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特開2024-25618耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025618
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H04R25/00 K
H04R25/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194219
(22)【出願日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】111130021
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】506255902
【氏名又は名称】中原大學
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】張政元
(72)【発明者】
【氏名】黄崇睿
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置を提供する。
【解決手段】複数個のマイクロホンと、少なくとも1つのアナログデジタル変換器、信号処理モジュール、デジタルアナログ変換器及び放音器を備える補聴装置1であって、参照信号発生ユニット及びオーディオ信号発生ユニットを有する。参照信号発生ユニットは、アナログデジタル変換器から受信した複数個の第1デジタルオーディオ信号をHRTF信号と乗算運算することで、複数個の第2デジタルオーディオ信号を発生し、その複数の信号の総和を取り、参照信号を作成する。オーディオ信号発生ユニットは、参照信号に対して能動的騒音減衰処理を実行して第1出力信号を発生し、かつ、参照信号に対してヒアスルー処理を実行して第2出力信号を発生するに従って、第1出力信号と第2出力信号とに基づいて出力信号を発生する。デジタルアナログ変換器は、出力信号をアナログ出力信号に変換する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のマイクロホンと、前記複数個のマイクロホンに電気接続されて複数個のアナログオーディオ信号を受信し、かつ前記複数個のアナログオーディオ信号を複数個の第1デジタルオーディオ信号に変換する少なくとも1つのアナログデジタル変換器と、前記少なくとも1つのアナログデジタル変換器に電気接続されて前記複数個の第1デジタルオーディオ信号を受信する信号処理モジュールと、デジタルアナログ変換器と、放音器とを備える補聴装置であって、
前記信号処理モジュールは、各当該第1デジタルオーディオ信号を頭部伝達関数(Head Related Transfer Function,HRTF)と乗算運算することにより、複数個の第2デジタルオーディオ信号を発生するために配置され、かつさらに前記複数個の第2デジタルオーディオ信号に対して総和運算を行うことにより、参照信号を発生するために配置される参照信号発生ユニットと、前記参照信号に対して能動的騒音減衰(active noise attenuating)処理を実行するに従って第1出力信号を発生し、前記参照信号に対してヒアスルー(hear-through)処理を実行するに従って第2出力信号を発生し、及び前記第1出力信号と前記第2出力信号とに基づいて出力信号を発生するために配置されるオーディオ信号発生ユニットとを含み、
前記デジタルアナログ変換器は、前記信号処理モジュールに電気接続されて前記出力信号を受信し、かつ前記出力信号をアナログ出力信号に変換し、
前記放音器は、前記デジタルアナログ変換器に電気接続されて前記アナログ出力信号を受信し、かつ前記アナログ出力信号に基づいて音信号を放送することを特徴とする、補聴装置。
【請求項2】
前記複数個のマイクロホンと、前記少なくとも1つのアナログデジタル変換器と、前記信号処理モジュールとを収容するために用いられる筐体を備えることを特徴とする、請求項1に記載の補聴装置。
【請求項3】
前記筐体には、複数個の開孔を有することで、各当該マイクロホンの収音部を、当該開孔を介して前記筐体の外に露出させることを特徴とする、請求項2に記載の補聴装置。
【請求項4】
前記信号処理モジュールは、第1メモリと、マイクロコントローラと、前記マイクロコントローラに電気接続される第1通信インターフェースとを含み、
前記参照信号発生ユニットと前記オーディオ信号発生ユニットとは、プログラミング言語を利用してアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集されてなるに従って、前記第1メモリの中にインストールまたは格納され、
前記マイクロコントローラは、前記第1メモリに電気接続されるに従って、前記第1メモリをアクセスすることを通じて前記参照信号発生ユニットと前記オーディオ信号発生ユニットとを実行することを特徴とする、請求項1に記載の補聴装置。
【請求項5】
前記参照信号発生ユニットは、各当該第1デジタルオーディオ信号を当該頭部伝達関数(HRTF)と乗算運算するに従って、複数個の当該第2デジタルオーディオ信号を発生するために配置される乗算運算ユニットと、前記複数個の第2デジタルオーディオ信号に対して総和運算を行うことにより、前記参照信号を発生するために配置される加算運算ユニットとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の補聴装置。
【請求項6】
前記オーディオ信号発生ユニットは、前記参照信号に対して第1濾波処理を行うために配置される制御濾波器と、前記制御濾波器の出力端に電気接続されて前記参照信号を受信し、かつ前記参照信号に対して第1利得調整処理を行う第1利得調整器と、前記参照信号に対して第2濾波処理を行うために配置される等化濾波器と、前記等化濾波器の出力端に電気接続されて前記参照信号を受信し、かつ続いて前記参照信号に対して第2利得調整処理を行う第2利得調整器と、前記第2利得調整器の出力端に電気接続されて前記第2出力信号を受信し、かつ同時に調整信号に電気接続されるに従って、前記第2出力信号と前記調整信号とに対して総和運算を行うことにより、第3出力信号を発生する第1加算器と、前記第1利得調整器の出力端に電気接続されて前記第1出力信号を受信し、かつ同時に前記第1加算器の出力端に電気接続されて前記第3出力信号を受信するに従って、前記第3出力信号と前記第1出力信号とに対して総和運算を行うことにより、前記出力信号を発生する第2加算器と、前記参照信号に対して音響遅延(Acoustic delay)補償を行うために配置される第1信号変換器と、前記出力信号に対して電子遅延(Electronic delay)補償を行うために配置される第2信号変換器と、前記第1信号変換器の出力端に電気接続されて目標信号を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器に電気接続されて第4出力信号を受信するに従って、前記目標信号と前記第4出力信号とに対して減算運算を行うことにより、誤差信号を発生する第1減算器とを含むことを特徴とする、請求項4に記載の補聴装置。
【請求項7】
前記オーディオ信号発生ユニットは、整形濾波器をさらに含み、それは、前記参照信号と前記等化濾波器の入力端との間に電気接続されることで、前記参照信号に前記整形濾波器の整形濾波処理を受けさせた後に続いて前記等化濾波器を入力することを特徴とする、請求項6に記載の補聴装置。
【請求項8】
電子装置は、その第2通信インターフェースを利用して前記信号処理モジュールの前記第1通信インターフェースと情報連結されることを特徴とする、請求項7に記載の補聴装置。
【請求項9】
前記電子装置は、デスクトップ型パソコン、ノート型パソコン、オールインワン型(All-in-one)パソコン、タブレットパソコン、及びスマートフォンからなる群より選択される任意の一つであることを特徴とする、請求項8に記載の補聴装置。
【請求項10】
前記電子装置は、第2メモリと、マイクロプロセッサと、前記マイクロプロセッサに電気接続される前記第2通信インターフェースと、前記マイクロプロセッサに電気接続されるヒューマンマシンインタフェースとを含み、
能動騒音制御ユニットと、ヒアスルー制御ユニットと、利得調整ユニットと、濾波器調整ユニットとは、プログラミング言語を利用してアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集されてなるに従って、前記第2メモリの中にインストールまたは格納され、
前記マイクロプロセッサは、前記第2メモリに電気接続されるに従って、前記第2メモリをアクセスすることを通じて前記能動騒音制御ユニット、前記ヒアスルー制御ユニット、前記利得調整ユニットまたは前記濾波器調整ユニットを実行することを特徴とする、請求項8に記載の補聴装置。
【請求項11】
前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記能動騒音制御ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせ、前記能動騒音制御ユニットは、前記参照信号に基づいて主制御騒音制御操作を実行するに従って、前記制御濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを調整することを特徴とする、請求項10に記載の補聴装置。
【請求項12】
前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記ヒアスルー制御ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせ、前記ヒアスルー制御ユニットは、前記参照信号に基づいてヒアスルー制御操作を実行するに従って、前記制御濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを調整することを特徴とする、請求項10に記載の補聴装置。
【請求項13】
前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記利得調整ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせることから、前記第1利得調整器の第1利得及び/または前記第2利得調整器の第2利得を調整することを特徴とする、請求項10に記載の補聴装置。
【請求項14】
前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記濾波器調整ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせることから、前記整形濾波器のストップバンド(stop band)範囲、またはパスバンド(pass band)範囲を調整することを特徴とする、請求項10に記載の補聴装置。
【請求項15】
前記能動騒音制御ユニットは、前記参照信号に対して前記音響遅延(Acoustic delay)補償を行うために配置される1個の前記第1信号変換器と、前記参照信号に対して第3濾波処理を行うために配置される第1適応性濾波器と、前記第1適応性濾波器の出力端に電気接続されて前記第1出力信号を受信し、かつ前記第1出力信号に対して前記電子遅延(Electronic delay)補償を行う1個の前記第2信号変換器と、前記第1信号変換器の出力端に電気接続されて前記目標信号を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器に電気接続されて第5出力信号を受信するに従って、前記目標信号と前記第5出力信号とに対して減算運算を行うことにより、第1誤差信号を発生する第2減算器と、前記参照信号に対して推定(estimation)電子遅延補償を行うために配置される第3信号変換器と、前記第3信号変換器の出力端に電気接続されて第1参照信号を受信し、かつ同時に前記第2減算器に電気接続されて前記第1誤差信号を受信する第1適応性演算器とを含み、
前記第1適応性演算器は、前記第1参照信号と前記第1誤差信号とに基づいて前記第1適応性濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを自己適応的に調整することで、前記第1誤差信号を零に近づけるようにさせることを特徴とする、請求項10に記載の補聴装置。
【請求項16】
前記ヒアスルー制御ユニットは、前記参照信号に対して信号補償処理を行うために配置される第4信号変換器と、前記第4信号変換器の出力端に電気接続されて第1目標信号を受信し、かつ前記第1目標信号に対して信号遅延処理を行う信号遅延器と、前記参照信号に対して第4濾波処理を行うために配置される第2適応性濾波器と、前記第2適応性濾波器の出力端に電気接続されて前記第2出力信号を受信し、かつ前記第2出力信号に対して前記電子遅延(Electronic delay)補償を行う1個の前記第2信号変換器と、前記信号遅延器の出力端に電気接続されて前記目標信号を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器に電気接続されて第6出力信号を受信するに従って、前記目標信号と前記第6出力信号とに対して減算運算を行うことにより、第2誤差信号を発生する第3減算器と、前記参照信号に対して前記推定(estimation)電子遅延補償を行うために配置される1個の前記第3信号変換器と、前記第3信号変換器の出力端に電気接続されて第2参照信号を受信し、かつ同時に前記第3減算器の出力端に電気接続されて前記第2誤差信号を受信する第2適応性演算器とを含み、
前記第2適応性演算器は、前記第2参照信号と前記第2誤差信号とに基づいて前記第2適応性濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを自己適応的に調整することで、前記第2誤差信号を零に近づけるようにさせることを特徴とする、請求項15に記載の補聴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補聴器の技術分野に係り、特に、耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、聴覚障害(hearing-impaired)者または耳の不自由な人は、通常、聴覚を改善するために補聴器を着用している。一方、科学技術の発展・進歩と相まって、大量の工業生産、便利な交通輸送、及びハイテクの電子製品を享受できるが、その反面人々が生活している様々な環境中に騒音汚染が広がりつつある。健聴者は、空間聴覚に頼って音声空間化を実現することができ、続いて環境騒音を分離(判別)し、最終的に、興味のある音声(例えば、語音)に注意力を集中することができる。ところが、聴覚障害者にとっては、補聴器を着用していても、騒音が溢れている環境の中において、他人の音声を鮮明に聞き取ることが難しいことに変わりはない。
【0003】
このため、特許文献1には、聴覚障害者が音声の音源方向を正確に識別することに役立てることができる補聴装置が開示されている。しかし残念ながら、従来の補聴装置は、ユーザの所在環境に応じて能動的騒音減衰を実行する機能を所持していない。さらに、補聴器を正式に使用する前に、聴覚障害者は、まず、専門医師のサポートのもと、純音聴力検査と語音聴力検査を完了させる必要があり、それから、専門医師または専門技師により補聴器をフィッティングする。このようにして、フィッティング済みの補聴器を正式に使用するときに、聴覚障害者は、最も大幅な聴覚改善を得ることができる。しかし残念ながら、特許文献1に開示されているような補聴装置は、同様にフィッティング可能な機能が欠けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10869139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した説明からわかるように、従来の補聴装置には、未だ改善すべき顕著な欠点が存在している。これに鑑み、本願の発明者は、極力研究発明した結果、遂に本発明に係る耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置を研究開発して完成させた。
【0006】
本発明の主な目的は、補聴装置を提供することである。特に、本発明は、前記補聴装置の内部の信号処理モジュールを参照信号発生ユニット及びオーディオ信号発生ユニットと整合させるに従って、前記補聴装置に耐騒音機能及び3D音源識別機能を持たせるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明が提供するかかる耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置の一実施例は、複数個のマイクロホンと、少なくとも1つのアナログデジタル変換器と、信号処理モジュールと、デジタルアナログ変換器と、放音器とを備え、少なくとも1つのアナログデジタル変換器は、前記複数個のマイクロホンに電気接続されて複数個のアナログオーディオ信号を受信し、かつ前記複数個のアナログオーディオ信号を複数個の第1デジタルオーディオ信号に変換し、信号処理モジュールは、前記少なくとも1つのアナログデジタル変換器に電気接続されて前記複数個の第1デジタルオーディオ信号を受信し、かつ参照信号発生ユニットと、オーディオ信号発生ユニットとを含み、参照信号発生ユニットは、各当該第1デジタルオーディオ信号を頭部伝達関数(Head Related Transfer Function,HRTF)と乗算運算することにより、複数個の第2デジタルオーディオ信号を発生するために配置され、かつさらに前記複数個の第2デジタルオーディオ信号に対して総和運算を行うことにより、参照信号を発生するために配置され、オーディオ信号発生ユニットは、前記参照信号に対して能動的騒音減衰(active noise attenuating)処理を実行するに従って第1出力信号を発生し、前記参照信号に対してヒアスルー(hear-through)処理を実行するに従って第2出力信号を発生し、及び前記第1出力信号と前記第2出力信号とに基づいて出力信号を発生するために配置され、デジタルアナログ変換器は、前記信号処理モジュールに電気接続されて前記出力信号を受信し、かつ前記出力信号をアナログ出力信号に変換し、放音器は、前記デジタルアナログ変換器に電気接続されて前記アナログ出力信号を受信し、かつ前記アナログ出力信号に基づいて音信号を放送する。
【0008】
一実施例において、前述の本発明の補聴装置は、前記複数個のマイクロホンと、前記少なくとも1つのアナログデジタル変換器と、前記信号処理モジュールとを収容するために用いられる筐体をさらに備える。
【0009】
一実施例において、前記筐体には、複数個の開孔を有することで、各当該マイクロホンの収音部を、当該開孔を介して前記筐体の外に露出させる。
【0010】
一実施例において、前記信号処理モジュールは、第1メモリと、マイクロコントローラと、第1通信インターフェースとを含み、その内、前記参照信号発生ユニットと前記オーディオ信号発生ユニットとは、プログラミング言語を利用してアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集されてなるに従って、前記第1メモリの中にインストールまたは格納され、マイクロコントローラは、前記第1メモリに電気接続されるに従って、前記第1メモリをアクセスすることを通じて前記参照信号発生ユニットと前記オーディオ信号発生ユニットとを実行し、第1通信インターフェースは、前記マイクロコントローラに電気接続される。
【0011】
一実施例において、前記参照信号発生ユニットは、各当該デジタルオーディオ信号を当該頭部伝達関数(HRTF)と乗算運算するに従って、複数個の当該第2デジタルオーディオ信号を発生するために配置される乗算運算ユニットと、前記複数個の第2デジタルオーディオ信号に対して総和運算を行うことにより、前記参照信号を発生するために配置される加算運算ユニットとを含む。
【0012】
一実施例において、前記オーディオ信号発生ユニットは、前記参照信号に対して第1濾波処理を行うために配置される制御濾波器と、前記制御濾波器の出力端に電気接続されて前記参照信号を受信し、かつ続いて前記参照信号に対して第1利得調整処理を行う第1利得調整器と、前記参照信号に対して第2濾波処理を行うために配置される等化濾波器と、前記等化濾波器の出力端に電気接続されて前記参照信号を受信し、かつ続いて前記参照信号に対して第2利得調整処理を行う第2利得調整器と、前記第2利得調整器の出力端に電気接続されて前記第2出力信号を受信し、かつ同時に調整信号に電気接続されるに従って、前記第2出力信号と前記調整信号とに対して総和運算を行うことにより、第3出力信号を発生する第1加算器と、前記第1利得調整器の出力端に電気接続されて前記第1出力信号を受信し、かつ同時に前記第1加算器の出力端に電気接続されて前記第3出力信号を受信するに従って、前記第3出力信号と前記第1出力信号とに対して総和運算を行うことにより、前記出力信号を発生する第2加算器と、前記参照信号に対して音響遅延(Acoustic delay)補償を行うために配置される第1信号変換器と、前記出力信号に対して電子遅延(Electronic delay)補償を行うために配置される第2信号変換器と、前記第1信号変換器の出力端に電気接続されて目標信号を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器に電気接続されて第4出力信号を受信するに従って、前記目標信号と前記第4出力信号とに対して減算運算を行うことにより、誤差信号を発生する第1減算器とを含む。
【0013】
実行可能な実施例において、前記オーディオ信号発生ユニットは、整形濾波器をさらに含み、それは、前記参照信号と前記等化濾波器の入力端との間に電気接続されることで、前記参照信号に前記整形濾波器の整形濾波処理を受けさせた後に続いて前記等化濾波器を入力する。
【0014】
一実施例において、電子装置は、その第2通信インターフェースを利用して前記信号処理モジュールの前記第1通信インターフェースと情報連結され、かつ前記電子装置は、デスクトップ型パソコン、ノート型パソコン、オールインワン型(All-in-one)パソコン、タブレットパソコン、及びスマートフォンからなる群より選択される任意の一つである。
【0015】
一実施例において、前記電子装置は、第2メモリと、マイクロプロセッサと、前記第2通信インターフェースと、ヒューマンマシンインタフェースとを含み、その内、能動騒音制御ユニットと、ヒアスルー制御ユニットと、利得調整ユニットと、濾波器調整ユニットとは、プログラミング言語を利用してアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集されてなるに従って、前記第2メモリの中にインストールまたは格納され、マイクロプロセッサは、前記第2メモリに電気接続されるに従って、前記第2メモリをアクセスすることを通じて前記能動騒音制御ユニット、前記ヒアスルー制御ユニット、前記利得調整ユニットまたは前記濾波器調整ユニットを実行し、前記第2通信インターフェースは、前記マイクロプロセッサに電気接続され、ヒューマンマシンインタフェースは、前記マイクロプロセッサに電気接続される。
【0016】
一実施例において、前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記能動騒音制御ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせ、前記能動騒音制御ユニットは、前記参照信号に基づいて主制御騒音制御操作を実行するに従って、前記制御濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを調整する。
【0017】
一実施例において、前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記ヒアスルー制御ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせ、前記ヒアスルー制御ユニットは、前記参照信号に基づいてヒアスルー制御操作を実行するに従って、前記制御濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを調整する。
【0018】
一実施例において、前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記利得調整ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせることから、前記第1利得調整器の第1利得及び/または前記第2利得調整器の第2利得を調整する。
【0019】
一実施例において、前記ヒューマンマシンインタフェースを操作することで、前記マイクロプロセッサにより前記濾波器調整ユニットの利用開始を有効(Enable)にさせることから、前記整形濾波器のストップバンド(stop band)範囲、またはパスバンド(pass band)範囲を調整する。
【0020】
一実施例において、前記能動騒音制御ユニットは、前記参照信号に対して前記音響遅延(Acoustic delay)補償を行うために配置される1個の前記第1信号変換器と、前記参照信号に対して第3濾波処理を行うために配置される第1適応性濾波器と、前記第1適応性濾波器の出力端に電気接続されて前記第1出力信号を受信し、かつ前記第1出力信号に対して前記電子遅延(Electronic delay)補償を行う1個の前記第2信号変換器と、前記第1信号変換器の出力端に電気接続されて前記目標信号を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器に電気接続されて第5出力信号を受信するに従って、前記目標信号と前記第5出力信号とに対して減算運算を行うことにより、第1誤差信号を発生する第2減算器と、前記参照信号に対して推定(estimation)電子遅延補償を行うために配置される第3信号変換器と、前記第3信号変換器の出力端に電気接続されて第1参照信号を受信し、かつ同時に前記第2減算器に電気接続されて前記第1誤差信号を受信する第1適応性演算器とを含み、その内、前記第1適応性演算器は、前記第1参照信号と前記第1誤差信号とに基づいて前記第1適応性濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを自己適応的に調整することで、前記第1誤差信号を零に近づけるようにさせる。
【0021】
一実施例において、前記ヒアスルー制御ユニットは、前記参照信号に対して信号補償処理を行うために配置される第4信号変換器と、前記第4信号変換器の出力端に電気接続されて第1目標信号を受信し、かつ前記第1目標信号に対して信号遅延処理を行う信号遅延器と、前記参照信号に対して第4濾波処理を行うために配置される第2適応性濾波器と、前記第2適応性濾波器の出力端に電気接続されて前記第2出力信号を受信し、かつ前記第2出力信号に対して前記電子遅延(Electronic delay)補償を行う1個の前記第2信号変換器と、前記信号遅延器の出力端に電気接続されて前記目標信号を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器に電気接続されて第6出力信号を受信するに従って、前記目標信号と前記第6出力信号とに対して減算運算を行うことにより、第2誤差信号を発生する第3減算器と、前記参照信号に対して前記推定(estimation)電子遅延補償を行うために配置される1個の前記第3信号変換器と、前記第3信号変換器の出力端に電気接続されて第2参照信号を受信し、かつ同時に前記第3減算器の出力端に電気接続されて前記第2誤差信号を受信する第2適応性演算器とを含み、その内、前記第2適応性演算器は、前記第2参照信号と前記第2誤差信号とに基づいて前記第2適応性濾波器の少なくとも1つの濾波器パラメータを自己適応的に調整することで、前記第2誤差信号を零に近づけるようにさせる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の補聴装置によれば、能動騒音制御技術とヒアスルー技術とを整合させ、このため、外界の音声に対して耐ノイズ処理とヒアスルー処理を実行することができ、続いて聴覚障害者の耳に向けて耐ノイズ処理とヒアスルー処理を経た音信号を放送する。よって、聴覚障害者がこの音信号を聴取するときには、音源方向を識別することができるのみならず、同時に環境騒音を分離(判別)することもでき、最終的に、興味のある音声(例えば、語音)に注意力を集中することができるようになる。
このほか、本発明は、また能動騒音制御ユニットと、ヒアスルー制御ユニットと、利得調整ユニットと、濾波器調整ユニットとをアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集してなるように設計されているに従って、電子装置の中にインストールされる。このようにして、開発者及び/または医師は、前記能動騒音制御ユニットを利用開始して、前記オーディオ信号発生ユニット内に整合するための制御濾波器を調整するように、前記電子装置を操作することができる。なおかつ、開発者及び/または医師は、前記ヒアスルー制御ユニットを利用開始して、前記オーディオ信号発生ユニット内に整合するための等化濾波器を調整するように、前記電子装置を操作することもできる。
さらに、医師または聴覚障害者は、前記利得調整ユニットを利用開始するように前記電子装置を操作することもできるに従って、補聴装置に対して利得調整を行う。一方、医師または聴覚障害者は、また前記濾波器調整ユニットを利用開始するように前記電子装置を操作することができることから、前記整形濾波器のストップバンド範囲、またはパスバンド範囲を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の応用概略図である。
図2】本発明の斜視図である。
図3】本発明の耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置のブロック図である。
図4図2に示す信号処理モジュールのブロック図である。
図5図3に示す参照信号発生ユニットのブロック図である。
図6図3に示すオーディオ信号発生ユニットのシステム構成図である。
図7図2に示す電子装置のブロック図である。
図8図7に示す能動騒音制御ユニットのシステム構成図である。
図9図7に示すヒアスルー制御ユニットのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明が提出した耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置をより明瞭に記述するために、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を以下に詳述する。
【0025】
図1を参照し、その図1は、本発明に係る耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置を示す応用概略図である。なおかつ、図2は、本発明の耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置を示す斜視図である。またさらに、図3は、本発明の耐騒音機能と3D音源識別機能を併せ持つ補聴装置を示すブロック図である。図1図3に示すように、本発明は、参照信号発生ユニット1311とオーディオ信号発生ユニット1312とを補聴装置1の信号処理モジュール13の中に整合するに従って、前記補聴装置1に耐騒音機能及び3D音源識別機能を持たせるようにする。
【0026】
本発明の設計によれば、前記補聴装置1は、複数個のマイクロホン11と、少なくとも1つのアナログデジタル変換器12と、信号処理モジュール13と、デジタルアナログ変換器14と、放音器15とを備える。また、図2に図示する前記補聴装置1には、筐体10をさらに備え、前記複数個のマイクロホン11と、前記少なくとも1つのアナログデジタル変換器12と、前記信号処理モジュール13とを収容するために用いられ、その内、前記筐体10には、複数個の開孔101を有することで、各当該マイクロホン11の収音部を、当該開孔101を介して前記筐体10の外に露出させる。図1図3に示すように、当該アナログデジタル変換器12は、前記複数個のマイクロホン11に電気接続されて複数個のアナログオーディオ信号(x(t)_1,…,x(t)_j,…,x(t)_N)を受信し、かつ前記複数個のアナログオーディオ信号を複数個の第1デジタルオーディオ信号(x(n)_1,…,x(n)_j,…,x(n)_N)に変換する。
【0027】
図4は、図2に示す信号処理モジュール13のブロック図である。図2図3及び図4に示すように、前記信号処理モジュール13は、当該アナログデジタル変換器12に電気接続されて前記複数個の第1デジタルオーディオ信号を受信し、かつ第1メモリ131と、前記第1メモリ131に電気接続されるマイクロコントローラ132と、前記マイクロコントローラ132に電気接続される第1通信インターフェース133とを含む。特に、本発明は、プログラミング言語を利用して参照信号発生ユニット1311とオーディオ信号発生ユニット1312とをアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集してなるに従って、前記第1メモリ131の中にインストールまたは格納する。理解され得るように、前記マイクロコントローラ132は、前記第1メモリ131をアクセスする方式を通じるに従って、前記参照信号発生ユニット1311及び/または前記オーディオ信号発生ユニット1312を実行する。
【0028】
図5は、図3に示す参照信号発生ユニット1311のブロック図である。図2図5に示すように、前記参照信号発生ユニット1311は、各当該第1デジタルオーディオ信号を頭部伝達関数(Head Related Transfer Function,HRTF)と乗算運算することにより、複数個の第2デジタルオーディオ信号を発生するために配置され、かつさらに前記複数個の第2デジタルオーディオ信号に対して総和運算を行うことにより、参照信号x(n)を発生するために配置される。このため、図5に示すように、前記参照信号発生ユニット1311は、乗算運算ユニット131Mと、加算運算ユニット131Aとを含み、その内、前記乗算運算ユニット131Mは、各当該第1デジタルオーディオ信号をHRTF信号と乗算運算するに従って、複数個の当該第2デジタルオーディオ信号を発生するために配置され、かつ前記加算運算ユニット131Aは、前記複数個の第2デジタルオーディオ信号に対して総和運算を行うことにより、前記参照信号x(n)を発生するために配置される。簡単に言えば、前記補聴装置1は、前記複数個のマイクロホン11を利用して外部音声を収集すると共に、前記信号処理モジュール13を利用して収集された音声をHRTF信号と乗算するに従って、デジタル形式の参照信号x(n)に変換する。このため、前記参照信号x(n)は、3D音源を含む。
【0029】
一方、図6は、図3に示すオーディオ信号発生ユニット1312のシステム構成図である。図2図6に示すように、前記オーディオ信号発生ユニット1312は、前記参照信号x(n)に対して能動的騒音減衰(active noise attenuating)処理を実行するに従って第1出力信号y_A^(n)を発生し、かつ前記参照信号x(n)に対してヒアスルー(hear-through)処理を実行するに従って第2出力信号y_H^(n)を発生するに従って、前記第1出力信号y_A^(n)と前記第2出力信号y_H^(n)とに基づいて出力信号y(n)を発生するために配置される。より詳細に説明すると、図6に示すように、前記オーディオ信号発生ユニット1312は、制御濾波器(control filter)131Cと、第1利得調整器(gain modulation component)13G1と、等化濾波器(equalization filter)131Eと、第2利得調整器13G2と、第1加算器13A1と、第2加算器13A2と、第1信号変換器131Pと、第2信号変換器131Sと、第1減算器13S1とを含む。
【0030】
能動型騒音制御(Active noise control,ANC)システムを熟知する電子エンジニアであれば、ANCシステムを設計する場合に、電子遅延(Electronic delay)と音響遅延(Acoustic delay)を同時に考量する必要があることから、これら両者の間を因果関係(Causality)に合致させることができることは分かるはずである。その内、音響遅延は、主要な経路(Primary path)に発生するものであり、そして電子遅延は、二次的な経路(Secondary path)に発生するものである。このため、ANCシステム内に音響遅延を補償するために用いられる転移関数を設計する必要があり、この転移関数は、通常、P(Z)で表される。また同時に、ANCシステム内に電子遅延を補償するために用いられる別の転移関数を設計する必要があり、この転移関数は、通常、S(Z)で表される。
【0031】
図6に示すように、前記オーディオ信号発生ユニット1312のシステム構成において、前記第1信号変換器131Pは、前記参照信号x(n)に対して音響遅延(Acoustic delay)補償を行うために配置される。換言すれば、前記第1信号変換器131Pは、転移関数P(Z)である。一方、前記制御濾波器131Cは、前記参照信号x(n)に対して第1濾波処理を行うために配置され、かつ前記第1利得調整器13G1は、前記制御濾波器131Cの出力端に電気接続されて前記参照信号x(n)を受信し、続いて前記参照信号x(n)に対して第1利得調整処理を行う。さらに、前記等化濾波器131Eは、前記参照信号x(n)に対して第2濾波処理を行うために配置され、かつ前記第2利得調整器13G2は、前記等化濾波器131Eの出力端に電気接続されて前記参照信号x(n)を受信し、続いて前記参照信号x(n)に対して第2利得調整処理を行う。
【0032】
より詳細に説明すると、前記第1加算器13A1は、前記第2利得調整器13G2の出力端に電気接続されて前記第2出力信号y_H^(n)を受信し、かつ同時に調整信号a(n)に電気接続されるに従って、前記第2出力信号y_H^(n)と前記調整信号a(n)とに対して総和運算を行うことにより、第3出力信号y_Ha^(n)を発生する。一方、前記第2加算器13A2は、前記第1利得調整器13G1の出力端に電気接続されて前記第1出力信号y_A^(n)を受信し、かつ同時に前記第1加算器13A1の出力端に電気接続されて前記第3出力信号y_Ha^(n)を受信するに従って、前記第3出力信号y_Ha^(n)と前記第1出力信号y_A^(n)とに対して総和運算を行うことにより、前記出力信号y(n)を発生する。注意に値するのは、前記第2信号変換器131Sは、前記出力信号y(n)に対して電子遅延(Electronic delay)補償を行うために配置される点である。換言すれば、前記第2信号変換器131Sは、転移関数S(Z)である。さらに、前記第1減算器13S1は、前記第1信号変換器131Pの出力端に電気接続されて目標信号d(n)を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器131Sに電気接続されて第4出力信号y_^’(n)を受信するに従って、前記目標信号d(n)と前記第4出力信号y_^’(n)とに対して減算運算を行うことにより、誤差信号e(n)を発生する。
【0033】
図6に示すように、実行可能な実施例において、前記オーディオ信号発生ユニット1312は、整形濾波器13SHをさらに含んでもよく、それは、前記参照信号x(n)と前記等化濾波器131Eの入力端との間に電気接続されることで、前記参照信号x(n)に前記整形濾波器13SHの整形濾波処理を受けさせた後に続いて前記等化濾波器131Eを入力する。
【0034】
図2及び図3に示すように、前記デジタルアナログ変換器14は、前記信号処理モジュール13に電気接続されて前記出力信号y(n)を受信し、かつ前記出力信号y(n)をアナログ出力信号y(t)に変換する。最終的に、前記放音器15は、前記デジタルアナログ変換器14に電気接続されて前記アナログ出力信号y(t)を受信し、かつ前記アナログ出力信号y(t)に基づいて聴覚障害者の耳に向けて音信号を放送する。理解され得るように、この音信号は、耐ノイズ処理とヒアスルー処理を経た信号であり、このため、聴覚障害者がこの音信号を聴取するときには、音源方向を識別することができるのみならず、同時に環境騒音を分離(判別)することもでき、最終的に、興味のある音声(例えば、語音)に注意力を集中することができるようになる。
【0035】
図2に示すように、本発明の補聴装置1は、電子装置2と情報連結されてもよい。実行可能な実施例において、前記電子装置2は、デスクトップ型パソコン、ノート型パソコン、オールインワン型(All-in-one)パソコン、タブレットパソコン、またはスマートフォンであってもよい。換言すれば、ヒューマンマシンインタフェース20(例えば、アプリケーションプログラム(Application program))がインストールされた眼科医の個人パソコンまたは聴覚障害者のスマートフォンは、いずれも本発明の補聴装置1と情報連結されてもよい。
【0036】
図7は、図2に示す電子装置2のブロック図である。図2及び図7に示すように、前記電子装置2は、その第2通信インターフェース23を利用して前記信号処理モジュール13の第1通信インターフェース133と情報連結されてもよい。より詳細に説明すると、前記電子装置2は、第2メモリ21と、マイクロプロセッサ22と、前記第2通信インターフェース23と、前記ヒューマンマシンインタフェース20とを含む。特に、プログラミング言語を利用して能動騒音制御(Active noise control,ANC)ユニット211と、ヒアスルー(Hear-through)制御ユニット212と、利得調整ユニット213と、濾波器調整ユニット214とをアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集してなるに従って、前記第2メモリ21の中にインストールまたは格納することができる。このように設計すれば、ユーザ(例えば、眼科医または聴覚障害者)は、前記ヒューマンマシンインタフェース20を操作することで、前記マイクロプロセッサ22を有効(Enable)にさせることができ、前記マイクロプロセッサ22は、前記第2メモリ21をアクセスすることを通じて前記能動騒音制御ユニット211または前記ヒアスルー制御ユニット212を実行する。
【0037】
例を挙げて言えば、前記電子装置2(例えば、スマートフォン)の前記ヒューマンマシンインタフェース20を操作することで、前記処理器22により前記能動騒音制御ユニット211の利用開始を有効(Enable)にさせるに従って、前記能動騒音制御ユニット211を利用して前記参照信号x(n)に基づいて主制御騒音制御操作を実行し、前記制御濾波器131Cの少なくとも1つの濾波器パラメータを調整することを実現する。図8は、図7に示す能動騒音制御ユニット211のシステム構成図である。図8に示すように、前記能動騒音制御ユニット211は、1個の前記第1信号変換器131Pと、第1適応性濾波器(adaptive filter)211Aと、1個の前記第2信号変換器131Sと、第2減算器21S2と、第3信号変換器211Sと、第1適応性演算器21A1とを含む。その内、前記第1信号変換器131Pは、前記参照信号x(n)に対して前記音響遅延(Acoustic delay)補償を行うために配置され、かつ前記第1適応性濾波器211Aは、前記参照信号x(n)に対して第3濾波処理を行うために配置される。なおかつ、前記第2信号変換器131Sは、前記第1適応性濾波器211Aの出力端に電気接続されて前記第1出力信号y_A^(n)を受信し、かつ前記第1出力信号y_A^(n)に対して前記電子遅延(Electronic delay)補償を行う。
【0038】
またさらに説明すると、前記第2減算器21S2は、前記第1信号変換器131Pの出力端に電気接続されて前記目標信号d(n)を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器131Sに電気接続されて第5出力信号y_A^’(n)を受信するに従って、前記目標信号d(n)と前記第5出力信号y_A^’(n)とに対して減算運算を行うことにより、第1誤差信号e_A^(n)を発生する。一方、前記第3信号変換器211Sは、前記参照信号x(n)に対して推定(estimation)電子遅延補償を行うために配置される。ここで、前記第3信号変換器211Sは、推定S(Z)(すなわち、第2信号変換器131S)の転移関数であり、S -(z)で表される。図8に示すように、前記第1適応性演算器21A1は、前記第3信号変換器211Sの出力端に電気接続されて第1参照信号x_A^’(n)を受信し、かつ同時に前記第2減算器21S2に電気接続されて前記第1誤差信号e_A^(n)を受信する。
【0039】
前記能動騒音制御ユニット211を実行するときに、前記第1適応性演算器21A1は、前記第1参照信号x_A^’(n)と前記第1誤差信号e_A^(n)とに基づいて前記第1適応性濾波器211Aの少なくとも1つの濾波器パラメータを自己適応的に調整することで、前記第1誤差信号e_A^(n)を零に近づけるようにさせる。ANCシステムを熟知する電子エンジニアであれば、前記第1適応性演算器21A1は、アルゴリズム関数であり、かつ前記アルゴリズム関数は、最小二乗平均アルゴリズム(Least Mean Square,LMS)であってもよいことが分かるはずである。勿論、ANCシステムを設計する場合に、電子エンジニアは、その必要に応じて前記アルゴリズム関数を他の関数に入れ替える場合があり、例えば、正規化最小二乗平均アルゴリズム(Normalized Least Mean Square,NLMS)やその他の適宜なアルゴリズムが挙げられる。一方、S -(z)(すなわち、第3信号変換器211S)は、有限インパルス応答濾波器(Finite Impulse Response Filter,FIR filter)、または無限インパルス応答濾波器(Infinite Impulse Response Filter,IIR filter)であってもよい。
【0040】
なおかつ、前記電子装置2(例えば、スマートフォン)の前記ヒューマンマシンインタフェース20を操作することで、前記ヒアスルー制御ユニット212の利用開始も可能となるに従って、前記ヒアスルー制御ユニット212を利用して前記参照信号x(n)に基づいてヒアスルー制御操作を実行し、前記制御濾波器131Cの少なくとも1つの濾波器パラメータを調整することを実現する。図9は、図7に示すヒアスルー制御ユニット212のシステム構成図である。図9に示すように、前記ヒアスルー制御ユニット212は、第4信号変換器212Tと、信号遅延器212Dと、第2適応性濾波器212Aと、1個の前記第2信号変換器131Sと、第3減算器21S3と、1個の前記第3信号変換器211Sと、第2適応性演算器21A2とを含む。
【0041】
特に、前記第4信号変換器212Tは、前記参照信号x(n)に対して信号補償処理を行うために配置される。図9に示すように、前記信号遅延器212Dは、前記第4信号変換器212Tの出力端に電気接続されて第1目標信号d_H^(n)を受信し、かつ前記第1目標信号d_H^(n)に対して信号遅延処理を行う。なおかつ、前記第2適応性濾波器212Aは、前記参照信号x(n)に対して第4濾波処理を行うために配置され、かつ前記第2信号変換器131Sは、前記第2適応性濾波器212Aの出力端に電気接続されて前記第2出力信号y_H^(n)を受信し、続いて第2出力信号y_H^(n)に対して前記電子遅延(Electronic delay)補償を行う。さらに、前記第3減算器21S3は、前記信号遅延器212Dの出力端に電気接続されて前記目標信号d(n)を受信し、かつ同時に前記第2信号変換器131Sに電気接続されて第6出力信号y_H^’(n)を受信するに従って、前記目標信号d(n)と前記第6出力信号y_H^’(n)とに対して減算運算を行うことにより、第2誤差信号e_H^(n)を発生する。またさらに説明すると、前記第3信号変換器211Sは、前記参照信号x(n)に対して前記推定(estimation)電子遅延補償を行うために配置される。なおかつ、前記第2適応性演算器21A2は、前記第3信号変換器211Sの出力端に電気接続されて第2参照信号x_H^’(n)を受信し、かつ同時に前記第3減算器21S3の出力端に電気接続されて前記第2誤差信号e_H^(n)を受信する。
【0042】
前記ヒアスルー制御ユニット212を実行するときに、前記第2適応性演算器21A2は、前記第2参照信号x_H^’(n)と前記第2誤差信号e_H^(n)とに基づいて前記第2適応性濾波器212Aの少なくとも1つの濾波器パラメータを自己適応的に調整することで、前記第2誤差信号e_H^(n)を零に近づけるようにさせる。同様に、前記第2適応性演算器21A2は、アルゴリズム関数であり、かつ前記アルゴリズム関数は、最小二乗平均アルゴリズム(Least Mean Square,LMS)であってもよい。勿論、実行可能な実施例において、その他のアルゴリズム関数を前記第2適応性演算器21A2として用いてもよい場合もあり、例えば、NLMSやその他の適宜なアルゴリズムが挙げられる。
【0043】
図2及び図7に示すように、前記電子装置2のヒューマンマシンインタフェース20を操作することで、前記利得調整ユニット213の利用開始をも可能にさせることから、前記第1利得調整器13G1の第1利得g_a^及び/または前記第2利得調整器13G2の第2利得g_H^を調整する。なおかつ、前記電子装置2のヒューマンマシンインタフェース20を操作することで、前記濾波器調整ユニット214の利用開始をも可能にさせることから、前記整形濾波器13SHのストップバンド(stop band)範囲、またはパスバンド(pass band)範囲を調整する。
【0044】
上記を総合すると、本発明の補聴装置1は、能動騒音制御(ANC)技術とヒアスルー(HT)技術とを整合させ、このため、外界の音声に対して耐ノイズ処理とヒアスルー処理を実行することができ、続いて聴覚障害者の耳に向けて耐ノイズ処理とヒアスルー処理を経た音信号を放送する。よって、聴覚障害者がこの音信号を聴取するときには、音源方向を識別することができるのみならず、同時に環境騒音を分離(判別)することもでき、最終的に、興味のある音声(例えば、語音)に注意力を集中することができるようになる。
【0045】
このほか、本発明は、また能動騒音制御(ANC)ユニット211と、ヒアスルー(HT)制御ユニット212と、利得調整ユニット213と、濾波器調整ユニット214とをアプリケーションプログラムまたは関数ライブラリに編集してなるように設計されているに従って、電子装置2の中にインストールされる。このようにして、開発者及び/または医師は、前記能動騒音制御(ANC)ユニット211を利用開始して、前記オーディオ信号発生ユニット1312内に整合するための制御濾波器(control filter)131Cを調整するように、前記電子装置2を操作することができる。なおかつ、開発者及び/または医師は、前記ヒアスルー(HT)制御ユニット212を利用開始して、前記オーディオ信号発生ユニット1312内に整合するための等化濾波器131Eを調整するように、前記電子装置2を操作することもできる。
【0046】
さらに、医師または聴覚障害者は、前記利得調整ユニット213を利用開始するように前記電子装置2を操作することもできるに従って、補聴装置1に対して利得(Gain)調整を行う。一方、医師または聴覚障害者は、また前記濾波器調整ユニット214を利用開始するように前記電子装置2を操作することができることから、前記整形濾波器13SHのストップバンド(stop band)範囲、またはパスバンド(pass band)範囲を調整する。
【符号の説明】
【0047】
1:補聴装置
10:筐体
101:開孔
11:マイクロホン
12:アナログデジタル変換器
13:信号処理モジュール
131:第1メモリ
1311:参照信号発生ユニット
1312:オーディオ信号発生ユニット
131M:乗算運算ユニット
131A:加算運算ユニット
132:マイクロコントローラ
133:第1通信インターフェース
14:デジタルアナログ変換器
15:放音器
131C:制御濾波器
131E:等化濾波器
13G1:第1利得調整器
13G2:第2利得調整器
13A1:第1加算器
13A2:第2加算器
131P:第1信号変換器
131S:第2信号変換器
13S1:第1減算器
13SH:整形濾波器
2:電子装置
20:ヒューマンマシンインタフェース
21:第2メモリ
211:能動騒音制御ユニット
212:ヒアスルー制御ユニット
213:利得調整ユニット
214:濾波器調整ユニット
22:マイクロプロセッサ
23:第2通信インターフェース
211A:第1適応性濾波器
21S2:第2減算器
211S:第3信号変換器
21A1:第1適応性演算器
212T:第4信号変換器
212D:信号遅延器
212A:第2適応性濾波器
21S3:第3減算器
21A2:第2適応性演算器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9