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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025717
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】繊維製品の再資源化方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/18 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
C08J11/18 ZBP
C08J11/18 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128892
(22)【出願日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2022128371
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514038395
【氏名又は名称】株式会社V&AJapan
(74)【代理人】
【識別番号】100100561
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100219690
【弁理士】
【氏名又は名称】堀坂 純美子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA30
4F401AC20
4F401BA20
4F401BB02
4F401CA68
4F401CA77
4F401DB01
4F401FA01Z
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素(CO)排出量を最低限にすることのできる、衣料等の繊維製品の再資源化方法を提供する。
【解決手段】生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を回収する回収工程と、回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、を含む、繊維製品の再資源化方法。前記繊維製品は、発光顔料を含んでいるか、製品判別コードが付されているか、あるいは、発光顔料を含んでおり且つ製品判別コードが付されているかのいずれかである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を回収する回収工程と、
回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、
を含む、繊維製品の再資源化方法。
【請求項2】
前記繊維製品は、発光顔料を含んでいるか、製品判別コードが付されているか、あるいは、発光顔料を含んでおり且つ製品判別コードが付されているかのいずれかである、請求項1に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項3】
前記回収工程において、前記発光顔料から得られる情報、あるいは、前記製品判別コードから得られる情報に基づいて、前記繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であるかどうかの判別を行う、請求項2に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項4】
前記高温耐性菌は、アクチノマイセス属放線菌、Aquifex属、Sulfolobus属、Aeropyrum属、Pyrolobus属、Pyrobaculumaerophilumからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項5】
前記堆肥化工程は、前記高温耐性菌と回収された前記繊維製品とを混合して又は接触させて行う、請求項1に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項6】
前記堆肥化工程は、既に存在する堆肥と回収された前記繊維製品とを混合した状態又は接触させた状態で行われる、請求項1に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項7】
前記生分解性繊維は、天然繊維、再生繊維、及び生分解性合成繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項8】
前記生分解性繊維は、綿、麻、獣毛、絹、羽毛、再生セルロース繊維、再生タンパク質繊維、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)系、バイオポリブリレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)-ポリ乳酸(PLA)コンパウンド、澱粉ポリエステル樹脂、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項9】
前記繊維製品は、衣類、服飾品類、寝具類、タオル類、敷物類、カーテン類、スポーツ用品類、及びアウトドア用品類からなる群から選ばれる、請求項1に記載の繊維製品の再資源化方法。
【請求項10】
生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程を含む、繊維製品の再資源化方法。
【請求項11】
生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を製造する製造工程と、
製造された前記繊維製品を販売する販売工程と、
販売された前記繊維製品について、前記繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であると判断した場合に、当該繊維製品を回収する回収工程と、
回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、
を含む、繊維製品の再資源化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の再資源化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環型社会の実現に向けて、資源の有効利用、廃棄物削減の施策が種々行われている。しかしながら、衣料品等の繊維製品は、使用後、焼却処分や埋め立て処分されるものが多い。
【0003】
衣料等の繊維製品の処分量を削減する取り組みとして、古着やウエスとしての再利用や、各種リサイクルが進められている。リサイクルには、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル等がある。
【0004】
マテリアルリサイクルは、例えば、使用済みの繊維製品を再び繊維等に戻して新たな繊維製品を作るものである。ケミカルリサイクルは、使用済みの繊維製品を化学変化させて、再度繊維を作ることや、バイオエタノール等にすること等が含まれる。サーマルリサイクルは、使用済みの繊維製品を焼却する際の熱エネルギーを回収して利用する、いわゆる排熱利用である。
【0005】
ところで、衣料等の繊維製品に用いられる天然繊維は生分解性を有することが知られている。また、近年では、生分解性合成樹脂が種々開発されており、それら生分解性合成樹脂からなる繊維が衣料等の繊維製品にも用いられるようになってきた。例えば、特開2004-270094号公報や特開2010-084261号公報には、生分解性繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-270094号公報
【特許文献2】特開2010-084261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の再利用された繊維製品やリサイクルによって作製された繊維製品は、繰り返し利用された後、最終的に焼却処分される場合が多い。繊維製品を焼却処分するためには、通常、重油やガス等の燃料が必要となる。そのため、繊維製品それ自体から発生する二酸化炭素(CO)に加えて、燃料に由来するCOが発生する。
【0008】
また、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを行うためには、そのリサイクル工程において、多くのエネルギーを消費する。このため、リサイクル工程において、さらなるCOが排出される。
【0009】
また、サーマルリサイクルは、繊維製品を焼却処分する際にその排熱を回収しているに過ぎない。従って、焼却処分と同様に繊維製品それ自体から発生する二酸化炭素(CO)に加えて、燃料に由来するCOが発生する。
【0010】
このように、従来の再利用やリサイクルは、二酸化炭素(CO)排出量削減の観点で問題がある。
【0011】
このような現状を踏まえ、従来の繊維製品の処理方法に代わり得る新たな繊維製品のリサイクル方法が望まれる。
【0012】
そこで、本発明は、二酸化炭素(CO)排出量を最低限にすることのできる、衣料等の繊維製品の再資源化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
生分解性繊維で作られた衣料等の繊維製品は、その大部分を水(HO)と二酸化炭素(CO)に生分解することができる。本発明者は、このような生分解性繊維で作られた衣料等の繊維製品は、その繊維製品が生分解した後の残渣を堆肥として再資源化することができると考えた。
【0014】
そこで、本発明者は、生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を堆肥化する再資源化方法を構築した。
【0015】
さらに、堆肥化に適合する繊維製品のみを確実に回収し、回収された繊維製品を堆肥化する再資源方法を構築した。
【0016】
具体的には、生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合する繊維製品を回収し、回収された繊維製品を高温耐性菌の働きにより堆肥化する方法を構築した。これにより、堆肥化することができる繊維製品を確実に回収し、回収された繊維製品を効率的に堆肥化することを可能とした。上述の生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合する繊維製品は、製造及び販売された後に、通常の形態としては、ユーザーによって所有・使用されたものである。
【0017】
本発明には以下の発明が含まれる。
(1) 生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を回収する回収工程と、
回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、
を含む、繊維製品の再資源化方法。
【0018】
(2) 前記繊維製品は、発光顔料を含んでいるか、製品判別コードが付されているか、あるいは、発光顔料を含んでおり且つ製品判別コードが付されているかのいずれかである、上記(1)に記載の繊維製品の再資源化方法。
【0019】
(3) 前記回収工程において、前記発光顔料から得られる情報、あるいは、前記製品判別コードから得られる情報に基づいて、前記繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であるかどうかの判別を行う、上記(2)に記載の繊維製品の再資源化方法。
【0020】
(4) 前記高温耐性菌は、アクチノマイセス属放線菌、Aquifex属、Sulfolobus属、Aeropyrum属、Pyrolobus属、Pyrobaculumaerophilumからなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記(1)~(3)のいずれかに記載の繊維製品の再資源化方法。
【0021】
(5) 前記堆肥化工程は、前記高温耐性菌と回収された前記繊維製品とを混合して又は接触させて行う、上記(1)~(4)のいずれかに記載の繊維製品の再資源化方法。
【0022】
(6) 前記堆肥化工程は、既に存在する堆肥と回収された前記繊維製品とを混合した状態又は接触させた状態で行われる、上記(1)~(5)のいずれかに記載の繊維製品の再資源化方法。
【0023】
(7) 前記生分解性繊維は、天然繊維、再生繊維、及び生分解性合成繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記(1)~(6)のいずれかに記載の繊維製品の再資源化方法。
【0024】
(8) 前記生分解性繊維は、綿、麻、獣毛、絹、羽毛、再生セルロース繊維、再生タンパク質繊維、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)系、バイオポリブリレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)-ポリ乳酸(PLA)コンパウンド、澱粉ポリエステル樹脂、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、及びポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記(1)~(7)のいずれかに記載の繊維製品の再資源化方法。
【0025】
(9) 前記繊維製品は、衣類、服飾品類、寝具類、タオル類、敷物類、カーテン類、スポーツ用品類、及びアウトドア用品類からなる群から選ばれる、上記(1)~(8)のいずれかに記載の繊維製品の再資源化方法。
【0026】
(10) 生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程を含む、繊維製品の再資源化方法。
【0027】
(11) 生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を製造する製造工程と、
製造された前記繊維製品を販売する販売工程と、
販売された前記繊維製品について、前記繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であると判断した場合に、当該繊維製品を回収する回収工程と、
回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、
を含む、繊維製品の再資源化方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、衣料等の繊維製品を堆肥として再資源化することができる。繊維製品を廃棄することなく、別途の資源として用いることができるので、廃棄物削減に寄与することができる。
【0029】
また、本発明によれば、衣料等の繊維製品を堆肥化工程で処理することができる。堆肥化工程は、焼却処分のように燃料を用いないため、発生する二酸化炭素(CO)は、繊維製品それ自体が生分解して発生する二酸化炭素(CO)のみである。従って、二酸化炭素(CO)排出量を最小限にすることができる。
【0030】
また、本発明によれば、繊維製品を、70℃~120℃の温度で高温耐性菌を用いて生分解するので、生分解が促進され、堆肥化を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の再資源化方法の実施形態の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の再資源化方法の実施形態の他の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の再資源化方法の実施形態の他の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の繊維製品の回収システムの実施形態の一例を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の繊維製品の回収システムの実施形態の他の一例を示すブロック図である。
図6図6は、堆肥化試験2の結果を示す表である。堆肥化試験に供されたTシャツについて、堆肥化試験開始前、15日後、1か月後、2か月後、及び3か月後のそれぞれの時点における、外観写真と、取り出し時のTシャツ近傍の堆肥温度を記載している。
図7図7は、堆肥化試験2の結果を示す表である。堆肥化試験に供されたTシャツについて、堆肥化試験開始から4か月後、5か月後、6か月後、及び7か月後のそれぞれの時点における、外観写真と、取り出し時のTシャツ近傍の堆肥温度を記載している。
図8図8は、堆肥化試験2の結果を示す表である。堆肥化試験に供されたTシャツについて、堆肥化試験開始から8か月後、9か月後、10か月後、11か月後、及び12か月後のそれぞれの時点における、外観写真と、取り出し時のTシャツ近傍の堆肥温度を記載している。
図9図9は、堆肥化試験3の結果を示す表である。堆肥化試験に供された体操服について、堆肥化試験開始前、及び1か月後のそれぞれの時点における、外観写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の繊維製品の再資源化方法は、
生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を回収する回収工程と、
回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、
を含む。
【0033】
[1.繊維製品]
本発明において、堆肥化工程に供される繊維製品は、生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品である。繊維製品は堆肥化に適合しているものであることが好ましい。本発明において回収対象となる繊維製品は、生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合する繊維製品であることが好ましい。本発明において回収対象となる繊維製品は、堆肥化に適合する繊維製品であることを示すために、発光顔料を含んでいるか、製品判別コードが付されているか、あるいは、発光顔料を含んでおり且つ製品判別コードが付されているかのいずれかであるとよい。本発明における回収とは、堆肥化の観点での回収である。すなわち、本発明における回収工程では、堆肥化工程に供される繊維製品を回収する。
【0034】
本発明において回収対象となる繊維製品は、その少なくとも一部は、生分解性繊維を含む素材から作られている。また、本発明における繊維製品は、その少なくとも一部は、後述する堆肥化工程において、生分解されて堆肥となることができるように作られている。
【0035】
繊維には、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等が含まれる。天然繊維としては、綿、麻、羊毛等の獣毛、絹、羽毛等が挙げられる。再生繊維としては、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維、再生タンパク質繊維等が挙げられる。半合成繊維としては、アセテート等のセルロース系半合成繊維、プロミックス等のタンパク質系半合成繊維等が挙げられる。合成繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。
【0036】
生分解性繊維とは、生分解性を有する繊維である。生分解性繊維には、天然繊維、再生繊維、及び生分解性合成繊維が含まれる。生分解性合成繊維は、生分解性合成樹脂を繊維状に成型したものである。生分解性合成繊維には、生分解性合成樹脂を含む材料を繊維状に成型したものを含む。生分解性合成繊維としては、ポリ乳酸系合成繊維、ポリエステル系合成繊維等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)系、バイオポリブリレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)-ポリ乳酸(PLA)コンパウンド、澱粉ポリエステル樹脂、酢酸セルロース(ジアセテート)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)等を含む合成繊維を用いることができる。
【0037】
生分解とは、有機物が微生物の働きによって分解し、水(HO)や二酸化炭素(CO)等の無機物になることをいう。生分解性材料は、生分解性を有する材料である。1993年のアナポリスサミットにおける定義によれば、生分解性プラスチックとは、「微生物によって完全に消費され自然的副産物(炭酸ガス、メタン、水、バイオマスなど)のみを生じるもの」をいう。
【0038】
生分解性の程度を示す目安となる指標としては、日本産業規格のJIS K6950、JIS K6951、JIS K6953-1、JIS K6953-2、又はJIS K6955で規定された生分解度や、OECD 301C 修正MITI試験(I)で規定された生分解度等を用いることができる。例えば、日本バイオプラスチック協会が認定する「グリーンプラ」(登録商標)においては、前記のいずれかの試験において、生分解度が60%以上であることを認定基準の1つとしている。
【0039】
生分解性繊維を含む素材とは、生分解性繊維を含む材料を用いて作られた素材である。代表的には、布地である。生分解性繊維を含む素材は、織物、編物、組物、レース、フェルト、不織布等を含む。
【0040】
生分解性繊維を含む素材は、生分解性繊維を1種類含んでいても、複数種類含んでいてもよい。生分解性の程度(例えば、ある条件下での生分解の速度)が異なる複数種類を含んでいてもよい。生分解性合成繊維と天然繊維とを含んでいてもよい。例えば、生分解性繊維を含む素材は、複数種類の生分解性繊維を混合した糸(混紡糸)を用いて作られた素材であってもよい。
【0041】
また、生分解性繊維を含む素材は、生分解性を有しない成分を含んでいてもよい。生分解性繊維と生分解性を有しない繊維とを混合して用いてもよい。例えば、生分解性繊維と生分解性を有さない繊維とを混合した糸(混紡糸)を用いて作られた素材であってもよい。
【0042】
生分解性繊維を含む素材は、染料や顔料等(発光性能を有するか否かには係わらない)により染色や印刷等がなされていてもよい。生分解性繊維を含む素材は、全体として、生物に有害な成分を含んでいないことが好ましい。また、生分解性繊維を含む素材は、生分解により分解した後においても、生物に有害な成分を生じさせないことが好ましい。
【0043】
繊維製品は、その少なくとも一部が繊維で構成されている製品を意味する。繊維製品は、例えば、衣類、服飾品類、寝具類、タオル類、敷物類、カーテン類、スポーツ用品類、アウトドア用品類等を含む。
【0044】
さらに、繊維製品について、詳しく例を挙げると、衣類は、下着、中衣、外衣、及び寝衣を含む。下着は、シャツ、パンツ、ズボン下、スリップ、ファンデーション・ガーメント、ペチコート、肌じゅばん、こしまき等を含む。中衣は、ベスト、ブラウス、ワイシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、チョッキ等を含む。上衣は、スーツ、セーター、カーディガン、プルオーバー、ワンピース、スカート、オーバー、カバーオール、コンビネーション、ロンパース、ボレロ、スモック、ジャケット、上衣、ズボン、パンタロン、ブルマース、おくるみ等を含む。寝衣は、ねまき、パジャマ、ネグリジェ、ベビードール等を含む。服飾品類は、手袋、帽子、ネクタイ、靴下、ストッキング、パンティ・ストッキング、タイツ、レッグウォーマー、たび、スカーフ、ストール、マフラー、ショール、ハンカチーフ、風呂敷、エプロン、割烹着、ベルト、サスペンダー、ガーター、バッグ・鞄、エコバッグ、シューズ等を含む。寝具類は、枕、敷布団、掛布団、肌掛け布団、毛布、タオルケット、寝具に用いられるカバー、シーツ等を含む。スポーツ用品類は、体操服等の各種スポーツウェア、水着、スポーツ用手袋、スポーツ用帽子、スポーツ用靴下、スポーツシューズ等を含む。アウトドア用品類は、寝袋、テント、タープ、ハンモック、マット、チェア、アウトドアウェア、アウトドア用手袋、アウトドア用帽子、アウトドア用靴下、アウトドア用シューズ等を含む。以上は例示であって、繊維製品はこれら例示のものに限定されることはない。
【0045】
本発明における繊維製品は、生分解性繊維を含む素材以外に、素材を繊維製品に仕立てるために用いられる縫製糸や接着剤等を含んでいてもよい。縫製糸や接着剤等は、生分解性を有していてよい。縫製糸や接着剤等は、生分解性繊維を含む素材と同様に、生物に有害な成分を含んでいないことが好ましい。また、縫製糸や接着剤等が生分解性を有する場合には、生分解により分解した後においても、生物に有害な成分を生じさせないことが好ましい。
【0046】
繊維製品は、ボタン、ファスナー、装飾部品等の付属品を含んでいてもよい。これらの付属品は、後述の回収工程において繊維製品を回収した後、繊維製品から付属品を取り外してもよい。その後、付属品が取り外された繊維製品を後述の堆肥化工程に投入してもよい。繊維製品から付属品を取り外した後に堆肥化する場合には、付属品の素材は任意の素材を用いてよい。
【0047】
あるいは、付属品は、生分解性の素材を用いてもよい。この場合には、付属品ごと後述の堆肥化工程に投入してもよい。付属品が堆肥化工程に投入される場合には、付属品を含む繊維製品全体として、生物に有害な成分を含んでいないことが好ましい。また、生分解性の素材を含む付属品である場合、生分解により分解した後においても、生物に有害な成分を生じさせないことが好ましい。
【0048】
また、繊維製品は、部位ごとに異なる素材で構成されていてもよい。例えば、衣類の一例としてのジャケットにおいて、袖部分と胴体部分とがそれぞれ異なる素材で構成されていてもよいし、表地と裏地が異なる素材であってもよい。他の衣類においても同様である。また、衣類以外の服飾品類、寝具類、タオル類、敷物類、カーテン類、スポーツ用品類、アウトドア用品類等についても同様に、それぞれ、部位ごとに異なる素材で構成されていてもよい。
【0049】
部位ごとに異なる素材で構成された繊維製品は、生分解繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化可能である素材で構成された部位(例えば、袖部分)と、堆肥化に不適な素材で構成された部位(例えば、胴体部分)とから構成されていてもよい。このような繊維製品は、後述の回収工程において回収された後、当該繊維製品のうちの堆肥化可能な部分(例えば、袖部分)のみをその他の部分(例えば、胴体部分)から分離し、分離された堆肥化可能な部分のみを後述の堆肥化工程に投入するとよい。
【0050】
[2.発光顔料]
本発明において、繊維製品は発光顔料を含んでいてもよい。本発明において、発光顔料は、その繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であることを示す役割を果たす。後述の回収工程においては、対象となる繊維製品について、前記発光顔料に由来する蛍光又は燐光が検出・確認された場合に、当該繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であると判断することができる。すなわち、後述の回収工程において、当該繊維製品が堆肥化のための回収対象となる繊維製品であることの判断を行うことができる。このような生分解性繊維を含む素材で作られ且つ発光顔料を含む繊維製品は、通常、販売等することにより市場に流通する。市場に流通した繊維製品は、通常、ユーザーによって使用される。その後、このような生分解性繊維を含む素材で作られ且つ発光顔料を含む繊維製品を回収する。その結果、回収された繊維製品は、確実に、後述の堆肥化工程において堆肥化することができる。
【0051】
発光顔料は、フォトルミネッセンスにより発光する性質を有する顔料である。フォトルミネッセンスとは、X線や紫外線、可視光線等の電磁波が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出することである。一般に、フォトルミネッセンスのうち、電磁波(光)を照射している間発光し、照射を止めると発光も止まる(あるいは発光の持続時間が短い)現象を蛍光という。一方、電磁波(光)の照射を止めた後も発光が持続する(あるいは発光の持続時間が長い)現象を燐光という。本発明において、発光顔料は、蛍光を発する蛍光顔料と燐光を発する燐光顔料とを含む。燐光顔料は、蓄光顔料や夜光顔料とも呼ばれる。なお、発光顔料を蛍燐光顔料と称することもある。
【0052】
発光顔料(蛍燐光顔料)は、一般に、エネルギーの高い短波長の光、主に紫外線(UV)を照射すると発光する。例えば、波長300nm~400nmの紫外線を照射すると発光する。発光顔料(蛍燐光顔料)は、例えば紫外線のエネルギーを吸収し、そのうちの余分なエネルギーを放出する際に発光する。従って、発光の波長は、照射された光よりも長波長になる。発光顔料の種類によって、放出される光の波長が異なる。つまり、発光ピークの波長や発光スペクトルが異なる。その結果、発光顔料の種類によって、蛍光又は燐光の色相が異なる。発光顔料は、一般に可視光領域の蛍光又は燐光を発するものが多いが、可視光領域以外の紫外線や赤外線等の蛍光又は燐光を発するものであってもよい。
【0053】
発光顔料は、無機発光顔料(無機蛍光顔料、無機燐光顔料)又は有機発光顔料(有機蛍光顔料、有機燐光顔料)のいずれであってもよい。無機発光顔料は、発光体(蛍光体又は燐光体)を含む。発光体は、母体結晶中に蛍光又は燐光を発生する発光中心(添加イオンや欠陥)が存在しているものである。発光体の母体結晶としては、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、タングステン酸塩、バナジン酸塩、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、ホウ酸塩等が挙げられる。無機発光顔料は、このような母体結晶に発光中心となる希土類元素、重金属、マンガン等の付活剤が導入されているものが多い。
【0054】
無機発光顔料(無機蛍燐光顔料)に用いられる発光体(蛍光体又は燐光体)は特に限定されないが、例えば、以下のようなものが例示される。母体結晶によって分類すると、リン酸塩発光体、ケイ酸塩発光体、アルミン酸塩発光体、タングステン酸塩発光体、バナジン酸塩発光体、酸化物発光体、硫化物発光体、ハロゲン化物発光体、ホウ酸塩発光体などが挙げられる。発光体(蛍光体又は燐光体)は、通常光では白色のものが多い。
【0055】
より具体的には、例えば以下のようなものが例示される。以下に例示の発光体の組成式において、コロン「:」の左側は母体結晶を、右側は発光中心を構成する元素を表している。なお、組成式にコロン「:」がない場合は、母体結晶内の欠陥が発光中心となる。また、発光体の組成式の後に続くカッコ内の数字は、それぞれの蛍燐光顔料の発光ピーク波長(nm)を示す。
【0056】
リン酸塩発光体としては、Ca10(PO:Sb(480nm)、Sr(POCl:Eu(445nm)、Cd(POCl:Mn(595nm)、等が挙げられる。
【0057】
ケイ酸塩発光体としては、ZnSiO:Mn(525nm)、ZnSiO(ZnSiO):(Mn,Al,Ti)、YSiO:(Tb,Mn)、CaSiO:(Mn,Pb)(615nm)、ZnSiO:(Mn,As)(525nm)、ZnSiO:(Mn,In)(525nm)、(Zn,Cd,Mg)SiO:Mn(630nm)、(Sr,Mg)SiO:(Mn,Eu)(455/685nm)、(Sr,Mg)SiO:Eu(455nm)、BaSi:Pb(350nm)、YSiO:Ce(400nm)、YSiO:(Ce,Tb)(440/545nm)、YSiO:Tb(542nm)、GdSiO:Ce(430nm)、LuSiO:Ce(400nm)等が挙げられる。
【0058】
アルミン酸発光体としては、CaAl:Eu,Nd(440nm)、SrAl1425:(Eu,Dy)(490nm)、SrAl:(Eu,Dy)(520nm)、SrAl:Eu(520nm)、(Ce,Tb)MgAl1119(545nm)、SrAl:Eu,Dy(520nm)、BaMgAl1017:Eu(445nm)、BaMgAl1017:Eu,Mn(515nm)、BaO.6Al:Mn(515nm)、YAlO:Ce(370nm)、YAl12:Cr(705nm)、YAl12:Ce(555nm)、YAl12:Ce(550nm)、YAl12:Ce(560nm)、Y(Al,Ga)12:Ce(515nm)、Y(Al,Ga)12:Tb(543nm)、(Y,Gd)Al12:Ce(570nm)、LuAl12:Ce(515nm)等が挙げられる。
【0059】
タングステン酸塩発光体としては、CaWO(410nm)、KEu(WO(614nm)、MgWO(485nm)、CaWO:Nd(890/1064nm)、CdWO(475nm)等が挙げられる。
【0060】
バナジン酸塩発光体としては、YVO:Eu(619nm)、YVO:Nd(880/1065nm)、YVO:Dy(480/575nm)、YVO:Tm(475nm)等が挙げられる。
【0061】
酸化物発光体としては、Y:Eu(611nm)、ZnGeO:Mn(534nm)、Mg3.5FGeO:Mn(660nm)、ZnO:Zn(505nm)、ZnO:Ga(385nm)、Y:Eu(611nm)等が挙げられる。
【0062】
硫化物発光体としては、ZnS:(Cu,Al)(531nm)、CaSrS:Bi(450nm)、ZuS:Cu(530nm)、ZnS:(Cu,Co)(530nm)、ZnS:Mn(585nm)、ZnS:(Cu,Pb)(495nm)、ZnS:(Cu,Pb,Mn)(490/580nm)、ZnS:Ag(450nm)、ZnS:(Ag,Ni)(450nm)、CaS:(Eu,Tm)(650nm)、ZnS:(Au,Cu,Ag,Mn)、GdS:(Tb,Eu)、ZnS:Ag(450nm)、(Ca,Sr)S:Bi(465nm)、CaS:Ce(510nm)、CaS:Ce,Sm(515nm)、CaS:Eu(650nm)、CaS:(Eu,Cu)(650nm)、CaS:(Eu,Sm)(655nm)、(Zn,Cd)S:Ag(530nm)、(Zn,Cd)S:Cu(550nm)、CdS:Cu(805nm)、YS:Eu(626nm)、YS:Tb(542nm)、YS:Pr(514nm)、YS:(Mg,Eu,Ti)(627nm)、YS:Tb(544nm)、YS:Tb,Eu(417/544/626nm)、LaS:Eu(624nm)、LaS:Tb(543nm)、GdS:Pr(513nm)、GdS:(Pr,Ce,F)(513nm)、GdS:Eu(626nm)、GdS:Tb(545nm)、(Gd,La)S:Eu(625nm)等が挙げられる。
【0063】
ハロゲン化物発光体としては、CsI:Na(430nm)、CsI:Tl(540nm)、CsI:(Na,Te)、KMgF:Mn(600nm)、MgF:Mn(590nm)、(Zn,Mg)F:Mn(585nm)、BaFBr:Eu(390nm)、LaF:Ce(285nm)等が挙げられる。
【0064】
ホウ酸塩発光体としては、SrB10:Pb(302nm)、(Y,Gd)BO:Eu(593nm)、InBO:Eu(589nm)、InBO:Tb(550nm)等が挙げられる。
【0065】
また、有機発光顔料(有機蛍燐光顔料)は、有機化合物を発光母体とする顔料である。有機発光顔料(有機蛍燐光顔料)は、顔料色素とレーキとを含む。顔料色素は、蛍光や燐光を発現する有機化合物それ自体が、水や有機溶剤(アルコール、エステル、エーテル、トルエン、キシレン等)に対して不溶なものをいう。レーキは、蛍光染料を何らかの手段により不溶化したものをいう。
【0066】
顔料色素としては、例えば、ルモゲン顔料等が挙げられる。レーキは、例えば、蛍光染料を、合成樹脂に固溶させ、その固溶体を粉末状に粉砕することにより作製される。蛍光染料としては、例えば、ブリリアントスルフォフラビンFF(Brilliantsulfoflavine FF;C.I.56205)、チオフラビン(Thioflavine;C.I.49005)、ベーシックイエローHG(Basic Yellow HG;C.I.46040)、フルオレセイン(Fluorescein;C.I.45380)、エオシン(Eosine;C.I.45380)、ローダミン6G(Rhodamine 6G;C.I.45160)、ローダミンB(Rhodamine B;C.I.4517)等が挙げられる。ここで、C.I.はカラーインデックスColor Indexである。
【0067】
発光顔料は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせても用いてもよい。無機発光顔料は、1種類の発光体を含んでもよいし、複数の発光体を含んでもよい。無機発光顔料と有機発光顔料を組み合わせて用いてもよい。なお、上記に挙げた発光顔料は例示であり、発光顔料はこれらに限られるものではない。用いる発光顔料は、安全性を考慮して選択してよい。また、入手が容易である点や安価である点等を考慮して選択してよい。
【0068】
発光顔料に紫外線等を照射した時に発生する蛍光又は燐光(蛍燐光)は、発光顔料の種類によってそれぞれ固有のピーク波長、スペクトルを有する。その結果、蛍燐光の色相は、発光顔料の種類によってそれぞれ固有の色相となる。従って、発光顔料の種類や配合(複数種類の発光顔料を組み合わせた場合)により所望の色相の蛍燐光となるようにすることができる。また、例えば、生分解性繊維の種類や生分解のしやすさの度合い等に応じて、発光顔料の種類や配合を変更してもよい。そうすると、回収工程において測定された蛍燐光の色相によって、生分解性繊維の種類や生分解のしやすさの度合い等を判別することもでき得る。
【0069】
本発明において、繊維製品は発光顔料を含む場合に、発光顔料を含む形態は特に限定されないが、例えば、繊維製品の素材に含まれる生分解性繊維の内部に発光顔料が包含されている形態であってよい。
【0070】
生分解性繊維の内部に発光顔料を包含させる工程は、例えば、以下のように行ってよい。生分解性樹脂と発光顔料とを混練し、生分解性樹脂に発光顔料を均質に分散させる。その後、この組成物を所望の太さ(デニール)で繊維化して、発光顔料を内部に包含する生分解性繊維を作製してよい。繊維化は、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸などの公知の紡糸技術を用いて行ってよい。例えば、樹脂を熱で融解した融液や、樹脂を溶媒に溶解した溶液をノズルから押し出し、一定の速度で引き取ることにより繊維状の形態にしてよい(紡糸工程)。紡糸工程に引き続いて、通常、延伸工程、熱処理工程を行う場合が多い。延伸には、繊維の構造を構成するポリマー分子を繊維軸方向に配向させる作用や、繊維内部の空隙をつぶして繊維の高分子密度を高める作用がある。生分解性繊維の断面形状は、例えば、円形断面であってもよいし、異形断面(多角形、星形、中空等)であってもよい。例えば、紡糸工程におけるノズルの口金の形状により所望の断面形状にすることができる。また、生分解性繊維は、例えば、多孔性繊維であってもよい。ノズルの閉塞や糸切れを防ぐ観点で、生分解性樹脂組成物中において、発光顔料が凝集せず、生分解性樹脂に均質に分散することが好ましい。
【0071】
生分解性樹脂に加える発光顔料の種類や量は、後述の回収工程において当該発光顔料に由来する蛍光又は燐光が確認できる範囲で、当業者が適宜決定することができる。用いる発光顔料の種類によって、生分解性樹脂に加える発光顔料の量は異なり得るが、例えば、生分解性繊維に対する発光顔料の濃度は、重量を基準として、100~10000ppmであってよい。あるいは、100ppm~5000ppm、500ppm~3000ppm程度であってもよい。作製した生分解性繊維から公知の方法を用いて布地などの素材を作り、その素材から繊維製品を製造してよい。
【0072】
また、繊維製品が発光顔料を含む形態としては、例えば、生分解性繊維の表面に発光顔料が付着している形態であってよい。あるいは、生分解性繊維同士の相互間に、発光顔料が何らかの力(ファンデルワールス力等)により保持されている形態であってよい。
【0073】
生分解性繊維の表面に発光顔料を付着させる場合には、例えば、浸漬法やローラーサイジング法等の公知の方法を用いてよい。具体的には、例えば、発光顔料を樹脂や溶剤と混合した組成物を作製し、その組成物に生分解性繊維を浸漬させることにより、生分解性繊維の表面に発光顔料を付着させてもよい(浸漬法)。その後、発光顔料を付着させた生分解性繊維から素材を作り、その素材から繊維製品を製造してよい。
【0074】
生分解性繊維に発光顔料を付着させる工程は、上述のように繊維の状態で行うことに限られない。例えば、繊維を集束させた糸の状態で行ってもよい。あるいは、生分解性繊維を含む素材(織物、編物、組物、レース、フェルト、不織布等)の状態で、発光顔料を付着させてもよい。また、あるいは、素材を繊維製品に加工し、その後、繊維製品の状態で、発光顔料を付着させてもよい。このような場合には、例えば、生分解性繊維同士の相互間に発光顔料が保持されている形態であってよい。この場合、発光顔料が生分解性繊維に直接的に付着していなくてもよい。付着に際しては、例えば、ローラーやスクリーン等の公知の手法を用いるとよい。
【0075】
本発明の繊維製品には、堆肥化に適合する繊維製品であることを示すために、発光顔料が含まれていてもよい。当該発光顔料に由来する蛍燐光を検出・確認することにより、その繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であることが判断・認識できる。
【0076】
繊維製品が部位ごとに異なる素材で構成されている場合には、そのうちの堆肥化に適合する素材が発光顔料を含んでいてよい。例えば、衣類において、袖部分が堆肥化に適合する素材で構成され、胴体部分が堆肥化に適合しない素材で構成されている場合、堆肥化に適合する袖部分の素材が発光顔料を含んでおり、堆肥化に適合しない胴体部分の素材が発光顔料を含まないようにしてもよい。この場合、堆肥化に適合する部位と適合しない部位とをそれぞれ判別することもできる。衣類以外の服飾品類、寝具類、タオル類、敷物類、カーテン類、スポーツ用品類、アウトドア用品類等についても同様に考えられる。
【0077】
また、例えば、生分解性繊維の種類や、繊維製品の生分解しやすさの程度等により、発光顔料の種類や組成(複数種類の発光顔料を組み合わせた場合)を変更してもよい。発光顔料の種類や組成が異なると、異なる色相の蛍燐光が発現する。この場合、蛍燐光の色相の違いによって、その繊維製品の生分解しやすさの程度等を判別することも可能である。例えば、蛍燐光の色相に基づいて、繊維製品毎あるいは繊維製品の部位毎に、後述の堆肥化工程を行う施設や堆肥化の条件を変更してもよい。そうすることで、さらに効率的に繊維製品を堆肥化することができ得る。
【0078】
また、発光顔料を、ピスネームやネームタグ等の布地素材に含ませておいても良いであろう。
【0079】
[3.製品判別コード]
本発明において回収対象となる繊維製品には、製品判別コードが付されていてよい。上述の発光顔料を含む繊維製品に、さらに製品判別コードが付されていてもよい。後述の回収工程においては、上述の発光顔料による判別に加えて又は替えて、製品判別コードに基づいて、繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であるかどうかの判別を行うこともできる。すなわち、繊維製品が堆肥化のための回収対象となる繊維製品であるかどうかの判別を行うこともできる。
【0080】
製品判別コードは、繊維製品が堆肥化に適合することを示すものであればよい。製品判別コードが有する情報、製品判別コードから読み取られる情報、あるいは製品判別コードからアクセスできる情報から、繊維製品が堆肥化に適合することが分かるようになっているとよい。
【0081】
本発明において回収対象となる繊維製品は、その少なくとも一部は、生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合するものであり、発光顔料を含んで製造されたものであってもよく、及び/又は、製品判別コードが付されて製造されていてもよい。製品判別コードが付された繊維製品は、製品判別コードに基づいて、該繊維製品の少なくとも一部が堆肥化に適合することを判別することもできる。このような製品判別コードが付された繊維製品は、通常、販売等することにより市場に流通する。市場に流通した繊維製品は、通常、ユーザーによって使用される。その後、このような製品判別コードが付された繊維製品を回収する。その結果、回収された繊維製品は、確実に、後述の堆肥化工程において堆肥化することができる。
【0082】
例えば、製品判別コードは、ブランドロゴ、製品ロゴのような繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であることを示す図案、あるいは、ブランド名称や製品説明等の繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であることを示す文字列であってよい。例えば、ピスネームやネームタグ等であってよい。好ましくは、自動認識用コードであってよい。
【0083】
自動認識用コードは、一次元コード、二次元コード、及び電子タグを含む。一次元コードは、いわゆるバーコード(一次元バーコード)であり、JAN(Japanese Article Number)シンボル、ITF(Inter-Leaved Two of Five)シンボル、GS1-128シンボル、GS1データバー等を含む。二次元コードは、QRコード(登録商標)、データマトリックス、GS1合成シンボル等を含む。電子タグは、ICタグ、RFタグ、無線タグ等とも呼ばれる。好ましくは、一次元コード又は二次元コードを用いるとよい。さらに好ましくは、QRコード(登録商標)を用いてもよい。
【0084】
本発明において回収対象となる繊維製品には製品判別コードが付されていてもよい。製品判別コードは、繊維製品の表面のように使用時に視認可能な位置に付されていてもよいし、繊維製品の裏面や内面のように使用時には視認できない位置に付されていてもよい。また、製品判別コードが電子タグの場合には、視認できなくても読み取り装置を用いて認識可能であるため、視認できない態様にて付されていてもよい。
【0085】
衣類等の繊維製品に製品判別コードを付す方法には、印刷、染色、縫い付け、貼り付け等の様々な方法が含まれる。自動認識用コード等の製品判別コードは、衣類等の繊維製品の一部分に直接印刷されていてもよい。自動認識用コード等の製品判別コードを染め付けた(あるいは、染め抜いた)素材(布地等)から衣類等の繊維製品を製造してもよい。自動認識用コード等の製品判別コードを編み込んだ素材(布地等)から衣類等の繊維製品を製造してもよい。自動認識用コード等の製品判別コードを印刷、染色、収納等した部品を別途作成し、その部品を衣類等の繊維製品に縫い付け又は貼り付け等してもよい。例えば、製品判別コードを付したピスネームやネームタグ等を、繊維製品に縫い付け、貼り付け等してもよい。
【0086】
製品判別コードには、製品判別コードを付すべき繊維製品が堆肥化に適合する旨の情報を含む製品情報が関連付けられているとよい。
【0087】
繊維製品が部位ごとに異なる素材で構成されている場合には、それぞれの部位が堆肥化に適合するか否かを示す情報が関連付けられているとよい。例えば、衣類において、袖部分と胴体部分、表地と裏地等の部位ごとに素材が異なる場合には、その衣類に付された製品判別コードに、それぞれの部位が堆肥化に適合するか否かを示す情報を関連付けられているとよい。また、衣類以外の服飾品類、寝具類、タオル類、敷物類、カーテン類、スポーツ用品類、アウトドア用品類等についても同様に考えられる。
【0088】
製品情報には、繊維製品が堆肥化に適合する旨の情報以外にも、材質、組成、色、サイズ、ブランド名、製品名称、製品の型番、品番、繊維製品の取り扱い方法等を含んでいてもよい。
【0089】
製品判別コードには、製品判別コードを付すべき繊維製品の生分解しやすさの程度を示す情報が関連付けられていてもよい。例えば、繊維製品が、生分解しやすさの程度が異なる複数種類の生分解性繊維を含む場合や、生分解性合成繊維と天然繊維とを含む場合の場合には、その素材によって繊維製品の生分解のしやすさが異なる。生分解のしやすさの程度を示す情報に基づいて、後述の堆肥化工程を行う施設や堆肥化の条件を変更してもよい。そうすることで、さらに効率的に繊維製品を堆肥化することができ得る。
【0090】
製品判別コードとして自動認識用コードを用いる場合、自動認識用コードは、自動認識用コードを付すべき繊維製品が堆肥化に適合する旨の情報を含む製品情報をコードしているとよい。該自動認識用コードが付された繊維製品を回収することによって、確実に、後述の堆肥化工程において堆肥化できる繊維製品のみを回収することができる。
【0091】
繊維製品が堆肥化に適合する旨の情報としては、特に形式を問わない。例えば、繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品である旨、後述の堆肥化工程の対象となる繊維製品である旨、後述の回収工程において回収対象である旨等を直接的に記した情報であってもよい。堆肥化に適合する繊維製品であることを示すマークや記号あるいはブランド名等であってもよい。あるいは、材質や組成等でもあり得る。
【0092】
また、例えば、URLを自動認識用コードにコードしておき、そのURLで特定されるウェブページ等に、繊維製品が堆肥化に適合する旨の情報を記載しておいてもよい。さらに、繊維製品の材質、回収方法、堆肥化による再資源化方法等の情報を詳述しておいてもよい。また、複数の情報がコードされていてもよい。
【0093】
自動認識用コードにコードされた製品情報には、繊維製品が堆肥化に適合するか否かの情報以外にも、材質、組成、色、サイズ、ブランド名、製品名称、製品の型番、品番、繊維製品の取り扱い方法等を含んでいてもよい。
【0094】
[4.繊維製品の再資源化]
本発明の再資源化方法は、実施形態の一例として、
生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程を含み得る。
【0095】
さらに、本発明の再資源化方法は、実施形態の一例として、
生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品を回収する回収工程と、
回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、
を含み得る。
【0096】
本発明において、堆肥化工程に供される繊維製品は、生分解性繊維を含む素材で作られた繊維製品である。繊維製品は堆肥化に適合しているものであることが好ましい。本発明において回収対象となる繊維製品は、生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合する繊維製品であることが好ましい。回収対象となる繊維製品は、堆肥化に適合する繊維製品であることを示すマーカーとしての発光顔料を含んで製造されてよい。又は、堆肥化に適合する繊維製品である旨の情報を含む製品判別コードを付して製造されてよい。あるいは、前記発光顔料を含み且つ前記製品判別コードを付して製造されてよい。
【0097】
製造された前記繊維製品は、通常、販売されて市場の流通経路に乗せられる。実店舗やオンライン上でユーザーに直接販売してもよいし、別の事業者(商社、卸売業者、小売店等)に販売(卸売)してもよい。あるいは、サンプルとして提供する等の販売以外の方法で流通する場合もあり得る。市場に流通した繊維製品は、通常、ユーザーにより使用される。
【0098】
本発明の再資源化方法は、製造、流通、回収、及び堆肥化を、1つの事業者(その事業者と協力関係にある事業者を含む)がすべて行ってもよいし、複数の事業者が連携あるいは分担して行ってもよい。また、1つの工程を複数の事業者が連携あるいは分担して行ってもよい。例えば、繊維製品の製造において、生分解性繊維の製造、その生分解性繊維を含む素材の製造、及び、その素材を用いた繊維製品の製造を、1つの事業者がすべて行ってもよいし、複数の事業者が連携あるいは分担して行ってもよい。また、繊維製品が発光顔料を含む場合、その製造において、いずれの段階で発光顔料を含むようにしてもよい。
【0099】
図1は、発光顔料を含む繊維製品についての、本発明の再資源化方法の実施形態の一例を示すフローチャートである。図1は、回収(S101~S105)、堆肥化(S106~S107)の流れを示している。
【0100】
図2は、製品判別コードが付された繊維製品についての、本発明の再資源化方法の実施形態の他の一例を示すフローチャートである。図2は、回収(S111,S112,S103~S105)、堆肥化(S106~S107)の流れを示している。
【0101】
図3は、本発明の再資源化方法の実施形態の他の一例を示すフローチャートである。図3は、対象となる繊維製品の製造(S201)、販売による流通(S202)、ユーザーによる使用(S203)、回収(S204~S209)及び堆肥化(S210~S211)の流れを示している。
【0102】
[4-1.回収工程]
本発明の回収対象とする繊維製品は、上述のように、生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合しているものである。本発明における回収とは、堆肥化の観点での回収である。すなわち、本発明における回収工程では、堆肥化工程に供される繊維製品を回収する。
【0103】
繊維製品の回収工程は、任意の場所で行うことができる。回収拠点は、例えば、繊維製品の販売店舗、後述の堆肥化工程を行う施設、地域のリサイクル拠点、自治体の施設等を利用することができる。主には、繊維製品の販売店舗で回収され得る。
【0104】
回収工程において回収される繊維製品は、通常、ユーザーによって使用済みのものである。あるいは、販売された後、未使用のままであったものも含まれる。また、回収工程において、例えば、製造工場や倉庫、販売店舗、あるいは、中間業者(卸売業者等)に存在する在庫品のうちの不要になったものや不良品を回収してもよい。
【0105】
例えば、生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合している繊維製品が発光顔料を含む場合における、回収工程の実施形態の例について説明する。この場合において、当該発光顔料は、その繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であることを示す役割を果たしている。この場合、回収拠点では、堆肥化に適合する繊維製品であることを示す発光顔料に由来する蛍光又は燐光が検出・確認された繊維製品を回収するとよい。
【0106】
回収工程において、繊維製品に、堆肥化に適合する繊維製品であることを示す発光顔料が含まれている場合に、当該繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であると判断するとよい。回収の際に、繊維製品に紫外線等の電磁波を照射し、当該発光顔料に由来する蛍光又は燐光が発現するかどうかを確認するとよい。繊維製品に前記発光顔料に由来する蛍光又は燐光を確認した場合、すなわち、繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品である場合に、堆肥化の観点で回収するとよい。このように、回収工程において、発光顔料から得られる情報に基づいて、該繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であるかどうかの判別を行うことができる。
【0107】
紫外線等の電磁波の照射には、任意の方法を用いることができる。当該発光顔料が吸収する波長の電磁波を含む電磁波を照射するとよい。例えば、当該発光顔料が紫外線を吸収して蛍光又は燐光を発する場合には、ブラックライト(UVライト)を用いてもよい。当該発光顔料が吸収する紫外線の波長に基づいて適切なブラックライトを選択するとよい。
【0108】
また、蛍光又は燐光の確認方法としては、任意の方法を用いることができる。例えば、紫外線等の電磁波を照射された繊維製品が当該発光顔料に由来する蛍光又は燐光を発するかどうかを目視で確認してもよい。その際に、当該発光顔料に由来する蛍光又は燐光を発する色見本を用いてもよい。繊維製品と同時に色見本にもブラックライトを当てて、繊維製品が色見本と同様に発光するかどうかを目視で確認してもよい。色見本との比較を行えば、蛍燐光の色相を判別することもでき得る。
【0109】
あるいは、測定機器を用いて蛍光又は燐光を確認してもよい。蛍燐光を測定するための測定機器(発光測定機器、蛍光測定器)としては、分光測色計(分光型)や光電色彩計(刺激値直読型)等が挙げられる。測定機器は、通常、蛍燐光を発現させるために紫外線を照射する紫外線源を備えている。繊維製品を分光測色計(分光型)や光電色彩計(刺激値直読型)等の測定機器により測定して、当該発光顔料に由来する蛍光又は燐光を発するかどうかを確認してもよい。このような測定機器を用いると、判定する人の個人差等の影響を受けずに、より正確に蛍燐光の確認を行うことができ得る。また、測定機器を用いると、色相の違いをより細かく判別できる。例えば、生分解性繊維の種類や生分解のしやすさの程度等に応じて、繊維製品に含まれる発光顔料の種類や配合(複数種類の発光顔料を組み合わせた場合)が変更されている場合であっても、それらに対応する蛍燐光の色相の違いを正確に判別することもでき得る。
【0110】
発光顔料を含む繊維製品についての、回収工程の実施形態の一例を、図1を参照して説明する。図1は、単一の素材から作られた繊維製品(例えば、Tシャツ)を回収する場合の一例を示している。回収拠点(例えば、対象の繊維製品の販売店舗)に繊維製品が搬入されることが開始となる。例えば、ユーザーが繊維製品を回収拠点に持参あるいは配送する。回収拠点において、搬入された繊維製品に紫外線を照射する(S101)。堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料に応じて、照射する紫外線の波長を適宜選択するとよい。紫外線の照射には、例えば、一般的なブラックライト(UV)を用いてよい。ブラックライトは、例えば、回収拠点に備え付けられていてもよいし、懐中電灯型のようなハンディタイプのものを用いてもよい。あるいは、蛍燐光の測定機器に一体化されていてもよい。
【0111】
次に、紫外線を照射された該繊維製品に、前記発光顔料に由来する発光(蛍光あるい燐光)が確認されるかどうかを判別する(S102)。該繊維製品に前記発光顔料に由来する発光(蛍光あるい燐光)が確認されるかどうかの操作は、例えば分光測色計を用いて行ってよい。該繊維製品に前記発光顔料に由来する発光(蛍光あるい燐光)が確認された場合には、該繊維製品は堆肥化に適合する繊維製品であると判断できる。
【0112】
判別(S102)の結果、繊維製品に、前記発光顔料に由来する発光(蛍光あるい燐光)が確認された場合には、その繊維製品を堆肥化のために回収する(S103)。
【0113】
判別(S102)の結果、繊維製品に、前記発光顔料に由来する発光(蛍光あるい燐光)が確認されなかった場合には、その繊維製品を堆肥化のためには回収しない(S104)。つまり、後述の堆肥化工程に供するためには回収しない。例えば、該繊維製品を持参あるいは配送したユーザーに返却してもよい。あるいは、例えば、再利用や従来のリサイクルを行うために別途回収してもよい。
【0114】
また、例えば、部位ごとに異なる素材で構成された繊維製品においては、繊維製品が堆肥化に適合する部位を含んでいる場合には、その繊維製品は、通常、回収される。
【0115】
回収工程において、後述の堆肥化工程に供するために回収された繊維製品は、堆肥化に適合する繊維製品である。従って、後述の堆肥化工程において、非生分解性繊維等による堆肥の汚染を防止することができる。また、堆肥化に適合する繊維製品のみを堆肥化工程に投入することができるため、堆肥化工程における生分解性能を低下させないという利点がある。
【0116】
回収工程において、後述の堆肥化工程に供するために回収された繊維製品は、堆肥化施設に搬送される(S105)。回収拠点が堆肥化施設である場合には、この工程は省略されうる。
【0117】
堆肥化施設に搬送された繊維製品は、後述の堆肥化工程に供され、堆肥化される(S106)。その後、堆肥化された繊維製品の残渣は、後述のように堆肥として再利用される(S107)。
【0118】
また、生分解性繊維を含む素材で作られ且つ堆肥化に適合している繊維製品に製品判別コードが付されている場合における、回収工程の実施形態の例について説明する。この場合、回収工程において、製品判別コードから読み取られる情報に基づいて、繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であるかどうかの判別を行ってもよい。回収の際に、繊維製品に付された製品判別コードを確認し、繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品である場合に、堆肥化の観点で回収してもよい。
【0119】
製品判別コードの確認方法としては、任意の方法を用いることができる。例えば、ブランドロゴ、製品ロゴのような図案、ブランド名称や製品説明等の文字列を目視で確認してもよい。例えば、ピスネームやネームタグ等を目視で確認してもよい。また、例えば、製品判別コードが自動認識用コードである場合、バーコードリーダーやQRコードリーダー等のリーダー、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)等を用いて自動認識用コードを読み取ることにより確認してもよい。
【0120】
製品判別コードが付された繊維製品についての、回収工程の実施形態の一例を、図2を参照して説明する。図2において、図1と同じステップには同じ符号を付しているので、説明を省略する。例えば、搬入された繊維製品について、以下のように、製品判別コードによる判別を行ってもよい(S111~S112)。まず、搬入された繊維製品に付された製品判別コードを確認する(S111)。製品判別コードの確認は、例えば自動認識用コードの読み取りにより行ってよい。
【0121】
次に、該製品判別コードから得られる情報が、堆肥化に適合する製品であることを示しているかどうかを判別する(S112)。
【0122】
例えば、回収拠点において、繊維製品についての製品判別コードと関連付けられた製品情報が蓄積されたデータベースにアクセスできる端末(例えば、パーソナルコンピュータ、リーダー、スマートフォン、タブレット端末、PDA等)を準備しておいてもよい。端末を用いて、回収拠点に持ち込まれた繊維製品の製品判別コードを読み取り、読み取られた製品判別コードと前記データベースの製品情報とを照合する。読み取られた製品判別コードの製品情報を前記データベースから抽出し、該製品情報が、堆肥化に適合する繊維製品であることを示す情報を含む場合に、該製品判別コードが付された該繊維製品が堆肥化可能、すなわち、回収可能であると判断することができる。さらに、該繊維製品が堆肥化可能及び/又は回収可能であることを示す何らかの情報が、端末や端末と接続されたモニター等に表示されるようになっていてもよい。
【0123】
あるいは、読み取られた製品判別コードの製品情報を前記データベースから抽出し、該製品情報が、堆肥化に適合する繊維製品であることを示す情報を含まない場合には、該製品判別コードが付された該繊維製品が堆肥化不可能、すなわち、堆肥化の観点での回収不可能であると判断する。また、読み取られた製品判別コードの製品情報が、前記データベースに存在しない場合には、通常、該製品判別コードが付された該繊維製品が堆肥化の観点での回収不可能であると判断する。
【0124】
また、例えば、予め堆肥化に適合する繊維製品に付される製品判別コードをコンピュータ等に記憶させておき、読み取られた製品判別コードと、記憶された製品判別コードとを照合してよい。照合の結果、読み取られた製品判別コードが、堆肥化に適合する製品に付される製品判別コードのうちの1つと一致する場合には、その製品判別コードが付された繊維製品は、回収可能であると判断してもよい。
【0125】
判別(S112)の結果、読み取られた製品判別コードが、堆肥化に適合する製品であることを示している場合には、その製品判別コードが付された繊維製品を堆肥化のために回収する(S103)。
【0126】
判別(S112)の結果、読み取られた製品判別コードが、堆肥化に適合する製品であることを示していない場合には、その製品判別コードが付された繊維製品を堆肥化のためには回収しない(S104)。つまり、後述の堆肥化工程に供するためには回収しない。例えば、該繊維製品を持参あるいは配送したユーザーに返却してもよい。あるいは、例えば、再利用や従来のリサイクルを行うために別途回収してもよい。
【0127】
繊維製品が部位ごとに異なる素材で構成されている場合には、製品判別コードには、それぞれの部位が堆肥化に適合するか否かを示す情報が関連付けられているとよい。例えば、衣類において、袖部分と胴体部分、表地と裏地等の部位ごとに素材が異なる場合には、その衣類に付された製品判別コードに、それぞれの部位が堆肥化に適合するか否かを示す情報を関連付けられているとよい。また、衣類以外の服飾品類、寝具類、タオル類、敷物類、カーテン類、スポーツ用品類、アウトドア用品類等についても同様に考えられる。このように部位ごとに異なる素材で構成された繊維製品においては、繊維製品が堆肥化に適合する部位を含んでいる場合には、その繊維製品は、通常、回収される。
【0128】
堆肥化に適合する繊維製品が、発光顔料を含み且つ製品判別コードが付されている場合には、それぞれの回収拠点の設備の事情等に応じて、蛍燐光による判別(S102)及び製品判別コードによる判別(S112)のいずれかを選択してもよい。また、例えば、蛍燐光による判別(S102)によって、該繊維製品が堆肥化に適合する繊維製品であると判断した後に、さらに、製品判別コードに基づいて適切な堆肥化の条件を判別する実施形態等も考えうる。
【0129】
[4-2.堆肥化工程]
回収された繊維製品は、堆肥化工程にて処理される。本発明の堆肥化工程は、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて行われる。堆肥化工程において、繊維製品は、生分解されて堆肥となる。
【0130】
堆肥化とは、有機性廃棄物をあるコントロールされた条件下で、取り扱い易く、貯蔵性が良く、環境に害を及ぼすことなく安全に土壌還元可能な状態まで微生物分解することを意味する。すなわち、有機性廃棄物を土壌、おがくず、及び/又は木片チップ中等で好気性微生物によって生分解する。生分解後には、生物にとって安全な残渣のみが残る。この残渣には、微生物が多く含まれており、堆肥として使用することができる。堆肥化における生分解は、一般に発酵とも言われる。
【0131】
堆肥化工程においては、回収された繊維製品が生分解される。生分解される際には、水(HO)や二酸化炭素(CO)等が発生する。しかしながら、発生する二酸化炭素(CO)は繊維製品の有機炭素に由来するもののみであり、焼却処分時のように燃料の燃焼による二酸化炭素(CO)は生じない。すなわち、最小限の二酸化炭素(CO)排出量で生分解される。
【0132】
また、生分解した後の残渣は、堆肥として再資源化することができる。生分解の結果として堆肥が残るため、堆肥とするための別途のエネルギーは必要としない。従って、繊維製品をマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルによる再資源化の場合のように、リサイクルのための別途のエネルギーを消費することがない。すなわち、再資源化する際の二酸化炭素(CO)排出等の環境負荷は非常に小さいと考えられる。
【0133】
堆肥化工程は、好気性微生物が存在する環境下で行われる。本発明においては、好気性微生物のうち、70℃~120℃の高温で活動する高温耐性菌が存在する環境下で、堆肥化工程が行われる。
【0134】
堆肥化工程においては、繊維製品を好気性微生物によって生分解する。好気性の高温耐性菌としては、特に限定されないが、例えば、アクチノマイセス属放線菌、Aquifex属、Sulfolobus属、Aeropyrum属、Pyrolobus属、Pyrobaculumaerophilum等が挙げられる。ここで、好気性には、通性好気性及び微好気性を含む。なお、堆肥化工程において、好気性の高温耐性菌以外の微生物が併存していてもよい。
【0135】
堆肥化工程において、前記高温耐性菌と回収された前記繊維製品とを含む混合物を、70℃~120℃の温度に保持することが好ましい。あるいは、79.5℃~120℃の温度に保持してもよく、80℃~120℃の温度に保持してもよい。このような温度であれば、前記高温耐性菌の活動あるいは増殖が活発になり、繊維製品の生分解がより促進される。
【0136】
堆肥化工程において、前記高温耐性菌と回収された前記繊維製品とを含む混合物を、ヒーター等の加熱装置を用いて70℃~120℃に加熱して保温してもよい。また、あるいは、繊維製品が生分解(発酵)する際には発熱する。その生分解による発熱によって、上記の温度に保持することもできる。また、例えば、前記混合物が、より低い温度域で活動する微生物をさらに含んでいてもよい。その微生物が繊維製品を一部生分解する時に発生する熱によって、前記混合物の温度を70℃~120℃まで上昇させてもよい。その後、70℃~120℃の温度において、高温耐性菌が繊維製品を生分解し堆肥化してもよい。
【0137】
堆肥化工程においては、好気性の高温耐性菌による生分解が行われるため、酸素が必要である。堆肥化工程において、高温耐性菌と回収された繊維製品とを含む混合物に積極的に酸素を供給してもよい。酸素が十分に供給されると、好気性微生物がより活発に活動し、より効率的に繊維製品の生分解が進む。重機による攪拌(いわゆる「切り返し」)や送風機による送風等により、積極的に酸素を供給してもよい。
【0138】
堆肥化工程は、前記高温耐性菌と回収された前記繊維製品とを攪拌しながら行うことがより好ましい。攪拌により積極的に酸素を供給すると、高温耐性菌に酸素が十分に供給される。そうすると、高温耐性菌がより活発に活動し、より効率的に繊維製品の生分解が進む。また、攪拌と同時に繊維製品を裁断等されるようにしてもよい。そうすれば、繊維製品の全体に高温耐性菌をより良くいきわたらせることができると考えられる。その結果、より効率的に堆肥化が進むと考えられる。
【0139】
また、例えば、堆肥化工程は、前記高温耐性菌と回収された繊維製品との混合物にさらに土壌と混合した状態で行ってもよい。前記高温耐性菌と回収された繊維製品との混合物にさらに他の有機性廃棄物(生ごみ、牛糞等の家畜ふん尿、下水汚泥、農業残さ、木質系廃棄物等)と混合した状態で行ってもよい。好ましくは、回収された繊維製品を既に存在する堆肥と混合した状態で行うとよい。また、回収された繊維製品を既に存在する堆肥及び他の有機性廃棄物と混合した状態で行ってもよい。堆肥中には、好気性微生物が多く存在する。そのため、回収された繊維製品を既に存在する堆肥と混合した状態にすると、より効率的に繊維製品の生分解が進むと考えられる。
【0140】
また、堆肥化工程において、前記高温耐性菌と回収された繊維製品との混合物の含水率は、例えば、50~70%であってよい。このような範囲であれば、好気性微生物がよく活動することができ得る。また、前記高温耐性菌と回収された繊維製品との混合物のpHは、堆肥化が良好に進んでいる状態では、アルカリ性に傾く。例えば、pH7~9程度であってよい。
【0141】
堆肥化工程を行う前には、何らかの前処理を行ってもよい。例えば、回収された繊維製品に、生分解性を有しないボタン等の付属品が存在する場合には、その付属品を取り外しておくとよい。
【0142】
あるいは、繊維製品が部位ごとに異なる素材で構成されている場合であって、繊維製品が堆肥化に適合している部位を含む場合に、堆肥化に適合している部分と堆肥化に適合していない部分を分離する工程を行うことも考えられる。例えば、ジャケットの袖の部分は堆肥化に適合しているが、胴体部分が堆肥化に適合していない場合に、袖の部分のみを分離する。そして、堆肥化に適合している袖の部分のみを堆肥化工程に投入する。
【0143】
例えば、堆肥化工程を行う前には、回収された繊維製品と、上述のように、他の有機性廃棄物、及び/又は、既に存在する堆肥とを混合するとよい。混合することにより、微生物の量が増えるため、より堆肥化が進むと考えられる。ここで、回収された繊維製品や、繊維製品と他の有機性廃棄物及び/又は既に存在する堆肥とを混合したものを堆肥原料と称する。
【0144】
例えば、堆肥原料に、わらやおが屑、木片等の副資材(これらは、一般的には多孔質である)を混合してもよい。副資材を混合することにより、堆肥原料と副資材の混合物として、含水率や空隙率を調整することができる。好気性の高温耐性菌が活動するために適切な含水率、あるいは湿度を保つことが可能になる。また、空隙率を調整して、十分な通気性を確保することができる。また、堆肥原料中の窒素に対する炭素の比(C/N比)を調整することもできる。例えば、C/N比は、10~30程度に調整してよい。
【0145】
あるいは、本発明の実施形態の一例としては、堆肥化すべき繊維製品を、特に土壌を用いることなく、おがくず及び/又は木片チップ等の木質系資材中で、好気性の高温耐性菌によって生分解して、堆肥化してもよい。
【0146】
また、例えば、回収された繊維製品を裁断等して、小さくしてもよい。そうすることにより、他の有機性廃棄物や既に存在する堆肥と混合する際に、十分に混合することができ、繊維製品の全体に微生物をいきわたらせることができると考えられる。その結果、より効率的に堆肥化が進むと考えられる。
【0147】
堆肥化工程は、堆積方式や攪拌方式の堆肥化施設を用いてよい。堆積方式の堆肥化施設は、堆肥原料を雨除けの屋根と隔壁で覆うような比較的簡単な構造の施設、いわゆる堆肥場である。重機を用いて、堆肥原料を攪拌することにより、堆肥原料に酸素を供給することが多い。あるいは、堆肥場の床部分にブロワー等の通気機能を備えている施設もある。
【0148】
攪拌方式の堆肥化施設は、機械を用いて自動的に堆肥原料を攪拌する方式の堆肥化施設であり、開放型と密閉型とが存在する。本発明の堆肥化工程は高温条件で行われるため、加熱装置が付随していることがより好ましい。
【0149】
あるいは、本発明の実施形態の一例としては、いわゆる堆肥場ではなく、比較的簡易な構造の処理容器を用いて堆肥化工程を行うこともできる。例えば、撹拌羽根及び温度制御装置が備えられた処理容器を用いて行うこともできる。
【0150】
堆肥化工程において、回収された繊維製品は生分解され、生分解後の残渣が堆肥として再資源化される。
【0151】
このように、衣料等の繊維製品が、堆肥という別の形で再度資源として利用できるようになる。繊維製品を廃棄することなく、別途の資源として用いることができるので、廃棄物削減に寄与することができる。
【0152】
本発明の再資源化方法により得られた堆肥は農耕地や緑地等の土壌に用いることができる。堆肥は、土壌の通気性、保肥性、保水性を高める役割を果たす。その結果として、様々な農作物の育成や樹木の生長に寄与することができる。
【0153】
また、本発明の再資源化方法により得られた堆肥を土壌に用いることにより、土壌に固定化される炭素量を増加させることができる。すなわち、大気中の二酸化炭素(CO)量を削減する効果も期待できる。
【0154】
堆肥化工程においては、上述のとおり、微生物の働きによって繊維製品を生分解し、残渣を堆肥にする。このように、堆肥化工程は、焼却処分のように燃料を用いる必要がない。堆肥化工程において発生するCOは、実質的に繊維製品それ自体が生分解して発生するCOのみである。従って、本発明の再資源化方法は、再資源化の際の二酸化炭素(CO)排出量を最小限にすることができる。
【0155】
[4-3.製造から堆肥化まで]
上述のとおり、本発明の再資源化方法は、実施形態として、製造、流通、回収、及び堆肥化を一連の工程として行ってよい。
【0156】
すなわち、本発明の再資源化方法は、実施形態の一例として、
生分解性繊維を含む素材で作られ、且つ、好ましくは発光顔料を含むか又は製品判別コードが付された繊維製品を製造する製造工程と、
製造された前記繊維製品を販売する販売工程と、
販売された前記繊維製品について、前記繊維製品を堆肥化に適合する繊維製品であると判断した場合に、当該繊維製品を回収する回収工程と、
回収された前記繊維製品を、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥にする堆肥化工程と、
を含み得る。
【0157】
図3は、本発明の再資源化方法の実施形態の一例として、繊維製品が発光顔料を含む場合について、繊維製品の製造(S201)、販売による流通(S202)、ユーザーによる使用(S203)、回収(S204~S209)及び堆肥化(S210~S211)の流れを示している。
【0158】
生分解性繊維を含む素材で作られ且つ発光顔料を含む繊維製品を製造する(S211)。また、繊維製品の製造において、生分解性繊維の製造、その生分解性繊維を含む素材の製造、及び、その素材を用いた繊維製品の製造を、1つの事業者がすべて行ってもよいし、複数の事業者が連携あるいは分担して行ってもよい。また、繊維製品の製造において、いずれの段階で発光顔料を含むようにしてもよい。
【0159】
製造された繊維製品をユーザーに販売する(S202)。販売には、実店舗での販売、オンラインでの販売等を含む。別の事業者(商社、卸売業者、小売店等)を経由して、ユーザーに販売されてもよい。
【0160】
次に、通常、ユーザーが、購入した繊維製品を使用する(S203)。
【0161】
ユーザーが回収拠点(例えば、繊維製品の販売店舗)に繊維製品を持ち込む(S204)。通常、ユーザーが使用済みの繊維製品が持ち込まれるが、未使用の状態で持ち込まれることもあり得る。
【0162】
回収拠点に持ち込まれた繊維製品は、上述の[4-1.回収工程]のように回収される。その後、上述の[4-2.堆肥化工程]のように堆肥化される。図3におけるS205~S211は、図1におけるS101~S107にそれぞれ対応している。また、回収工程における判別は、図3のように、発光顔料に由来する蛍光又は燐光により行うとよい。
【0163】
本発明の再資源化方法の実施形態の他の一例として、繊維製品に製品判別コードが付されている場合については、回収工程における判別は、製品判別コードに基づいて行うとよい。
【0164】
[5.繊維製品の再資源化システム]
本発明の再資源化方法における回収工程に用いることのできる回収システムについて説明する。
発光顔料を含む繊維製品についての、例えば図1に示すような回収工程に用いることのできる回収システムは、
堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性が記憶されたデータベースと、
対象となる繊維製品の発光特性を測定する測定機器と、
前記測定機器により測定された前記対象となる繊維製品の発光特性と、前記データベースに記憶された前記発光顔料の前記発光特性とを照合し、前記測定機器により測定された前記対象となる繊維製品の該発光特性が、前記データベースに記憶された前記発光顔料の前記発光特性のうちのいずれかと一致する場合に、前記対象となる繊維製品が堆肥化可能であると判断する判定部と、
前記対象となる繊維製品が堆肥化可能であることを表示する表示部と、
を含む。
【0165】
図4は、本発明の繊維製品の回収システムの実施形態の一例を示すブロック図である。図4中の矢印(→)は、データ(情報)の流れ方向を示す。本実施形態の回収システムは、データベース11と、発光測定機器12と、判定部13と、表示部14とを含む。
【0166】
データベース11は、堆肥化に適合する1つ又は複数の繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性が記憶されたものである。発光特性は、例えば、発光ピーク波長、発光スペクトル、数値化された色相情報等であってよい。数値化された色相情報には、例えば、XYZ表色系及びX101010表色系(JIS Z 8701)、L*a*b*表色系及びL*u*v表色系(JIS Z 8729))等が含まれる。データベース11には、さらに、製品判別コードと、該製品判別コードが付された繊維製品の情報とが関連付けられた状態で、それら製品情報が蓄積されていてもよい。製品情報は、繊維製品が堆肥化に適合するか否かの情報を含むとよい。また、製品情報は、さらに、材質、組成、色、サイズ、ブランド名、製品名称、製品の型番、品番、繊維製品の取り扱い方法等を含んでいてもよい。データベース11は、通常、サーバやパーソナルコンピュータ等に格納される。
【0167】
発光測定機器12は、繊維製品の発光特性を測定するための測定機器である。例えば、分光測色計や光電色彩計等である。発光測定機器12は、通常、蛍燐光を発現させるために照射される紫外線源を備えている。発光測定機器12が測定した繊維製品の発光特性は、判定部13に送られる。
【0168】
判定部13は、発光測定機器12で測定された繊維製品が、回収可能であるかどうかを判断する。判定部13の実態は、例えば、パーソナルコンピュータ、分光測色計や光電色彩計等の発光測定機器、あるいは、スマートフォン、タブレット端末、PDA等の端末である。あるいは、データベースが存在するサーバ上に存在してもよい。判定部13は、発光測定機器12からデータを受信し、データベース11とデータを送受信し、また、表示部14にデータを送信することができる構成となされている。
【0169】
判定部13は、発光測定機器12から送られた繊維製品の発光特性をデータベース11と照合する。発光測定機器12から送られた繊維製品の発光特性を、データベース11に記憶された堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性と比較照合する。
【0170】
発光測定機器12から送られた繊維製品の発光特性が、データベース11に記憶された堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性のうちのいずれかと一致する場合には、判定部13は、発光測定機器12が測定した繊維製品が、回収可能であると判断する。判定部13は、その判断結果を表示部14に送る。例えば、繊維製品の発光特性が、データベース11に記憶された前記発光特性と比較して、同じか実質的に同じと考えられる程度の差異である場合に、一致すると判断してよい。
【0171】
繊維製品が部位ごとに異なる素材で構成されている場合であって、少なくとも一部の部位において、その発光特性が、データベース11に記憶された堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性のうちのいずれかと一致する場合には、判定部13は、通常、発光測定機器12が測定した繊維製品が、堆肥化に適合する部位を含み、回収可能であると判断する。判定部13は、その判断結果を表示部14に送る。
【0172】
また、発光測定機器12から送られた繊維製品の発光特性が、データベース11に記憶された堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性のいずれとも一致しない場合には、判定部13は、発光測定機器12が測定した繊維製品が、堆肥化のためには回収不可であると判断する。判定部13は、その判断結果を表示部14に送る。
【0173】
表示部14は、判定部13から送られた判断結果を表示する。表示部の実態は、例えば、パーソナルコンピュータのモニター、分光測色計や光電色彩計等の発光測定機器の表示部、あるいは、スマートフォン、タブレット端末、PDA等の端末の表示部であってよい。あるいは、端末とは独立して存在するモニター等であってよい。
【0174】
表示部14に回収可能である旨が表示された場合には、発光測定機器12で発光特性を測定した繊維製品を堆肥化工程に供するために回収する。表示部14に回収不可である旨が表示された場合には、発光測定機器12で発光特性を測定した繊維製品を、堆肥化工程に供するためには回収しない。例えば、顧客に返却してもよい。あるいは、例えば、再利用や従来のリサイクルを行うために別途回収してもよい。
【0175】
データベース11は、上述のとおり、堆肥化に適合する1つ又は複数の繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性が記憶されたものである。発光特性は、例えば、発光ピーク波長、発光スペクトル、数値化された色相情報(例えば、XYZ表色系やL*a*b*表色系)等であってよい。それらのいずれか1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0176】
また、データベース11は、1つ又は複数の繊維製品について、生分解性繊維の種類や生分解のしやすさの程度等に応じて発光顔料の種類や配合(複数種類の発光顔料を組み合わせた場合)が変更されている場合、1つ又は複数の繊維製品それぞれに対応する発光特性を記憶していることが好ましい。
【0177】
データベース11に複数の発光特性が記憶されている場合、発光測定機器12から送られた繊維製品の発光特性が、データベース11に記憶された堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性のうちのいずれかに一致する場合に、判定部13は、発光測定機器12が測定した繊維製品が、回収可能であると判断してよい。また、データベース11に記憶された発光顔料の発光特性のうちのいずれとも一致しない場合には、判定部13は、発光測定機器12が測定した繊維製品が、堆肥化のためには回収不可であると判断してよい。
【0178】
データベース11には、さらに、製品判別コードと、該製品判別コードが付された繊維製品の情報とが関連付けられた状態で、それら製品情報が蓄積されていてもよい。データベース11には、本発明の回収対象となる繊維製品についての、製品判別コードと、該製品判別コードに関連付けられた製品情報が格納されていてよい。データベース11には、さらに、同一事業者あるいは関連する事業者の他の製品群についての、製品判別コードと、該製品判別コードに関連付けられた製品情報が格納されている場合が多い。また、データベース11には、他の事業者の繊維製品についての、製品判別コードと、該製品判別コードに関連付けられた製品情報が格納されていてもよい。しかしながら、通常は、他の事業者の製品についての情報は格納されていないと考えられる。
【0179】
このような回収システムを実行するための、プログラムは、
コンピュータに、
測定機器により測定された対象となる繊維製品の発光特性と、データベースに記憶された、堆肥化に適合する繊維製品に含まれる発光顔料の発光特性とを照合し、
前記測定機器により測定された前記対象となる繊維製品の該発光特性が、前記データベースに記憶された前記発光顔料の前記発光特性のうちのいずれかと一致する場合に、前記対象となる繊維製品が堆肥化可能であると判断することを実行させ、
さらに、前記対象となる繊維製品が堆肥化可能であることを表示することを実行させる。
【0180】
ここで、コンピュータは、例えば、パーソナルコンピュータ、分光測色計や光電色彩計等の発光測定機器、あるいは、スマートフォン、タブレット端末、PDA等の端末である。あるいは、データベースが存在するサーバであってもよい。
【0181】
また、製品判別コードが付された繊維製品についての、例えば図2に示すような回収工程に用いることのできる回収システムは、
繊維製品についての製品判別コードと、該繊維製品が堆肥化に適合するか否かの情報とが関連付けられた製品情報が蓄積されたデータベースと、
対象となる繊維製品に付された製品判別コードの読み取り装置と、
読み取られた前記製品判別コードと前記データベースの前記製品情報とを照合し、読み取られた前記製品判別コードの製品情報を前記データベースから抽出し、該製品情報が、堆肥化に適合する旨を示す場合に、該製品判別コードが付された該繊維製品が堆肥化可能であると判断する判定部と、
該繊維製品が堆肥化可能であることを表示する表示部と、
を含む。
【0182】
図5は、本発明の繊維製品の回収システムの実施形態の他の一例を示すブロック図である。図5中の矢印(→)は、データ(情報)の流れ方向を示す。本実施形態の回収システムは、データベース21と、読み取り装置22と、判定部23と、表示部24とを含む。
【0183】
データベース21は、製品判別コードと、該製品判別コードが付された繊維製品の情報とが関連付けられた状態で、それら製品情報が蓄積されたものである。製品情報は、繊維製品が堆肥化に適合するか否かの情報を含む。また、製品情報は、さらに、材質、組成、色、サイズ、ブランド名、製品名称、製品の型番、品番、繊維製品の取り扱い方法等を含んでいてもよい。データベース21は、通常、サーバやパーソナルコンピュータ等に格納される。
【0184】
読み取り装置22は、繊維製品に付された製品判別コードを読み取るための装置である。例えば、バーコードリーダーやQRコードリーダー等のリーダー、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の端末である。読み取り装置22で読み取られた製品判別コードの情報は、判定部23に送られる。
【0185】
判定部23は、読み取り装置22で読み取られた製品判別コードが付された繊維製品が、回収可能であるかを判断する。判定部23の実態は、例えば、パーソナルコンピュータや、リーダー、スマートフォン、タブレット端末、PDA等の端末である。あるいは、データベースが存在するサーバ上に存在してもよい。判定部23は、読み取り装置22からデータを受信し、データベース21とデータを送受信し、また、表示部24にデータを送信することができる構成となされている。
【0186】
判定部23は、読み取り装置22から送られた製品判別コードの情報をデータベース21と照合する。データベース21に蓄積されたデータから、読み取り装置22から送られた製品判別コードに関連付けられた製品情報を抽出する。
【0187】
抽出した製品情報が、堆肥化に適合する繊維製品であることを示す情報を含む場合には、判定部23は、読み取り装置22で読み取った製品判別コードが付された繊維製品が、回収可能であると判断する。判定部23は、その判断結果を表示部24に送る。
【0188】
繊維製品が部位ごとに異なる素材で構成されている場合であって、抽出した製品情報が、堆肥化に適合する部位を含む繊維製品であることを示す情報を含む場合には、判定部23は、通常、読み取り装置22で読み取った製品判別コードが付された繊維製品が、堆肥化に適合する部位を含み、回収可能であると判断する。判定部23は、その判断結果を表示部24に送る。
【0189】
また、抽出した製品情報が、堆肥化に適合する繊維製品であることを示す情報を含んでいない場合には、判定部23は、読み取り装置22で読み取った製品判別コードが付された繊維製品が、堆肥化のためには回収不可であると判断する。判定部23は、その判断結果を表示部24に送る。
【0190】
表示部24は、判定部23から送られた判断結果を表示する。表示部の実態は、例えば、リーダー、スマートフォン、タブレット端末、PDA等の端末の表示部であってよい。あるいは、端末とは独立して存在するモニター等であってよい。
【0191】
表示部24に回収可能である旨が表示された場合には、読み取り装置22で読み取った製品判別コードが付された繊維製品を堆肥化工程に供するために回収する。表示部24に回収不可である旨が表示された場合には、読み取り装置22で読み取った製品判別コードが付された繊維製品を、堆肥化工程に供するためには回収しない。例えば、顧客に返却してもよい。あるいは、例えば、再利用や従来のリサイクルを行うために別途回収してもよい。
【0192】
この場合、データベース21は、上述のとおり、製品判別コードと、該製品判別コードが付された繊維製品の情報とが関連付けられた状態で、それら製品情報が蓄積されたものである。データベース21には、本発明の回収対象となる繊維製品についての、製品判別コードと、該製品判別コードに関連付けられた製品情報が格納されている。データベース21には、さらに、同一事業者あるいは関連する事業者の他の製品群についての、製品判別コードと、該製品判別コードに関連付けられた製品情報が格納されている場合が多い。また、データベース21には、他の事業者の繊維製品についての、製品判別コードと、該製品判別コードに関連付けられた製品情報が格納されていてもよい。しかしながら、通常は、他の事業者の製品についての情報は格納されていないと考えられる。
【0193】
判定部23が、読み取り装置22から送られた製品判別コードの情報をデータベース21と照合した時に、該当する情報が存在しない場合があり得る。例えば、製品判別コードが付された繊維製品が、他社製品である場合等である。
【0194】
データベース21に、読み取り装置22から送られた製品判別コードの情報が存在しない場合には、判定部23は、該当する情報が存在しないと判断してよい。その場合、表示部24は、該当する情報が存在しない旨を表示する。この場合には、通常、その繊維製品を堆肥化工程に供するためには回収しない。あるいは、判定部23において、読み取り装置22から送られた製品判別コードの情報が存在しない場合には、当該製品判別コードが付された繊維製品が、回収不可であると判断することとしてもよい。
【0195】
このような回収システムを実行するための、プログラムは、
コンピュータに、
読み取られた繊維製品に付されている製品判別コードと、データベースに蓄積された、繊維製品についての製品判別コードと、該繊維製品が堆肥化に適合するか否かの情報とが関連付けられた製品情報とを照合し、
読み取られた前記製品判別コードの製品情報を前記データベースから抽出し、
該製品情報が、堆肥化に適合する旨を示す場合に、該製品判別コードが付された該繊維製品が堆肥化可能であると判断することを実行させ、
さらに、該繊維製品が堆肥化可能であることを表示することを実行させる。
【0196】
ここで、コンピュータは、例えば、パーソナルコンピュータや、リーダー、スマートフォン、タブレット端末、PDA等の端末である。あるいは、データベースが存在するサーバであってもよい。
【実施例0197】
以下に実施例を示して説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0198】
[堆肥化実験1]
生分解性繊維(生分解性ポリエステル)を含む素材で作られた繊維製品について、以下のように堆肥化試験を行った。
【0199】
堆肥化試験には、繊維製品の一例として、Tシャツを用いた。堆肥化試験に用いたTシャツの詳細は以下のとおりである。
ブランド名: Tavitalium Compostable T-shirt
シーズン: SS 2018
製品番号(Product No.): T8XC1103-71
生地番号(Fabric No.):VAPK9556BZ WF
組成(Content): 生分解性ポリエステル100%
スタイル(Style): T-shirt, Sakura, Dekio, M-size
【0200】
高温耐性菌として、アクチノマイセス属の放線菌を用いて、前記放線菌を多孔質のおがくずや木片チップと混合した。
【0201】
堆肥化実験は、撹拌羽根及び温度制御装置が備えられた処理容器を用いて行った。
処理容器に、上記のTシャツ1枚と、前記放線菌を多孔質のおがくずや木片チップと混合したものとを投入し、温度を80℃に保持した。
【0202】
Tシャツは、堆肥化実験開始から4か月後には、分解したことが確認された。
【0203】
[堆肥化実験2:参考例]
また、参考例として、上記と同じ生分解性繊維(生分解性ポリエステル)を含む素材で作られたTシャツについて、以下のように堆肥化実験を行った。上記堆肥化実験1とは温度が異なる。従って、生分解に寄与する好気性微生物の種類も異なると考えられる。
【0204】
堆肥化実験は、堆肥場で行った。堆肥場は、堆積方式の堆肥化施設である。堆肥化実験は、堆積された堆肥を重機で攪拌することにより、堆肥全体に酸素を供給しつつ行った。
【0205】
堆肥化実験は、次の手順で行った。
【0206】
上記のTシャツ1枚について、堆肥化実験の開始前に外観の写真撮影を行った。その後、Tシャツを堆肥場に埋めた。
【0207】
堆肥場に埋めたTシャツを15日後に取り出した。取り出したTシャツを観察し、その外観の写真撮影を行った。また、堆肥場の堆肥化の活性状態を確認するために、Tシャツ近傍の堆肥温度の測定を行った。15日後の取り出し時におけるTシャツ近傍の堆肥温度は、70.0℃であった。観察したTシャツは、その後、堆肥場に埋め戻した。
【0208】
同様の観察を、堆肥化実験開始から1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、6か月後、7か月後、8か月後、9か月後、10か月後、11か月後、及び12か月後にも行った。各観察時におけるTシャツの外観写真及び取り出し時のTシャツ近傍の堆肥温度を、図6~8に示す。なお、堆肥化試験の全期間にわたって、Tシャツ近傍の堆肥の湿度は51%程度、pH8程度であった。
【0209】
図6~8に示されるように、Tシャツは、堆肥化実験開始から4か月後には、Tシャツの一部が破れた状態になった。その後、時間経過とともに、Tシャツの生分解が進み、堆肥化実験開始から12か月後には、少量の残渣のみの状態になったことが確認された。
【0210】
[堆肥化実験3]
生分解性繊維(生分解性ポリエステル+綿)を含む素材で作られた繊維製品について、以下のように堆肥化試験を行った。
【0211】
堆肥化試験には、繊維製品の一例として、体操服用ジャージを用いた。堆肥化試験に用いた体操服用ジャージの詳細は以下のとおりである。
品番:VAPK294BZ
組成混率:90% Polyester (Compostable),10% Cotton
組織:体操服用ジャージ
【0212】
高温耐性菌として、桜の木のチップを炭化させたものに付着させられた高温耐性菌(芹澤微生物研究所)を用いた。
【0213】
堆肥化実験は、撹拌羽根及び温度制御装置が備えられた処理容器(芹澤微生物研究所;容量1,000L)を用いて行った。
処理容器に、前記桜の木のチップを炭化させたものに付着させられた高温耐性菌を投入し、上記の体操服用ジャージ1枚を投入した。処理容器内の温度を80℃、湿度を50%に保持した。1時間毎に10分間だけ撹拌するという撹拌操作をずっと繰り返した。温度制御、湿度制御、及び撹拌操作は、プログラムにより自動的に行われた。
【0214】
上記の体操服用ジャージ1枚について、堆肥化実験の開始前に外観の写真撮影を行った。そして、堆肥化実験1か月経過後、処理容器から体操服用ジャージを取り出した。取り出した体操服用ジャージを観察し、その外観の写真撮影を行った。
【0215】
これらの写真を図9に示す。図9から、体操服用ジャージは、堆肥化実験開始から1か月後には、かなり生分解が進んだことが確認された。対象物は異なるが、上記堆肥化実験2:参考例における6か月後と同等レベルに生分解が進んでいたと観察される。
【0216】
このように、本発明によれば、70℃~120℃の温度で、高温耐性菌を用いて生分解して堆肥化する堆肥化工程を行うため、対象の繊維製品を短期間で堆肥化できる。また、参考例のように堆肥場において堆肥化する場合と比較しても、さらに短期間での堆肥化が実現され得る。本発明によれば、繊維製品をより効率的に堆肥化できる。
【符号の説明】
【0217】
11、21 データベース
12 発光測定機器
13、23 判定部
14、24 表示部
22 読み取り装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9