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特開2024-25582位相補償装置、光受信器および位相補償方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025582
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】位相補償装置、光受信器および位相補償方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20240216BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20240216BHJP
   H04L 27/22 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H04B10/61
H04B10/077 190
H04L27/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129126
(22)【出願日】2022-08-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2~3年度、総務省、「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発(課題I)」研究開発委託契約に基づく開発項目「5Tbps級高速大容量・低消費電力光伝送技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】野村 義孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 久雄
(72)【発明者】
【氏名】小泉 伸和
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AA52
5K102AD15
5K102AH14
5K102AH27
5K102KA20
5K102KA39
5K102LA04
5K102LA22
5K102LA32
5K102LA52
5K102PH02
(57)【要約】
【課題】受信信号の位相反転を簡単かつ正しく検出し、位相反転補償できること。
【解決手段】位相補償装置100は、位相変調された光信号を光電変換した受信信号の位相を補償する。位相補償装置100は、受信信号に含まれる既知信号に基づき、受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部105と、位相反転検出部105が検出した位相反転の有無に基づき、受信信号の位相を位相補償する位相補償部102と、位相反転検出部105が検出した位相反転の有無に基づき、位相補償後の受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部103と、を備える。既知信号は、位相反転検出用の信号TS2を含む。位相反転検出部105は、位相反転検出用の信号TS2が示す光送信器での変調による基準となる2シンボル間の位相差分と、受信信号の2シンボル間の位相差分との差分に基づき、受信信号の位相反転の有無を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調された光信号を光電変換した受信信号の位相を補償する位相補償装置において、
前記受信信号に含まれる既知信号に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記受信信号の位相を位相補償する位相補償部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記位相補償後の前記受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部と、
を備えたことを特徴とする位相補償装置。
【請求項2】
前記既知信号は、位相反転検出用の信号を含み、
前記位相反転検出部は、
前記位相反転検出用の信号が示す光送信器での変調による基準となる2シンボル間の位相差分と、前記受信信号の2シンボル間の位相差分との差分に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位相補償装置。
【請求項3】
前記位相反転検出部は、
IQ軸上において、位相反転がない場合およびIQ軸のいずれも位相反転が生じた第1の検出状態と、I軸のみあるいはQ軸のみ位相反転が生じた第2の検出状態と、の2通りを検出し、
前記第1の検出状態は位相反転なしと判断し、前記第2の検出状態は位相反転ありと判断し、判断結果を前記位相補償部に出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の位相補償装置。
【請求項4】
前記既知信号として、時間毎に位相反転がない状態、および時間毎に位相反転がある状態でのIQ軸上の各象限のシンボル点間の位相差分の情報の組み合わせパターンを保持する記憶部を有し、
前記位相反転検出部は、
前記組み合わせパターンのなかから、受信信号の時間毎の特定の2シンボルの組み合わせに対応するシンボル点間の位相差分を参照し、IQ軸上の位相反転がない領域、あるいはIQ軸上の位相反転がある領域、のいずれであるかに基づき、位相反転の有無を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位相補償装置。
【請求項5】
前記位相補償部は、
送受信間のレーザ周波数差による光周波数オフセットを補償する光周波数オフセット補償部と、
送受信間の位相差を補償する位相雑音補償部と、を含み、
前記光周波数オフセット補償部および前記位相雑音補償部は、それぞれ、前記位相反転検出部による位相反転の有無に基づく補償を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の位相補償装置。
【請求項6】
前記位相補償部は、位相反転補償部を含み、
前記位相反転補償部は、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合には、位相補償した信号をそのまま出力し、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合には、I軸の位相反転を基準とした位相量に基づき位相反転を補償する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位相補償装置。
【請求項7】
前記位相補償部は、位相反転補償部を含み、
前記位相反転補償部は、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合には、位相補償した信号をそのまま出力し、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合には、Q軸の位相反転を基準とした位相量に基づき位相反転を補償する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位相補償装置。
【請求項8】
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合、位相反転なし、あるいはI軸およびQ軸の位相反転であり、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合、I軸のみの位相反転、あるいはQ軸のみの位相反転である、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の位相補償装置。
【請求項9】
位相変調された光信号を光電変換した受信信号を復調する光受信器において、
受信した光信号を偏波分離する90度光ハイブリッドと、
偏波分離後の光信号を光電変換する光電変換部と、
光電変換後の受信信号を復調する復調部と、を含み、
前記復調部は、
前記受信信号に対する適応等化処理を行う適応等化処理部と、
前記適応等化処理後の前記受信信号に含まれる既知信号に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記受信信号の位相を位相補償する位相補償部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記位相補償後の前記受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部と、
を備えたことを特徴とする光受信器。
【請求項10】
位相変調された光信号を光電変換した受信信号の位相を補償する位相補償方法において、
前記受信信号に含まれる既知信号に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出し、
検出した位相反転の有無に基づき、前記受信信号の位相を位相補償し、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記位相補償後の前記受信信号の位相反転を補償する、
ことを特徴とする位相補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相補償装置、光受信器および位相補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムの光送信器は、アナログの電気信号を光信号に変換する変調器を含む。変調器は、変換時に符号反転や信号の歪などが発生する可能性がある。変調器が有するオートバイアス(ABC)制御装置は、Null点にバイアス電圧を制御する動作を行うことで、信号の歪を最小にするように調整するが、位相信号は調整されることなく、送信出力される。
【0003】
変調器は、例えば、IQ変調のI軸とQ軸とで異なるNull点の設定により、同相の入力信号に対し、I軸とQ軸とで位相が反転した光信号を出力する。変調器で発生したIQ位相反転した光信号は、光送信器から伝送路を介し光受信器まで伝達される。光受信器内部においても、光信号は、90度ハイブリッドやTIA(TransImpedance Amplifier)等で修正されることなく、受信信号を処理する受信DSP(Digital Signal Processor)まで伝達される。このため、受信DSPでは、光信号を正しく復調するために、IQ位相反転を検出および補償する信号処理を行う必要がある。光受信器では、光信号の位相ゆらぎを検出し、位相補償することで、送信側と同じIQコンスタレーションを復元する。
【0004】
先行技術として、例えば、復調後の信号に対し硬判定処理を行った後の信号を差動処理した信号と、送信信号に差動処理した信号の信号パターンを比較し、IQ位相反転の有無を判定する、N乗法による位相補償の技術がある(例えば、下記特許文献1参照。)。また、送信側で挿入した複数のパイロットシンボルと予め定めた参照シンボルとに基づき、位相変動の誤差信号を算出し、フィルタ処理によりパイロットシンボル間の位相変動を推定し、位相補償する技術がある(例えば、下記特許文献2参照。)。また、光送信器において、マッハツェンダ変調器の位相反転状態を検出することで、変調後の光の位相と情報との対応関係を確定する光送信器の技術がある(例えば、下記特許文献3参照。)。また、IQチャンネルの入力信号のシンボル列と既知のシンボル列との相関値に基づき、入力信号のチャンネルを入れ替えて復調する復調装置の技術がある(例えば、下記特許文献4参照。)。また、送信側から同期信号と、予め定められた所定位置に配された複数の既知符号とを含む信号を送信し、受信側で同期信号に挟まれた既知信号のチェックによりサイクルスリップを検出し、位相補正する技術がある(例えば、下記特許文献5参照。)。また、受信側において、デジタル信号のスペクトラム重心を算出し、スペクトラム重心に基づいて推定した周波数オフセットを小さく調整することで周波数オフセットを補償する技術がある(例えば、下記特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-041666号公報
【特許文献2】国際公開第2014/126132号
【特許文献3】国際公開第2013/084366号
【特許文献4】特開2008-278173号公報
【特許文献5】特開2014-014111号公報
【特許文献6】特開2011-228819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、特許文献1のように、N乗法により位相ゆらぎを検出する場合、受信信号電界を4乗する処理が必要となり、演算量および回路規模が大きくなり、消費電力が増大してしまう。また、従来の既知シンボルを用いた位相補償では、IQの位相反転があると、送信された既知シンボル系統とは異なるシンボル系統として受信されるため、位相雑音量を誤って認識し、位相補償できない。
【0007】
これに対応するため、位相ゆらぎを補償する補償部の前段で位相反転を検出することが考えられるが、この場合、位相ゆらぎを含む信号から位相反転を検出する必要が生じる。例えば、特許文献1では、位相反転の検出は、適応等化および位相補償の後段、および誤り訂正の直前で行っている。この特許文献1では、復調後の信号に対して硬判定を用いるため、位相ゆらぎがある状態では硬判定結果に多くの判定誤りが含まれることとなり、正しく位相反転を検出することはできない。
【0008】
一つの側面では、本発明は、受信信号の位相反転を簡単かつ正しく検出し、位相反転補償できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、位相変調された光信号を光電変換した受信信号の位相を補償する位相補償装置において、前記受信信号に含まれる既知信号に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部と、前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記受信信号の位相を位相補償する位相補償部と、前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記位相補償後の前記受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部と、を備えたことを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、受信信号の位相反転を簡単かつ正しく検出し、位相反転補償できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態にかかる位相補償装置の実施例の構成図である。
図2図2は、送信信号に対する受信信号の複数の位相反転状態を示す図表である。
図3図3は、実施の形態にかかる光送受信システムの構成例を示す図である。
図4図4は、光送信器の変調器の説明図である。
図5図5は、従来のN乗法による位相補償装置の説明図である。
図6図6は、従来の4乗法による周波数オフセット検出例の説明図である。(その1)
図7図7は、従来の4乗法による周波数オフセット検出例の説明図である。(その2)
図8図8は、既知信号を用いた位相補償の説明図である。
図9図9は、既知信号を用いた周波数オフセット検出例の説明図である。(その1)
図10図10は、既知信号を用いた周波数オフセット検出例の説明図である。(その2)
図11図11は、既知信号を用いた周波数オフセット検出例の説明図である。(その3)
図12図12は、既知信号を用いた周波数オフセット検出例の説明図である。(その4)
図13図13は、送信信号に対する既知信号の挿入の説明図である。
図14図14は、位相反転検出部の構成例を示す図である。
図15図15は、位相反転検出部の位相反転検出処理例を示すフローチャートである。
図16図16は、位相反転検出部による位相反転検出例の説明図である。(その1)
図17図17は、位相反転検出部による位相反転検出例の説明図である。(その2)
図18図18は、位相反転が発生しない場合の位相補償装置の動作例を示す図である。(動作例1)
図19図19は、動作例1における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。
図20図20は、動作例1における位相雑音補償部の動作を示す図である。
図21図21は、動作例1における位相反転補償部の動作を説明する図表である。
図22図22は、I軸およびQ軸の位相反転が発生した場合の位相補償装置の動作例を示す図である。(動作例2)
図23図23は、動作例2における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。
図24図24は、動作例2における位相雑音補償部の動作を示す図である。
図25図25は、動作例2における位相反転補償部の動作を説明する図表である。
図26図26は、I軸のみ位相反転が発生した場合の位相補償装置の動作例を示す図である。(動作例3)
図27図27は、動作例3における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。
図28図28は、動作例3における位相雑音補償部の動作を示す図である。
図29図29は、動作例3における位相反転補償部の動作を説明する図表である。
図30図30は、Q軸のみ位相反転が発生した場合の位相補償装置の動作例を示す図である。(動作例4)
図31図31は、動作例4における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。
図32図32は、動作例4における位相雑音補償部の動作を示す図である。
図33図33は、動作例4における位相反転補償部の動作を説明する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、開示の位相補償装置、光受信器および位相補償方法の実施の形態を詳細に説明する。位相補償装置は、光受信器に設けられる。実施の形態の位相補償装置は、光送信器から伝送路を介して送信された光信号(送信信号)を受信処理する際、送信信号のIQコンスタレーション上の信号点(シンボル点)位相反転の有無を位相補償する前段で検出する。また、位相補償装置は、送信信号に含まれる既知信号を用いて受信信号の位相補償を行い、受信信号を復調する。
【0013】
(実施の形態の位相補償装置の概要)
図1は、実施の形態にかかる位相補償装置の実施例の構成図である。はじめに、実施の形態にかかる位相補償装置の概要について説明する。図1に示す位相補償装置100は、例えば、DSP、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により機能実現できる。位相補償装置100は、入力されるIQの受信信号に対し、適応等化処理部101、位相補償部102、位相反転補償部103、誤り訂正部104の順に接続されている。
【0014】
適応等化処理部101には、光受信器のTIA等から振幅と位相成分を含むアナログ信号をA/D変換後のデジタルの受信信号が入力され、適応等化処理を行う。位相補償部102は、既知信号を用いて受信信号に対する位相補償を行う。位相反転補償部103は、受信信号に対する位相反転の処理を行う。誤り訂正部104は、受信信号の誤り訂正を行う。
【0015】
実施の形態の位相補償装置100では、適応等化処理部101の出力分岐により、受信信号の位相反転を検出する位相反転検出部105を含む。位相反転検出部105による位相反転の検出結果は、位相反転補償部103と、位相反転付加部106に出力される。図1に示すように、実施の形態の位相補償装置100は、位相反転検出部105を位相補償部102の前段に配置している。
【0016】
また、実施の形態の位相補償装置100は、既知信号を用いて位相補償を行う。後述するが、例えば、既知信号は、光送信器が一定間隔、例えばKシンボル間隔ごとに送信データに挿入するパイロット信号PSを含む。
【0017】
図1に示す位相反転付加部106は、位相反転検出部105で検出した位相反転の状態を判断し、位相反転の状態別の位相反転の結果を位相補償部102に出力する。この位相反転付加部106は、後述する図2で説明する4通りの位相反転状態について、2通りの位相反転の結果を位相補償部102に出力する。例えば、位相反転付加部106は、位相反転がI軸のみ、あるいはQ軸のみの場合にはI軸反転のみが発生したとして、位相反転がある旨を位相補償部102に出力する。
【0018】
図1の下半部には、位相補償部102の内部構成例を示す。実施の形態の位相補償装置100は、既知信号を位相反転検出の基準として用いた位相補償を行う。位相補償部102は、前段に光周波数オフセット補償部110が配置され、後段に位相雑音補償部120が配置される。
【0019】
位相反転検出部105を位相補償部102の前段に配置する構成とすることで、実施の形態の位相補償部102の内部構成を一般的な構成とすることができる。位相反転検出部105を位相補償部102の前段に配置することで、位相補償部102は、従来のN乗法、例えば4乗法の演算部を不要とし、より簡素な演算の乗算部を用いることができるため、演算量を削減し、消費電力を低減する。
【0020】
光周波数オフセット補償部110は、共役部(第1共役部)111、乗算部(第1乗算部)112、共役部(第2共役部)113、遅延部114、乗算部(第2乗算部)115を含む。また、光周波数オフセット補償部110は、平均化/補償量算出部(第1平均化/補償量算出部)116、乗算部(第3乗算部)117を含む。
【0021】
共役部111は、位相反転付加部106の出力の共役演算を行う。乗算部112は、受信信号の分岐出力と、共役部111が出力する既知信号とを乗算する。共役部113は、乗算部112の出力の共役演算を行う。遅延部114は、共役部113の出力を所定量(例えば、1シンボル分)遅延させる。乗算部115は、乗算部112の出力と遅延部114の出力とを乗算する。平均化/補償量算出部116は、乗算部115の出力に対する平均化の処理を行い、必要な位相の補償量を算出する。乗算部117は、受信信号に補償量を乗算した出力を後段の位相雑音補償部120に出力する。
【0022】
位相雑音補償部120は、共役部121、乗算部(第4乗算部)122、平均化/補償量算出部(第2平均化/補償量算出部)123、乗算部(第5乗算部)124を含む。
【0023】
共役部121は、位相反転付加部106の出力の共役演算を行う。乗算部122は、光周波数オフセット補償部110の出力と、共役部121が出力する既知信号とを乗算する。平均化/補償量算出部123は、乗算部122の出力に対する平均化の処理を行い、必要な位相の補償量を算出する。乗算部124は、受信信号に補償量を乗算する。
【0024】
実施の形態では、受信信号から求めた2シンボル分の位相差分と、光送信器側での送信信号の変調による位相差分(2シンボルのPS間の期待される位相差分)と、の差分(Δαt)を利用してIQの位相反転を検出する。
【0025】
(位相補償部による位相反転補償の概要)
位相補償部102は、受信信号の全データの位相が等しく一定量(π)ずれた状態でも正しく動作する。そのため、位相補償部102における受信信号に対する位相反転の処理は、以下の2通りに整理することできる。上述したように、受信信号の位相反転は、光送信器の変調器で生じ、光受信器まで伝達される。
【0026】
図2は、送信信号に対する受信信号の複数の位相反転状態を示す図表である。
A.受信信号について、(1)位相反転がない場合と、(4)I軸およびQ軸の両方の位相反転が発生した場合とでは、位相がπずれた関係のため、位相補償部102は、位相反転がない場合として処理しても正しく動作する。
【0027】
B.受信信号について、(2)位相反転がI軸反転のみ発生した場合と、(3)位相反転がQ軸反転のみ発生した場合は、位相がπずれた関係のため、位相補償部102は、位相反転がI軸反転のみ発生した場合として処理しても正しく動作する。ここで、変調器による位相反転が、I軸反転(Q軸反転)のみが発生した場合は、1.位相反転がない場合と比較して、全データで等しく一定量ずれた関係でないため、正しく動作しない。
【0028】
このため、位相反転検出部105は、A.の第1の状態((1)位相反転がない、(4)I軸およびQ軸の両方の位相反転が発生した)か、B.の第2の状態((2)受信信号に位相反転がI軸反転のみが発生、(3)位相反転がQ軸反転のみ発生)かを判定する。
【0029】
位相反転検出部105は、A.の第1の状態を位相反転なし、B.の第2の状態を位相反転ありと判断する。位相反転付加部106では、B.の状態の場合、位相反転がI軸反転のみ、Q軸反転のみに関係なく、I軸反転のみが発生したとして、入力信号に位相反転を付加して出力する。位相反転補償部103では、位相反転がI軸反転のみ、Q軸反転のみに関係なく、I軸反転のみが発生したとして位相反転補償を行う。
【0030】
上記位相反転の各状態(1)~(4)における位相補償部102の位相補償の動作例の詳細は後述する。
【0031】
(光送受信システムの構成例)
図3は、実施の形態にかかる光送受信システムの構成例を示す図である。図3(a)に示す光送受信システムは、コヒーレント光を伝送する光送信器301と、伝送路302と、光受信器303とを含む。
【0032】
光送信器301は、送信DSP311、ドライバ312、変調器313等を含む。光送信器301は、送信DSP311に入力された送信用のデータを、例えば、QPSKのIQの送信データに変換処理し、ドライバ312を介して変調器313に出力する。変調器313は、送信データを光信号に変換し、光ファイバ等の伝送路302に光出力する。QPSKは、Quadrature Phase Shift Keyingの略である。
【0033】
光受信器303は、90度光ハイブリッド321、PD/TIA等の光電変換部322、受信DSP323等を含む。光受信器303は、90度光ハイブリッド321により偏波分離してIQ別の受信信号の電界を抽出し、光電変換部322により受信信号を光電変換して振幅と位相成分を抽出する。受信DSP323は、図1で説明した位相補償装置100の各機能を有し、受信信号を波形整形および位相補償して外部出力する。
【0034】
90度光ハイブリッド321は、光受信器303内部の局発光源(ローカル光源)に基づき、受信信号を抽出する。光周波数オフセット補償部110は、光送信器301が送信した光信号の周波数fと、光受信器303で受信した光信号の周波数f’との差分(周波数オフセット)を補償する。位相雑音補償部120は、送受信間の光信号の位相差をキャンセルして光信号の搬送波を再生出力する。受信DSP323内のこれら光周波数オフセット補償部110と位相雑音補償部120により、受信した光信号の位相差を補償する位相補償部102の機能を実現する。
【0035】
図3(b)には、位相ゆらぎを示す。例えば、4相のQPSKの光送信器301は、一定なシンボル周期でシンボルを光信号として伝送し、IQ軸の第1象限から第4象限に信号点が配置される(コンスタレーション)。しかし、光受信器303側での受信信号の適応等化処理部101の出力には、光送信器301と光受信器303とのレーザ周波数の差や、位相雑音等により、搬送波位相ゆらぎθeが生じる。位相補償部102は、この搬送波位相ゆらぎθeを検出し、補償することで、光送信器301が送信した光信号と同じコンスタレーションを復元する。
【0036】
(光変調器の構成例)
図4は、光送信器の変調器の説明図である。図4(a)には変調器の構成例を示す。変調器313は、例えば、マッハツェンダ型の変調器であり、レーザ光源401からの光源がI軸の変調部402と、Q軸の変調部403に入力される。これらI軸の変調部402と、Q軸の変調部403には、それぞれ送信する電気信号としてI軸とQ軸の入力信号が入力される。I軸とQ軸の変調部402,403は、それぞれドライバ312からバイアス値が入力され、入力信号を変調した光信号を生成して出力する。位相変調部404は、入力される位相変調用のバイアス値により、一方のQ軸の位相を変調しI軸の位相に整合させる。
【0037】
図4(b)は、I軸の変調部402およびQ軸の変調部403による光信号の出力状態を示す。図表の横軸はバイアス電圧、縦軸は光信号の振幅を示す。変調器313は、ABC制御により、Null点でロックするバイアス制御により、信号の歪が最小になるように調整する。ここで、変調器313のI軸とQ軸には、位相が同相の入力信号が入力される。また、I軸のNull点は図中A点であり、Q軸のNull点は図中Bであるとする。
【0038】
この場合、同じ入力信号を入れた場合でも、I軸のA点でロックした場合と、Q軸のB点でロックした場合とでは、IQそれぞれが出力する光信号の位相が反転することになる。
【0039】
(従来のN乗法による位相補償例)
図5は、従来のN乗法による位相補償装置の説明図である。N乗法(4乗法)による位相補償について説明しておく。図5(a)には、従来の位相補償装置500の構成を示す。位相補償装置500は、入力されるIQの受信信号に対し、適応等化処理部501、位相補償部502、位相反転補償部503、誤り訂正部504の順に接続されている。
【0040】
この位相補償装置500では、位相補償部502の出力分岐により位相反転を検出する位相反転検出部505が接続されている。位相反転補償部503は、位相反転検出部505の検出出力に基づき、位相補償を行う。このように、従来の位相補償装置500は、位相反転検出部505は、位相補償部502の後段に配置されている。
【0041】
従来の位相補償装置500は、位相反転検出前の段階で位相補償部502により、位相変調されたデータを用いてブラインド方式による位相補償を行う。従来の位相補償装置500は、前段に光周波数オフセット補償部510が配置され、後段に位相雑音補償部520が配置される。
【0042】
光周波数オフセット補償部510は、4乗算部511、共役部(第1共役部)512、遅延部513、差分部514、平均化/補償量算出部(第1平均化/補償量算出部)515、乗算部(第1乗算部)516を含む。
【0043】
位相雑音補償部520は、4乗算部521、平均化/補償量算出部(第2平均化/補償量算出部)522、乗算部(第2乗算部)523を含む。
【0044】
図5(b)は、位相ゆらぎがないときのIQコンスタレーション、図5(c)は、位相ゆらぎがあるときのIQコンスタレーションを示す。従来の位相補償装置500では、QPSKの例において、4乗法の演算処理により、受信位相を一つの特定の位相に変換(ロック)するため、受信信号の位相反転の影響を受けずに位相補償できる。
【0045】
図6図7は、従来の4乗法による周波数オフセット検出例の説明図である。図6では、変調器による位相反転なし、周波数オフセットが+π/8の条件において、従来の位相補償装置500での周波数オフセット検出例を示す。図6(a)はQPSKのコンスタレーション図である。図6(b)の横軸は時間(T,T+1,T+2,…)である。図6(b)の縦軸には、各時間の光送信器301の送信データ(2ビット00~11)と、送信変調(角度)と、位相反転なし(角度)の変調器313の変調器出力信号とを示す。また、各時間の周波数オフセットを示す。また、各時間の光受信器303が受信する受信信号と、4乗法(演算出力)と、周波数オフセット推定量(シンボル間(時間T+1)-(時間T)の周波数オフセット、図6では×4倍)とを示す。受信信号は、変調器出力信号+周波数オフセットである。図6(b)に示すように、4乗法を用いることで、各時間において、期待する周波数オフセット量(+π/8)が算出(検出)できている。
【0046】
次に、図7では、変調器による位相反転(I軸反転)あり、周波数オフセットが+π/8の条件において、従来の位相補償装置500での周波数オフセット検出例を示す。図7(a)はQPSKのコンスタレーション図である。図7(b)の横軸は時間(T,T+1,T+2,…)である。図7(b)の縦軸には、各時間の光送信器301の送信データと、送信変調(角度)と、位相反転あり(I軸の位相反転)の変調器313の変調器出力信号とを示す。また、各時間の周波数オフセットを示す。また、各時間の光受信器303が受信する受信信号と、4乗法(演算出力)と、周波数オフセット推定量(シンボル間(時間T+1)-(時間T)の周波数オフセット、図7では×4倍)を示す。図7(b)に示すように、4乗法を用いることで、I軸の位相反転がある場合でも、各時間において、期待する周波数オフセット量(+4π/8)が算出(検出)できることが示されている。
【0047】
しかしながら、従来のN乗法(4乗法)では、位相ゆらぎを検出する位相反転検出部505が位相補償部502の後段に配置されているため、位相反転検出前の段階で位相補償部502による受信電界強度を4乗する処理が必要となる。このため、従来の位相補償装置500では、4乗算部511,521での演算量が増大し、消費電力が増大する問題を有する。
【0048】
これに対し、実施の形態の位相補償装置100では、N乗法を用いることなく消費電力を抑えるために、既知信号を用いて位相補償を行う。
【0049】
図8は、既知信号を用いた位相補償の説明図である。図8(a)はQPSKのコンスタレーションを示す。図8(b)は既知のQPSKの送信信号に対し、各位相反転が生じた場合の受信信号を示す。
【0050】
既知シンボルを使った位相補償では、送信した既知シンボルと受信したシンボルとの位相差を位相雑音量とする方式である。このため、既知シンボルを使った位相補償では、位相反転があると、送信された既知シンボル系列とは異なるシンボル系列として受信されるため、位相雑音量を誤って認識し、位相補償として機能しなくなる。
【0051】
これに対応するため、位相ゆらぎを補償する前段で位相反転を検出することが考えられるが、この場合、位相ゆらぎを含む信号から位相反転を検出する方式が必要となる。図8(a)に示す送信既知信号に対する受信信号の位相ゆらぎaは、送受信レーザの周波数差による位相ゆらぎと、位相雑音による位相ゆらぎと、を含む。
【0052】
ここで、例えば、特許文献1に記載の技術は、硬判定を用いた手法であり、位相ゆらぎがある状態では硬判定結果に多くの判定誤りが含まれるため、正しく位相反転を検出することができない。
【0053】
(既知信号のみの場合の周波数オフセット検出状態例)
図9図12は、既知信号を用いた周波数オフセット検出例の説明図である。図9には、変調器による位相反転なし、周波数オフセットが+π/4の条件において、従来の既知信号を用いた周波数オフセット検出例を示す。図9(a)はQPSKのコンスタレーション図である。図9(b)の横軸は時間(T,T+1,T+2,…)である。図9(b)の縦軸には、各時間の光送信器301の送信データと、送信変調(角度)と、位相反転なし(角度)の変調器313の変調器出力信号とを示す。また、各時間の周波数オフセットを示す。また、各時間の光受信器303が受信する受信信号と、送信変調と受信信号の差分と、周波数オフセット推定量(シンボル間(時間T+1)-(時間T)の周波数オフセット)とを示す。図9(b)に示すように、既知信号を用いることで、各時間において、期待する周波数オフセット量(+π/4)が算出(検出)できている。
【0054】
図10には、変調器による位相反転なし、周波数オフセットが+π/8の条件において、従来の既知信号を用いた周波数オフセット検出例を示す。図10(a)はQPSKのコンスタレーション図である。図10(b)の横軸は時間(T,T+1,T+2,…)である。図10(b)の縦軸には、各時間の光送信器301の送信データと、送信変調(角度)と、位相反転なし(角度)の変調器313の変調器出力信号とを示す。また、各時間の周波数オフセットを示す。また、各時間の光受信器303が受信する受信信号と、送信変調と受信信号の差分と、周波数オフセット推定量(シンボル間(時間T+1)-(時間T)の周波数オフセット)とを示す。図10(b)に示すように、既知信号を用いることで、各時間において、期待する周波数オフセット量(+π/8)が算出(検出)できている。
【0055】
図11には、変調器による位相反転(I軸反転)あり、周波数オフセットが+π/4の条件において、従来の既知信号を用いた周波数オフセット検出例を示す。図11(a)はQPSKのコンスタレーション図である。図11(b)の横軸は時間(T,T+1,T+2,…)である。図11(b)の縦軸には、各時間の光送信器301の送信データと、送信変調(角度)と、I軸の位相反転あり(角度)の変調器313の変調器出力信号とを示す。また、各時間の周波数オフセットを示す。また、各時間の光受信器303が受信する受信信号と、送信変調と受信信号の差分と、周波数オフセット推定量(シンボル間(時間T+1)-(時間T)の周波数オフセット)とを示す。図11(b)に示すように、既知信号を用いる場合に位相反転(I軸反転)があると、期待する周波数オフセット量(+π/4)が算出(検出)できないことが示されている。
【0056】
図12には、変調器による位相反転(I軸反転)あり、周波数オフセットが+π/8の条件において、従来の既知信号を用いた周波数オフセット検出例を示す。図12(a)はQPSKのコンスタレーション図である。図12(b)の横軸は時間(T,T+1,T+2,…)である。図12(b)の縦軸には、各時間の光送信器301の送信データと、送信変調(角度)と、I軸の位相反転あり(角度)の変調器313の変調器出力信号とを示す。また、各時間の周波数オフセットを示す。また、各時間の光受信器303が受信する受信信号と、送信変調と受信信号の差分と、周波数オフセット推定量(シンボル間(時間T+1)-(時間T)の周波数オフセット)とを示す。図12(b)に示すように、既知信号を用いる場合に位相反転(I軸反転)があると、期待する周波数オフセット量(+π/8)が算出(検出)できないことが示されている。
【0057】
上記のように、従来の既知信号を用いて周波数オフセットを検出する場合、変調器出力信号に位相反転がなければ図9図10に示したように周波数オフセットを正しく検出できる。しかし、変調器出力信号に位相反転がある場合には、図11図12に示したように周波数オフセットを正しく検出することができない。このように、既知信号を用いた周波数オフセットの検出では、位相反転を考慮する必要がある。
【0058】
(実施の形態の位相補償装置の詳細)
次に、実施の形態の位相補償装置100の詳細を説明する。実施の形態では、位相反転を考慮することで位相ゆらぎを正しく検出して、既知信号による位相補償を実現する。実施の形態の位相補償装置100は、既知信号を用いた位相補償のために、図1に示したように、受信信号の位相反転を位相補償部102の前段に配置した位相反転検出部105で検出する。
【0059】
(実施の形態による位相反転の検出について)
実施の形態の位相補償装置100において、図1に示したように、位相補償部102の前段に位相反転検出部105を配置し、位相反転を検出する場合下記1.2.の影響を考慮する。
【0060】
1.位相ゆらぎの影響
位相補償部102の前段では、位相ゆらぎ、すなわち送受レーザの周波数差による位相ゆらぎと位相雑音による位相ゆらぎの影響があるため、受信信号が不定となる。これに対応するには、位相補償装置100は、位相ゆらぎの影響を受けにくい位相反転検出が必要となる。
【0061】
2.伝送路のASE雑音の影響
位相補償装置100は、伝送路のASE(Amplified Spontaneous Emission)雑音の影響を考慮した、位相反転検出が必要となる。
【0062】
(既知信号を用いた位相補償の詳細)
実施の形態の位相補償装置100は、既知信号を用いた位相補償を実現するため、下記3.4.の構成を有する。
3.既知信号の挿入
光受信器303で位相反転を検出するために、光送信器301は、既知信号を送信信号に挿入して送信する。
4.光受信器303の構成
光受信器303は、位相反転検出部105を位相補償部102の前段に配置し、位相反転を検出する。
位相補償部102は、既知信号を用いた位相補償を行い、送信信号を復調する。
【0063】
(送信信号に対する既知信号の挿入について)
図13は、送信信号に対する既知信号の挿入の説明図である。図13(a)には、光送信器301が送信する送信信号の構成例を示す。横軸は時間である。光送信器301は、送信信号として、送信データと、位相補償を行うための既知信号を光受信器303に送信する。既知信号は、位相補償を行うための既知信号(パイロット信号)PSと、PS等を検出するための既知信号TS1と、位相反転を検出するための既知信号TS2とを含む。TSはTraininng Signalの略、PSはPilot Signalの略である。
【0064】
図13(a)に示すように、光送信器301は、送信信号の先頭にTS1と、位相反転検出用の既知信号(位相反転判定信号と称す)TS2を付加して送信する。また、光送信器301は、送信データに一定間隔でPSを挿入して送信する。光送信器301が送信する送信信号(送信データ、TS1,TS2,PS)は、光受信器303により受信される。例えば、光受信器303は、光電変換後の受信信号から既知信号を抽出して記憶部に格納し、記憶部に格納した既知信号を基準として参照し、受信信号の位相補償および位相反転補償を行う。
【0065】
図13(b)には、光送信器301における送信信号の生成の構成例を示す。送信データは変調部313aで変調する。TS1,TS2,PSは、それぞれQPSK変調部313bによりQPSK変調を行う。送信データと、TS1,TS2,PSとは結合部1301により結合し、ナイキストフィルタ1302による帯域制御後、送信出力される。既知信号(位相反転判定信号)TS2は、光送信器301のQPSK変調部313bによる変調状態を示す信号である。
【0066】
なお、光信号の送信側で送信信号にTS1およびPSを挿入する構成は既存の技術を用いることができる。また、実施の形態では、位相反転判定信号TS2は、既存のTS1のデータ領域に含ませることとしてもよい。
【0067】
(位相反転検出部の構成例)
図14は、位相反転検出部の構成例を示す図である。実施の形態の位相補償装置100は、位相反転検出部105を位相補償部102の前段に配置し、受信信号の位相反転を検出する。位相補償装置100は、受信信号に含まれる既知信号TS1の受信により、位相補償および位相反転補償を行う。
【0068】
位相反転検出部105は、受信信号に位相反転が発生しているか否かを検出する。例えば、光受信器303(位相補償装置100)は、送信信号に含まれる既知信号(TS1,TS2,PS)を抽出して記憶部に格納保持する。位相反転検出部105は、記憶部に保持した既知信号、例えば、位相反転判定信号TS2を基準として受信信号の位相反転の有無を検出する。記憶部は、例えば、光受信器303のメモリを用いることができる。光受信器303は、受信したPSを用いて位相補償を行い、位相反転判定信号TS2を用いて位相反転補償を行うことで、受信信号を復調する。
【0069】
図14に示す位相反転検出部105は、位相差分演算部1401、位相反転判定信号対象判定部1402、平均化部1403、位相反転検出部1404を含む。位相反転判定信号対象判定部1402には、既知信号(位相反転判定信号)TS2が入力される。既知信号TS2は、送信データに挿入されており、異なる時間別の2シンボル間での位相差分の情報を複数組み合わせたパターン(送信既知パターンと称す)を有する。位相反転判定信号対象判定部1402は、受信信号(受信した送信信号)の2シンボル間の位相差分と、記憶部に保持された送信既知パターンが有する複数の既知信号TS2のなかから、受信信号(受信した送信信号)の位相反転検出との比較対応用の2シンボル間の位相差分を選択する。
【0070】
ここで、送信既知パターンを構成する複数の既知信号TS2は、光送信器301で送信信号に一括で挿入するに限らない。例えば、2シンボルごとの既知信号TS2を一定間隔に対応し、時間別(IQ軸の象限別)の複数の位相差分の情報を、予め記憶部に記憶させることとしてもよい。
【0071】
送信既知パターンは、光送信器301側で変調された送信信号で期待される基準の位相の情報である。位相反転検出部105は、期待される送信既知パターンを基準として参照し、受信信号の2シンボル間の位相差分との差分(Δαt)に基づき受信信号の位相反転の有無を検出する。
【0072】
位相差分演算部1401は、光受信器303の適応等化処理部101で適応等化処理後の受信信号Eと、位相反転判定信号対象判定部1402が選択した既知信号(送信既知パターン)TS2の2シンボルの位置情報に基づき、位相反転の検出に使用する位相変化量を算出する。平均化部1403は、位相差分演算部1401の出力信号の雑音軽減化のための平均化処理を行う。位相反転検出部1404は、受信信号の位相反転状態を検出し、検出した位相反転状態を位相反転補償部103に出力する。
【0073】
位相反転検出部105は、2シンボル間の位相変化量を利用して位相反転を検出する。このため、図14に示す適応等化処理後の受信信号Eから求めた2シンボル間の位相差分と、送信既知パターン(TS2)とに基づき送信信号の変調による位相差分(期待される位相差分)の差(Δαt)を利用して位相反転を検出する。
【0074】
光送信器301が変調器で変調後の送信信号と、光受信器303の適応等化処理後の受信信号は下記式で示される。
送信信号:S(t)=s(t)ejθt
受信信号:E(t)=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)
但し、s(t):振幅変調成分、θt:位相変調成分、βt:位相反転による成分、γt:光周波数オフセットによる成分、δt:位相雑音による成分、である。
【0075】
上記により、位相変化を含む受信信号は、下記式で示される。
E(t)*E(t-1)*=s(t)s(t-1)ej((θt-θt-1)+(βt-βt-1)+(γt-γt-1)+(δt-δt))
=s(t)s(t-1)ej(Δθt+Δβt+Δγt+Δδt)=s(t)s(t-1)ej(Δθt+Δαt+Δδt)
【0076】
適応等化処理後の既知信号の2シンボル間の位相差分は、下記a~cの位相変化の影響を受ける。
a.2シンボル間の変調による位相変動量(期待される位相差分)
b.変調器の位相反転の影響
c.光周波数オフセットによる位相変化量(位相雑音の影響は短い時間でのシンボル間差分をとることでキャンセルすることができる(Δδt=0))
【0077】
これにより、上記Δαt=変調器の位相反転の影響による位相変化量+光周波数オフセットによる位相変化量となる。
【0078】
図15は、位相反転検出部の位相反転検出処理例を示すフローチャートである。図14に記載した位相反転検出部105は、上述したDSP等に限らず、プロセッサがプログラム実行することで位相反転検出を行うこともできる。プロセッサを用いた構成例では、例えば、図1に示した適応等化処理部101が出力するデータを記憶部に格納し、プロセッサが記憶部からデータを読み出すことで位相反転検出を行うことができる。
【0079】
図15の処理例は、図14に示した位相反転検出部105の構成例に対応している。はじめに、位相反転検出部105は、受信信号から位相反転検出用の判定箇所を抽出する(ステップS1501)。ここでは、受信信号の異なる時間の2シンボルを判定箇所として抽出する。次に、位相反転検出部105は、抽出した判定箇所について、1シンボル前の受信信号との間の2シンボル間の位相差分を演算する(ステップS1502)。
【0080】
次に、位相反転検出部105は、送信既知パターン(TS2)を参照し、送信既知パターンのうち、抽出した2シンボルの受信信号に対応し、位相反転の検出に用いる位相反転判定信号の対象を選択する(ステップS1503)。次に、位相反転検出部105は、選択した位相変化量の情報を参照し、ステップS1502で演算した位相差分に対する平均化処理を行う(ステップS1504)。次に、位相反転検出部105は、受信信号に対する位相反転の状態を検出する(ステップS1505)。
【0081】
(位相反転検出例)
図16は、位相反転検出部による位相反転検出例の説明図である。図16において、周波数オフセット量は0であるとする。図16(a)は、光送信器301のQPSKの変調器による位相反転がない場合の位相変化量を示す図表である。例えば、位相反転がない場合、時間T-1の送信シンボルの第1象限の検出点と、時間Tの送信シンボルの第2象限の検出点との間には+π/2の位相変化量がある。この図16(a)は、上記(1)位相反転なし、および(4)I軸とQ軸の位相反転がある場合に相当する。
【0082】
また、図16(b)は、光送信器301の変調器による位相反転がある場合の位相変化量を示す図表である。例えば、I軸反転あるいはQ軸反転がある場合、時間T-1の送信シンボルの第1象限の検出点と、時間Tの送信シンボルの第2象限の検出点との間には+3π/2の位相変化量がある。図16(b)は、上記(3)I軸のみ位相反転がある場合、および(3)Q軸のみ位相反転がある場合に相当する。
【0083】
これら図16(a),(b)において、横軸は時間Tの送信シンボルの各象限、縦軸は一つ前の送信シンボル(T-1)の送信シンボルの各象限である。位相反転検出部105は、既知の2シンボル間の位相変化量を利用して位相反転を検出する。図16(a),(b)において、位相反転検出部105は、上記の位相反転判定信号対象判定として、太字で示した特定の2シンボルの組み合わせのみを位相変化量の判定用として記憶部から選択(参照)すればよい。位相反転検出部105(位相差分演算部1301)は、時間Tの送信シンボルと、一つ前の送信シンボル(T-1)の組み合わせにより受信信号の位相差分を、例えば、atan(E×E*)により演算する。
【0084】
図16(c)には、IQ軸上における受信信号の位相差分の検出点を示す。周波数オフセットがない(γ=0)ことを前提として、位相反転検出部105は領域Aでは「位相反転がない」と判定する。位相反転がない場合の検出点は+π/2に位置する。また、位相反転検出部105は領域Bでは「位相反転がある」と判定する。位相反転がある場合の検出点は+3π/2に位置する。
【0085】
図17は、位相反転検出部による位相反転検出例の説明図である。図17は、周波数オフセットがある場合のIQ軸を示す。上述したように、実際に検出される位相差分の差Δαtには、周波数オフセット量が含まれる。このため、例えば、図17に示す周波数オフセット分(π/4)だけ位相反転がある場合と、図16(c)に示した周波数オフセットがない場合とでは検出点が変化する。
【0086】
ここで、位相反転を検出するための判定条件は変化しないため、位相反転検出部105は、周波数オフセット<±π/2を満たす場合は、位相反転を検出可能である。なお、周波数オフセットが大きい場合には、粗推定により検出する際の周波数オフセットを小さくする技術を用いることで対応が可能である(例えば、上記特許文献6参照。)。
【0087】
(位相反転の有無別の動作例)
以下、実施の形態の位相補償装置の位相反転の有無別の動作例を説明する。以下の説明において、図1と同様の構成部には同一の符号を付してある。
【0088】
実施の形態の位相補償装置100は、図2での概要説明に対応して、位相補償部102は、(1)位相反転がない場合(下記の動作例1)と、(4)I軸およびQ軸の両方の位相反転が発生した場合(動作例2)について説明する。また、(2)位相反転がI軸反転のみ発生した場合(動作例3)と、(3)位相反転がQ軸反転のみ発生した場合(動作例4)について説明する。
【0089】
(動作例1:変調器で位相反転が発生しない場合)
図18は、位相反転が発生しない場合の位相補償装置の動作例を示す図である。図18の各構成部および信号経路上には、処理データの内容を記載してある。また、図18において、s(t):振幅変調成分,θt:位相変調成分、βt:位相反転による成分、γt:光周波数オフセットによる位相変化量、δt:位相雑音による成分、PS:位相補償を行うための既知信号である。
【0090】
光送信器301の変調器で位相反転が発生していない(βt=0)場合を想定して説明する。位相反転検出部105では、位相反転が発生していないと判定される。位相反転付加部106では、位相反転が発生していないとして、入力された信号をそのまま出力する。位相補償部102は、適応等化処理部101による適応等化処理後の信号(E(t))について、位相反転付加部106の出力を利用して、光周波数オフセットによる位相変化量(γt)と位相雑音量(δt)を推定する。位相補償部102は、推定した結果を利用して、位相補償を行う。
【0091】
位相反転補償部103は、位相補償部102による位相補償後の信号に対して、位相反転検出部105の結果に従って、位相補償後の信号に対して位相反転補償を行う。この動作例1では、位相反転が発生していないため、入力された信号をそのまま出力する。
【0092】
(光周波数オフセット補償部110の動作)
図19は、動作例1における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。光周波数オフセット補償部110では、受信信号のパイロットと送信信号のパイロットを利用して、光周波数オフセットによる位相変化量を推定し、推定した結果を利用して下記式に示す光周波数オフセット補償を行う。
【0093】
S(t)’=S(t)ejθt
E(t)=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)
E(t)’=E(t)(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)(s(t)ejθt*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)s(t)e-jθt=s(t)2j(βt+γt+δt)
【0094】
位相雑音の影響は短い時間(時間tと時間t-k,k:パイロット間隔)でのシンボル間差分をとることでキャンセルできる(δt-δt-k)=0)
E(t)’(E(t-k)’)*=s(t)2j(βt+γt+δt)s(t-k)2-j(βt-k+γt-k+δt-k)=s(t)2s(t-k)2j(βt-βt-k+γt-γt-k+δt-δt-k)
δt-δt-k=0およびβt=0でありβt-βt-k=0を満たすため、以下のようになる。
E(t)’(E(t-k)’)*=s(t)2s(t-k)2j(γt-γt-k)=s(t)2s(t-k)2jΔγt
【0095】
送受信間のレーザ周波数差であるΔγtは、時間的に変動が小さいため、雑音を減らすために、光周波数オフセット補償部110は、E(t)’(E(t-k)’)*を平均化したのち、1シンボル単位の補償量を算出する。この例では、kシンボルでの変動量がΔγtとなるため、1シンボルの変化量は1/k倍したΔγt/kとなる。それ故、1シンボルあたりの補償量は-Δγt/k=-Δγとなる(k:パイロット間隔)。
【0096】
光周波数オフセット補償部110は、上記の値を利用して、E(t)を補償する。ある時間Tの光周波数オフセットは、あるタイミングの光周波数オフセットの位相変化量γ’と1シンボルあたりの位相変動量であるΔγを用いて、次のように表現できる。
γt=γ’+Δγ×t
γ’は、固定量のため位相雑音の成分(δt)の一部だと考えることができる。その結果、光周波数オフセット後の補償後の受信データE(t)”は以下のように表現できる。
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+Δγ×t+δt)×ej(-Δγ×t)=s(t)ej(θt+βt+δt)
【0097】
(位相雑音補償部120の動作)
図20は、動作例1における位相雑音補償部の動作を示す図である。位相雑音補償部120は、光周波数オフセット補償部110での光周波数オフセット補償後の信号に対して位相反転を考慮したパイロット信号PSを用いて位相雑音補償を行う。
【0098】
S(t)’=S(t)=s(t)ejθt
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+δt)
E(t)”(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+δt)(s(t)ejθt*=s(t)ej(θt+βt+δt)s(t)e-jθt=s(t)2j(βt+δt)
【0099】
位相雑音(δt)は短い時間ならば一定とみなすことができる点と変調器による位相反転量(βt)が固定値である点から、以下のようになる(δt=δ,βt=0=β)。
E(t)”(S(t)’)*=s(t)2j(βt+δt)=s(t)2j(β+δ)
【0100】
E(t)”(S(t)’)*は、短い時間ならば位相変化量が一定とみなすことができるため、位相雑音補償部120は、雑音低減のためE(t)”(S(t)’)*の結果を平均化し、補償量を算出する。
【0101】
位相雑音補償部120での補償量は、平均化後の位相量に-1を乗算した値となる。また、補償係数を算出した時間と補償係数を適用する時間は短いため、δt=δの関係が成立している。また、変調器による位相反転量は固定(βt=β)であるため、以下のようになる。
E(t)’’’=E(t)”×e-j(βt+δt)=s(t)ej(θt+βt+δt)×e-j(βt+δ)=s(t)ej(θt+β+δ)×e-j(β+δ)=s(t)ej(θt)=S(t)
【0102】
(位相反転補償部103の動作)
図21は、動作例1における位相反転補償部の動作を説明する図表である。位相反転補償部103は、位相反転検出部105による位相反転検出の結果に基づき補償を行う。ここで、位相反転検出部105では、位相反転が発生していないと判定しているため、位相反転補償部103は、入力された信号をそのまま出力する。
E(t)’’’=S(t)
以上のように、動作例1について位相補償装置100は、受信信号を正しく復調できることが示されている。
【0103】
(動作例2:変調器によるI軸およびQ軸の位相反転が発生した場合)
図22は、I軸およびQ軸の位相反転が発生した場合の位相補償装置の動作例を示す図である。
【0104】
光送信器301の変調器でI軸およびQ軸の両方で位相反転が発生した(βt=-π)場合を想定して説明を行う。この場合、位相反転検出部105では、位相反転が発生していないと判定される。位相反転付加部106では、位相反転が発生していないとして、入力された信号をそのまま出力する。位相補償部102は、適応等化処理部101での適応等化処理後の信号(E(t))について、位相反転付加部106の出力を利用して、光周波数オフセットによる位相変化量(γt)と位相雑音量(δt)を推定する。位相補償部102は、推定した結果を利用して、位相補償を行う。
【0105】
位相反転補償部103は、位相補償後の信号に対して、位相反転検出部105の結果によって、位相補償後の信号に対して位相反転補償を行う。この動作例2では、位相反転が発生していないとして、入力された信号をそのまま出力する。
【0106】
(光周波数オフセット補償部110の動作)
図23は、動作例2における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。光周波数オフセット補償部110では、受信信号のパイロットと送信信号のパイロットを利用して、光周波数オフセットの位相変化量を推定し、推定した結果を利用して下記式に示す光周波数オフセット補償を行う。
【0107】
S(t)’=S(t)=s(t)ejθt
E(t)=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)
E(t)’=E(t)(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)(s(t)ejθt*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)s(t)e-jθt=s(t)2j(βt+γt+δt)
【0108】
位相雑音の影響は短い時間(時間tと時間t-k)でのシンボル間差分をとることでキャンセルできる(δt-δt-k=0)。
E(t)’(E(t-k)’)*=s(t)2j(βt+γt+δt)s(t-k)2-j(βt-k+γt-k+δt-k)=s(t)2s(t-k)2j(βt-βt-k+γt-γt-k+δt-δt-k)
δt-δt-k=0およびβt=πのためβt-βt-k=0を満たすため、以下のようになる。
E(t)’(E(t-k)’)*=s(t)2s(t-k)2j(γt-γt-k)=s(t)2s(t-k)2jΔγt
【0109】
送受信間のレーザ周波数差であるΔγtは、時間的に変動が小さいため、雑音を減らすために、光周波数オフセット補償部110は、E(t)’(E(t-k)’)*を平均化したのち、1シンボル単位の補償量を算出する。この例では、kシンボルでの変動量がΔγtとなるため、1シンボルの変化量は1/k倍したγt/kとなる。それ故、1シンボルあたりの補償量は-Δγt/k=-Δγとなる(k:パイロット間隔)。
【0110】
光周波数オフセット補償部110は、上記の値を利用して、E(t)を補償する。ある時間Tの周波数オフセットは、あるタイミングの光周波数オフセットの位相変化量γ’と1シンボルあたりの位相変動量であるΔγを用いて、以下のように表現できる。
γt=γ’+Δγ×t
γ’は、固定量のため位相雑音の成分(δt)の一部だと考えることができる。その結果、光周波数オフセット後の補償後の受信データE(t)’は以下のように表現できる。
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+Δγ×t+δt)×ej(-Δγ×t)=s(t)ej(θt+βt+δt)
【0111】
(位相雑音補償部120の動作)
図24は、動作例2における位相雑音補償部の動作を示す図である。位相雑音補償部120は、光周波数オフセットの補償後の信号に対して位相反転を考慮したパイロットの既知送信信号を用いて位相雑音補償を行う。
S(t)’=S(t)=s(t)ejθt
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+δt)
E(t)”(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+δt)(s(t)ejθt*=s(t)ej(θt+βt+δt)s(t)e-jθt=s(t)2j(βt+δt)
【0112】
位相雑音(δt)は短い時間ならば一定とみなすことができる点と変調器による位相反転量(βt)が固定値のため、以下のようになる(δt=δ,βt=-π=β)。
E(t)”(S(t)’)*=s(t)2j(βt+δt)=s(t)2j(β+δ)
【0113】
E(t)”(S(t)’)*は、短い時間ならば位相変化量が一定とみなすことができるため、位相雑音補償部120は、雑音低減のためE(t)”(S(t)’)*の結果を平均化し、補償量を算出する。
【0114】
位相雑音補償部120での補償量は、平均化後の位相量に-1を乗算した値となる。また、補償係数を算出した時間と補償係数を適用する時間は短いため、δt=δの関係が成立している。また、変調器による位相反転量は固定(βt=β)であるため、以下のようになる。
E(t)’’’=E(t)”×e-j(β+δt)=s(t)ej(θt+βt+δt)×e-j(β+δ)==s(t)ej(θt+β+δ)×e-j(β+δ)=s(t)ej(θt)=S(t)
【0115】
(位相反転補償部103の動作)
図25は、動作例2における位相反転補償部の動作を説明する図表である。位相反転補償部103は、位相反転検出部105による位相反転検出の結果に基づき補償を行う。ここで、位相反転検出部105では、位相反転が発生していないと判定しているため、位相反転補償部103は、入力された信号をそのまま出力する。
E(t)’’’=S(t)
以上のように、動作例2について位相補償装置100は、受信信号を正しく復調できることが示されている。
【0116】
(動作例3:変調器によるI軸の位相反転のみが発生した場合)
図26は、I軸のみ位相反転が発生した場合の位相補償装置の動作例を示す図である。
【0117】
光送信器301の変調器でI軸の位相反転のみが発生した場合を想定して説明を行う。この場合、位相反転検出部105では、I軸反転のみの位相反転が発生しているため、位相反転ありと判断する。位相反転付加部106では、位相反転検出部105が位相反転ありと判断したため、I軸の位相反転が発生したとして、I軸の位相反転を考慮した信号を出力する。
【0118】
位相補償部102は、適応等化処理部101での適応等化処理後の信号(E(t))について、位相反転付加部106の出力の信号を利用して、光周波数オフセットの位相変化量(γt)と位相雑音量(δt)を推定する。位相補償部102は、推定した結果を利用して、位相補償を行う。
【0119】
位相反転補償部103は、位相補償部102による位相補償後の信号に対して、位相反転検出部105の判定結果によって、位相補償後の信号に対して位相反転補償を行う。この動作例3では、I軸反転の位相反転が発生した場合として補償を行う。
【0120】
(光周波数オフセット補償部110の動作)
図27は、動作例3における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。光周波数オフセット補償部110では、受信信号のパイロットと送信信号のパイロットを利用して、光周波数オフセットの位相変化量を推定し、推定した結果を利用して下記式に示す光周波数オフセット補償を行う。
【0121】
S(t)’=S(t)ej(βt)=s(t)ej(θt+βt)
E(t)=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)
E(t)’=E(t)(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)(s(t)ej(θt+βt)*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)s(t)e-j(θt+βt)=s(t)2j(γt+δt)
【0122】
位相雑音の影響は短い時間(時間tと時間t-k)でのシンボル間差分をとることでキャンセルできる(δt-δt-k=0)。
E(t)’(E(t-k)’)*=s(t)2j(γt+δt)s(t-k)2-j(γt-k)+δt-k)=s(t)2s(t-k)2j(γt-γt-k+δt-δt-k)
δt-δt-k=0を満たすため、以下のようになる。
E(t)’(E(t-k)’)*=s(t)2s(t-k)2j(γt-γt-k)=s(t)2s(t-k)2jΔγt
【0123】
送受信間のレーザ周波数差であるΔγtは、時間的に変動が小さいため、雑音を減らすために、光周波数オフセット補償部110は、E(t)’(E(t)’)*を平均化したのち、1シンボル単位の補償量を算出する。この例では、kシンボルでの変動量がΔγtとなるため、1シンボルの変化量は1/k倍したΔγt/kとなる。それ故、1シンボルあたりの補償量は-Δγt/k=-Δγとなる(k:パイロット間隔)。
【0124】
光周波数オフセット補償部110は、上記の値を利用して、E(t)を補償する。ある時間Tの周波数オフセットは、あるタイミングの光周波数オフセットの位相変化量γ’と1シンボルあたりの位相変動量であるΔγを用いて、以下のように表現できる。
γt=γ’+Δγ×t
γ’は、固定量のため位相雑音の成分(δt)の一部だと考えることができる。その結果、光周波数オフセット後の補償後の受信データE(t)’は以下のように表現できる。
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+Δγ×t+δt)×ej(-Δγ×t)=s(t)ej(θt+βt+δt)
【0125】
(位相雑音補償部120の動作)
図28は、動作例3における位相雑音補償部の動作を示す図である。位相雑音補償部120は、光周波数オフセットの補償後の信号に対して位相反転を考慮したパイロットの既知送信信号を用いて位相雑音補償を行う。
S(t)’=S(t)ej(βt)=s(t)ej(θt+βt)
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+δt)
E(t)”(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+δt)(s(t)ej(θt+βt)*=s(t)ej(θt+βt+δt)s(t)e-j(θt+βt)=s(t)2j(δt)
【0126】
位相雑音は短い時間ならば一定とみなすことができる(δt=δ)。
E(t)”(S(t)’)*=s(t)2j(δt)=s(t)2j(δ)
【0127】
E(t)”(S(t)’)*は、短い時間ならば位相変化量が一定とみなすことができるため、位相雑音補償部120は、雑音低減のためE(t)”(S(t)’)*の結果を平均化し、補償量を算出する。
【0128】
位相雑音補償部120での補償量は、平均化後の位相量に-1を乗算した値となる。また、補償係数を算出した時間と補償係数を適用する時間は短いため、δt=δの関係が成立しており、以下のようになる。
E(t)’’’=E(t)”×e-j(δt)=s(t)ej(θt+βt+δt)×e-j(δ)=s(t)ej(θt+βt+δt-δ)=s(t)ej(θt+βt)=S(t)ej(βt)
【0129】
(位相反転補償部103の動作)
図29は、動作例3における位相反転補償部の動作を説明する図表である。位相反転補償部103は、位相反転検出部105による位相反転検出の結果に基づき補償を行う。ここで、位相反転補償部103は、位相反転補償を行う際には、I軸の位相反転で位相反転補償処理を行う。位相反転補償部103では、I軸の位相反転補償を行うため、Q軸の符号を入れ替える処理を行うことになる。
【0130】
ここで、送信信号をQPSK信号と仮定とし、雑音などがない場合を想定する。その場合、位相反転補償部103に入力される信号(E(t)’’’)は、βtがI軸反転による位相量を表しているため、送信側でI軸の位相反転が発生している信号となる。
【0131】
位相反転補償部103では、I軸の位相反転が発生したと仮定して補償することになるため、以下のような位相反転補償になる。
E(t)’’’×ej(-βt)=S(t)ej(βt)×ej(-βt)=S(t)
以上のように、動作例3について位相補償装置100は、受信信号を正しく復調できることが示されている。
【0132】
(動作例4:変調器によるQ軸の位相反転のみが発生した場合)
図30は、Q軸のみ位相反転が発生した場合の位相補償装置の動作例を示す図である。
【0133】
光送信器301の変調器でQ軸の位相反転のみが発生した場合を想定して説明を行う。この場合、位相反転検出部105では、Q軸の位相反転のみが発生しているため、位相反転ありと判断する。位相反転付加部106では、位相反転検出部105が位相反転ありと判断したため、Q軸の位相反転が発生したとして、Q軸の位相反転した場合の信号を出力する。Q軸反転のみの位相反転は、I軸反転のみの位相反転(βt)に、位相として-π足した位相反転として表記することができる。
【0134】
位相補償部102は、適応等化処理部101での適応等化処理後の信号(E(t))について、位相反転付加部106の出力信号を利用して、光周波数オフセットの位相変化量(γt)と位相雑音量(δt)を推定する。位相補償部102は、推定した結果を利用して、位相補償を行う。
【0135】
位相反転補償部103は、位相補償部102による位相補償後の信号に対して、位相反転検出部105の検出結果によって、位相補償後の信号から位相反転補償を行う。ここで、位相反転検出部105は、位相反転が発生したかどうかのみを検出している。このため、送信側でQ軸の位相反転が発生していたとしても、受信側では、I軸の位相反転が発生したとして位相補償処理を行う。この動作例4では、位相反転ありと判定したため、I軸の位相反転(Q軸の位相反転量-π)が発生したとして位相補償を行う。
【0136】
ここで、パラメータβtは、送信側の位相反転量のため、受信側での補償量は、以下のようになる。
(1)送信側でI軸反転が発生した場合、βtはI軸の位相反転量となる。そのため、受信側での補償量の表記は以下のようになる。
受信側でI軸の位相反転が発生したとして補償する場合の補償量の表記はβt、
受信側でQ軸の位相反転が発生したとして補償する場合の補償量の表記はβt-πとなる。
【0137】
(2)送信側でQ軸反転が発生した場合、βtはQ軸の位相反転量となる。そのため、受信側での補償量の表記は以下のようになる。
受信側でI軸の位相反転が発生したとして補償する場合の補償量の表記はβt-π、
受信側でQ軸の位相反転が発生したとして補償する場合の補償量の表記はβtとなる。
【0138】
(光周波数オフセット補償部110の動作)
図31は、動作例4における光周波数オフセット補償部の動作を示す図である。光周波数オフセット補償部110では、受信信号のパイロットと送信信号のパイロットを利用して、光周波数オフセットの位相変化量を推定し、推定した結果を利用して下記式に示す光周波数オフセット補償を行う。
【0139】
S(t)’=S(t)ej(βt-π)=s(t)ej(θt+βt-π)
E(t)=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)
E(t)’=E(t)(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)(s(t)ej(θt+βt-π)*=s(t)ej(θt+βt+γt+δt)s(t)e-j(θt+βt-π)=s(t)2j(γt+δt+π)
【0140】
位相雑音の影響は短い時間(時間tと時間t-k)でのシンボル間差分をとることでキャンセルできる(δt-δt-k=0)。
E(t)’(E(t-k)’)*=s(t)2j(γt+δt+π)s(t-k)2-j(γt-k+δt-k+π)=s(t)2s(t-1)2j(γt-γt-k+δt-δt-k)
δt-δt-k=0を満たすため、以下のようになる。
E(t)’(E(t)’)*=s(t)2s(t-1)2j(γt-γt-1)=s(t)2s(t-1)2jΔγt
【0141】
送受信間のレーザ周波数差であるΔγtは、時間的に変動が小さいため、雑音を減らすために、光周波数オフセット補償部110は、E(t)’(E(t)’)*を平均化したのち、1シンボル単位の補償量を算出する。この例では、kシンボルでの変動量がΔγtとなるため、1シンボルの変化量は1/k倍したΔγt/kとなる。それ故、1シンボルあたりの補償量は-Δγt/k=-Δγとなる(k:パイロット間隔)。
【0142】
光周波数オフセット補償部110は、上記の値を利用して、E(t)を補償する。ある時間Tの周波数オフセットは、あるタイミングの光周波数オフセットの位相変化量γ’と1シンボルあたりの位相変動量であるΔγを用いて、以下のように表現できる。
γt=γ’+Δγ×t
γ’は、固定量のため位相雑音の成分(δt)の一部だと考えることができる。その結果、光周波数オフセット後の補償後の受信データE(t)’は以下のように表現できる。
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+Δγ×t+δt)×ej(-Δγ×t)=s(t)ej(θt+βt+δt)
【0143】
(位相雑音補償部120の動作)
図32は、動作例4における位相雑音補償部の動作を示す図である。位相雑音補償部120は、光周波数オフセットの補償後の信号に対して位相反転を考慮したパイロットの既知送信信号を用いて位相雑音補償を行う。
S(t)’=S(t)ej(βt-π)=s(t)ej(θt+βt-π)
E(t)”=s(t)ej(θt+βt+δt)
E(t)”(S(t)’)*=s(t)ej(θt+βt+δt)(s(t)ej(θt+βt-π)*=s(t)ej(θt+βt+δt)s(t)e-j(θt+βt-π)=s(t)2j(δt+π)
【0144】
位相雑音は短い時間ならば一定とみなすことができる(δt=δ)。
E(t)”(S(t)’)*=s(t)2j(δt+π)=s(t)2j(δ+π)
【0145】
E(t)”(S(t)’)*は、短い時間ならば位相変化量が一定とみなすことができるため、位相雑音補償部120は、雑音低減のためE(t)”(S(t)’)*の結果を平均化し、補償量を算出する。
【0146】
位相雑音補償部120での補償量は、平均化後の位相量に-1を乗算した値となる。また、補償係数を算出した時間と補償係数を適用する時間は短いため、δt=δの関係が成立しており、以下のようになる。
【0147】
E(t)’’’=E(t)”×e-j(δt+π)=s(t)ej(θt+βt+δt)×e-j(δ+π)=s(t)ej(θt+βt+δt-δ-π)=s(t)ej(θt+βt-π)=S(t)ej(βt-π)
【0148】
(位相反転補償部103の動作)
図33は、動作例4における位相反転補償部の動作を説明する図表である。位相反転補償部103は、位相反転検出部105による位相反転検出の結果に基づき補償を行う。ここで、位相反転補償部103は、位相反転補償を行う際には、Q軸の位相反転量-πで位相反転補償処理を行う。位相反転補償部103では、I軸の位相反転補償を行うため、Q軸の符号を入れ替える処理を行うことになる。
【0149】
ここで、送信信号をQPSK信号と仮定とし、雑音などがない場合を想定する。その場合、位相反転補償部103に入力される信号(E(t)’’’)は、βtがQ軸反転による位相量を表しているので、βt-πはI軸反転の位相量を表すことになり、送信側でI軸の位相反転が発生している相当の信号となる。
【0150】
位相反転補償部103では、Q軸の位相反転量-πが発生したと仮定して補償することになるため、以下のような位相反転補償になる。
E(t)’’’×ej(-(βt-π))=S(t)ej(βt-π)×ej(-(βt-π))=S(t)
以上のように、動作例4について位相補償装置100は、受信信号を正しく復調できることが示されている。
【0151】
以上の動作例1~4のように、位相補償装置100は、変調器の位相反転がI軸の位相反転のみが発生した場合と、Q軸の位相反転のみが発生した場合には、位相反転に関係なく、受信側ではI軸の位相反転のみが発生した処理とすることで、正しく復調できる。なお、位相反転付加部106および位相反転補償部103は、同一の位相反転が発生したとして処理することで、正しく復調することが可能である。このほか、光送信器301の変調器の位相反転がI軸の位相反転のみが発生した場合、およびQ軸の位相反転のみが発生した場合には、変調器の位相反転に関係なく、位相補償装置100は、Q軸の位相反転のみの発生として処理しても同様に正しく復調できる。
【0152】
以上説明した実施の形態の位相補償装置は、位相変調された光信号を光電変換した受信信号の位相を補償する。位相補償装置は、受信信号に含まれる既知信号に基づき、受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部と、位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、受信信号の位相を位相補償する位相補償部と、位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、位相補償後の受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部と、を備える。これにより、位相補償部は、位相反転検出部で検出した位相反転の有無に基づいて正しく位相補償でき、従来のN乗法の演算等を不要とし簡単な構成および低消費電力化を図ることができるようになる。
【0153】
また、既知信号は、位相反転検出用の信号を含み、位相反転検出部は、位相反転検出用の信号が示す光送信器での変調による基準となる2シンボル間の位相差分と、受信信号の2シンボル間の位相差分との差分に基づき、受信信号の位相反転の有無を検出する。これにより、2シンボル間の既知信号と受信信号とを用いて簡単に位相反転の有無を検出できる。ここで、位相補償部の前段では、位相ゆらぎ、すなわち送受レーザの周波数差による位相ゆらぎと、位相雑音による位相ゆらぎの影響を受ける。しかし、位相補償部の前段に配置した位相反転検出部は、上記構成により、位相ゆらぎの影響を受けずに位相反転を正しく検出できるようになる。
【0154】
また、位相反転検出部は、IQ軸上において、位相反転がない場合およびIQ軸のいずれも位相反転が生じた第1の検出状態と、I軸のみあるいはQ軸のみ位相反転が生じた第2の検出状態と、の2通りを検出し、第1の検出状態は位相反転なしと判断し、第2の検出状態は位相反転ありと判断し、判断結果を位相補償部に出力する。これにより、位相反転検出部はI軸とQ軸の計4通りの反転状態を2通りの反転結果にして位相補償部に出力して簡単に位相補償できる。
【0155】
また、既知信号として、時間毎に位相反転がない状態、および時間毎に位相反転がある状態でのIQ軸上の各象限のシンボル点間の位相差分の情報の組み合わせパターンを保持する記憶部を有する。位相反転検出部は、組み合わせパターンのなかから、受信信号の時間毎の特定の2シンボルの組み合わせに対応するシンボル点間の位相差分を参照し、IQ軸上の位相反転がない領域、あるいはIQ軸上の位相反転がある領域、のいずれであるかに基づき、位相反転の有無を検出する。これにより、時間(シンボル間)毎にIQ軸上で異なるシンボル位置に対応して、各時間での受信信号の位相反転を簡単に検出できるようになる。この既知信号の組み合わせパターンが示す各時間での受信信号の位相の情報は、予め記憶部に保持しておいてもよい。
【0156】
また、位相補償部は、送受信間のレーザ周波数差による光周波数オフセットを補償する光周波数オフセット補償部と、送受信間の位相差を補償する位相雑音補償部と、を含む。これにより、光周波数オフセット補償部および位相雑音補償部は、それぞれ、位相反転検出部による位相反転の有無に基づいて、正しく光周波数オフセット補償および位相雑音補償できる。
【0157】
また、位相補償部は、位相反転補償部を含む。また、位相反転補償部は、位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合には、位相補償した信号をそのまま出力する。また、位相反転補償部は、位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合には、I軸の位相反転を基準とした位相量に基づき位相反転を補償する。また、位相反転補償部は、位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合には、Q軸の位相反転を基準とした位相量に基づき位相反転を補償してもよい。また、位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合、位相反転なし、あるいはI軸およびQ軸の位相反転であり、位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合、I軸のみの位相反転、あるいはQ軸のみの位相反転があることを示す。このように、位相反転補償部は、位相反転の有無に基づき、位相反転の出力を最適化することで位相補償を簡単に行えるようになる。
【0158】
また、実施の形態の光受信器は、位相変調された光信号を光電変換した受信信号を復調する。光受信器は、受信した光信号を偏波分離する90度光ハイブリッドと、偏波分離後の光信号を光電変換する光電変換部と、光電変換後の受信信号を復調する復調部と、を含む。復調部は、受信信号に対する適応等化処理を行う適応等化処理部と、適応等化処理後の受信信号に含まれる既知信号に基づき、受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部と、位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、受信信号の位相を位相補償する位相補償部と、位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、位相補償後の受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部と、を備える。これにより、光送信器の変調器が出力する送信信号にIQ軸の位相反転が生じても、光受信器側で正しく位相反転を検出し補償できるようになる。
【0159】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0160】
(付記1)位相変調された光信号を光電変換した受信信号の位相を補償する位相補償装置において、
前記受信信号に含まれる既知信号に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記受信信号の位相を位相補償する位相補償部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記位相補償後の前記受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部と、
を備えたことを特徴とする位相補償装置。
【0161】
(付記2)前記既知信号は、位相反転検出用の信号を含み、
前記位相反転検出部は、
前記位相反転検出用の信号が示す光送信器での変調による基準となる2シンボル間の位相差分と、前記受信信号の2シンボル間の位相差分との差分に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出する、
ことを特徴とする付記1に記載の位相補償装置。
【0162】
(付記3)前記位相反転検出部は、
IQ軸上において、位相反転がない場合およびIQ軸のいずれも位相反転が生じた第1の検出状態と、I軸のみあるいはQ軸のみ位相反転が生じた第2の検出状態と、の2通りを検出し、
前記第1の検出状態は位相反転なしと判断し、前記第2の検出状態は位相反転ありと判断し、判断結果を前記位相補償部に出力する、
ことを特徴とする付記2に記載の位相補償装置。
【0163】
(付記4)前記既知信号として、時間毎に位相反転がない状態、および時間毎に位相反転がある状態でのIQ軸上の各象限のシンボル点間の位相差分の情報の組み合わせパターンを保持する記憶部を有し、
前記位相反転検出部は、
前記組み合わせパターンのなかから、受信信号の時間毎の特定の2シンボルの組み合わせに対応するシンボル点間の位相差分を参照し、IQ軸上の位相反転がない領域、あるいはIQ軸上の位相反転がある領域、のいずれであるかに基づき、位相反転の有無を検出する、
ことを特徴とする付記1に記載の位相補償装置。
【0164】
(付記5)前記位相補償部は、
送受信間のレーザ周波数差による光周波数オフセットを補償する光周波数オフセット補償部と、
送受信間の位相差を補償する位相雑音補償部と、を含み、
前記光周波数オフセット補償部および前記位相雑音補償部は、それぞれ、前記位相反転検出部による位相反転の有無に基づく補償を行う、
ことを特徴とする付記1に記載の位相補償装置。
【0165】
(付記6)前記位相補償部は、位相反転補償部を含み、
前記位相反転補償部は、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合には、位相補償した信号をそのまま出力し、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合には、I軸の位相反転を基準とした位相量に基づき位相反転を補償する、
ことを特徴とする付記1に記載の位相補償装置。
【0166】
(付記7)前記位相補償部は、位相反転補償部を含み、
前記位相反転補償部は、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合には、位相補償した信号をそのまま出力し、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合には、Q軸の位相反転を基準とした位相量に基づき位相反転を補償する、
ことを特徴とする付記1に記載の位相補償装置。
【0167】
(付記8)前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転なしと判定した場合、位相反転なし、あるいはI軸およびQ軸の位相反転であり、
前記位相反転検出部による位相反転検出の結果が位相反転ありと判定した場合、I軸のみの位相反転、あるいはQ軸のみの位相反転である、
ことを特徴とする付記6または7に記載の位相補償装置。
【0168】
(付記9)前記既知信号の組み合わせパターンが予め前記記憶部に保持されていることを特徴とする付記4に記載の位相補償装置。
【0169】
(付記10)位相変調された光信号を光電変換した受信信号を復調する光受信器において、
受信した光信号を偏波分離する90度光ハイブリッドと、
偏波分離後の光信号を光電変換する光電変換部と、
光電変換後の受信信号を復調する復調部と、を含み、
前記復調部は、
前記受信信号に対する適応等化処理を行う適応等化処理部と、
前記適応等化処理後の前記受信信号に含まれる既知信号に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出する位相反転検出部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記受信信号の位相を位相補償する位相補償部と、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記位相補償後の前記受信信号の位相反転を補償する位相反転補償部と、
を備えたことを特徴とする光受信器。
【0170】
(付記11)位相変調された光信号を光電変換した受信信号の位相を補償する位相補償方法において、
前記受信信号に含まれる既知信号に基づき、前記受信信号の位相反転の有無を検出し、
検出した位相反転の有無に基づき、前記受信信号の位相を位相補償し、
前記位相反転検出部が検出した位相反転の有無に基づき、前記位相補償後の前記受信信号の位相反転を補償する、
ことを特徴とする位相補償方法。
【符号の説明】
【0171】
100 位相補償装置
101 適応等化処理部
102 位相補償部
103 位相反転補償部
104 誤り訂正部
105 位相反転検出部
106 位相反転付加部
110 光周波数オフセット補償部
111,113,121 共役部
112,115,117,122,124 乗算部
114 遅延部
116,123 平均化/補償量算出部
120 位相雑音補償部
301 光送信器
302 伝送路
303 光受信器
312 ドライバ
313 変調器
321 90度光ハイブリッド
322 光電変換部
323 受信DSP
401 レーザ光源
402 I軸変調部
403 Q軸変調部
404 位相変調部
1301 結合部
1302 ナイキストフィルタ
1401 位相差分演算部
1402 位相反転判定信号対象判定部
1403 平均化部
1404 位相反転検出部
E 受信信号(受信データ)
TS1 既知信号
TS2 位相反転判定信号
PS パイロット信号
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