IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人首都大学東京の特許一覧

特開2024-2567電流測定装置、電流測定方法及び電流測定装置作成方法
<>
  • 特開-電流測定装置、電流測定方法及び電流測定装置作成方法 図1
  • 特開-電流測定装置、電流測定方法及び電流測定装置作成方法 図2
  • 特開-電流測定装置、電流測定方法及び電流測定装置作成方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002567
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】電流測定装置、電流測定方法及び電流測定装置作成方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
G01R15/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101832
(22)【出願日】2022-06-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術開発事業」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】高野 耕至
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭二
(72)【発明者】
【氏名】備前 良雄
(72)【発明者】
【氏名】織田 紘介
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB04
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】電流センサの定格電流を超える電流を測定する。
【解決手段】第1電流経路と、前記第1電流経路と並列に接続される第2電流経路と、貫通穴を前記第1電流経路及び前記第2電流経路が互いに電流の流れ方向が逆となるように通り、かつ前記第1電流経路を流れる電流が整数N回通るようにN回巻き付けた、第1貫通型電流センサと、貫通穴を前記第1電流経路が通る第2貫通型電流センサと、を備える電流測定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電流経路と、
前記第1電流経路と並列に接続される第2電流経路と、
貫通穴を前記第1電流経路及び前記第2電流経路が互いに電流の流れる方向が逆となるように通り、かつ前記第1電流経路を流れる電流が整数N回通るようにN回巻き付けた、第1貫通型電流センサと、
貫通穴を前記第1電流経路が通る第2貫通型電流センサと、
を備える電流測定装置。
【請求項2】
前記Nは、前記第1電流経路を流れる第1電流と前記第2電流経路を流れる第2電流の和と前記第1電流の比である分流比k-2以上であり、前記k以下である、
請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電流測定装置を用いる電流測定方法であって、
前記第2電流経路を流れる第2電流と、前記第2電流と逆方向に流れるようにした前記第1電流経路を流れる第1電流の整数N倍の大きさとの差である差分電流を測定し、
前記第1電流の大きさを測定し、
前記差分電流及び前記第1電流の大きさに基づいて、前記第1電流と前記第2電流の和を算出する、
電流測定方法。
【請求項4】
第1電流と前記第1電流と並列に流れる第2電流の和と前記第1電流の比である分流比kを決定し、
巻き数Nを、k-2以上であり、k以下の値に決定し、
前記分流比kに基づいて、前記第1電流が流れる第1電流経路及び前記第2電流を流れる第2電流経路を作成し、
前記第2電流と前記第1電流の整数N倍との差である差分電流が測定されるように、前記第1電流経路及び前記第2電流経路を第1貫通型電流センサに貫通させ、
前記第1電流の大きさを測定されるように、前記第1電流経路を第2貫通型電流センサに貫通させる、
電流測定装置作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置、電流測定方法及び電流測定装置作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車・電車・航空機などのパワーユニットには、約100kW以上の大容量の出力と小型軽量化が必要とされている。また、パワーユニットの性能としては、スイッチング周波数fswが20kHz以上で定格電流が100A以上であることが要求されている。パワーユニット内のフィルタを構成するインダクタには、直流電流又は正弦波電流にスイッチング周波数fswの三角波状のリプル電流が重畳した電流(以下、インダクタ電流と呼ぶ)が流れる。
【0003】
パワーユニットの開発には、インダクタ電流の時間波形を正確に測定することが重要である。インダクタ電流に含まれるスイッチング周波数fswの三角波状のリプル電流を正確に測定するためには、スイッチング周波数fswの10倍の周波数を正確に測定する必要がある。また、インダクタ電流の測定には例えば貫通型の電流センサが使用される。使用される電流センサの周波数帯域は、通常、測定する必要のある電流の周波数の10倍以上であることが望ましい。
【0004】
つまり、電流センサの周波数帯域は、スイッチング周波数fswの10倍の周波数の10倍以上であることが望ましく、言い換えると、スイッチング周波数fswの100倍以上であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電流センサにおいては周波数帯域が広くなるにしたがい測定可能な定格電流の大きさが小さくなるため、電流の時間波形を正確に測定することが難しい。
本発明の目的は、電流センサの定格電流を超える電流を測定することができる電流測定装置及び電流測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1電流経路と、前記第1電流経路と並列に接続される第2電流経路と、貫通穴を前記第1電流経路及び前記第2電流経路が互いに電流の流れ方向が逆となるように通り、かつ前記第1電流経路を流れる電流が整数N回通るようにN回巻き付けた、第1貫通型電流センサと、貫通穴を前記第1電流経路が通る第2貫通型電流センサと、を備える電流測定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、第1電流と前記第1電流と並列に流れる第2電流の和と前記第1電流の比である分流比kを決定し、巻き数Nを、k-2以上であり、k以下の値に決定し、前記分流比kに基づいて、前記第1電流が流れる第1電流経路及び前記第2電流を流れる第2電流経路を作成し、前記第2電流と前記第1電流の整数N倍との差である差分電流が測定されるように、前記第1電流経路及び前記第2電流経路を第1貫通型電流センサに貫通させ、前記第1電流の大きさを測定されるように、前記第1電流経路を第2貫通型電流センサに貫通させる、電流測定装置の作成方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電流センサの定格電流を超える電流を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電流測定装置1の構成を示す図である。
図2】電流測定装置1による動作を示すフローチャートである。
図3】電流測定装置1の作成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0011】
〈第1の実施形態〉
図1は、第1の実施形態に係る電流測定装置1の構成を示す図である。電流測定装置1は、入力端子2、出力端子3、第1電流経路11、第2電流経路12、第1貫通型電流センサ21、第2貫通型電流センサ22及び算出部31を備える。電流測定装置1は、入力端子2に入力され、出力端子3から出力される電流を測定する。
第2電流経路12は、入力端子2と出力端子3を接続する。第1電流経路11は、入力端子2及び出力端子3に対して第2電流経路12と並列に設けられる。つまり、入力端子2に入力された電流(以下、被測定電流i)は、第1電流経路11を流れる電流(以下、第1電流i)と第2電流経路12を流れる電流(以下、第2電流i)に分流される。
【0012】
貫通型電流センサは、円環上に構成された磁気コアによって測定対象の導体の周囲に発生する磁束密度を計測することで、導体を流れる電流の大きさを計測する。そのため、貫通型電流センサには、導体を磁気コアに通すための貫通穴が形成されている。貫通型電流センサは、クランプ型電流センサを含む。クランプ型電流センサにおいて、貫通穴はクランプを閉じたときに形成される穴部である。
【0013】
第1貫通型電流センサ21は、貫通穴を第1電流経路11と第2電流経路12とが互いに電流の流れる方向が逆となるように通るように設置される。つまり、貫通穴において、第1電流iと第2電流iとが逆方向に通るように第1貫通型電流センサ21、第1電流経路11及び第2電流経路12が設置される。また、第1貫通型電流センサ21の貫通穴には、第1電流経路11がN回巻き付けられる。
【0014】
第2貫通型電流センサ22は、貫通穴を第1電流経路11が通るように設置される。
【0015】
以下、電流測定装置1による測定方法について詳細に説明する。電流測定装置1には入力端子2に測定対象である被測定電流iが入力され、出力端子3から出力される。被測定電流iは電流測定装置1内部で第1電流経路11を流れる第1電流iと第1電流経路11と並列に接続される第2電流経路12を流れる第2電流iとに分流される。つまり、被測定電流i、第1電流i及び第2電流iの関係は式(1)で表される。
【0016】
【数1】
【0017】
また、第1電流iを式(2)により被測定電流iを用いて定義する。
【0018】
【数2】
【0019】
kを電流測定装置1における分流比と呼ぶ。例えば第1電流経路11と第2電流経路12とに使用される導体の材料を同じとし、それぞれの断面積SとSを、式(3)を満たすように設定することで、所望の分流比kを実現することができる。
【0020】
【数3】
【0021】
これは、導体の電気抵抗が断面積に反比例することによる。後述するが、第1電流iは第2貫通型電流センサ22により測定されるため、分流比kは、想定される被測定電流iの最大値I及び第2貫通型電流センサ22の定格電流Iに基づいて設定される。例えば、分流比kはIをIで割った値以上の値に設定される。
【0022】
第1貫通型電流センサ21の貫通穴には、第2電流経路12が通り、また、第1電流経路11がN回巻き付けられている。第1貫通型電流センサ21により測定される電流(以下、差分電流Δi)は、第1電流i、第2電流i及び巻き数Nにより式(4)で表される。
【0023】
【数4】
【0024】
第2貫通型電流センサ22の貫通穴には、第1電流経路11が通る。すなわち、第2貫通型電流センサ22は、第1電流iを測定する。
【0025】
算出部31は、第1貫通型電流センサ21及び第2貫通型電流センサ22による測定結果に基づいて、被測定電流iを算出する。式(1)及び(4)を用いて第2電流iを消去すると式(5)が導出される。
【0026】
【数5】
【0027】
ここで、第1電流iは第2貫通型電流センサ22による測定結果である。差分電流Δiは第1貫通型電流センサ21による測定結果である。以上より、算出部31は、例えば巻き数Nを記憶することで、第1貫通型電流センサ21及び第2貫通型電流センサ22による測定結果を式(5)に適用することで、被測定電流iを算出する。
【0028】
算出部31の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記録装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、算出部31の一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0029】
以下、分流比kと巻き数Nの関係について説明する。式(5)に式(2)を代入し、iを消去すると式(6)が導出される。
【0030】
【数6】
【0031】
また、差分電流Δiの大きさが第1電流iの大きさより小さいとき、第1貫通型電流センサ21の定格電流Iは第2貫通型電流センサ22の定格電流Iと等しければよい。差分電流Δiの大きさが第1電流iの大きさより小さい場合、式(7)が成立する必要がある。
【0032】
【数7】
【0033】
式(6)及び式(7)により、分流比kと巻き数Nの関係を示す式(8)が導出される。
【0034】
【数8】
【0035】
つまり、巻き数Nは分流比kにより決定される。なお、式(6)に基づくとN=k-1のときΔi=0となる。
【0036】
図2は、電流測定装置1による動作を示すフローチャートである。第1貫通型電流センサ21が差分電流Δiを測定し(ステップS11)、第2貫通型電流センサ22が第1電流iを測定する(ステップS12)。その後、算出部31が第1貫通型電流センサ21及び第2貫通型電流センサ22による測定結果に基づいて、被測定電流iを算出する(ステップS13)。
【0037】
図3は、電流測定装置1の作成方法を示すフローチャートである。初めに電流測定装置1の被測定電流の最大値I及びスイッチング周波数fswを確認する(ステップS21)。その後、第1貫通型電流センサ21及び第2貫通型電流センサ22として使用する貫通型電流センサをスイッチング周波数fswに基づいて決定する(ステップS22)。例えば、周波数帯域がスイッチング周波数fswの100倍以上である貫通型電流センサを、第1貫通型電流センサ21及び第2貫通型電流センサ22として使用する貫通型電流センサとして決定する。その後、被測定電流の最大値I及び決定した貫通型電流センサの定格電流Iに基づいて、分流比kを決定する(ステップS23)。例えば、分流比kを、IをIで割った値以上の値に決定する。
【0038】
その後、分流比k及び式(8)に基づいて、巻き数Nを決定する(ステップS24)。分流比kに基づいて、第1電流経路11及び第2電流経路12を作成する(ステップS25)。例えば、式(3)に基づいて、第1電流経路11と第2電流経路12とに使用される導体の断面積を決定し、第1電流経路11及び第2電流経路12を作成する。例えば、第1電流経路11と第2電流経路12に使用される導体の断面積は同じであるが、本数を変えることにより、異なる断面積の導体を使用するのと同じ効果を実現してもよい。
【0039】
巻き数Nに基づいて、第1電流経路11及び第2電流経路12を第1貫通型電流センサ21及び第2貫通型電流センサ22に貫通させる(ステップS26)。前述のように、第1貫通型電流センサ21に第2電流経路12を貫通させ、第1電流経路11を貫通する第2電流経路12における第2電流iの向きと逆方向に第1電流iが貫通するように第1貫通型電流センサ21に巻き数Nで貫通させる。前述のように、第2貫通型電流センサ22に第1電流経路11を貫通させる。
【0040】
以上のように、電流測定装置1は、これにより、貫通型電流センサの定格電流を超える電流を測定することができる。
【0041】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 電流測定装置、11 第1電流経路、12 第2電流経路、21 第1貫通型電流センサ、22 第2貫通型電流センサ、31 算出部
図1
図2
図3