(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025669
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】圧縮機および冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20240216BHJP
F04C 18/32 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F04C29/02 311C
F04C18/32
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109532
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022127927
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昴平
(72)【発明者】
【氏名】本田 啓太
(72)【発明者】
【氏名】関口 展平
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA31
3H129AB03
3H129BB01
3H129BB50
3H129CC03
3H129CC04
3H129CC34
(57)【要約】
【課題】ブッシュの摺動性の低下を抑制できる圧縮機を提案する
【解決手段】圧縮機(CMP)は、シリンダ(50,70)に設けられた背圧空間(55,75)を備える。背圧空間(55,75)は、径方向内側の端部がブレード空間(52,72)の径方向外側の端部に接続されると共に、シリンダ室(150,170)およびブレード空間に連通し、ブレード(51b,71b)が進退する。背圧空間(55,75)の第1端板(40)側の開口は第1端板(40)でシールされている一方、背圧空間(55,75)の第2端板(80)側の開口は第2端板(80)でシールされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(50,70,1050,1070)と、
上記シリンダ(50,70,1050,1070)の軸方向の一方側に配置された第1端板(40,1040)と、
上記シリンダ(50,70,1050,1070)の軸方向の他方側に配置された第2端板(80,1080)と、
上記シリンダ(50,70,1050,1070)の内周面で確定されるシリンダ室(150,170,1150,1170)と、
上記シリンダ室(150,170,1150,1170)に収容され、上記シリンダ(50,70,1050,1070)の内周面に沿って揺動運動するピストン(51a,71a)と、
上記ピストン(51a,71a)と共に、上記シリンダ室(150,170,1150,1170)を高圧側領域(150b,170b,1150b,1170b)と低圧側領域(150a,170a,1150a,1170a)とに区画するブレード(51b,71b)と、
上記シリンダ(50,70,1050,1070)に設けられて、径方向内側の端部が上記シリンダ室(150,170,1150,1170)に接続されると共に、上記シリンダ室(150,170,1150,1170)に連通し、上記ブレード(51b,71b)が進退するブレード空間(52,72,1052,1072)と、
上記シリンダ(50,70,1050,1070)に設けられて、径方向内側の端部が上記ブレード空間(52,72,1052,1072)の径方向外側の端部に接続されると共に、上記シリンダ室(150,170,1150,1170)および上記ブレード空間(52,72,1052,1072)に連通し、上記ブレード(51b,71b)が進退する背圧空間(55,75,1055,1075)と、
上記ブレード空間(52,72,1052,1072)に配置され、上記ブレード(51b,71b)を挟む第1,第2ブッシュ(53,73,1053,1073,54,74,1054,1074,2054,2074)と
を備え、
上記背圧空間(55,75,1055,1075)の上記第1端板(40,1040)側の開口は上記第1端板(40,1040)でシールされている一方、上記背圧空間(55,75,1055,1075)の上記第2端板(80,1080)側の開口は上記第2端板(80,1080)でシールされている、圧縮機(CMP,CMP’)。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮機において、
上記シリンダ室(150,170)の高圧側領域(150b,170b)は、上記ブレード空間(52,72)の上記第1ブッシュ(53,73)側の領域と連通する一方、上記シリンダ室(150,170)の低圧側領域(150a,170a)は、上記ブレード空間(52,72)の上記第2ブッシュ(54,74)側の領域と連通し、
上記第2ブッシュ(54,74)の上記ブレード(51b,71b)とは反対側の周面には周方向に延びる溝(254f,274f)が設けられている、圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧縮機(CMP)において、
上記シリンダ(50,70)、第1端板(40)および第2端板(80)を収容するケーシング(1)と、
上記ケーシング(1)内に設けられ、油が溜まる油溜まり部(14)と、
上記シリンダ(50,70)、第1端板(40)および第2端板(80)に挿し通され、上記油溜まり部(14)と連通する第1油通路(21,23)を有する回転軸(20)と
を備え、
上記第1,第2ブッシュ(53,73,54,74)には、上記油溜まり部(14)の油が上記第1油通路(21,23)を介して供給される、圧縮機(CMP)。
【請求項4】
請求項3に記載の圧縮機(CMP)において、
上記シリンダ(50,70)は、上記第2端板(80)より上記第1端板(40)に近い第1シリンダ(50)と、上記第1端板(40)より上記第2端板(80)に近い第2シリンダ(70)とを有し、
上記第1シリンダ(50)と上記第2シリンダ(70)との間に配置された中間板(60)には、上記第1油通路(21,23)からの油を上記第1,第2ブッシュ(53,73,54,74)に案内する第2油通路(61,62)が設けられている、圧縮機(CMP)。
【請求項5】
請求項1に記載の圧縮機(CMP’)において、
上記シリンダ(1050,1070)、第1端板(1040)および第2端板(1080)を収容するケーシング(1)と、
上記ケーシング(1)内に設けられ、油が溜まる油溜まり部(14)と
を備え、
上記シリンダ室(1150,1170)の高圧側領域(1150b,1170b)は、上記ブレード空間(1052,1072)の上記第1ブッシュ(53,73,1053,1073)側の領域と連通する一方、上記シリンダ室(1150,1170)の低圧側領域(1150a,1170a)は、上記ブレード空間(1052,1072)の上記第2ブッシュ(1054,1074,2054,2074)側の領域と連通し、
上記第1ブッシュ(53,73,1053,1073)は、上記ブレード(51b,71b)に対向する第1対向面(53a,73a,1053a,1073a)を有し、
上記第1対向面(53a,73a,1053a,1073a)には、上記第2端板(1080)側から上記第1端板(1040)側に向かって延在すると共に、上記油溜まり部(14)の油が供給される第1給油溝(53c,73c)が設けられている、圧縮機(CMP’)。
【請求項6】
請求項5に記載の圧縮機において、
上記第1対向面(1053a,1073a)において上記第1給油溝(53c,73c)よりも上記背圧空間(1055,1075)側の部分には、上記高圧側領域(1150b)側から上記背圧空間(1055,1075)側に向かって延在する第2給油溝(1053f,1073f)が設けられている、圧縮機。
【請求項7】
請求項5または6に記載の圧縮機において、
上記第2ブッシュ(2054,2074)は、上記ブレード(51b,71b)に対向する第2対向面(2054a,2074a)を有し、
上記第2対向面(2054a,2074a)には、上記背圧空間(1055,1075)側から上記低圧側領域(1150a,1170a)側に向かって延在する第3給油溝(2054f,2074f)が設けられている、圧縮機。
【請求項8】
請求項7に記載の圧縮機において、
上記第2対向面(2054a,2074a)の上記低圧側領域(1150a,1170a)側の端は、上記第3給油溝(2054f,2074f)の上記低圧側領域(1150a,1170a)側の端よりも、上記低圧側領域(1150a,1170a)に近い、圧縮機。
【請求項9】
請求項5または6に記載の圧縮機(CMP’)において、
上記シリンダ(1050,1070)は、上記第2端板(1080)より上記第1端板(1040)に近い第1シリンダ(1050)と、上記第1端板(1040)より上記第2端板(1080)に近い第2シリンダ(1070)とを有し、
上記第1シリンダ(1050)と上記第2シリンダ(1070)との間に配置された中間板(1060)には、上記油溜まり部(14)の油を上記第1給油溝(53c,73c)に案内する第3油通路(1060a)が設けられている、圧縮機(CMP’)。
【請求項10】
請求項1、2、5または6に記載の圧縮機(CMP,CMP’)を備える、
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機およびその圧縮機を備えた冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機としては、密閉容器と、この密閉容器内に収容されて、ブレード空間および背圧空間が設けられたシリンダとを備えたものがある(例えば、特開2008-45415号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
上記背圧空間は、シリンダの内周面によって確定されたシリンダ室にブレード空間を介して連通する。このブレード空間内には一対のブッシュが配置されており、シリンダ室からブレード空間を通って背圧空間まで延びるブレードがその一対のブッシュで挟まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記圧縮機では、密閉容器内の下部空間に油が溜まる。上記シリンダの下側の端板に、背圧空間に連通する貫通穴を設けると共に、上記貫通穴に、上記端板から密閉容器内の下部空間まで延びる給油管を接続した場合、密閉容器内の下部空間に溜まった油が給油管を介して背圧空間に流入し、この背圧空間に流入した油がブッシュへ供給される。
【0006】
したがって、上記給油管を備える圧縮機を大型化した場合は、運転条件によっては、ブッシュへの給油が不十分になり、ブッシュの摺動性が低下する可能性があった。
【0007】
本開示の課題は、ブッシュの摺動性の低下を抑制できる圧縮機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様に係る圧縮機は、
シリンダと、
上記シリンダの軸方向の一方側に配置された第1端板と、
上記シリンダの軸方向の他方側に配置された第2端板と、
上記シリンダの内周面で確定されるシリンダ室と、
上記シリンダ室に収容され、上記シリンダの内周面に沿って揺動運動するピストンと、
上記ピストンと共に、上記シリンダ室を高圧側領域と低圧側領域とに区画するブレードと、
上記シリンダに設けられて、径方向内側の端部が上記シリンダ室に接続されると共に、上記シリンダ室に連通し、上記ブレードが進退するブレード空間と、
上記シリンダに設けられて、径方向内側の端部が上記ブレード空間の径方向外側の端部に接続されると共に、上記シリンダ室および上記ブレード空間に連通し、上記ブレードが進退する背圧空間と、
上記ブレード空間に配置され、上記ブレードを挟む第1,第2ブッシュと
を備え、
上記背圧空間の上記第1端板側の開口は上記第1端板でシールされている一方、上記背圧空間の上記第2端板側の開口は上記第2端板でシールされている。
【0009】
上記構成によれば、上記背圧空間の第1端板側の開口は第1端板でシールされている一方、背圧空間の第2端板側の開口は第2端板でシールされていることによって、背圧空間の圧力を密閉容器内の圧力(吐出圧)よりも低い圧力にできるので、ブッシュの摺動性の低下を抑制することができる。
【0010】
本開示の第2態様に係る圧縮機は
上記第1態様の圧縮機において、
上記シリンダ室の高圧側領域は、上記ブレード空間の上記第1ブッシュ側の領域と連通する一方、上記シリンダ室の低圧側領域は、上記ブレード空間の上記第2ブッシュ側の領域と連通し、
上記第2ブッシュの上記ブレードとは反対側の周面には周方向に延びる溝が設けられている。
【0011】
上記構成によれば、上記第2ブッシュのブレードとは反対側の周面には周方向に延びる溝が設けられているので、背圧空間から低圧側領域に油が流れやすくなる。したがって、背圧空間内の圧力の上昇を抑制することができる。
【0012】
本開示の第3態様に係る圧縮機は、
上記第1態様または第2態様の圧縮機において、
上記シリンダ、第1端板および第2端板を収容するケーシングと、
上記ケーシング内に設けられ、油が溜まる油溜まり部と、
上記シリンダ、第1端板および第2端板に挿し通され、上記油溜まり部と連通する第1油通路を有する回転軸と
を備え、
上記第1,第2ブッシュには、上記油溜まり部の油が上記第1油通路を介して供給される。
【0013】
上記構成によれば、上記油溜まり部の油が上記第1油通路を介して第1,第2ブッシュに供給されるので、第1,第2ブッシュに確実に給油することができる。
【0014】
本開示の第4態様に係る圧縮機は、
上記第3態様の圧縮機において、
上記シリンダは、上記第2端板より上記第1端板に近い第1シリンダと、上記第1端板より上記第2端板に近い第2シリンダとを有し、
上記第1シリンダと上記第2シリンダとの間に配置された中間板には、上記第1油通路からの油を上記第1,第2ブッシュに案内する第2油通路が設けられている。
【0015】
上記構成によれば、上記第1シリンダと第2シリンダとの間に配置された中間板には、第1油通路からの油を第1,第2ブッシュに案内する第2油通路が設けられているので、構造が複雑化するのを抑制することができる。
【0016】
本開示の第5態様に係る圧縮機は、
上記第1態様の圧縮機において、
上記シリンダ、第1端板および第2端板を収容するケーシングと、
上記ケーシング内に設けられ、油が溜まる油溜まり部と
を備え、
上記シリンダ室の高圧側領域は、上記ブレード空間の上記第1ブッシュ側の領域と連通する一方、上記シリンダ室の低圧側領域は、上記ブレード空間の上記第2ブッシュ側の領域と連通し、
上記第1ブッシュは、上記ブレードに対向する第1対向面を有し、
上記第1対向面には、上記第2端板側から上記第1端板側に向かって延在すると共に、上記油溜まり部の油が供給される第1給油溝が設けられている。
【0017】
上記構成によれば、上記第1ブッシュの第1対向面では、第1給油溝が第2端板側から第1端板側に向かって延在するので、第1給油溝が延在する方向に沿って油が広がり易くなる。
【0018】
本開示の第6態様に係る圧縮機は、
上記第5態様の圧縮機において、
上記第1対向面において上記第1給油溝よりも上記背圧空間側の部分には、上記高圧側領域側から上記背圧空間側に向かって延在する第2給油溝が設けられている。
【0019】
上記構成によれば、上記第1対向面において第1給油溝よりも上記背圧空間側の部分では、第2給油溝が高圧側領域側から背圧空間側に向かって延在するので、第2給油溝が延在する方向に沿って油が広がり易くなる。
【0020】
本開示の第7態様に係る圧縮機は、
上記第5態様または第6態様の圧縮機において、
上記第2ブッシュは、上記ブレードに対向する第2対向面を有し、
上記第2対向面には、上記背圧空間側から上記低圧側領域側に向かって延在する第3給油溝が設けられている。
【0021】
上記構成によれば、上記第2ブッシュの第2対向面では、第3給油溝が背圧空間側から低圧側領域側に向かって延在するので、第3給油溝が延在する方向に沿って油が広がり易くなる。
【0022】
本開示の第8態様に係る圧縮機は、
上記第7態様の圧縮機において、
上記第2対向面の上記低圧側領域側の端は、上記第3給油溝の上記低圧側領域側の端よりも、上記低圧側領域に近い。
【0023】
上記構成によれば、上記第3給油溝の低圧側領域側の端よりも、第2対向面の低圧側領域側の端が低圧側領域に近いので、第3給油溝から低圧側領域に油が流入するのを抑制することができる。
【0024】
本開示の第9態様に係る圧縮機は、
上記第5態様から上記第8態様までのいずれか一つの圧縮機において、
上記シリンダは、上記第2端板より上記第1端板に近い第1シリンダと、上記第1端板より上記第2端板に近い第2シリンダとを有し、
上記第1シリンダと上記第2シリンダとの間に配置された中間板には、上記油溜まり部の油を上記第1給油溝に案内する第3油通路が設けられている。
【0025】
上記構成によれば、上記第1シリンダと第2シリンダとの間に配置された中間板には、上記油溜まり部の油を上記第1給油溝に案内する第3油通路が設けられているので、構造が複雑化するのを抑制することができる。
【0026】
本開示の第10態様に係る冷凍装置は、
上記第1態様から上記第9態様までのいずれか一つの圧縮機を備える。
【0027】
上記構成によれば、上記圧縮機のメンテンナンスの間隔を延ばせる冷凍装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の第1実施形態の圧縮機の縦断面図である。
【
図2】上記第1実施形態の第1シリンダおよび第1揺動体の上面図である。
【
図3】上記第1実施形態の第1揺動体の揺動を説明するための上面図である。
【
図4】上記第1実施形態の第1揺動体の揺動を説明するための上面図である。
【
図5】上記第1実施形態の第1シリンダの第1ブッシュおよび第2ブッシュの斜視図である。
【
図6】上記第1実施形態の第2シリンダおよび第2揺動体の上面図である。
【
図7】上記第1実施形態の第2シリンダの第1ブッシュおよび第2ブッシュの斜視図である。
【
図8】上記第1シリンダの第1ブッシュおよび第2ブッシュ周辺の潤滑油の流れを説明するための模式図である。
【
図9】上記第2シリンダの第1ブッシュおよび第2ブッシュ周辺の潤滑油の流れを説明するための模式図である。
【
図10】上記第1実施形態の油溜まり部から第1シリンダおよび第2シリンダへの潤滑油の供給を説明するための断面図である。
【
図11】本開示の第2実施形態の第1シリンダの第2ブッシュの斜視図である。
【
図12】上記第2実施形態の第2シリンダの第2ブッシュの斜視図である。
【
図13】本開示の第3実施形態の空気調和機の回路図である。
【
図14】本開示の第4実施形態の圧縮機の要部の概略縦断面である。
【
図15】上記第4実施形態の第1ブレードおよびその周辺部の概略平面図である。
【
図16】上記第4実施形態の第2ブレードおよびその周辺部の概略平面図である
【
図17】上記第4実施形態の圧縮機構部の第1ブッシュ周辺の概略縦断面図である。
【
図18】上記第4実施形態の圧縮機構部の第2ブッシュ周辺の概略縦断面図である。
【
図19】本開示の第5実施形態の圧縮機構部の第1ブッシュ周辺の概略縦断面図である。
【
図20】本開示の第6実施形態の圧縮機構部の第2ブッシュ周辺の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態を説明する。なお、図面において、同一の参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化と簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法を表してはいない。
【0030】
〔第1実施形態〕
図1は、本開示の第1実施形態の圧縮機CMPの縦断面図である。なお、
図1では、第1揺動体51および第2揺動体71の図示を省略している。
【0031】
圧縮機CMPは、2シリンダ構成の揺動ピストン型ロータリー圧縮機の一例である。この圧縮機CMPは、密閉容器1、圧縮機構部2およびモータ3を備えている。なお、密閉容器1はケーシングの一例である。
【0032】
密閉容器1は、円筒形状の胴部11と、この胴部11の上端の開口を塞ぐ頂部12と、胴部11の下端の開口を塞ぐ底部13とを有する。この頂部12および底部13は、それぞれ、胴部11に溶接されている。
【0033】
圧縮機構部2は、密閉容器1内に収容されている。より詳しく説明すると、圧縮機構部2は、密閉容器1の内面に取り付けられたフロントヘッド40と、そのフロントヘッド40の下面に取り付けられた第1シリンダ50と、この第1シリンダ50の下面に取り付けられた仕切板60とを備える。この第1シリンダ50とフロントヘッド40と仕切板60によって、第1シリンダ室150が形成される。なお、フロントヘッド40は第1端板の一例である。また、第1シリンダ50はシリンダの一例である。また、仕切板60は中間板の一例である。
【0034】
フロントヘッド40は、第1シリンダ50の軸方向の一方側に配置された端板である。このフロントヘッド40は、筒形状のボス部41を内周側に有する。ボス部41には回転軸20が挿通される。
【0035】
第1シリンダ50は、分流器4に流入した冷媒ガスの一部を、第1吸入管5を介して吸入する。別の言い方をすると、分流器4内の冷媒ガスの一部は、第1吸入管5に案内されて、第1シリンダ室150に流入する。この第1シリンダ室150の外周部は、第1シリンダ50の内周面で確定される。なお、第1シリンダ室150はシリンダ室の一例である。
【0036】
上記冷媒ガスは、圧縮機CMPと、図示しない凝縮器、膨張機構および蒸発器とを制御することによって得られる。なお、圧縮機CMP、凝縮器、膨張機構および蒸発器は、冷凍装置の一例としての空気調和機の主要部を構成する。
【0037】
仕切板60は、第1シリンダ50と第2シリンダ70との間に配置された環状板である。より詳しく説明すると、仕切板60には、第1油供給路61と、この第1油供給路61よりも径方向外側に位置する第2油供給路62とが形成されている。第1油供給路61は、仕切り板70の内周面から仕切り板70の径方向に延在する。別の言い方をすると、第1油供給路61は、径方向内側の端部を介して、仕切板60の内周面で取り囲まれた空間に連通している。また、第1油供給路61は、径方向外側の端部を介して、第2油供給路62に連通している。一方、第2油供給路62は、仕切板60の上面から下面まで延びて、仕切り板70の厚さ方向において仕切り板70を貫通する。なお、第1油供給路61および第2油供給路62は第2油通路の一例である。
【0038】
また、仕切板60の内周面で取り囲まれた空間には、後述する油溜まり部14からの潤滑油が流入する。上記空間に流入した潤滑油は、第1油供給路61および第2油供給路62を流れる。これにより、上記潤滑油の一部は、第1シリンダ50の第1ブレード空間52(
図2~
図4に示す)へ供給される一方、上記潤滑油の他の一部は、後述する第2シリンダ70の第2ブレード空間72(
図6に示す)へ供給される。なお、第1ブレード空間52および第2ブレード空間72はブレード空間の一例である。
【0039】
また、圧縮機構部2は、仕切板60の下面に取り付けられた第2シリンダ70と、この第2シリンダ70の下面に取り付けられたリアヘッド80とを備える。この第2シリンダ70と仕切板60とリアヘッド80とによって、第2シリンダ室170が形成される。なお、第2シリンダ70はシリンダの一例である。また、リアヘッド80は第2端板の一例である。
【0040】
第2シリンダ70は、分流器4に流入した冷媒ガスの他の一部を、第2吸入管6を介して吸入する。別の言い方をすると、分流器4内の冷媒ガスの他の一部が、第2吸入管6に案内されて、第2シリンダ室170に流入する。この第2シリンダ室170の外周縁部は、第2シリンダ70の内周面で確定される。なお、第2シリンダ室170はシリンダ室の一例である。
【0041】
リアヘッド80は、第2シリンダ70の軸方向の他方側に配置された端板である。このリアヘッド80は、筒形状のボス部81を内周側に有する一方、壁部82を外周側に有する。ボス部81には回転軸20が挿通される。また、壁部82は、リアヘッド80の外周縁部の全周にわたって設けられ、ボス部81を取り囲んでいる。
【0042】
また、第1シリンダ50は、リアヘッド80よりもフロントヘッド40に近くなるように配置される。別の言い方をすると、第1シリンダ50からフロントヘッド40までの距離は、リアヘッド80からフロントヘッド40までの距離よりも短い。
【0043】
また、第2シリンダ70は、フロントヘッド40よりもリアヘッド80に近くなるように配置される。別の言い方をすると、第2シリンダ70からリアヘッド80までの距離は、フロントヘッド40からリアヘッド80までの距離よりも短い。
【0044】
また、フロントヘッド40の上面には、フロントヘッド40に設けられた第1吐出弁(図示せず)を覆うようにカップ形状のマフラ30が取り付けられている。このマフラ30は、ボルト(図示せず)などによってフロントヘッド40に固定されている。また、マフラ30には、フロントヘッド40のボス部41が挿通されている。マフラ30およびフロントヘッド40によって、第1マフラ室130が形成される。
【0045】
一方、リアヘッド80の下側には、リアヘッド80に設けられた第2吐出弁(図示せず)を覆うように板金マフラ90が取り付けられている。この板金マフラ90は、複数のボルト(図示せず)によってリアヘッド80に固定されている。板金マフラ90には、回転軸20の下端に取り付けられた給油ポンプ120が挿通されている。リアヘッド80および板金マフラ90によって、第2マフラ室190が形成される。
【0046】
また、回転軸20の内部には、第1油供給路21、第2油供給路22および第3油供給路23が形成されている。この第1油供給路21、第2油供給路22および第3油供給路23は、油溜まり部14から吸い上げられた潤滑油を圧縮機構部2の摺動部へ供給するための油供給路である。なお、第1油供給路21および第3油供給路23は第1油通路の一例である。
【0047】
第1油供給路21は、回転軸20の軸方向に沿って、回転軸20の下端からフロントヘッド40近傍まで延在する。油溜まり部14から吸い上げられた潤滑油は、第1油供給路21を介して、第2油供給路22および第3油供給路23に供給される。
【0048】
第2油供給路22は、回転軸20の軸方向に沿って、第1油供給路21の上端からモータ3近傍まで延在する。また、第2油供給路22の径は第1油供給路21の径よりも小さくなるように設定されている。別の言い方をすると、第2油供給路22は第1油供給路21よりも細い通路である。
【0049】
第3油供給路23は、第2油供給路22よりも細い通路である。この第3油供給路23は、回転軸20において仕切板60の内周面に対向する部分に形成されている。また、第3油供給路23は、回転軸20の径方向に沿って、回転軸20の内周面から外周面まで延在する。これにより、第1油供給路21は、第3油供給路23を介して、仕切板60の径方向内側の空間(仕切板60の内周面で取り囲まれた空間)に連通している。
【0050】
また、回転軸20の第1油供給路21の下端部には、給油ポンプ120が取り付けられている。この給油ポンプ120は、例えば鉄製のチューブ部材121と、大部分がチューブ部材内121に収容されたプロペラ状のポンプ部材122とを有している。このチューブ部材121の下端には、チューブ部材121の内径よりも径が小さい開口123が設けられている。回転軸20が回転すると、ポンプ部材122が油溜まり部14内の潤滑油を開口123から吸い上げて第1油供給路21へ送る。なお、給油ポンプ120として、例えば、特開2010-242625号公報などに開示されたものを採用してもよい。
【0051】
モータ3は、インナーロータ型モータの一例である。このモータ3は、密閉容器1内の上側の領域に配置され、圧縮機構部2を駆動する。また、モータ3は、密閉容器1の胴部11の内周面に固定された環状のステータ31と、このステータ31の径方向内側に配置され、回転軸20に固定されたロータ32とを有する。このロータ32の回転するとき、回転軸20がロータ32と共に回転して、圧縮機構部2を駆動するようになっている。
【0052】
また、圧縮機CMPでは、圧縮した高温高圧の冷媒ガス(吐出ガス)が、圧縮機構部2から吐出されて密閉容器1の内部を満たすと共に、ステータ31とロータ32との隙間を通って、モータ3を冷却した後、モータ3の上側に設けられた吐出管7から外部に吐出されるようになっている。
【0053】
また、密閉容器1内において、圧縮機構部2よりも下側の領域の一部は、潤滑油が溜まる油溜まり部14となる。この潤滑油は、油溜まり部14から、回転軸20の第1油供給路21および第3油供給路23を介して、仕切板60の第1油供給路61および第2油供給路62に送られる。
【0054】
図2は、第1シリンダ50と第1揺動体51を上方から見た図である。なお、
図2では、回転軸20の図示は省略している。
【0055】
圧縮機CMPは、第1シリンダ室150に収容される第1ピストン51aと、この第1ピストン51aと一体形成された第1ブレード51bとを有する第1揺動体51を備えている。この第1揺動体51は第1シリンダ50の内側で揺動する。また、第1揺動体51は、第1シリンダ室150を吸入室150a(低圧側領域)と圧縮室150b(高圧側領域)とに区画する。別の言い方をすると、第1シリンダ室150は、第1ピストン51aおよび第1ブレード51bによって、吸入室150aと圧縮室150bとに仕切られている。吸入室150aは第1ブレード51bの右側に形成される一方、圧縮室150bは第1ブレード51bの左側に形成される。なお、上記右側とは、第1シリンダ50をモータ3側から見たときの右側に相当する。また、上記左側とは、第1シリンダ50をモータ3側から見たときの左側に相当する。また、第1ピストン51aはピストンの一例である。また、第1ブレード51bはブレードの一例である。
第1ブレード空間1052はブレード空間の一例である。また、第1背圧空間1055は背圧空間の一例である。また、吸入室1150aは低圧側領域の一例である
【0056】
また、第1シリンダ50において第1ブレード51bの右側(吸入室150a側)には、第1シリンダ50の外周面から内周面に貫通する第1吸入ポート111が形成されている。第1吸入ポート111は、第1ブレード51bの右側の吸入室150aに開口している。第1吸入ポート111の径方向外側の端部には、第1インレットチューブ9(
図1に示す)を介して、第1吸入管5(
図1に示す)が接続される。
【0057】
また、第1シリンダ50の圧縮室150bには、フロントヘッド40(
図1に示す)の上面から下面に貫通する第1吐出ポート(図示せず)が連通している。この第1吐出ポートは、上記第1吐出弁で開閉される。
【0058】
また、第1シリンダ50には、第1シリンダ室150よりも径方向外側に位置する第1ブレード空間52と、第1ブレード空間52よりも径方向外側に位置する第1背圧空間55とが設けられている。この第1ブレード空間52および第1背圧空間55は、それぞれ、第1シリンダ50の上面から下面に貫通する貫通穴である。なお、第1背圧空間55は背圧空間の一例である。
【0059】
第1ブレード空間52は、第1ブレード空間52の径方向内側の端部が第1シリンダ室150に接続されて、第1ブレード空間52と連通している。この第1ブレード空間52では第1ブレード51bが進退する。別の言い方をすると、第1ブレード51bは、第1ブレード空間52に挿通された状態で、径方向外側への移動と径方向外側への移動とを交互に繰り返す。
【0060】
第1背圧空間55は、径方向内側の端部が第1ブレード空間52の径方向外側の端部に接続されて、第1シリンダ室150および第1ブレード空間52に連通している。この第1背圧空間55の上側(フロントヘッド40側)の開口はフロントヘッド40でシールされている。一方、第1背圧空間55の下側(仕切板60側)の開口は、仕切板60の貫通穴63に連通している。また、第1背圧空間55では第1ブレード51bが進退する。
【0061】
また、第1ブレード空間52には、第1ブッシュ53および第2ブッシュ54が揺動可能に配置されている。この第1ブッシュ53および第2ブッシュ54が第1ブレード51bを両側から挟んで進退可能に支持している。また、第1ブッシュ53と第1ブレード51bとの間、および、第2ブッシュ54と第1ブレード51bとの間には、仕切板60の第2油供給路62からの潤滑油が供給される。
【0062】
また、第1ブレード空間52の第1ブッシュ53側の領域は、第1シリンダ室150の圧縮室150bと連通する一方、第1ブレード空間52の第2ブッシュ54側の領域は、第1シリンダ室150の吸入室150aと連通する。なお、第1ブレード空間52の第1ブッシュ53側の領域は、第1ブレード51bの左側(第1吸入ポート111側とは反対側)の側面と、第1ブレード空間52の左側の内周面と間の領域と言い換えることが可能である。また、第1ブレード空間52の第2ブッシュ54側の領域は、第1ブレード51bの右側(第1吸入ポート111側)の側面と、第1ブレード空間52の右側の内周面と間の領域と言い換えることが可能である。
【0063】
また、回転軸20は、
図1に示すように、第1シリンダ室150内に配置される第1偏心部20aを有する。この第1偏心部20aは、回転軸20の中心軸に対して偏心するように設けられている。回転軸20の時計回りの回転に伴って第1偏心部20aが偏心回転して、第1偏心部20aに嵌合した第1ピストン51aが、
図3,
図4に示すように、第1シリンダ室150の内周面に沿って揺動運動する。この第1ピストン51aの揺動運動に伴って、第1吸入ポート111から低圧の冷媒ガスが吸入室150aに吸入されて、圧縮室150bで圧縮されて高圧になった後、上記第1吐出ポートから吐出される。その後、上記第1吐出ポートから吐出された高圧の冷媒ガスは、吐出管7から圧縮機CMP外に排出される。
【0064】
図5は、第1シリンダ50に用いる第1ブッシュ53および第2ブッシュ54を斜め上方から見た図である。
【0065】
第1ブッシュ53は、例えば金属材料で形成され、ほぼ半円柱形状を呈する。この第1ブッシュ53は、第1ブレード51b(
図2に示す)の左側の側面に対向する第1側面53aと、第1ブレード空間52(
図2に示す)の左側の内周面に対向する第2側面53bとを有している。
【0066】
第1側面53aは、第1ブレード51bの左側の側面に沿うように形成される。第1ピストン51aが揺動運動するとき、第1ブレード51bの左側の側面が第1側面53a上を摺動する。また、第1側面53aには、第1ブッシュ53の上面53dから下面53eまで延在する溝53cが形成されている。
【0067】
第2側面53bは、第1ブレード空間52の左側の内周面に沿うように形成される。この第2側面53bには、径方向または周方向に延在する溝は形成されていない。
【0068】
第2ブッシュ54は、第1ブッシュ53と同様に、例えば金属材料で形成され、ほぼ半円柱形状を呈する。この第2ブッシュ54は、第1ブレード51b(
図2に示す)の右側の側面に対向する第1側面54aと、第1ブレード空間52(
図2に示す)の右側の内周面に対向する第2側面54bとを有している。
【0069】
第1側面54aは、第1ブレード51bの右側の側面に沿うように形成される。第1ピストン51aが揺動運動するとき、第1ブレード51bの右側の側面が第1側面54a上を摺動する。また、第1側面54aには、第2ブッシュ54の上面54dから下面54eまで延在する溝54cが形成されている。
【0070】
第2側面54bは、第1ブレード空間52の右側の内周面に沿うように形成される。この第2側面54bには、径方向および周方向に延在する溝は形成されていない。
【0071】
図6は、第2シリンダ70と第2揺動体71を上方から見た図である。なお、
図6では、回転軸20の図示は省略している。
【0072】
圧縮機CMPは、第2シリンダ室170に収容される第2ピストン71aと、この第2ピストン71aと一体形成された第2ブレード71bとを有する第2揺動体71を備えている。この第2揺動体71は第2シリンダ70の内側で揺動する。また、第2揺動体71は、第2シリンダ室170を吸入室170a(低圧側領域)と圧縮室170b(高圧側領域)とに区画する。別の言い方をすると、第2シリンダ室170は、第2ピストン71aおよび第2ブレード71bによって、吸入室170aと圧縮室170bとに仕切られている。吸入室170aは第2ブレード71bの右側に形成される一方、圧縮室170bは第2ブレード71bの左側に形成される。なお、上記右側とは、第2シリンダ70をモータ3側から見たときの右側に相当する。また、上記左側とは、第2シリンダ70をモータ3側から見たときの左側に相当する。また、第2ピストン71aはピストンの一例である。また、第2ブレード71bはブレードの一例である。
【0073】
また、第2シリンダ70において第2ブレード71bの右側(吸入室170a側)には、第2シリンダ70の外周面から内周面に貫通する第2吸入ポート112が形成されている。第2吸入ポート112は、第2ブレード71bの右側の吸入室170aに開口している。第2吸入ポート112の径方向外側の端部には、第2インレットチューブ10(
図1に示す)を介して、第1吸入管5(
図1に示す)が接続される。
【0074】
また、第2シリンダ70の圧縮室170bには、フロントヘッド40(
図1に示す)の上面から下面に貫通する第1吐出ポート(図示せず)が連通している。この第1吐出ポートは、上記第1吐出弁で開閉される。
【0075】
また、第2シリンダ70には、第2シリンダ室170よりも径方向外側に位置する第2ブレード空間72と、第2ブレード空間72よりも径方向外側に位置する第2背圧空間75とが設けられている。この第2ブレード空間72および第2背圧空間75は、それぞれ、第2シリンダ70の上面から下面に貫通する貫通穴である。なお、第2背圧空間75は背圧空間の一例である。
【0076】
第2ブレード空間72は、第2ブレード空間72の径方向内側の端部が第2シリンダ室170に接続されて、第2ブレード空間72と連通している。この第2ブレード空間72では第2ブレード71bが進退する。別の言い方をすると、第2ブレード71bは、第2ブレード空間72に挿通された状態で、径方向外側への移動と径方向外側への移動とを交互に繰り返す。
【0077】
第2背圧空間75は、径方向内側の端部が第2ブレード空間72の径方向外側の端部に接続されて、第2シリンダ室170および第2ブレード空間72に連通している。この第2背圧空間75の下側(リアヘッド80側)の開口はリアヘッド80でシールされている。一方、第2背圧空間75の下側(仕切板60側)の開口は、仕切板60の貫通穴63に連通している。また、第2背圧空間75では第2ブレード71bが進退する。
【0078】
また、第2ブレード空間72には、第1ブッシュ73および第2ブッシュ74が揺動可能に配置されている。この第1ブッシュ73および第2ブッシュ74が第2ブレード71bを両側から挟んで進退可能に支持している。また、第1ブッシュ73と第2ブレード71bとの間、および、第2ブッシュ74と第2ブレード71bとの間には、仕切板60の第2油供給路62からの潤滑油が供給される。
【0079】
また、第2ブレード空間72の第1ブッシュ73側の領域は、第2シリンダ室170の圧縮室170bと連通する一方、第2ブレード空間72の第2ブッシュ74側の領域は、第2シリンダ室170の吸入室170aと連通する。なお、第2ブレード空間72の第1ブッシュ73側の領域は、第2ブレード71bの左側(第2吸入ポート112側とは反対側)の側面と、第2ブレード空間72の左側の内周面と間の領域と言い換え可能である。また、第2ブレード空間72の第2ブッシュ73側の領域は、第2ブレード71bの右側(第2吸入ポート112側)の側面と、第2ブレード空間72の右側の内周面と間の領域と言い換え可能である。
【0080】
また、回転軸20は、
図1に示すように、第2シリンダ室170内に配置される第2偏心部20bを有する。この第2偏心部20bは、回転軸20の中心軸に対して偏心するように設けられている。回転軸20の時計回りの回転に伴って第2偏心部20bが偏心回転して、第2偏心部20bに嵌合した第2ピストン71aが、第2揺動体71の第2ピストン71a(
図6に示す)と同様に、第2シリンダ室170の内周面に沿って揺動運動する。このとき、第2ピストン71aの揺動運動に伴って、第2吸入ポート112から吸入室170aに吸入された冷媒ガスは、圧縮室170bで圧縮されて高圧になった後、上記第2吐出ポートから吐出される。その後、上記第2吐出ポートから吐出された高圧の冷媒ガスは、吐出管7から圧縮機CMP外に排出される。
【0081】
図7は、第2シリンダ70に用いる第1ブッシュ73および第2ブッシュ74を斜め上方から見た図である。
【0082】
第1ブッシュ73は、例えば金属材料で形成され、半円柱形状を呈する。この第1ブッシュ73は、第2ブレード71b(
図6に示す)の左側の側面に対向する第1側面73aと、第2ブレード空間72(
図6に示す)の左側の内周面に対向する第2側面73bとを有している。
【0083】
第1側面73aは、第2ブレード71bの左側の側面に沿うように形成される。第1ピストン51aが揺動運動するとき、第2ブレード71bの左側の側面が第1側面73a上を摺動する。また、第1側面73aには、第1ブッシュ73の上面73dから下面73eまで延在する溝73cが形成されている。
【0084】
第2側面73bは、第2ブレード空間72の左側の内周面に沿うように形成される。この第2側面73bには、径方向または周方向に延在する溝は形成されていない。
【0085】
第2ブッシュ74は、第1ブッシュ73と同様に、例えば金属材料で形成され、半円柱形状を呈する。この第2ブッシュ74は、第2ブレード71b(
図6に示す)の右側の側面に対向する第1側面74aと、第2ブレード空間72(
図6に示す)の右側の内周面に対向する第2側面74bとを有している。
【0086】
第1側面74aは、第2ブレード71bの右側の側面に沿うように形成される。第1ピストン51aが揺動運動するとき、第2ブレード71bの右側の側面が第1側面74a上を摺動する。また、第1側面74aには、第2ブッシュ74の上面74dから下面74eまで延在する溝74cが形成されている。
【0087】
第2側面74bは、第2ブレード空間72の右側の内周面に沿うように形成される。この第2側面74bには、径方向および周方向に延在する溝は形成されていない。
【0088】
上記構成の圧縮機CMPによれば、第1シリンダ50における第1背圧空間55の上側の開口はフロントヘッド40でシールされている一方、第2シリンダ70における第2背圧空間75の下側の開口はリアヘッド80でシールされている。これにより、密閉容器1内の高圧の冷媒ガスは、第1背圧空間55の上側の開口から第1背圧空間55に流入しないし、第2背圧空間75の下側の開口からも第2背圧空間75に流入しない。また、
図8に示すように、油溜まり部14から溝53c,54cに供給された潤滑油の一部は、点線矢印A11,A21に沿って流れて、第1背圧空間55に流入しても、その後、点線矢印A22に沿って流れて、吸入室150aに流入する。また、
図9に示すように、油溜まり部14から溝73c,74cに供給された潤滑油の一部も、点線矢印A31,A41に沿って流れて、第2背圧空間75に流入しても、その後、点線矢印A42に沿って流れて、吸入室170aに流入する。その結果、第1背圧空間55および第2背圧空間75の圧力を密閉容器1内の圧力(上記第1吐出ポートおよび第2吐出ポートから密閉容器1内に吐出された冷媒ガスの圧力)よりも下げることができる。したがって、第1シリンダ室150の吸入室150aと第1背圧空間55との圧力差、および、第2シリンダ室170の吸入室170aと第2背圧空間75との圧力差が、大きくならないようにすることにより、第2ブッシュ54,74にかかる荷重を低減して、第2ブッシュ54,74の摺動性の低下を抑制することができる。
【0089】
仮に、第1背圧空間55の上側の開口がシールされずに密閉容器1内に開放されか、または、第2背圧空間75の下側の開口がシールされずに密閉容器1内に開放されている場合、密閉容器1内の高圧の冷媒ガスは、第1背圧空間55の上側の開口から第1背圧空間55および第2背圧空間75に流入するか、第2背圧空間75の下側の開口から第1背圧空間55および第2背圧空間75に流入する。この場合、第1シリンダ室150の吸入室150aと第1背圧空間55との圧力差、および、第2シリンダ室170の吸入室170aと第2背圧空間75との圧力差が、大きくなってしまう。この圧力差の増大は、第2ブッシュ54,74への荷重の増大に繋がって、第2ブッシュ54,74の摺動性の低下を招いてしまう。
【0090】
また、第1背圧空間55の上側の開口をフロントヘッド40でシールするが、第2背圧空間75の下側の開口に管の上端部を接続し、この管の下端部を油溜り部9内に配置した場合、高圧の潤滑油が上記管を介して第1背圧空間55および第2背圧空間75に供給されてしまう。この場合も、第2ブッシュ54,74の摺動性の低下を招いてしまう。
【0091】
また、
図8に示すように、油溜まり部14から溝53c,54cに供給された潤滑油の他の一部は、点線矢印A13,A23に沿って流れて、圧縮室150b,吸入室150aに流入する。より詳しく説明すると、圧縮室150bの圧力は、ピストン51aの位置変化に応じて、低圧から高圧(吐出圧)まで変化する。これにより、油溜まり部14から溝53cに供給された潤滑油の他の一部は、点線矢印A13に沿って流れて、圧縮室150bにも流入する。また、圧縮室150bの圧力が変化することにより、潤滑油は、点線矢印A12に沿って、圧縮室150bから第1背圧空間55に流れたり、第1背圧空間55から圧縮室150bに流れたりたりする。一方、油溜まり部14から溝54cに供給された潤滑油の他の一部は、第1背圧空間55を経由せずに、点線矢印A23に沿って流れて、吸入室150aに流入する。
【0092】
また、
図9に示すように、油溜まり部14から溝73c,74cに供給された潤滑油の他の一部は、点線矢印A33,A43に沿って流れて、圧縮室170b,吸入室170aに流入する。より詳しく説明すると、圧縮室170bの圧力は、ピストン71aの位置変化に応じて、低圧から高圧(吐出圧)まで変化する。これにより、油溜まり部14から溝73cに供給された潤滑油の他の一部は、点線矢印A33に沿って流れて、圧縮室170bにも流入する。また、圧縮室170bの圧力が変化することにより、潤滑油は、点線矢印A32に沿って、圧縮室170bから第2背圧空間75に流れたり、第2背圧空間75から圧縮室170bに流れたりたりする。一方、油溜まり部14から溝74cに供給された潤滑油の他の一部は、第2背圧空間75を経由せずに、点線矢印A43に沿って流れて、吸入室170aに流入する。
【0093】
また、油溜まり部14の潤滑油は、
図10の点線矢印に示すように、第1シリンダ50および第2シリンダ70へ向かう。このとき、第1ブッシュ53,73の溝53c,73cおよび第2ブッシュ54,74の溝54c,74cには、回転軸20の第1油供給路21および第3油供給路23を介して、油溜まり部14の潤滑油を供給するので、第1ブッシュ53,73および第2ブッシュ54,74に確実に給油することができる。
【0094】
上記第1実施形態では、分流器4から圧縮機構部2に冷媒ガスが供給されるようになっていたが、アキュムレータから圧縮機構部2に冷媒ガスが供給されるようにしてもよい。別の言い方をすると、分流器4に換えて、アキュムレータが用いられてもよい。
【0095】
上記第1実施形態では、圧縮機CMPは、2シリンダ構成の揺動ピストン型ロータリー圧縮機であったが、1シリンダ構成の揺動ピストン型ロータリー圧縮機にしてもよい。圧縮機CMPを1シリンダ構成の揺動ピストン型ロータリー圧縮機にする場合、第1油供給路61および第2油供給路62の役割と同様の役割を果たす油供給路をフロントヘッドまたはリアヘッドに設けてもよい。
【0096】
上記第1実施形態では、第1油供給路21および第3油供給路23が回転軸20に設けられる一方、第1油供給路61および第2油供給路62が仕切板60に設けられていたが、第1油供給路21および第3油供給路23が回転軸20に設けられず、かつ、第1油供給路61および第2油供給路62が仕切板60に設けられないようにしてもよい。このようにした場合も、第2ブッシュ54,74の摺動性の低下を抑制することができる。
【0097】
上記第1実施形態では、第1ピストン51aと第1ブレード51bとを一体形成していたが、第1ピストン51aと第1ブレード51bとを別体形成してもよい。この場合と同様に、第2ピストン71aと第2ブレード71bとを別体形成してもよい。
【0098】
上記第1実施形態では、第1背圧空間55の下側の開口は、仕切板60でシールされていなかったが、仕切板60でシールされるようにしもよい。
【0099】
上記第1実施形態では、第2背圧空間75の上側の開口は、仕切板60でシールされていなかったが、仕切板60でシールされるようにしてもよい。
【0100】
〔第2実施形態〕
図11は、本開示の第2実施形態の第1シリンダ50に用いる第2ブッシュ254を斜め上方から見た図である。また、
図12は、本開示の第2実施形態の第2シリンダ70に用いる第2ブッシュ274を斜め上方から見た図である。
【0101】
上記第2実施形態の圧縮機は、第2ブッシュ54,74の代わりに第2ブッシュ254,274を備えている点だけが、上記第1実施形態の圧縮機CMPと異なっている。
【0102】
第2ブッシュ254,274は、例えば金属材料で形成され、半円柱形状を呈する。この第2ブッシュ254,274は、第2ブレード空間72(
図2,
図6に示す)の右側の内周面に対向する第2側面254b,274bを有している。この第2側面254b,274bにおける吸入室150a,170a側の部分には、第2ブッシュ254,274の周方向に沿って延びる一本の溝254f,274fが設けられている。なお、第2側面254b,274bは、第2ブッシュ254,274の第1ブレード51b,71b(
図2,
図6に示す)とは反対側の周面である。
【0103】
上記構成の圧縮機は、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0104】
また、第2側面254b,274bにおける吸入室150a,170a側の部分に溝254f,274fが設けられているので、第1,第2背圧空間55,75から吸入室150a,170aへ潤滑油が流れ易くなる。その結果、第1,第2背圧空間55,75内の圧力の上昇を抑制することができる。
【0105】
上記第2実施形態では、第2側面254bにおける吸入室150a側の部分には、一本の溝254fが設けられていたが、複数本の溝が設けられるようにしてもよい。この複数本の溝は、例えば、互いに平行に延びると共に、第2ブッシュ254の周方向に沿って延びるようにしてもよい。また、上記複数本の溝は、周方向の長さを同じにしてもよいし、異なるようにしてもよい。
【0106】
上記第2実施形態では、第2側面274bにおける吸入室170a側の部分には、円周方向に延びる一本の溝274fが設けられている。複数本の溝は、例えば、互いに平行に延びると共に、第2ブッシュ254の周方向に沿って延びるようにしてもよい。また、上記複数本の溝は、周方向の長さを同じにしてもよいし、異なるようにしてもよい。
【0107】
〔第3実施形態〕
図11は、本開示の第3実施形態の冷媒回路RCを備えた冷凍装置の一例としての空気調和機の回路図である。この冷媒回路RCには、第1実施形態の圧縮機CMPを用いる。
【0108】
この第3実施形態の空気調和機は、空調対象である室内に設置される室内ユニットU1と、室外に設置される室外ユニットU2とを備える。
【0109】
<室内ユニットU1の構成>
上記空気調和機の室内ユニットU1は、冷媒配管L4(連絡配管)が一端に接続され、冷媒配管L5(連絡配管)が他端に接続された室内熱交換器1004と、この室内熱交換器1004に空気を供給する室内ファン1006とを有する。室内ファン1006は、室内熱交換器1004で温度などが調整された空気を室内に向けて吹き出す。
【0110】
<室外ユニットU2の構成>
上記空気調和機の室外ユニットU2は、圧縮機CMPと、四路切換弁1001と、室外熱交換器1002と、膨張機構の一例としての膨張弁1003と、分流器4と、室外熱交換器1002に空気を送る室外ファン1005とを有する。
【0111】
上記圧縮機CMPの吐出側が冷媒配管L1を介して四路切換弁1001の第1ポートaに接続されている。四路切換弁1001の第2ポートbが冷媒配管L2を介して室外熱交換器1002の一端に接続されている。室外熱交換器1002の他端が冷媒配管L3を介して膨張弁1003の一端に接続され、膨張弁1003の他端が冷媒配管L4(連絡配管)の一端に接続されている。冷媒配管L5(連絡配管)の一端が四路切換弁1001の第3ポートcに接続されている。四路切換弁1001の第4ポートdが、冷媒配管L6、分流器4、第1吸入管5および第2吸入管6を介して圧縮機CMPの吸入側に接続されている。
【0112】
室外熱交換器1002内を流れる冷媒は、室外ファン1005により吸い込まれる空気と熱交換する。
【0113】
膨張弁1003は、開度を調整可能な例えば電動弁であって、制御装置(図示せず)からの信号に応じて開度が変化する。
【0114】
<冷媒回路RCの構成>
また、上記空気調和機の冷媒回路RCは、室内熱交換器1004、圧縮機CMP、四路切換弁1001、室外熱交換器1002、膨張弁1003、分流器4、冷媒配管L1~L6、第1吸入管5および第2吸入管6から成っている。これにより、環状の冷媒回路RCが構成されている。
【0115】
冷房運転では、
図11に示すように、四路切換弁1001を実線の切換え位置に切り換え、暖房運転では、四路切換弁1001を点線の切換え位置に切り換えて、圧縮機CMPを駆動することにより冷媒が冷媒回路RCを循環する。
【0116】
上記構成の空気調和機によれば、圧縮機CMPを用いた冷媒回路RCを備えることによって、圧縮機CMPのメンテンナンスの間隔を延ばせる空気調和機を実現できる。
【0117】
上記第3実施形態では、冷凍装置として空気調和機を説明したが、圧縮機CMPを用いた冷媒回路RCを備える冷凍装置は、空気調和機に限らず、他の構成の冷凍装置でもよい。
【0118】
上記第3実施形態では、冷媒回路RCに第1実施形態の圧縮機CMPを用いていたが、
冷媒回路RCに、例えば、第1実施形態の変形例の圧縮機、第2実施形態の圧縮機、第2実施形態の変形例の圧縮機などを用いてもよい。
【0119】
〔第4実施形態〕
図14は、本開示の第4実施形態の圧縮機CMP’の要部の縦断面の概略図である。
【0120】
圧縮機CMP’は、2シリンダ構成の揺動ピストン型ロータリー圧縮機の一例である。この圧縮機CMP’は、密閉容器1、圧縮機構部1102およびモータ(図示せず)を備えている。なお、上記モータは、上記第1実施形態のモータ3と同様に構成されており、回転軸1020を駆動する。
【0121】
圧縮機構部1102は、第1,第2シリンダ1050,1070と、仕切板1060と、フロントヘッド1040と、リアヘッド1080と、カップ形状の第1,第2マフラ1030,1090とを有している。圧縮機CMP’の駆動時、油溜まり部14に溜まる潤滑油の液面は、リアヘッド1080の上面以上の高さとなる。なお、第1,第2シリンダ1050,1070はシリンダの一例である。また、仕切板1060は中間板の一例である。また、フロントヘッド1040は第1端板の一例である。また、リアヘッド1080は第2端板の一例である。
【0122】
第1,第2シリンダ1050,1070は、第1実施形態の第1,第2シリンダ50,70に比べて外径が小さくなるように形成されている。第1シリンダ1050は、リアヘッド1080よりもフロントヘッド1040に近い。第2シリンダ1070は、フロントヘッド1040よりもリアヘッド1080に近い。すなわち、第1シリンダ1050は比較的上側に配置される一方、第2シリンダ1070は比較的下側に配置される。
【0123】
仕切板1060は、上記第1実施形態の仕切板60と比較したとき、回転軸1020からの潤滑油を仕切板1060の径方向に案内する通路を有さない点で異なる。
【0124】
フロントヘッドと1040およびリアヘッド1080は、上記第1実施形態のフロントヘッド40およびリアヘッド80とは異なる外形を有している。
【0125】
図15は、第1ブレード51bおよびその周辺部を上方から見た概略図である。なお、
図15の矢印は、圧縮機CMP’の駆動時の潤滑油の流れを示す。
【0126】
第1シリンダ1050には、第1シリンダ50と同様に、第1シリンダ室1150、第1ブレード空間1052および第1背圧空間1055が設けられている。この第1シリンダ室1150は、第1ピストン51aおよび第1ブレード51bによって吸入室1150a(
図18に示す)と圧縮室1150b(
図17に示す)とに区画される。第1背圧空間1055の上側の開口はフロントヘッド1040でシールされている。一方、第1背圧空間1055の下側の開口は仕切板1060でシールされている。なお、第1ブレード空間1052はブレード空間の一例である。また、第1背圧空間1055は背圧空間の一例である。また、吸入室1150aは低圧側領域の一例である。また、圧縮室1150bは高圧側領域の一例である。
【0127】
第1ブレード空間1052には、第1ブッシュ53および第2ブッシュ1054が揺動可能に配置されている。第1ブレード空間1052の第1ブッシュ53側の領域は、第1シリンダ室1150の圧縮室1150bと連通する。一方、第1ブレード空間1052の第2ブッシュ1054側の領域は、第1シリンダ室1150の吸入室1150aと連通する。
【0128】
第1背圧空間1055は、第1ブレード空間1052の第1ブッシュ53側の領域に連通する。また、第1背圧空間1055は、第1ブレード空間1052の第2ブッシュ1054側の領域にも連通する。
【0129】
第1ブッシュ53の第1側面53a(
図17に示す)は、第1ブレード51bに対向する。この第1側面53aには、リアヘッド1080側からフロントヘッド1040側に向かって延在する溝53cが設けられている。圧縮機CMP’の駆動時、油溜まり部14の潤滑油が溝53cに供給される。なお、第1側面53aは第1対向面の一例である。また、溝53cは第1給油溝の一例である。
【0130】
第2ブッシュ1054は、上記第1実施形態の第2ブッシュ54と同様に、例えば金属材料で形成されている。この第2ブッシュ1054は、第1ブレード51bに対向する第1側面1054a(
図18に示す)を有する。第1側面1054aは平坦面ある。すなわち、第2ブッシュ1054は、第1実施形態の第2ブッシュ54と比較したとき、平坦な第1側面1054aを有する点のみが異なる。
【0131】
図16は、第2ブレード71bおよびその周辺部を上方から見た概略図である。なお、
図16の矢印は、圧縮機CMP’の駆動時の潤滑油の流れを示す。
【0132】
第2シリンダ1070には、第2シリンダ70と同様に、第2シリンダ室1170、第2ブレード空間1072および第2背圧空間1075が設けられている。この第2シリンダ室1170は、第2ピストン71aおよび第2ブレード71bによって吸入室1170a(
図18に示す)と圧縮室1170b(
図17に示す)とに区画される。第2背圧空間75の上側の開口は仕切板1060でシールされている。一方、第2背圧空間1075の下側の開口はリアヘッド1080でシールされている。なお、第2ブレード空間1072はブレード空間の一例である。また、第2背圧空間1075は背圧空間の一例である。また、吸入室1170aは低圧側領域の一例である。また、圧縮室1170bは高圧側領域の一例である。
【0133】
第2ブレード空間1072には、第1ブッシュ73および第2ブッシュ1074が揺動可能に配置されている。第2ブレード空間1072の第1ブッシュ73側の領域は、第2シリンダ室1170の圧縮室1170bと連通する。一方、第2ブレード空間1072の第2ブッシュ1074側の領域は、第2シリンダ室1170の吸入室1170aと連通する。
【0134】
第2背圧空間1075は、第2ブレード空間1072の第1ブッシュ73側の領域に連通する。また、第2背圧空間1075は、第2ブレード空間1072の第2ブッシュ1074側の領域にも連通する。
【0135】
第1ブッシュ73の第1側面73a(
図17に示す)は、第2ブレード71bに対向する。この第1側面73aには、リアヘッド1080側からフロントヘッド1040側に向かって延在する溝73cが設けられている。圧縮機CMP’の駆動時、油溜まり部14の潤滑油が溝73cに供給される。なお、第1側面73aは第1対向面の一例である。また、溝73cは第1給油溝の一例である。
【0136】
第2ブッシュ1074は、上記第1実施形態の第2ブッシュ74と同様に、例えば金属材料で形成されている。この第2ブッシュ1074は、第2ブレード71bに対向する第1側面1074a(
図18に示す)を有する。第1側面1074aは平坦面ある。すなわち、第2ブッシュ1074は、上記第1実施形態の第2ブッシュ74と比較したとき、平坦な第1側面1074aを有する点のみが異なる。
【0137】
リアヘッド1080の上面には、溝1080aが設けられている(
図17参照)。この溝1080aの一端は、第1ブッシュ73の溝73cの下端に接続されている。一方、溝1080aの他端は、リアヘッド1080の上面の外周縁に接続されている。すなわち、油溜まり部14の潤滑油が、リアヘッド1080の溝1080aを介して、第1ブッシュ73の溝73cに流入することが可能となるように、リアヘッド1080が形成されている。
【0138】
図17は、圧縮機構部1102の第1ブッシュ53,73周辺の縦断面の概略図である。また、
図18は、圧縮機構部1102の第2ブッシュ1054,1074周辺の縦断面の概略図である。なお、
図17,
図18の矢印は、圧縮機CMP’の駆動時の潤滑油の流れを示す。
【0139】
仕切板1060には、
図17に示すように、油溜まり部14の潤滑油を第1ブッシュ53の溝53cに案内する油通路1060aが設けられている。より詳しく説明すると、油通路1060aは、仕切板1060を上下方向に貫通する穴であって、第1ブレード空間1052の第1ブッシュ53側の領域と第2ブレード空間1072の第1ブッシュ73側の領域との間に位置する。油通路1060aの上端は、第1ブッシュ53の溝53cの下端に接続されている。一方、油通路1060aの下端は、第1ブッシュ73の溝53cの上端に接続されている。すなわち、油溜まり部14から第1ブッシュ73の溝73cに流入した潤滑油が、仕切板1060の油通路1060aを介して、第1ブッシュ53の溝53cに流入することが可能となるように、仕切板1060が形成されている。なお、油通路1060aは第3油通路の一例である。
【0140】
また、
図18に示すように、第1ブレード空間1052の第2ブッシュ1054側の領域と第2ブレード空間1072の第2ブッシュ1074側の領域との間には、油通路1060aのような貫通穴は設けられていない。
【0141】
上記構成の圧縮機CMP’によれば、
図14に示すように、第1背圧空間1055の上側の開口はフロントヘッド1040でシールされている一方、第2背圧空間1075の下側の開口はリアヘッド1080でシールされているので、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0142】
また、圧縮機CMP’の駆動時、油溜まり部14の潤滑油が、
図17に示すように、第1ブッシュ53,73の溝53c,73cに供給される。この溝53c,73cが、第1ブッシュ53,73の下面から第1ブッシュ53,73の上面まで延びているので、第1ブッシュ53,73の第1側面53a,73aにおいて潤滑油が下側から上側に広がり易くなる。その結果、第1ブッシュ53,73の第1側面53a,73aの潤滑状態が悪化するのを抑制することができる。
【0143】
また、第1ブッシュ53,73の溝53c,73cに供給された潤滑油は、
図15~
図18に示すように、第1,第2背圧空間1055,1075を経由して、吸入室1150a,1170aに向かって流れる。これにより、第2ブッシュ1054,1074の第1側面1054a,1074aにおいて潤滑油が第1,第2背圧空間1055,1075側から吸入室1150a,1170a側に広がり易くなる。その結果、第2ブッシュ1054,1074の第1側面1054a,1074aの潤滑状態が悪化するのを抑制することができる。
【0144】
また、
図17に示すように、仕切板1060に油通路1060aが設けられていることにより、第1ブッシュ73の溝73cから第1ブッシュ53の溝53cへ潤滑油が流れる。したがって、第1ブッシュ73の溝73cから第1ブッシュ53の溝53cへの潤滑油の供給を簡単な構造で行える。
【0145】
上記第4実施形態では、溝53c,73cは、回転軸1020と平行な方向に沿って延びるように形成されていたが、例えば、回転軸1020に対して傾斜する方向に沿って延びるように形成してもよい。
【0146】
上記第4実施形態では、溝53c,73cの各本数は、1本であったが、複数本にしてもよい。
【0147】
上記第4実施形態において、油溜まり部14の潤滑油は、回転軸1020および仕切板1060を介して、第1ブッシュ53,73の溝53c,73cに供給さるようにしてもよい。このようにした場合、リアヘッド1080の上面に溝1080aを設けなくてもよい。
〔第5実施形態〕
図19は、本開示の第5実施形態の第1,第2シリンダ1050,1070の第1ブッシュ1053,1073周辺の縦断面の概略図である。なお、
図19の矢印は、圧縮機の駆動時の潤滑油の流れを示す。
【0148】
上記第5実施形態の圧縮機は、第1ブッシュ53,73の代わりに第1ブッシュ1053,1073を備えている点だけが、上記第4実施形態の圧縮機CMP’と異なっている。
【0149】
第1ブッシュ1053,1073は、第1ブッシュ53,73に溝1053f,1073fを追加したものに相当する。より詳しく説明すると、第1ブッシュ1053,1073の第1側面1053a,1073aは、第1ブレード51b,71bに対向する。この第1側面1053a,1073aの上下方向の中央部には、溝1053f,1073fが設けられている。溝1053f,1073fは、圧縮室1150b,1170b側から第1,第2背圧空間1055,1075側に向かって延在する。溝1053f,1073fの延在方向は、溝1053c,1073cの延在方向に対して直交する。別の言い方をすると、溝1053f,1073fの延在方向は、仕切板1060の上面,下面に平行である。また、溝1053f,1073fの一端は、溝53c,73cに接続されている。一方、溝1053f,1073fの他端は、第1側面1053a,1073aの第1,第2背圧空間1055,1075側の縁に接続されている。なお、第1側面1053a,1073aは第1対向面の一例である。また、溝1053f,1073fは第2給油溝の一例である。
【0150】
上記構成の圧縮機は、上記第4実施形態と同様の構成を有するので、上記第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0151】
また、第1側面1053a,1073aに溝1053f,1073fを設けていることにより、圧縮機の駆動時、溝53c,73cの潤滑油の一部が溝1053f,1073fに流入する。その結果、潤滑油が圧縮室1150b,1170b側から第1,第2背圧空間1055,1075側に向かって広がり易くなる。
【0152】
上記第5実施形態では、溝1053f,1073fは、第1側面1053a,1073aの上下方向の中央部に設けられていたが、第1側面1053a,1073aの上下方向の中央部よりも上側(フロントヘッド1040側)に設けられてもよい。このようにした場合、第1側面1053a,1073aの上側の部分への潤滑油の供給の確実性を高めることができる。
【0153】
上記第5実施形態では、溝1053f,1073fの延在方向は、仕切板1060の上面,下面に平行であったが、仕切板1060の上面,下面に傾斜する方向としてもよい。
【0154】
上記第5実施形態では、溝1053f,1073fの各本数は、1本であったが、複数本にしてもよい。
〔第6実施形態〕
図20は、本開示の第6実施形態の第1,第2シリンダ1050,1070の第2ブッシュ2054,2074周辺の縦断面の概略図である。なお、
図20の矢印は、圧縮機の駆動時の潤滑油の流れを示す。
【0155】
上記第6実施形態の圧縮機は、第2ブッシュ1054,1074の代わりに第2ブッシュ2054,2074を備えている点だけが、上記第4実施形態の圧縮機CMP’と異なっている。
【0156】
第2ブッシュ2054,2074は、第2ブッシュ1054,1074に溝1054f,2074fを追加したものに相当する。より詳しく説明すると、第2ブッシュ2054,2074の第1側面1054a,1074aは、第1ブレード51b,71bに対向する。この第1側面1054a,1074aの上下方向の中央部には、溝2054f,2074fが設けられている。溝2054f,2074fは、第1,第2背圧空間1055,1075側から吸入室1150a,1170a側に向かって延在する。溝2054f,2074fの延在方向は、仕切板1060の上面,下面に平行である。また、溝2054f,2074fの一端は、第1側面2054a,2074aの第1,第2背圧空間2055,2075側の縁に接続されている。一方、溝2054f,2074fの他端は、第1側面2054a,2074aの吸入室1150a,1170a側の縁に接続されていない。別の言い方をすると、第1側面2054a,2074aの吸入室1150a,1170a側の縁は、溝2054f,2074fの他端よりも、吸入室1150a,1170aに近い。また、溝2054f,2074fの他端は、第1側面2054a,2074aの幅方向の真ん中に対して、吸入室1150a,1170a側に位置する。なお、第1側面2054a,2074aは第2対向面の一例である。また、溝2054f,2074fは、第3給油溝の一例である。
【0157】
上記構成の圧縮機は、上記第4実施形態と同様の構成を有するので、上記第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0158】
また、第2ブッシュ2054,2074の第1側面2054a,2074aに溝2054f,2074fを設けていることにより、圧縮機の駆動時、第1,第2背圧空間2055,2075の潤滑油の一部が溝2054f,2074fに流入する。その結果、潤滑油が第1,第2背圧空間1055,1075側から吸入室1150a,1170aに向かって広がり易くなる。
【0159】
また、第1側面2054a,2074aの吸入室1150a,1170a側の縁に溝2054f,2074fの他端を接続しないことにより、溝2054f,2074fの潤滑油が吸入室1150a,1170aが流入するのを抑制することができる。
【0160】
上記第6実施形態では、溝2054f,2074fの延在方向は、仕切板1060の上面,下面に平行であったが、仕切板1060の上面,下面に傾斜する方向としてもよい。
【0161】
上記第6実施形態では、溝2054f,2074fの各本数は、1本であったが、複数本にしてもよい。
【0162】
上記第6実施形態では、溝2054f,2074fの他端は、第1側面2054a,2074aの幅方向の真ん中に対して、吸入室1150a,1170a側に位置していたが、第1側面2054a,2074aの幅方向の真ん中に対して、第1,第2背圧空間2055,2075側に位置するようにしてもよい。
【0163】
本開示の具体的な実施の形態について説明したが、本開示は上記第1~第6実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1~第6実施形態で記載した内容を適宜組み合わせたものを、本開示の一実施形態としてもよい。
【0164】
より具体的に言うと、例えば、上記第1実施形態の変形例と同様に、圧縮機CMP’は、1シリンダ構成の揺動ピストン型ロータリー圧縮機にしてもよい。
【0165】
また、上記第3実施形態の冷媒回路RCには、上記第1実施形態の圧縮機CMPに換えて、上記第3実施形態の圧縮機CMP'を用いてもよい。
【0166】
また、上記第5実施形態の圧縮機が、第2ブッシュ1054,1074に換えて、第6実施形態の第2ブッシュ2054,2074を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0167】
1 密閉容器
2,1102 圧縮機構部
3 モータ
4 分流器
5 第1吸入管
6 第2吸入管
7 吐出管
14 油溜まり部
20,1020 回転軸
20a 第1偏心部
20b 第2偏心部
21 第1油供給路
22 第2油供給路
23 第3油供給路
31 ステータ
32 ロータ
40,1040 フロントヘッド
50,1050 第1シリンダ
60 仕切板
70,1070 第2シリンダ
80 リアヘッド
51 第1揺動体
51a 第1ピストン
51b 第1ブレード
52,1052 第1ブレード空間
53,73,1053,1073 第1ブッシュ
53a,73a,1053a,1073a,2054a,2074a 第1側面
53c,73c,1053f,1073f,2054f,2074f 溝
54,74,1054,1074,2054,2074 第2ブッシュ
55,1055 第1背圧空間
61 第1油供給路
62 第2油供給路
71 第2揺動体
71a 第2ピストン
71b 第2ブレード
72,1072 第2ブレード空間
75,1075 第2背圧空間
150,1150 第1シリンダ室
150a,170a,1150a,1170a 吸入室
150b,170b,150b,170b 圧縮室
170,1170 第2シリンダ室
CMP,CMP’ 圧縮機
RC 冷媒回路