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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025703
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】スレオニン含有飲用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20240216BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240216BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240216BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240216BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20240216BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61K31/198
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L27/00 Z
A23L5/20
A61K9/08
A61K47/32
A61P3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126551
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2022127674
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】迫 真理子
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 泰宏
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
4B117
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LE03
4B035LG01
4B035LG04
4B035LG06
4B035LG14
4B035LK19
4B035LP06
4B035LP21
4B035LP44
4B035LP46
4B035LP56
4B047LB08
4B047LE01
4B047LF07
4B047LG14
4B047LG15
4B047LP04
4B047LP05
4B047LP14
4B117LC03
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK14
4B117LP14
4B117LP17
4B117LP20
4C076AA12
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD22Z
4C076DD30Z
4C076DD43Z
4C076EE16T
4C076FF52
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA72
4C206NA09
4C206ZC21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スレオニンを含有し、えぐみが抑制された飲料を提供すること。
【解決手段】スレオニン及びポリビニルピロリドンを含有し、スレオニン1質量部に対し、ポリビニルピロリドンが0.001~3000質量部である飲用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレオニン及びポリビニルピロリドンを含有し、スレオニン1質量部に対し、ポリビニルピロリドンが0.001~3000質量部である飲用組成物。
【請求項2】
スレオニンを含有する飲用組成物に、ポリビニルピロリドンを含有させ、飲用組成物のえぐみを抑制する方法。
【請求項3】
ポリビニルピロリドンを有効成分とする、スレオニン含有飲用組成物のえぐみ抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレオニンを含有する飲用組成物に関するものであり、医薬品、医薬部外品、食品の分野に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸やペプチドは、様々な薬効のある重要な栄養素として、医薬品、医薬部外品、食品などの飲料に広く配合されている。例えば、特許文献1には、グリシン、スレオニン、ヒドロキシプロリンもしくはアスパラギン酸から選ばれる一種以上を有効成分として含有する、皮膚に対して安全でかつ優れた美白作用を示す美白用の飲食品が開示されている。特許文献2には、スレオニン等のアミノ酸を含む栄養補助食品が開示されている。このように、消費者の嗜好やニーズの多様化により多種多様の飲料が開発されているが、アミノ酸やペプチドを配合した飲料は特有の不快臭や不快味がある場合があり、嗜好性の観点から良好な風味が望まれている。
【0003】
アミノ酸には必須アミノ酸と非必須アミノ酸があり、必須アミノ酸は体内で合成できないため、食事等により摂取する必要がある。非必須アミノ酸は、必ずしも摂取が必要ではないが、エネルギー代謝や免疫等の働きに関連しており、いずれのアミノ酸も不足しないことが重要である。アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸のようにうま味成分として知られているものもあるが、独特な風味により直接摂取する場合に、工夫が必要なアミノ酸も存在する。特に、トリプトファン、フェニルアラニン、トリプシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン等では、独特な苦味があることが知られている(非特許文献1)。
【0004】
このため、アミノ酸摂取時における風味改善方法は検討されており、特許文献3には、異味が抑制され運動時に食べやすいアミノ酸含有ゼリーが記載されており、特許文献4には、苦味の抑制されたアミノ酸含有食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-315384
【特許文献2】特許6050341号
【特許文献3】特開2017-123841
【特許文献4】特開2009-118743
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】調理科学 Vol 13 No1 1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景のもと、飲料に、必須アミノ酸であるスレオニンを配合すると、独特の風味、特に「えぐみ」を強く感じることを見出した。本発明の目的は、スレオニンを含有し、えぐみが抑制された飲用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スレオニンにポリビニルピロリドンを添加することで、スレオニン含有飲用組成物のえぐみを抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、
(1)スレオニン及びポリビニルピロリドンを含有し、スレオニン1質量部に対し、ポリビニルピロリドンが0.001~3000質量部である飲用組成物、
(2)スレオニンを含有する飲用組成物に、ポリビニルピロリドンを含有させ、飲用組成物のえぐみを抑制する方法、
(3)ポリビニルピロリドンを有効成分とする、スレオニン含有飲用組成物のえぐみ抑制剤、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、必須アミノ酸であるスレオニンを摂取でき、えぐみの抑制された飲用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における成分a)スレオニンとは、アミノ酸の一種であり、内服液剤等に有効成分として配合され得る成分であり、別名トレオニンとも呼ばれる。スレオニンとしては、L体、D体およびDL体のいずれを用いてもよいが、人体への作用の観点から、L体およびDL体が好ましく、L体がより好ましい。
【0012】
スレオニンの含有量は特に制限されないが、飲用組成物全量に対して、0.0002~2w/v%が好ましく、より好ましくは0.001~0.1w/v%である。
【0013】
成分b)ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」とも表記する)は、ポリビドン、ポビドン、クロスポビドンとも呼ばれ、安定化剤、可溶化剤、溶解補助剤などとして内服液剤等に用いられる高分子化合物である。PVPとは、N-ビニル-2-ピロリドンの重合体であり、ビニルピロリドンの水溶液に少量のアンモニアを加えて過酸化水素触媒の存在下で重合することにより得られるものである。
【0014】
飲用組成物中のPVPの含有量は特に制限されるものではないが、0.0005~30w/v%が好ましく、0.001~20w/v%がより好ましく、0.015~19w/v%がさらに好ましい。またスレオニン1質量部に対するPVPの含有量も特に制限されないが、風味改善の観点から、好ましくは0.001~3000質量部であり、より好ましくは0.1~500質量部であり、さらに好ましくは0.3~300質量部である。
【0015】
本発明にかかる飲用組成物のpHは、特に限定されないが、静菌性の観点から2.0~7.0であることが好ましく、より好ましくは2.0~6.0、さらに好ましくは、2.5~4.6である。本発明の飲用組成物のpH調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸等の無機酸及びそれらの塩類、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等が挙げられ、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、アスパラギン酸、フマル酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸及びそれらの塩類が挙げられる。
【0016】
本発明にかかる飲用組成物の粘度は、特に限定されないが、服用性等の観点から測定時の試料温度20~25℃で100Pa・s未満あることが好ましく、より好ましくは50Pa・s未満、さらに好ましくは20Pa・s未満である。
【0017】
本発明の飲用組成物にはその他の成分として、他のビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、カフェイン、ローヤルゼリー、生薬、生薬抽出物などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0018】
さらに必要に応じて、甘味料、酸味料、増粘安定剤、酸化防止剤、着色剤、香料、矯味剤、保存料、調味料、苦味料、強化剤、可溶化剤、乳化剤などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0019】
本発明の飲用組成物は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、適宜、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理し、容器に充填する工程により製造することができる。
【0020】
本発明の飲用組成物は、例えばシロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種経口製剤、健康飲料、清涼飲料などの各種飲料に適用することができるが、より好ましくは医薬品や医薬部外品のシロップ剤、ドリンク剤への適用がのぞましい
【0021】
本発明の飲用組成物は、風味が良好で、必須アミノ酸であるスレオニンを日常的に摂取することができる。
【0022】
スレオニンの粉末を口に含むとわずかな甘味を感じ、えぐみを感じることはないが、飲用組成物に入れるとえぐみが発現する。なお、苦味は基本五味(甘味・苦味・酸味・塩味・うま味)の一つで、舌で苦さを感じ一瞬で消えるのに対し、えぐみは基本味ではなく、苦味と渋味が複雑に合わさった味で口中全体に長く不快感が残る感覚である。
【実施例0023】
以下に実施例、比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
(実施例1~14、比較例1~3)
【0024】
(実施例1)
L-スレオニン、PVP、クエン酸をそれぞれ精製水に加え攪拌しながら溶解させ、溶解しない場合は必要に応じて加熱した.各溶液を混合させ、精製水を加えて全量を100mLとし、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHを3.0に調整した。調製した液をガラス瓶(株式会社マルエム,FCスクリュー管No.7)に充填しキャップを施して殺菌工程を経て飲用組成物を得た。
実施例2~14、比較例1~3も実施例1と同様に調製を行った。それぞれの処方及び評価結果を表1~2に示す。
【0025】
表1及び2に示す飲用組成物を試験液とし、試験液をプラカップに約20mL注ぎ、専門パネル3名で表3に示す5段階の評価基準で試験液の「後に残るえぐみ(サンプルを口に含み、吐き出した後に口腔内に持続的に残る苦味と渋味を合わせた感覚)」について評価した。結果は、専門パネル3名の評価点を平均化して小数点第2位を四捨五入した値で表し、「後に残るえぐみ」として表1~2に示した。また、実施例1~7、13、14は、PVPを含有しない点のみ異なる処方(比較例1、2、3)をコントロールとして、「後に残るえぐみ」の評価点の差も示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
表1~2から明らかなように、スレオニン単独では「後に残るえぐみ」が感じられ、スレオニンにPVPを含有させることにより、「後に残るえぐみ」を改善できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、スレオニンを含有し、良好な風味を持ち商品性に優れた飲用組成物を、医薬品、医薬部外品、食品の分野に利用でき、また、健康飲料、特定保健用飲食品などに使用可能である。