(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025591
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】寒天含有食品、および品質改良剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/256 20160101AFI20240216BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240216BHJP
A23C 19/093 20060101ALI20240216BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240216BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240216BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20240216BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240216BHJP
A23G 9/34 20060101ALI20240216BHJP
A23C 9/154 20060101ALI20240216BHJP
A23C 9/137 20060101ALI20240216BHJP
A23G 3/00 20060101ALI20240216BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20240216BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20240216BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240216BHJP
A21D 2/10 20060101ALN20240216BHJP
A21D 13/00 20170101ALN20240216BHJP
A23L 9/20 20160101ALN20240216BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20240216BHJP
A23L 17/00 20160101ALN20240216BHJP
【FI】
A23L29/256
A23L2/52
A23C19/093
A23L5/00 G
A23L5/00 N
A23L27/00 D
A23L2/00 E
A23L2/02 E
A23L2/38 P
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A23L5/00 E
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A23C9/137
A23G3/00
A23G3/34 101
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A23L27/00 E
A23L2/00 A
A21D2/10
A21D13/00
A23L9/20
A21D13/80
A23L17/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131716
(22)【出願日】2022-08-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022128278
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉内 達弘
(72)【発明者】
【氏名】四戸 大介
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B025
4B032
4B035
4B041
4B042
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】新規な寒天含有食品、および品質改良剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る寒天含有食品は、寒天を含有する食品であって、前記寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・s、硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下であり、前記食品は、高糖度食品、乳製品、含気食品、冷菓、焼成食品材料、菓子、ペースト状食品、流動性調味料、介護食、飲料(ドリンクゼリーを含む)、総菜、パウチ食品、レトルト食品、または缶詰食品であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天を含有する食品であって、
前記寒天は、
1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、
1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・s、
硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下
であり、
前記食品は、高糖度食品、乳製品、含気食品、冷菓、焼成食品材料、菓子、ペースト状食品、流動性調味料、介護食、飲料、惣菜、パウチ食品、レトルト食品、または缶詰食品であることを特徴とする寒天含有食品。
【請求項2】
前記寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~200g/cm2であることを特徴とする請求項1記載の寒天含有食品。
【請求項3】
前記寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10g/cm2以上150g/cm2未満であることを特徴とする請求項2記載の寒天含有食品。
【請求項4】
寒天を含有する品質改良剤であって、
前記寒天は、
1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、
1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・s、
硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下
であり、
前記品質改良剤は、離水抑制剤、分散安定剤、食感改良剤、保形・安定剤、物性改良剤、または油脂代替剤であることを特徴とする品質改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天含有食品、および品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
寒天は、食品そのものとしてだけでなく物性改良剤としても広く利用されている。寒天は、その高いゲル化力によって食感に大きな影響を与えるため、適用範囲は限定的であったが、ゲル強度の低い寒天(低強度寒天)の上市によりその適用範囲が広がった。特許文献1に記載されている分子が短く切断された低強度寒天は、ゲル状食品以外にも飲料や半固形状食品などにも一定量添加することができ、それにより食品の保水性や乳化性などを改善することが可能となった。
【0003】
一方で、消費者の嗜好の多様化に伴い、食品に求められる食感も多様化してきている。保水性や乳化性などの機能を維持あるいは向上させたうえで、従来とは異なる食感を付与できる寒天が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、新規な寒天含有食品、および品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2であり、かつ、85℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・sであり、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天(以下、低強度高粘性寒天という)を使用することによって、新規な寒天含有食品が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る寒天含有食品は、寒天を含有する食品であって、前記寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・s、硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下であり、前記食品は、高糖度食品、乳製品、含気食品、冷菓、焼成食品材料、菓子、ペースト状食品、流動性調味料、介護食、飲料(ドリンクゼリーを含む)、総菜、パウチ食品、レトルト食品、または缶詰食品であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る品質改良剤は、寒天を含有する品質改良剤であって、前記寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・s、硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下であり、前記品質改良剤は、離水抑制剤、分散安定剤、食感改良剤、保形・安定剤、物性改良剤、または油脂代替剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な寒天含有食品、および品質改良剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の寒天含有食品に用いられる寒天は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度、すなわち20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2であるのに加えて、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度、すなわち85℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・sで、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である。
20℃における1.5%寒天ゲル強度と、85℃における1.5%寒天ゾル粘度とが所定の範囲内にあり、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天を用いることによって、所望の特性を備えた寒天含有食品を得ることが可能となった。
【0011】
20℃における1.5%寒天ゲル強度が10g/cm2未満の場合には、ゲル形成能力が低いために食感および物性改良能力が十分でなく、220g/cm2より大きいと強度の割合が弾力を上回るため所望の食感を形成しない。20℃における1.5%寒天ゲル強度は、10~200g/cm2であることが好ましく、10g/cm2以上150g/cm2未満であることがより好ましい。
【0012】
85℃における1.5%寒天ゾル粘度が7mPa・sより小さいと物性改良効果が十分でなく、30mPa・sを超えた場合には、食感が重たくなりすぎてしまう。85℃における1.5%寒天ゾル粘度は、10~30mPa・sであることが好ましい。
【0013】
硫酸根とはSO4
2-を指し、一般的な重量法により定量することができる。寒天における硫酸根含量は、寒天含有食品の粘弾性、着色、および臭い等に影響を及ぼす。硫酸根含量は0.5質量%以上4.0質量%以下に規定される。硫酸根含量が0.5質量%未満の場合には、粘弾性に乏しいため所望の食感を得ることができず、4.0質量%を超えるものは臭いや着色が激しく好ましくない。硫酸根含量は、0.8質量%以上3.5質量%以下であることが好ましい。
【0014】
20℃における1.5%寒天ゲル強度、85℃における1.5%寒天ゾル粘度、および硫酸根含量のいずれか1つでも所定範囲から外れた寒天を用いた場合には、本発明の寒天含有食品は得られない。すなわち、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2であるのに加えて、80℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・s、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天のみが本発明の効果を有する。
【0015】
1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・s、硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下の寒天(低強度高粘性寒天)は、寒天含有食品の品質改良剤として用いることができる。品質改良剤は、離水抑制剤、分散安定剤、食感改良剤、保形・安定剤、物性改良剤、または油脂代替剤である。具体的には、菓子や総菜等の離水を抑制する離水抑制剤;飲料やパウチ食品、レトルト食品、缶詰食品の分散性を高める分散安定剤等として有効に用いることができる。かかる寒天は、チーズや高栄養食等の濃厚でありながらくちどけの良い食感を付与する食感改良剤;ババロアやホイップクリーム等の形状等を維持する保形・安定剤;介護食等の付着性や凝集性を改善する物性改良剤;ペースト状食品やパウチ食品、レトルト食品、缶詰食品等にカロリーを抑えながら油脂感を付与できる油脂代替剤としても、有効に用いることができる。
本明細書における保形・安定剤とは、外形の安定性、および、外形以外の安定性(例えば炭酸飲料中の起泡の安定性)の少なくとも一方を維持する剤をいう。炭酸飲料中の起泡の安定性に着目する場合には、消泡抑制剤と称することができる。
【0016】
なお、食感改良剤によって改良される食感は、食品に応じて多種多様である。例えば、錦玉や羊羹の場合には、粘弾性を高めることができ、マシュマロの場合には柔らかさが向上する。また、チーズの場合には弾力やねばりが向上し、ヨーグルトの場合には、滑らかさや濃厚感が高められる。さらに、ドリンクゼリーの場合には、プルンとした食感を増大させることができる。
【0017】
上述したような条件を備えた寒天は、海藻原料を低温でアルカリ処理後、熱水抽出して製造することができる。その場合の温度は60℃以下が好ましく、20~60℃がより好ましく、30~40℃がさらに好ましい。また、アルカリ処理時間は3時間以内が好ましく、0.1~1時間がより好ましい。また、海藻原料の種類によっては、アルカリ処理を行なわずに熱水抽出を行なっても良い。使用し得る海藻原料としては、例えば天草(南アフリカ産)、天草(チリ産)、オゴノリ(チリ産)、オゴノリ(ブラジル産)、およびオゴノリ(日本産)等が挙げられる。具体的な製造条件は、海藻原料の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0018】
例えば、海藻原料として天草(南アフリカ産)を用いる場合には、アルカリ処理を行わないか、30~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、消石灰、生石灰、または水酸化アンモニウムの水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液の濃度は、0.1~10.0%程度とすることができる。
【0019】
アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.8程度)で熱水により寒天成分を抽出する。抽出液を濾過し、得られた濾液をゲル化させる。さらに、脱水、乾燥、粉砕することによって、粉末状の寒天が得られる。天草(南アフリカ産)は、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0020】
海藻原料として天草(チリ産)を用いる場合には、アルカリ処理を行わないか、30~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.8程度)で熱水により寒天成分を抽出する。抽出液を濾過し、得られた濾液をゲル化させる。さらに、脱水、乾燥、粉砕することによって、粉末状の寒天が得られる。あるいは、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0021】
海藻原料としてオゴノリ(ブラジル産)を用いる場合には、30~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ水溶液としては、上述したものを用いることができる。アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.7程度)で熱水により寒天成分を抽出する。あるいは、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0022】
海藻原料としてオゴノリ(チリ産)を用いる場合には、45~60℃で0.1~3.0時間、アルカリ水溶液に浸漬してアルカリ処理を行う。アルカリ水溶液としては、上述したものを用いることができる。アルカリ処理後には、より中性域(pH5.0~6.7程度)で熱水により寒天成分を抽出する。あるいは、アルカリ処理を施さずにpH4.5~6.8で熱水抽出してもよい。得られた抽出液を用いて、上述と同様の手法により粉末状の寒天を得ることができる。
【0023】
海藻原料として、天草(南アフリカ産)、天草(チリ産)、オゴノリ(ブラジル産)、オゴノリ(チリ産)のいずれを用いた場合でも、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2、かつ80℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・s、さらに硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天が得られる。こうした寒天を用いることによって、従来にない食感を持ちながらも各種物性に優れた食品の製造が可能となった。
【0024】
本発明の寒天含有食品は、その種類に応じた適切な原料を適切な量で配合し、一般的な方法により製造することができる。食品は、高糖度食品、乳製品、含気食品、冷菓、焼成食品材料、菓子、ペースト状食品、流動性調味料、介護食、飲料(ドリンクゼリーを含む)、総菜、パウチ食品、レトルト食品、または缶詰食品である。
それぞれの食品の具体例を以下に示す。
【0025】
高糖度食品の具体例としては、例えば、高糖度寒天ゲル状食品、および高栄養食などが挙げられる。高糖度寒天ゲル状食品としては、糖度が高ければ特に限定されないが、錦玉、羊羹、琥珀羹、乾燥ゼリー、わらびもち、ういろう、および餡などの和菓子、グミキャンディー、ヌガー、ゼリービーンズ、キャラメル、マシュマロ、グレーズ、ナパージュ、カスタードクリーム、バタークリーム、コンフィチュール、およびガナッシュなどの洋菓子などが挙げられる。高糖度ゲル状食品の糖度は50~90であることが好ましい。使用する糖は特に限定されず、ブドウ糖、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、オリゴ糖、デキストリン、水飴など水溶性の糖であればよい。
【0026】
乳製品の具体例としては、例えば、チーズおよびヨーグルトなどが挙げられ、含気食品の具体例としては、例えば、ホイップクリーム、ババロア、および炭酸飲料などが挙げられる。冷菓の具体例としては、例えばラクトアイス、アイスクリーム、およびシャーベットなどが挙げられ、焼成食品材料の具体例としては、例えばケーキミックス、パン用ミックス、およびホットケーキミックスなどが挙げられる。菓子の具体例としては、例えば小豆餡、どら焼き、饅頭、水まんじゅう、ゼリー、およびジャムが挙げられ、ペースト状食品の具体例としては、例えば、脂肪代替ペーストおよびフラワーペーストなどが挙げられる。
【0027】
流動性調味料は、たれ・ソース類をさし、その具体例としては、例えば、みたらしのたれ、ホワイトソース、ブラウンソース、トマトソース、フルーツソース、およびドレッシングなどが挙げられる。介護食の具体例としては、例えば、ほうじ茶ゼリー、鮭のムース、ソフト食、およびミキサー食などが挙げられ、飲料の具体例としては、例えば、野菜飲料、酸乳飲料、およびドリンクゼリーなどが挙げられる。また、総菜の具体例としては、野菜炒め、ポテトサラダ、およびコールスローなどが挙げられ、パウチ食品、レトルト食品、缶詰食品の具体例としては、サバの缶詰、マグロやカツオの缶詰、およびペットフードなどが挙げられる。
【0028】
本発明の寒天含有食品には、寒天以外のゲル化剤も併用することができる。寒天以外のゲル化剤は、カラギーナン、グルコマンナン、カシヤガム、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、フェネグリークガム、キサンタンガム、サクシノグリカン、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、プルラン、アラビアガム、ペクチン、大豆多糖類、セルロース、セルロース誘導体、ゼラチン、トラガントガム、ガティガム、シロキクラゲ多糖、カードラン、および澱粉から選択される。これらは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の寒天含有食品は、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃での強度が10~220g/cm2、かつ1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃での粘度が7~30mPa・sであり、さらに硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天が用いられている。低強度でありながら粘弾性をもつゲルネットワークを形成することによって、従来とは異なる食感を付与することができる。しかも、硫酸根含量が適切な範囲にあることから、包材や歯への付着性が低減され、良好な保水性を有しながらも、着色や臭いが少ない。
【実施例0030】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0031】
試料として、下記に示す寒天を準備した。
寒天1:ZH(伊那食品工業(株))
寒天2:天草(南アフリカ産)をアルカリ処理せずに、pH5.5で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天3:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理せずに、中性(pH7.0)で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天4:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(60℃、0.5時間)した後、pH6.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天5:天草(チリ産)をアルカリ処理せずに、pH6.2で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天6:天草(南アフリカ産)をアルカリ処理(40℃、1時間)した後、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天7:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(40℃、1時間)した後、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天8:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理せずに、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天9:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(30℃、0.5時間)した後、中性(pH7.0)で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天10:天草(南アフリカ産)をアルカリ処理せずに、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天11:UX-100(伊那食品工業)
寒天12:天草(チリ産)をアルカリ処理(40℃、2時間)した後、pH7.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天13:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(80℃、1時間)した後、pH4.3で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天14:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(30℃、4時間)した後、pH6.2で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天15:オゴノリ(ブラジル産)をアルカリ処理(50℃、2.5時間)した後、pH5.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天16:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(50℃、1時間)した後、pH6.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天17:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理せずに、pH7.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
寒天18:オゴノリ(チリ産)をアルカリ処理(40℃、1時間)した後、pH7.0で熱水抽出した。得られた抽出液を濾過後、濾液をゲル化させ、脱水、乾燥、粉砕することにより寒天粉末を取得した。
【0032】
各寒天について、1.5%寒天濃度のゲルにおける20℃でのゲル強度(1.5%寒天ゲル強度)、1.5%寒天濃度のゾルにおける85℃でのゾル粘度(1.5%寒天ゾル粘度)、および硫酸根含量を、以下の方法により測定した。評価方法は、以下のとおりである。
【0033】
<20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)>
寒天を精製水に加え沸騰溶解し1.5%溶液を調製し、20℃で15時間放置後、凝固せしめたゲルについて、以下のようにゲル強度を測定した。
テクスチャーアナライザー(microstable社製)を用い、円柱状の断面積1cm2のプランジャーをゲルに侵入させ(侵入速度20mm/分)、ゲルが破断したときの応力を測定しゲル強度とした。
なお、参考として本発明のゲル強度範囲内ではテクスチャーアナライザーによる測定値と日寒水式のゲル強度測定値はほぼ同一であった。
【0034】
<85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)>
トールビーカー(300mL)に、85℃の寒天液(寒天濃度1.5%)を300mL収容した。No.1のローターを用い、測定開始後40秒での粘度をB型粘度計(Brookfield社製)により測定した。
【0035】
<硫酸根含量(SO4)>
通常行われる重量法により測定した。寒天溶液に塩酸や過酸化水素水を使用して寒天を加水分解する。この溶液に塩化バリウム溶液を加えて、硫酸基を硫酸バリウムとして沈殿させ、この質量から硫酸根(硫酸基)を算出する。
各寒天の20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)、および硫酸根含量(SO4)を下記表1にまとめる。
【0036】
【表1】
*(I):テクスチャーアナライザーでの測定値
(II):日寒水式での測定値
(-):日寒水式ではゲル強度100g/cm
2未満は測定できないことから、(-)で表した
【0037】
寒天1は、従来から一般に用いられている寒天である。寒天11は特許文献1(特許第3023244号)に記載の低強度寒天である。寒天3,17および寒天18は、特許文献3(特許第3758834号公報)の高粘性寒天に相当する。
【0038】
次に、各種原料を寒天に配合して、高糖度食品としての高糖度寒天ゲル食品を製造し、得られた食品の物性を評価した。食品の製造に用いる原料は、以下のとおりである。
・ゼラチン:イナゲルA-81P(伊那食品工業(株))
・水あめ:マルトーカ(加藤化学(株))
・グラニュー糖:三井製糖(株)
・環状デキストリン:α-サイクロデキストリン((株)シクロケム)
・並餡:田中製餡(株)
・生クリーム:フレッシュクリーム大雪原45(森永乳業(株))
・濃縮赤ブドウ果汁:雄山商事(株)
・無水結晶クエン酸:磐田化学工業(株)
・クエン酸三ナトリウム:磐田化学工業(株)
【0039】
評価方法は、以下のとおりである。
<高糖度寒天ゲル食品の破断応力、侵入距離>
テクスチャーアナライザー(microstable社製)を用い、円柱状の断面積1cm2のプランジャーをゲルに侵入させて(侵入速度20mm/分)、ゲルが破断したときの応力(Pa)、およびその際の侵入距離(mm)を測定した。高糖度寒天ゲル状食品に求められる良好な食感(粘弾性A)を、下記式(1)により求める。
粘弾性A(Pa/mm)=破断応力(Pa)÷侵入距離(mm) 式(1)
粘弾性Aは、一般的には、100~150(Pa/mm)の範囲内であることが好ましいが、高糖度寒天状ゲル食品の種類によって最適な値は異なる。マシュマロ等の含気された食品や、グミキャンディーやソフトキャラメルのように粘弾性の高い食品の場合は圧縮されても組織が破壊されないため測定が困難な場合もある。
【0040】
<食感>
パネル10名により官能評価を行い、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:弾力があり、チューイーな食感である
○:◎には劣るが、弾力があり、チューイーな食感である
△:×よりは弾力があるが、若干崩れるような噛み応えである
×:弾力がなく、崩れるような噛み応えである
食感の評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
【0041】
<経時的な離水し易さ>
高糖度寒天ゲル状食品を常温で保管し、3か月経過後のゲル表面の泣きの状態から離水し易さを評価した。保管の際は、アルミ包装を行うことで水分の蒸発を防いだ。パネル10名による官能評価を行って、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:ゲル表面の泣きが全くない(離水しない)
○:◎には劣るが、ほとんど泣きがない(ほとんど離水しない)
△:ゲル表面にうっすらと泣きがみられる(軽度に離水した)
×:ゲル表面に泣きがみられる(離水が生じた)
経時的な離水し易さの評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
なお、高糖度ゲル状食品の“泣き”(離水)は微量であり、生じた離水は高糖度のため付着性の高い粘質液となる。粘質液のためゲル状食品との分離が困難であり、定量測定が困難となるため官能試験による評価を行った。
【0042】
<喫食時の歯への付着性>
高糖度寒天ゲル状食品の歯への付着性について、パネル10名による官能評価を行い、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:歯への付着性が全くない
○:◎には劣るが、ほとんど歯に付着しない
△:×には勝るが、歯への付着がある
×:べたべたと歯に付着する
付着性の評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
【0043】
<作業性>
製造中の作業性について10名のパネルによる評価を行い、最も評価が多かった項目を記載した。
◎:さらさらとしており製造上全く問題ない
○:◎には劣るが製造上ほとんど問題ない
△:粘度が高く、製造に支障があるが、問題なく充填できる
×:粘度が高く、充填前にゲル化してしまう
作業性の評価は、“◎”であることが好ましいが、“○”も許容される。
上記4つの評価のうち、1つでも“△”または“×”があればNGである。
【0044】
<実験例1>
下記表2に示す配合(質量部)で、糖度75の錦玉を作製した。具体的には、水に寒天を分散させ、加熱溶解後、水あめとグラニュー糖を加え、再加熱して糖度を75に調整した。アルミ蒸着性のフィルム容器に充填し、常温で3か月間保管して、経時的な泣きを確認するためのサンプルを得た。
【0045】
【0046】
寒天2は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。このため、寒天2を用いて、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1)。
一方、従来から一般的に使用されている寒天1は、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超え、しかも85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天1を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例1に示されている。
【0047】
<実験例2>
寒天2~8を用い、下記表3に示す処方で実験例1と同様に錦玉を作製した(比較例2、実施例2~6)。下記表3には、実施例1の錦玉の評価も併せて示す。
【0048】
【0049】
寒天2,4~8は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。このため、これらの寒天を用いて、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1~6)。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例2に示されている。
なお、20℃における1.5%寒天ゲル強度が10より低い寒天は、寒天の製造が困難であったため、評価は得られていない。
【0050】
<実験例3>
寒天3,6,7,9~13を用い、下記表4に示した処方で実験例1と同様に錦玉を作製した(比較例2~6、実施例5,7,8)。
【0051】
【0052】
寒天9,11は、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲外である。このため、寒天9,11を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例3,4に示されている。
また、寒天3,12,13は硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)220g/cm2を超えている。さらに、寒天12,13は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲外である。このように、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)220g/cm2を超える場合は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)がいかなる値であっても所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例2,5,6に示されている。
特に、寒天9,12のように85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が30mPa・sを超えた寒天を用いて錦玉を製造しようとした場合、製造過程での作業性が非常に悪く製造が困難であることが比較例3,5に示されている。
【0053】
<実験例4>
寒天14~18を用い、下記表5に示した処方で実験例1と同様に錦玉を作製した(比較例7~9、実施例9,10)。下記表5には、実施例1,4,5の錦玉の評価も併せて示す。
【0054】
【表5】
食感(*):着色(微褐色)あり。
海藻臭多い
【0055】
寒天2,6,7,15,16は、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。このため、寒天2,6,7,15,16を使用した錦玉は弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないものであった。(実施例1,4,5,9,10)
寒天14,17,18は、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であるが、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲外である。このため、寒天14,17,18を使用しても、所望の特性を備えた錦玉は得られないことが比較例7,8,9に示されている。
【0056】
<実験例5>
寒天2を用い、下記表6に示した処方で、実験例1と同様に錦玉を作製した(実施例11~19)。下記表6には、実施例1の錦玉の評価も併せて示す。
【0057】
【0058】
寒天2は20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。ゆえに、寒天2を用いた場合には、いずれの添加量であっても、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1,11~19)。
【0059】
<実験例6>
寒天2を用い、下記表7に示した処方で、実験例1と同様に錦玉を作製した(実施例20~27)。最終糖度は、表7に示した値になるように調整した。下記表7には、実施例1の錦玉の評価も併せて示す。
【0060】
【0061】
寒天2は20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、かつ85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、さらに硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内である。ゆえに寒天2を用いた場合には、いずれの糖度であっても、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない錦玉を製造することができた(実施例1,20~27)。
【0062】
<実験例7>
寒天1,2を用い、下記表8に示した処方で糖度77の赤ブドウ味のグミキャンディーを作製した(比較例10、実施例28)。具体的には、水に寒天を分散させ、加熱溶解後、水あめ、グラニュー糖、およびα-CDを加えて再加熱した。糖度を79に調整し、次いで、濃縮赤ブドウ果汁、結晶クエン酸、クエン酸三ナトリウムを添加した。経時的な泣きを確認するためのサンプルは、アルミ蒸着性のフィルム容器に充填し、常温で保管した。
【0063】
【0064】
寒天2を用いた場合には、酸味があり、pHが3.8より低い処方においても、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないグミキャンディーを製造することができた(実施例28)。
寒天1を用いた場合には、所望の特性を備えたグミキャンディーは得られないことが比較例10に示されている。
【0065】
<実験例8>
寒天11、寒天2を用い、下記表9に示した処方で糖度71のマシュマロを作製した(比較例11、実施例29)。具体的には、寒天とゼラチンを水に分散させ、加熱溶解後、水あめ、グラニュー糖を加えた。これを攪拌して気泡させた後、スターチモールドに充填してゲル化させた。
【0066】
【0067】
寒天2を用いた場合には、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないマシュマロを製造することができた(実施例29)。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても所望の特性を備えたマシュマロは得られないことが、比較例11に示されている。
【0068】
<実験例9>
寒天1、寒天2を用い。下記表10に示した処方で糖度が68の羊羹を作製した(比較例12、実施例30)。具体的には、寒天を水に分散し、加熱溶解後、グラニュー糖、水あめ、並餡を添加した後、再加熱して糖度を68に調整した。
【0069】
【0070】
寒天2を用いた場合には、弾力を有し経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がない羊羹を製造することができた(実施例30)。実施例30の羊羹は、ねっとりと粘りのある良好な食感であった。
寒天1は、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超え、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天1を使用しても所望の特性を備えた羊羹は得られないことが、比較例12に示されている。
【0071】
<実験例10>
寒天11、寒天2を用い、下記表11に示した処方でソフトキャラメルを作製した(比較例13、実施例31)。具体的には、寒天を水に分散し、加熱溶解後、グラニュー糖、水あめ、生クリームを添加した後、再加熱して糖度を90に調整した。
【0072】
【0073】
寒天2を用いた場合には、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないキャラメルを製造することができた(実施例31)。得られたキャラメルはプランジャーが侵入することによる破断が生じなかったため、破断応力および侵入距離は測定不可能であった。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても所望の特性を備えたキャラメルは得られないことが、比較例13に示されている。
【0074】
<実験例11>
寒天11、寒天2を用い、下記表12に示した処方で糖度67のナパージュを作製した(比較例14.実施例32)。具体的には、寒天を水に分散し、加熱溶解後、グラニュー糖、水あめを添加した後、再加熱して糖度を67に調整した。
【0075】
【0076】
寒天2を用いた場合には、弾力を有するとともに柔らかい食感であり、経時的なゲル表面の泣きがなく、喫食時の歯への付着性がないナパージュを製造することができた(実施例32)。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても所望の特性を備えたナパージュは得られないことが、比較例14に示されている。
【0077】
<実験例12>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表13に示した処方で、高糖度食品としての高栄養食を作製した(実施例33,比較例15,16)。具体的には、寒天を水に加えて沸騰するまで加熱した。次いで、マルトデキストリン、果糖、アミノ酸ミックス、および香料を混合した後、pHが3.8となるように酸味料を添加した。その後、85℃で30分間煮沸殺菌した後、冷却した。
【0078】
得られた高栄養食について、以下の手法により離水の程度を調べた。高栄養食をろ紙に20g絞り出し、密閉空間にて24時間保存した。その後、ろ紙への染み出しを目視により観察し、以下の指標に従って離水の多少を評価した。
◎:ろ紙への染み出しはほとんど見られない。
〇:◎には劣り、サンプルの周りにわずかに染み出しが見られる。
×:ろ紙全体に染み出しが広がっている。
【0079】
さらに、パネル10名により高栄養食の官能評価を行い、以下の指標により食感を評価した。
◎:濃厚感・コクがありかつくちどけもよい
〇:濃厚感・もしくはコクがあるが、くちどけはよくない
×:濃厚感・コクが感じられず、水っぽい
得られた結果を、下記表13にまとめる。
【0080】
【0081】
寒天2を用いた場合には、離水し難く、食感も良好な高栄養食を製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用した高栄養食は、離水が顕著で食感も劣ることが、比較例15に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した高栄養食は、食感が悪く離水も生じることが、比較例16に示されている。
【0082】
上記実施例に示されるとおり、低強度高粘性寒天、すなわち20℃における1.5%寒天ゲル強度が10~220g/cm2であり、かつ、85℃における1.5%寒天ゾル粘度が7~30mPa・sであり、かつ硫酸根含量が0.5質量%以上4.0質量%以下である寒天を、錦玉や羊羹などに用いた場合には、従来にはない粘弾性を有する食感が得られる。また、離水(泣き)を防ぎ商品価値が向上するのに加え、付着性も軽減される。しかも、製造時には粘性が低く作業性も良好である。
このように、低強度高粘性寒天は、高糖度食品において「食感改良剤」、「物性改良剤」としての効果を発揮する。
【0083】
<実験例13>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表14に示した処方で、乳製品としてのチーズを作製した(実施例34,比較例17,18)。具体的には、水とヨーグルトを混合し、寒天および食塩を加えて沸騰するまで加熱した。そこに、約50℃に加温したクリームチーズを加えて重量調整、均質化(乳化)した後、容器に充填し冷やし固めた。
【0084】
得られたチーズについて、以下の手法により強度を調べた。チーズを容器に流し固め、1晩冷蔵保管した。翌日、テクスチャーアナライザーで強度を測定した(侵入速度20mm/分、Φ10mm)。
【0085】
また、パネル10名によりチーズの官能評価を行い、以下の指標により食感を評価した。
◎:弾力ねばりがあり、中身のつまった食感
〇:弾力ねばりがあるがややみずっぽい食感
△:弾力はあるが、崩れるゼリー様の食感
×:もろもろとし、みずっぽい食感
【0086】
さらに、以下の手法により離水の程度を調べた。20gのチーズをろ紙に静置し、密閉空間にて24時間保存した。その後、ろ紙への染み出しを目視により観察し、以下の指標により離水の多少を評価した。
◎:ろ紙への染み出しはほとんど見られない。
〇:◎には劣り、チーズの周りにわずかに染み出しが見られる。
×:ろ紙全体に染み出しが広がっている。
得られた結果を、下記表14にまとめる。
【0087】
【0088】
寒天2を用いた場合には、食感が良好であり、離水し難いチーズを製造することができた。しかも、強度も好ましい値である。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用したチーズは、食感が劣っており、離水も顕著に生じることが比較例17に示されている。この場合、強度も好ましい範囲外である。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用したチーズは、食感がさらに悪く、離水も生じることが、比較例18に示されている。この場合には、強度も好ましい範囲外である。
【0089】
<実験例14>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表15に示した処方で、乳製品としてのヨーグルトを作製した(実施例35,比較例19,20)。具体的には、寒天およびグラニュー糖を水に加え、沸騰するまで加熱した。45℃まで冷却した後、あらかじめ45℃で発酵させておいた牛乳、脱脂粉乳、スターターを混合した。得られた混合物を容器に充填し、冷却した。
【0090】
容器で固めたヨーグルトを、1晩冷蔵保存した。翌日、テクスチャーアナライザーで破断強度および破断距離を測定した。(侵入速度20mm/分、Φ10mm)。
【0091】
また、パネル10名によりヨーグルトの官能評価を行い、以下の指標により食感を評価した。
◎:滑らかで、濃厚感がある食感
〇:滑らかだが、やや水っぽい食感
△:ざらつきがあり、水っぽい食感
【0092】
さらに、目視によりホエー(離水)を調べ、以下の指標により評価した。
◎:ホエーの分離がなく、食感がなめらか
〇:ホエーの分離はなく、食感がややざらつく
△:ホエーの分離があり、食感がややざらつく
×:ホエーの分離があり、食感がざらつく
得られた結果を、下記表15にまとめる。
【0093】
【0094】
寒天2を用いた場合には、良好な食感を有し、離水し難いヨーグルトを製造することができた。しかも、破断応力および粘弾性も好ましい範囲内である。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用したヨーグルトは、食感が劣り離水も生じやすいことが比較例19に示されている。また、破断応力および粘弾性は、好ましい範囲から外れている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても、良好な食感を有し、離水し難いヨーグルトを製造することができないことが、比較例20に示されている。また、破断応力および粘弾性は、好ましい範囲から外れている。
【0095】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天をチ-ズ、ヨーグルトに用いた場合には、従来にはない滑らかで濃厚感のある食感が得られる。しかも、ホエーなどの離水が抑制されて商品価値を高めることができる。このように、低強度高粘性寒天は、乳製品において「食感改良剤」、「離水抑制剤」としての効果を発揮する。
【0096】
<実験例15>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表16に示した処方で、含気食品としてのババロアを作製した(実施例36,比較例21,22)。具体的には、寒天およびグラニュー糖を牛乳に加え、沸騰するまで加熱した。粗熱をとった後、溶いた卵黄に混合し、ストロベリーピューレを混合した。25℃まで冷却した後、7分立てにした生クリームと混合して容器に充填した。これを4℃で1晩冷却してゲル化させた後、カップの底面が上になるように皿の上に取り出し、4℃で2日間保存した。
【0097】
4℃で2日間保存後のババロアを目視により観察して、以下の指標により保形性を評価した。
◎:まったくダレておらず、形もカップの形状と全く変わっていない。
○:ほとんどダレておらず、形もカップの形状とほとんど変わっていない。
△:若干ダレてしまっており、多少の離水もみられる。
×:ひどくダレてしまっており、離水がみられる。
【0098】
また、パネル10名によりババロアの官能評価を行い、以下の指標により口当りを評価した。
◎:コクが感じられ、さらっとした口当り。
〇:コクが感じられるが、口当りは重い。
△:糊状感があり、口当りはやや重たい。
×:糊状感があり、口当りが重たい。
得られた結果を、下記表16にまとめる。
【0099】
【0100】
寒天2を用いた場合には、保形性に優れ、口当りが良好なババロアを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用しても、保形性に優れ口当りが良好なババロアは得られないことが比較例21に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても、保形性に優れ口当りが良好なババロアは得られないことが、比較例22に示されている。
【0101】
<実験例16>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表17に示した処方で、含気食品としてのホイップクリームを作製した(実施例37,比較例23,24)。具体的には、寒天を水に加え、90℃で3分間加熱して寒天ペーストを得た。生クリームに前述の寒天ペーストとグラニュー糖を加え、9分立てになるまでホイッパーで含気させた。得られたホイップクリームは、星形の口金を用いて渦巻き状に絞り出し、4℃で2日間保存した。
【0102】
4℃で2日間保存後のホイップクリームを目視により観察して、以下の指標により保形性を評価した。
◎:絞りたての状態と全く変わらず、ダレも全くない。
○:絞りたての状態とほとんど変わらず、ダレもほとんどない。
△:若干ダレてしまっており、多少の離水もみられる。
×:ひどくダレてしまっており、離水がみられる。
【0103】
また、パネル10名によりホイップクリームの官能評価を行い、以下の指標により口当りを評価した。
◎:乳のコクが感じられ、さらっとした口当り。
〇:乳のコクが感じられるが、口当りは重い。
△:糊状感があり、口当りはやや重たい。
×:糊状感があり、口当りが重たい。
得られた結果を、下記表17にまとめる。
【0104】
【0105】
寒天2を用いた場合には、保形性に優れ、口当りが良好なホイップクリームを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用したホイップクリームは、保形性が著しく劣り、口当りも悪いことが比較例23に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用しても、保形性および口当りが良好なホイップクリームは得られないことが、比較例24に示されている。
【0106】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天をババロア、ホイップクリームなどに用いた場合には、ダレが防止されて形状が保たれ、離水の発生も防止される。低強度高粘性寒天を含有するババロア等は、糊状感がなく良好な口当たりであり、コクが感じられる。また、低強度高粘性寒天を含有する炭酸飲料は、すっきりとした飲み心地を有するのに加え、炭酸の泡を長持ちさせることができ、物性が改良される。このように、低強度高粘性寒天は、含気食品において「食感改良剤」、「離水抑制剤」、「保形・安定剤」、「物性改良剤」としての効果を発揮する。
【0107】
<実験例17>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表17に示した処方で、冷菓としてのラクトアイスを作製した(実施例38,比較例25,26)。具体的には、粉末原料(グラニュー糖、脱脂粉乳、ローカストビーンガム、乳化剤)と寒天を粉体混合し、ヤシ硬化油、無塩バター、水飴、水に混合した。その後、65℃まで加温し、ゴーリン式ホモジナイザーで均質化した。次いで、90℃で20秒間殺菌し、5℃以下に冷却し、5℃以下で6時間エージングを行った。さらに、バニラエッセンスを添加し、-5℃で8分間フリージングを行った。当該フリージングの際、冷却しながら材料混合物を撹拌し、含気された半流動体ラクトアイスを得た。φ70mmの半球状のシリコン製の型に半流動体ラクトアイスを充填し、-30℃まで急速冷凍してラクトアイスを得た。
【0108】
パネル10名によりラクトアイスの官能評価を行い、以下の指標により口当りを評価した。
◎:乳のコクが感じられ、さらっとした口当り。
〇:乳のコクが感じられるが、口当りは重い。
△:糊状感があり、口当りはやや重たい。
×:糊状感があり、口当りが重たい。
【0109】
また、融解時のラクトアイスを目視により観察して、以下の指標により保形性を評価した。
◎:融解時に型崩れが少なく、シネレシスがない。
〇:融解時に型崩れが少なく、シネレシスがある。
△:融解時に粘性のある液体になる。
×:融解時に粘性のない液状になる。
得られた結果を、ミックス液の粘度とともに下記表18にまとめる。なお、ミックス液の粘度は、5℃のミックス液についてB型粘度計により測定した値である。
【0110】
【0111】
寒天2を用いた場合には、口当りが良好で保形性に優れたラクトアイスを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用したラクトアイスは、口当りが劣ることが比較例25に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用したラクトアイスは、口当りが悪く保形性も劣ることが、比較例26に示されている。
【0112】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天をラクトアイス、シャーベットなどに用いた場合、さらっとして口当たりが良いにもかかわらずコクを感じられるものとなる。また糊状感も改善できる。さらに、食品の融解時よる型崩れを防止でき、離水も抑制される。このように、低強度高粘性寒天は、冷菓において「食感改良剤」、「離水抑制剤」、「保形・安定剤」、「物性改良剤」としての効果を発揮する。
【0113】
<実験例18>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表19に示した処方で、焼成食品材料としてのケーキミックスを作製した(実施例39,比較例27,28)。具体的には、表に示したすべての材料を混合し、ケーキミックスを調製した。得られたケーキミックス160gに対して、凍結全卵100g、水30g、溶かした無塩バター20gを加えてよく混合し、型に入れて、160℃のオーブンで30分焼成した。こうして、焼成食品としてのケーキを製造した。
【0114】
作製後24時間、20℃にて保存した後の焼成食品について、パネル10名により官能評価を行い、以下の指標により口当りを評価した。
◎:しっとり感が感じられ、作り立ての柔らかさも維持している。
〇:しっとり感はやや感じられ、やわらかさは作り立てよりやや劣る。
×:しっとり感は感じられず、作り立てのやわらかさは失われている。
【0115】
また、焼成後のケーキの高さ(底面~最上部)を測定し、その高さを寒天無添加のケーキの高さで除したものを100倍した数値を算出して、以下の指標により、ふくらみを評価した。
◎:寒天無添加と比較し、3%以上の嵩増しが見られた。
〇:寒天無添加と比較し、1~3%の嵩増しが見られた。
△:寒天無添加と比較し、同等のふくらみであった。
×:寒天無添加と比較し、ふくらみが減少した。
得られた結果を、下記表19にまとめる。
【0116】
【0117】
寒天2を用いた場合には、食感に優れ、ふくらみも十分に向上した焼成食品を製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を含有する焼成食品材料を用いた焼成食品は、食感が悪く、ふくらみの向上が十分ではないことが比較例27に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を含有する焼成食品材料を用いても、食感に優れ、ふくらみが十分に向上した焼成食品は得られないことが、比較例28に示されている。
【0118】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天をケーキミックスなどの混合材料に添加することにより、出来上がりの焼成食品をしっとりさせ、柔らかさを保つことができる。さらには、焼成食品の嵩を増して見た目も向上させ、物性を改善することができる。このように、低強度高粘性寒天は、焼成食品材料において「食感改良剤」、「保形・安定剤」、「物性改良剤」としての効果を発揮する。
【0119】
<実験例19>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表20に示した処方で、菓子としての小豆餡を作製した(実施例40,比較例29,30)。具体的には、小豆の煮汁と水との混合液に寒天およびグラニュー糖を加えて、90℃で3分間加熱した。その後、あらかじめ煮ておいた小豆を加えた。
【0120】
得られた小豆餡について、以下の手法により離水の程度を調べた。小豆餡をろ紙に20g絞り出し、密閉空間にて24時間保存した。その後、ろ紙への染み出しを目視により観察し、以下の指標に従って離水の多少を評価した。
◎:ろ紙への染み出しはほとんど見られない。
〇:◎には劣り、餡の周りにわずかに染み出しが見られる。
×:ろ紙全体に染み出しが広がっている。
【0121】
さらに、パネル10名により小豆餡の官能評価を行い、以下の指標により食感を評価した。
◎:つやと保形性がよく、くちどけがよい。
〇:保形性はよいが、くちどけが悪い。
×:つやがわるく、保形性もわるい。
得られた結果を、下記表20にまとめる。
【0122】
【0123】
寒天2を用いた場合には、離水し難く、優れた食感の小豆餡を製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用した小豆餡は、離水が顕著に生じ、食感も悪いことが比較例29に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した小豆餡は、離水が顕著に生じるのに加え、食感も著しく劣ることが、比較例30に示されている。
【0124】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天を小豆餡に使用することにより、包餡する材料(饅頭などの皮)への小豆餡からの離水の滲みだしがなくなる。小豆餡自体のつやが良くなるのに加え、口どけが良いにも関わらず保形性の良い食感が得られる。このように、低強度高粘性寒天は、菓子において「食感改良剤」、「保形・安定剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」としての効果を発揮する。
【0125】
<実験例20>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表21に示した処方で、ペースト状食品としての脂肪代替ペーストを作製した(実施例41,比較例31,32)。具体的には、表に示したすべての原料を混合し、沸騰するまで加熱した。溶液は10000rpmで5分間均質化した後、容器に充填して冷却した。
【0126】
得られた脂肪代替ペーストについて、以下の手法により離水の程度を調べた。ペーストをろ紙に20g絞り出し、密閉空間にて24時間保存した。その後、ろ紙への染み出しを目視により観察し、以下の指標に従って離水の多少を評価した。
◎:ろ紙への染み出しはほとんど見られない。
〇:◎には劣り、ペーストの周りにわずかに染み出しが見られる。
×:ろ紙全体に染み出しが広がっている。
【0127】
さらに、パネル10名により脂肪代替ペーストの官能評価を行い、以下の指標により食感を評価した。
◎:濃厚感・コクがありかつくちどけもよい
〇:濃厚感・もしくはコクがあるが、くちどけはよくない
×:濃厚感・コクが感じられず、水っぽい
得られた結果を、下記表21にまとめる。
【0128】
【0129】
寒天2を用いた場合には、食感が良好で離水し難い脂肪代替ペーストを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用した脂肪代替ペーストは、食感が著しく劣っており、離水も生じることが比較例31に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した脂肪代替ペーストは、食感が悪く、離水が顕著に生じることが、比較例32に示されている。
【0130】
<実験例21>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表22に示した処方で、ペースト状食品としてのフラワーペーストを作製した(実施例42,比較例33,34)。具体的には、卵黄、全卵、およびグラニュー糖を合わせ、白くなるまですり混ぜたところに、寒天、加工澱粉および脱脂粉乳を加えてさらに混合した。そこに、温めた生クリームを加え、弱火で10分加熱した。その後、水あめと溶かしたバターを加えてよく混ぜた。
【0131】
得られたフラワーペーストについて、以下の手法により離水の程度を調べた。ペーストをろ紙に20g絞り出し、密閉空間にて24時間保存した。その後、ろ紙への染み出しを目視により観察し、以下の指標に従って離水の多少を評価した。
◎:ろ紙への染み出しはほとんど見られない。
〇:◎には劣り、ペーストの周りにわずかに染み出しが見られる。
×:ろ紙全体に染み出しが広がっている。
【0132】
さらに、パネル10名によりフラワーペーストの官能評価を行い、以下の指標により食感を評価した。
◎:濃厚感・コクがありかつくちどけもよい
〇:濃厚感・もしくはコクがあるが、くちどけはよくない
×:濃厚感・コクが感じられず、水っぽい
得られた結果を、下記表22にまとめる。
【0133】
【0134】
寒天2を用いた場合には、離水し難く良好な食感のフラワーペーストを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用したフラワーペーストは、離水が顕著に生じ、食感も劣っていることが比較例33に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用したフラワーペーストは、離水が顕著に生じるのに加え、食感も著しく悪いことが、比較例34に示されている。
【0135】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天を脂肪代替ペーストに使用した場合、離水がなく、濃厚な食感やコクを有し口腔内で速やかに溶解する食感が得られる。食品のカロリーを低減できるのに加え、物性も改良されるため、油脂代替品として最適である。フラワーペーストに使用した場合も、離水が少なく、濃厚な食感やコクを有し口腔内で速やかに溶解する食感が得られる。
このように、低強度高粘性寒天は、ペースト状食品において「食感改良剤」、「保形・安定剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」としての効果を発揮する。
【0136】
<実験例22>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表23に示した処方で流動性調味料としてのみたらしのたれを作製した(実施例43,比較例35,36)。具体的には、寒天、加工澱粉、およびグラニュー糖を水に加え、90℃で3分間加熱した。その後、濃い口しょうゆ、水あめを加えた。
【0137】
得られたみたらしのたれについて、以下の手法により離水の程度を調べた。たれをろ紙に20g絞り出し、密閉空間にて24時間保存した。その後、ろ紙への染み出しを目視により観察し、以下の指標に従って離水の多少を評価した。
◎:ろ紙への染み出しはほとんど見られない。
〇:◎には劣り、たれの周りにわずかに染み出しが見られる。
×:ろ紙全体に染み出しが広がっている。
【0138】
さらに、パネル10名によりみたらしのたれの官能評価を行い、以下の指標により食感を評価した。
◎:つやと団子へののりがよく、くちどけがよい
〇:団子へののりはよいが、くちどけが悪い。
×:つやがわるく、団子へののりもわるい。
得られた結果を、下記表23にまとめる。
【0139】
【0140】
寒天2を用いた場合には、離水し難く良好な食感のみたらしのたれを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用したみたらしのたれは、離水が顕著に生じ、食感も劣っていることが比較例35に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用したみたらしのたれは、離水が生じ、食感も著しく悪いことが、比較例36に示されている。
【0141】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天をたれ類に使用した場合には、離水を防止し商品価値を高めることができる。たれ類は、つやが向上するのに加えて、対象物に良好に付着しつつ、口どけも優れたものとなる。このように、低強度高粘性寒天は、流動性調味料において「食感改良剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」としての効果を発揮する。
【0142】
<実験例23>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表24に示した処方で介護食としてのほうじ茶ゼリーを作製した(実施例44,比較例37,38)。具体的には、寒天およびグラニュー糖をミックスしてほうじ茶に加え、沸騰するまで加熱した。その後、容器に流し入れ、冷蔵庫にて3時間以上冷却した。
【0143】
得られたほうじ茶ゼリーの咀嚼物を飲み込む際における咽頭部へのはりつきを調べ、以下の指標により付着性を評価した。
◎:残留がほとんどまたは全く感じられない
〇:残留があまり感じられない
×:残留が感じられる
【0144】
ほうじ茶ゼリーの口腔内での食塊形成を調べ、以下の指標により凝集性を評価した。
◎:口腔内で食塊形成が容易で、非常にまとまりがある
〇:口腔内で食塊形成が可能で、ある程度まとまりがある
×:口腔内での食塊形成が難しく、咀嚼物がバラけやすい
【0145】
さらに、以下の手法により離水を調べた。タッパーで厚さ1cmに冷やし固めたほうじ茶ゼリーを、包丁にて1cm角のダイス上にカットした。カットしたゼリー100gを、茶こしに入れた状態で室温にて30分間放置した。この際に茶こしから流出した液量を離水量として、以下の指標により評価した。
◎:離水率が1%未満で、喫食時にカット離水の影響がほとんどない
〇:離水率が3%未満で、喫食時にカット離水が少なく問題なく嚥下できる
×:離水率が3%以上で、喫食時にカット離水が多く飲み込みに影響を与える
【0146】
また、以下の手法によりほうじ茶ゼリーの硬さを測定した。容器(直径40mm、高さ20mm)内に15mmの高さに試料を充填し、20℃で1晩冷蔵した。その後、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置(クリープメーターまたはテクスチャーアナライザー)を用いて、直径20mm、高さ8mmの樹脂性のプランジャーにより,圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮し,その時の力を測定して硬さとした。
得られた結果を、下記表24にまとめる。
【0147】
【0148】
寒天2を用いた場合には、付着性および凝集性が良好で離水し難く、介護食として適切な硬さを備えたほうじ茶ゼリーを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用したほうじ茶ゼリーは、凝集性が著しく悪く、離水も顕著に生じることが比較例37に示されている。また、比較例37のほうじ茶ゼリーの硬さは、介護食として適切な範囲外である。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用したほうじ茶ゼリーは、凝集性が著しく悪く、離水も顕著に生じることが、比較例38に示されている。また、比較例38のほうじ茶ゼリーの硬さは、介護食として適切な範囲外である。
【0149】
<実験例24>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表25に示した処方で介護食としての鮭のムースを作製した(実施例45,比較例39,40)。具体的には、鍋中のだし汁に寒天を入れ、沸騰するまで加温した。その後、ミキサーでペースト状にした鮭の切り身を60℃以上に加温した状態で寒天液に加え、均一になるまで攪拌した。調合したペーストを容器に流し込み、冷蔵庫にて3時間以上冷やし固めた。
【0150】
得られた鮭のムースの咀嚼物を飲み込む際における咽頭部へのはりつきを調べ、以下の指標により付着性を評価した。
◎:残留がほとんどまたは全く感じられない
〇:残留があまり感じられない
×:残留が感じられる
【0151】
鮭のムースの口腔内での食塊形成を調べ、以下の指標により凝集性を評価した。
◎:口腔内で食塊形成が容易で、非常にまとまりがある
〇:口腔内で食塊形成が可能で、ある程度まとまりがある
×:口腔内での食塊形成が難しく、咀嚼物がバラけやすい
【0152】
さらに、ほうじ茶ゼリーの場合と同様の手法により、鮭のムースの硬さを測定した。
得られた結果を、下記表25にまとめる。
【0153】
【0154】
寒天2を用いた場合には、付着性および凝集性が良好で、離水し難く、介護食として適切な硬さを備えた鮭のムースを製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用した鮭のムースは、凝集性が著しく悪いことが比較例39に示されている。また、比較例39の鮭のムースの硬さは、介護食として適切な範囲外である。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した鮭のムースは、付着性に加えて凝集性が著しく悪いことが、比較例40に示されている。また、比較例40の鮭のムースの硬さは、介護食として適切な範囲外である。
【0155】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天を用いたほうじ茶ゼリーは、服用時に残留感を感じず、食塊が容易に形成されて物性が向上する。また、ゼリーをカットした際のカット離水がほとんどなく、誤嚥の防止につながる。さらに、介護食に要求される付着性、凝集性などの物性も最適な範囲となる。鮭のムースに使用した場合も同様に物性が向上し、パサつきを防止して良好な食感が得られる。
このように低強度高粘性寒天は、介護食において「食感改良剤」、「保形・安定剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」としての効果を発揮する。
【0156】
<実験例25>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表26に示した処方で飲料としての野菜飲料を作製した(実施例46,比較例41,42)。具体的には、寒天およびグラニュー糖を水に加え、沸騰するまで加熱した。60℃に加温した野菜ジュースを添加し、再度85℃まで昇温させクエン酸を添加した。重量調整後、15℃まで攪拌冷却し、容器に充填した。
【0157】
得られた野菜飲料について、次のように評価した。まず、立てて保存可能な容器に、野菜飲料を150ccずつ分注した。1晩冷蔵保管し、翌日に粘度測定と飲み口を確認し、以下の指標で口当りを評価した。
濃厚:無添加と比較し、パルプ成分が多い様な飲み口
弱い:無添加に近い飲み口
【0158】
野菜飲料を収容した容器は、立てた状態で冷蔵保存した。約1か月後、分散安定の様子を目視で確認し、以下の指標で評価した。
◎:全体が均一
〇:分離は見られないが、若干濃度勾配がある
△:上部に透明の層がみられる
×:半分以上透明層パルプ質が完全に下に沈む
得られた結果を、下記表26にまとめる。
【0159】
【0160】
寒天2を用いた場合には、分散安定性に優れ、口当りの濃厚な野菜飲料を製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用した野菜飲料は、分散安定性が劣ることが比較例41に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した野菜飲料は、分散安定性がさらに悪く、口当りも弱いことが、比較例42に示されている。
【0161】
<実験例26>
寒天2、寒天3、寒天11を用い、下記表27に示した処方で飲料としての酸乳飲料を作製した(実施例47,比較例43,44)。具体的には、寒天、HMペクチン、およびグラニュー糖を水に加え、沸騰するまで加熱した。60℃に加温した牛乳を添加し、再度85℃まで昇温させクエン酸、クエン酸Naを添加した。重量調整後、15℃まで攪拌冷却し、容器に充填した。
【0162】
得られた酸乳飲料について、野菜飲料の場合と同様に粘度を測定し、飲み口を確認したところ、無添加と比較し飲みごたえのある食感であったので、「濃厚」と評価した。
【0163】
さらに、野菜飲料の場合と同様にして、酸乳飲料の分散安定の様子を目視で確認し、以下の指標で評価した。
◎:全体が均一
〇:分離は見られないが、若干色勾配がある
△:上部に透明な層と白濁した層に分かれる
×:半分以上透明層乳成分が完全に下に沈む
得られた結果を、下記表27にまとめる。
【0164】
【0165】
寒天2を用いた場合には、分散安定性に優れ、口当りの濃厚な酸乳飲料を製造することができた。
寒天3は、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7~30mPa・sの範囲内であり、かつ硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、20℃における1.5%寒天ゲル強度(JS)が220g/cm2を超えている。それゆえ、寒天3を使用した酸乳飲料は、分散安定性が劣ることが比較例43に示されている。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した酸乳飲料は、分散安定性が劣ることが比較例44に示されている。
【0166】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天を野菜飲料に使用した場合には、パルプ成分の均一な分散に起因して濃厚な飲み口が得られる。酸乳飲料に使用した場合もまた、酸乳が分離することなく均一に分散し濃厚な飲み口の飲料とすることができる。ドリンクゼリーに使用した場合も、パルプが均一に分散した濃厚感のあるゼリーとなり、ゼリーからの離水の抑制も期待される。このように、低強度高粘性寒天は、飲料において「分散安定剤」「食感改良剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」としての効果を発揮する。
【0167】
<実験例27>
寒天2、11を用い、下記表28に示した処方で惣菜としての野菜炒めを作製した(実施例48,比較例45)。具体的には、キャベツに寒天、食塩、黒コショウ、およびごま油の混合物を添加し、180℃に熱したフライパンで5分間加熱した。皿に盛り付けて、一晩冷蔵庫で保存した。
【0168】
得られた野菜炒めについて、ドリップ(野菜からの離水)の様子を目視で確認し、以下の指標で評価した。
◎:ドリップがほとんどない
〇:ドリップが多少あるが許容範囲である
△:ドリップが出ているが×よりは良い
×:ドリップが非常に多く出ている
得られた結果を、下記表28にまとめる。
【0169】
【0170】
寒天2を用いた場合には、ドリップが少ない惣菜を製造することができた。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した惣菜は、ドリップが生じてしまうことが比較例45に示されている。
【0171】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天を野菜炒めに使用することにより、野菜からのドリップを防ぎ、炒めたての外観と食感を維持することができる。このように、低強度高粘性寒天は、総菜において「食感改良剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」としての効果を発揮する。
【0172】
<実験例28>
寒天2、11を用い、下記表29に示した処方でパウチ食品としてのドリンクゼリーを作製した(実施例49,比較例46)。具体的には、水に寒天とグラニュー糖を添加し、90℃で3分間加熱した後、5倍濃縮赤ブドウ果汁、結晶クエン酸、クエン酸ナトリウムを混合し、重量を調整した後、パウチに充填し、85℃で30分間加熱殺菌した。殺菌した後、一晩冷蔵庫で冷却ししゲル化させた。
【0173】
得られたドリンクゼリーについて、1カ月間冷蔵庫で保管した際の経時的な離水の様子を目視で確認し、以下の指標で評価した。
◎:離水がほとんどない
〇:離水が多少あるが許容範囲である
△:離水が出ているが×よりは良い
×:離水が非常に多く出ている
得られた結果を、下記表29にまとめる。
【0174】
また、得られたドリンクゼリーについて、10名のパネルで食感を以下の指標で評価した。
◎:プルンとした食感である
〇:プルンとした食感であるが◎よりは劣る
△:ドロドロした食感であるが×よりは勝る
×:ドロドロした食感である
得られた結果を、下記表29にまとめる。
【0175】
【0176】
寒天2を用いた場合には、経時的な離水が少なく、食感がよくあるパウチ食品を製造することができた。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用したパウチ食品は、経時的な離水が生じてしまい、食感が好ましくないことが比較例46に示されている。
【0177】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天をドリンクゼリーに使用することにより、経時的な離水がなく、プルンとした良好な食感が経時後も得られる。また、不溶性成分が含まれる場合でも分散安定が持続する。このように、低強度高粘性寒天は、パウチ食品において「食感改良剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」「分散安定剤」としての効果を発揮する。
【0178】
<実験例29>
寒天2、11を用い、下記表30に示した処方で缶詰食品としてのサバの味噌煮を作製した(実施例50,比較例47)。具体的には、すべての材料を混合し、缶詰に充填し密閉したのち、120℃で40分間レトルト殺菌を行った。殺菌した後、一晩冷蔵庫で冷却した。
【0179】
得られたサバの味噌煮について、1カ月間常温で保管した際の経時的な離水の様子を目視で確認し、以下の指標で評価した。
◎:離水がほとんどない
〇:離水が多少あるが許容範囲である
△:離水が出ているが×よりは良い
×:離水が非常に多く出ている
得られた結果を、下記表30にまとめる。
【0180】
また、得られたサバの味噌煮について、10名のパネルで食感を以下の指標で評価した。
◎:柔らかい食感である
〇:柔らかい食感であるが◎よりは劣る
△:固く締まった食感であるが×よりは勝る
×:固く締まった食感である
得られた結果を、下記表30にまとめる。
【0181】
【0182】
寒天2を用いた場合には、経時的な離水が少なく、食感がよく艶の良い缶詰食品を製造することができた。
寒天11は、20℃における15%寒天ゲル強度(JS)が10~220g/cm2の範囲内であり、硫酸根含量(SO4)が0.5質量%以上4.0質量%以下の範囲内であるが、85℃における1.5%寒天ゾル粘度(VIS)が7mPa・s未満である。このため、寒天11を使用した缶詰食品は、経時的な離水が生じてしまい、食感が好ましくないことが比較例47に示されている。
【0183】
上記実施例に示されるとおり、所定の条件を備えた低強度高粘性寒天をサバの味噌煮缶に使用した場合、経時後でも魚肉からの離水がなく、柔らかい食感を維持することができる。さらに、本来含まれている油脂量以上に油脂食感を感じることができる。このように、低強度高粘性寒天は、缶詰食品において「食感改良剤」、「物性改良剤」、「離水抑制剤」、「分散安定剤」、「油脂代替剤」としての効果を発揮する。
【0184】
本発明によれば、新規な寒天含有食品、および品質改良剤を製造することができる。