(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025614
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】流路部材
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20240216BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20240216BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240216BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0206
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182338
(22)【出願日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022127941
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 善博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】小澤 昂平
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126BB06
5H126EE29
5H126EE43
5H126EE45
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】ガス拡散層との接触抵抗を低減可能であり、かつガスの流路断面積を十分に確保可能な流路部材を提供する。
【解決手段】流路部材は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔部を含み、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1面における前記貫通孔部の幅は、前記第2面における前記貫通孔部の幅よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、
前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部と
を備え、
前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔部を含み、
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1面における前記貫通孔部の幅は、前記第2面における前記貫通孔部の幅よりも小さい、流路部材。
【請求項2】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部の側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する
請求項1に記載の流路部材。
【請求項3】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部は、前記第1面と前記第2面との間で最大幅となり、
前記貫通孔部の最大幅は、前記第2面における前記貫通孔部の幅よりも大きい
請求項1又は2に記載の流路部材。
【請求項4】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部は、前記第2面において最大幅となる
請求項1又は2に記載の流路部材。
【請求項5】
前記貫通孔部は、前記第1面側に位置する第1貫通孔部と、前記第1貫通孔部に連続し、前記第2面側に位置する第2貫通孔部とからなり、
前記貫通孔部の側壁部は、前記第1貫通孔部の第1側壁部と、前記第2貫通孔部の第2側壁部とを含み、
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1側壁部と前記第2側壁部との間に角部を有する
請求項1に記載の流路部材。
【請求項6】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第2側壁部は、前記第2貫通孔部の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する
請求項5に記載の流路部材。
【請求項7】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第2貫通孔部は、前記第1面と前記第2面との間で最大幅となり、
前記第2貫通孔部の最大幅は、前記第2面における前記第2貫通孔部の幅よりも大きい
請求項5又は6に記載の流路部材。
【請求項8】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第2貫通孔部は、前記第2面において最大幅となる
請求項5又は6に記載の流路部材。
【請求項9】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1貫通孔部の幅は、前記第1面から前記角部に至るまで実質的に同一である
請求項5又は6に記載の流路部材。
【請求項10】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1貫通孔部の幅は、前記第1面から前記角部に向かって漸増する
請求項5又は6に記載の流路部材。
【請求項11】
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1貫通孔部の幅は、前記第1面から前記角部に向かって漸減する
請求項5又は6に記載の流路部材。
【請求項12】
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、
前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部と
を備え、
前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔部を含み、
前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部の側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する、流路部材。
【請求項13】
前記流路部は、前記第1方向において隣接する前記貫通孔部を連結する連続部を含む
請求項1又は12に記載の流路部材。
【請求項14】
前記連続部の前記第1面側に位置する面は、前記金属基材の前記第1面と面一であり、
前記連続部は、前記金属基材の前記第2面側から前記金属基材の厚さ方向に凹んでいる
請求項13に記載の流路部材。
【請求項15】
前記連続部の前記第2面側に位置する面は、前記金属基材の前記第2面と面一であり、
前記連続部は、前記金属基材の前記第1面側から前記金属基材の厚さ方向に凹んでいる
請求項13に記載の流路部材。
【請求項16】
複数の前記流路部を備え、
前記複数の流路部は、前記金属基材の前記第1面の面内における第2方向に並列しており、
前記第2方向は、前記第1方向に直交する
請求項1又は12に記載の流路部材。
【請求項17】
前記複数の流路部のピッチは、0.2mm~3.0mmである
請求項16に記載の流路部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、家庭用の小型発電システム等において固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell,PEFC)が用いられている。固体高分子型燃料電池は、膜電極複合体(Membrane-Electrode Assembly,MEA)及びセパレータを有する燃料電池セルを複数個並列して構成される。膜電極複合体は、一般に、固体高分子電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散層(Gass Diffusion Layer,GDL)をこの順で積層した構成を有する。セパレータは、ガス拡散層に接面して設けられており、反応ガス(アノード側セパレータにおいては水素等の燃料ガス、カソード側セパレータにおいては空気(又は酸素)等の酸化剤ガス)をガス拡散層に供給するとともに、集電を行うためのものであり、微細な凹凸形状のガス流路を有する。セパレータの微細な凹凸形状は、一般に、微細凹凸成形金型を用いた金属薄板のプレス加工により形成される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/198825号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス拡散層とセパレータとの接触抵抗の低減等の観点から、ガス拡散層に接触するセパレータの凸部の頂部が平坦であるのが好適とされ、流路から反応ガス(水素や空気(又は酸素))をガス拡散層に安定的に均一に供給する観点から、流路断面積を相対的に増大させるためにセパレータの凹部(凸部)の側壁部が鉛直であるのが好適とされる。
【0005】
上記特許文献1に記載されているように、微細凹凸成形金型を用いて金属薄板をプレス加工すると、製造されるセパレータのガス流路である微細な凹凸形状の凸部101の上面101Aは平坦面であり、凸部101の上面101Aに連続する側壁部102が略鉛直(凸部101の上面101Aに対して略直交)であるものの、凸部101の上面101Aと側壁部102との間に連続する肩部103が丸みを帯びている(
図18参照)。丸みを帯びた肩部103はガス拡散層に接触しないため、ガス拡散層とセパレータとの接触面積が相対的に減少し、接触抵抗が相対的に高くなる。ガス拡散層とセパレータとの接触抵抗が高いほどセパレータによる集電時に発熱しやすくなり、発電効率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
近年、燃料電池の小型化及び燃料電池における高電流密度化を達成することが求められる。燃料電池の小型化及び燃料電池における高電流密度化を達成するために、セパレータの微細な凹凸形状のピッチ(隣接する凸部101の間隔)を小さくすることが求められている。微細な凹凸形状のピッチが小さいセパレータを上記特許文献1に記載の方法で作製すると、側壁部102の角度θが大きくなってしまい、流路断面積が相対的に減少してしまう(
図19参照)。
【0007】
上記課題に鑑み、本開示は、ガス拡散層との接触抵抗を低減することができ、かつガスの流路断面積を十分に確保することのできる流路部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本開示の一実施形態として、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔部を含み、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1面における前記貫通孔部の幅は、前記第2面における前記貫通孔部の幅よりも小さい流路部材が提供される。
【0009】
本開示の一実施形態として、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔部を含み、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部の側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する流路部材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ガス拡散層との接触抵抗を低減可能であり、かつガスの流路断面積を十分に確保可能な流路部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の一の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の一の概略構成を示す、
図1におけるA-A線切断端面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の一の概略構成を示す、
図1におけるB-B線切断端面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の一の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の一の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す切断端面図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す切断端面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図11A】
図11Aは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図11B】
図11Bは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図11C】
図11Cは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図12A】
図12Aは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図12B】
図12Bは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図12C】
図12Cは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の概略構成を示す、
図1におけるB-B線切断端面図に相当する図面である。
【
図14A】
図14Aは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図14B】
図14Bは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図14C】
図14Cは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図14D】
図14Dは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図15A】
図15Aは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の態様の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図15B】
図15Bは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の態様の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図15C】
図15Cは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の態様の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図15D】
図15Dは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の態様の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図15E】
図15Eは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の態様の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図15F】
図15Fは、本開示の実施の形態に係る燃料電池用流路部材の他の態様の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施の形態における燃料電池の概略構成を示す切断端面図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施の形態における燃料電池の概略構成を示す切断端面図である。
【
図18】
図18は、従来の燃料電池用セパレータの概略構成を示す切断端面図である。
【
図19】
図19は、従来の燃料電池用セパレータの概略構成を示す切断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
当該図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりして示している場合がある。本明細書等において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
【0013】
本実施形態における第1態様は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔部を含み、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1面における前記貫通孔部の幅は、前記第2面における前記貫通孔部の幅よりも小さい流路部材である。
【0014】
本実施形態における第2態様は、上記第1態様において、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部の側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する流路部材である。
【0015】
本実施形態における第3態様は、上記態様1又は態様2において、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部は、前記第1面と前記第2面との間で最大幅となり、前記貫通孔部の最大幅は、前記第2面における前記貫通孔部の幅よりも大きい流路部材である。
【0016】
本実施形態における第4態様は、上記態様1又は態様2において、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部は、前記第2面において最大幅となる流路部材である。
【0017】
本実施形態における第5態様は、上記態様1~3のいずれかにおいて、前記貫通孔部は、前記第1面側に位置する第1貫通孔部と、前記第1貫通孔部に連続し、前記第2面側に位置する第2貫通孔部とからなり、前記貫通孔部の側壁部は、前記第1貫通孔部の第1側壁部と、前記第2貫通孔部の第2側壁部とを含み、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1側壁部と前記第2側壁部との間に角部を有する流路部材である。
【0018】
本実施形態における第6態様は、上記態様5において、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第2側壁部は、前記第2貫通孔部の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する流路部材である。
【0019】
本実施形態における第7態様は、上記態様5又は態様6において、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第2貫通孔部は、前記第1面と前記第2面との間で最大幅となり、前記第2貫通孔部の最大幅は、前記第2面における前記第2貫通孔部の幅よりも大きい流路部材である。
【0020】
本実施形態における第8態様は、上記態様5又は6において、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第2貫通孔部は、前記第2面において最大幅となる流路部材である。
【0021】
本実施形態における第9態様は、上記態様5~8のいずれかにおいて、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1貫通孔部の幅は、前記第1面から前記角部に至るまで実質的に同一である流路部材である。
【0022】
本実施形態における第10態様は、上記態様5~8のいずれかにおいて、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1貫通孔部の幅は、前記第1面から前記角部に向かって漸増する流路部材である。
【0023】
本実施形態における第11態様は、上記態様5~8のいずれかにおいて、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記第1貫通孔部の幅は、前記第1面から前記角部に向かって漸減する流路部材である。
【0024】
本実施形態における第12態様は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔部を含み、前記金属基材の厚さ方向に沿った断面視において、前記貫通孔部の側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する流路部材である。
【0025】
本実施形態における第13態様は、上記態様1~12のいずれかにおいて、前記流路部は、前記第1方向において隣接する前記貫通孔部を連結する連続部を含む流路部材である。
【0026】
本実施形態における第14態様は、上記態様13において、前記連続部の前記第1面側に位置する面は、前記金属基材の前記第1面と面一であり、前記連続部は、前記金属基材の前記第2面側から前記金属基材の厚さ方向に凹んでいる流路部材である。
【0027】
本実施形態における第15態様は、上記態様13において、前記連続部の前記第2面側に位置する面は、前記金属基材の前記第2面と面一であり、前記連続部は、前記金属基材の前記第1面側から前記金属基材の厚さ方向に凹んでいる流路部材である。
【0028】
本実施形態における第16態様は、上記態様1~15のいずれかにおいて、複数の前記流路部を備え、前記複数の流路部は、前記金属基材の前記第1面の面内における第2方向に並列しており、前記第2方向は、前記第1方向に直交する流路部材である。
【0029】
本実施形態における第17態様は、上記態様16において、前記複数の流路部のピッチは、0.2mm~3.0mmである流路部材である。
【0030】
本実施形態に係る燃料電池用流路部材1は、第1面2A及び第1面2Aの反対側に位置する第2面2Bを有する金属基材2と、金属基材2の第1方向D1(
図1においては縦方向)に延在する複数の流路部3とを備える。
【0031】
金属基材2を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、オーステナイト系ステンレス、チタン、アルミニウム等であればよい。これらの材料により構成される金属基材2を備える燃料電池用流路部材1は、その表面(全面)に金層、銀層、ニッケル合金層、カーボン層、白金等の貴金属層、導電材料を含有する樹脂層等の電気めっき層、蒸着層、電着層等(図示省略)が膜厚5nm~30nm程度で設けられていてもよい。上記層が設けられていることで、燃料電池用流路部材1の耐食性を向上させることができるとともに、燃料電池セル10(
図16及び
図17参照)のガス拡散層15,16との接触抵抗をより低減することができる。
【0032】
金属基材2の厚さT
2は、本実施形態に係る燃料電池用流路部材1を用いた燃料電池セル10(
図16及び
図17参照)の厚さに対する要求や仕様等に応じて適宜設定されればよいが、例えば、0.05mm~1.00mm程度であればよい。
【0033】
複数の流路部3は、第1方向D1に沿って延在し、第1方向D1に直交する第2方向D2(流路部3の幅方向)に沿って並列している。金属基材2の第1面2A側からの平面視における流路部3のピッチP3は、特に限定されるものではないが、例えば、0.2mm~3.0mm程度であればよい。本実施形態に係る燃料電池用流路部材1によれば、流路部3のピッチP3が相対的に狭くても(例えば0.2mm~1.5mm程度)、ガス拡散層15,16との接触面積及び流路部3の流路断面積を十分に確保することができる。なお、流路部3のピッチP3は、金属基材2の第1面2A側からの平面視において、一の流路部3の第2方向D2(幅方向)における中心とそれに隣接する他の流路部3の第2方向D2(幅方向)における中心との間の長さであって、第2方向D2(幅方向)に平行な長さを意味する。
【0034】
各流路部3は、金属基材2の厚さ方向に貫通する貫通孔部31と、金属基材2の厚さ方向に非貫通の連続部32とを有する。連続部32は、流路部3の延在方向である第1方向D1に直交する第2方向D2において互いに対向する側壁部33の間を連結する。貫通孔部31と連続部32とは、流路部3の延在方向である第1方向D1に沿って交互に位置する。流路部3は、燃料電池セル10(
図16及び
図17参照)のガス拡散層15,16に反応ガス(水素等の燃料ガス、酸素や空気等の酸化剤ガス)を供給するためのガス流路を構成するものである。流路部3が貫通孔部31を有することで、当該貫通孔部31を介してガス拡散層15,16に反応ガスが供給される。また、後述するように、本実施形態に係る燃料電池用流路部材1は、基板20のエッチングにより形成されるが、流路部3が連続部32を有することで、基板20のエッチングに起因する残留応力を緩和することができ、金属基材2の反りを抑制することができる。
【0035】
連続部32は、金属基材2の第2面2B側からのハーフエッチングにより形成されるため、金属基材2の第1面2A側に位置する面である非エッチング面32Aが金属基材2の第1面2Aと面一になるように設けられている。連続部32の非エッチング面32Aが金属基材2の第1面2Aと面一であることで、ガス拡散層15,16に対する燃料電池用流路部材1の接触面積を増大させることができるため、ガス拡散層15,16との接触抵抗を低減することができ、また、燃料電池用流路部材1やガス拡散層15,16への面圧を低減することもできる。また、連続部32がハーフエッチングにより形成されていることで、連続部32の厚さT
32が金属基材2の厚さT
2よりも薄く構成されるため、燃料電池用流路部材1の軽量化を図ることができる。さらに、連続部32の非エッチング面32Aがガス拡散層15,16に接面することで、燃料電池セル10(
図16及び
図17参照)において金属基材2の第1面2Aに接面するガス拡散層15,16が流路部3内に脱落するのを抑制することができる。
【0036】
なお、連続部32は、金属基材2の第1面2A側からのハーフエッチングにより形成されるものであってもよい(
図13参照)。すなわち、金属基材2の第2面2B側に位置する面である非エッチング面32Bが金属基材2の第2面2Bと面一になるように、連続部32が設けられていてもよい。連続部32の非エッチング面32Bが金属基材2の第2面2Bと面一であることで、冷媒等に対する接地面積が大きくなるため、冷媒等による冷却効率を向上させることができる。
【0037】
連続部32の厚さT32は、燃料電池用流路部材1が連続部32を備えることによる効果(例えば、金属基材2の反りの抑制効果等)が十分に奏され得る程度に適宜設定されればよく、例えば、0.05mm~1.00mm程度であればよい。なお、連続部32の厚さT32は、連続部32の最小厚さとして定義され、マイクロメータ(ミツトヨ社製,デジタルスプラインマイクロメータ SPM2-25MX)等を用いて測定され得る。
【0038】
連続部32の第2方向D2におけるピッチP32は、燃料電池用流路部材1が連続部32を備えることによる効果や連続部32の非エッチング面32Aが金属基材2の第1面2Aと面一であることによる効果(例えば、金属基材2の反りの抑制効果、ガス拡散層15,16との接触抵抗低減効果、面圧低減効果、燃料電池用流路部材1の軽量化効果、ガス拡散層15,16の脱落抑制効果等)、又は連続部32の非エッチング面32Bが金属基材2の第2面2Bと面一であることによる効果(例えば、燃料電池の冷却効率向上効果等)が十分に奏され得る程度、かつ流路部3を介してガス拡散層15,16に反応ガスを均一に供給可能な程度に適宜設定される。当該ピッチP32は、例えば、3mm~30mm程度であればよい。なお、連続部32のピッチP32は、金属基材2の第1面2A側からの平面視において、一の流路部3における一の連続部32の第1方向D1の中心とそれに隣接する他の連続部32の第1方向D1の中心との間の長さであって、第1方向D1に平行な長さを意味する。
【0039】
本実施形態において、各流路部3の複数の連続部32は、第2方向D2に沿って並んでいるが、この態様に限定されるものではない。例えば、各流路部3の複数の連続部32は、第2方向D2に沿って並んでいなくてもよい。
【0040】
金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において、第2面2B上における流路部3(貫通孔部31)の側壁部33間の長さ(貫通孔部31の幅)を第1長さL
1とし、流路部3(貫通孔部31)の側壁部33間の最大長さ(貫通孔部31の最大幅)を第2長さL
2とし、第1面2A上における流路部3(貫通孔部31)の側壁部33間の長さ(貫通孔部31の幅)を第3長さL
3とする。なお、貫通孔部31の幅は、第2方向D2(流路部3の幅方向)に沿った長さである。第1長さL
1、第2長さL
2及び第3長さL
3の関係は、第1長さL
1及び第3長さL
3が実質的に同一であって、第2長さL
2が第1長さL
1よりも長くてもよいし(
図4及び
図5参照)、第1長さL
1が第3長さL
3よりも長くてもよい(
図6及び
図7参照)。また、第1長さL
1及び第2長さL
2が実質的に同一であって、第1長さL
1及び第2長さL
2が第3長さL
3よりも長くてもよい(
図8~10参照)。なお、第3長さL
3が第1長さL
1よりも長くてもよい(図示省略)。より具体的には、金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において、側壁部33は、流路部3の幅方向(第2方向D2)中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有していてもよいし(
図4~9参照)、所定の角度で傾斜する傾斜面であり、貫通孔部31がテーパー形状であってもよい(
図10参照)。なお、「流路部3の幅方向(第2方向D2)中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状」とは、側壁部33の第1面2A側端部(貫通孔部31の開口縁部)と第2面2B側端部(貫通孔部31の開口縁部)とを結ぶ直線を仮定したときに、側壁部33の全体が当該直線よりも外側(流路部3の幅方向中心から見て外側)に位置することを意味する。側壁部33間の第1長さL
1、第2長さL
2及び第3長さL
3が上記関係を有し、側壁部33が上記形状を有することで、流路部3における流路抵抗を低減することができる。第1長さL
1、第2長さL
2及び第3長さL
3は、金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において第1面2A及び第2面2Bと平行な方向、かつ第2方向D2に平行な方向における長さである。第2長さL
2が第1長さL
1よりも長い場合(
図4~7参照)、第2長さL
2は、第1長さL
1よりも0.01mm~0.10mm程度長ければよい。また、第1長さL
1が第3長さL
3よりも長い場合(
図6~10参照)、第1長さL
1は、第3長さL
3よりも0.1mm~1.0mm程度長ければよい。なお、第1長さL
1、第2長さL
2及び第3長さL
3は、例えば、0.05mm~1.05mmの範囲内であればよい。
【0041】
本実施形態において、貫通孔部31は、第1面2A側に位置する第1貫通孔部311と、第1貫通孔部311に連続し、第2面2B側に位置する第2貫通孔部312とからなるものであってもよい(
図11A~12C参照)。これらの態様の燃料電池用流路部材1において、貫通孔部31の側壁部33は、第1貫通孔部311の第1側壁部331と、第2貫通孔部312の第2側壁部332とを含む。そして、金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において、第1側壁部331と第2側壁部332との間に角部34を有する。
【0042】
角部34は、金属基材2の厚さの中心よりも第1面2A側に位置する。すなわち、金属基材2の厚さ方向に平行な第1貫通孔部311の長さH311(第1面2Aから角部34までの長さ)は、金属基材2の厚さ方向に平行な第2貫通孔部312の長さH312(第2面2Bから角部34までの長さ)よりも短ければよい。より具体的には、第1貫通孔部311の上記長さH311と第2貫通孔部312の上記長さH312との比が1:2~10程度であればよい。なお、金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において、角部34は、尖った形状を有していてもよいし、丸まった形状(角丸形状)を有していてもよい。
【0043】
金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において、第1側壁部331間の長さ(第1貫通孔部311の幅)は、第1面2Aから角部34に至るまで実質的に同一であってもよいし(
図11A参照)、第1面2Aから角部34に向かって漸減していてもよいし(
図11B参照)、第1面2Aから角部34に向かって漸増していてもよい(
図11C参照)。なお、第1側壁部331間の長さ(第1貫通孔部311の幅)は、金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において第2方向D2に平行な方向における長さである。なお、金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において、第1側壁部331は、第1貫通孔部311の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有していてもよいし、実質的に直線形状を有していてもよい。
【0044】
金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において、第2側壁部332は、第2貫通孔部312の幅方向中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有していればよい。この場合において、第2面2B上における第2貫通孔部312の第2側壁部332間の長さである第1長さL
1と、第2貫通孔部312の第2側壁部332間の最大長さである第2長さL
2とは、実質的に同一であってもよいし(
図11A~11C)、第2長さL
2が第1長さL
1よりも長くてもよい(
図12A~12C)。なお、第1長さL
1は、第1面2A上における第1貫通孔部311の第1側壁部331間の長さとして定義される第3長さL
3よりも長ければよい。
【0045】
上述した構成を有する燃料電池用流路部材1の製造方法について説明する。
第1面20A及びその反対側に位置する第2面20Bを有する基板20を準備する。基板20の第1面20Aに、燃料電池用流路部材1の流路部3(貫通孔部31及び連続部32)に対応する第1レジストパターン40を形成し、基板20の第2面20Bに、燃料電池用流路部材1の流路部3に対応する第2レジストパターン50を形成する(
図14A及び
図14B参照)。このとき、基板20の厚さ方向に沿った断面視において、第1レジストパターン40により形成される第1開口部41の中心と第2レジストパターン50により形成される第2開口部51の中心とが一致するように、第1レジストパターン40及び第2レジストパターン50を形成する。
【0046】
第1開口部41は、後述する工程におけるエッチング処理で形成される貫通孔部31に対応するものであるため、第1開口部41の寸法(第2方向D2に沿った長さ)は、燃料電池用流路部材1の第3長さL3に応じて適宜設定される。第2開口部51は、後述する工程におけるエッチング処理で形成される貫通孔部31に対応するものであるため、第2開口部51の寸法(第2方向D2に沿った長さ)は、燃料電池用流路部材1の第1長さL1に応じて適宜設定される。
【0047】
次に、基板20の第1面20A及び第2面20B側から同時にウェットエッチング処理を行うことで流路部3を形成する(
図14C及び
図14D参照)。このウェットエッチング処理において、流路部3の第2長さL
2が第1長さL
1及び第3長さL
3よりも長くなるように、又は流路部3の第2長さL
2が第1長さL
1と実質的に同一になるように、エッチング条件(例えば、エッチング液の温度、エッチング液のボーメ度、エッチング時間等)が設定される。ウェットエッチング処理の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、基板20の第1面20A側及び第2面20B側にエッチング液を吹き付けるスプレーエッチング法、基板20をエッチング液に浸漬させるディッピング法等を用いればよい。
【0048】
最後に、基板20の第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに形成されている第1レジストパターン40及び第2レジストパターン50を除去する。このようにして、本実施形態に係る燃料電池用流路部材1を製造することができる(
図2及び
図3参照)。
【0049】
図11A~12Cに示す構成を有する燃料電池用流路部材1の製造方法について説明する。
第1面20A及びその反対側に位置する第2面20Bを有する基板20を準備する。
図11B及び
図12Bに示す燃料電池用流路部材1は、基板20の第1面2A及び第2面2Bの両面から同時にエッチングすることにより製造されるため、基板20の第1面20Aに第1開口部61を有する第1レジストパターン60を形成し、第2面20Bに第2開口部71を有する第2レジストパターン70を形成する(
図15A参照)。一方、
図11C及び
図12Cに示す燃料電池用流路部材1は、基板20の第2面20Bからの2回のエッチングにより製造されるため、基板20の第1面20Aにはレジスト層80を形成し、第2面20Bに開口部91を有するレジストパターン90を形成する(
図15B参照)。なお、
図11A及び
図12Aに示す燃料電池用流路部材1は、基板20の第1面20A及び第2面20Bの両面からの同時エッチングにより製造されてもよいし、基板20の第2面20Bからのエッチングにより製造されてもよいため、採用するエッチング方法に応じて、基板20に形成するレジストパターン(
図15A又は
図15B)を選択すればよい。
【0050】
第1開口部61は、後述する工程におけるエッチング処理で形成される第1貫通孔部311に対応するものであるため、第1開口部61の寸法(第2方向D2に沿った長さ)は、第1貫通孔部311の第3長さL3に応じて適宜設定される。第2開口部71は、第2貫通孔部312に対応するものであるため、第2開口部71の寸法(第2方向D2に沿った長さ)は、第2貫通孔部312の第1長さL1に応じて適宜設定される。開口部91は、第2貫通孔部312に対応するものであるため、開口部91の寸法(第2方向D2に沿った長さ)は、第2貫通孔部312の第1長さL1に応じて適宜設定される。
【0051】
次に、
図15Aに示す基板20の第1面20A及び第2面20B側から同時にウェットエッチング処理を行うことで第1貫通孔部311及び第2貫通孔部312を形成する(
図15C参照)。このウェットエッチング処理において、第2貫通孔部312の第2長さL
2と第1長さL
1とが実質的に同一になるように、又は第2貫通孔部312の第2長さL
2が第1長さL
1よりも長くなるように、さらに、第1貫通孔部311の第3長さL
3が第1面2Aから角部34まで実質的に同一となるように、又は第1貫通孔部311の第3長さL3が第1面2Aから角部34に向かって漸減するように、エッチング条件(例えば、エッチング液の温度、エッチング液のボーメ度、エッチング時間等)が設定される。ウェットエッチング処理の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、基板20の第1面20A側及び第2面20B側にエッチング液を吹き付けるスプレーエッチング法、基板20をエッチング液に浸漬させるディッピング法等を用いればよい。最後に、基板20の第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに形成されている第1レジストパターン60及び第2レジストパターン70を除去する。このようにして、本実施形態に係る燃料電池用流路部材1を製造することができる(
図11A、
図11B、
図12A及び
図12B参照)。
【0052】
一方で、
図15Bに示す基板20においては、当該基板20の第2面20B側からウェットエッチング処理を行うことで第2貫通孔部312を形成する(
図15D参照)。このウェットエッチング処理においても同様に、第2貫通孔部312の第1長さL
1と第2長さL
2とが実質的に同一になるように、又は第2貫通孔部312の第2長さL
2が第1長さL
1よりも長くなるように、エッチング条件(例えば、エッチング液の温度、エッチング液のボーメ度、エッチング時間等)が設定される。続いて、第2貫通孔部312の第2側壁部332に、開口部92を有するレジストパターン93を形成する(
図15E参照)。当該開口部92は、後述する工程におけるエッチング処理で形成される第1貫通孔部311に対応するものであるため、開口部92の寸法(第2方向D2に沿った長さ)は、第1貫通孔部311の第3長さL
3に応じて適宜設定される。
【0053】
そして、基板20の第2面20B側からウェットエッチング処理を行うことで第1貫通孔部311を形成する(
図15F参照)。このウェットエッチング処理においても同様に、第1貫通孔部311の第3長さL
3が第1面2Aから角部34まで実質的に同一となるように、又は第1貫通孔部311の第3長さL3が第1面2Aから角部34に向かって漸減するように、エッチング条件(例えば、エッチング液の温度、エッチング液のボーメ度、エッチング時間等)が設定される。最後に、基板20の第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに形成されているレジスト層80及びレジストパターン90,93を除去する。このようにして、本実施形態に係る燃料電池用流路部材1を製造することができる(
図11A、
図11C、
図12A及び
図12C参照)。
【0054】
続いて、本実施形態に係る燃料電池用流路部材1を用いた燃料電池セル10について説明する。
本実施形態における燃料電池セル10は、膜電極複合体11と、膜電極複合体11の両面に接面して設けられた燃料電池用流路部材1とを備える(
図16及び
図17参照)。燃料電池は、複数個の燃料電池セル10が積層されたスタック構造を有する。
【0055】
膜電極複合体11は、固体高分子電解質膜12と、固体高分子電解質膜12の両面に順に積層された触媒層13,14及びガス拡散層15,16とを有する。固体高分子電解質膜12の一方面に積層された触媒層13及びガス拡散層15が燃料極(水素極)17を構成し、他方面に積層された触媒層14及びガス拡散層16が空気極(酸素極)18を構成する。
【0056】
固体高分子電解質膜12は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC-H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子社製の「Flemion」(登録商標)、旭化成社製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5~60質量%程度、好ましくは20~40質量%程度である。なお、固体高分子電解質膜12の膜厚は通常20~250μm程度、好ましくは20~80μm程度である。また、上記の水素イオン伝導性高分子電解質膜以外には、アニオン導電性固高分子電解質膜や液状物質含浸膜も用いることができる。アニオン伝導性電解質膜としては炭化水素系樹脂又はフッ素系樹脂等が挙げられる。炭化水素系樹脂の具体例としては、旭化成社製のAciplex(登録商標)A201,211,221や、トクヤマ社製のネオセプタ(登録商標)AM-1,AHA等が挙げられる。フッ素系樹脂の具体例としては、東ソー社製のトスフレックス(登録商標)IE-SF34等が挙げられる。また、液状物質含浸膜としては、例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)が挙げられる。
【0057】
触媒層13,14は、公知の白金含有の触媒層(カソード触媒層14及びアノード触媒層13)である。触媒層13,14は、触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を含有する。触媒粒子としては、例えば、白金、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層14に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層13に含まれる触媒粒子は上記金属と白金との合金である。また、水素イオン伝導性高分子電解質としては、上述した固体高分子電解質膜12に使用されるものと同じ材料を使用することができる。
【0058】
ガス拡散層15,16としては、公知であり、燃料極17、空気極18を構成する各種のガス拡散層を使用でき、燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層13,14に供給するため、多孔質の導電性基材からなっている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス等が挙げられる。
【0059】
燃料電池用流路部材1は、金属基材2の第1面2Aをガス拡散層15,16に当接させるようにして設けられている。燃料極17のガス拡散層15に当接する燃料電池用流路部材1の流路部3を介して、当該ガス拡散層15に燃料ガス(水素)が供給され、空気極18のガス拡散層16に当接する燃料電池用流路部材1の流路部3を介して、当該ガス拡散層16に酸化剤ガス(空気又は酸素)が供給される。
【0060】
上述した構成を有する燃料電池セル10において、燃料電池用流路部材1の流路部3が連続部32を有することで、金属基材2の反りが抑制されており、かつ連続部32の非エッチング面32Aがガス拡散層15,16に接面する第1面2Aと面一であるため、燃料電池用流路部材1の金属基材2の第1面2A及び連続部32の非エッチング面32Aが確実にガス拡散層15,16に接面する。その結果、燃料電池用流路部材1とガス拡散層15,16との接触抵抗を低減することができ、燃料電池セル10による発電効率を向上させることができる。また、燃料電池用流路部材1の連続部32の非エッチング面32Aが第1面2Aと面一であることで、ガス拡散層15,16への面圧が低減され、それにより、ガス拡散層15,16の厚みが変化するのを抑制することができるとともに、ガス拡散層15,16の脱落を抑制することができる。さらに、流路部3の側壁部33が、幅方向(第2方向D2)中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有する又は所定の角度で傾斜する傾斜面であることで、流路部3における流路抵抗を低減することができるため、流路部3のピッチP3が相対的に狭くても(例えば0.2mm~1.5mm程度)、流路部3の流路断面積を十分に確保することができ、燃料電池セル10における副生成物である水を効果的に排出することができる。
【0061】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0062】
以下、実施例等をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
基板20(SUS316L,板厚:0.20mm)を準備し、基板20の第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに、感光性ドライフィルムを、ロールラミネーターを用いて貼付した。
【0064】
次に、所定の開口パターンを有するフォトマスクを準備し、当該フォトマスクと、第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに貼付された感光性ドライフィルムとを真空密着させて露光し、その後現像することで、第1面20Aに第1レジストパターン40を形成し、第2面20Bに第2レジストパターン50を形成した。
【0065】
続いて、第1レジストパターン40及び第2レジストパターン50が形成された基板20に対してディッピング法によるエッチング処理を実施し、燃料電池用流路部材1を作製した。
【0066】
上述のようにして作製された燃料電池用流路部材1の金属基材2の第1面2Aの平面度を、平面度測定装置(OLYMPUS社製,STM7)を用いて測定したところ、当該平面度が0.06mmであった。また、流路部3(貫通孔部31)の断面のSEM画像を確認したところ、流路部3(貫通孔部31)の側壁部33は、流路部3の幅方向(第2方向D2)中心から外側に向かう方向に凸の湾曲形状を有しており、第1長さL1が0.80mm、第2長さL2が0.84mm、第3長さL3が0.37mmであった。
【0067】
[比較例1]
連続部32を有しない以外は同様の構成を有する燃料電池用流路部材を、実施例1と同様にして作製した。当該燃料電池用流路部材の金属基材の第1面の平面度を実施例1と同様にして測定したところ、当該平面度が0.15mmであった。