(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025673
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ロータリーピストンエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 55/10 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
F02B55/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113660
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】10 2022 120 394.8
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】523263430
【氏名又は名称】ビンケルマン バンケル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング バイヤー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱負荷を最小限に抑え、効率的な熱放散を確実にするのに適切な冷却媒体を提供すること。
【解決手段】ケーシング1は回転するロータリーピストンを囲むケーシング壁110を有する中央ケーシング部11を備え、前記中央ケーシング部11は第1のカバー部12及び第2のカバー部13によって両側が覆われて閉鎖ケーシング内部14を形成し、前記中央ケーシング部11は内側冷却チャネル111を備え、前記第1のカバー部12は第1の外側冷却チャネル121を備え、前記第2のカバー部13は入口を介して冷却媒体が流れ込む第2の外側冷却チャネル131を備え、冷却媒体は出口を介して前記第2の外側冷却チャネル131から流出し、前記入口は可変量の冷却剤を内側冷却チャネル111に供給し、かつ第1の外側冷却チャネル121及び第2の外側冷却チャネル131にそれぞれ供給するように構成された計量要素4を備える、ロータリーピストンエンジン。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(1)と、前記ケーシング内で回転するロータリーピストンとを有するロータリーピストンエンジンであって、
前記ケーシング(1)は前記ロータリーピストンを取り囲むケーシング壁(110)を備えた中央ケーシング部(11)を備え、
前記中央ケーシング部(11)は閉鎖ケーシング内部(14)を形成するために、対向する側で第1のカバー部(12)および第2のカバー部(13)によって覆われ、前記中央ケーシング部(11)は内側冷却チャネル(111)を備え、
前記第1のカバー部(12)は第1の外側冷却チャネル(121)を備え、前記第2のカバー部(13)は、第2の外側冷却チャネル(131)であって、入口(2)を介して冷却媒体が流入し出口(3)を介して冷却媒体が流出する第2の外側冷却チャネル(131)を備え、
前記入口は内側冷却チャネル(111)およびそれぞれ第1の外側冷却チャネル(121)に可変量)および第2の外側冷却チャネル(131)を含む、ロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項2】
前記計量要素(4)は、前記内側冷却チャネル(111)、前記第1の外側冷却チャネル(121)および前記第2の外側冷却チャネル(131)に供給される冷却媒体の量が前記出口(3)における前記冷却チャネルからの冷却媒体の温度差が5%未満であるように選択されるように設計される、請求項1に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項3】
前記計量要素(4)は、前記内側冷却チャネル(111)に供給される冷却媒体の量と、前記第1の外側冷却チャネル(121)および前記第2の外側冷却チャネル(131)に供給される冷却媒体の量とが、5%未満の範囲内の偏差を有するように設計される、請求項1または2に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項4】
前記第1の外側冷却チャネル(121)および前記第2の外側冷却チャネル(131)に供給される冷却媒体の量が同一である、請求項1~3のいずれか一項に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項5】
内側冷却チャネル(111)に供給される冷却媒体の量が、供給される冷却媒体の量の65%~75%の範囲、特に供給される冷却媒体の量の5%~15%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項6】
前記計量要素(4)は、計量スリーブ(41)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項7】
前記計量スリーブ(41)は、前記入口(2)に挿入可能に設計されている、請求項6に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項8】
前記計量スリーブ(41)は、前記第1の外側冷却チャネル(121)に冷却媒体を供給するための第1の開口部(411)と、前記内側冷却チャネル(111)に冷却媒体を供給するための第2の開口部(412、415)と、前記第2の外側冷却チャネル(131)に冷却媒体を供給するための第3の開口部(413)とを備える、請求項6または7に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【請求項9】
前記計量スリーブ(41)が、冷却媒体を前記内側冷却チャネル(111)に供給するための2つの第2の開口部(415)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のロータリーピストンエンジン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に記載のロータリーピストンエンジンに関する。
【0002】
本発明は、ヴァンケル型ロータリーピストンエンジン(Wankel rotary piston engines)などの内燃機関の4ストローク原理に従って動作するロータリーピストンエンジンの技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ロータリーピストンエンジンでは、三角形のロータリーピストンがケーシング内で回転する。(アーチ形三角形の)ロータリーピストンは3つの平坦な円形状アークからなり、回転しながら二重アーチ形ケーシング壁に常に接触する。ケーシングは入口および出口と、1つまたは複数のスパークプラグとを含み、入口、出口、およびスパークプラグは、所定の位置にあるロータリーピストンがそれぞれの室容積を入口、出口、およびスパークプラグで分離するように別々に配置される。
【0004】
入口及び出口は燃焼室から物理的に分離されているので、ヴァンケル型エンジンは水素によって駆動されるのに非常に適している。水素が燃料として使用される場合、不都合な形状の燃焼室による不完全燃焼の欠点さえも、排出される未燃焼燃料が環境に無害であるため、重要ではない。自動車の駆動システムの化石燃料からの転換の過程で、燃料としての水素の使用がますます関心を集めている。
【0005】
熱応力の観点から、ロータリーピストンエンジンでは動力行程が常に同じ点で行われることが問題であり、このことが、空間的および時間的に定常状態のホットゾーンおよびコールドゾーンを有する定常状態の温度分布が生成される理由である。ロータリーピストンエンジンは出口に向かうスパークプラグのケーシング領域で最も高い温度を示し、入口の後ろにあるスパークプラグに向かう領域で最も低い温度を示す。ロータリーピストンエンジンの場合、吸気行程中に燃焼室が吸気混合物によって冷却される往復ピストンエンジンの場合とは異なり、冷却混合物は、スパークプラグと出口との間の領域を通過することはない。これは、ロータリーピストンエンジンのケーシングに及ぼされる非常に不均一な熱負荷につながる。特に高い負荷は、回転毎に点火が行われるという事実から生じ、その結果、往復4ストロークエンジンと比較して、対応して高い熱負荷を伴う高い点火シーケンスが生じる。
【0006】
熱を放散するために、半径方向冷却水案内システムが知られており、ケーシングは、冷却剤が流れる冷却チャネルを有するロータリーピストンのロータリ方向に逆らって(ホットアーク内の)セクションに設けられる。ケーシングの側部を冷却剤で冷却することも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は熱負荷を最小限に抑え、特に、効率的な熱放散を確実にするのに適切な冷却媒体を提供することである。
【0008】
本発明は、ケーシングと、ケーシング内で回転するロータリーピストンとを有するロータリーピストンエンジンを包含する。ケーシングは、回転するロータリーピストンを囲むケーシング壁を有する中央ケーシング部を含む。中央ケーシング部は閉鎖ケーシング内部を形成するために、反対側で第1のカバー部および第2のカバー部によって覆われる。中央ケーシング部は内側冷却チャネルを含み、第1のカバー部は第1の外側冷却チャネルを含み、第2のカバー部は第2の外側冷却チャネルを含み、第2の外側冷却チャネル内に、入口を介して冷却媒体が流れ、出口を介して冷却媒体から冷却媒体が流れ出る。入口は可変量の冷却剤を内側冷却チャネルに、かつそれぞれ第1の外側冷却チャネルおよび第2の外側冷却チャネルに供給するように構成された計量要素を含む。冷却媒体を内側冷却チャネルおよび2つの外側冷却チャネルに具体的に供給する冷却媒体用の入口に計量要素を設けることによって、例えば、ロータリーエンジンの動作中に中央ケーシングおよび2つのカバー部に異なる量の熱が発生することを考慮に入れた効率的な冷却を実現することができる。
【0009】
有利な技術的態様によれば、計量要素は、内側冷却チャネル、第1の外側冷却チャネルおよび第2の外側冷却チャネルに供給される冷却媒体の量が出口における冷却チャネルからの冷却媒体の温度差が5%未満となるように選択されるように構成される。計量要素は指定された最小温度差を下回らないように、冷却媒体を適切に計量するためのサイズおよび形状を有することができる。
【0010】
好ましくは計量要素が内側冷却チャネルに供給される冷却媒体の量と、第1の外側冷却チャネルおよび第2の外側冷却チャネルに供給される冷却媒体の量とが、5%未満の範囲内の偏差を有するように設計される。
【0011】
有利には、第1の外側冷却チャネルおよび第2の外側冷却チャネルに供給される冷却媒体の量は同一である。
【0012】
特に好ましくは、内側冷却チャネルに供給される冷却媒体の量が供給される冷却媒体の量の65%~75%(5%~15%)の範囲である。実際には、これらの体積流量が全てのケーシング部品において発生した熱の良好な放散をもたらしている。
【0013】
有利な態様によれば、計量要素は、計量スリーブを備える。計量スリーブは例えば、冷却媒体のための供給ホースを取り付けることができ、それぞれの冷却チャネルに通じる開口部を有する金属スリーブであり、開口部は、所望の流量に適合する断面の寸法とすることができる。
【0014】
特に有利には、計量スリーブが入口に挿入可能であるようなサイズ及び形状である。
【0015】
有利には、計量スリーブが冷却媒体を第1の外側冷却チャネルに供給するための第1の開口部と、冷却媒体を内側冷却チャネルに供給するための第2の開口部と、冷却媒体を第2の外側冷却チャネルに供給するための第3の開口部とを備える。開口部は、冷却チャネルごとに数およびサイズが異なり得る。
【0016】
有利には、計量スリーブが冷却媒体を内側冷却チャネルに供給するための2つの第2の開口部を備える。
【0017】
本発明は、図面に示された実施例を参照して以下にさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、中央ケーシング部と、計量要素を備えた第1のおよび第2のカバー部とを備えるケーシングを備えたロータリーピストンエンジンの部分断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のロータリーピストンエンジンの中央ケーシング部の更なる断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のロータリーピストンエンジンのケーシングカバー部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、中央ケーシング部11と、第1のカバー部12と、第2のカバー部13とを備えるケーシング1を備えたロータリーピストンエンジンの部分垂直断面図(回転ロータリーピストンなし)である。
【0020】
図示のケーシング1は、回転するロータリーピストンを囲むケーシング壁110を有する中央ケーシング部11を有する。中央ケーシング部11は、第1のカバー部12(側部)によって左辺が閉じられている。中央ケーシング部11は、第2のカバー部13(側部)によって右辺が覆われている。このようにして、公知のヴァンケル型エンジンに従ってロータリーピストンが走行する閉鎖ケーシング内部14が形成される。
【0021】
中央ケーシング部11は、上部に示される内側冷却チャネル111(センターにリブを有する)を有する。破線部分はスパークプラグが通過する領域において、断面を一定に保つために、スパークプラグ及び出口チャネルの領域における横方向の広がりである。
【0022】
第1のカバー部12は、第1の外側冷却チャネル121を有する。第2のカバー部13は、第2の外側冷却チャネル131を有する。
【0023】
下側領域には、計量スリーブ41の形態の計量要素4が示されている。冷却媒体は計量スリーブ41を通って、入口2を介して冷却チャネルに流れ込み、出口3を介して再び冷却チャネルから流れ出て、例えば、冷却器に導かれる。
【0024】
計量スリーブ41は内側冷却チャネル111に、かつそれぞれ第1の外側冷却チャネル121および第2の外側冷却チャネル131に、可変量の冷却剤を供給するように、対応する形状の開口部を備えて形成される。
【0025】
計量スリーブ41は、入口2に挿入可能であるような大きさ及び形状である。
【0026】
計量スリーブ41は、第1の外側冷却チャネル121に冷却媒体を供給するための第1の開口部411と、内側冷却チャネル111に冷却媒体を供給するための第2の開口部412、415と、第2の外側冷却チャネル131に冷却媒体を供給するための第3の開口部413とを有する。
【0027】
計量スリーブ41は、内側冷却チャネル111に冷却媒体を供給するための2つの第2の開口部412、415を有する。
【0028】
計量要素4は(計量孔411、412、415、413の)形状や大きさに関して寸法決めされ、内側冷却チャネル111、第1の外側冷却チャネル121、および第2の外側冷却チャネル131に供給される冷却媒体の量はセンサ要素(図示せず)を介して測定される出口3における冷却チャネルからの冷却媒体の温度差が5%未満、特に1%~3%の範囲になるように選択される。
【0029】
計量要素4は内側冷却チャネル111に供給される冷却媒体の量と、第1の外側冷却チャネル121および第2の外側冷却チャネル131に供給される冷却媒体の量とが、5%未満の範囲、特に1%~3%の範囲の偏差を有するように、形状や大きさに関して寸法決めされる。
【0030】
有利には、第1の外側冷却チャネル121および第2の外側冷却チャネル131に供給される冷却媒体の量が内側冷却チャネル111に存在する量と同一であり、異なる。
【0031】
内側冷却チャネル111に供給される冷却媒体の量は、供給される冷却媒体の量の65%~75%(5%~15%)の範囲であってもよい。
【0032】
図2は、
図1のロータリーピストンエンジンからの中央ケーシング部11の別の断面図を示す。
【0033】
内側冷却チャネル111は、増大した熱ストレスにさらされるケーシングの一部の上を延びる。冷却媒体はロータリーピストンの回転方向に対して反時計回りに、底部の入口2から上面の出口3に流れる。
【0034】
スパークプラグ5および出口チャネルの領域において、内側冷却チャネル111は、断面が一定のままであるように外側に広げられる。
【0035】
図3は
図1のロータリーピストンエンジンからのケーシングカバー部12、13の断面図を示し、
図2の中央ケーシング部に接続することができる。この図では第1の外側冷却チャネル121を有する第1のカバー部12と、第2の外側冷却チャネル131を有する第2のカバー部13とは互いに鏡像であるため、例示することができる。
【0036】
第1の外側冷却チャネル121および第2の外側冷却チャネル131は3つの直線孔からなり、その結果、ケーシングのホットアークを覆う下方に湾曲した冷却チャネルが生じる。ストレートボアは、製造のための特に便利な解決策である。