(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002563
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】表面検査支援装置及び表面検査支援方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20231228BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01N21/47 Z
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101825
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 琴音
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB07
2G051AB20
2G051BA01
2G051CA04
2G051CB08
2G051EA16
2G051EA17
2G051EC10
2G059AA02
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG03
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】部品の表面や塗装面が複雑な面形状であっても光学異方性を効率よく検査することを課題とする。
【解決手段】表面検査支援装置10は、表面検査支援装置10は、一部の欠けた球殻の内殻に対して複数の光源が配設された球殻光源体15の光源を制御し、検査対象物100に照射した光の正反射光及び拡散光を、物体側テレセントリック光学系が形成された撮像カメラ16により撮像し、撮像した複数の画像に基づいて検査画像D1を合成し、合成された検査画像D1の赤成分及び青成分に基づいて連結画像D3を生成し、生成した連結画像D3を表示制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、
一部が欠けた球殻の内殻に対して、前記部品の表面に光を照射する複数の光源を配設した球殻光源体と、
前記球殻光源体に配設された複数の光源の点灯制御を行う光源制御部と、
前記複数の光源のうちの一つから照射された光が前記部品の表面で反射した正反射光及び複数の拡散光が入射する第1の凸レンズと、
円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記複数の拡散光の一部をなす第1の拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記複数の拡散光の他の一部をなす第2の拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを少なくとも含む十字構造のカラーフィルタ部と、
前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光と前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光とが入射する第2の凸レンズと、
前記複数の光源の個々の点灯制御に伴って前記第2の凸レンズを通過した前記第1の拡散光及び前記第2の拡散光に基づいて形成された複数の画像を合成して検査画像を取得する検査画像取得部と、
前記検査画像取得部により取得された検査画像に基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御部と
を備える表面検査支援装置。
【請求項2】
前記光源制御部は、
前記球殻光源体に配置された前記複数の光源を所定の順序で一つずつ点灯制御する請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項3】
前記カラーフィルタ部は、
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとが直交する領域に形成され、前記第3の色の正反射光を通過させる第3のカラーフィルタをさらに含む請求項1又は2に記載の表面検査支援装置。
【請求項4】
前記第1のカラーフィルタは、赤色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、
前記第2のカラーフィルタは、青色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、
前記第3のカラーフィルタは、緑色の正反射光を通過させるカラーフィルタであり、
前記検査画像は、赤成分、青成分、緑成分を画素ごとに持つカラー画像である請求項3に記載の表面検査支援装置。
【請求項5】
前記検査画像取得部は、
前記複数の画像のそれぞれ対応する位置に所在する対応画素のうち、前記緑成分が最大となる画像の赤成分及び青成分を前記検査画像の対応画素の赤成分及び青成分とした検査画像を取得する請求項4に記載の表面検査支援装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、
前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分及び青成分に基づいて算出されたベクトル方向を画素値としたベクトル画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する請求項5に記載の表面検査支援装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、
前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分と前記青成分を用いた逆正接関数により前記ベクトル画像を生成する請求項6に記載の表面検査支援装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、
前記ベクトル画像を形成する画素の画素値が示すベクトル方向に基づいて連結した連結画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する請求項7に記載の表面検査支援装置。
【請求項9】
一部が欠けた球殻の内殻に対して、部品の表面に光を照射する複数の光源を配設した球殻光源体と、前記複数の光源のうちの一つから照射された光が前記部品の表面で反射した正反射光及び複数の拡散光が入射する第1の凸レンズと、円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記複数の拡散光の一部をなす第1の拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記複数の拡散光の他の一部をなす第2の拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを少なくとも含む十字構造のカラーフィルタ部と、前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光と前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光とが入射する第2の凸レンズとを有する表面検査支援装置における表面検査支援方法であって、
前記球殻光源体に配設された複数の光源の点灯制御を行う光源制御工程と、
前記複数の光源の個々の点灯制御に伴って前記第2の凸レンズを通過した前記第1の拡散光及び前記第2の拡散光に基づいて形成された複数の画像を合成して検査画像を取得する検査画像取得工程と、
前記検査画像取得工程により取得された検査画像に基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御工程と
を含む表面検査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の表面や塗装面が複雑な面形状であっても光学異方性を効率よく検査することができる表面検査支援装置及び表面検査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形部品の表面や車両の塗装面に光学異方性が生じる場合がある。例えば、金型内で溶融樹脂の合流部分が線状の跡となるウェルドラインという成型不良が発生した場合には、見る角度によって射出成形部品等の色合いが異なる結果となる。
【0003】
このため、射出成型部品等の成型不良を検査する従来技術が知られている。例えば、テレセントリック性を有する光学系を用いて取得した画像に基づいて物体に関する情報を取得する技術が知られている。例えば、特許文献1には、同心円状のカラーフィルタを介して画像を取得し、撮像された光線の色を特定し、散乱角を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1によれば、光学異方性を検査する場合に正反射光が得られることが必須条件となる。このため、正反射光が得られない複雑な面形状を持つ検査対象物の場合には、光学異方性を検査することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、部品の表面や塗装面が複雑な面形状であっても光学異方性を効率よく検査することができる表面検査支援装置及び表面検査支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、部品の表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、一部が欠けた球殻の内殻に対して、前記部品の表面に光を照射する複数の光源を配設した球殻光源体と、前記球殻光源体に配設された複数の光源の点灯制御を行う光源制御部と、前記複数の光源のうちの一つから照射された光が前記部品の表面で反射した正反射光及び複数の拡散光が入射する第1の凸レンズと、円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記複数の拡散光の一部をなす第1の拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記複数の拡散光の他の一部をなす第2の拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを少なくとも含む十字構造のカラーフィルタ部と、前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光と前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光とが入射する第2の凸レンズと、前記複数の光源の個々の点灯制御に伴って前記第2の凸レンズを通過した前記第1の拡散光及び前記第2の拡散光に基づいて形成された複数の画像を合成して検査画像を取得する検査画像取得部と、前記検査画像取得部により取得された検査画像に基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御部とを備える。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記光源制御部は、前記球殻光源体に配置された前記複数の光源を所定の順序で一つずつ点灯制御する。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記カラーフィルタ部は、前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとが直交する領域に形成され、前記第3の色の正反射光を通過させる第3のカラーフィルタをさらに含む。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記第1のカラーフィルタは、赤色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、前記第2のカラーフィルタは、青色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、前記第3のカラーフィルタは、緑色の正反射光を通過させるカラーフィルタであり、前記検査画像は、赤成分、青成分、緑成分を画素ごとに持つカラー画像である。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記検査画像取得部は、前記複数の画像のそれぞれ対応する位置に所在する対応画素のうち、前記緑成分が最大となる画像の赤成分及び青成分を前記検査画像の対応画素の赤成分及び青成分とした検査画像を取得する。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御部は、前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分及び青成分に基づいて算出されたベクトル方向を画素値としたベクトル画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御部は、前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分と前記青成分を用いた逆正接関数により前記ベクトル画像を生成する。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御部は、前記ベクトル画像を形成する画素の画素値が示すベクトル方向に基づいて連結した連結画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する。
【0015】
また、本発明は、一部が欠けた球殻の内殻に対して、部品の表面に光を照射する複数の光源を配設した球殻光源体と、前記複数の光源のうちの一つから照射された光が前記部品の表面で反射した正反射光及び複数の拡散光が入射する第1の凸レンズと、円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記複数の拡散光の一部をなす第1の拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記複数の拡散光の他の一部をなす第2の拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを少なくとも含む十字構造のカラーフィルタ部と、前記第1のカラーフィルタを通過した第1の拡散光と前記第2のカラーフィルタを通過した第2の拡散光とが入射する第2の凸レンズとを有する表面検査支援装置における表面検査支援方法であって、前記球殻光源体に配設された複数の光源の点灯制御を行う光源制御工程と、前記複数の光源の個々の点灯制御に伴って前記第2の凸レンズを通過した前記第1の拡散光及び前記第2の拡散光に基づいて形成された複数の画像を合成して検査画像を取得する検査画像取得工程と、前記検査画像取得工程により取得された検査画像に基づいて、前記部品の表面の光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する表示制御工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品の表面や塗装面が複雑な面形状であっても光学異方性を効率よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る表面検査支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す球殻光源体の構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したカラーフィルタ部の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、検査画像の生成を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、検査画像からベクトル画像の生成を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、ベクトル画像から連結画像の生成を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、撮像カメラの構成と正反射光の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、検査対象物の表面の画像の撮像を説明するための説明図である。
【
図10】
図10は、検査画像及び連結画像の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、ウェルドラインが存在する場合の検査画像及び連結画像の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、表面検査支援装置の処理手順を示すフローチャート(その1)である。
【
図13】
図13は、表面検査支援装置の処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る表面検査支援装置の光学系を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る表面検査支援装置及び表面検査支援方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[実施形態1]
<表面検査支援装置の構成>
まず、本実施形態1に係る表面検査支援装置の構成について説明する。
図1は、実施形態1に係る表面検査支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、表面検査支援装置10には、一部の欠けた球殻の内殻に対して複数の光源が配設された球殻光源体15が設けられている。
【0020】
この球殻光源体15から照射された光は、検査対象物100の表面Sにて正反射光及び拡散光として反射され、反射された正反射光及び拡散光が物体側テレセントリック光学系に入射する。物体側テレセントリック光学系に入射された正反射光及び拡散光は、撮像カメラ16の受光素子である撮像センサ23により受光し、画像を取得する。ここで検査対象物100は、樹脂で形成された樹脂形成部品である。なお、検査対象物100は、樹脂形成部品に限定されることはなく、他の物質で形成された部品であってもよい。
【0021】
ここで、検査対象物100の位置Pにおいて反射された正反射光について説明する。球殻光源体15に配設された光源Kiから照射された光は、検査対象物100の位置Pにて正反射し、図中に実線で示した反射光Liのように撮像カメラ16の大口径凸レンズ20に入射される。一方、球殻光源体15に配設された光源Ki-1から照射された光は、検査対象物100の位置Pにて正反射し、図中に点線で示した反射光Li-1のように撮像カメラ16の大口径凸レンズ20に入射しない。
【0022】
また、球殻光源体15に配設された光源Ki+1から照射された光は、検査対象物100の位置Pにて正反射し、図中に一点鎖線で示した反射光Li+1のように撮像カメラ16の大口径凸レンズ20に入射しない。
【0023】
このように、検査対象物100の表面の形状にしたがって、正反射光が大口径凸レンズ20に入射する光源を特定することが可能であり、これにより、表面検査支援装置10は、検査対象物100の表面の面形状が複雑な形状であっても光源を変えることにより光学異方性を検査することができる。
【0024】
表面検査支援装置10は、入力部11、表示部12、記憶部13及び制御部14を有する。また、表面検査支援装置10は、球殻光源体15及び撮像カメラ16が接続されている。入力部11は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。表示部12は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。記憶部13は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスである。
【0025】
制御部14は、表面検査支援装置10の全体を制御する制御部であり、光源制御部14a、画像取得処理部14b及び表示制御部14cを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、光源制御部14a、画像取得処理部14b及び表示制御部14cのそれぞれに対応するプロセスを実行させることになる。
【0026】
光源制御部14aは、さまざまな角度で検査対象物100に平行光を照射するように、球殻光源体15に複数配設された光源K
iを制御する制御部である。具体的には、球殻光源体15に配設された複数の光源K
iのうち、1つの光源を選択して点灯制御する。例えば、
図2に示す球殻光源体15は、一部の欠けた球殻の内殻に光源K
iを複数配設した光源体である。各光源K
iは、検査対象物100に向けて異なる照射角を持つ平行光を照射する。
【0027】
画像取得処理部14bは、球殻光源体15及び撮像カメラ16を操作して検査対象物100の表面Sの画像を取得する処理部である。具体的には、球殻光源体15から平行光を照射し、検査対象物100の表面Sで反射した正反射光及び拡散光が物体側テレセントリック光学系に入射したならば、大口径凸レンズ20及びカラーフィルタ部21を介して撮像センサ23により受光し、画像を取得する。
【0028】
図3に示すカラーフィルタ部21は、円周上の一点及び中心点を通る領域(X軸)に形成され、第1の色(赤成分)の拡散光を通過させる第1カラーフィルタ21aと、該第1カラーフィルタ21aと直交する領域(Y軸)に形成され、第2の色(青成分)の拡散光を通過させる第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21aと該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成され、第3の色(緑成分)の正反射光を通過させる第3カラーフィルタ21cが形成されている。
【0029】
そして、第1カラーフィルタ21a、第2カラーフィルタ21b及び第3カラーフィルタ21c以外の部分には、正反射光及び拡散光を遮光する遮光フィルタ21dが形成されている。
【0030】
また、画像取得処理部14bは、球殻光源体15の光源Kiの1つが点灯制御された場合に、1枚の画像を取得する処理部である。例えば、球殻光源体15の球殻内に光源Kiが100個設けられている場合には、100枚の画像を取得する。そして、画像取得処理部14bは、複数の光源の個々の点灯制御にともなって撮像した複数の画像を合成して検査画像D1を取得する。
【0031】
図4に示す表面検査支援装置10は、光源K
i+1を点灯制御し、検査対象物100の位置Pに光を照射し、光源K
i+1から照射された光の反射光(正反射光及び拡散光)を撮像する。撮像した画像1は、画素位置P1において赤成分「R1」、緑成分「G1」及び青成分「B1」の画素値を有する。
【0032】
また、表面検査支援装置10は光源Kiを点灯制御し、検査対象物100の位置Pに光を照射し、光源Kiから照射された光の反射光(正反射光及び拡散光)を撮像する。撮像した画像2では、画素位置P1において赤成分「R2」、緑成分「G2」及び青成分「B2」を有する。
【0033】
また、表面検査支援装置10は、光源Ki-1を点灯制御し、検査対象物100の位置Pに光を照射し、光源Ki-1から照射された光のその反射光を撮像する。撮像した画像3は、画素位置P1において赤成分「R3」、緑成分「G3」及び青成分「B3」を有する。
【0034】
そして、表面検査支援装置10は、画像1、画像2及び画像3の画素位置P1における緑成分を比較する。ここで、画像2のG2は、画像1のG1より大きく、また、画像2のG2は、画像3のG3よりも大きいため、表面検査支援装置10は、画像2の画素位置P1における画素値(R2、G2、B2)を検査画像D1の画素位置P1における画素値として特定する。
【0035】
表示制御部14cは、画像取得処理部14bで取得した検査画像D1を形成する画素ごとに、第1カラーフィルタ21aを通過した第1の拡散光の赤成分及び第2カラーフィルタ21bを通過した第2の拡散光の青成分を用いた逆正接関数によりベクトル方向を画素値としたベクトル画像D2を生成する。
【0036】
図5に示すように、検査画像D1の画素位置P1の画素値がR2、G2、B2である場合は、第1カラーフィルタを通過した拡散光の赤成分「R2」と第2カラーフィルタを通過した拡散光の青成分「B2」に基づいて、赤成分に対する青成分の比を算出し、その算出された比の逆正接関数を算出する。算出された逆正接関数がθ2の場合は、その値をベクトル画像D2の画素位置P1における画素値とする。
【0037】
そして、表示制御部14cは、ベクトル画像D2を形成する画素の画素値が示すベクトル方向に基づいてベクトルが連結した連結画像D3を生成し、生成された連結画像D3を所定の表示部12に表示制御する処理を行う。
【0038】
具体的には、
図6に示すように、ベクトル画像D2の各画素値は、ベクトル方向を画素値として有しており、その隣接する画素の画素値に相関がある場合には、その画素値を連結する。また、隣接する画素の画素値に相関が無い場合には、その画素値は削除し、連結画像D3を生成する。
【0039】
撮像カメラ16は、物体側テレセントリック光学系を形成し、大口径凸レンズ20と、カラーフィルタ部21と、撮像センサ23とを有する。大口径凸レンズ20は、球殻光源体15からの平行光の正反射光に平行な光軸をもち検査対象物100の表面Sからの反射光が入射される。カラーフィルタ部21は、大口径凸レンズ20の像側焦点位置に、光軸に対して垂直に配置される。撮像センサ23は、正反射光及び拡散光を受光し、画像を取得する。
【0040】
<撮像カメラの構成>
次に、撮像カメラ16の構成及び正反射光の一例について説明する。
図7は、撮像カメラ16の構成と正反射光Lの一例を示す図である。
【0041】
図7に示すように、撮像カメラ16には、光軸Cに平行な検査対象物100の表面Sからの正反射光をすべて入力できる大口径の入力領域を有して物体側テレセントリック光学系を形成する大口径凸レンズ20が検査対象物100側に設けられる。大口径凸レンズ20は、大口径であるため、光軸C方向の厚みが大きくなるため、フレネルレンズとすることが好ましい。
【0042】
大口径凸レンズ20の像側の焦点には、カラーフィルタ部21が配置される。カラーフィルタ部21は、大口径凸レンズ20の光軸Cに対して垂直に配置され、円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成され該第1の色(赤成分)を通過させる第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交し該第1の色とは異なる第2の色(青成分)を通過させる図示しない第2カラーフィルタ21bとが形成される。また、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に該第3の色(緑成分)の正反射光を通過させる第3カラーフィルタ21cが形成され、該第1カラーフィルタ21a、該第2カラーフィルタ21b及び第3カラーフィルタ21c以外の部分に光を遮光する遮光フィルタ21dを有する。
【0043】
絞り凸レンズ22は、カラーフィルタ部21を通過した光を撮像センサ23に結像させる。撮像センサ23は、拡散光(第1の色及び第2の色)と正反射光(第3の色)の光量を計測する。
【0044】
次に正反射光Lの光路について説明する。
図7に示すように、球殻光源体15から照射された照射光は、検査対象物100の表面Sにおいて正反射し、光軸Cに平行な光として大口径凸レンズ20に入射される。そして、正反射光Lは、大口径凸レンズ20の像側焦点に配置されているカラーフィルタ部21の第3カラーフィルタ21cを通過して絞り凸レンズ22に入射される。その後、正反射光Lは、絞り凸レンズ22で光軸Cに平行な光となり撮像センサ23に到達する。
【0045】
次に拡散光L1、L2の光路について説明する。ここでは、拡散光L1、L2は、X軸方向に拡散することとする。
図8は、拡散光の一例を示す図である。
図8に示すように、球殻光源体15から検査対象物100の表面Sの位置Pに照射された光は、表面Sにおいて、X軸方向に拡散光L1、L2のように拡散する。その後、拡散光L1、L2は、大口径凸レンズ20を介して、カラーフィルタ部21のX軸方向に配置された第1カラーフィルタ21aを通過し、絞り凸レンズ22にて撮像センサ23の画素位置P2に結像される。
【0046】
<画像の撮像について>
次に、検査対象物100の表面Sの画像の撮像について説明する。
図9は、検査対象物100の表面Sの画像の撮像を説明するための説明図である。ここでは、検査対象物100は、X軸方向に曲面を持ったものとし、正反射光Lについて説明する。
図9に示すように、光源K
50によって照射された平行光が検査対象物100で反射された正反射光L3は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22を介して、撮像センサ23の表面S1の領域に結像する。
【0047】
次に、光源K30によって照射された平行光が検査対象物100で反射された正反射光L4は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22を介して、撮像センサ23の表面S2の領域に結像する。また、光源K10によって照射された平行光が検査対象物100で反射された正反射光L5は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22を介して、撮像センサ23の表面S3の領域に結像する。
【0048】
また、光源K20によって照射された平行光が検査対象物100で反射された正反射光L6は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22を介して、撮像センサ23の表面S4の領域に結像する。光源K40によって照射された平行光が検査対象物100で反射された正反射光L5は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22を介して、撮像センサ23の表面S5の領域に結像する。そして、光源K60によって照射された平行光が検査対象物100で反射された正反射光L6は、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22を介して、撮像センサ23の表面S6の領域に結像する。
【0049】
実際には、光源Ki(i=10、20、30、40、50、60)がそれぞれ点灯制御された複数の画像を撮像し、複数の画像のそれぞれ対応する画素位置に所在する画素のうち、緑成分が最大となる画像の赤成分及び青成分を検査画像の対応画素の赤成分及び青成分とし、検査画像D1を生成する。
【0050】
<連結画像D3の生成>
次に連結画像D3の生成について説明する。
図10は、検査画像D1及び連結画像D3の一例を示す図である。
図10に示すように、検査画像D1の第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過した拡散光の赤成分及び青成分からなる検査画像D1は、赤色及び青色とその中間色で構成されるカラー画像である。そして検査画像D1のすべての画素での赤成分及び青成分の比の逆正接関数を算出し、ベクトル画像D2を生成する。そして、生成されたベクトル画像D2の画素を連結処理することによって連結画像D3を生成する。
【0051】
次にウェルドラインが存在する場合の連結画像D3について説明する。
図11は、ウェルドラインが存在する場合の検査画像D1及び連結画像D3の一例を示す図である。
図11に示すように、第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過した拡散光からなる検査画像D1は、ウェルドラインWが存在する位置で不連続なカラー画像となる。
【0052】
そして、検査画像D1のすべての画素で赤成分及び青成分の比の逆正接関数を算出し、ベクトル画像D2を生成する。そして、生成されたベクトル画像D2の画素を連結処理することによって連結画像D3を生成する。表面検査支援装置10は、生成された連結画像D3を表示部12に表示することによって、検査対象物100の表面の状況を表示することができる。
【0053】
<表面検査支援装置10の処理手順>
次に、表面検査支援装置10の処理手順について説明する。
図12及び
図13は、表面検査支援装置10の処理手順を示すフローチャートである。
図12に示すように、表面検査支援装置10は、球殻光源体15の照射を行う光源K
iを選択する(ステップS101)。そして、表面検査支援装置10は、選択された光源Kiを点灯制御し検査対象物100に平行光を照射する(ステップS102)。その後、表面検査支援装置10は、撮像センサ23により検査対象物100の表面Sの画像を取得する(ステップS103)。
【0054】
表面検査支援装置10は、球殻光源体15のすべての光源Kiから照射が完了したか否かを判定する(ステップS104)。球殻光源体15のすべての光源Kiから照射が完了していない場合は(ステップS104;No)、次の光源Kiの選択を行い(ステップS105)、ステップS102に移行する。
【0055】
一方、球殻光源体15のすべての光源Kiからの照射が完了した場合は(ステップS104;Yes)、検査画像D1を生成するため、撮像した複数の画像の対応する画素位置を特定する(ステップS106)。その後、表面検査支援装置10は、特定した画素位置の緑成分が最大の画像を選択する(ステップS107)。
【0056】
そして、表面検査支援装置10は、選択した画像の画素位置における赤成分及び青成分を検査画像D1の画素位置における赤成分及び青成分とする(ステップS108)。その後、表面検査支援装置10は、未処理の画素位置が存在するか否かを判定する(ステップS109)。未処理の画素位置が存在する場合は(ステップS109;Yes)、次の画素位置を特定し(ステップS110)、ステップS107に移行する。
【0057】
一方、未処理の画素位置が存在しない場合は、表面検査支援装置10は、検査画像の所定の画素を特定する(ステップS111)。そして、所定の画素における赤成分及び青成分の比の逆正接関数を算出し、所定の画素の画素値とする(ステップS112)。そして、表面検査支援装置10は、未処理の画素が存在するか否かを判定する(ステップS113)。
【0058】
表面検査支援装置10は、未処理の画素が存在する場合は(ステップS113;Yes)、次の画素を特定し(ステップS114)、ステップS112に移行する。一方、未処理の画素が存在しない場合は(ステップS113;No)、ベクトル画像D2に基づいて連結画像D3を生成し(ステップS115)、生成した連結画像を所定の表示部12に表示制御し(ステップS116)、一連の処理を終了する。
【0059】
上述してきたように、本実施形態1では、表面検査支援装置10は、一部の欠けた球殻の内殻に対して複数の光源が配設された球殻光源体15の光源を制御し、検査対象物100に照射した光の正反射光及び拡散光を、物体側テレセントリック光学系が形成された撮像カメラ16により撮像し、撮像した複数の画像に基づいて検査画像D1を合成し、合成された検査画像D1の赤成分及び青成分に基づいて連結画像D3を生成し、生成した連結画像D3を表示制御するようにしたので、部品の表面や塗装面が複雑な面形状であっても光学異方性を効率よく検査することができる。
【0060】
[実施形態2]
ところで、上記実施形態1では、球殻光源体15に配設された光源Kiは、平行光を照射する場合について説明したが、実施形態2では、球殻光源体15に配設された光源Kiが照射する光が平行光でない場合について説明する。なお、実施形態1と同様の部位については、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明は省略する。
【0061】
<光学系の構成>
図14は、実施形態2に係る表面検査支援装置10の光学系を示す概要図である。
図14に示すように、表面検査支援装置10の光学系は、球殻光源体15、検査対象物101、大口径凸レンズ20、カラーフィルタ部21及び撮像部24から構成されている。ここで、検査対象物101は、樹脂で形成された樹脂形成部品である。なお、検査対象物101は、樹脂形成部品に限定されることはなく、他の材質で形成された部品でもよい。また、球殻光源体15の光源K
Jと検査対象物101の距離をN、大口径凸レンズ20の焦点距離をf、大口径凸レンズ20から正反射光が集束する位置までの距離をMとする。
【0062】
球殻光源体15には、放射光を照射する光源KJが配設されている。そして、カラーフィルタ部21及び撮像部24をM=(f2/N)+fを満たす位置に配設したならば、球殻光源体15の光源KJから照射された放射光は検査対象物101で反射し、その正反射光L10、L11、L12は、大口径凸レンズ20を介してカラーフィルタ部21で集束する。
【0063】
ここでは正反射光について説明したが、拡散光においても正反射光と同様にカラーフィルタ部21の第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過して撮像部24にて撮像される。
【0064】
上述してきたように、本実施形態2では、表面検査支援装置10の光学系を球殻光源体15の光源KJと検査対象物101の距離をN、大口径凸レンズ20の焦点距離をfとし、大口径凸レンズ20とカラーフィルタ部21及び撮像部24との距離MをM=(f2/N)+fを満たす位置に配設することにより、球殻光源体15に配設する光源KJは、放射光を照射する光源を用いることが可能になり、平行光を照射する光源Kiを用いる光学系の大きさより小さな光学系で構成することができる。
【0065】
なお、上記実施形態1及び実施形態2では、カラーフィルタ部21の円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成された第1の色(赤成分)の第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交する第2の色(青成分)の第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成された第3の色(緑成分)の第3カラーフィルタ21cを配したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各フィルタの色は入れ替えてもよい。また、各色のフィルタをシャッタや局所的な絞り羽を配して正反射光L及び拡散光L1、L2の光量を計測するようにしてもよい。
【0066】
また、各色のカラーフィルタの代わりに透明で透過率が制御可能な液晶を利用し、不透過・透過の部位を順次高速に入れ替える構成にしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態1及び実施形態2では、球殻光源体15は、球形である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一部を欠いた回転楕円体でもよい。
【0068】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る表面検査支援装置及び表面検査支援方法は、部品の表面や塗装面が複雑な面形状であっても光学異方性を効率よく検査する場合に適している。
【符号の説明】
【0070】
10 表面検査支援装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
14 制御部
14a 光源制御部
14b 画像取得処理部
14c 表示制御部
15 球殻光源体
16 撮像カメラ
20 大口径凸レンズ
21 カラーフィルタ部
21a 第1カラーフィルタ
21b 第2カラーフィルタ
21c 第3カラーフィルタ
21d 遮光フィルタ
22 絞り凸レンズ
23 撮像センサ
24 撮像部
100、101 検査対象物
C 光軸
D1 検査画像
D2 ベクトル画像
D3 連結画像
Ki、KJ、Ki-1、Ki+1 光源
K10、K20、K30、K40、K50、K60 光源
L 正反射光
Li、Li-1、Li+1 反射光
L3、L4、L5、L6 正反射光
L10、L11、L12 正反射光
L1、L2 拡散光
P 位置
P1、P2 画素位置
S、S1、S2、S3、S4、S5、S6 表面
W ウェルドライン