、高さが最も大きい部分から順に、荷重の大きさに応じた数の部分が、荷重を受けて圧縮することにより解決される。
本発明の防振材は、振動体の荷重の変化に応じて荷重を受ける面積が変わることで剛性が調整可能な形状をなしている。これにより、荷重が変化した場合にも、振動体と防振材とがなす系の固有振動数が安定し、防振材の防振性能を適切に発揮させることができる。
【0008】
また、本発明の防振材において、防振材は複数の部分をなす複数の防振材断片を組み合わせて構成され、複数の防振材断片のうち、隣り合う2つの防振材断片が互いに当接しているとよい。
上記の構成では、防振材を構成する複数の防振材断片を個々に圧縮させることができる。そして、防振材において、圧縮する防振材断片の数が荷重に応じて変わることで、防振材の剛性を荷重に対応させて変化させることができる。
【0009】
また、本発明の防振材において、複数の部分の各々は、荷重を受ける頂面と、下端に位置する底面とを有し、複数の部分の各々の頂面は、水平な平面であり、複数の部分の各々の底面は、水平な平面であり、鉛直方向において同じ位置にあるとよい。
上記の構成では、防振材が有する複数の部分は、その頂面(上端)全体で荷重を受ける。これにより、複数の部分に作用する荷重(負荷)を分散させやすくなる。この結果、防振材は、バランスよく振動体の荷重を受けることができ、安定した状態で防振性能を発揮することができる。
【0010】
また、本発明の防振材において、防振材を鉛直方向から見た場合に、防振材の中心を通り、鉛直方向に平行な線を防振材の中心線としたときに、中心線を含む切断面にて切断された防振材の断面形状が、中心線を基準に対称な形状であるとよい。
上記の構成によれば、防振材の断面形状が対称(線対称)な形状であるため、防振材は、よりバランスよく振動体の荷重を受けることができ、より安定した状態で防振性能を発揮することができる。
【0011】
また、本発明の防振材において、隣り合う2つの防振材断片のうち、一方の防振材断片は、他方の防振材断片の外側に配置されて他方の防振材断片を取り囲んでいてもよい。
上記の構成では、荷重が増加して圧縮する防振材断片の数が変化した場合、防振材において荷重を受ける面が、防振材の中心から相似状に拡がる。これにより、防振材は、より一層安定した状態で防振性能を発揮することができる。
【0012】
また、本発明の防振材において、複数の部分は、防振材を鉛直方向から見た場合に、より内側に位置する内側部分と、より外側に位置する外側部分と、を含み、防振材に対して荷重が作用していない状態である場合に、内側部分の高さが外側部分の高さより大きくてもよい。
上記の構成によれば、防振材に対して振動体の荷重が作用する場合に、内側部分の水平方向の変形を外側部分によって抑制しつつ、内側部分を鉛直方向に適切に圧縮させることができる。また、上記の構成によれば、防振材がバランスよく振動体の荷重を受けることができ、より安定した状態で防振性能を発揮することができる。さらに、上記の構成によれば、防振材がより成形し易くなる。
【0013】
また、本発明の防振材において、複数の部分が、3つ以上の部分であってもよい。
上記の構成によれば、防振材に含まれる複数の部分の数と同じ回数分、防振材の剛性を段階的に変えることができる。これにより、振動体の荷重の変化に対して、より適切に防振材の防振性能を発揮させることができる。
【0014】
また、本発明の防振材において、複数の防振材断片には、互いに材質の異なる2以上の防振材断片が含まれてもよい。
上記の構成によれば、各防振材断片の形状と材質等を防振材断片毎に決定することができるため、防振材をより好適に設計することができる。この結果、防振材の防振性能がより良好に発揮される。
【0015】
また、本発明の防振材において、複数の部分は、鉛直方向において防振材を上側から見た場合に、より内側に位置する内側部分と、より外側に位置する外側部分とを含み、防振材に対して荷重が作用していない状態である場合に、内側部分の高さが外側部分の高さより小さくてもよい。
上記の構成によれば、内側部分の高さが外側部分の高さより大きい構成に比べて、荷重(特に、比較的軽量の荷重)をより広い面で荷重を受けることができ、振動体の支持状態をより安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、振動体の荷重の変化に対応して防振性能を適切に発揮することができる防振材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係る防振材を含む防振架台を示す概略図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る非圧縮状態の防振材の斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る非圧縮状態の防振材の投影図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る非圧縮状態の防振材の断面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る圧縮状態の防振材の断面図であり、図の左側から荷重を順に大きくした場合の、各荷重の下での防振材の圧縮状態の遷移を示す。
図6】本発明の第二実施形態に係る防振材を含む防振架台を示す概略図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る防振材を含む防振架台を示す概略図である。
図8】本発明の第一変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図9】本発明の第二変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図10】本発明の第三変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図11】本発明の第四変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図12】本発明の第五変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図13】本発明の第六変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図14】本発明の第七変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図15】本発明の第八変形例に係る防振材を示す図であり、図中の上図が平面図であり、下図が断面図である。
図16】従来の防振材を含む防振架台を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、図8-15は、図中の上図は、防振材を鉛直方向において真上から見た平面図であり、下図は、図3のI-I断面に相当する面にて切断した際の断面図である。
また、図8-15の各図では、防振材に含まれる複数の部分のそれぞれの境界位置を、破線にて表している。
また、図1、6、7及び16では、説明を分かり易くするために各部材を幾分簡略化及び模式化して図示しており、図中に示す各部材の寸法及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
【0019】
また、以下の説明において、「平面視」とは、鉛直方向において対象の部材を真上(すなわち、鉛直方向の上側)から見ることを意味し、「平面形状」とは、対象の部材を平面視したときの当該部材の外形形状を意味する。
また、以下の説明において、「一致」、「同じ」及び「同一」という文言には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、以下の説明では、特に断る場合を除き、本発明を構成する各機器又は各部材を使用している状況(換言すると、本発明を実施している状況)を想定し、その状況での各機器又は各部材の位置、形状及び状態等について説明することとする。
【0020】
[本発明の各実施形態の全体構成]
本発明の各実施形態に共通の構成においては、図1に示すように、上側から、振動体1、防振架台2及び設置面3がこの順で並んで配置されている。
【0021】
振動体1は、例えば住宅又は施設等の建物内に設置され、横型回転ドラム式洗濯機(以下、単に洗濯機という)等の機器である。防振架台2は、防振材21と載置プレート22とを備え、例えば、洗濯機用の架台である。設置面3は、例えば、建物の各階の床面、又は床面上に設置された支持板若しくは支持台の上面等の面である。
以下では、防振材21及び載置プレート22を含む防振架台2と振動体1とをまとめて一つの系とみなし、本発明の防振材21の特徴等について説明する際には、適宜、系の振動特性(例えば、固有振動数等)について言及することとする。
【0022】
振動体1を構成する洗濯機は、公知の構成であり、図1に示すように、筐体11と支持部12と振動源13とを備える。振動体1は、防振架台2の載置プレート22に載置された状態で運転する。振動源13は、筐体11内の回転体、詳しくは横型回転ドラムであり、回転運動等の規則的な運動を行うことにより、その運動に起因した振動、特に鉛直方向の振動が洗濯機にて発生する。この振動は、筐体11を通じて洗濯機周辺の部材に伝わり、さらに、洗濯機が設置された階の床や壁に伝播する。
なお、振動体1である洗濯機は、横型回転ドラム式洗濯機に限定されず、鉛直方向に対して傾斜した回転軸を中心に回転する洗濯槽を有する斜めドラム式の洗濯機でもよい。また、振動体1は、洗濯機に限定されず、鉛直方向と交差する回転軸を中心に回転する回転体を内部に備え、この回転体の回転動作に起因した振動を発生させるものであれば、洗濯機以外の機器でもよい。
【0023】
また、振動体1である洗濯機の荷重(重量)は、洗濯機の種類や仕様、洗濯物の投入量、及び保有水量等に応じて大きく変化する。
【0024】
防振架台2は、図1に示すように、防振材21と載置プレート22と設置プレート23とを備える。防振架台2は、設置面3上に設置され、鉛直方向において振動体1と設置面3の間に介在し、振動体1からの振動が設置面3側に伝播することを防止する防振機構である。
【0025】
載置プレート22は、図1に示すように、振動体1(洗濯機)が載置される板材であり、詳しくは、振動体1の支持部12が上面に載置されている。本発明の各実施形態に係る載置プレート22は、外縁が方形をなした平面形状を有する。
なお、載置プレート22の平面形状は特に限定されず、例えば、軽量化のために、載置プレート22の中央部に穴が打ち抜かれてもよい。また、載置プレート22が防水パンとして兼用されてもよい。また、載置プレート22は、必ずしも設けられなくてもよく、振動体1の支持部12が防振材21に直接載置されてもよい。
【0026】
設置プレート23は、図1に示すように、設置面3上に設置される板材であり、防振架台2のベースとして用いられる。設置面3は、水平な平面であり、例えば、建物内において洗濯機が配置される階の床面である。本発明の各実施形態に係る設置プレート23は、外縁が方形をなす平面形状を有する。設置プレート23の平面形状は、平面視での載置プレート22の平面形状と略同一である。そして、防振架台2を平面視した場合に、設置プレート23の外縁と載置プレート22の外縁とが一致するように、設置プレート23及び載置プレート22が上下方向に重ねられて配置されている。
なお、設置プレート23の平面形状は特に限定されず、例えば、軽量化のために、設置プレート23の中央部に穴が打ち抜かれていてもよい。また、設置プレート23は、必ずしも設けられなくてもよく、防振材21が設置面3に直接載置されてもよい。
【0027】
防振材21は、振動体1の下方に配置され、振動体1から設置面3への振動の伝播を抑制する部材である。防振材21は、図1に示すように、鉛直方向において設置プレート23と載置プレート22との間に介在し、載置プレート22を支えることで、振動体1である洗濯機の荷重を、載置プレート22を介して受け、洗濯機(振動体1)からの振動を抑制する(減衰させる)。
なお、設置プレート23と載置プレート22との間に配置される防振材21の数は、1つ以上であればよく、2つ以上が好ましく、4つ以上がより好ましい。2つ以上の防振材21を用いる場合、各防振材21は、バランスよく配置されるのが好ましく、詳しくは、2以上の防振材21が載置プレート22の中心を基準にして対称(点対称)な位置に配置されるのが好ましい。また、各防振材21は、系全体を平面視した場合において、振動体1の支持部12(具体的には、各防振材21にとって最寄りの支持部12)よりも外側に配置されるのが好ましい。
【0028】
防振材21は、防振ゴム等のような弾性体又は粘弾性体からなり、高さ(厚さ)を有し、鉛直方向に荷重を受けることで、鉛直方向に沿って圧縮するように構成されている。また、本発明の各実施形態に係る防振材21は、図2及び3に示すように、非圧縮状態において、高さが互いに異なる複数の部分21a、21b、21cを備える。ここで、非圧縮状態とは、防振材21に対して振動体1の荷重が作用していない状態、すなわち、防振材21の各部が圧縮していない状態を意味する。これに対して、振動体1の荷重を受けることで鉛直方向に圧縮している防振材21の状態を、以下では圧縮状態と呼ぶこととする。なお、図1に示す構成において、防振材21は圧縮状態にあり、詳しくは、後述する低重量圧縮状態にある。
【0029】
本発明の各実施形態において、防振材21に含まれる複数の部分21a、21b、21cは、それぞれ圧縮可能であり、また、荷重の変化に応じて圧縮する部分の数が変化する。換言すると、防振材21において荷重を受ける面の面積は、荷重に応じて変動する。
【0030】
[本発明の第一実施形態]
以下に、本発明の第一実施形態に係る防振材21の構成について、図2~5を参照しながら詳細に説明する。図3及び4は、非圧縮状態の防振材21を示す図であり、図3は、投影図を、図4は、図3のI-I断面を示している。図5は段階的に圧縮している防振材21の遷移を示す断面図である。
【0031】
第一実施形態に係る防振材21は、図2及び3に示すように複数の部分21a、21b、21cを有し、非圧縮状態では、各部分の高さが異なっている。また、複数の部分21a、21b、21cは、図2に示すように、平面視でより内側に位置する内側部分と、より外側に位置する外側部分とを含み、非圧縮状態において、内側部分の高さが外側部分の高さより大きい。ここで、内側とは、平面視での防振材21の中心により近い側を意味し、外側とは、防振材21の中心からより離れる側を意味する。また、内側部分と外側部分とは、互いに相対的な概念であり、防振材21が備える複数の部分の中で注目する2つの部分のうち、中心に近い方の部分が内側部分に該当し、中心から離れた方の部分が外側部分に該当する。
【0032】
さらに、第一実施形態において、防振材21が有する複数の部分は、図2及び3に示すように、中心部21a、中間部21b、及び最外部21cの3つの部分であり、内側からこの順に配置されている。
【0033】
第一実施形態に係る防振材21の形状について説明すると、防振材21の平面形状は、図2及び3に示すように、方形(詳しくは正方形)をなしている。また、防振材21のうち、上端部より下側に位置する部分は、略四角柱形状をなしており、防振材21の上端部は、図3に示すように、中心部21aから外側に向かって階段状に高さが低くなる略ピラミッド形状をなしている。
【0034】
つまり、第一実施形態に係る防振材21では、非圧縮状態にあるとき、内側部分の高さが外側部分の高さより大きく、詳しくは、中心部21aが最も高く、同心状に外側に向かうにつれて高さが段階的に小さくなっている。より詳しく説明すると、図3に示すように、中心部21aと隣り合う中間部21bは、中心部21aの高さよりも小さい高さを有し、中心部21aの外側で中心部21aを囲んでいる。また、中心部21aとは反対側で中間部21bと隣り合う最外部21cは、中間部21bの高さよりも小さい高さを有し、中間部21bの外側で中間部21bを取り囲んでいる。
【0035】
また、第一実施形態において、中心部21aの外縁、並びに中間部21b及び最外部21cの各々の外縁及び内縁は、平面形状は、方形(詳しくは、正方形)をなしている。また、上記の各部分は、図3に示すように、頂面と底面とを有する。各部分の頂面は、各部分の上端に位置し、載置プレート22を介して振動体1の荷重を受ける面であり、水平な平面である。各部分の底面は、各部分の下端をなし、設置プレート23上に載る面であり、水平な面である。中心部21a、中間部21b及び最外部21cの各々の底面は、同一平面をなすように連続しており、換言すると、鉛直方向において同じ位置にある。
【0036】
防振材21の断面形状は、図4に示すように、中心線を基準に対称(線対称)である。すなわち、防振材21の断面では、中心線を基準にして、中心部21a、中間部21b、及び最外部21cのそれぞれが対称的に配置されている。ここで、防振材21の断面とは、中心線を含む切断面にて防振材21を切断した際の断面であり、防振材21の中心線とは、平面視での防振材21の中心を通り、且つ、鉛直方向に平行な線である。
なお、切断面は、図3のI-I面に限定されず、中心線を含む任意の平面とすることができる。そして、第一実施形態に係る防振材21については、任意の切断面にて切断した際の断面形状が、中心線を基準に対称(線対称)となる。
【0037】
第一実施形態では、防振材21に含まれる3つの部分が、断片化されており、厳密には、3つのピース(以下、防振材断片210)に分割されている。つまり、第一実施形態に係る防振材21は、3つの部分をなす3つの防振材断片210を組み合わせて構成されている。より詳しく説明すると、第一実施形態に係る防振材21を構成する3つの防振材断片210は、図4に示すように、中心部21aをなす防振材断片210である中心部断片210aと、中間部21bをなす防振材断片210である中間部断片210bと、最外部21cをなす防振材断片210である最外部断片210cとを含む。
【0038】
中心部断片210aは、四角柱形状であり、3つの防振材断片210の中で最も大きい高さを有する。
中間部断片210bは、角筒形状であり、内側には貫通した開口部が設けられている。中間部断片210bの開口部の平面形状は、略方形をなし、その縁は、平面視での中心部断片210aの外縁と略一致する。また、中間部断片210bは、3つの防振材断片210の中で二番目に大きい高さを有する。
最外部断片210cは、角筒形状であり、内側には貫通した開口部が設けられている。最外部断片210cの開口部の平面形状は、略方形をなし、その縁は、平面視での中間部断片210bの外縁と略一致する。また、最外部断片210cは、3つの防振材断片210の中で最も小さい高さを有する。
なお、3つの防振材断片210のそれぞれの詳細形状等は、振動体1の想定荷重の範囲内で十分な防振性能が発揮されるように設計されるのが好ましい。
【0039】
そして、中心部断片210aが中間部断片210bの開口部内に嵌め込まれ、且つ、中間部断片210bが最外部断片210cの開口部内に嵌め込まれることで、複数(具体的には、3つ)の防振材断片210が組み合わされて一体化する。これにより、前述した形状を有する防振材21、すなわち第一実施形態に係る防振材21が構成される。このようにして構成された防振材21では、3つの防振材断片210のそれぞれの底面が同一平面上に並び、鉛直方向において同じ位置に配置されている。
【0040】
また、上記の防振材21では、図4に示すように、3つの防振材断片210のうち、隣り合う2つの防振材断片210が、互いに当接して接合している。防振材断片210同士を接合する手段については、特に限定されないが、ホットメルト等の接着剤、又は両面型の接着テープ、あるは、ビス又はステープラ用の針等のような締結具を用いてもよい。
【0041】
第一実施形態に係る防振材21を構成する3つの防振材断片210は、同じ材質でもよい。あるいは、3つの防振材断片210には、互いに材質の異なる2以上の防振材断片210が含まれてもよい。各防振材断片210の材質(具体的には、弾性体及び粘弾性体の種類)は、特に限定されないが、振動体1の想定荷重の範囲内で十分な防振性能が発揮されるように、形状と物性値(例えば、ヤング率)との組み合わせによって好適な剛性を達成できるものが好ましい。
なお、防振材断片210を粘弾性体によって構成する場合、粘弾性体としては、防振ゴム、防振性能を有するプラスチック材、若しくはその他の高分子材料等が利用可能である。
【0042】
また、設置プレート23と載置プレート22との間に複数の防振材21を配置する場合、防振材21の間で、防振材21を構成する3つの防振材断片210の材質が同一であってもよいし、あるいは、3つの防振材断片210の一部又は全部の材質が異なってもよい。
【0043】
第一実施形態に係る防振材21の圧縮状態の遷移について、図4及び5を参照しながら詳しく説明する。非圧縮状態では、図4に示すように、振動体1の荷重が防振材21に作用していないため、防振材21各部が圧縮しておらず、防振材21の形状に変化はない。
【0044】
一方、振動体1の荷重が防振材21に作用した場合には、図5に示すように、非圧縮状態から圧縮状態へ移行する。具体的には、比較的低重量の荷重が鉛直方向に加えられた場合、防振材21の中心部21aのみが圧縮される。この状態を、低重量圧縮状態と呼ぶ。このとき、防振材21全体の剛性は、主として中心部21aの形状及び物性(ヤング率等)に応じて決まる。
また、低重量より大きい中重量の荷重が防振材21に作用した場合、防振材21の中心部21a及び中間部21bの2つが圧縮される。この状態を、中重量圧縮状態と呼ぶ。このとき、互いに隣り合う2つの部分21a、21bが圧縮されるため、防振材21全体の剛性は、これら2つの部分の各々の形状及び物性(ヤング率等)に応じて決まる。
また、中重量より大きい高重量の荷重が防振材21に作用した場合、防振材21において中心部21a、中間部21b、及び最外部21cのすべてが圧縮される。この状態を、高重量圧縮状態と呼ぶ。このとき、防振材21における3つの部分すべてが圧縮されるため、防振材21全体の剛性は、3つの部分のすべての形状及び物性(ヤング率等)に応じて決まる。
【0045】
以上のように、振動体1の荷重(厳密には、載置プレート22を加えた荷重)が防振材21に作用した状態では、防振材21に含まれる3つの部分のうち、高さが最も大きい中心部21aから圧縮し、荷重の増加に伴い、中間部21b、最外部21cが順に追加されて圧縮される。つまり、鉛直下向きの荷重が防振材21に対して作用した場合、上記3つの部分のうち、高さが最も大きい部分から順に、荷重の大きさに応じた数の部分が、荷重を受けて圧縮する。
【0046】
詳しく説明すると、荷重が低重量から中重量又は高重量に増加した場合、あるいは中重量から高重量に増加した場合には、それに伴い、荷重を受けて圧縮する部分(換言すると、圧縮する防振材断片210)の数が増える。他方、荷重が高重量から中重量又は低重量に減少した場合、あるいは中重量から低重量に減少した場合、それに伴い、荷重を受けて圧縮する部分(圧縮する防振材断片210)の数が減る。このような構成によれば、防振材21が受ける荷重の変化に応じて、防振材21において荷重を受ける面積が段階的に変化するため、防振材21(詳しくは、荷重を受けて圧縮した部分)の剛性を段階的に変化させることができる。
なお、防振材21において荷重を受けて圧縮される部分の数が変化する時点での荷重の大きさ、すなわち、剛性が変化する時点の荷重は、系全体の固有振動数について設定される目標範囲に応じて決められる。
【0047】
[第一実施形態に係る防振材の設計手順]
以下に、第一実施形態に係る防振材21の設計手順の一例として、防振材断片210の形状、具体的には各断片の高さ及び平面サイズを決める設計手順について概説する。ここで、平面サイズとは、水平面に投影した各断片の面積を意味し、水平面にて各断片を切断した際の断面積と同じである。
以下、中心部断片、中間部断片、及び最外部断片の各々の高さについては、H1、H2、H3(単位はmm)とし、各々の平面サイズについては、A1、A2、A3(単位はmm)とする。
【0048】
系全体の固有振動数fnは、下記の式1で求められる。なお、式1中のKは防振材21の剛性、mは系全体の質量(単位はkg)を表す。
式1:fn=1/2π×√(K/m)
【0049】
また、防振材21が含む複数の防振材断片210の各々の剛性Kiは、下記の式2で求められる。なお、式2中、Eiは防振材断片210のヤング率(単位はN/mm)を表し、Aiは防振材断片210の平面サイズを表し、Hiは防振材断片210の高さを表す。また、iは、各防振材断片210と対応する数字であり、中心部断片210aについてはi=1、中間部断片210bについてはi=2、最外部断片210cについてはi=3とする。
式2:Ki=Ei×Ai/Hi
【0050】
防振材21を設計する場合には、上記の式1及び2から、振動体1の荷重が防振材21の許容荷重の範囲内になり、且つ、許容荷重の範囲内において系全体の固有振動数fnが目標範囲内になるように、各防振材断片210の材質(詳しくは、ヤング率)と形状(詳しくは、高さ及び平面サイズ)を決定する。第一実施形態では、防振材21が段階的に圧縮する場合(すなわち、圧縮する防振材断片210の数が段階的に増える場合)を想定し、各圧縮段階と対応する荷重及び系の目標振動数を設定し、その設定値を達成し得る防振材断片210の形状及び材質を決定する。
【0051】
また、第一実施形態では、荷重、系の固有振動数、並びに防振材断片の形状及び材質の対応関係を単純化することにより、簡略化された手法(計算式)を用いて各防振材断片210の形状及び材質を決定する。具体的には、先ず、振動体1の想定質量について、最大値Mmax、最小値Mmin、及び中央値Mmidを設定する。これらの値の単位は、いずれもkgである。また、系の固有振動数fnの目標範囲について、上限値fmax、下限値fmin、及び中央値fmidを設定する。これらの値の単位は、いずれもHzである。
【0052】
次に、以下に示す条件j1~j6を満たすように、各防振材断片210の高さHi及び平面サイズAiを決める。具体的には、第一のステップとして、下記の条件j1及びj2を満たし得るように中心部断片の高さH1と平面サイズA1を算出する。
条件j1:fmax≧((1/2π)×√(K1/Mmin))
条件j2:((Mmin×g)/K1)<(H1-H2)
【0053】
条件j1は、防振材21に作用する荷重が最小値Mmin×gである場合に、その荷重を中心部断片210aにのみ負担させた状態(低重量圧縮状態)で、系全体の固有振動数fnが目標範囲の上限値fmax以下であるための条件である。条件j2は、防振材21に作用する荷重が最小値Mmin×gである場合には、中心部断片210aのみが荷重を受けて圧縮するための条件である。なお、条件j2、j4、j6中のgは、重力加速度(単位はm/s)である。
そして、中心部断片210aのヤング率E1を設定した上で、上記条件j1、j2を満たすH1及びA1を、中心部断片210aのヤング率E1に基づいて導出する。
【0054】
第二のステップとして、第一のステップにて導出された中心部断片210aの高さH1と平面サイズA1とを踏まえて、下記の条件j3及びj4を満たし得るように中間部断片210bの高さH2と平面サイズA2を算出する。
条件j3:fmid=(1/2π)×√((K1+K1)/Mmid)
条件j4:(H1-H2)<(Mmid×g)/K1,
(Mmid×g)/(K1+K2)<(H1-H3)
【0055】
条件j3は、防振材21に作用する荷重が中央値Mmid×gである場合に、その荷重を中心部断片210a及び中間部断片210bに負担させた状態(中重量圧縮状態)で、系全体の固有振動数fnが目標範囲の中央値fmidになるための条件である。条件j4は、防振材21に作用する荷重が中央値Mmid×gである場合に、中心部断片210a及び中間部断片210bが荷重を受けて圧縮するための条件である。
そして、中間部断片210bのヤング率E2を設定した上で、上記条件j3、j4を満たすH2及びA2を、中間部断片210bのヤング率E2、及び、第一のステップにて算出した中心部断片210aの高さH1及び平面サイズA1に基づいて導出する。
【0056】
第三のステップとして、第一及び第二のステップにて導出された中心部断片210a及び中間部断片210bの各々の高さH1、H2と平面サイズA1、A2とを踏まえて、下記の条件j5及びj6を満たし得るように最外部断片210cの高さH3と平面サイズA3を算出する。
条件j5:fmin≦(1/2π)×√((K1+K2+K3)/Mmax)
条件j6:(H1-H3)<(Mmax×g)/(K1+K2)
【0057】
条件j5は、防振材21に作用する荷重が最大値Mmax×gである場合に、その荷重を中心部断片210a、中間部断片210b、及び最外部断片210cのすべてに負担させた状態(高重量圧縮状態)で、系全体の固有振動数fnが目標範囲の下限値fmin以上になるための条件である。条件j6は、防振材21に作用する荷重が最大値Mmax×gである場合に、上記3つの防振材断片210すべてが荷重を受けて圧縮するための条件である。
そして、最外部断片210cのヤング率E3を設定した上で、上記条件j5、j6を満たすH3及びA3を、最外部断片210cのヤング率E3、及び、第一及び第二のステップにて算出した中心部断片210a及び中間部断片210bの各々の高さH1、H2及び平面サイズA1、A2に基づいて導出する。
【0058】
以上のように、第一実施形態では、簡略化された手順により、振動体1の想定荷重及び系の目標振動数をパラメータとし、各防振材断片210の材質の物性(ヤング率等)に基づいて各防振材断片210の形状を決めることができる。
【0059】
[本発明の第一実施形態に係る防振材の効果について]
本発明の第一実施形態に係る防振材21は、より安定した防振性能を発揮することができる。
詳しく説明すると、一般的な防振材21Xは、図16に示すように、例えば直方体又は立方体の形状である。このような防振材21Xでは、振動体1の荷重に関係なく、荷重を受ける面積が一定になる。また、防振材21Xの剛性は、その形状(具体的には、防振材21Xの高さ及び平面サイズ等)に基づいて決まるが、直方体又は立方体形状であるため、振動体1の荷重が変わっても剛性が変わらないことになる。一方で、系全体の固有振動数は、前述した式1から分かるように、荷重及び防振材21Xの剛性に応じて変化し、防振材21Xの剛性が一定である場合には、荷重が大きくなるほど小さくなる。このように系全体の固有振動数が変化すると、系の振動特性が変わり、防振架台による防振性能が変動するため、適切な防振性能が発揮されない虞がある。
【0060】
これに対して、第一実施形態に係る防振材21では、振動体1の荷重を受けて圧縮する部分(詳しくは、防振材断片210)の数が、当該荷重の大きさに応じて変化する。具体的には、荷重が増加して圧縮する部分の数が増えた場合、防振材21において荷重を受ける面が、防振材21の中心から段階的に(相似状に)拡がる。このように荷重を受ける面積が増えることで防振材21の剛性が増加する。つまり、第一実施形態では、荷重が変化した場合に、その重量に応じて防振材21の剛性を変えることができ、これにより系全体の固有振動数を維持する(安定させる)ことができる。この結果、第一実施形態では、想定範囲での荷重の変化に対して、適切な防振性能を発揮することができる。
【0061】
また、第一実施形態において、防振材21に含まれる複数の部分(つまり、各防振材断片210)は、その頂面(上端)が水平な平面であるため、頂面全体で荷重を受ける。これにより、防振材21の各部分に作用する荷重(負荷)を分散させやすくなる。この結果、防振材21は、バランスよく振動体1の荷重を受けることができ、より安定した状態で防振性能を発揮することができる。
【0062】
さらに、第一実施形態では、防振材21に対して振動体1の荷重が作用した際に、より内側に位置する部分(内側部分)の水平方向の変形、詳しくは、内側部分の面外変形又はねじれを、より外側に位置する部分(外側部分)によって規制することができる。これにより、荷重が内側部分に対して作用した際には、内側部分が鉛直方向に適切に圧縮する。この結果、防振材21は、バランスよく振動体1の荷重を受けることができ、より一層安定した状態で防振性能を発揮することができる。
【0063】
また、第一実施形態に係る防振材21の形状、すなわち、中心に近い側から外側に向かって高さが段階的に小さくなる形状であれば、防振材21の成形がより容易になる。
【0064】
さらにまた、第一実施形態では、防振材21が複数の部分をなす複数の防振材断片210を組み合わせて構成されており、複数の防振材断片210のうち、隣り合う2つの防振材断片210が互いに当接している。かかる構成では、複数の防振材断片210を個々に圧縮させることができるので、防振材21において圧縮される部分を荷重に応じて変えることが、より容易になる。つまり、第一実施形態では、防振材21の剛性を荷重と対応させて変えることが、より容易になる。
【0065】
[本発明の第二実施形態に係る防振架台について]
次に、本発明の第二実施形態に係る防振架台(以下、防振架台2A)について図6を参照しながら説明する。第二実施形態は、防振材21の基本的な形状及び材質が第一実施形態と共通する一方で、図6に示すように、防振架台2Aの内部構造、並びに防振材21の個数及び配置等の点で第一実施形態と相違する。
【0066】
防振架台2Aは、図6に示すように、下段防振材212と上段防振材211と中間プレート24とをさらに備える。中間プレート24は、鉛直方向において、載置プレート22と設置プレート23との間に配置された板材である。下段防振材212及び上段防振材211は、いずれも、第一実施形態に係る防振材21と同じ形状及び材質である。中間プレート24の下方には下段防振材212が配置されており、中間プレート24の上方には上段防振材211が配置されている。つまり、下段防振材212と上段防振材211とが、中間プレート24を挟んで上下に並べられて配置されている。このように鉛直方向に上段防振材211と下段防振材212とを直列状態で並べて配置することで、より良好な防振性能が発揮される。
【0067】
中間プレート24の平面形状は、方形をなしており、平面サイズが載置プレート22及び設置プレート23と略同一である。中間プレート24は、防振架台2Aを平面視した際に中間プレート24の外縁と載置プレート22の外縁とが一致するように、これら2つのプレートを上下に重ねた状態で配置される。
なお、中間プレート24は、中央部には穴が打ち抜かれた構成であってもよい。また、中間プレート24の平面形状は、防振架台2Aの安定性が確保されるものであれば特に限定されず、任意の形状でもよい。
【0068】
下段防振材212は、図6に示すように、方形の中間プレート24におけるそれぞれの角部分の下面と設置プレート23との間に、1つずつ配置されている。各下段防振材212は、中間プレート24の角部の下面及び設置プレート23の上面に接し、中間プレート24と設置プレート23との間に挟まれている。中間プレート24と設置プレート23との間に配置される下段防振材212の個数は、少なくとも1つであればよいが、バランスよく各角部分に同数の下段防振材212が配置されるのが好ましい。
上段防振材211は、図6に示すように、鉛直方向において、中間プレート24の上面と載置プレート22との間に配置され、詳しくは、中間プレート24の角部分上面と載置プレート22との間に1つずつ配置されている。各上段防振材211は、中間プレート24の角部分の上面及び載置プレート22に接し、中間プレート24と載置プレート22との間に挟まれている。上段防振材211の個数は、少なくとも1つであればよいが、バランスよく各角部分に同数の上段防振材211が配置されるのが好ましい。
【0069】
[本発明の第三実施形態に係る防振架台について]
次に、本発明の第三実施形態に係る防振架台(以下、防振架台2B)について図7を参照しながら説明する。第三実施形態は、防振架台2B内部の基本的な構造、並びに防振材21の形状、材質及び個数等については第二実施形態と共通である一方で、図7に示すように、防振架台2B内に設けられた中間プレートの形状、及び防振材21の配置等の点で第二実施形態と相違する。以下では、第三実施形態に関して、第二実施形態との相違点を中心に説明することとする。
【0070】
第三実施形態では、図7に示すように、中間プレートの変形例として、階段状中間プレート25が設けられている。階段状中間プレート25は、正面視で皿型に屈曲しており、4つの角部のそれぞれに、段差部25cを介して互いに隣り合う2つの部分として、上段部25a及び下段部25bを有する。上段部25aは、段差部25cが設けられている分だけ、下段部25bよりも高い位置にある。また、図7に示すように、階段状中間プレート25の上段部25aの直下には下段防振材212が配置されており、階段状中間プレート25の下段部25bの直上には上段防振材211が配置されている。
【0071】
さらに、第三実施形態では、階段状中間プレート25に形成された段差部25cの大きさ(つまり、上段部25aと下段部25bとの高低差)が適切に設計されている。これにより、図7から分かるように、下段防振材212の上端に位置する頂面が、鉛直方向において上段防振材211の下端に位置する底面よりも上方に位置している。換言すると、鉛直方向において、上段防振材211が配置された範囲と、下段防振材212が配置された範囲とが一部重複している。このような構成によれば、上下に複数の防振材を配置して防振性能を向上させるとともに、第二実施形態に比べて、鉛直方向において防振材21の設置スペースが小さくなり、防振架台2Bをよりコンパクトにすることができる。
なお、第三実施形態において、上段防振材211及び下段防振材212は、いずれも、第一実施形態に係る上段防振材211及び下段防振材212と同じ形状及び材質である。
【0072】
[本発明に関するその他の実施形態]
以上までに、本発明の防振材に関して、幾つかの実施形態を例に挙げて説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0073】
上述した実施形態に係る防振材21では、防振材における複数の部分が、それぞれが断片化された複数の防振材断片210によって構成されていることとした。ただし、これに限定されず、図11に示す防振材621のように、防振材621における複数の部分621a、621b、621cが断片化されておらず、一部品として一体化されていてもよい。このような構成によれば、複数の防振材断片を個々に製造し、複数の防振材断片から一つの防振材を組み立てる作業が不要になるため、より容易に防振材を作成することができる。
【0074】
また、本発明の防振材は、非圧縮状態において高さが互いに異なる複数の部分を有するものであればよく、上述した実施形態以外の形状であってもよい。
具体的に説明すると、上述した実施形態に係る防振材21では、防振材における複数の部分のうち、互いに隣り合う2つの部分において、より内側に位置する部分(内側部分)が、より外側に位置する部分(外側部分)に取り囲まれている。また、上述した実施形態では、非圧縮状態において内側部分の高さが外側部分の高さよりも大きくなっている。ただし、これに限定されるものではなく、図8に示す防振材321のように、内側部分の高さが外側部分の高さよりも小さくなっていてもよい。なお、図8に示す防振材321では、中心部321aの高さが最も小さく、次いで、中間部321b、最外部321cの順に高さが小さくなっている。
上記の構成によれば、防振材321が低重量圧縮状態である場合に、最外部321cの頂面にて荷重を受けるため、内側部分の高さが外側部分の高さより大きい場合に比べて、防振材321において荷重を受ける面積がより大きくなる。この結果、防振材321が、低重量圧縮状態において、より広い面で荷重を受けることができる。これにより、防振材321を組み込んだ防振架台は、振動体1をより安定して支持できるようになる。
なお、防振材321において、複数の部分(具体的には、中心部321a、中間部321b、及び最外部321c)は、互いに断片化された複数の防振材断片によって構成されてもよいし、一部品として一体化された(一体成形された)ものでもよい。
【0075】
また、非圧縮状態において高さが互いに異なる複数の部分を有する防振材の形状については、他の例も考えられ、例えば、図9、10、12~15に示す形状であってもよい。
具体的に説明すると、上述した実施形態に係る防振材21では、複数の部分の各々の底面が同一平面上にあり、各部分の頂面が鉛直方向において互いに異なる位置にあることとした。ただし、これに限定されず、図9に示す防振材421のように、複数の部分421a、421b、421cの各々の頂面が、同一平面上にある一方で、各部分の底面が、鉛直方向において異なる位置にあってもよい。図9に示す構成では、中心部421aの底面が最も低い位置にあり、中心部421a、中間部421b、最外部421cの順で底面が低くなっている。このような構成によれば、図9に示すように、防振材421の頂面が水平な平面となるため、防振材421を載置プレート22に容易に取り付けることができる。
なお、図9に示す防振材421において、複数の部分(具体的には、中心部421a、中間部421b、及び最外部421c)は、互いに断片化された複数の防振材断片によって構成されてもよいし、一部品として一体化された(一体成形された)ものでもよい。
【0076】
また、上述した実施形態に係る防振材21では、防振材における複数の部分のうち、互いに隣り合う2つの部分において、より内側に位置する部分(内側部分)が、より外側に位置する部分(外側部分)に取り囲まれていることとした。ただし、これに限定されず、図10に示すように、防振材521における複数の部分の各々が直方体であり、一列に並んだ状態(横並びの状態)で配置されてもよい。図10に示す構成では、中心部521aの両脇に中間部521bが配置されてり、中間部521bの外側で中間部521bと隣り合う位置に最外部521cが配置されている。このような構成によれば、防振材521の構造が簡素になるため、防振材をより容易に設計し、より容易に成形することができる。
なお、図10に示す防振材521において、複数の部分(具体的には、中心部521a、中間部521b、及び最外部521c)は、互いに断片化された複数の防振材断片によって構成されてもよいし、一部品として一体化された(一体成形された)ものでもよい。
【0077】
また、上述した実施形態に係る防振材21では、防振材に含まれる複数の部分、すなわち高さが異なる部分の数が3つであることとした。ただし、部分の数は、特に限定されず、図12及び13に示すように、防振材に含まれる部分の数は、4つ以上であってもよく、あるいは2つでもよい。このように防振材に含まれる複数の部分の数が変わることで、防振材の剛性が段階的に変わる回数を増減させることができる。防振材の剛性が変わる回数、すなわち防振材に含まれる複数の部分の数は、振動体1の荷重について想定される変動範囲に基づいて適宜設定すればよい。
なお、図12又は13に示す防振材721、821において、複数の部分(図12の防振材721では、4つの部分721a~721dであり、図13の防振材821では、2つの部分821a、821b)は、互いに断片化された複数の防振材断片によって構成されてもよいし、一部品として一体化された(一体成形された)ものでもよい。
【0078】
また、上述した実施形態に係る防振材21の平面形状は、方形(詳しくは正方形又は長方形)をなしていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、防振材の平面形状は、方形以外の形、例えば、図14に示すように三角形でもよく、あるいは、図15に示すように円形でもよい。
なお、図14又は15に示す防振材921及び1021において、複数の部分(図14及び15では、3つの部分921a~921c/1021a~1021c)は、互いに断片化された複数の防振材断片によって構成されてもよいし、一部品として一体化された(一体成形された)ものでもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 振動体
2,2A,2B 防振架台
3 設置面
11 筐体
12 支持部
13 振動源
21 防振材
21X 防振材
21a 中心部
21b 中間部
21c 最外部
22 載置プレート
23 設置プレート
24 中間プレート
25 階段状中間プレート
25a 上段部
25b 下段部
25c 段差部
210 防振材断片
210a 中心部断片
210b 中間部断片
210c 最外部断片
211 上段防振材
212 下段防振材
321,421,521,621,721,821,921,1021 防振材
321a,421a,521a,621a,921a,1021a 中心部
321b,421b,521b,621b,921b,1021b 中間部
321c,421c,521c,621c,921c,1021c 最外部
721a 中心部
721b 第一中間部
721c 第二中間部
721d 最外部
821a 中心部
821b 最外部
図1
図2
図3
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図5
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