(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025698
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/2513 20130101AFI20240216BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20240216BHJP
【FI】
H04B10/2513 170
H04B10/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125860
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】202210962480.4
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・コォ
(72)【発明者】
【氏名】タオ・ジェヌニン
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AA51
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH24
5K102AH26
5K102KA01
5K102KA39
5K102KA42
5K102PB01
5K102PC11
5K102PH01
5K102RD05
5K102RD11
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】本発明は、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置及び方法を提供する。
【解決手段】該装置は送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、デジタルプリディストーション処理後の信号を取得するプリディストーションユニット;前記デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後の信号を取得するパルス整形ユニットであって、前記短パルス整形処理により導入されるメモリ長が前記光送信機のデバイス自体のメモリ長以下である、パルス整形ユニット;及び、前記短パルス整形処理後の信号に基づいて光信号生成して送信する光信号生成ユニットを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置であって、
前記装置は光送信機に設置され、前記装置は、
送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、デジタルプリディストーション処理後の信号を取得するプリディストーションユニット;
デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後の信号を取得するパルス整形ユニットであって、前記短パルス整形処理により導入されるメモリ長が前記光送信機のデバイス自体のメモリ長以下である、パルス整形ユニット;及び
短パルス整形処理後の信号に基づいて光信号生成して送信する光信号生成ユニットを含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記パルス整形ユニットはデジタル領域でデジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後のデジタル信号を得る、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記パルス整形ユニットは、
有限インパルスレスポンスデジタルフィルターを用いて、デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行う第一整形ユニットを含む、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記光信号生成ユニットは、
デジタル/アナログ変換器を用いて、短パルス整形処理後のデジタル信号をアナログ電気信号に変換する第一変換ユニット;
駆動アンプを用いて、前記アナログ電気信号に対して増幅を行い、増幅後のアナログ電気信号を得る第一増幅ユニット;及び
光変調器を用いて、増幅後のアナログ電気信号を光キャリアにローディングし、前記光信号を生成して送信する第一ローディングユニットを含む、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
前記パルス整形ユニットはアナログ領域でデジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後のアナログ電気信号を得る、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、
前記パルス整形ユニットは、
デジタル/アナログ変換器を用いて、デジタルプリディストーション処理後の信号をアナログ電気信号に変換する第二変換ユニット;及び
アナログ電気フィルターを用いて、前記アナログ電気信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後のアナログ電気信号を得る第二整形ユニットを含む、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
前記光信号生成ユニットは、
駆動アンプを用いて、短パルス整形処理後のアナログ電気信号に対して増幅を行う第二増幅ユニット;及び
光変調器を用いて、増幅後の信号を光キャリアにローディングし、前記光信号を生成して送信する第二ローディングユニットを含む、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
光フィルターを用いて、生成される前記光信号に対してフィルタリング処理を行い、前記光信号が占める周波数スペクトル帯域幅を減少させ、周波数スペクトル帯域幅減少後の光信号を送信する第一フィルタリングユニットを含む、装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
光アンプを用いて、生成される記光信号に対してパワー増幅処理を行う第三増幅ユニット;及び
光フィルターを用いて、パワー増幅処理後の光信号に対してフィルタリング処理を行い、前記光信号が占める周波数スペクトル帯域幅を減少させ、周波数スペクトル帯域幅減少後の光信号を送信する第二フィルタリングユニットを含む、装置。
【請求項10】
請求項1に記載の光信号送信装置を含む、光送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは、光送信機が光信号を生成して該光信号を送信する。光送信機では、しばしば、デジタルプリディストーション(Digital Pre-distortion、DPD)技術を使用して、光送信機で生じる非線形効果の問題を解決する。そのうち、シンボル領域デジタルプリディストーション(digital predistortion in symbol domain)、即ち、送信待ちのシンボルシーケンスに対してプリディストーション処理を行うことは、一般に用いられているデジタルプリディストーション技術である。また、従来の光送信機では、通常、パルス整形フィルターを使用して信号に対してパルス整形処理を行う必要がある。
【0003】
なお、上述の背景技術についての紹介は、本発明の技術案を明確かつ完全に説明し、また、当業者がそれを理解しやすいためのものである。これらの技術案は、本発明の背景技術に記述されているため、当業者にとって周知であると解釈してはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者が次のようなことを発見した。即ち、パルス整形により送信信号にメモリ効果、即ち、シンボル間干渉を予め導入でき、また、該メモリ効果の強さがパルス整形に使用されるフィルターのロールオフファクター(Roll-off Factor)の大きさと密接に関連している。そのうち、ロールオフ係数が大きいほど、パルス整形にもたらすメモリ効果が弱くなり、ロールオフ係数が小さいほど、パルス整形にもたらすメモリ効果が強くなる。
【0005】
幾つかの適用シナリオ、例えば、高密度波長分割多重(Dense Wavelength Division Multiplexing、DWDM)システムの場合に、周波数スペクトル利用効率を向上させ、チャンネル間クロストークを避けるために、通常、非常に小さなロールオフファクターを採用し、即ち、長パルス整形方法(long-pulse shaping method)を採用し得る。しかし、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光送信機の場合に、小さなロールオフファクターにより深刻なシンボル間干渉(ISI)をもたらすことがあるため、光受信機の非線形補償器のメモリ長が増加し、また、導入されるシンボル間干渉が長時間持続し、結果として、信号が後続の非線形デバイスを経た後に、除去することが困難な非線形歪みは生じ、かつ該非線形歪みは前後の複数のシンボルに関連している。換言すると、通常の長パルス整形方法は、光送信機全体のメモリ長を根本的に増加させ得るため、シンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度を増大させ、実際のデプロイメントに不利である。
【0006】
上述の問題点のうちの少なくとも1つを解決するために、本発明の実施例はシンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例の第一側面によれば、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置が提供され、前記装置は光送信機に設置され、前記装置は、
プリディストーションユニットであって、送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、デジタルプリディストーション処理後の信号を取得する、もの;
前記デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理(short-pulse shaping processing)を行い、短パルス整形処理後の信号を取得するパルス整形ユニットであって、前記短パルス整形処理により導入されるメモリ長(memory length)が前記光送信機のデバイス自体のメモリ長以下である、もの;及び
光信号生成ユニットであって、前記短パルス整形処理後の信号に基づいて光信号を生成して送信する、ものを含む。
【0008】
本発明の実施例の第二側面によれば、光送信機が提供され、前記光送信機は本発明の実施例の第一側面に記載の装置を含む。
【0009】
本発明の実施例の第三側面によれば、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信方法が提供され、前記方法は光送信機に適用され、前記方法は、
送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、デジタルプリディストーション処理後の信号を取得し;
前記デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後の信号を取得し、そのうち、前記短パルス整形処理により導入されるメモリ長が前記光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり;及び
前記短パルス整形処理後の信号に基づいて光信号生成して送信することを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施例の有利な効果は少なくとも次のとおりである。即ち、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光送信機において、デジタルプリディストーション処理後の信号に対して従来の長パルス整形処理とは異なる短パルス整形処理を行い、そのうち、短パルス整形処理により導入されるメモリ長が光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり、このようにして、上述の短パルス整形により、信号パルスの時間上の前後のシンボルの間に導入される相関の長さ(correlation length)を短縮し、このような相関の強さを軽減できるため、光送信機全体のメモリ効果の長さを短縮でき、結果として、シンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度の要件を効果的に軽減し、実際のデプロイメントに有利であり、かつ、デジタルプリディストーションのパフォーマンスを保証できる。
【0011】
なお、「含む/有する」のような用語は、本明細書に使用されるときに、特徴、要素、ステップ、又はアセンブルの存在を指すが、1つ又は複数の他の特徴、要素、ステップ、又はアセンブリの存在若しくは付加を排除しないということも指す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の1つの図面又は1つの実施例に記載の要素及び特徴は、1つ又は複数の他の図面又は実施例に示した要素及び特徴と組み合わせることができる。また、図面では、類似した符号は、幾つの図面の中の対応部品を示し、複数の実施例に用いられる対応部品を示すためにも用いられる。
【
図1】本発明の実施例1におけるシンボル領域デジタルプリディストーションベースの光信号送信装置を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるパルス整形ユニットの1つの実施方式を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるFIRデジタルフィルターの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1における光信号生成ユニットの1つの実施方式を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1におけるパルス整形ユニットのもう1つの実施方式を示す図である。
【
図6】本発明の実施例1における光信号生成ユニットのもう1つの実施方式を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1におけるシンボル領域デジタルプリディストーションベースの光信号送信装置を示すもう1つの図である。
【
図8】本発明の実施例1におけるシンボル領域デジタルプリディストーションベースの光信号送信装置を示す他の図である。
【
図9】異なるパルス整形スキームの下でのデジタルプリディストーションのパフォーマンスの対比図である。
【
図10】本発明の実施例2における光送信機を示す図である。
【
図11】本発明の実施例2における光送信機のシステム構成を示すブロック図である。
【
図12】本発明の実施例2における光送信機のシステム構成を示すもう1つのブロック図である。
【
図13】本発明の実施例3におけるシンボル領域デジタルプリディストーションベースの光信号送信方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付した図面及び以下の説明を参照することにより、本発明の前述及び他の特徴が明らかになる。なお、明細書及び図面では本発明の特定の実施例を開示するが、それらは本発明の原理を採用し得る一部のみの実施例を示し、理解すべきは、本発明は記載される実施例に限定されず、即ち、本発明は添付した特許請求の範囲に属するすべての変更、変形及び代替によるものをも含むということである。
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例0015】
本発明の実施例ではシンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置が提供される。
図1は本発明の実施例1におけるシンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置を示す図である。
【0016】
図1に示すように、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置100は以下のものを含む。
【0017】
プリディストーションユニット110:送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、デジタルプリディストーション処理後の信号を取得し;
パルス整形ユニット120:該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後の信号を取得し、そのうち、該短パルス整形処理により導入されるメモリ長が該光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり;及び
光信号生成ユニット130:該短パルス整形処理後の信号に基づいて光信号を生成して送信する。
【0018】
これにより、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光送信機において、デジタルプリディストーション処理後の信号に対して従来の長パルス整形処理とは異なる短パルス整形処理を行い、そのうち、短パルス整形処理により導入されるメモリ長が光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり、このようにして、上述の短パルス整形により、信号パルスの時間上の前後のシンボルの間に導入される相関の長さを短縮し、このような相関の強さを軽減できるため、光送信機全体のメモリ効果の長さを短縮でき、結果として、シンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度の要件を効果的に低減し、実際のデプロイメントに有利であり、かつ、デジタルプリディストーションのパフォーマンスを保証できる。
【0019】
幾つかの実施例において、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置100は光送信機に設置(配置/構成/設定)される。
【0020】
幾つかの実施例において、プリディストーションユニット110は送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、言い換えれば、シンボル領域におけるデジタルプリディストーションを行う。
【0021】
幾つかの実施例において、様々な類型のシンボル領域デジタルプリディストーション処理を使用できる。
【0022】
例えば、シンボル領域デジタルプリディストーションは間接学習(Indirect Learning、IDL)に基づいて構築されても良く、直接学習(Direct Learning、DL)をもとに構築されても良い。
【0023】
例えば、デジタルプリディストータモデルはVolterra級数であっても良く、メモリ多項式、Winnerモデル、HammersteinモデルなどのVolterra級数の簡略化されたモデルであっても良く、さらに、ルックアップテーブル(Look Up Table、LUT)であっても良い。本実施例では、Volterra級数を例にしてデジタルプリディストータモデルについて説明する。
【0024】
シンボル領域プリディストーションについて言えば、パルス整形及びその後の送信機ハードウェアシステムは全体として1つのメモリ有りの非線形システムと見なすことができる。該非線形システムのメモリ長はパルス整形により導入されるメモリ効果によって大きく影響されるため、シンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度は増加し得る。この非線形システムのメモリ長がM、単位がシンボル、非線形の次数がKであるとする。
【0025】
例えば、デジタルプリディストータモデルがVolterra級数である場合に、成功裏にデジタルプリディストーションを行い、即ち、所定のプリディストーションパフォーマンス要件を満たす必要があるときに、Volterra級数のメモリ長及び非線形次数への要件もM及びKを下回ることはない。このときに、離散時間Volterra級数の数式は次のようになる。
【0026】
【数1】
そのうち、M及びKはそれぞれVolterra級数のメモリ長及び非線形次数を表し、h
k(m
1,m
2,…,m
k)はVolterraカーネル係数である。
【0027】
カーネル係数の個数はシンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度を直接反映し、カーネル係数の個数は、
【0028】
【数2】
と表すことができる。よって、分かるように、pの大きさはメモリ長Mの増大に伴って急激に膨張でき、即ち、シンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度は急激に増大し得る。
【0029】
同様に、例えば、LUTを採用してデジタルプリディストーションを行う場合に、成功裏にデジタルプリディストーションを行い、即ち、所定のプリディストーションパフォーマンス要件を満たす必要があるときに、LUTのメモリ長もMになる必要がある。送信待ちの信号変調方式がPAM-Kであるとする場合に、LUTの規模(size)はKMであり、そのサイズはMの増大に伴って指数関数的に拡大でき、結果として、デジタルプリディストーションの複雑度は増加する。
【0030】
これに対して、本発明の実施例ではメモリ長を短縮することで、デジタルプリディストーションの複雑度を明らかに減少させることができる。
【0031】
プリディストーションユニット110によりデジタルプリディストーション処理後の信号を得た後に、パルス整形ユニット120は該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行う。
【0032】
幾つかの実施例において、短パルス整形処理は従来の長パルス整形処理とは異なり、短パルス整形処理によって生成される信号パルスの時間領域における持続時間は比較的短く、即ち、生成される信号パルスのトレーリング減衰(trailing attenuation)は速く、かつスイング(swing)は小さい。言い換えれば、採用されるパルス整形フィルターは比較的大きな帯域幅を有し、かつ通過帯域のエッジロールオフは緩やかである。
【0033】
幾つかの実施例において、パルス整形処理が短パルス整形処理に属することを判断する方法の1つは、該短パルス整形処理により導入されるメモリ長が該光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であることである。
【0034】
また、従来の長パルス整形が使用するフィルターのロールオフファクターは比較的小さく、例えば、ロールオフファクターは0.15である。これに対して、短パルス整形が使用するフィルターのロールオフファクターは比較的大きく、例えば、ロールオフファクターは1である。
【0035】
幾つかの実施例において、デジタル領域において短パルス整形処理を行っても良く、アナログ領域において短パルス整形処理を行っても良い。以下、それぞれについて具体的に説明する。
【0036】
まず、デジタル領域の短パルス整形処理について説明する。
【0037】
幾つかの実施例において、該パルス整形ユニット120はデジタル領域で該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後のデジタル信号を取得する。
【0038】
図2は本発明の実施例1におけるパルス整形ユニットの1つの実施方式を示す図である。
図2に示すように、パルス整形ユニット120は以下のものを含む。
【0039】
第一整形ユニット121:有限インパルスレスポンス(Finite Impulse Response、FIR)デジタルフィルターを用いて該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行う。
【0040】
図3は本発明の実施例1におけるFIRデジタルフィルターの構成を示す図である。
図3に示すように、FIRフィルターの入力信号はu(n)、FIRフィルターの出力信号はy(n)である。
【0041】
該FIRデジタルフィルターの処理は次のような数式(2)により表すことができる。
【0042】
【数3】
図3及び上述の数式(2)では、w
k
*はタップ係数、Nはフィルターの次数であり、Nはメモリ長に関連している。言い換えれば、例えば、FIRフィルターの次数を調整することで、パルス整形処理により導入されるメモリ長を調整でき、即ち、該パルス整形処理が短パルス整形処理になるようにさせることができ、該短パルス整形処理により導入されるメモリ長は該光送信機のデバイス自体のメモリ長以下である。
【0043】
幾つかの実施例において、光送信機のデバイス自体のメモリ長はその伝達関数に関係しているので、その周波数レスポンスを測定することで直接得ることができる。
【0044】
幾つかの実施例において、光送信機のデバイスは主に、アナログデジタルアンプ(増幅器)、駆動アンプ及び光変調器を含む。
【0045】
パルス整形ユニット120がデジタル領域で該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行う場合に、光信号生成ユニット130はデジタル/アナログ変換を行った後に増幅及びローディング(loading)を行う。
【0046】
図4は本発明の実施例1における光信号生成ユニットの1つの実施方式を示す図である。
【0047】
図4に示すように、光信号生成ユニット130は以下のものを含む。
【0048】
第一変換ユニット131:デジタル/アナログ変換器(Digital-to-Analog
Converter、DAC)を用いて該短パルス整形処理後のデジタル信号をアナログ電気信号に変換し;
第一増幅ユニット132:駆動アンプを用いて該アナログ電気信号に対して増幅を行い、増幅後のアナログ電気信号を取得し;及び
第一ローディングユニット133:光変調器を使用して該増幅後のアナログ電気信号を光キャリアにローディングし、該光信号を生成する。
【0049】
幾つかの実施例において、光変調器の変調方式は外部変調方式に基づくものであっても良く、直接変調方式であっても良い。
【0050】
幾つかの実施例において、パルス整形ユニット120はアナログ領域で該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後のアナログ電気信号を得ることもできる。
【0051】
図5は本発明の実施例1におけるパルス整形ユニットのもう1つの実施方式を示す図である。
図5に示すように、パルス整形ユニット120は以下のものを含む。
【0052】
第二変換ユニット122:デジタル/アナログ変換器を使用して該デジタルプリディストーション処理後の信号をアナログ電気信号に変換し;及び
第二整形ユニット123:アナログ電気フィルター(analog electrical filter)を用いて該アナログ電気信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後のアナログ電気信号を取得する。
【0053】
幾つかの実施例において、第二整形ユニット123は様々な種類のアナログ回路のアナログ電気フィルターを使用しても良い。
【0054】
パルス整形ユニット120がアナログ領域で該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行う場合に、光信号生成ユニット130は直接、増幅及びローディングを行う。
【0055】
図6は本発明の実施例1における光信号生成ユニットのまたもう1つの実施方式を示す図である。
図6に示すように、光信号生成ユニット130は以下のものを含む。
【0056】
第二増幅ユニット134:駆動アンプを用いて該短パルス整形処理後のアナログ電気信号に対して増幅を行い;及び
第二ローディングユニット135:光変調器を用いて増幅後の信号を光キャリアにローディングし、該光信号を生成する。
【0057】
幾つかの実施例において、光変調器の変調方式は外部変調方式に基づくものであっても良く、直接変調方式であっても良い。
【0058】
光信号生成ユニット130が光信号を生成した後に、送信ユニット140は生成された該光信号を送信する。
【0059】
幾つかの適用シナリオにおいて、信号の周波数スペクトル帯域幅について要件(要求)がなく、例えば、単一波長通信システムである。よって、このようなシナリオにおいて、短パルス整形処理によって、信号が占める周波数スペクトル帯域幅が大きくなっても、システムパフォーマンスへの影響は非常に小さい。
【0060】
幾つかの適用シナリオにおいて、信号の周波数スペクトル帯域幅について所定の要件があり、例えば、波長分割多重化(Wavelength Division Multiplexing、WDM)システムである。
【0061】
このようなシナリオにおいて、生成された光信号、即ち、光信号生成ユニット130により生成された光信号に対してフィルタリング処理を行っても良い。このようにして、信号が占める周波数スペクトル帯域幅を減少させ、隣接チャネルの信号へのクロストークを回避できる。
【0062】
図7は本発明の実施例1におけるシンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置を示すもう1つの図である。
図7に示すように、光信号送信装置700は以下のものを含む。
【0063】
プリディストーションユニット710:送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、デジタルプリディストーション処理後の信号を取得し;
パルス整形ユニット720:該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後の信号を取得し、そのうち、該短パルス整形処理により導入されるメモリ長が該光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり;
光信号生成ユニット730:該短パルス整形処理後の信号に基づいて光信号を生成し;及び
第一フィルタリングユニット740:光フィルターを使用して、生成された該光信号に対してフィルタリング処理を行い、該光信号が占める周波数スペクトル帯域幅を減少させ、周波数スペクトル帯域幅減少後の該光信号を送信する。
【0064】
幾つかの実施例において、プリディストーションユニット710、パルス整形ユニット720及び光信号生成ユニット730は
図1における対応するユニットの機能と同じであり、ここではその詳しい説明を省略する。
【0065】
幾つかの実施例において、第一フィルタリングユニット740は光フィルターを使用して変調後の光信号に対して光領域のフィルタリングを行う。
【0066】
例えば、該光フィルターは簡単なMUX(Multiplexer)フィルターであっても良く、特殊な帯域応答形状を持つ波長選択スイッチ(Wavelength Selection Switch、WSS)又はCAT(Cascaded Asymmetric Mach-Zehnder triplet)フィルターであっても良い。なお、本発明の実施例では光フィルターの具体的な類型について限定しない。
【0067】
幾つかの適用シナリオにおいて、信号の周波数スペクトル帯域幅及びパワーについてともに所定の要件がある。このようなシナリオにおいて、生成された光信号、即ち、光信号生成ユニット130により生成された光信号に対してフィルタリング処理及び増幅処理を行うことができる。このようにして、信号が占める周波数スペクトル帯域幅を減少させ、隣接チャネルの信号へのクロストークを回避でき、また、送信される光信号のパワーを向上させ、パワーの要件を満たすことができる。
【0068】
図8は本発明の実施例1におけるシンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光信号送信装置を示す他の図である。
図8に示すように、光信号送信装置800は以下のものを含む。
【0069】
プリディストーションユニット810:送信待ち信号のシンボルシーケンスに対してデジタルプリディストーション処理を行い、デジタルプリディストーション処理後の信号を取得し;
パルス整形ユニット820:該デジタルプリディストーション処理後の信号に対して短パルス整形処理を行い、短パルス整形処理後の信号を取得し、そのうち、該短パルス整形処理により導入されるメモリ長が該光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり;
光信号生成ユニット830:該短パルス整形処理後の信号に基づいて光信号を生成し;
第三増幅ユニット840:光アンプを用いて、生成された該光信号に対してパワー増幅処理を行い;及び
第二フィルタリングユニット850:光フィルターを用いて、パワー増幅処理後の光信号に対してフィルタリング処理を行い、該光信号が占める周波数スペクトル帯域幅を減少させ、周波数スペクトル帯域幅減少後の該光信号を送信する。
【0070】
幾つかの実施例において、プリディストーションユニット810、パルス整形ユニット820及び光信号生成ユニット830は
図1における対応するユニットの機能と同じであり、ここではその詳しい説明を省略する。
【0071】
幾つかの実施例において、第二フィルタリングユニット850は第一フィルタリングユニット740と同じであっても良く、ここではその詳しい説明を省略する。
【0072】
幾つかの実施例において、第三増幅ユニット840は入力された光信号に対してブースト(boost)を行い、出力光信号のパワーを向上させる。
【0073】
例えば、該光アンプはノイズ特性があまり良くない半導体光アンプであっても良く、他の低コストの光アンプであっても良いが、本発明の実施例では光アンプの具体的な類型について限定しない。
【0074】
図9は異なるパルス整形スキームの下でのデジタルプリディストーションのパフォーマンスの対比図である。
図9に示すように、sine変調の非線形性を例にとり、長パルス整形(例えば、ロールオフファクター=0.15)及び短パルス整形(例えば、ロールオフファクター=1)がそれぞれ採用されたときに、異なるデジタルプリディストーションの非線形補償パフォーマンスには大きな差異が存在する。そのうち、横座標は入力信号の二乗平均平方根(RMS)であり、縦座標のQ値はデジタルプリディストーションのパフォーマンスを表す。参考例は複雑度を考慮しない場合のデジタルプリディストーションの補償の上限を表す。そのうち、sine変調により導入される非線形歪みの大きさは入力信号の二乗平均平方根の値に密接に関連している。
【0075】
よって、分かるように、短パルス整形(例えば、ロールオフファクター=1)の場合に、メモリ長の組み合わせが[3 3 3]であるVolterra級数(フリーフィッティングパラメータの数は19である)をプリディストータとして採用することで、非線形コストのほとんどを補償できる。
【0076】
これに対して、長パルス整形(例えば、ロールオフファクター=0.15)の場合に、短パルス整形の場合に相当するパフォーマンスを実現するために、メモリ長の組み合わせが[9 9 7 5 5]であるVolterra級数(フリーフィッティングパラメータの数は334である)を採用する必要がある。よって、デジタルプリディストーションの複雑度は大幅に増加し、依然として低複雑度プリディストータを採用する場合に、即ち、メモリ長の組み合わせが[3 3 3]であるVolterra級数(フリーフィッティングパラメータの数は19である)をプリディストータとして採用する場合に、パフォーマンスは大幅に低下し得る。
【0077】
上述の実施例から分かるように、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光送信機において、デジタルプリディストーション処理後の信号に対して従来の長パルス整形処理とは異なる短パルス整形処理を行い、そのうち、短パルス整形処理により導入されるメモリ長が光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり、このようにして、上述の短パルス整形により信号パルスの時間上の前後のシンボルの間に導入される相関の長さを短縮し、このような相関の強さを軽減できるため、光送信機全体のメモリ効果の長さを短縮でき、結果として、シンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度の要件を効果的に低減し、実際のデプロイメントに有利であり、かつ、デジタルプリディストーションのパフォーマンスを保証できる。
上述の実施例から分かるように、シンボル領域デジタルプリディストーションに基づく光送信機において、デジタルプリディストーション処理後の信号に対して従来の長パルス整形処理とは異なる短パルス整形処理を行い、そのうち、短パルス整形処理により導入されるメモリ長が光送信機のデバイス自体のメモリ長以下であり、このようにして、上述の短パルス整形により信号パルスの時間上の前後のシンボルの間に導入される相関の長さを短縮し、このような相関の強さを軽減できるため、光送信機全体のメモリ効果の長さを短縮でき、結果として、シンボル領域デジタルプリディストーションの複雑度の要件を効果的に低減し、実際のデプロイメントに有利であり、かつ、デジタルプリディストーションのパフォーマンスを保証できる。