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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025668
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】油圧駆動弁監視装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/08 20060101AFI20240216BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20240216BHJP
   F01D 17/10 20060101ALI20240216BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F01D17/08 A
F01D17/00 S
F01D17/10 A
F01D17/10 K
F01D17/10 L
F01D25/00 G
F01D25/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109317
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022127906
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟野 領介
(72)【発明者】
【氏名】永石 晃一
(72)【発明者】
【氏名】筒井 一成
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071BA24
3G071BA25
3G071CA09
3G071EA04
3G071FA03
(57)【要約】
【課題】油圧駆動弁の故障の予兆を的確に把握することが可能な油圧駆動弁監視装置を提供する。
【解決手段】実施形態の油圧駆動弁監視装置は、タービンへ導入する作動流体の流路に設置された弁本体部と、制御油の作用によって前記弁本体部の開度を変えるために設けられた弁駆動部とを備える油圧駆動弁装置について監視を行う。油圧駆動弁監視装置は、判定部と警報部とを有する。判定部は、弁本体部の開度が変えられたときに弁本体部に流入する作動流体の圧力を計測することで得た作動流体圧力計測値の推移と、弁本体部に流入する作動流体の圧力に関して定めた作動流体圧力基準値の推移とを比較した結果に基づいて、油圧駆動弁装置に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されている。警報部は、判定部が油圧駆動弁装置に故障の予兆があると判定したときに、警報を出力するように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンへ導入する作動流体の流路に設置された弁本体部と、制御油の作用によって前記弁本体部の開度を変えるために設けられた弁駆動部とを備える油圧駆動弁装置について監視を行う油圧駆動弁監視装置であって、
前記弁本体部の開度が変えられたときに前記弁本体部に流入する前記作動流体の圧力を計測することで得た作動流体圧力計測値の推移と、前記弁本体部に流入する前記作動流体の圧力に関して定めた作動流体圧力基準値の推移とを比較した結果に基づいて、前記油圧駆動弁装置に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されている判定部と、
前記判定部が前記油圧駆動弁装置に故障の予兆があると判定したときに、警報を出力するように構成されている警報部と
を有する、
油圧駆動弁監視装置。
【請求項2】
前記弁駆動部は、
前記弁本体部を操作する操作ロッドに設けられたピストンと、
前記ピストンを内部空間に収容しており、前記内部空間が前記ピストンによって第1油圧室と第2油圧室とに区画される油筒と、
前記第1油圧室に制御油を供給することで前記弁本体部の開動作を実行すると共に、前記第1油圧室から制御油をドレン油として排出することで前記弁本体部の閉動作を実行するように、サーボ電流に応じて前記制御油の油路を切り替えるように構成された電磁弁と
を備え、
前記判定部は、
前記弁本体部の開度を変えるときに、前記電磁弁に入力される前記サーボ電流を計測することで得たサーボ電流計測値の推移と、前記電磁弁に入力される前記サーボ電流に関して定めたサーボ電流基準値の推移とを比較した結果に基づいて、前記油圧駆動弁装置に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されている、
請求項1に記載の油圧駆動弁監視装置。
【請求項3】
タービンへ導入する作動流体の流路に設置された弁本体部と、制御油の作用によって前記弁本体部の開度を変えるために設けられた弁駆動部とを備える油圧駆動弁装置について監視を行う油圧駆動弁監視装置であって、
前記油圧駆動弁装置に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されている判定部と、
前記判定部が前記油圧駆動弁装置に故障の予兆があると判定したとき、前記判定部が判定した故障の要因を特定する故障要因特定部と、
前記故障要因特定部が特定した故障の要因を表示する故障要因表示部と
を有し、
前記弁駆動部は、
前記弁本体部を操作する操作ロッドに設けられたピストンと、
前記ピストンを内部空間に収容しており、前記内部空間が前記ピストンによって第1油圧室と第2油圧室とに区画される油筒と、
前記弁本体部を閉める方向に付勢している閉鎖用バネと
を備え、前記第1油圧室に制御油を供給することで前記弁本体部の開動作を実行すると共に、前記第1油圧室から制御油をドレン油として排出することで前記弁本体部の閉動作を実行するように構成されており、
前記弁本体部は、親弁体と、子弁体とを含み、前記親弁体が全閉状態であるときに前記子弁体が開き始め、前記子弁体が全開状態になったときに前記親弁体が開き始めるように構成されており、
前記判定部は、および、前記弁本体部を開け始めるときに前記第1油圧室に加わる制御油の圧力、および、前記弁本体部の開度が変えられたときに前記弁本体部に流入する前記作動流体の圧力を計測することで得た作動流体圧力計測値の推移と、前記弁本体部に流入する前記作動流体の圧力に関して定めた作動流体圧力基準値の推移とを比較した結果に基づいて、前記判定を行うように構成されており、
前記故障要因特定部は、
前記弁本体部を開け始めるときに前記第1油圧室に加わる制御油の圧力が第1適正値よりも低い場合において、
(A)前記弁本体部を開け始めるときに前記作動流体圧力計測値が変動する値が第2適正値である場合には、前記閉鎖用バネのバネ力の低下が故障の要因であると特定し、
(B)前記第2適正値よりも低い場合には、前記子弁体に故障の要因があると特定する、
油圧駆動弁監視装置。
【請求項4】
前記故障要因特定部が特定した故障の要因が複数有るとき、当該複数の故障の要因のそれぞれについて確度を求める故障要因確度算出部
を有し、
前記故障要因表示部は、前記故障要因特定部が特定した複数の故障の要因と共に、前記故障要因確度算出部が複数の故障の要因について求めた確度を表示する、
請求項3に記載の油圧駆動弁監視装置。
【請求項5】
前記警報部が警報を出力したときに、前記弁本体部が全開状態と全閉状態とに交互に変わるように、前記弁駆動部を操作するように構成されている操作部
を備える、
請求項1に記載の油圧駆動弁監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、油圧駆動弁監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンプラントにおいては、油圧駆動弁が用いられている。油圧駆動弁は、タービンへ導入する作動流体(例えば、蒸気)の流量や圧力を制御する他に、緊急の際に作動流体の流路を遮断するために設置されている。油圧駆動弁は、制御油の作用によって開度が変わるように構成されている。
【0003】
油圧駆動弁に故障が発生した場合、タービンプラントの運転停止を計画外に実施し、油圧駆動弁の点検を行う。油圧駆動弁の点検では、油圧駆動弁を分解して内部を開放し、油圧駆動弁の各部について調査を行う。計画外に運転停止を行った期間は、油圧駆動弁の故障箇所や故障の程度に応じて、長期になる場合がある。
【0004】
このため、油圧駆動弁の故障によってタービンプラントの運転の稼働率が低下することを避けるために、油圧駆動弁の状態を監視する油圧駆動弁監視装置が提案されている。
【0005】
例えば、油圧駆動弁監視装置では、油圧駆動弁の開度の計測値と、その開度の計測値を得たときに作用させた制御油の圧力の計測値との間の関係が、予め定めた関係に対して大きく異なるときには、警報を出力する。これにより、油圧駆動弁の故障の予兆を事前に認識可能であるため、タービンプラントについて計画外の運転停止を行うことを防止することができる。また、油圧駆動弁について検知された故障の予兆から、油圧駆動弁の故障の要因を事前に把握可能であるため、油圧駆動弁の点検のためにタービンプラントの運転停止を計画した場合であっても、その計画した運転停止期間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-131923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来においては、制御油の圧力の計測値の異常を見ただけでは、故障要因の特定ができないため、油圧駆動弁の故障の予兆を十分に検知することができずに、タービンプラントの稼働率の低下を的確に防止することが困難な場合がある。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、油圧駆動弁の故障の予兆を的確に把握し、タービンプラントの稼働率の低下を効果的に防止することが可能な油圧駆動弁監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の油圧駆動弁監視装置は、タービンへ導入する作動流体の流路に設置された弁本体部と、制御油の作用によって前記弁本体部の開度を変えるために設けられた弁駆動部とを備える油圧駆動弁装置について監視を行う。油圧駆動弁監視装置は、判定部と警報部とを有する。判定部は、弁本体部の開度が変えられたときに弁本体部に流入する作動流体の圧力を計測することで得た作動流体圧力計測値の推移と、弁本体部に流入する作動流体の圧力に関して定めた作動流体圧力基準値の推移とを比較した結果に基づいて、油圧駆動弁装置に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されている。警報部は、判定部が油圧駆動弁装置に故障の予兆があると判定したときに、警報を出力するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係るタービンプラント600の構成を模式的に示す図である。
図2A図2Aは、第1実施形態に係る油圧駆動弁装置1を示す図である(開動作)。
図2B図2Bは、第1実施形態に係る油圧駆動弁装置1を示す図である(閉動作)。
図2C図2Cは、第1実施形態に係る油圧駆動弁装置1を示す図である(保持動作)。
図2D図2Dは、第1実施形態に係る油圧駆動弁装置1を示す図である(急閉動作)。
図3図3は、第1実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500において、判定部510が行う判定を説明するための図である。
図5図5は、第1実施形態の変形例1-3において、判定部510が行う判定を説明するための図である。
図6図6は、第2実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
図7図7は、第3実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
図8図8は、第4実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
[A]タービンプラント600の構成
図1は、第1実施形態に係るタービンプラント600の構成を模式的に示す図である。
【0012】
図1に示すように、タービンプラント600は、タービン610と発電機620とを備える。
【0013】
タービン610は、例えば、軸流式の蒸気タービンであって、ボイラ(図示省略)から作動流体ST(蒸気)が入口配管P600を介して導入されることによって、タービンロータが回転するように構成されている。
【0014】
発電機620は、タービン610のタービンロータに回転軸が連結されており、タービンロータの回転によって駆動して電力を出力するように構成されている。
【0015】
入口配管P600には、止め弁V601と加減弁V602とが設けられている。止め弁V601は、主に、タービン610に導入される作動媒体の流れを非常時に止めるために設置されている。加減弁V602は、主に、タービン610に導入される作動媒体の流量を調整するために設置されている。
【0016】
[B]油圧駆動弁装置1の構成
図2Aから図2Dは、第1実施形態に係る油圧駆動弁装置1を示す図である。
【0017】
油圧駆動弁装置1は、例えば、止め弁V601(図1参照)であって、図2Aから図2Dに示すように、弁本体部10と弁駆動部20とを備える。油圧駆動弁装置1については、例えば、加減弁V602(図1参照)として使用してもよい。
【0018】
図2Aから図2Dでは、弁本体部10に関して、鉛直方向zに沿った鉛直面(xz面)の断面を模式的に示している。ここでは、図2Aは、弁駆動部20が弁本体部10について、通常の開動作を行う場合の様子を示している。図2Bは、弁駆動部20が弁本体部10について、通常の閉動作を行う場合の様子を示している。図2Cは、弁駆動部20が弁本体部10について、通常の閉動作および通常の開動作を実施せずに、開度の保持動作を行う場合の様子を示している。図2Dは、弁駆動部20が弁本体部10について、通常の閉動作よりも急速に閉める急閉動作を行う場合の様子を示している。
【0019】
油圧駆動弁装置1を構成する各部の詳細について、順次、説明する。
【0020】
[B-1]弁本体部10
弁本体部10は、弁箱11と弁座13と弁棒14と弁体15とを有し、弁駆動部20によって弁棒14が移動することによって、開度が変動するように構成されている。弁本体部10は、タービンプラント(図示省略)において、ボイラ(図示省略)からタービン(図示省略)へ供給される作動流体ST(例えば、蒸気)の流路に設置されており、作動流体STの流れを制御するために設けられている。
【0021】
[B-1-1]弁箱11
弁箱11は、作動流体STが外部から内部へ流入する弁箱入口11Aと、作動流体STが内部から外部へ流出する弁箱出口11Bとが形成されている。
【0022】
[B-1-2]弁座13
弁座13は、弁箱11の内部に固定されている。弁座13は、弁本体部10が開けられたときに弁体15が離間し、弁本体部10が閉められたときに弁体15が接する部分を含むように構成されている。
【0023】
[B-1-3]弁棒14
弁棒14は、棒状体であって、弁箱11の下部に形成された貫通孔を貫くように設置されている。弁箱11の貫通孔は、管状のブッシュ14Bが設置されており、弁棒14は、ブッシュ14Bを介して、弁箱11の貫通孔を貫通している。弁棒14は、軸が鉛直方向zに沿っており、その軸が沿った鉛直方向zにおいて移動するように設けられている。
【0024】
[B-1-4]弁体15
弁体15は、弁箱11の内部において弁棒14の一端(図では上端)に設けられており、弁棒14と共に鉛直方向zにおいて移動する。弁体15は、弁本体部10が開けられるときには上方へ移動する。これに対して、弁本体部10が閉められるときには、弁体15は、下方へ移動する。
【0025】
本実施形態では、弁体15は、親弁体151と子弁体152とを含む。
【0026】
親弁体151は、弁箱11の内部において弁棒14に摺動可能に設けられ、全閉状態であるときに弁座13に接触するように構成されている。子弁体152は、弁箱11の内部において弁棒14に固定され、全閉状態であるときに親弁体151に接触するように構成されている。
【0027】
ここでは、親弁体151が全閉状態であるときに子弁体152が開き始め、子弁体152が全開状態になったときに親弁体151が開き始める。弁本体部10が全閉状態であるとき、子弁体152および親弁体151の両者が全閉状態である。そして、弁本体部10が全開状態であるとき、子弁体152および親弁体151の両者が全開状態である。
【0028】
[B-2]弁駆動部20
弁駆動部20は、油圧駆動部30と油圧回路部50とを含み、油圧駆動部30が油圧回路部50によって駆動することにより、弁本体部10の開閉動作を行うように構成されている。弁駆動部20では、制御装置(図示省略)が油圧回路部50の動作を制御することで、油圧駆動部30の動作が制御される。
【0029】
[B-2-1]油圧駆動部30
弁駆動部20において、油圧駆動部30は、油圧駆動装置であって、鉛直方向zにおいて弁本体部10の下方に設置されている。油圧駆動部30は、弁本体部10を操作する操作ロッド31にピストン35が設けられており、そのピストン35が油筒32に収容されている。油圧駆動部30は、油筒32の内部においてピストン35が制御油の作用によって駆動することで、操作ロッド31が弁本体部10を操作するように構成されている。
【0030】
[B-2-1-1]操作ロッド31
油圧駆動部30のうち、操作ロッド31は、棒状体であって、軸が鉛直方向zに沿っている。操作ロッド31は、弁棒14の軸と同軸であって、一端(上端)が弁棒14に連結されている。操作ロッド31は、他端(下端)に開度検出器DK30が設けられている。そして、操作ロッド31は、中央部分にピストン35が設けられている。
【0031】
[B-2-1-2]油筒32
油圧駆動部30のうち、油筒32は、内部空間C32にピストン35を収容している。油筒32の内部空間C32は、ピストン35によって、第1油圧室C32aと第2油圧室C32bとに区画されている。また、油筒32は、第1制御油ポートP32aと第2制御油ポートP32bとが形成されている。
【0032】
第1油圧室C32aは、下部油圧室であって、油筒32の内部空間C32においてピストン35の下方に位置している。第1油圧室C32aには、第1制御油ポートP32aが設けられている。
【0033】
第2油圧室C32bは、上部油圧室であって、油筒32の内部空間C32においてピストン35の上方に位置している。第2油圧室C32bは、第2制御油ポートP32bが設けられている。
【0034】
[B-2-1-3]ピストン35
油圧駆動部30のうち、ピストン35は、油筒32の内部空間C32において、制御油の作用により鉛直方向zに摺動するように構成されている。
【0035】
具体的には、ピストン35は、弁本体部10を開ける場合には、鉛直方向zにおいて上方に移動するように、油圧回路部50によって制御される。この場合には、油圧回路部50において、第1油圧室C32aに制御油が供給され、第2油圧室C32bから制御油がドレン油として排出されることによって、ピストン35が上方に移動する。
【0036】
弁本体部10を閉める場合には、ピストン35は、鉛直方向zにおいて下方に移動するように、油圧回路部50によって制御される。この場合には、油圧回路部50において、第1油圧室C32aから制御油がドレン油として排出され、第2油圧室C32bに制御油が供給されることによって、ピストン35が下方に移動する。そして、弁本体部10の開度を保持させるときには、ピストン35が鉛直方向zに同じ位置で停止した状態になるように、第1油圧室C32aの圧力と第2油圧室C32bの圧力の調整が行われる。
【0037】
[B-2-1-4]閉鎖用バネ82
油圧駆動部30には、更に閉鎖用バネ82が設けられている。閉鎖用バネ82は、たとえば、金属線が螺旋状に巻かれたコイルスプリングであって、鉛直方向zにおいて弁箱11と油筒32との間に設置されたバネ箱81の内部に収容されている。閉鎖用バネ82は、鉛直方向zにおいて操作ロッド31の内部を貫通するように設置されている。閉鎖用バネ82は、ピストン35により操作される操作ロッド31によって伸縮するように構成されている。
【0038】
ここでは、操作ロッド31には、バネ受け31Rが固定されている。そして、バネ受け31Rよりも上方には、固定プレート83がバネ箱81の内周面に固定されている。閉鎖用バネ82は、バネ受け31Rと固定プレート83との間に介在しており、操作ロッド31の移動に伴ってバネ受け31Rの位置が変わることによって、操作ロッド31の軸に沿った鉛直方向zにおいて変形する。閉鎖用バネ82は、バネ受け31Rを下方へ押し付けることによって、弁本体部10を閉める方向に付勢している。
【0039】
[B-2-2]油圧回路部50
弁駆動部20において、油圧回路部50は、電磁弁V10と急閉用電磁弁V20とダンプ弁V30とを有し、複数の油路L10,L11,L12,L13,L20,L21,L22,L31,L32,L33を介して、各部が接続されている。
【0040】
詳細については後述するが、油圧回路部50は、電磁弁V10を用いて、弁本体部10について、通常の開動作(図2A)、通常の閉動作(図2B)、および、開度の保持動作(図2C)を行うように構成されている。また、油圧回路部50は、急閉用電磁弁V20およびダンプ弁V30を用いて、弁本体部10について、通常の閉動作よりも急速に閉める急閉動作(図2D)を行うように構成されている。
【0041】
[B-2-2-1]油路
油路L10は、一端が油筒32の第1制御油ポートP32aに接続されている。
【0042】
油路L11は、一端がダンプ弁V30のAポートに接続され、他端が電磁弁V10のAポートに接続されている。油路L11には、分岐部J11が設けられており、分岐部J11には、油路L10の他端が接続されている。
【0043】
油路L12は、一端が電磁弁V10のPポートに接続され、他端が制御油の供給源(図示省略)に接続されている。油路L12には、分岐部J12が設けられている。
【0044】
油路L20は、一端が油筒32の第2制御油ポートP32bに接続されている
【0045】
油路L21は、一端がダンプ弁V30のBポートに接続されている。油路L21には、分岐部J21が設けられており、分岐部J21には、油路L20の他端が接続されている。
【0046】
油路L22は、一端が電磁弁V10のEポートに接続され、他端がドレン油の排出先(図示省略)に接続されている。油路L22には、分岐部J22aと分岐部J22bとが、電磁弁V10側からドレン油の排出先側へ向かって、順次、設けられている。分岐部J22aには、油路L21の他端が接続されている。
【0047】
油路L31は、一端が油路L12の分岐部J12に接続され、他端が急閉用電磁弁V20のPポートに接続されている。
【0048】
油路L32は、一端がダンプ弁V30のパイロットポートXに接続され、他端が急閉用電磁弁V20のAポートに接続されている。
【0049】
油路L33は、一端が油路L22の分岐部J22bに接続され、他端が急閉用電磁弁V20のEポートに接続されている。
【0050】
[B-2-2-2]電磁弁V10
油圧回路部50のうち、電磁弁V10は、サーボ弁であって、制御装置(図示省略)から出力された制御信号(サーボ電流)に基づいて動作する。
【0051】
ここでは、電磁弁V10は、弁本体部10に関して通常の開動作を行う際には、図2Aに示すように、PポートとAポートとの間を連通させる。つまり、第1油圧室C32aと制御油の供給源(図示省略)との間を連通させて、制御油を第1油圧室C32aに供給するように、電磁弁V10が動作する。
【0052】
これに対して、弁本体部10について通常の閉動作を行う際には、図2Bに示すように、電磁弁V10は、AポートとEポートとの間を連通させる。つまり、第1油圧室C32aとドレン油の排出先(図示省略)との間を連通させて、第1油圧室C32aから制御油をドレン油として排出するように、電磁弁V10が動作する。
【0053】
弁本体部10について急閉動作を行う際においても、通常の閉動作を行う場合と同様に、図2Dに示すように、電磁弁V10は、AポートとEポートとの間を連通させる。
【0054】
弁本体部10の開度を保持する保持動作を行う場合には、図2Cに示すように、電磁弁V10は、PポートとAポートとの間を連通させずに遮断すると共に、AポートとEポートとの間を連通させずに遮断する。つまり、第1油圧室C32aと制御油の供給源(図示省略)との間を遮断すると共に、第1油圧室C32aとドレン油の排出先(図示省略)との間を遮断するように、電磁弁V10が動作する。
【0055】
[B-2-2-3]急閉用電磁弁V20
油圧回路部50のうち、急閉用電磁弁V20は、トリップ弁であって、制御装置(図示省略)から出力された制御信号に基づいて動作する。
【0056】
ここでは、急閉用電磁弁V20は、弁本体部10に関して、通常の開動作、通常の閉動作、および、開度を保持する保持動作を行う際には、図2A図2B、および、図2Cに示すように、励磁状態であって、PポートとAポートとの間を連通させる。つまり、ダンプ弁V30のパイロットポートXと制御油の供給源(図示省略)との間を連通させて、制御油をダンプ弁V30のパイロットポートXに供給することで、ダンプ弁V30を閉じる。
【0057】
これに対して、弁本体部10について急閉動作を行う際においては、図2Dに示すように、急閉用電磁弁V20は、無励磁状態になり、AポートとEポートとの間を連通させる。つまり、ダンプ弁V30のパイロットポートXとドレン油の排出先(図示省略)との間を連通させて、ダンプ弁V30のパイロットポートXからドレン油を排出することで、ダンプ弁V30を開ける。
【0058】
[B-2-2-4]ダンプ弁V30
油圧回路部50のうち、ダンプ弁V30は、上記したように、急閉用電磁弁V20の動作に応じて、開閉動作が行われるように構成されている。
【0059】
[B-3]検出器
本実施形態の油圧駆動弁装置1には、検出器として、圧力検出器D11A、開度検出器DK30、振動検出器DS30、サーボ電流検出器DV10、油圧検出器DL10、油圧検出器DL12、および、油圧検出器DL32が設置されている。
【0060】
[B-3-1]圧力検出器D11A
圧力検出器D11Aは、弁本体部10に流入する作動流体STの圧力を計測するために、弁本体部10を構成する弁箱11の弁箱入口11Aに設置されている。
【0061】
[B-3-2]開度検出器DK30
開度検出器DK30は、弁本体部10の開度を検出するために、操作ロッド31の他端(下端)に設置されている。
【0062】
[B-3-3]振動検出器DS30
振動検出器DS30は、弁本体部10を構成する弁棒14の振動を検出するために、油筒32に設置されている。
【0063】
[B-3-4]サーボ電流検出器DV10
サーボ電流検出器DV10は、サーボ弁である電磁弁V10に制御信号として入力されるサーボ電流を検出するために、電磁弁V10に設置されている。
【0064】
[B-3-5]油圧検出器DL10
油圧検出器DL10(油筒油圧検出器)は、例えば、圧力トランスミッタであって、第1油圧室C32aに加わる制御油の圧力を計測するために、油路L10に設置されている。
【0065】
[B-3-6]油圧検出器DL12
油圧検出器DL12は、例えば、圧力トランスミッタであって、制御油の供給源(図示省略)から供給される制御油の圧力を計測するために、油路L12に設置されている。
【0066】
[B-3-7]油圧検出器DL32
油圧検出器DL32(トリップ系統油圧検出器)は、例えば、圧力トランスミッタであって、ダンプ弁V30のパイロットポートXに加わる制御油の圧力を計測するために、油路L32に設置されている。
【0067】
[C]油圧駆動弁監視装置500の構成
図2Aから図2Dに示すように、本実施形態においては、油圧駆動弁装置1について監視を行うために、油圧駆動弁監視装置500が設けられている。
【0068】
図3は、第1実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
【0069】
図3に示すように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500は、判定部510と警報部520とを有しており、弁本体部10および弁駆動部20を備える油圧駆動弁装置1(図2Aから図2D参照)について監視を行うように構成されている。油圧駆動弁監視装置500は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって各部が動作するように構成されている。
【0070】
また、油圧駆動弁監視装置500は、油圧駆動弁装置1(図2Aから図2D参照)に設けられた各検出器から出力された検出データを受信するように構成されている。具体的には、油圧駆動弁監視装置500は、図3に示すように、圧力検出器D11Aから出力された検出データSD11A、開度検出器DK30から出力された検出データSDK30、振動検出器DS30から出力された検出データSDS30、サーボ電流検出器DV10から出力された検出データSDV10、油圧検出器DL10から出力された検出データSDL10、油圧検出器DL12から出力された検出データSDL12、および、油圧検出器DL32から出力された検出データSDL32を受信する。そして、油圧駆動弁監視装置500が受信した検出データは、時間軸に関連付けて記録される。
【0071】
本実施形態の油圧駆動弁監視装置500を構成する各部に関して説明する。
【0072】
[C-1]判定部510
油圧駆動弁監視装置500において、判定部510は、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されている。
【0073】
図4は、第1実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500において、判定部510が行う判定を説明するための図である。
【0074】
図4では、弁本体部10(図2A参照)について全閉状態から開度を増加させた場合(つまり、全閉状態の時点t0から弁を開け始めた場合)に関して図示している。図4において、縦軸は、作動流体圧力Pを示し、横軸は、時間tを示している。また、図4において、破線は、弁本体部10に流入する作動流体の圧力を計測することで得た作動流体圧力計測値の推移PDを示し、実線は、弁本体部10に流入する作動流体の圧力に関して定めた作動流体圧力基準値の推移PKを示している。
【0075】
作動流体圧力計測値の推移PD(破線)は、弁本体部10の開度を全閉状態から増加させたときに(つまり、弁を開け始めたとき)、圧力検出器D11Aが作動流体圧力Pを計測して出力した検出データSD11Aの推移に相当し、図4では、油圧駆動弁装置1に異常が有るときの状態を示している。油圧駆動弁装置1の異常は、例えば、弁本体部10の弁体15を構成する親弁体151と子弁体152との少なくとも一方において、リークが生じている場合等である。
【0076】
作動流体圧力基準値の推移PK(実線)は、油圧駆動弁装置1に異常が無いときに弁本体部10の開度を全閉状態から増加させたときの作動流体圧力Pの推移に相当し、予め記憶されている。
【0077】
油圧駆動弁装置1が正常な状態である場合、作動流体圧力基準値の推移PK(実線)から判るように、作動流体圧力Pの値は、PK0からPK1へ減少した後に、PK1からPK0へ戻る。油圧駆動弁装置1が正常な状態である場合に、作動流体圧力Pが変動する値は、ΔPKである(ΔPK=PK0-PK1)。油圧駆動弁装置1が異常な状態である場合(例えば、弁本体部10の弁体15においてリークが生じている場合)に、作動流体圧力Pが変動する値は、作動流体圧力計測値の推移PD(破線)から判るように、ΔPDである(ΔPD=PD0-PD1)。
【0078】
図4において、作動流体圧力計測値の推移PD(破線)と作動流体圧力基準値の推移PK(実線)とを比較することで判るように、油圧駆動弁装置1が異常な状態である場合には、油圧駆動弁装置1が正常な状態である場合よりも、作動流体圧力Pが変動する値が小さい(つまり、ΔPD<ΔPK)。
【0079】
このため、判定部510は、弁本体部10の開度を全閉状態から増加させたときに作動流体圧力Pが変動する値ΔPDを作動流体圧力計測値の推移PD(破線)から求め、その値ΔPDに基づいて、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があるか否かの判定を行う。例えば、判定部510は、ΔPKに対するΔPDの割合値(PS=ΔPD/ΔPK)が、予め設定した閾値Pthよりも小さい場合(PS<Pth)に、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定する。一方で、判定部510は、ΔPKに対するΔPDの割合値(PS=ΔPD/ΔPK)が、予め設定した閾値Pth以上である場合(PS≧Pth)には、油圧駆動弁装置1に故障の予兆がなく、正常であると判定する。
【0080】
[C-2]警報部520
油圧駆動弁監視装置500において、警報部520は、判定部510が油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定したときに、警報を出力するように構成されている。
【0081】
警報部520は、例えば、ディスプレイを含み、油圧駆動弁装置1に故障の予兆がある旨の警報をディスプレイに表示する。その他、警報部520は、例えば、警報ランプの点灯や警報音の出力等によって、警報を行うように構成されていてもよい。
【0082】
[D]まとめ
以上のように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500において、判定部510は、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があるか否かの判定を行う。ここでは、判定部510は、弁本体部10の開度が変えられたときに弁本体部10に流入する作動流体の圧力を計測することで得た作動流体圧力計測値の推移PDと、弁本体部10に流入する作動流体の圧力に関して定めた作動流体圧力基準値の推移PKとを比較した結果に基づいて、上記の判定を実行する。そして、警報部520は、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定部510が判定したときに、警報を出力する。
【0083】
このため、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500によれば、油圧駆動弁装置1の故障の予兆を容易に把握することができるため、タービンプラントの稼働率の低下を的確に防止することが可能である。
【0084】
[E]変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0085】
[E-1]変形例1-1
本実施形態の油圧駆動弁監視装置500は、判定部510が判定の際に用いる閾値Pthの設定値を操作に応じて変更可能なように構成されていてもよい。これにより、故障の予兆の検出感度をタービンプラントの運用者が適宜調整することができる。
【0086】
[E-2]変形例1-2
また、判定部510は、上記の判定を行う際に、振動検出器DS30から出力された検出データSDS30を補助的に利用するように構成されていてもよい。弁本体部10の弁体15においてリークが生じている場合、そのリークした流体によって弁棒14が振動する場合がある。このため、振動検出器DS30から出力された検出データSDS30も利用することで、判定部510は、リークの発生有無をより高精度に判定することができる。
【0087】
[E-3]変形例1-3
図5は、第1実施形態の変形例1-3において、判定部510が行う判定を説明するための図である。
【0088】
図5では、弁本体部10(図2A参照)を全閉状態から全開状態に変えた後に(t2からt4の間)、全開状態から全閉状態へ戻す場合(t5からt6の間)に関して図示している。図5において、縦軸は、電磁弁V10(サーボ弁)に制御信号として入力されるサーボ電流値C(mA)を示し、横軸は、時間tを示している。また、図5において、破線は、電磁弁V10(サーボ弁)に制御信号として入力されるサーボ電流を計測することで得たサーボ電流計測値の推移CDを示し、実線は、電磁弁V10(サーボ弁)に制御信号として入力されるサーボ電流に関して定めたサーボ電流基準値の推移CKを示している。
【0089】
サーボ電流計測値の推移CD(破線)は、弁本体部10を全閉状態から全開状態に変えた後に全開状態から全閉状態へ戻すときに、サーボ電流検出器DV10がサーボ電流値Cを計測して出力した検出データSDV10の推移に相当し、図5では、油圧駆動弁装置1に異常が有るときの状態を示している。
【0090】
サーボ電流基準値の推移CK(実線)は、油圧駆動弁装置1に異常が無い場合に、弁本体部10を全閉状態から全開状態に変えた後に全開状態から全閉状態へ戻すときのサーボ電流値Cの推移に相当し、予め記憶されている。
【0091】
油圧駆動弁装置1が正常な状態である場合、サーボ電流基準値の推移CK(実線)から判るように、サーボ電流値Cは、全閉状態の弁本体部10を全開状態にする指令が入力された時点t2以降に、ヌルバイアスをキャンセルするように増加する。ヌルバイアスとは、サーボ電流が喪失したときに、弁本体部10をフェールセーフ側(全閉方向)に制御するために与えるバイアスである。そして、ヌルバイアスがキャンセルされた時点t3以降は、一定のサーボ電流値Cが保持され、全閉状態の弁本体部10が全開状態になるように一定の速度で開く。そして、弁本体部10が全開状態になった時点t4以降は、サーボ電流値Cが最大値に増加し、弁本体部10が全開状態を保持する。
【0092】
そして、全開状態の弁本体部10を全閉状態にする指令が入力された時点t5以降は、サーボ電流値Cが減少し、弁本体部10の閉動作が開始する。そして、弁本体部10を全閉状態になった時点t6以降は、元の値へ戻る。
【0093】
サーボ電流基準値の推移CK(実線)から判るように、油圧駆動弁装置1が正常な状態である場合に、全閉状態の弁本体部10を全開状態にするときのサーボ電流値Cは、CK1であり、全開状態の弁本体部10を全閉状態にするときのサーボ電流値Cは、CK2である。
【0094】
これに対して、油圧駆動弁装置1に異常が有る場合には、サーボ電流計測値の推移CD(破線)から判るように、全閉状態の弁本体部10を全開状態にするときのサーボ電流値Cは、正常な値CK1よりも大きい値CD1である(CK1<CD1)。そして、全開状態の弁本体部10を全閉状態にするときのサーボ電流値Cは、正常な値CK2よりも大きい値CD2である(CK2<CD2)。
【0095】
このため、判定部510は、サーボ電流計測値の推移CD(破線)に基づいて、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があるか否かの判定を行う。例えば、判定部510は、全閉状態の弁本体部10を全開状態にするときにサーボ電流値Cについて計測した値CD1と、正常な値CK1との差分値ΔC1(ΔC1=CD1-CK1)が、予め設定した閾値Cth1よりも大きい場合(ΔC1>Cth1)に、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定する。同様に、判定部510は、全開状態の弁本体部10を全閉状態にするときにサーボ電流値Cについて計測した値CD2と、正常な値CK2との差分値ΔC2(ΔC2=CD2-CK2)が、予め設定した閾値Cth2よりも大きい場合(ΔC2>Cth2)に、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定する。
【0096】
このように、本変形例では、判定部510は、弁本体部10の開度を変えるときに、電磁弁V10に入力されるサーボ電流を計測することで得たサーボ電流計測値の推移と、電磁弁V10に入力されるサーボ電流に関して定めたサーボ電流基準値の推移とを比較した結果に基づいて、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があるか否かの判定を行う。そして、判定部510が油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定したときには、警報部520が警報を出力する。このため、本変形例によれば、上記実施形態と同様に、油圧駆動弁装置1の故障の予兆を容易に把握することができるため、タービンプラントの稼働率の低下を的確に防止することが可能である。
【0097】
なお、上記の他に、判定部510は、弁本体部10の開度を計測することで得た開度計測値と第1油圧室C32aにおける制御油の圧力を計測することで得た制御油圧力計測値との間の関係と、弁本体部10の開度について定めた開度基準値と第1油圧室C32aにおける制御油の圧力について定めた制御油圧力基準値との間の関係とを比較した結果に基づいて、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されていてもよい。
【0098】
<第2実施形態>
[A]構成
図6は、第2実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
【0099】
図6に示すように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500は、第1実施形態の場合(図3を参照)と異なり、故障要因特定部530と故障要因表示部540とを更に有する。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、説明を適宜省略している。
【0100】
[A-1]判定部510
本実施形態において、判定部510は、弁本体部10の開度が変えられたときに弁本体部10に流入する作動流体の圧力を計測することで得た作動流体圧力計測値の推移と、弁本体部10に流入する作動流体の圧力に関して定めた作動流体圧力基準値の推移とを比較した結果の他に、弁本体部10を開け始めるときに第1油圧室C32aに加わる制御油の圧力PXに基づいて、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があるか否かの判定を行うように構成されている。
【0101】
具体的には、判定部510は、弁本体部10を開け始めるときに第1油圧室C32aに加わる制御油の圧力PXが、予め定めた適正値(閾値PXth)よりも低い場合には(PX<PXth)、故障の予兆があると判定する。ただし、制御油の圧力だけでは故障の原因が複数ありうるため、次に説明する故障要因特定部530において、作動流体圧力計測値が変動する値が適正値かどうかにより、故障要因を特定する。
【0102】
[A-2]故障要因特定部530
故障要因特定部530は、判定部510が油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定したとき、判定部510が判定した故障の要因を特定するように構成されている。
【0103】
ここでは、故障要因特定部530は、例えば、油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定したときの検知データの内容と、油圧駆動弁装置1の異常の要因とを関連付けたルックアップテーブルを記憶しており、そのルックアップテーブルを用いて、検知データから故障の要因を特定する。
【0104】
例えば、弁本体部10を開け始めるときに油圧検出器DL10(油筒油圧検出器)が第1油圧室C32aに加わる制御油の圧力について計測した検出データSDL10が適正値(第1適正値PXth)よりも低い場合(PX<PXth)であって、
(A)作動流体圧力計測値Pが変動する値ΔPD(図4参照)が適正値(第2の適正値)である場合には、閉鎖用バネ82のバネ力の低下が故障の要因であると特定し、
(B)作動流体圧力計測値が変動する値ΔPD(図4参照)が適正値(第2の適正値)よりも低い場合には、子弁体152に故障の要因があると特定する。
【0105】
また、弁本体部10について開動作を行うときに、油圧検出器DL10が計測した検出データSDL10が適正値であるにも関わらずに、サーボ電流値Cについて計測した値CD1と正常な値CK1との差分値ΔC1が閾値Cth1よりも大きい場合には(図5参照)、電磁弁V10(サーボ弁)に故障の要因があると、故障要因特定部530が特定する。同様に、弁本体部10について閉動作を行うときに、油圧検出器DL10が計測した検出データSDL10が適正値であるにも関わらずに、サーボ電流値Cについて計測した値CD2と正常な値CK2との差分値ΔC2が閾値Cth2よりも大きい場合には(図5参照)、電磁弁V10(サーボ弁)に故障の要因があると、故障要因特定部530が特定する。
【0106】
[A-3]故障要因表示部540
故障要因表示部540は、故障要因特定部530が特定した故障の要因を表示するように構成されている。
【0107】
故障要因表示部540は、例えば、ディスプレイを含み、故障要因特定部530が特定した故障の要因をディスプレイに表示する。ここでは、故障要因表示部540が故障の要因を表示するディスプレイは、警報部520が警報を行うディスプレイと同一であっても構わない。
【0108】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500では、判定部510が判定した故障の要因を故障要因特定部530が特定し、その故障要因特定部530が特定した故障の要因を故障要因表示部540が表示する。このため、本実施形態では、故障の要因を容易に把握することができる。
【0109】
<第3実施形態>
[A]構成
図7は、第3実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
【0110】
図7に示すように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500は、第2実施形態の場合(図6を参照)と異なり、故障要因確度算出部531を更に有する。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第2実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、説明を適宜省略している。
【0111】
故障要因確度算出部531は、故障要因特定部530が特定した故障の要因が複数有るとき、当該複数の故障の要因のそれぞれについて確度(信頼度)を求めるように構成されている。
【0112】
ここでは、故障要因確度算出部531は、複数の検出データに基づいて確度(信頼度)を求める。例えば、故障要因確度算出部531は、複数の検出データに基づいて複数の故障の予兆があると判定されたときにおいて、その複数の故障の要因が重複している場合には、重複している数に応じて高い確度(信頼度)を算出する。
【0113】
具体的には、圧力検出器D11Aから出力された検出データSD11Aに基づいて油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定されたときの故障の要因と、サーボ電流検出器DV10から出力された検出データSDV10に基づいて油圧駆動弁装置1に故障の予兆があると判定されたときの故障の要因とが重複している場合、その重複している故障の要因の確度は高くなる。
【0114】
そして、故障要因表示部540は、故障要因特定部530が特定した複数の故障の要因と共に、故障要因確度算出部531が複数の故障の要因について求めた確度を表示する。
【0115】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500では、故障の要因について求めた確度が表示されるため、故障への対応を的確に準備することができる。
【0116】
<第4実施形態>
[A]構成
図8は、第4実施形態に係る油圧駆動弁監視装置500を示す機能ブロック図である。
【0117】
図8に示すように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500は、第3実施形態の場合(図7を参照)と異なり、操作部550を更に有する。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第3実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、説明を適宜省略している。
【0118】
操作部550は、警報部520が警報を出力したときに、弁本体部10が全開状態と全閉状態とに交互に変わるように、弁駆動部20を操作するように構成されている。
【0119】
ここでは、操作部550は、制御装置(図示省略)から電磁弁V10に制御信号(サーボ電流)を出力させることで、弁本体部10を全開状態と全閉状態とに所定の周期で交互に変える。なお、操作部550は、タービンプラント600を構成する発電機620(図1参照)の発電出力量が予め定めた値以下であって、圧力検出器D11Aで計測される作動流体STの圧力が単位時間(1秒)当たりに変動する幅が予め定めた値以下である場合に、上記の動作を実行する。
【0120】
そして、弁本体部10が全開状態と全閉状態とに交互に変わるときに、故障の予兆があるか否かの判定を判定部510が行い、故障の要因を故障要因特定部530が特定する等の処理を実行する。
【0121】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の油圧駆動弁監視装置500では、警報部520が警報を出力したときに、弁本体部10が全開状態と全閉状態とに交互に変わるように、操作部550が弁駆動部20を操作し、故障の予兆の判定や故障の要因の特定を実行する。このため、本実施形態では、故障を的確に把握することができる。
【0122】
[C]変形例
なお、操作部550は、弁本体部10を全開状態と全閉状態とに交互に変える動作を実行する前に、本動作の実行を推奨する指示をディスプレイに表示するように構成されていてもよい。
【0123】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1:油圧駆動弁装置、10:弁本体部、11:弁箱、11A:弁箱入口、11B:弁箱出口、13:弁座、14:弁棒、14B:ブッシュ、15:弁体、20:弁駆動部、30:油圧駆動部、31:操作ロッド、31R:バネ受け、32:油筒、35:ピストン、50:油圧回路部、81:バネ箱、82:閉鎖用バネ、83:固定プレート、151:親弁体、152:子弁体、500:油圧駆動弁監視装置、510:判定部、520:警報部、530:故障要因特定部、531:故障要因確度算出部、540:故障要因表示部、550:操作部、600:タービンプラント、610:タービン、620:発電機、C32:内部空間、C32a:第1油圧室、C32b:第2油圧室、D11A:圧力検出器、DK30:開度検出器、DL10:油圧検出器、DL12:油圧検出器、DL32:油圧検出器、DS30:振動検出器、DV10:サーボ電流検出器、J11:分岐部、J12:分岐部、J21:分岐部、J22a:分岐部、J22b:分岐部、L10:油路、L11:油路、L12:油路、L20:油路、L21:油路、L22:油路、L31:油路、L32:油路、L33:油路、P32a:第1制御油ポート、P32b:第2制御油ポート、P600:入口配管、V10:電磁弁、V20:急閉用電磁弁、V30:ダンプ弁、V601:止め弁、V602:加減弁
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8