(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025604
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】通信システム、方法、中継局、及び、制御装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/026 20170101AFI20240216BHJP
H04L 5/02 20060101ALI20240216BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20240216BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20240216BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20240216BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240216BHJP
【FI】
H04B7/026
H04L5/02
H04B7/06 670
H04B7/06 820
H04B7/15
H04W56/00 130
H04W16/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155391
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022127979
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067AA24
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE72
5K072AA04
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072BB27
5K072CC33
5K072DD11
5K072DD16
5K072EE33
5K072GG02
5K072GG10
5K072GG12
5K072GG13
5K072GG14
(57)【要約】
【課題】非再生中継が実施される無線通信において、受信側におけるSNRを向上させる。
【解決手段】送信局と、受信局と、送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局と、制御部と、を備える通信システムである。制御部は、1以上の第1の信号の中継信号が、無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で受信局に到着するように、少なくとも1以上の中継局のうちの第1の中継局について、送信局と第1の中継局との間の電波伝搬特性及び受信局と第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて、第1の中継局による中継によって第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得し、第1の中継局に、第1の信号に第1の遅延時間と第1の位相回転量とを与えさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局と、
受信局と、
前記送信局から前記受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局と、
前記1以上の中継局によって中継された1以上の前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と前記1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で前記受信局に到着するように、少なくとも前記1以上の中継局のうちの第1の中継局について、前記送信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性及び前記受信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて、前記第1の中継局による中継によって前記第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得し、前記第1の中継局に、前記第1の信号に前記第1の遅延時間と前記第1の位相回転量とを与えさせる、制御部と、
を備える通信システム。
【請求項2】
前記1以上の中継局のそれぞれは、前記1以上の中継局のそれぞれにおいて発生する、前記送信局から受信した信号と前記受信局へ送信する前記信号との間の干渉を抑圧するフィルタリングを行う第1のフィルタを備え、
前記第1のフィルタは、
前記フィルタリングにより前記第1の信号に前記第1の遅延時間を与え、
前記フィルタリング後の前記第1の信号に前記第1の位相回転量を与える、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記スロットの先頭から、前記第1の時間長から前記第1の中継局と前記受信局との間の伝搬遅延を差し引いた第2の時間長後に前記第1の信号の中継信号が前記第1の中継局から発信されるように、前記第1の遅延時間を取得する、
請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記1以上の中継局のそれぞれは、
アンテナと、前記アンテナに接続する送信機及び受信機と、を備え、
前記制御部は、
前記受信機において加わる位相回転量から、前記送信機において加わる位相回転量と、前記送信局から前記第1の中継局までの伝搬路で加わる位相回転量と、前記第1の中継局から前記受信局までの伝搬路で加わる位相回転量と、を差し引いた値を前記第1の位相回転量として取得する、
請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1の中継局と前記受信局との間の伝搬遅延に基づいて、前記第1の中継局から送信された前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着可能か否かを判定し、
前記第1の中継局から前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着可能であることを判定した場合に、前記第1の中継局による前記第1の信号の中継の実施を判定し、
前記第1の中継局から前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着可能でないことを判定した場合には、前記第1の中継局による前記第1の信号の中継の不実施を判定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記送信局と前記第1の中継局との間の伝搬遅延と、前記送信局と前記第1の中継局との間の遅延広がりと、前記第1の中継局における処理遅延と、前記第1の中継局と前記受信局との間の伝搬遅延と、の合計時間が前記第1の時間長以下であるか否かを判定することによって、前記第1の中継局から前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着するか否かを判定する、
請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
無線回線を管理する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記送信局と前記受信局との間の電波伝搬特性と前記1以上の中継局それぞれと前記受信局との間の電波伝搬特性とに基づいて、前記第1の時間長を取得することと、
前記第1の時間長を前記1以上の中継局へ通知することと、
を実行する請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記送信局と前記受信局との間の伝搬遅延と、前記送信局と前記受信局との間の遅延広がりと、前記1以上の中継局のうちの一つの中継局による中継によって発生する遅延時間と、を合計して、前記第1の時間長を取得する、
請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
コンピュータが、
送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局によって中継された1以上の前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と前記1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で前記受信局に到着するように、少なくとも前記1以上の中継局のうちの第1の中継局について、前記送信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性及び前記受信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて、前記第1の中継局による中継によって前記第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得し、
前記第1の中継局に、前記第1の信号に前記第1の遅延時間と前記第1の位相回転量とを与えさせる、
方法。
【請求項10】
送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継の際に、前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に前記受信局に到着するように、前記受信局との間の電波伝搬特性に基づいて、第1の遅延時間を取得することと、
前記中継によって前記第1の信号に加わる位相回転量をキャンセルさせる第1の位相回転量と取得することと、
を実行する制御部と、
前記第1の信号の前記非再生中継の際に、前記第1の信号に前記第1の遅延時間と前記第1の位相回転量とを与える無線処理部と、
を備える中継局。
【請求項11】
前記無線処理部は、前記無線処理部において発生する、前記送信局から受信した信号と前記受信局へ送信する前記信号との間の干渉を抑圧するフィルタリングを行う第1のフィルタを備え、
前記第1のフィルタは、
前記フィルタリングにより前記第1の信号に前記第1の遅延時間を与え、
前記フィルタリング後の前記第1の信号に前記第1の位相回転量を与える、
請求項10に記載の中継局。
【請求項12】
前記制御部は、
前記スロットの先頭から、前記第1の時間長から前記中継局と前記受信局との間の伝搬遅延を差し引いた第2の時間長後に前記第1の信号の中継信号が前記無線処理部から発信されるように、前記第1の遅延時間を取得する、
請求項10又は11に記載の中継局。
【請求項13】
前記無線処理部は、アンテナに接続する送信機及び受信機を備え、
前記制御部は、
前記受信機において加わる位相回転量から、前記送信機において加わる位相回転量と、前記送信局から前記中継局までの伝搬路で加わる位相回転量と、前記中継局から前記受信局までの伝搬路で加わる位相回転量と、を差し引いた値を前記第1の位相回転量として取得する、
請求項10又は11に記載の中継局。
【請求項14】
前記制御部は、
前記中継局と前記受信局との間の伝搬遅延に基づいて、前記無線処理部から送信された前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着可能か否かを判定し、
前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着可能であることを判定した場合に、前記第1の信号の中継を行うことを判定し、
前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着可能でないことを判定した場合には、前記第1の信号の中継を行わないことを判定する、
請求項10に記載の中継局。
【請求項15】
前記制御部は、
前記送信局と前記中継局との間の伝搬遅延と、前記送信局と前記中継局との間の遅延広がりと、前記無線処理部における処理遅延と、前記中継局と前記受信局との間の伝搬遅延と、の合計時間が前記第1の時間長以下であるか否かを判定することによって、前記第1の信号の中継信号が前記受信局へ前記スロットの先頭から第1の時間後までに到着するか否かを判定する、
請求項14に記載の中継局。
【請求項16】
前記制御部は、
前記送信局と前記受信局との間の電波伝搬特性と前記1以上の中継局それぞれと前記受信局との間の電波伝搬特性とに基づいて取得された前記第1の時間長を、無線回線を管理する制御装置から受信する、
請求項10に記載の中継局。
【請求項17】
前記第1の時間長は、
前記送信局と前記受信局との間の伝搬遅延と、前記送信局と前記受信局との間の遅延広がりと、前記1以上の中継局のうちの一つの中継局による中継によって発生する遅延時間と、を合計して取得される、
請求項16に記載の中継局。
【請求項18】
送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局が、前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と前記1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で前記受信局に到着するように、前記第1の信号に第1の遅延時間と第1の位相回転量とを与える場合に、前記送信局と前記受信局との間の電波伝搬特性と前記1以上の中継局それぞれと前記受信局との間の電波伝搬特性とに基づいて、前記第1の時間長を取得すること、
を実行する制御部、
を備える制御装置。
【請求項19】
前記制御部は、
前記送信局と前記受信局との間の伝搬遅延と、前記送信局と前記受信局との間の遅延広がりと、前記1以上の中継局のうちの一つの中継局による中継によって発生する遅延時間と、を合計して、前記第1の時間長を取得する、
請求項18に記載の制御装置。
【請求項20】
前記制御部は、
少なくとも前記1以上の中継局のうちの第1の中継局について、前記送信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性及び前記受信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて、前記第1の中継局による中継によって前記第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得することと、
前記第1の中継局に、前記第1の遅延時間と前記第1の位相回転量とを通知することと、
を実行する請求項18又は19に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、方法、中継局、及び、制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5th Generation Mobile Communication System(5G)等の無線通信においては、サブミリ秒以下の超低遅延通信が期待されている。一方で、通信サービス向上の観点では、セルのカバレッジエリアの拡大が望まれ、そのためには、中継局を介する中継通信が有効である。そこで、無線通信を行う端末局を中継局とする無線通信方法が提案されている。さらに、遅延の少ない中継技術として、中継局では復調及び復号は行わない非再生中継が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H. Chen. A. B. Gershman, and S. Shahbazpanahi, “Filter-and-Forward Distributed Beamforming in Relay Networks with Frequency Selective Fading,” IEEE Trans. On Signal Processing, vol. 58, no. 3, March 2010.
【非特許文献2】能口、林、金子、酒井、“周波数領域等化システムのための単一周波数全二重無線中継,” 電子情報通信学会技術報告, vol. SIP2011-109, 2012年1月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の態様の一つは、非再生中継が実施される無線通信において、受信側におけるSNR(Signal-to-Noise Ratio)を向上可能な通信システム、方法、中継局、及び、制御
装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、
送信局と、
受信局と、
前記送信局から前記受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局と、
前記1以上の中継局によって中継された1以上の前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と前記1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長(Δ_R)後に同時に同位相で前記受信局に到着するように、少なくとも前記1以上の中継局のうちの第1の中継局について、前記送信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性及び前記受信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて、前記第1の中継局による中継によって前記第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得し、前記第1の中継局に、前記第1の信号に前記第1の遅延時間と前記第1の位相回転量とを与えさせる、制御部と、を備える通信システムである。
【0006】
本開示の他の態様の一つは、
コンピュータが、
送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局によって中継された1以上の前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と前記1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で前記受信局に到着するように、少なくとも
前記1以上の中継局のうちの第1の中継局について、前記送信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性及び前記受信局と前記第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて、前記第1の中継局による中継によって前記第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得し、
前記第1の中継局に、前記第1の信号に前記第1の遅延時間と前記第1の位相回転量とを与えさせる、
方法である。
【0007】
本開示の他の態様の一つは、
送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継の際に、前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に前記受信局に到着するように、前記受信局との間の電波伝搬特性に基づいて、第1の遅延時間を取得することと、
前記中継によって前記第1の信号に加わる位相回転量をキャンセルさせる第1の位相回転量と取得することと、
を実行する制御部と、
前記第1の信号の前記非再生中継の際に、前記第1の信号に前記第1の遅延時間と前記第1の位相回転量とを与える無線処理部と、
を備える中継局である。
【0008】
本開示の態様の一つは、
送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局が、前記第1の信号の中継信号が、前記送信局と前記受信局と前記1以上の中継局との間で同期している、前記第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で前記受信局に到着するように、前記第1の信号に第1の遅延時間と第1の位相回転量とを与える場合に、前記送信局と前記受信局との間の電波伝搬特性と前記1以上の中継局それぞれと前記受信局との間の電波伝搬特性とに基づいて、前記第1の時間長を取得すること、
を実行する制御部、
を備える制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様の一つによれば、非再生中継が実施される無線通信において、受信側におけるSNR(Signal-to-Noise Ratio)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の通信システムをシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、通信システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、中継局のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るFIRフィルタの構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、制御装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図6】
図6は、基地局からの直達信号、及び、中継局からの中継信号に関する送信タイミング及び到着タイミングの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、制御装置の処理のフローチャートの一例である。
【
図8】
図8は、基地局の処理のフローチャートの一例である。
【
図9A】
図9Aは、中継局の処理のフローチャートの一例である。
【
図9B】
図9Bは、中継局の処理のフローチャートの一例である。
【
図10A】
図10Aは、第1実施形態に係る非再生中継に係る処理のシーケンスの一例である。
【
図10B】
図10Bは、第1実施形態に係る非再生中継に係る処理のシーケンスの一例である。
【
図11A】
図11Aは、第2実施形態に係る制御装置の処理のフローチャートの一例である。
【
図11B】
図11Bは、第2実施形態に係る制御装置の処理のフローチャートの一例である。
【
図12A】
図12Aは、第2実施形態に係る非再生中継に係る処理のシーケンスの一例である。
【
図12B】
図12Bは、第2実施形態に係る非再生中継に係る処理のシーケンスの一例である。
【
図13A】
図13Aは、基地局が、中継局の非再生中継の実施可否判定と、中継局において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行う場合の処理のシーケンスの一例である。
【
図13B】
図13Bは、基地局が、中継局の非再生中継の実施可否判定と、中継局において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行う場合の処理のシーケンスの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
非再生中継では、複数の中継局によって中継された複数の中継信号は、それぞれ、無線伝搬路において、異なる位相回転量及び異なる遅延時間が与えられる。受信局では、これらの複数の中継信号は、異なるタイミングで異なる位相で受信されるため、例えば、複数の中継信号の間で振幅を打ち消し合ったりして、合成された際に十分なSNRを得られないことがある。本開示の態様の一つでは、これを鑑みて、中継局で非再生中継が行われる際に得られるSNRを向上させることを課題とする。
【0012】
本開示の態様の一つは、送信局と、受信局と、1以上の中継局と、制御部と、を備える通信システムである。例えば、送信局は基地局で、受信局は端末局である。ただし、これに限定されず、送信局は端末局で、受信局は基地局であってもよい。中継局は、例えば、小型基地局、移動基地局、スマートフォン、及び、車載器等である。送信局、受信局、及び、1以上の中継局間では、無線フレームのスロットタイミングが同期している。1以上の中継局は、復調及び復号せずに信号を中継する非再生中継を実施する。
【0013】
制御部は、例えば、コンピュータ、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッ
サ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算回路である。制御部は、例え
ば、中継局に備えられてもよいし、基地局に接続し、無線回線を管理する制御装置に備えられてもよいし、基地局又は端末局に備えられてもよい。制御部は、第1の信号の中継信号が、スロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で受信局に到着するように、少なくとも第1の中継局について、第1の中継局による中継によって第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得する。第1の信号は、送信局から受信局へ送信される信号である。第1の中継局は、例えば、制御部が中継局に備えられている場合には、当該制御部が備えられている中継局である。例えば、制御部が制御装置に備えられている場合には、第1の中継局は、1以上の中継局のうちの実際に中継を行う1以上の中継局である。
【0014】
制御部は、第1の遅延時間と第1の位相回転量とを、送信局と第1の中継局との間の電波伝搬特性及び受信局と第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて取得する。第1の中継局は、第1の信号を非再生中継する際に、第1の遅延時間と第1の位相回転量とを与える。電波伝搬特性には、例えば、伝搬遅延、遅延広がり、及び、位相回転量がある。ただし、電波伝搬特性はこれらに限定されない。
【0015】
第1の遅延時間は、例えば、スロットの先頭から第1の時間長後に第1の中継局から受信局へ電波が届くように、第1の中継局と受信局との間の伝搬遅延に基づいて第1の中継局における送信タイミングを逆算することで、取得される。より具体的には、制御部は、スロットの先頭から、第1の時間長から第1の中継局と受信局との間の伝搬遅延を差し引いた第2の時間長後に第1の信号の中継信号が第1の中継局から発信されるように、第1の遅延時間を取得する。
【0016】
第1の位相回転量は、中継信号が無線伝搬路で受ける位相回転量をキャンセルするように求めることで、各中継局によって中継される中継信号の位相が揃うことになる。より具体的には、制御部は、第1の中継局の受信機において加わる位相回転量から、第1の中継局の送信機において加わる位相回転量と、送信局から第1の中継局までの伝搬路で加わる位相回転と、第1の中継局から受信局までの伝搬路で加わる位相回転量と、を差し引いた値を第1の位相回転量として取得する。
【0017】
本開示の態様の一つによれば、送信局から受信局への第1の信号を中継する各中継局が、中継信号が同時に同位相で受信局に到着するように、中継信号に第1の遅延時間と第1の位相回転量を与える。これによって、複数の中継信号が同時に同位相で受信されるので、当該複数の中継信号を合成した際の信号電力は振幅の二乗となることから、受信局におけるSNRを向上させることができる。
【0018】
本開示の態様の一つでは、1以上の中継局のそれぞれは、中継局において発生する、送信局から受信した信号と受信局へ送信する信号との間の干渉を抑圧するフィルタリングを行う第1のフィルタを備えてもよい。送信局から受信した信号と受信局へ送信する信号との間の干渉は、自己干渉とも呼ばれる。第1のフィルタは、フィルタリングにより第1の信号に第1の遅延時間を与え、フィルタリング後の第1の信号に第1の位相回転量を与える。第1のフィルタは、例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタである。
第1のフィルタによって中継信号をフィルタリングすることで、中継信号の自己干渉を抑制しつつ、第1の遅延時間と第1の位相回転量を与えることができる。
【0019】
本開示の態様の一つでは、制御部は、第1の中継局による第1の信号の中継の実施の可否を判定してもよい。例えば、制御部は、第1の中継局と受信局との間の伝搬遅延に基づいて、第1の中継局から送信された第1の信号の中継信号が受信局へスロットの先頭から第1の時間後までに到着可能か否かを判定してもよい。第1の中継局から第1の信号の中継信号が受信局へスロットの先頭から第1の時間後までに到着可能であることを判定した場合に、制御部は、第1の中継局による第1の信号の中継の実施を判定する。第1の中継局から第1の信号の中継信号が受信局へスロットの先頭から第1の時間後までに到着可能でないことを判定した場合には、制御部は、第1の中継局による第1の信号の中継の不実施を判定する。
【0020】
第1の中継局から送信された第1の信号の中継信号が受信局へスロットの先頭から第1の時間後までに到着可能か否かは、例えば、送信局と第1の中継局との間の伝搬遅延と、送信局と第1の中継局との間の遅延広がりと、第1の中継局における処理遅延と、第1の中継局と受信局との間の伝搬遅延と、の合計時間が第1の時間長以下であるか否かを判定することによって、判定されてもよい。
【0021】
本開示の態様の一つによって、受信局には、受信信号を等化処理するサイクリックプレフィクスの期間において、スロットの先頭から第1の時間後のタイミング以外では中継信号が届かなくなるので、効率よく十分なSNRを得ることができる。サイクリックプレフィクスの期間において、中継信号の合成によって振幅を打ち消しあう中継信号の発生を抑
制できるためである。
【0022】
本開示の態様の一つでは、通信システムは、無線回線を管理する制御装置をさらに備えてもよい。制御装置は、送信局と受信局との間の電波伝搬特性と1以上の中継局それぞれと受信局との間の電波伝搬特性とに基づいて、第1の時間長(Δ_R)を取得し、1以上の中継局へ通知してもよい。第1の時間長は、例えば、送信局と受信局との間の伝搬遅延と、送信局と受信局との間の遅延広がりと、1以上の中継局のうちの一つの中継局による中継によって発生する遅延時間と、を合計して、取得されてもよい。このように第1の時間長を取得することによって、より多くの中継局を第1の信号の中継に参加させ、受信局により多くの中継信号を到着させることができる。受信局により多くの中継信号を同時に同位相で到着させることによって、受信局は、より大きなSNRを得ることができる。
【0023】
本開示の他の態様の一つは、上記通信システムにおいて実行される処理をコンピュータが実行する方法としても特定することができる。具体的には、当該方法は、コンピュータが、送信局から受信局への第1の信号を復調及び復号せずに中継する、1以上の中継局によって中継された1以上の前記第1の信号の中継信号が、送信局と受信局と1以上の中継局との間で同期している、第1の信号が発信された無線フレーム中のスロットの先頭から第1の時間長後に同時に同位相で受信局に到着するように、少なくとも1以上の中継局のうちの第1の中継局について、送信局と第1の中継局との間の電波伝搬特性及び受信局と第1の中継局との間の電波伝搬特性に基づいて、第1の中継局による中継によって前記第1の信号に与えられる第1の遅延時間と第1の位相回転量とを取得し、第1の中継局に、第1の信号に第1の遅延時間と第1の位相回転量とを与えさせる方法である。
【0024】
また、本開示の他の態様の一つは、当該方法の処理を実行する中継局又は制御装置としても特定することができる。また、他の態様の一つは、当該方法の処理を、中継局又は制御装置に実行させるためのプログラム、及び、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能で非一時的な記憶媒体としても特定することができる。
【0025】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の通信システム100Aをシステム構成の一例を示す図である。通信システム100Aは、制御装置1と、基地局2と、中継局3(3-1、3-N)と、端末局4とを有する。制御装置1は、基地局2が接続されるコアネットワーク上の装置である。ただし、制御装置1がコアネットワーク自体であるか、またはコアネットワークに含まれるシステムであると考えることもできる。コアネットワークは、例えば、光ファイバ網を含む。制御装置1は、基地局2、中継局3、及び、端末局4を制御し、端末局4に通信サービスを提供する。
【0027】
基地局2は、端末局4に無線アクセスネットワークを提供する。無線アクセスネットワークでの無線通信が可能なエリアは、セルとも呼ばれる。基地局2は、第1実施形態では、1以上のアンテナ(例えば、#0及び#1)と、これら1以上のアンテナに接続される無線機21と、制御回路22を有する。制御回路22は、例えば、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、及び、中継局3及び端末局4との無線通信を制御する。
【0028】
端末局4は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、車載されたデータ通信装置等の移動局である。ただし、これに限られず、端末局4は、据え置き型の端末装置であってもよい。例えば、端末装置は、基地局2が提供するセルの範囲で無線
アクセスネットワークに接続する。中継局3は、基地局2と端末局4との無線通信を中継する。中継局3は、例えば、小型基地局、移動基地局、車載装置、及び、スマートフォン等である。第1実施形態では、中継局3は、非再生中継可能な構成を備える装置の中から制御装置1によって中継局として選定された装置である。
【0029】
制御装置1は、端末局4から接続要求の発生時に、基地局2が提供するセルの範囲に位置する1以上の装置を中継局3として選択し、無線通信の中継を指示する。なお、第1実施形態において、複数の中継局3が個々に区別される場合に、中継局3-1、・・・、3-Nのように枝番が付される。ここで、枝番Nは中継局3の候補の数を示す整数である。
図1においては、中継局3-1と3-Nが例示されている。ただし、中継局3-1、・・・、3-Nが総称される場合には、単に、中継局3と記述される。
【0030】
中継局3は、基地局2と同様、1本以上のアンテナ(例えば、#0)と、これら1以上のアンテナのそれぞれに接続される無線機31と、制御回路32とを有する。
【0031】
端末局4は、1本以上のアンテナ(例えば、#0)と、当該1以上のアンテナに接続される無線機41と、制御回路42とを有する。例えば、セル内の移動局が基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求し、接続されることで、当該移動局が端末局4として動作する。セル内の移動局は、基地局2に直接無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。または、セル内の移動局は、セル内で中継局3として動作する装置を介して基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。端末局4は、1以上の中継局3のいずれかを介してまたは1以上の中継局3のいずれをも介さずに基地局2と通信可能な局ということができる。
【0032】
図2は、通信システム100Bのシステム構成の一例を示す図である。第1実施形態では、システム構成を通信システム100Bとしてもよい。通信システム100Bは、
図1の通信システム100Aと比較して、基地局2の代わりに、中央基地局2Aと、1以上の分散基地局2Bと有する。1以上の分散基地局2Bが個々に区別される場合に、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kのように枝番が付される。ここで、枝番Kは分散基地局数を示す整数である。
図2においては、分散基地局2B-1と2B-Kが例示されている。ただし、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kが総称される場合には、単に、分散基地局2Bと記述される。
【0033】
中央基地局2Aは、制御回路22Aを有する。また、分散基地局2Bは、無線機21Bを有する。中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとは、例えば、光ファイバC1又は無線ネットワークで接続される。中央基地局2Aと複数の分散基地局2Bとを接続する光ファイバC1のトポロジは、特定のトポロジに限定されない。例えば、光ファイバC1のトポロジは、ノード間の一対一の接続、中央基地局2Aから離れるにしたがって分岐するネットワーク、スター型のネットワーク、または、リングネットワーク等であってもよい。また、中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとの間を無線ネットワークで接続する場合に、採用される無線ネットワークの規格及び、プロトコルは特定のものに限定されはない。
【0034】
制御回路22Aは、
図1の制御回路22と同様、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、および中継局3、端末局4との無線通信を制御する。すなわち、制御回路22Aは、1以上の分散基地局2Bの無線機21Bを介して、中継局3及び端末局4との無線通信を制御する。
【0035】
第1実施形態では、通信システム100では、以下のことが採用されていることを前提とする。通信システム100では、時分割多重で、アップリンク及びダウンリンクでは同
一周波数チャネルが使用される。また、基地局2、中継局3、及び、端末局4間では、無線フレームのスロットタイミングは同期している。通信システム100では、無線の変調方式として、CP-OFDM(Cyclic Prefix - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などのサイクリックプレフィックスを持つブロック伝送方式が採用されている。また、中継局3は、中継の対象となる端末局4がアップリンク及びダウンリンクにおいて使用するリソースブロック情報を共有している。なお、アップリンクは、端末局4から基地局2への方向のリンクである。ダウンリンクは、基地局2から端末局4への方向のリンクである。第1実施形態では、ダウンリンク方向で非再生中継が行われる場合について説明される。すなわち、第1実施形態では、送信局は基地局2であり、受信局は端末局4である。
【0036】
第1実施形態では、各中継局3は、中継信号が端末局4に同時に同位相で到着するように、中継信号に遅延と位相回転を与える。中継信号を端末局4に到着させるタイミングは、制御装置1が取得し、各中継局3へ通知する。各中継局3は、通知されたタイミングに中継信号が基地局2に届くように、基地局2と中継局3との間の電波伝搬特性及び中継局3と端末局4との間の電波伝搬特性に基づいて、中継信号に与える遅延時間を取得する。電波伝搬特性には、例えば、伝搬遅延、遅延の広がり、及び、位相回転量等が含まれる。ただし、電波伝搬特性に含まれる情報はこれらに限定されない。伝搬遅延は、信号が送信側装置から送信されてから受信側装置に届くまでにかかる時間である。遅延の広がりは、受信側装置に信号が届き始めてから当該信号の受信が完了するまでにかかる時間である。
【0037】
また、各中継局3は、基地局2から中継局3までの伝搬路で与えられる位相回転量、中継局3における中継処理で与えられる位相回転量、及び、中継局3から端末局4までの伝搬路で与えられる位相回転量がキャンセルされるように中継信号に与える位相回転量を取得する。これによって、各中継局3によって中継された複数の中継信号が同時に同位相で端末局4に到着する。端末局4では、同時に同位相で到着した複数の中継信号を合成することで、合成波の振幅が増幅され、これによってSNRも指数関数的に増大する。
【0038】
図3は、中継局3のハードウェア構成の一例を示す図である。中継局3は、無線機31と制御回路32とを備える。中継局3の無線機31は、送信機311と受信機312とベースバンド回路313を有する。送信機311と受信機312とはサーキュレータ314を介してアンテナ(#0)に接続される。すなわち、サーキュレータ314の3つのポートに送信機311と受信機312とアンテナ(#0)とが接続される。送信機311からの送信信号は、サーキュレータ314の例えば1つ目のポートに入力され、2つ目のポートからアンテナ(#0)に伝達される。また、アンテナ(#0)で受信された受信信号は、サーキュレータ314の2つ目のポートに入力され、3つ目のポートから受信機312に伝達される。
【0039】
ここで、送信信号と受信信号の電力差は例えば約100dBほどである。一方、サーキュレータ314のアイソレーションは30dB程度であり、送信信号の一部は受信信号と互いに干渉し合う。この無線機31における送信信号の一部と受信信号との干渉は、自己干渉と呼ばれる。自己干渉は受信機312内のRadio Frequency(RF)アナログフィル
タとベースバンド回路313内のFIRフィルタを併用することで抑圧される。
【0040】
受信機312は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0)から受信信号を受ける。受信機312は、直交検波回路とアナログデジタル(AD)コンバータを有する。受信機312は、直交検波により受信信号をダウンコンバートし、さらにADコンバータによりデジタルデータに変換してベースバンド信号を得る。受信機312は、得られたベースバンド信号をベースバンド回路313に出力する。
【0041】
ベースバンド回路313は、FIRフィルタを有する。ベースバンド回路313は、FIRフィルタにより、受信信号に混入し、自己干渉している送信信号を抑圧するとともに、受信信号を所定の遅延時間だけ遅延させる。ベースバンド回路313は、FIRフィルタによりフィルタリングした受信信号を送信機311に出力する。
【0042】
送信機311は、デジタルアナログ(DA)コンバータと、変調回路とを有する。送信機311は、ベースバンド回路313からの受信信号をアナログ信号に変換し、変調回路によりRF信号を生成する。送信機311は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0)からRF信号を中継信号として送信する。
【0043】
制御回路32は、例えば、CPU等のプロセッサ、又は、FPGA等の演算回路である。制御回路32は、非再生中継処理の制御を行う。より具体的には、制御回路32は、伝搬路の電波伝搬特性を計測し、その計測結果を制御装置1へ通知したり、FIRフィルタの設定を行ったりする。制御回路32は、「中継局」の「制御部」の一例である。
【0044】
なお、中継局3のハードウェア構成は
図3に示されるものに限定されない。例えば、中継局3は、アンテナを複数備えてもよい。アンテナを複数備える場合には、当該複数のアンテナは、それぞれが無線機と接続してもよいし、1つの無線機に接続してもよい。また、中継局3は、制御回路32が接続する、制御チャネル用のアンテナを別途備えてもよい。
【0045】
図4は、第1実施形態に係るFIRフィルタの構成の一例を示す図である。FIRフィルタは、自己干渉を抑圧するための構成として、N_(D,i)段のタップ(T1、T2、・・・、TN_(D,i))を有する。アルファベットの後の下線以降のカッコ内の文字は、図中の下付き文字に相当する。タップT1は、遅延器Dを介さないで入力信号を乗算器MLにより重みw_(i,1)で重み付けする。タップT2は、入力信号を遅延器D(遅延時間τ_(D))により遅延させ、乗算器MLにより重みw_(i,2)で重み付けする。タップT3以降も同様である。したがって、最終段のタップTN_(D,i)では、タップT1への入力信号(FIRフィルタへの入力信号)には、遅延時間τ_D×(N_(D,i)-1)の遅延と、重みw_(i,N_(D,i))の重み付けがされる。各タップ(T1、T2、・・・、TN_(D,i))で処理された信号は、それぞれ、加算器ADにより加算される。以上の構成により、FIRフィルタへの入力信号は、重み付け平均され、受信信号以外の干渉信号および雑音が除去されるとともに、遅延時間τ_(D)×(N_(D,i)-1)だけ遅延される。
【0046】
第1実施形態では、FIRフィルタは、上記の自己干渉を抑圧するための構成に加えて、中継信号を他の中継信号と同時刻に同位相で端末局4に到達させるための構成を有する。第1実施形態に係るFIRフィルタは、1段目のタップT1から最終段のタップTN_(D,i)によって、遅延の追加と重み付け平均とがなされた信号に対して、遅延をさらに追加する遅延器Dφと、さらに重み付けを行う乗算器MLを有する。遅延器Dφは、中継信号を他の中継信号と同時刻に端末局4に到達させるための遅延時間を信号に追加する。乗算器MLは、重みw_(i,N_(D,i+1))で重み付けを行う。重みw_(i,N_(D,i+1))は、中継信号を他の中継信号と同位相で端末局4に到達させるために中継信号に位相回転を与えるための重みである。
【0047】
FIRフィルタの使用するタップ数N_(D,i)、遅延器Dφで与えれられる遅延時間、及び、重みw_(i,1)から重みw_(i,N_(D,i)+1)は、制御回路32によって取得される。詳細は後述される。
【0048】
図5は、制御装置1のハードウェア構成を例示する図である。制御装置1はCPU 1
1と、主記憶装置12と、外部機器を有し、コンピュータプログラムにより通信処理および情報処理を実行する。CPU 11は、プロセッサとも呼ばれる。CPU 11は、単一のプロセッサに限定されず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU 11は、Graphics Processing Unit(GPU)、Digital Signal Processor(DSP)等を含むものであってもよい。また、CPU 11は、Field Programmable Gate Array(F
PGA)等のハードウェア回路と連携するものでもよい。外部機器としては、外部記憶装置13、出力装置14、操作装置15、および通信装置16が例示される。
【0049】
CPU 11は、主記憶装置12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、制御装置1の処理を提供する。主記憶装置12は、CPU 11が実行するコンピュータプログラム、CPU 11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(SRAM)
、Read Only Memory(ROM)等である。さらに、外部記憶装置13は、例えば、主記憶装置12を補助する記憶領域として使用され、CPU 11が実行するコンピュータプログラム、CPU 11が処理するデータ等を記憶する。外部記憶装置13は、ハードディスクドライブ、Solid State Drive(SSD)等である。さらに、制御装置1には、着脱
可能記憶媒体の駆動装置が接続されてもよい。着脱可能記憶媒体は、例えば、ブルーレイディスク、Digital Versatile Disc(DVD)、Compact Disc(CD)、フラッシュメモリカード等である。CPU 11は、「制御装置」の「制御部」の一例である。
【0050】
出力装置14は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等の表示装置である。ただし、出力装置14がスピーカその他の音を出力する装置を含んでもよい。操作装置15は、例えば、ディスプレイ上にタッチセンサを重ねたタッチパネル等である。通信装置16は、例えば、光ファイバを介して基地局2およびインターネット等の外部ネットワークと通信する。通信装置16は、例えば、基地局2に接続されるゲートウェイおよびインターネット等の外部ネットワークと通信するゲートウェイである。通信装置16は、1台の装置であってもよいし、複数台の装置の組み合わせであってもよい。なお、制御装置1のハードウェア構成は、
図5に示されるものに限定されない。
【0051】
<制御方法>
図6は、基地局2からの直達信号、及び、中継局3からの中継信号に関する送信タイミング及び到着タイミングの一例を示す図である。
図6では、中継局#0と中継局#1との2台の中継局3によって非再生中継が行われる場合の例が示される。すなわち、
図6では、基地局2から端末局4に到着する直達信号(図中“BS→UE”)、中継局#0から端末局4に到着する中継信号(図中“#0→UE”)、及び、中継局#1から端末局4に到着する中継信号(図中“#1→UE”)の3つの、端末局4が受信する信号を示すグラフである。
図6に示される各グラフは、横軸が時間で、縦軸が信号の受信電力である。また、
図6に示される各グラフの開始点はスロットの先頭である。
【0052】
まず、通信システム100では、CP-OFDMが採用されていることを前提としているので、基地局2からの直達信号及び各中継局3からの中継信号はサイクリックプレフィクス長Tcpの間に端末局4に到着することが求められる。その為、端末局4への中継信号の到着タイミングΔRは、サイクリックプレフィクス長Tcpよりも短く設定される。また、基地局2からの直達信号と各中継局3からの中継信号とは同位相でないため、端末局4への到着が重複するとSNRの改善効果を十分に得られない可能性がある。その為、基地局2からの直達信号と各中継局3からの中継信号が重複しないように、ΔRは、基地局2と端末局4間の伝搬遅延τ_(BS→UE)と遅延広がりσ_(BS→UE)との合計時間よりも長く設定される。
【0053】
そこで、第1実施形態では、端末局4への中継信号の到着タイミングとなるスロット先
頭からの遅延時間ΔRは、以下の式(1)で取得される。
【数1】
τ_(R)は、中継局3における処理遅延と中継局3と端末局4間の伝搬遅延とを考慮した値である。τ_(R)は、例えば、複数の中継局3のうち、中継局3における処理遅延及び中継局3と端末局4間の伝搬遅延のそれぞれの最大値の合計に+αした値である。τ_(R)は、制御装置1によって設定される。
【0054】
中継局3では、スロットの先頭からΔRに端末局4に中継信号が届くように中継信号に遅延を与えて送信する。中継局3の中継信号の送信タイミング、すなわち、スロットの先頭からの遅延時間Δiは、中継局3と端末局4との間の伝搬遅延をτ_(UE→R,i)とすると以下の式(2)で取得される。変数iは中継局3を示す変数であり、0からK-1(K:中継局3の数)の値をとる。
【数2】
中継局3が中継信号を受信するのは、スロット先頭から基地局2と中継局3との間の伝搬遅延τ_(BS→R,i)と遅延広がりσ_(BS→R,i)との合計時間後である。したがって、中継局3で中継信号に与える遅延時間φiは下記の式3で取得される。
【数3】
【0055】
中継局3で中継信号に与える遅延時間φiは、「第1の遅延時間」の一例である。遅延時間ΔRは、「第1の時間長」の一例である。中継局3と端末局4との間の伝搬遅延τ_(UE→R,i)は、「第1の中継局と受信局との間の伝搬遅延」の一例である。基地局2と端末局4との間の伝搬遅延τ_(BS→UE)は、「送信局と受信局との間の伝搬遅延」の一例である。基地局2と端末局4との間の遅延広がりσ_(BS→R,i)は、「送信局と受信局との間の遅延広がり」の一例である。τ_(R)は、「1以上の中継局のうちの一つの中継局による中継によって発生する遅延時間」の一例である。
【0056】
次に、端末局4に到着する中継信号を同位相にするために、中継局3で中継信号に与える位相回転量θiについて説明する。中継局3によって中継される中継信号には、端末局4に到着するまでに以下の位相回転量が加わる。
(1)基地局2と中継局3との間の伝送路で加わる位相回転量θ_(BS→R,i)
(2)基地局2からの信号の受信時に中継局3の受信機312で加わる位相回転量θ_(RX,i)
(3)中継局3から中継信号の送信時に中継局3の送信機311で加わる位相回転量θ_(TX,i)
(4)中継局3と端末局4との間の伝送路で加わる位相回転量θ_(UE→R,i)
【0057】
位相回転量θ_(BS→R,i)及び位相回転量θ_(UE→R,i)は、それぞれ、基地局2又は端末局4から発信されているリファレンス信号に基づいて計測された計測値
である。そのため、位相回転量θ_(BS→R,i)及び位相回転量θ_(UE→R,i)にはそれぞれ中継局3の受信機312で加わる位相回転量θ_(RX,i)が包含されている。したがって、中継信号に加わる位相回転量θiは、以下の式4で取得される。
【数4】
【0058】
位相回転量θiは、「第1の位相回転量」の一例である。基地局2と中継局3との間の伝送路で加わる位相回転量θ_(BS→R,i)は、「送信局から第1の中継局までの伝搬路で加わる位相回転量」の一例である。中継局3と端末局4との間の伝送路で加わる位相回転量θ_(UE→R,i)は、「第1の中継局から受信局までの伝搬路で加わる位相回転量」の一例である。中継局3の受信機312で加わる位相回転量θ_(RX,i)は、「受信機において加わる位相回転量」の一例である。送信機311で加わる位相回転量θ_(TX,i)は、「送信機において加わる位相回転量」の一例である。
【0059】
<処理の流れ>
図7は、制御装置1の処理のフローチャートの一例である。
図7に示される処理は、例えば、端末局4から接続要求を受信した場合に開始され、当該端末局4の通信が終了するまで、無線フレームごとに実行される。
図7に示される処理の実行主体は、制御装置1のCPU 11 であるが、便宜上、制御装置1を主体として説明する。
【0060】
OP101では、制御装置1は、基地局2と各中継局3とに、端末局4との間の電波伝搬特性の計測を指示する。電波伝搬特性には、例えば、伝搬遅延、遅延広がり時間、及び、位相回転量が含まれる。なお、中継局3の選定は、
図7に示される処理より前に実行済みである。
【0061】
OP102では、制御装置1は、基地局2から、端末局4との間の電波伝搬特性の測定結果を受信する。OP102において、制御装置1は、基地局2と端末局4間の伝搬遅延τ_(BS→UE)と、遅延広がりσ_(BS→UE)と、を取得する。
【0062】
OP103では、制御装置1は、各中継局3から、端末局4との間の電波伝搬特性の測定結果を受信する。OP103において、制御装置1は、各中継局3と端末局4間の伝搬遅延τ_(UE→R,i)と、遅延広がりσ_(UE→R,i)と、位相回転量θ_(UE→R,i)と、を取得する。
【0063】
OP104では、制御装置1は、端末局4への中継信号の到達タイミングである遅延時間ΔRを計算する。なお、OP104では、制御装置1は、中継局3と端末局4との間の伝搬遅延及び中継局3における処理遅延を考慮したτ_(R)を取得してもよい。
【0064】
OP105では、制御装置1は、各中継局3へ、遅延時間ΔRを通知する。なお、
図7における制御装置1と基地局2及び各中継局3との通信は制御チャネルを通じて行われる。
【0065】
図8は、基地局2の処理のフローチャートの一例である。
図8に示される処理は、中継局3の稼働中繰り返し実行される。
図8に示される処理の実行主体は、基地局2の制御回路22又は中央基地局2Aの制御回路22Aであるが、便宜上、基地局2を主体として説明する。
【0066】
OP201では、基地局2は、制御装置1から電波伝搬特性計測の指示を受信したか否かを判定する。制御装置1から電波伝搬特性計測の指示が受信された場合には(OP201:YES)、処理がOP202へ進む。制御装置1から電波伝搬特性計測の指示が受信された場合には(OP201:NO)、
図8に示される処理が終了する。
【0067】
OP202では、基地局2は、端末局4から所定の周期で発信されているリファレンス信号を受信する。OP203では、OP202で受信されたリファレンス信号に基づいて、基地局2と端末局4との間の電波伝搬特性を計測する。OP203で計測される電波伝搬特性には、基地局2と端末局4との間の伝搬遅延τ_(BS→UE)と遅延広がりσ_(BS→UE)が含まれる。OP204では、基地局2は、制御装置1へ、基地局2と端末局4との間の電波伝搬特性を通知する。
【0068】
OP205では、基地局2は、端末局4へのデータ信号を送信する。なお、OP202のリファレンス信号の送受信及びOP204の電波伝搬特性の通知は制御チャネルを通じて行われる。OP205のデータ信号の送信は、データチャネルを通じて行われる。その後、
図8に示される処理が終了する。
【0069】
図9A及び
図9Bは、中継局3の処理のフローチャートの一例である。
図9A及び
図9Bに示される処理は、中継局3の稼働中、繰り返し実行される。
図9A及び
図9Bの処理の実行主体は、中継局3の制御回路32であるが、便宜上、中継局3を主体として説明する。
【0070】
OP301では、中継局3は、制御装置1から電波伝搬特性の計測の指示を受信したか否かを判定する。制御装置1から電波伝搬特性の計測の指示が受信された場合には(OP301:YES)、処理がOP302へ進む。制御装置1から電波伝搬特性の計測の指示が受信されていない場合には、
図9Aに示される処理が終了する。
【0071】
OP302では、中継局3は、端末局4から所定の周期で発信されるリファレンス信号を受信し、当該リファレンス信号から、中継局3と端末局4との間の電波伝搬特性を計測する。OP302で計測される電波伝搬特性には、中継局3と端末局4との間の伝搬遅延τ_(UE→R,i)と遅延広がり(UE→R,i)と位相回転量θ_(UE→R,i)が含まれている。OP304では、中継局3は、制御装置1へ、中継局3と端末局4との間の電波伝搬特性の測定結果を通知する。
【0072】
OP304では、中継局3は、制御装置1から、遅延時間ΔRの通知を受信したか否かを判定する。遅延時間ΔRの通知が受信された場合には(OP304:YES)、処理がOP305へ進む。遅延時間ΔRの通知が受信されていない場合には(OP304;:NO)、待機状態となる。
【0073】
OP305では、中継局3は、OP304における遅延時間ΔRを通知する信号に付随するリファレンス信号から、基地局2と中継局3間の電波伝搬特性を計測する。OP305において計測される電波伝搬特性には、基地局2と中継局3との間の伝搬遅延τ_(BS→R,i)と遅延広がりσ_(BS→R,i)と位相回転量θ_(BS→R,i)とが含まれている。
【0074】
OP306からOP308は、当該無線フレームの送信信号の中継を行うか否かを判定する処理である。OP306では、中継局3は、中継局3における処理遅延τ_(R,i)を算出する。処理遅延τ_(R,i)は、FIRフィルタのタップ数-1(N_(D,i)-1)にタップ当たりの遅延時間τ_(D)を乗じて求められる。なお、FIRフィ
ルタのタップ数N_(D,i)は、例えば、自己干渉が除去されるように、自己干渉の遅延広がり(秒)とベースバンド波形のサンプリング周波数(秒)に基づいて取得される。
【0075】
OP307では、中継局3は、中継信号が端末局4に到着するタイミングの最小値τ_(min,i)を算出する。τ_(min,i)は、以下の式5で算出される。
【数5】
【0076】
基地局2と中継局3との間の伝搬遅延τ_(BS→R,i)は、「送信局と第1の中継局との間の伝搬遅延」の一例である。基地局2と中継局3との間の遅延広がりσ_(BS→R,i)は、「送信局と第1の中継局との間の遅延広がり」の一例である。中継局3における処理遅延τ_(R,i)は、「第1の中継局における処理遅延」の一例である。中継局3と端末局4との間の伝搬遅延τ_(UE→R,i)は、「第1の中継局と受信局との間の伝搬遅延」の一例である。τ_(min,i)は、「送信局と第1の中継局との間の伝搬遅延と、送信局と第1の中継局との間の遅延広がりと、第1の中継局における処理遅延と、第1の中継局と受信局との間の伝搬遅延と、の合計時間」の一例である。
【0077】
OP308では、中継局3は、τ_(min,i)がΔR以下であるか否かを判定する。τ_(min,i)がΔR以下である場合には、中継局3による中継信号がΔRまでに端末局4に到着できることが示され、中継局3は当該無線フレームの送信信号の中継処理の実行を判定する。この場合には、処理が
図9BのOP309へ進む。τ_(min,i)がΔRより大きい場合には、中継局3による中継信号がΔRまでに端末局4に到着できないことが示され、中継局3は当該無線フレームの送信信号の中継処理を実行しないことを判定する。この場合には、
図9Aに示される処理が終了する。
【0078】
図9Bに示される処理は、中継局3が当該無線フレームの送信信号の中継を行うことを判定した場合の処理である。OP309では、中継局3は、基地局2から送信されるリファレンス信号及び基地局2へ送信するリファレンス信号の送受信によって、送信及び受信間の自己干渉における結合行列H_(SI,i)を計測する。
【0079】
OP310では、中継局3は、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と送信機311の位相回転量θ_(TX,i)とを制御回路32が持つルックアップテーブルを参照して得る。当該ルックアップテーブルには、利得等の送信機及び受信機における設定値と位相回転量との関係が記載されている。
【0080】
OP311では、中継局3は、FIRフィルタの各乗算器MLの重みと遅延器Dφの遅延時間とを取得して設定する。FIRフィルタで信号に与える遅延時間φiは、上記(式3)によって、遅延時間ΔR、中継局3と端末局4との間の伝搬遅延τ_(UE→R,i)、基地局2と中継局3との間の伝搬遅延τ_(BS→R,i)及び遅延広がりσ_(BS→R,i)とから取得される。中継局3は、遅延器Dφの遅延時間として、遅延時間φiからFIRフィルタの自己干渉を抑圧するための構成における処理遅延τ_(R,i)を差し引いた値を設定する。
【0081】
自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタのタップT1からタップTN_(D,i)のそれぞれの重みw_(i,L)(L=1、...、N_(D,i))は、行列H_(SI,i)に基づいて決定される。重みw_(i,L)の算出方法は、周知の方法で取得される。重みw_(i,N_(D,i+1))は、中継信号に加えられる位相回転量θiをキャンセルするために、下記の式(6)で取得される。
【数6】
【0082】
OP312では、中継局3は、基地局2から受信したデータ信号の非再生中継を実行する。OP313では、中継局3は、中継が継続するか否かを判定する。中継局3は、制御装置1から中継の停止の指示を受信するまで、中継を継続する。中継が継続する場合には(OP313:YES)、処理が
図9AのOP301へ進む。中継が継続しない場合には(OP313:NO)、
図9Bに示される処理が終了する。なお、OP312のデータ信号の非再生中継はデータチャネルで行われ、それ以外の基地局2又は端末局4との通信は制御チャネルを通じて行われる。
【0083】
図10A及び
図10Bは、第1実施形態に係る非再生中継に係る処理のシーケンスの一例である。
図10A及び
図10Bは、通信システム100Aを想定した例である。
図10A及び
図10Bは、制御装置1、基地局2、中継局3-i、及び、端末局4の処理シーケンスを含む。なお、通信システム100Bにおいては、基地局2が中央基地局2Aと1以上の分散基地局2Bに分離する。しかしながら、中央基地局2Aの制御回路22Aの処理は、
図10A及び
図10Bと同様である。
図10A及び
図10Bでは、制御チャネルを通じた情報の送受信は実線で、データチャネルを通じた情報の送受信は破線で示されている。
【0084】
S11では、端末局4から接続要求が送信される。接続要求は端末局4が位置するセルを管理する基地局2に受信され、基地局2から制御装置1へ転送される。S12では、制御装置1は、基地局2及び中継局3-iに端末局4との間の電波伝搬特性の計測の指示を送信する(
図7、OP101)。基地局2及び中継局3-iは、電波伝搬特性の計測の指示を受信する(
図8、OP201:YES、
図9A、OP301:YES)。
【0085】
S21では、端末局4は、所定の周期でリファレンス信号を発信している。S31では、基地局2は、端末局4からのリファレンス信号を受信し(
図8、OP202)、当該リファレンス信号を用いて、基地局2と端末局4との間の電波伝搬特性を計測する(
図8、OP203)。S32では、基地局2は、計測した基地局2と端末局4との間の電波伝搬特性を制御装置1へ送信する(
図8、OP204)。制御装置1は、基地局2と端末局4との間の電波伝搬特性を受信する(
図7、OP102)。S41では、中継局3-iは、端末局4からのリファレンス信号を受信し、当該リファレンス信号を用いて、中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性を計測する(
図9A、OP302)。S42では、中継局3-iは、計測した中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性を制御装置1へ送信する(
図9A、OP303)。制御装置1は、中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性を受信する(
図7、OP103)。
【0086】
S51では、制御装置1は、基地局2と端末局4との間の電波伝搬特性と中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性とを用いて、遅延時間ΔRを算出する(
図7、OP104)。S52では、制御装置1は、中継局3-iとに、遅延時間ΔRを送信する(
図7、OP105)。遅延時間ΔRを送信する信号は、制御装置1から基地局2へ出力され、基地局2から端末局4へ送信される。中継局3-iは、遅延時間ΔRを受信する(
図9A、OP304:YES)
【0087】
S53では、中継局3-iは、基地局2から受信した遅延時間ΔRを通知する信号に付随するリファレンス信号に基づいて、基地局2と中継局3-iとの間の電波伝搬特性を計測する(
図9A、OP305)。S54では、中継局3-iは、中継信号が端末局4に到
着するタイミングの最小値τ_(min,i)を算出する(
図9A、OP306、OP307)。S55では、中継局3-iは、τ_(min,i)が遅延時間ΔR以下であるため、当該無線フレームにおける中継の実施を判定する(
図9A、OP308:YES)。
【0088】
図10BのS61では、中継局3-iと基地局2とでリファレンス信号の送受信を行う。S62では、中継局3-iは、S61において基地局2間で送受信されたリファレンス信号に基づいて、結合行列H_(SI,i)を計測する(
図9B,OP309)。S63では、中継局3-iは、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と送信機311の位相回転量θ_(TX,i)とを制御回路32が持つルックアップテーブルを参照して得る(
図9B、OP310)。S64では、中継局3-iは、FIRフィルタの遅延時間φiと重みw_(i,L)(L=1,...,N_(D,i))と重みw_(i,N_(D,i)+1)とを算出し、FIRフィルタに設定する(
図9B、OP311)。
【0089】
S71では、基地局2が端末局4へデータ信号を送信する(
図8、OP205)。S72では、中継局3-iが、端末局4へのデータ信号を受信し、非再生中継を行う(
図9B、OP312)。S73では、中継局3-iは、データ信号を端末局4へ送信する。より具体的には、中継局3-iでは、受信機312においてデータ信号がアナログ信号からデジタル信号に変換されてベースバンド信号が得られ、FIRフィルタに入力される。FIRフィルタでは、中継信号に対して、自己干渉を除去するための重みw_(i,L)(L=1,...,N_(D,i))と、遅延時間φiと、位相回転量θiを与えるための重みw_(i,N_(D,i)+1)とが加えられる。中継信号は、FIRフィルタから送信機311に入力され、デジタル信号からアナログ信号に変換されて、アンテナから端末局4へ送信される。
【0090】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態では、非再生中継を行う複数の中継局3それぞれにおいて、複数の中継信号が端末局4に同時に同位相で到着するように、中継信号に遅延時間と位相回転量とが与えられる。これによって、端末局4では、中継信号が同位相で合成されることでSNRが改善される。また、第1実施形態では、基地局2、中継局3、及び、端末局4間で、高精度な位相同期が求められるため、例えば、1GHz以下の周波数帯においてより効果を得ることができる。
【0091】
第1実施形態では、各中継局3が、スロットの先頭からΔRまでに端末局4に中継信号を到着させることができるか否かに応じて、非再生中継を行うか否かを判定する。他の中継局3と同時刻に端末局4に中継信号を到着させることができない中継局3は非再生中継を行わない。これによって、端末局4には、スロットの先頭からΔRのタイミングでは同位相となる中継信号以外の中継信号が届かないので、より大きなSNRを得ることができる。
【0092】
<第2実施形態>
第1実施形態では、中継局3自身が、複数の中継信号が端末局4に同時に同位相で到着するように、中継信号に与える遅延時間と位相回転量とを算出する。また、第1実施形態では、中継局3自身が、スロットの先頭から遅延時間ΔRまでに端末局4に中継信号を到着させることができるか否かに応じて、非再生中継を行うか否かを判定する。第2実施形態では、これらの処理を中継局3以外の装置が行う。第2実施形態では、第1実施形態と共通する説明は省略される。
【0093】
第2実施形態でもシステム構成は、第1実施形態と同様に、
図1に示される通信システム100A又は
図2に示される通信システム100Bのいずれかの構成である。以下、制御装置が、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える
遅延時間と位相回転量との算出と、を行う場合について説明する。以下、第2実施形態において、制御装置は、符号1Bを付して表記する。
【0094】
図11A及び
図11Bは、第2実施形態に係る制御装置1Bの処理のフローチャートの一例である。
図11に示される処理は、例えば、
図7に示される処理と同様に、端末局4から接続要求を受信した場合に開始され、当該端末局4の通信が終了するまで、無線フレームごとに実行される。
図11に示される処理の実行主体は、制御装置1BのCPU 11 であるが、便宜上、制御装置1Bを主体として説明する。
【0095】
第2実施形態においても、制御装置1Bは、まず、
図7のOP101からOP104の処理を実行する。すなわち、制御装置1Bは、基地局2と各中継局3とから、それぞれの端末局4との間の電波伝搬特性の計測を取得し、端末局4への中継信号の到達タイミングである遅延時間ΔRを算出する。
【0096】
OP501では、制御装置1Bは、各中継局3に、中継局3と基地局2との間の伝搬特性の計測の指示と、中継局3におけるFIRフィルタに関する情報の要求とを送信する。FIRフィルタに関する情報は、例えば、FIRフィルタのタップ数、及び、1タップ当たりの遅延時間である。
【0097】
OP502では、制御装置1Bは、各中継局3から、基地局2との間の電波伝搬特性の測定結果と、中継局3におけるFIRフィルタに関する情報と、を受信する。OP502において、制御装置1Bは、基地局2との間の電波伝搬特性の測定結果として、基地局2と中継局3との間の伝搬遅延τ_(BS→R,i)と遅延広がりσ_(BS→R,i)と位相回転量θ_(BS→R,i)と、を取得する。OP502において、制御装置1Bは、中継局3におけるFIRフィルタに関する情報として、FIRフィルタのタップ数N_(D,i)と、1タップ当たりの遅延時間τ_(D)とを取得する。
【0098】
OP503からOP510の処理は、制御装置1Bが中継局として選択している中継局3ごとに実行される。以下、OP503からOP510の処理の対象の中継局を中継局#iと表記する。
【0099】
OP505からOP503は、中継局#iに当該無線フレームの送信信号の非再生中継を実行させるか否かを判定する処理である。OP503では、制御装置1Bは、中継局#iにおける処理遅延τ_(R,i)を算出する。処理遅延τ_(R,i)は、FIRフィルタのタップ数-1(N_(D,i)-1)にタップ当たりの遅延時間τ_(D)を乗じて求められる。
【0100】
OP504では、制御装置1Bは、中継信号が中継局#iから端末局4に到着するタイミングの最小値τ_(min,i)を、上記(式5)に基づいて、算出する。
【0101】
OP505では、制御装置1Bは、τ_(min,i)がΔR以下であるか否かを判定する。τ_(min,i)がΔR以下である場合には(OP505:YES)、中継局#iから送信される中継信号がΔRまでに端末局4に到着できることが示され、制御装置1Bは、中継局#iによる当該無線フレームの送信信号の中継処理の実行を判定する。この場合には、処理が
図11BのOP507へ進む。
【0102】
τ_(min,i)がΔRより大きい場合には(OP505:NO)、中継局#iから送信される中継信号がΔRまでに端末局4に到着できないことが示され、制御装置1Bは、中継局#iによる当該無線フレームの送信信号の中継処理を実行させないことを判定する。OP506では、制御装置1Bは、制御チャネルを通じて、中継局#iに、非再生中継
の不実施を通知する。その後、
図11Aに示される処理が終了する。
【0103】
図11Bに示される処理は、中継局#iによる当該無線フレームの送信信号の中継処理の実行が判定された場合の処理である。
図11BのOP507では、制御装置1Bは、中継局#iへ、自己干渉における結合行列H_(SI,i)と、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と、送信機311の位相回転量θ_(TX,i)と、の要求を送信する。
【0104】
OP508では、制御装置1Bは、中継局#iから、送信及び受信間の自己干渉における結合行列H_(SI,i)と、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と、送信機311の位相回転量θ_(TX,i)と、を受信する。
【0105】
OP509では、制御装置1Bは、中継局#iのFIRフィルタにおいて、遅延器Dφにおける遅延時間と、中継信号に加えられる位相回転量をキャンセルするための重みw_(i,N_(D,i+1))とを算出する。遅延器Dφにおける遅延時間は、FIRフィルタで信号に与える遅延時間φiから処理遅延τ_(R,i)を差し引いた値として求められる。FIRフィルタで信号に与える遅延時間φiは、上記(式3)によって、遅延時間ΔR、中継局3と端末局4との間の伝搬遅延τ_(UE→R,i)、基地局2と中継局3との間の伝搬遅延τ_(BS→R,i)及び遅延広がりσ_(BS→R,i)とから取得される。重みw_(i,N_(D,i+1))は、上記の式(6)で取得される。
【0106】
OP510では、制御装置1Bは、中継局#iへ、OP509において算出した、遅延器Dφにおける遅延時間と、重みw_(i,N_(D,i+1))とを通知する。その後、
図11Bに示される処理が終了する。
【0107】
図12A及び
図12Bは、第2実施形態に係る非再生中継に係る処理のシーケンスの一例である。
図12A及び
図12Bは、通信システム100Aを想定した例である。
図12A及び
図12Bは、制御装置1B、基地局2、中継局3-i、及び、端末局4の処理シーケンスを含む。なお、中継局3は複数存在するが、便宜上、代表して中継局3-iが示されている。また、各中継局3については、中継局3-iと同様の処理が行われる。なお、通信システム100Bにおいては、基地局2が中央基地局2Aと1以上の分散基地局2Bに分離する。しかしながら、中央基地局2Aの制御回路22Aの処理は、
図12A及び
図12Bと同様である。
図12A及び
図12Bでは、制御チャネルを通じた情報の送受信は実線で、データチャネルを通じた情報の送受信は破線で示されている。
【0108】
S111からS151は、
図10AのS11からS51までと同様である。S152では、制御装置1Bは、中継局3-iへ、基地局2との間の電波伝搬特性の計測の指示と、FIRフィルタに関する情報の要求とを送信する(
図11A、OP501)。制御装置1Bからの指示は、基地局2に送信され、基地局2から中継局3-iへ送信される。
【0109】
S153では、中継局3-iは、S152において基地局2から送信された信号に付随するリファレンス信号に基づいて、基地局2と中継局3-iとの間の電波伝搬特性を計測する。S154では、中継局3-iは、基地局2と中継局3-iとの間の電波伝搬特性と、FIRフィルタに関する情報(FIRフィルタのタップ数N_(D,i)、1タップ当たりの遅延時間τ_(D))を制御装置1Bへ送信する。制御装置1Bは、中継局3-iから、基地局2と中継局3-iとの間の電波伝搬特性と、FIRフィルタに関する情報とを受信する(
図11A、OP502)。
【0110】
S155では、制御装置1Bは、中継信号が中継局3-iから端末局4に到着するタイミングの最小値τ_(min,i)を算出する(
図11A、OP503、OP504)。
S156では、制御装置1Bは、τ_(min,i)が遅延時間ΔR以下であるため、中継局3-iによる当該無線フレームにおける中継の実施を判定する(
図11A、OP505:YES)。
【0111】
図12BのS161では、制御装置1Bは、中継局3-iへ、自己干渉における結合行列H_(SI,i)と、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と、送信機311の位相回転量θ_(TX,i)と、の要求を送信する(
図11B、OP507)。
【0112】
S162では、中継局3-iと基地局2とでリファレンス信号の送受信を行う。S163では、中継局3-iは、S162において基地局2間で送受信されたリファレンス信号に基づいて、結合行列H_(SI,i)を計測する。S164では、中継局3-iは、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と送信機311の位相回転量θ_(TX,i)とを制御回路32が持つルックアップテーブルを参照して取得する。S165では、中継局3-iは、制御装置1Bへ、結合行列H_(SI,i)と、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と、送信機311の位相回転量θ_(TX,i)とを送信し、制御装置1Bはこれらを受信する(
図11B、OP508)。
【0113】
S171では、制御装置1Bは、中継局3-iについて、FIRフィルタの遅延器Dφにおける遅延時間と重みw_(i,N_(D,i)+1)とを算出する(
図11B、OP509)。S172では、制御装置1Bは、中継局3-iへ、FIRフィルタの遅延器Dφにおける遅延時間と重みw_(i,N_(D,i)+1)とを通知する(
図11B、OP510)。
【0114】
S173では、中継局3-iは、制御装置1Bから受信した、FIRフィルタの遅延器Dφにおける遅延時間と重みw_(i,N_(D,i)+1)とをFIRフィルタに設定する。なお、中継局3-iは、自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタのタップT1からタップTN_(D,i)のそれぞれの重みw_(i,L)(L=1、...、N_(D,i))を、行列H_(SI,i)に基づいて決定して設定する。
【0115】
S181では、基地局2が端末局4へデータ信号を送信する。S182では、中継局3-iが、端末局4へのデータ信号を受信し、非再生中継を行う。S183では、中継局3-iは、データ信号を端末局4へ送信する。
【0116】
以上より、中継局3-i以外の装置として、制御装置1Bが、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行うことができる。なお、
図11A、
図11B、
図12A、及び、
図12Bに示される処理は一例であって、これらに限定されない。例えば、
図11BのOP509及びOP510において、制御装置1Bは、中継局3-iのFIRフィルタで信号に与える遅延時間φiを算出して中継局3-iに送信し、中継局3-iがFIRフィルタの遅延器Dφにおける遅延時間を算出するようにしてもよい。または、
図11BのOP509及びOP510において、制御装置1Bが、中継局3-iの自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタのタップT1からタップTN_(D,i)のそれぞれの重みw_(i,L)(L=1、...、N_(D,i))を、行列H_(SI,i)に基づいて決定して、中継局3-iに通知してもよい。
【0117】
制御装置1Bの他、基地局2又は端末局4が、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行ってもよい。基地局2又は端末局4は、例えば、
図11A及び
図11Bに示される、制御装置1Bと同様の処理を行うことができる。遅延時間ΔRを算出する際に用いられるτ_(R)は、基地局2又は端末局4が設定してもよいし、予め定められた値を用いてもよい。以下では
、τ_(R)は、基地局2又は端末局4が設定することとする。
【0118】
図13A及び
図13Bは、基地局2Cが、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行う場合の処理のシーケンスの一例である。
図13A及び
図13Bは、通信システム100Aを想定した例である。
図13A及び
図13Bは、制御装置1、基地局2C、中継局3-i、及び、端末局4の処理シーケンスを含む。なお、中継局3は複数存在するが、便宜上、代表して中継局3-iが示されている。また、各中継局3については、中継局3-iと同様の処理が行われる。なお、通信システム100Bにおいては、基地局2が中央基地局2Aと1以上の分散基地局2Bに分離し、中央基地局2Aの制御回路22Aが、
図13A及び
図13Bの基地局2と同様の処理を行う。
図13A及び
図13Bでは、制御チャネルを通じた情報の送受信は実線で、データチャネルを通じた情報の送受信は破線で示されている。
【0119】
S201では、端末局4から接続要求が送信される。接続要求は端末局4が位置するセルを管理する基地局2Cに受信され、基地局2Cから制御装置1へ転送される。S202では、制御装置1は、基地局2Cへ、端末局4からの接続要求の受信と、端末局4への信号を中継する複数の中継局3-iの情報とを通知する。このとき、制御装置1は、τ_(R)も併せて基地局2へ通知してもよい。
【0120】
S211では、基地局2Cは、中継局3-iに端末局4との間の電波伝搬特性の計測の指示を送信する(
図7、OP101)。中継局3-iは、電波伝搬特性の計測の指示を受信する。
【0121】
S221では、端末局4は、所定の周期でリファレンス信号を発信している。S231では、基地局2Cは、端末局4からのリファレンス信号を受信し、当該リファレンス信号を用いて、基地局2Cと端末局4との間の電波伝搬特性を計測する。
【0122】
S241では、中継局3-iは、端末局4からのリファレンス信号を受信し、当該リファレンス信号を用いて、中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性を計測する。S242では、中継局3-iは、計測した中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性を基地局2へ送信する。基地局2Cは、中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性を受信する(
図7、OP103)。
【0123】
S251では、基地局2Cは、基地局2Cと端末局4との間の電波伝搬特性と中継局3-iと端末局4との間の電波伝搬特性とを用いて、遅延時間ΔRを算出する(
図7、OP104)。S252では、基地局2Cは、中継局3-iへ、基地局2Cとの間の電波伝搬特性の計測の指示と、FIRフィルタに関する情報の要求とを送信する(
図11A、OP501)。
【0124】
S253では、中継局3-iは、S252において基地局2Cから送信された信号に付随するリファレンス信号に基づいて、基地局2Cと中継局3-iとの間の電波伝搬特性を計測する。S254では、中継局3-iは、基地局2Cと中継局3-iとの間の電波伝搬特性と、FIRフィルタに関する情報(FIRフィルタのタップ数N_(D,i)、1タップ当たりの遅延時間τ_(D))を基地局2Cへ送信する。基地局2Cは、中継局3-iから、基地局2と中継局3-iとの間の電波伝搬特性と、FIRフィルタに関する情報とを受信する(
図11A、OP502)。
【0125】
S255では、基地局2Cは、中継信号が中継局3-iから端末局4に到着するタイミングの最小値τ_(min,i)を算出する(
図11A、OP503、OP504)。S256では、基地局2Cは、τ_(min,i)が遅延時間ΔR以下であるため、中継局
3-iによる当該無線フレームにおける中継の実施を判定する(
図11A、OP505:YES)。
【0126】
図13BのS261では、基地局2Cは、中継局3-iへ、自己干渉における結合行列H_(SI,i)と、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と、送信機311の位相回転量θ_(TX,i)と、の要求を送信する(
図11B、OP507)。
【0127】
S262では、中継局3-iと基地局2とでリファレンス信号の送受信を行う。S263では、中継局3-iは、S262において基地局2間で送受信されたリファレンス信号に基づいて、結合行列H_(SI,i)を計測する。S264では、中継局3-iは、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と送信機311の位相回転量θ_(TX,i)とを制御回路32が持つルックアップテーブルを参照して取得する。S265では、中継局3-iは、基地局2Cへ、結合行列H_(SI,i)と、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)と、送信機311の位相回転量θ_(TX,i)とを送信し、基地局2Cはこれらを受信する(
図11B、OP508)。
【0128】
S271では、基地局2Cは、中継局3-iについて、FIRフィルタの遅延器Dφにおける遅延時間と重みw_(i,N_(D,i)+1)とを算出する(
図11B、OP509)。S272では、基地局2Cは、中継局3-iへ、FIRフィルタの遅延器Dφにおける遅延時間と重みw_(i,N_(D,i)+1)とを通知する(
図11B、OP510)。
【0129】
S273では、中継局3-iは、基地局2Cから受信した、FIRフィルタの遅延器Dφにおける遅延時間と重みw_(i,N_(D,i)+1)とをFIRフィルタに設定する。なお、中継局3-iは、自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタのタップT1からタップTN_(D,i)のそれぞれの重みw_(i,L)(L=1、...、N_(D,i))を、行列H_(SI,i)に基づいて決定して設定する。以降、中継局3-iは、
図12BのS181からS183と同様にして、基地局2からのデータ信号の非再生中継を行う。
【0130】
図13A及び
図13Bより、中継局3-i以外の装置として、基地局2Cが、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行うことができる。なお、
図13A及び
図13Bに示される処理は一例であって、これらに限定されない。例えば、
図13のS252からS254における、中継局3-iからの、基地局2Cと中継局3-iとの間の電波伝搬特性の取得は、基地局2C自身が行ってもよい。
【0131】
端末局4が、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行う場合には、端末局4は、接続要求の送信後、制御装置1から、例えば、基地局2と複数の中継局3との情報を取得し、以降、
図13AのS211以降の基地局2Cと同様の処理を行うようにしてもよい。また、この場合には、端末局4と基地局2との間の電波伝搬特性、端末局4と中継局3との間の電波伝搬特性は、端末局4自身が計測してもよい。
【0132】
また、制御装置1、基地局2、及び、端末局4の一部または全部が、協調して、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出と、を行ってもよい。例えば、制御装置1が遅延時間ΔRを算出し、基地局2又は端末局4が、中継局3の非再生中継の実施可否判定と、中継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出とを行ってもよい。例えば、制御装置1が遅延時間ΔRを算出し、基地局2が中継局3の非再生中継の実施可否判定を行い、端末局4が中
継局3において中継信号に与える遅延時間と位相回転量との算出を行ってもよい。
【0133】
<変形例>
【0134】
第1実施形態及び第2実施形態では、ダウンリンク方向における非再生中継について説明されたが、アップリンク方向の非再生中継についても同様に適用することができる。アップリンク方向の場合には、送信局は端末局4、受信局は基地局2となる。
【0135】
複数の中継局3で複数のグループを作成し、各グループについて中継信号の端末局4への到着タイミングΔRを設定して、グループごとに異なるタイミングで中継信号が同位相で端末局4に到着するようにしてもよい。
【0136】
第1実施形態及び第2実施形態では、中継局3はアンテナを1本備えることが想定されて説明されたが、中継局3はアンテナを複数備えてもよい。中継局3がアンテナを複数備える場合には、中継局3は、各アンテナについて、非再生中継の実施の可否判定を行う。また、1本のアンテナに1つの無線機が接続される場合には、中継局3は、アンテナごとに中継信号に与える遅延時間と位相回転量とを取得する。
【0137】
第1実施形態では、各中継局3が中継信号に与える遅延時間と位相回転量とを算出するが、制御装置1が各中継局3についてこれらを算出し、各中継局3に通知してもよい。この場合には、制御装置1は、各中継局3から、受信機312の位相回転量θ_(RX,i)、送信機311の位相回転量θ_(TX,i)、及び、中継局3と端末局4との間の伝搬遅延を通知してもらうようにする。
【0138】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0139】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは、柔軟に変更可能である。
【0140】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0141】
1・・制御装置
2・・基地局
3・・中継局
4・・端末局
11・・CPU
12・・主記憶装置
13・・外部記憶装置
16・・通信装置
21、31、41・・無線機
22、32、42・・制御回路
100・・通信システム
311・・送信機
312・・受信機
313・・ベースバンド回路
314・・サーキュレータ