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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025661
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】バッテリの直流内部抵抗の概算方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/389 20190101AFI20240216BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240216BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240216BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240216BHJP
【FI】
G01R31/389
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099816
(22)【出願日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】111130498
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】509343390
【氏名又は名称】新盛力科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】洪士發
(72)【発明者】
【氏名】伍崇永
(72)【発明者】
【氏名】張文帆
【テーマコード(参考)】
2G216
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA41
2G216BA51
2G216CA01
2G216CA04
2G216CB51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、バッテリの直流内部抵抗の概算方法を提供する。
【解決手段】当該方法は、第1閾値及び第2閾値を含む放電深度検知区間を定義する。バッテリの放電時に、現時点の放電電流及びバッテリ電圧を所定のタイミングで測定し、現時点の放電深度を算出して、現時点の放電深度に対応する開回路電圧を検索する。そして、現時点の放電深度に対応する開回路電圧から現時点のバッテリ電圧を減じることで電圧差を取得し、且つ、電圧差を累加し続けることで現時点の累加電圧差を取得する。現時点の放電深度が第1閾値又は第2閾値に達したときには、現時点の累加電圧差が第1累加電圧差又は第2累加電圧差となる。そして、第1累加電圧差と第2累加電圧差との差分値を放電深度検知区間の放電量で割ることで直流内部抵抗を取得する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに応用される直流内部抵抗の概算方法であって、
第1放電深度閾値及び第2放電深度閾値を含む放電深度検知区間を定義し、前記第2放電深度閾値の放電深度は前記第1放電深度閾値の放電深度よりも大きく、
前記バッテリが放電状態のときに、直流内部抵抗概算プログラムによって直流内部抵抗概算プロセスを実行し、当該プロセスは、
前記バッテリにおける現時点の放電電流及び現時点のバッテリ電圧を所定のタイミングで測定し、
所定のタイミングで測定した前記現時点の放電電流に基づいて現時点の放電深度を算出し、
開回路電圧曲線又はルックアップテーブルから、前記現時点の放電深度に対応する開回路電圧を検索し、
前記現時点の放電深度に対応する前記開回路電圧から前記現時点のバッテリ電圧を減じることで電圧差を取得し、且つ、当該電圧差を累加し続けることで現時点の累加電圧差を取得し、
前記現時点の放電深度が前記第1放電深度閾値以上の場合には、前記現時点の累加電圧差が第1累加電圧差となり、
前記現時点の放電深度が前記第2放電深度閾値以上の場合には、前記現時点の累加電圧差が第2累加電圧差となり、
前記第1累加電圧差と前記第2累加電圧差との差分値を前記放電深度検知区間の放電量で割ることで直流内部抵抗を取得することを含む直流内部抵抗の概算方法。
【請求項2】
前記直流内部抵抗概算プログラムは第1フラグ及び第2フラグを含み、前記第1フラグが1に設定されている場合には、前記現時点の放電深度が前記第1放電深度閾値に達したか否かを検知する動作を有効にし、前記第1フラグが0に設定されている場合には、前記現時点の放電深度が前記第1放電深度閾値に達したか否かを検知する前記動作を無効にし、前記第2フラグが1に設定されている場合には、前記現時点の放電深度が前記第2放電深度閾値に達したか否かを検知する動作を有効にし、前記第2フラグが0に設定されている場合には、前記現時点の放電深度が前記第2放電深度閾値に達したか否かを検知する前記動作を無効にする請求項1に記載の直流内部抵抗の概算方法。
【請求項3】
前記直流内部抵抗概算プロセスを実行する前に、更に、
前記バッテリが前記放電状態か否かを検出するプロセスを実行し、放電状態の場合には前記直流内部抵抗概算プロセスを実行し、放電状態でない場合には前記バッテリが満充電か否かを検出するプロセスを実行することを含み、
前記バッテリが満充電か否かを検出する上記のプロセスを実行することには、
前記バッテリが満充電であると検出された場合、前記第1フラグを1に設定し、前記第2フラグを0に設定するとともに、前記バッテリが前記放電状態か否かを検出する上記のプロセスの実行に戻り、或いは、前記バッテリが満充電でないと検出された場合、前記第1フラグを0に設定し、前記第2フラグを0に設定して、前記バッテリが満充電か否かを検出する上記のプロセスを引き続き実行することが含まれる請求項2に記載の直流内部抵抗の概算方法。
【請求項4】
前記直流内部抵抗概算プロセスを実行する前に、前記バッテリは満充電とする必要があり、且つ、前記第1フラグは1に設定され、前記第2フラグは0に設定される請求項3に記載の直流内部抵抗の概算方法。
【請求項5】
前記現時点の放電深度が前記第1放電深度閾値以上であり、且つ前記第2放電深度閾値よりも小さい場合、前記第1フラグの設定は1から0に変更され、前記第2フラグの設定は0から1に変更され、前記現時点の放電深度が前記第2放電深度閾値以上の場合、前記第2フラグの設定は1から0に変更される請求項3に記載の直流内部抵抗の概算方法。
【請求項6】
前記直流内部抵抗の概算方法を実行する前に、前記開回路電圧曲線の測定プロセスを予め実行し、当該プロセスは、
前記バッテリを満充電とし、
一定の放電電流で前記バッテリの放電を行い、
前記バッテリにおける現時点の開回路電圧を所定のタイミングで測定し、
前記バッテリにおける現時点の放電量に基づいて前記現時点の放電深度を取得し、
現時点の放電時間に対応する前記現時点の開回路電圧及び前記現時点の放電深度を記録し、
前記バッテリにおける前記現時点の開回路電圧が放電カットオフ電圧と等しいか否かを判断し、前記バッテリにおける前記現時点の開回路電圧が前記放電カットオフ電圧と等しい場合には、前記バッテリの放電を停止して、各前記現時点の放電時間に対応する各前記現時点の開回路電圧及び各前記現時点の放電深度から前記開回路電圧曲線を作成し、前記バッテリにおける前記現時点の開回路電圧が前記放電カットオフ電圧よりも大きい場合には、前記バッテリの放電を継続するとともに、引き続き前記現時点の放電時間に対応する前記現時点の開回路電圧及び前記現時点の放電深度を記録することを含む請求項1に記載の直流内部抵抗の概算方法。
【請求項7】
前記直流内部抵抗概算プロセスを実行する前に、更に、
前記バッテリにおける現時点の電流が0よりも小さいか否かを測定し、前記現時点の電流が0よりも小さい場合には、前記バッテリが前記放電状態であり、前記直流内部抵抗概算プロセスを実行し、前記現時点の電流が0よりも大きいか0と等しい場合、前記バッテリは充電状態又は静止状態であり、前記バッテリが満充電か否かを検出することを含む請求項1に記載の直流内部抵抗の概算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの直流内部抵抗を概算するための方法に関し、特に、バッテリの放電過程でバッテリの直流内部抵抗を概算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの内部抵抗とは、電流がバッテリの内部を通過する際に受ける抵抗のことである。バッテリの直流内部抵抗が小さいほど、バッテリが電流を出力する際の内部の電圧降下は小さくなる。つまり、バッテリの放電能力は強くなる。これに対し、バッテリの直流内部抵抗が大きいほど、バッテリが電流を出力する際の内部の電圧降下は大きくなる。つまり、バッテリの放電能力は弱くなる。そのため、直流内部抵抗は、バッテリの性能を評価するための重要な指標である。
【0003】
IEC 61690に制定されている直流内部抵抗の概算方法は、現在、バッテリの直流内部抵抗の概算に最もよく用いられている方法である。IEC 61690の直流内部抵抗の概算方法では、2段階の放電が規定されている。まず、第1段階の放電では、0.2Cの放電レートで10秒間放電し、バッテリ電圧V1及び放電電流I1を記録する。続いて、第2段階の放電では、1Cの放電レートで1秒間再び放電し、バッテリ電圧V2及び放電電流I2を記録する。最後に、Rdc=(V1-V2)/(I2-I1)というように、2つのバッテリ電圧の差分値を2つの放電電流の差分値で割ることで、バッテリの直流内部抵抗Rdcを取得可能である。
【0004】
しかし、前記IEC 61690の直流内部抵抗の概算方法は、バッテリがアイドル状態の場合に行われる直流内部抵抗の概算にのみ適している。よって、バッテリが実際に動作している場合には、IEC 61690の直流内部抵抗の概算方法に規定されている2段階の放電条件に基づいて対応の操作を行うことは根本的に不可能である。加えて、IEC 61690の直流内部抵抗の概算方法では、放電深度が異なると、異なる直流内部抵抗が概算される。例えば、IEC 61690の直流内部抵抗の概算方法では、放電深度が70%のときに概算される直流内部抵抗は、放電深度が50%のときに概算される直流内部抵抗と異なる。そのため、従来のIEC 61690の直流内部抵抗の概算方法で概算される直流内部抵抗には、十分に正確でないとの課題がある。
【0005】
以上に鑑みて、本発明は、革新的なバッテリの直流内部抵抗を概算するための方法を提供する。当該方法は、比較的正確な直流内部抵抗を概算可能であり、これが本発明の目的となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、バッテリの直流内部抵抗の概算方法を提供することである。当該方法は、第1放電深度閾値及び第2放電深度閾値を含む放電深度検知区間を定義する。バッテリの放電過程において、バッテリにおける現時点の放電電流及びバッテリ電圧を所定のタイミングで測定し、現時点の放電深度を算出して、開回路電圧曲線又はルックアップテーブルから、現時点の放電深度に対応する開回路電圧を検索する。そして、現時点の放電深度に対応する開回路電圧から現時点のバッテリ電圧を減じることで電圧差を取得し、且つ、電圧差を累加し続けることで現時点の累加電圧差を取得する。現時点の放電深度が放電深度検知区間の第1放電深度閾値に達した場合には、現時点の累加電圧差が第1累加電圧差となる。現時点の放電深度が放電深度検知区間の第2放電深度閾値に達した場合には、現時点の累加電圧差が第2累加電圧差となる。そして、第1累加電圧差と第2累加電圧差との差分値を放電深度検知区間の放電量で割ることで直流内部抵抗を求めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、バッテリに応用される直流内部抵抗の概算方法を提供する。当該方法は、以下を含む。即ち、第1放電深度閾値及び第2放電深度閾値を含む放電深度検知区間を定義する。バッテリが放電状態のときに、直流内部抵抗概算プログラムによって直流内部抵抗概算プロセスを実行する。当該プロセスは、以下を含む。即ち、バッテリにおける現時点の放電電流及び現時点のバッテリ電圧を所定のタイミングで測定し、所定のタイミングで測定した現時点の放電電流に基づいて現時点の放電深度を算出する。そして、開回路電圧曲線又はルックアップテーブルから、現時点の放電深度に対応する開回路電圧を検索する。また、現時点の放電深度に対応する開回路電圧から現時点のバッテリ電圧を減じることで電圧差を取得し、且つ、電圧差を累加し続けることで現時点の累加電圧差を取得する。現時点の放電深度が第1放電深度閾値以上の場合には、現時点の累加電圧差が第1累加電圧差となり、現時点の放電深度が第2放電深度閾値以上の場合には、現時点の累加電圧差が第2累加電圧差となる。第1累加電圧差と第2累加電圧差との差分値を放電深度検知区間の放電量で割ることで直流内部抵抗を取得する。
【0008】
本発明の一実施例において、直流内部抵抗概算プログラムは第1フラグ及び第2フラグを含む。第1フラグが1に設定されている場合には、現時点の放電深度が第1放電深度閾値に達したか否かを検知する動作を有効にし、第1フラグが0に設定されている場合には、現時点の放電深度が第1放電深度閾値に達したか否かを検知する動作を無効にする。第2フラグが1に設定されている場合には、現時点の放電深度が第2放電深度閾値に達したか否かを検知する動作を有効にし、第2フラグが0に設定されている場合には、現時点の放電深度が第2放電深度閾値に達したか否かを検知する動作を無効にする。
【0009】
本発明の一実施例において、直流内部抵抗概算プロセスを実行する前に、更に以下を含む。即ち、バッテリが放電状態か否かを検出するプロセスを実行し、放電状態の場合には直流内部抵抗概算プロセスを実行し、放電状態でない場合にはバッテリが満充電か否かを検出するプロセスを実行する。バッテリが満充電か否かを検出するプロセスを実行することには、以下が含まれる。即ち、バッテリが満充電であると検出された場合、第1フラグを1に設定し、第2フラグを0に設定するとともに、バッテリが放電状態か否かを検出するプロセスの実行に戻る。或いは、バッテリが満充電でないと検出された場合、第1フラグを0に設定し、第2フラグを0に設定して、バッテリが満充電か否かを検出するプロセスを引き続き実行する。
【0010】
本発明の一実施例において、直流内部抵抗概算プロセスを実行する前に、バッテリは満充電とする必要があり、且つ、第1フラグは1に設定され、第2フラグは0に設定される。
【0011】
本発明の一実施例において、現時点の放電深度が第1放電深度閾値以上であり、且つ第2放電深度閾値よりも小さい場合、第1フラグは1から0に変更され、第2フラグは0から1に変更され、現時点の放電深度が第2放電深度閾値以上の場合、第2フラグは1から0に変更される。
【0012】
本発明の一実施例において、直流内部抵抗の概算方法を実行する前に、開回路電圧曲線の測定プロセスを予め実行する。当該プロセスは、以下を含む。即ち、バッテリを満充電とし、一定の放電電流でバッテリの放電を行う。そして、バッテリにおける現時点の開回路電圧を所定のタイミングで測定し、バッテリにおける現時点の放電量に基づいて現時点の放電深度を取得する。また、現時点の放電時間に対応する現時点の開回路電圧及び現時点の放電深度を記録する。そして、バッテリにおける現時点の開回路電圧が放電カットオフ電圧と等しいか否かを判断し、バッテリにおける現時点の開回路電圧が放電カットオフ電圧と等しい場合には、バッテリの放電を停止して、各現時点の放電時間に対応する各現時点の開回路電圧及び各現時点の放電深度から開回路電圧曲線を作成する。また、バッテリにおける現時点の開回路電圧が放電カットオフ電圧よりも大きい場合には、バッテリの放電を継続するとともに、引き続き現時点の放電時間に対応する現時点の開回路電圧及び現時点の放電深度を記録する。
【0013】
本発明の一実施例において、直流内部抵抗概算プロセスを実行する前に、更に以下を含む。即ち、バッテリにおける現時点の電流が0よりも小さいか否かを測定する。現時点の電流が0よりも小さい場合には、バッテリが放電状態であり、直流内部抵抗概算プロセスを実行する。現時点の電流が0よりも大きいか0と等しい場合、バッテリは充電状態又は静止状態であり、バッテリが満充電か否かを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明におけるバッテリモジュールの回路ブロック図である。
図2図2は、本発明におけるバッテリの開回路電圧曲線を測定する際のフローチャートである。
図3図3は、本発明におけるバッテリの直流内部抵抗の概算方法のフローチャートである。
図4図4は、本発明におけるバッテリの開回路電圧とバッテリ電圧の曲線グラフである。
図5図5は、本発明におけるバッテリの直流内部抵抗の曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図2図3図4及び図5を参照する。これらは、それぞれ、本発明におけるバッテリモジュールの回路ブロック図、本発明におけるバッテリの開回路電圧曲線を測定する際のフローチャート、本発明におけるバッテリの直流内部抵抗の概算方法のフローチャート、本発明におけるバッテリの開回路電圧とバッテリ電圧の曲線グラフ、及び本発明におけるバッテリの直流内部抵抗の曲線グラフである。図1に示すように、本発明のバッテリモジュール100は、バッテリ10、プロセッサ11、ストレージ12、電流検出回路13及び電圧検出回路14を含む。プロセッサ11は、バッテリ10、ストレージ12、電流検出回路13及び電圧検出回路14に接続される。ストレージ12は、例えばフラッシュメモリのような不揮発性メモリであり、直流内部抵抗概算プログラム121が蓄積されている。プロセッサ11は、直流内部抵抗概算プログラム121を利用して、バッテリ10の直流内部抵抗(RDC)101の数値を概算し、且つ、概算した直流内部抵抗101をストレージ12に蓄積する。本発明の一実施例において、バッテリモジュール100には、更に、ディスプレイ200を接続可能であり、プロセッサ11が概算した直流内部抵抗(RDC)101をディスプレイ200に表示してもよい。
【0016】
また、本発明のバッテリモジュール100は、バッテリ10の直流内部抵抗(RDC)101を概算する前に、バッテリ10について開回路電圧曲線の測定プロセスを予め実行する。図2に示すように、バッテリ10の開回路電圧曲線の測定過程では、まず、ステップS301において、基準となる充電条件でバッテリ10を満充電とする。続いて、ステップS303において、微小且つ一定の放電電流(例えば、I=0.1mA)でバッテリ10の放電を行う。そして、ステップS305において、電子機器(例えば、業務用コンピュータ)は、電圧・電流測定デバイスで、放電中のバッテリ10における現時点の開回路電圧(Vocv)及び/又は一定の放電電流(I)を所定のタイミングで測定する。また、ステップS307において、電子機器は、バッテリ10における現時点の放電量(I×T)に基づいて、現時点の放電深度(Depth of Discharge,DOD)を取得する。例えば、Tは現時点の放電時間である。且つ、バッテリ10における現時点の放電時間(T)に対応する現時点の開回路電圧(Vocv)、現時点の放電深度(DOD)及び/又は一定の放電電流(I)を記録する。続いて、ステップS309において、電子機器は、バッテリ10における現時点の開回路電圧(Vocv)が放電カットオフ電圧(Cut-off discharge voltage)と等しいか否かを判断する。そして、等しくない場合には、ステップS303、S305及びS307に戻り、電子機器が引き続きバッテリ10の次の放電時間(T)に対応する開回路電圧(Vocv)、放電深度(DOD)及び/又は一定の放電電流(I)を記録する。一方、バッテリ10における現時点の開回路電圧(Vocv)が放電カットオフ電圧と等しい場合には、ステップS311を実行し、バッテリ10が放電を停止する。そして、電子機器は、各放電時間(T)に対応する開回路電圧(Vocv)及び/又は放電深度(DOD)に基づいて、図4に示すように、開回路電圧(Vocv)曲線123を作成する。本発明の一実施例において、電子機器は、開回路電圧曲線123をストレージ12に蓄積する。
【0017】
本発明の更なる実施例において、電子機器は、記録した各放電深度(DOD)に対応する開回路電圧(Vocv)の情報からルックアップテーブル125を作成し、ルックアップテーブル125をバッテリモジュール100のストレージ12に蓄積してもよい。ルックアップテーブル125は、バッテリ10の放電深度(DOD)と開回路電圧(Vocv)の対応表であり、各放電深度(DOD)に対応する開回路電圧(Vocv)が列挙されている。例えば、0mAhの放電深度は4180mVの開回路電圧に対応しており、400mAhの放電深度は3900mVの開回路電圧に対応しており、・・・、2000mAhの放電深度は3000mVの開回路電圧に対応している等となっている。
【0018】
また、プロセッサ11には、放電深度検知区間111が定義されている。この放電深度検知区間111には、第1放電深度閾値(DOD)及び第2放電深度閾値(DOD)が設定されている。第2放電深度閾値(DOD)は第1放電深度閾値(DOD)よりも大きい。例えば、第1放電深度閾値(DOD)には600mAhを選択及び設定してもよく、第2放電深度閾値(DOD)には700mAhを選択及び設定してもよい。なお、上記のプロセッサ11が放電深度検知区間111について設定する閾値は一例にすぎず、直流内部抵抗101の概算精度に応じて検知区間111の大きさ及び放電深度の閾値を適切に調整してもよい。そのほか、直流内部抵抗概算プログラム121は、第1フラグ(1ST Flag)1211及び第2フラグ(2ND Flag)1212を含む。第1フラグ(1ST Flag)1211がプロセッサ11により1に設定された場合、プロセッサ11は、バッテリ10の放電深度(DOD)が第1放電深度閾値(DOD)に達したか否かを検知する動作を有効にする。反対に、第1フラグ(1ST Flag)1211がプロセッサ11により0に設定された場合、プロセッサ11は、バッテリ10の放電深度(DOD)が第1放電深度閾値(DOD)に達したか否かを検知する当該動作を無効にする。また、第2フラグ(2ND Flag)1212がプロセッサ11により1に設定された場合、プロセッサ11は、バッテリ10の放電深度(DOD)が第2放電深度閾値(DOD)に達したか否かを検知する動作を有効にする。反対に、第2フラグ(2ND Flag)1212がプロセッサ11により0に設定された場合、プロセッサ11は、バッテリ10の放電深度(DOD)が第2放電深度閾値(DOD)に達したか否かを検知する当該動作を無効にする。
【0019】
本発明のバッテリモジュール100は、負荷装置の給電装置であるとともに、負荷装置に電気を供給した時点で、バッテリ10の直流内部抵抗(RDC)101の概算方法を実行可能である。図1図3図4及び図5に示すように、本発明におけるバッテリモジュール100のプロセッサ11が直流内部抵抗概算プログラム121によってバッテリ10の直流内部抵抗(RDC)101の概算方法を実行するステップは、次の通りである。まず、ステップS331において、プロセッサ11は、バッテリ10が放電状態か否かを検出する。例えば、プロセッサ11は、電流検出回路14を利用して、バッテリ10における現時点の電流(I)が0よりも小さいか否かを測定する。そして、現時点の電流(I)が0よりも小さい場合、プロセッサ11はバッテリ10が放電状態であると判断して、直流内部抵抗概算プロセスS35に進む。反対に、現時点の電流(I)が0よりも大きいか0と等しい場合、プロセッサ11は、バッテリ10が充電状態又は静止状態(或いは、非充放電状態と称する)と判断して、ステップS333を実行することで、バッテリ10が満充電(Full Charge)か否かを検出する。
【0020】
バッテリ10が満充電であり、バッテリ10の放電深度(DOD)が0%の場合には、続いてステップS335を実行することで、プロセッサ11は、第1フラグ(1ST Flag)1211を1に設定する一方、第2フラグ(2ND Flag)1212を0に設定して、ステップS331に戻る。反対に、バッテリ10が満充電でない場合には、ステップS337を実行することで、プロセッサ11は、第1フラグ(1ST Flag)1211を0に設定するとともに、第2フラグ(2ND Flag)1212を0に設定し、続いてステップS333に戻る。即ち、直流内部抵抗概算プロセスS35を実行する前に、バッテリ10は満充電状態となっていなければならず、且つ、第1フラグ(1ST Flag)1211は1に設定され、第2フラグ(2ND Flag)1212は0に設定される。
【0021】
続いて、直流内部抵抗概算プロセスS35では、まず、ステップS351において、プロセッサ11は、電流検出回路13及び電圧検出回路14を利用して、バッテリ10における現時点の放電電流(I)及び現時点のバッテリ電圧(V)を所定のタイミングで測定する。そして、所定のタイミングで測定した放電電流(I)に基づいて、現時点の放電深度(DOD)を算出し続ける。例えば、DOD=∫Idtである。そして、ステップS353において、プロセッサ11は、開回路電圧曲線123又はルックアップテーブル125から、現時点の放電深度(DOD)に対応する開回路電圧(Vocv)を所定のタイミングで検索する。続いて、ステップS355において、プロセッサ11は、現時点の放電深度(DOD)に対応する開回路電圧(Vocv)から現時点において測定したバッテリ電圧(V)を減じることで電圧差V=Vocv-Vを取得するとともに、電圧差Vを累加し続けて累加電圧差VD(SUM)=∫(Vocv-V)dtを取得する。
【0022】
ステップS357において、プロセッサ11は、現時点の放電深度(DOD)が第1放電深度閾値(DOD)以上か否か、及び、第1フラグ(1ST Flag)が1に設定されているか否かを判断する。そして、現時点の放電深度(DOD)が第1放電深度閾値(DOD)以上であり、第2放電深度閾値(DOD)よりも小さく、且つ、第1フラグ(1ST Flag)が1に設定されている場合には、ステップS359を実行する。これにより、プロセッサ11は、バッテリ10が第1放電深度閾値(DOD)まで放電したときに対応する第1放電時間Taを記録し、現時点の累加電圧差
【0023】
【数1】
を第1累加電圧差V=VD(SUM)とするとともに、第1フラグ(1ST Flag)の設定を1から0に変更する一方、第2フラグ(2ND Flag)の設定を0から1に変更する。そして、続いてステップS361を実行する。また、現時点の放電深度(DOD)が第1放電深度閾値(DOD)以上ではないか、第1フラグ(1ST Flag)が0に設定されている場合には、ステップS361を直接実行する。ステップS361において、プロセッサ11は、現時点の放電深度(DOD)が第2放電深度閾値(DOD)以上か否か、及び、第2フラグ(2ND Flag)が1に設定されているか否かを判断する。そして、現時点の放電深度(DOD)が第2放電深度閾値(DOD)以上であり、且つ第2フラグ(2ND Flag)が1に設定されている場合には、ステップS363を実行する。これにより、プロセッサ11は、バッテリ10が第2放電深度閾値(DOD)まで放電したときに対応する第2放電時間Tbを記録し、現時点の累加電圧差
【0024】
【数2】
を第2累加電圧差V=VD(SUM)とするとともに、第2フラグ(2ND Flag)の設定を1から0に変更する。そして、続いてステップS365を実行する。ステップS365において、プロセッサ11は、R=(V-V)/Kというように、第1累加電圧差V、第2累加電圧差V及びK値を直流内部抵抗の演算式に代入する。これにより、直流内部抵抗(RDC)101を演算可能となる。本発明の一実施例において、K値は、放電深度検知区間111におけるバッテリ10の放電量である。
【0025】
具体的には、図4及び図5に示すように、バッテリ10が第1放電深度閾値(DOD)まで放電した場合、プロセッサ11は、第1放電時間Taにおいて開回路電圧(Vocv)とバッテリ電圧(V)の間の第1累加電圧差
【0026】
【数3】
を取得する。また、バッテリ10が第2放電深度閾値(DOD)まで放電した場合、プロセッサ11は、第2放電時間Tbにおいて開回路電圧(Vocv)とバッテリ電圧(V)の間の第2累加電圧差
【0027】
【数4】
を取得する。プロセッサ11は、例えば、
【0028】
【数5】
というように、第1累加電圧差(V)から第2累加電圧差(V)を減ずるとともに、オームの法則に従って、
【0029】
【数6】
を求める。また、本発明では、バッテリ10が第1放電深度閾値(DOD)まで放電したときが第1プリセット放電時間Taに対応しており、バッテリ10が第2放電深度閾値(DOD)まで放電したときが第2プリセット放電時間Tbに対応しているため、
【0030】
【数7】
となる。つまり、放電深度検知区間111の放電量(K)は、
【0031】
【数8】
と定義される。よって、プロセッサ11は、第1累加電圧差と第2累加電圧差との差分値(V-V)を放電深度検知区間111の放電量(K)で割ることで、直流内部抵抗(RDC)101を求めることが可能である。
【0032】
総括すると、本発明におけるバッテリの直流内部抵抗の概算方法では、放電深度検知区間111を定義する。バッテリ10の放電過程において、放電深度(DOD)が放電深度検知区間111を完全に通過すると、プロセッサ11は、放電深度検知区間111における開回路電圧(Vocv)とバッテリ電圧(V)との累加電圧差(V-V)を算出するとともに、放電深度検知区間111における放電量(K)を算出する。そして、放電深度検知区間111における累加電圧差(V-V)を放電深度検知区間111における放電量(K)で割ることで、比較的正確な直流内部抵抗(RDC)101を概算可能となる。
【0033】
以上の記載は本発明の一実施例にすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。即ち、本発明の特許請求の範囲に記載する形状、構造、特徴及び精神に基づきなされる等価の変形及び改変は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0034】
100 バッテリモジュール
11 プロセッサ
111 放電深度検知区間
12 ストレージ
121 直流内部抵抗概算プログラム
1211 第1フラグ
1212 第2フラグ
123 開回路電圧曲線
125 ルックアップテーブル
13 電流検出回路
14 電圧検出回路
200 ディスプレイ
S301 ステップ
S303 ステップ
S305 ステップ
S307 ステップ
S309 ステップ
S311 ステップ
S331 ステップ
S333 ステップ
S335 ステップ
S337 ステップ
S35 ステップ
S351 ステップ
S353 ステップ
S355 ステップ
S357 ステップ
S359 ステップ
S361 ステップ
S363 ステップ
S365 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5