(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025719
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】汚染物質除去方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/12 20060101AFI20240216BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240216BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240216BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240216BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20240216BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20240216BHJP
C09D 125/06 20060101ALI20240216BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240216BHJP
【FI】
B05D3/12 E
B05D7/24 302J
B05D7/24 302M
B05D7/00 K
B05D5/00 A
C09D5/20
C09D129/04
C09D125/06
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128973
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022129114
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 典明
(72)【発明者】
【氏名】城地 悠仁
(72)【発明者】
【氏名】栗原 晃平
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA71
4D075AC57
4D075AC84
4D075BB20Z
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4D075EB53
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC30
4J038CC031
4J038CE021
4J038GA13
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4J038KA06
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4J038MA13
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4J038PA06
4J038PA18
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】対象表面に塗布後、乾燥するだけで塗膜が自発的に剥離する自己剥離膜形成用組成物を用いることにより、汚染物質の除去及び汚染物質を吸着した塗膜の剥離回収作業を簡単に短時間で行うことができる、汚染物質除去方法の提供。
【解決手段】対象表面に付着した汚染物質を除去する方法であって、次の成分(A)~(C)を含み、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である自己剥離膜形成用組成物を汚染物質が付着した対象表面に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を乾燥する工程と、該乾燥に伴う塗膜の自己剥離によって塗膜とともに汚染物質を除去する工程とを備える、汚染物質除去方法。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象表面に付着した汚染物質を除去する方法であって、
次の成分(A)~(C)を含み、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である自己剥離膜形成用組成物を汚染物質が付着した対象表面に塗布して塗膜を形成する工程と、
該塗膜を乾燥する工程と、
該乾燥に伴う塗膜の自己剥離によって塗膜とともに汚染物質を除去する工程と
を備える、汚染物質除去方法。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【請求項2】
塗膜とともに汚染物質を除去する工程が、剥離した乾燥塗膜を回収する工程を含む、請求項1に記載の汚染物質除去方法。
【請求項3】
自己剥離形成用組成物の塗膜が、乾燥に伴い周縁部から剥離する、請求項1又は2に記載の汚染物質除去方法。
【請求項4】
対象表面に対する自己剥離形成用組成物の塗布量が、0.1kg/m2以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の汚染物質除去方法。
【請求項5】
乾燥工程が、-10℃以上60℃以下の環境下で行われるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の汚染物質除去方法。
【請求項6】
成分(A)のガラス転移点が、0℃以上120℃以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の汚染物質除去方法。
【請求項7】
成分(A)のビニルアルコールを構成単位として含む重合体が、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル-エチレン共重合体又はその加水分解物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の汚染物質除去方法。
【請求項8】
成分(B)が、重量平均分子量5,000以上10,000,000以下のポリスチレンスルホン酸又はその塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載の汚染物質除去方法。
【請求項9】
成分(C)が、水を含むものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の汚染物質除去方法。
【請求項10】
次の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下であり、塗膜の乾燥に伴う自己剥離により対象表面上の汚染物質を除去するための使用。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【請求項11】
次の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である、自己剥離膜形成用組成物。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【請求項12】
成分(A)のガラス転移点が、0℃以上120℃以下である、請求項11に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【請求項13】
成分(B)が、重量平均分子量5,000以上10,000,000以下のポリスチレンスルホン酸又はその塩である、請求項11又は12に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【請求項14】
成分(B)のガラス転移点が、210℃以上である、請求項11~13のいずれか1項に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【請求項15】
さらに、成分(D)ヨウ化カリウムを含有する、請求項11~14のいずれか1項に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象表面に塗布後、塗膜が乾燥することによって自発的に剥離する自己剥離膜を利用した汚染物質除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、設備表面に付着・残留した汚れ、微粒子などの粉じんを除去する方法として、水や溶剤による洗浄、ふき取り、機械力による削り取り、吸引などが行われている。しかしながら、これらの作業では、洗浄液や飛散した粉じんを作業者が吸引してしまうおそれがある。特に、使用する洗浄液が人体には有害な物質であったり、除去する物質がアスベスト、有害な化学物質、放射性物質などを含む汚染物質であったりする場合は、作業員が洗浄液や汚染物質を吸引しないような手段が求められる。例えば、原子力発電所の汚染物質は放射性物質を含んでいるため、洗浄や廃炉作業時の作業員に対して、吸引や付着による被ばくの危険がある。そこで、このような汚染物質を高効率かつ安全に除去する技術が求められている。
【0003】
汚染物質は、設備表面、特に凹凸部などの細部に残留しやすいという特徴がある。このような汚染物質を飛散させずに除去する効果的な技術として、塗料を対象表面に塗布し、乾燥後塗膜を剥離することで吸着した汚染物質ごと除去するという、剥離性塗膜を利用した方法がある。この技術は、細部残留した汚染物質の除去には効果的ではあるが、乾燥後の剥離時に、塗膜の端部に剥離の始点をつくることが難しく、これに作業時間がかかれば作業員が有害物質を吸引したり暴露したりするリスクが高まることとなる。また、人が入ることができない環境においては剥離した膜の回収も難しいという問題もある。
【0004】
このような問題に対応できる手段として、乾燥後の塗膜が自発的に剥離する自己剥離膜を開発できれば、回収作業が簡単に短時間で行うことができ、ロボットなどによる遠隔作業も可能となると考えられる。
【0005】
自己剥離膜に関する技術として、特許文献1には、揮発性有機溶剤に可剥性樹脂被膜形成能を有するセルロース系合成樹脂を溶解してなる自己剥離性を備えた浸透探傷用現像剤除去材料が開示されている。特許文献2には、水性塗料を主成分とし、水可溶性増粘剤を含む皮膜を水で膨潤させて剥離する手段が開示されている。一方、特許文献3には、自己剥離膜とは別の技術であるが、あらかじめ基材に被覆用組成物を塗布してバリアー被覆物を形成させ、汚染物質がバリアー被覆物上に堆積した後、基材からバリアー被覆物と汚染物質を取り除く方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59-171841号公報
【特許文献2】特開2000-327958号公報
【特許文献3】特表2010-530806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、有機溶剤を相当量含有しているため異臭が生じることや自己剥離性が十分ではないという問題があった。特許文献2に記載の方法は、皮膜に水を添加して膨潤させる必要があった。特許文献3に記載の方法は、バリアー被覆物と汚染物質とを洗浄やふき取り等で除去するものであり、塗膜の除去方法が簡便でない。
【0008】
したがって本発明は、対象表面に塗布後、乾燥するだけで塗膜が自発的に剥離する自己剥離膜形成用組成物を用いることにより、汚染物質の除去及び汚染物質を吸着した塗膜の剥離回収作業を簡単に短時間で行うことができる、汚染物質除去方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ビニルアルコールを構成単位として含む重合体とポリスチレンスルホン酸又はその塩を特定比率で揮発性溶剤中に含有することにより、前記要求を解決した汚染物質の除去が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、対象表面に付着した汚染物質を除去する方法であって、
次の成分(A)~(C)を含み、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である自己剥離膜形成用組成物を汚染物質が付着した対象表面に塗布して塗膜を形成する工程と、
該塗膜を乾燥する工程と、
該乾燥に伴う塗膜の自己剥離によって塗膜とともに汚染物質を除去する工程と
を備える、汚染物質除去方法を提供するものである。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【0011】
さらに本発明は、次の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である自己剥離膜形成用組成物の、塗膜の乾燥に伴う自己剥離により対象表面上の汚染物質を除去するための使用を提供するものである。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【0012】
さらに本発明は、次の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である、自己剥離膜形成用組成物を提供するものである。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【発明の効果】
【0013】
本発明の汚染物質除去方法は、対象表面に塗布した後、塗膜が乾燥する過程で塗膜の周囲から剥離する自己剥離膜形成用組成物の利用により、汚染物質の除去及び汚染物質を吸着した塗膜の剥離回収作業を簡単に短時間で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において「自己剥離」とは、自己剥離膜形成用組成物を対象表面に塗布した後、揮発性溶剤が蒸発することにより、引き剥がす力を印加することなく、塗膜成分の内部応力により塗膜の周縁部から徐々に剥離していくことをいう。より具体的には、下記評価方法によって測定される乾燥塗膜の剥離度が20%以上100%以下であることが好ましい。この剥離度は、30%以上100%以下であることが好ましく、更には40%以上100%以下、更には50%以上100%以下、更には60%以上100%以下、更には70%以上100%以下であることが好ましい。
<評価方法> 組成物をエポキシ樹脂塗装基板に0.3g/cm2塗布し、24時間乾燥する。乾燥前の前記基板上に濡れ広がった組成物の前記基板との接着面積S1と、乾燥後の塗膜が前記基材に接している面積S2を測定し、算出される(S1-S2)/S1の値を剥離度とする。
【0015】
成分(A)のビニルアルコールを構成単位として含む重合体としては、ポリビニルアルコールのほか、アニオン変性、カチオン変性などの変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル-エチレン共重合体及びその加水分解物などが挙げられる。これらのうち、成分(B)との分子間水素結合の相互作用により適度な塗膜を形成し、乾燥塗膜の自己剥離性をより一層発現させる点で、ポリビニルアルコール及び酢酸ビニル-エチレン共重合体の加水分解物が好ましい。
【0016】
また、成分(A)の重合体のガラス転移点は、乾燥時の内部応力により自己剥離性を発現する点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上である。また、膜強度を良好にする観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下である。また、ガラス転移点が0℃未満であると、自己剥離性を発現しなくなる。
【0017】
さらに、成分(A)の重量平均分子量は、塗膜の形成及び乾燥塗膜の自己剥離性を良好にする観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、更に好ましくは40,000以上である。また、塗布性を良好にする観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下である。
【0018】
ポリビニルアルコールの市販品としては、クラレポバール3-98、同5-98、同28-98、同60-98、同27-95、同27-96、同17-94、同7-92、同3-88、同5-88、同22-88、同44-88、同95-88、同48-80(クラレ社製)等を使用することができる。
また、酢酸ビニル-エチレン共重合体の加水分解物の市販品としては、エクセバールRS-2117、RS-1717(クラレ社製)等を使用することができる。
【0019】
本発明の自己剥離膜形成用組成物中における成分(A)の含有量は、乾燥塗膜の自己剥離性を十分に発現させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、塗布性を良好にする観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、自己剥離膜形成用組成物中に、好ましくは1.5~20質量%、より好ましくは1.5~15質量%、更に好ましくは1.5~10質量%、更に好ましくは1.5~7質量%、より更に好ましくは1.5~5質量%とすることもできる。
【0020】
成分(B)のポリスチレンスルホン酸又はその塩のスルホン化率は89%以上であるが、成分Aと併用することにより自己剥離性を十分に発現する観点から、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である。
【0021】
ポリスチレンスルホン酸又はその塩は、スルホン化率が高いほどガラス転移点が高くなることが文献で知られており(BALDING, Paul, et al. Physical Properties of Sodium Poly (styrene sulfonate): Comparison to Incompletely Sulfonated Polystyrene. Macromolecules, 2022, 55.5: 1747-1762)、例えば、スルホン化率89%のTgは約210℃、スルホン化率100%近くではTgは分解温度(440℃)を超えるといわれている。
成分(B)のガラス転移点は、乾燥時の内部応力により自己剥離性を十分に発現する点から、好ましくは210℃以上、より好ましくは300℃以上、更に好ましくは400℃以上、更に好ましくは440℃以上である。
【0022】
また、成分(B)の重量平均分子量は、塗膜の形成及び乾燥塗膜の自己剥離を良好にする観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上であり、また、塗布性を良好にする観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である。
【0023】
ポリスチレンスルホン酸又はその塩の市販品としては、PS-100(東ソー・ファインケム社製)、PS-50(同)、PS-5(同)等を使用することができる。
【0024】
本発明の自己剥離膜形成用組成物中における成分(B)の含有量は、乾燥塗膜の自己剥離性を十分に発現させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、であり、また、塗布性を良好にする観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である。即ち、成分(B)の含有量は、自己剥離膜形成用組成物中に、好ましくは5~50質量%、より好ましくは7~40質量%、更に好ましくは8~30質量%、より更に好ましくは10~25質量%である。
【0025】
また、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]は、乾燥塗膜の自己剥離性を十分に発現させる観点、及び乾燥塗膜の強度の観点から、0.6以上であって、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.75以上、より更に好ましくは0.80以上であり、また、0.95以下であって、好ましくは0.94以下、より好ましくは0.93以下である。また、かかる質量比(B)/[(A)+(B)]は、好ましくは0.70~0.94、より好ましくは0.75~0.94、更に好ましくは0.75~0.93、より更に好ましくは0.80~0.93とすることもできる。
【0026】
成分(C)の揮発性溶剤は、液体の状態において揮発性を有する物質であり、水及び揮発性有機溶剤から選ばれ、水を含むことが好ましく、水を主成分とすることがさらに好ましい。また、塗布後に乾燥して好適に乾燥塗膜を形成させる観点から、水と共に揮発性有機溶剤を併用することもできる。揮発性有機溶剤としては、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトンのほか、テトラヒドロフラン等が挙げられ、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。また、揮発性有機溶剤としては、蒸気圧が20℃において0.01kPa以上106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上40.00kPa以下であることがより一層好ましい。成分(C)が揮発性有機溶剤を含有する場合、その割合は成分(C)全体の50質量%以下、更には20質量%以下に、更には10質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
本発明の自己剥離膜形成用組成物中における成分(C)の含有量は、対象表面への塗布性を良好にする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、自己剥離性を高める観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0028】
本発明の自己剥離膜形成用組成物は、更に、成分(D)としてヨウ化カリウムを含有することができる。汚染物質がセシウム-134、セシウム-137、ストロンチウム-90、コバルト-60等放射性物質などのヨウ素に反応する物質である場合、塗膜が着色するため清浄化のサインとなり、着色がなくなるまで塗布剥離を繰り返すことで除去効果を確認することができる。
【0029】
本発明の自己剥離膜形成用組成物中における成分(D)の含有量は、ヨウ化物由来の着色を発現させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、自己剥離膜形成用組成物への配合性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0030】
〔任意成分〕
本発明の自己剥離膜形成用組成物には、更に、乾燥塗膜の自己剥離性を損ねない範囲において、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、防腐剤等の成分を含有させることができる。
【0031】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いることもできる。
【0032】
増粘剤としては、本発明の成分(A)以外の成分であって、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム等の有機系増粘剤、又はベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系増粘剤等を、単独では膜を形成しない程度の低濃度で用いてもよい。可塑剤としては、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。防腐剤としては、フェノキシエタノール、安息香酸、ベンズイソチアゾリン、ソルビン酸、プロピオン酸等が挙げられる。
【0033】
〔汚染物質除去方法〕
本発明の汚染物質の除去方法は、成分(A)~(C)を含み、成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である自己剥離膜形成用組成物を汚染物質が付着した対象表面に塗布して塗膜を形成する工程、該塗膜を乾燥する工程、該乾燥に伴う塗膜の自己剥離によって塗膜とともに汚染物質を除去する工程を備えるものである。
【0034】
本発明においては、汚染物質が付着した対象表面に、本発明の自己剥離膜形成用組成物を適用することで対象表面上の付着物が組成物に吸着し、組成物が乾燥する過程において、乾燥塗膜に汚染物質が吸着する。これにより、乾燥に伴い、汚染物質が吸着した乾燥塗膜が対象表面から自発的に剥離する。この際、本発明の自己剥離膜形成用組成物の塗膜は、乾燥に伴い塗膜の周縁部から徐々に剥離する。その後、剥離した乾燥塗膜を回収することによって対象表面上の汚染物質を除去することができる。
【0035】
汚染物質除去の対象表面としては、合成樹脂(エポキシ樹脂、塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレンなど)の表面、合成樹脂の塗装表面、金属表面、ガラス表面、セラミック表面、コンクリート表面、モルタル表面、セメント固化体表面、アスファルト表面が挙げられ、表面が平滑であっても微細凹凸であってもよい。微細凹凸はセメント表面などの自己剥離を阻害しない範囲に適応できる。前記対象表面は、発電所、工場、倉庫、オフィスビル、マンション、駐車場、道路、橋、トンネルなどの各種施設の床面、壁面、天井、その他スロープ等の傾斜のある場所のいずれに設置されていてもよい。
また、除去する汚染物質としては、粉状又は粒状の付着物(例えば、アスベスト、ホコリ、砂、汚泥、ヘドロ、ススなどの粉塵)、油性の付着物(例えば、原油、タールなどの油状汚れ、油性ペン、ラッカースプレーなどのペイントされた塗料)、動植物由来の付着物(コケ、藻類、鳥の糞、虫の死骸など)、塩などにも対応可能である。本発明の技術は、原子力発電所の汚染物質のほか、アスベストその他の有害物質の除去や劣悪な環境での作業にも利用可能である。
【0036】
対象表面への塗布には、へら、トンボ、レーキ、刷毛、ローラー、スプレー、噴霧機などを利用することができる。また、塗布方法は、前記用具を用いて直接塗り拡げるほか、噴霧などによる適用も含まれる。対象表面に対する本発明の自己剥離膜形成用組成物の塗布量は、乾燥塗膜の自己剥離性を高める観点から、好ましくは0.1kg/m2以上、より好ましくは0.5kg/m2以上、更に好ましくは1kg/m2以上であり、また、硬化、膜形成のしやすさの観点で、好ましくは10kg/m2以下、より好ましくは8kg/m2以下、更に好ましくは5kg/m2以下、より更に好ましくは3kg/m2以下である。
【0037】
組成物を対象表面に塗布した後の塗膜の乾燥工程は、自然乾燥によっても、風乾によってもよく、また、ハロゲンヒーター等の熱源を利用することもできる。乾燥工程における環境温度は、好ましくは-10℃以上、より好ましくは0℃以上、更に好ましくは5℃以上であり、また、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
【0038】
本発明の汚染物質除去方法においては、自己剥離の阻害を避ける観点から、自己剥離を開始するまでの工程において、水、又は本発明の自己剥離膜形成用組成物以外の水を50質量%以上含有する水性組成物を塗布又は適用する工程を含まないことが好ましい。さらには、本発明の自己剥離膜形成用組成物の塗布工程の次に、他の工程を挟むことなく、塗膜の乾燥工程を行うことがより好ましい。
【0039】
本発明の自己剥離膜形成用組成物は、対象表面に塗布した後、塗膜は成分(C)の揮発性溶剤(水)が蒸発することで収縮し始めるが、高含水状態である間は成分(A)の膜化成分の分子鎖が自由に動くことができ内部応力は生じない。乾燥が進み低含水状態となると、塗膜が更に収縮するとともに成分(A)の分子鎖の熱運動が凍結される。これにより強力な内部応力が発生することにより、塗膜は対象表面との接着力よりも大きな剥離力が発現し、端部から自発的に剥離しやすくなるものと考えられる。
【0040】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0041】
<1>
対象表面に付着した汚染物質を除去する方法であって、
次の成分(A)~(C)を含み、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である自己剥離膜形成用組成物を汚染物質が付着した対象表面に塗布して塗膜を形成する工程と、
該塗膜を乾燥する工程と、
該乾燥に伴う塗膜の自己剥離によって塗膜とともに汚染物質を除去する工程と
を備える、汚染物質除去方法。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【0042】
<2>
次の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である自己剥離膜形成用組成物の、塗膜の乾燥に伴う自己剥離により対象表面上の汚染物質を除去するための使用。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【0043】
<3>
対象表面への自己剥離膜形成用組成物の塗布が、好ましくはトンボ、レーキ、刷毛、ローラー又はスプレーを利用して行われる、<1>又は<2>記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0044】
<4>
対象表面に対する自己剥離形成用組成物の塗布量が、好ましくは0.1kg/m2以上、より好ましくは0.5kg/m2以上、更に好ましくは1kg/m2以上であり、また、好ましくは10kg/m2以下、より好ましくは8kg/m2以下、更に好ましくは5kg/m2以下、より更に好ましくは3kg/m2以下である、<1>~<3>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0045】
<5>
好ましくは、自己剥離膜形成用組成物を対象表面に塗布して塗膜を形成する工程の後、他の工程を挟むことなく、該塗膜を乾燥する工程を行う、<1>~<4>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0046】
<6>
乾燥工程が、好ましくは-10℃以上、より好ましくは0℃以上、更に好ましくは5℃以上の環境下で、また、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下の環境下で行われるものである、<1>~<5>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0047】
<7>
自己剥離形成用組成物の塗膜が、好ましくは乾燥に伴い周縁部から剥離する、<1>~<6>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0048】
<8>
成分(A)が、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル-エチレン共重合体、又は酢酸ビニル-エチレン共重合体の加水分解物である、<1>~<7>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0049】
<9>
成分(A)のガラス転移点が、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下である0℃以上120℃未満である、<1>~<8>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0050】
<10>
成分(A)の重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、更に好ましくは40,000以上であり、また、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下である、<1>~<9>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0051】
<11>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である、<1>~<10>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0052】
<12>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(A)の含有量が、好ましくは1.5~20質量%、より好ましくは1.5~15質量%、更に好ましくは1.5~10質量%、更に好ましくは1.5~7質量%、より更に好ましくは1.5~7質量%である、<1>~<10>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0053】
<13>
成分(B)のスルホン化率が、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である、<1>~<12>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0054】
<14>
成分(B)のガラス転移点が、好ましくは210℃以上、より好ましくは300℃以上、更に好ましくは400℃以上、更に好ましくは440℃以上である、<1>~<13>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0055】
<15>
成分(B)の重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である、<1>~<14>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0056】
<16>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(B)の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である、<1>~<15>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0057】
<17>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(B)の含有量が、好ましくは5~50質量%、より好ましくは7~40質量%、更に好ましくは8~30質量%、より更に好ましくは8~20質量%、より更に好ましくは10~25質量%である、<1>~<15>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0058】
<18>
成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.75以上、より更に好ましくは0.80以上であり、また、好ましくは0.94以下、より好ましくは0.93以下である、<1>~<17>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0059】
<19>
成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が、好ましくは0.70~0.94、より好ましくは0.75~0.94、更に好ましくは0.75~0.93、より更に好ましくは0.80~0.93である、<1>~<17>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0060】
<20>
成分(C)が、好ましくは水及び揮発性有機溶剤から選ばれ、より好ましくは水を含み、更に好ましくは水を主成分とする、<1>~<19>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0061】
<21>
成分(C)の20℃における蒸気圧が、好ましくは0.01kPa以上106.66kPa以下、より好ましくは0.13kPa以上66.66kPa以下、更に好ましくは0.67kPa以上40.00kPa以下、更に好ましくは1.33kPa以上40.00kPa以下である、<1>~<20>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0062】
<22>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(C)の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下以下である、<1>~<21>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0063】
<23>
さらに、成分(D)としてヨウ化カリウムを含有する、<1>~<22>のいずれか一に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0064】
<24>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(D)の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である、<23>に記載の汚染物質除去方法又は使用。
【0065】
<25>
次の成分(A)~(C)を含有し、成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が0.6以上0.95以下である、自己剥離膜形成用組成物。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
【0066】
<26>
次の成分(A)~(C)を含有し、下記評価方法によって測定される剥離度が20%以上100%以下である、自己剥離膜形成用組成物。
(A) ビニルアルコールを構成単位として含む重合体
(B) スルホン化率が89%以上のポリスチレンスルホン酸又はその塩
(C) 揮発性溶剤
<評価方法> 組成物をエポキシ樹脂塗装基板に0.3g/cm2塗布し、24時間乾燥する。乾燥前の前記基板上に濡れ広がった組成物の前記基板との接着面積S1と、乾燥後の塗膜が前記基材に接している面積S2を測定し、算出される(S1-S2)/S1の値を剥離度とする。
【0067】
<27>
成分(A)が、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル-エチレン共重合体、又は酢酸ビニル-エチレン共重合体の加水分解物である、<25>又は<26>に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0068】
<28>
成分(A)のガラス転移点が、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下である0℃以上120℃未満である、<25>~<27>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0069】
<29>
成分(A)の重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、更に好ましくは40,000以上であり、また、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下である、<25>~<28>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0070】
<30>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である、<25>~<29>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0071】
<31>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(A)の含有量が、好ましくは1.5~20質量%、より好ましくは1.5~15質量%、更に好ましくは1.5~10質量%、更に好ましくは1.5~7質量%、より更に好ましくは1.5~7質量%である、<25>~<29>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0072】
<32>
成分(B)のスルホン化率が、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である、<25>~<31>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。。
【0073】
<33>
成分(B)のガラス転移点が、好ましくは210℃以上、より好ましくは300℃以上、更に好ましくは400℃以上、更に好ましくは440℃以上である、<25>~<32>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0074】
<34>
成分(B)の重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である、<25>~<33>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0075】
<35>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(B)の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である、<25>~<34>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0076】
<36>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(B)の含有量が、好ましくは5~50質量%、より好ましくは7~40質量%、更に好ましくは8~30質量%、より更に好ましくは8~20質量%、より更に好ましくは10~25質量%である、<25>~<35>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0077】
<37>
成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.75以上、より更に好ましくは0.80以上であり、また、好ましくは0.94以下、より好ましくは0.93以下である、<25>~<36>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0078】
<38>
成分(A)及び成分(B)の総量に対する成分(B)の質量比(B)/[(A)+(B)]が、好ましくは0.70~0.94、より好ましくは0.75~0.94、更に好ましくは0.75~0.93、より更に好ましくは0.80~0.93である、<25>~<36>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0079】
<39>
成分(C)が、好ましくは水及び揮発性有機溶剤から選ばれ、より好ましくは水を含み、更に好ましくは水を主成分とする、<25>~<38>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0080】
<40>
成分(C)の20℃における蒸気圧が、好ましくは0.01kPa以上106.66kPa以下、より好ましくは0.13kPa以上66.66kPa以下、更に好ましくは0.67kPa以上40.00kPa以下、更に好ましくは1.33kPa以上40.00kPa以下である、<25>~<39>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0081】
<41>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(C)の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下以下である、<25>~<40>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0082】
<42>
さらに、成分(D)としてヨウ化カリウムを含有する、<25>~<41>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0083】
<43>
自己剥離膜形成用組成物中の成分(D)の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である、<42>に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【0084】
<44>
さらに、界面活性剤、増粘剤、可塑剤又は防腐剤を含有する、<25>~<43>のいずれか一に記載の自己剥離膜形成用組成物。
【実施例0085】
実施例1~6、比較例1~3
表1に示す組成物を調製し、以下に示す方法に従って、剥離度(%)及び膜強度を評価した。
【0086】
(剥離度評価方法)
各組成物をセメント固化体基板の10cm2の範囲に0.3g/cm2塗布し、25℃40%RHで24時間乾燥して、試料を製作した。
乾燥前の前記基板上に濡れ広がった組成物の前記基板との接着面積S1と、乾燥後の塗膜が前記基材に接している面積S2を測定し、算出される(S1-S2)/S1の値を剥離度とする。
【0087】
(膜強度評価方法)
温度25℃湿度50%RHの環境で、ガラス板あるいはテフロン(登録商標)シート上で、組成物を乾燥膜厚500μmとなるように乾燥させ、乾燥膜を得た。得られた膜を180°折り畳み、その後開く動作をした際に、破断しないものをa、破断したものをc、折すじやヒビが生じるが破断しないものをbとした。
【0088】
<ガラス転移点>
実施例に記載した成分(A)及び(B)のガラス転移点は、各試料を室温で24時間乾燥させた後更に80℃にて減圧乾燥して得られた乾燥固体について、下記の条件でDSC測定して求めた。
測定装置:DSC7000X(株式会社日立ハイテクサイエンス)
温度プロファイル:
1. 20℃から目標温度まで10℃/minで昇温し、5分間維持
2. 目標温度から20℃まで10℃/minで冷却し、5分間保持
3. 20℃から目標温度まで10℃/minで昇温し、5分間保持
4. 目標温度から20℃まで10℃/minで冷却し、5分間保持
目標温度は、クラレポバール22-98、同5-98、エクセバールRS-2117に関しては250℃、PS-100、PS-50に関しては440℃、HA-LATEXに関しては100℃で測定を行った。
【0089】
【0090】
試験例1~3
実施例2の組成物、及び実施例2の組成物に2質量%又は5質量%のヨウ化カリウムを添加し、同量の水を減じた組成物について、以下の方法に従って色相変化を評価した。
(色相変化評価方法)
放射線照射試験の代替として、UV-C照射試験を以下の方法で実施した。
各組成物をポリエステル基板の10cm2の範囲に0.1g/cm2塗布し、25℃40%RHで蛍光灯照射下、及びUV-C照射下において24時間乾燥して、目視で色相の変化を観察した。蛍光灯照射は通常の実験室の環境にて実施した。UV-Cランプは三共電気株式会社製のコンパクト型殺菌ランプGPL27を用いて、光源から15cm離した状態で実施した。
【0091】
その結果、実施例2の組成物では、蛍光灯照射下、UV-C照射下のいずれも色相の変化は認められなかった。一方、実施例2の組成物に2質量%又は5質量%のヨウ化カリウムを添加した組成物はいずれも、蛍光灯照射下では色相変化はなかったが、UV-C照射下では褐変した。なお、ヨウ化カリウムを添加しても剥離度及び膜強度は変わらなかった。