(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025737
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】高エネルギー高出力ダイオード励起広帯域レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/16 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H01S3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023130077
(22)【出願日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】22190323
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523304135
【氏名又は名称】マーベル フュージョン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】エアハルト、 ガウル
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート、 ルール
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE08
5F172AE12
5F172AF02
5F172AL04
5F172AL07
5F172EE13
5F172NS01
5F172NS18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高エネルギー、高効率、サブ100fsレーザ放射となる固体ダイオード励起レーザ増幅器を提供する。
【解決手段】増幅器100は、一アレイのレーザダイオードのポンプ源からポンプ光3を受光するように構成される一容積1を含む。レーザ増幅器はまた、当該一容積内に配列された利得媒体2も含む。この利得媒体は、ポンプ光の受光に応答して光を増幅するように構成される。利得媒体は、第1ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第1レーザ放射を発光するように構成される第1固体素子1Aと、第2ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第2レーザ放射を発光するように構成される第2固体素子2Aとを含む。第1固体素子及び第2固体素子はそれぞれが、それぞれに対応する活性レーザイオンを含有する。第1ピーク蛍光波長と第2ピーク蛍光波長との差は、10nm以上かつ60nm以下である。第1固体素子及び第2固体素子は流体冷却される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ増幅器であって、
一アレイのレーザダイオードのポンプ源からポンプ光を受光するように構成される一容積と、
前記一容積の中に配列される利得媒体であって、前記ポンプ光の受光に応答して光を増幅するように構成される利得媒体と
を含み、
前記利得媒体は、第1ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第1レーザ放射を発光するように構成される第1固体素子と、第2ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第2レーザ放射を発光するように構成される第2固体素子とを含み、前記第1固体素子及び前記第2固体素子はそれぞれが、それぞれに対応する活性レーザイオンを含み、
前記第1ピーク蛍光波長と前記第2ピーク蛍光波長との差が10nm以上かつ60nm以下となるように選択され、第1固体素子及び第2固体素子は冷却される、レーザ増幅器。
【請求項2】
前記レーザ増幅器は、シード放射源から入力シード放射を受光するように構成され、前記シード放射は、前記第1ピーク蛍光波長及び前記第2ピーク蛍光波長それぞれに対応する第1ピーク及び第2ピークを含む、請求項1のレーザ増幅器。
【請求項3】
前記利得媒体は、活性レーザイオンを含有する第3被冷却固体素子を含んで、第3ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第3レーザ放射を発光するように構成され、前記第3ピーク蛍光波長は前記第1ピーク蛍光波長と前記第2ピーク蛍光波長との間に含まれる、請求項1のレーザ増幅器。
【請求項4】
前記固体素子に直接接触する冷却流体をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項のレーザ増幅器。
【請求項5】
前記固体素子の少なくとも一つが複数の固体素子を含む、請求項1から4のいずれか一項のレーザ増幅器。
【請求項6】
前記第1固体素子、前記第2固体素子及び前記第3固体素子はそれぞれが、対応する複数の固体素子を含む、請求項5のレーザ増幅器。
【請求項7】
前記第1ピーク蛍光波長は1000nmよりも大きくかつ1060nmよりも小さく、前記第1ピーク蛍光波長は好ましくは約1053nmを中心とする、請求項1から6のいずれか一項のレーザ増幅器。
【請求項8】
前記第1ピーク蛍光波長と前記第2ピーク蛍光波長との差は20nm以上かつ30nm以下である、請求項1から7のいずれか一項のレーザ増幅器。
【請求項9】
前記第1固体素子と前記第2固体素子とは、異なる冷却エンクロージャ及び冷却サイクルに配列される、請求項1から7のいずれか一項のレーザ増幅器。
【請求項10】
レーザデバイスであって、
請求項1から9のいずれか一項のレーザ増幅器と、
ポンプ光を生成するように構成される光ポンプ源と、
前記レーザ増幅器にシード放射を入力するように構成されるシード放射源と
を含み、前記シード放射は、前記固体素子の前記ピーク蛍光波長のそれぞれに対応する複数のピークを含むスペクトル形状を有する、レーザデバイス。
【請求項11】
前記レーザが発光するCPA圧縮短パルスレーザ放射の自己位相変調を行うように構成される自己位相変調ユニットと、後続圧縮ユニットとをさらに含む、請求項10のレーザデバイス。
【請求項12】
増幅の方法であって、
第1ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第1レーザ光を発光するように構成される第1固体素子と、第2ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第2レーザ光を発光するように構成される第2固体素子とを含む利得媒体を与えるステップであって、前記第1固体素子及び前記第2固体素子はそれぞれが活性レーザイオンを含有し、前記第1ピーク蛍光波長と前記第2ピーク蛍光波長との差は10nm以上かつ60nm以下であり、前記第1固体素子及び前記第2固体素子は冷却される、ステップと、
レーザ増幅器の一容積に前記利得媒体を含めるステップと、
一アレイのレーザダイオードのポンプ源によってポンプ光を生成するステップと、
前記生成されたポンプ光を前記レーザ増幅器の前記一容積に与えるステップと、
前記一容積の中に配列される利得媒体によって、前記ポンプ光の受光に応答して光を増幅するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオード励起レーザ、増幅器、及び増幅の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオード励起レーザシステム及び固体(solid-state)ダイオード励起レーザシステムが業界で知られている。固体レーザ、及び特に固体レーザ増幅器は、利得媒体を含む。この利得媒体は典型的に、結晶、セラミック結晶、又はガラスのような非晶質材料である。適切な利得媒体ホスト結晶又はガラスには、例えばネオジム、イッテルビウム、ツリウム又はエルビウムのような希土類材料がドープされ得る。チタンサファイアレーザTi:Al2O3もまた、利得材料として、波長選択性(tunability)及び超短パルス生成能力の点で幅広いアプリケーションが見出されている。
【0003】
利得材料は、いわゆる反転分布(population inversion)状態を達成するために、ダイオード光によって、又は他の光源によって、光学的に励起又はポンピングすることができる。これらの光学励起を行うポンプは、一般に、結合手段を介して利得媒体に結合される。レンズは、かかる結合手段の周知例であり、ダイオードポンプは、光学ポンプとして当業界で広く使用されている。
【0004】
特許文献1及び2は、利得材料が単一材料として形成されるのではなく、それぞれが冷却流体を介して接触する複数の離間材料として成形される構成に関する。この構成は、利得材料における熱応力の問題を緩和し、ひいては達成平均出力の増加を可能にする。
【0005】
当業界において、利得媒体が2つの異なるガラスタイプからなる構成も知られている。例えば、非特許文献1は、Ndがドープされたフォスフェイト(phosphate(リン酸塩))及びシリケート(silicate(ケイ酸塩))ガラスから作られた利得媒体を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,937,629号公報
【特許文献2】米国特許第7,103,078号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Spectral pulse shaping of a 5 Hz, multi-joule, broadband optical parametric chirped pulse amplification frontend for a 10 PW laser system”, BATYSTA et Al., Vol. 43, No. 16 / 15 August 2018 / Optics Letters
【非特許文献2】“A laser-driven mixed fuel nuclear fusion micro-reactor concept”, arXiv:2202.03170v5, Hartmut Ruhl and Georg Korn
【非特許文献3】“StarDriver: A Flexible Laser Driver for Inertial Confinement Fusion and High Energy Density Physics”, October 2014 Journal of Fusion Energy, D. Eimerl, al.
【非特許文献4】“Nd-doped Laser Glass Spectroscopic and Physical Properties, Band 1 M-95, Rev. 2”, Stanley Edward Stokowski, Lawrence Livermore National Laboratory, University of California, 1981
【非特許文献5】“Spectral pulse shaping of a 5 Hz, multi-joule, broadband optical parametric chirped pulse amplification frontend for a 10 PW laser system”, BATYSTA et Al., Vol. 43, No. 16 / 15 August 2018 / Optics Letters
【非特許文献6】Nd-doped Laser Glass Spectroscopic and Physical Properties, Volume 1 M-95, Rev. 2
【非特許文献7】Nd-doped Laser Glass Spectroscopic and Physical Properties, Volume 2 M-95, Rev. 2
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、業界周知の解決策は、超短パルス持続時間、高エネルギーパルス及び高効率を同時に有する広帯域放射の生成を許容しない。詳しくは、100fs以下、例えば50fs以下のパルス持続時間を有し、パルス当たり10Jを超えるエネルギーを有し、かつ、3%を超えるレーザパルス対ウォールプラグ効率を有する。
【0009】
当技術の欠点、特に、高エネルギー、高効率、サブ100fsレーザ放射の欠如により、一定数の技術分野においてレーザの完全な利用が妨げられる。かかるレーザ放射は、例えば、非特許文献2及び3においても説明されるように、核融合点火を許容することによって、レーザ核融合の分野での研究を前進させるべく使用し得る。
【0010】
さらに、前記レーザ放射は、粒子加速及びX線生成において用いられるだけでなく、核融合生成中性子による核変換の分野においても用いることができる。他例として、前記レーザ放射は、ミューオン及び/又は中性子の生成に使用され得る。したがって、当業界では、高エネルギー(例えば10から200Jの範囲)及び高ピーク出力(例えば1PW)を有する短いサブ100fsのレーザパルス(例えば70fs未満、好ましくは50fs未満)の生成を可能にすることが一般に必要とされている。
【0011】
本開示の目的は、上記欠点に少なくとも部分的に対処し、又は上記欠点を少なくとも部分的に緩和することである。本開示の更なる好ましい実施形態は、従属請求項に関連して提示される。この目的は、独立請求項の教示に従って達成される。従属項はまた、他の有利な実施形態も提示する。
【0012】
本開示の発明者の長所の一つは、レーザが出力するパルス持続時間が、利得媒体として異なるタイプの固体素子を用いることによって制御できることを認識したことにある。固体素子を、それぞれのスペクトル特性に基づいて選択することにより、波長領域において十分に広い発光スペクトルを得ることが可能となる。これは、固体素子を、発光スペクトルの蛍光ピークが適切にシフトされるように、すなわち十分にシフトされるように、選択することによって有利に達成される。好ましくは、これらの蛍光スペクトルは同時に、ピークに対して少なくとも1%レベルで重複する。
【0013】
レーザパルスのスペクトル帯域幅とパルス持続時間との関係に鑑みれば、スペクトル帯域幅を調整することによってパルス持続時間を調整することが可能である。換言すれば、波長領域においてレーザパルスの適切な帯域幅を達成するように固体素子を選択することによって、時間領域におけるレーザパルスの特性、すなわちパルス持続時間、を制御することが可能である。例えば、複合出力帯域幅が、例えば約30nmの固体素子を選択することによって、約50fsに対応するパルス持続時間を達成することが可能である。
【0014】
ちなみに、ここで使用される帯域幅は、特に明記されない限り、半値全幅(Full width at Half Maximum)帯域幅を称する。
【0015】
既知のいずれの構成においても固体素子は、サブ100fs(例えば50fs)のレーザパルスを生成するための、それらの相対的な発光特性に鑑み、特にそれぞれの蛍光ピークの比較的大きなシフトに鑑み、選択されることはなかった。このことは、ダイオードポンピングと流体冷却との組み合わせにおいて、ピーク出力を劇的に増加させ、ひいては対応する集束光学系の焦点において達成可能な強度を増加させることを許容する大きな帯域幅及び超短レーザパルスにより、1~数100kWの範囲にあるパルス反復回数増加高平均出力レーザ放射を効率的に生成する突破口を切り開く。
【0016】
換言すれば、本開示の発明者のもう一つの長所は、固体素子を、それぞれの発光スペクトルを考慮して選択して適切に組み合わせることと、サブ100fs、好ましくは50fs以下を生成するべく冷却及びダイオードポンピングをすることと、ピーク出力及び平均出力並びに強度を増加させた新たなアプリケーションを可能にすることとの利点を認識したことにある。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、一アレイのレーザダイオードのポンプ源からポンプ光を受光するように構成される一容積を含むレーザ増幅器が与えられる。レーザ増幅器はまた、当該一容積内に配列された利得媒体も含む。この利得媒体は、ポンプ光の受光に応答して光を増幅するように構成される。利得媒体は、第1ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第1レーザ放射を発光するように構成される第1固体素子を含む。また、第2ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第2レーザ放射を発光するように構成される第2固体素子も含む。第1固体素子及び第2固体素子はそれぞれが、それぞれに対応する活性レーザイオンを含有する。第1ピーク蛍光波長と第2ピーク蛍光波長との差は、10nm以上かつ60nm以下である。他実施形態によれば、第1ピーク蛍光波長と第2ピーク蛍光波長との差は、20nm以上及び/又は30nm以下である。これにより、第1固体素子及び第2固体素子が発光する蛍光スペクトルの十分な重複が保証される。これはひいては、レーザ増幅器の広い発光出力スペクトル(すなわち出力放射)の保証に寄与する。
【0018】
第1固体素子及び第2固体素子は流体冷却される。
【0019】
流体冷却は、例えば、冷却液又は冷却ガスによる冷却を包括する。
【0020】
本実施形態によれば、活性媒体への熱伝達を低減して高平均出力を達成しながら効率を改善することが可能である。すなわち、システムの高いパルス繰り返し回数の動作を許容する超短パルス性能により、高効率性能、高平均出力性能、高ピーク出力性能を有することが可能となる。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、第1固体素子及び第2固体素子は、同じ冷却エンクロージャ内に存在してよく、又は別々の冷却エンクロージャ及び冷却サイクルを有してもよい。これらは、同じダイオードによって励起又はポンピングされてもよく、又は別々のダイオードによって励起又はポンピングされてもよい。
【0022】
本開示の他実施形態によれば、シード放射源からのシード放射を入力として受光するように構成されるレーザ増幅器が与えられる。ここで、シード放射は第1ピーク及び第2ピークを含み、これらはそれぞれ、第1ピーク蛍光波長及び第2ピーク蛍光波長に対応する。シード放射は、これらの間に含まれる追加のピークを有することが好ましい。すなわち、シード放射の第3ピークが、シード放射の第1ピークと第2ピークとの間に含まれる。
【0023】
換言すれば、シード放射は、各レーザ媒体のピーク蛍光波長に一定のスペクトル含有量を有し、2つのピークの間に(すなわち第1ピーク蛍光波長に対応して与えられるピークと第2ピーク蛍光波長に対応して与えられるピークとの間に)一定のスペクトル含有量を有してよい。本実施形態によれば、増幅器の全体的な出力スペクトルを増強することが可能である。
【0024】
これにより、シードスペクトルを制御することによって出力スペクトルを最大化することが可能となる。
【0025】
好ましい実施形態によれば、第1ピーク蛍光波長は、1000nmよりも大きくかつ1060nmよりも小さい。さらに好ましくは、第1ピーク蛍光波長は約1053nmを中心とする。
【0026】
本開示の他実施形態によれば、以下のステップを含む増幅方法が与えられる。
【0027】
第1ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第1レーザ光を発光するように構成される第1固体素子と、第2ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第2レーザ光を発光するように構成される第2固体素子とを含む利得媒体を与える第1ステップ(S1)であって、第1固体素子及び第2固体素子はそれぞれが活性レーザイオンを含有し、第1ピーク蛍光波長と第2ピーク蛍光波長との差は10nm以上かつ60nm以下である第1ステップ(S1)。
【0028】
第1固体素子及び第2固体素子を冷却する第2ステップ(S2)。
【0029】
レーザ増幅器の一容積に利得媒体を含める第3ステップ(S3)。
【0030】
一アレイのレーザダイオードのポンプ源によってポンプ光を生成する第4ステップ(S4)。
【0031】
生成されたポンプ光をレーザ増幅器の一容積に与える第5ステップ(S5)。
【0032】
ポンプ光の受光に応答して光を、利得媒体によって増幅する第6ステップ(S6)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の実施形態は、本発明の概念を良好に理解するために提示されるが、限定とはみなされることはなく、ここで、以下の図を参照して説明される。
【0034】
【
図2】本開示の第1実施形態に係るレーザ増幅器を示す。
【
図3】本開示の第1実施形態の一変形例に係るレーザ増幅器を示す。
【
図4A】本開示の第1実施形態の一例に係る固体素子の蛍光スペクトルを示す。
【
図4B】本開示の第2実施形態に係るレーザ放射及びシード放射のシミュレーションを示す。
【
図5】本開示の第3実施形態に係るレーザ増幅器を示す。
【
図6】本開示の第3実施形態に係る固体素子の蛍光スペクトルを示す。
【
図7】本開示の一実施形態に係るレーザの一実装例のブロック図を示す。これは、本開示のレーザ増幅器を含む。
【
図8】本開示の第4実施形態に係るレーザ発振及び増幅の方法に関するブロック図を示す。
【
図9】本開示の追加実施形態に従って用いられる追加固体素子のスペクトルプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、周知技術に係るレーザ増幅器を示す。
図1によれば、容積1を含むレーザ増幅器100が与えられる。容積1は、分散された利得媒体を含む。容積1はレーザチャンバの一部である。利得媒体は、入力面と、入力面にほぼ対向する出力面とを含む。
【0036】
分散された利得媒体はまた、複数の固体素子2(すなわち利得材料)も含む。容積1は、冷却流体4を含むように構成される。冷却流体4は、例えば、熱応力を緩和するための冷却液体である。
【0037】
冷却流体は、固体素子に直接接触する。例えば、流体は、固体素子が生成する放射が冷却液体を直接横切るように、固体素子のまわり又は周囲を流れる。
【0038】
複数の固体素子2の固体素子は、同じタイプである。例えば、すべての固体素子2は、希土類(例えばネオジム)ドープガラス又はフッ化イットリウムリチウム(Nd:YLF)である。
【0039】
固体素子は、容積1の中のそれぞれの固定位置に保持され得る。
【0040】
光ポンプ源(図示せず)により生成されるポンプ光3は、利得材料、すなわち複数の固体素子2に衝突する。ダイオードレーザポンプが、光ポンプ源の一例である。
【0041】
励起状態イオンを生成するために、光ポンプ源によって利得材料を励起又はポンピングすることができる。増幅パルスはその後、増幅対象の複数の光パルス(例えばシードレーザ)を、利得媒体を通るように向けることによって生成することができる。増幅対象パルスは、媒体を複数回通過することができ、したがって、さらに増幅することができる。
【0042】
図2は、本開示の第1実施形態に係るレーザ増幅器を示す。第1実施形態は、上述した周知技術のレーザ増幅器と同様の、又は上述した周知技術のレーザ増幅器に対応する、コンポーネント又は要素を含み得る。簡潔性を目的として、同様の又は対応するコンポーネント又は要素の説明は繰り返さない。しかしながら、そうでないことが示される場合を除いて当該コンポーネント又は要素もまた第1実施形態に関連して使用され得ることは、当業者にとって容易に理解される。
【0043】
第1実施形態によれば、レーザ増幅器は、一アレイのレーザダイオードのポンプ源からポンプ光を受光するように構成される一容積を含む。レーザ増幅器はまた、当該一容積内に配列された利得媒体も含む。この利得媒体は、ポンプ光の受光に応答して光を増幅するように構成される。
【0044】
利得媒体は、2つの異なるタイプの固体素子を含む。すなわち、利得媒体は第1固体素子及び第2固体素子を含む。
【0045】
第1実施形態の一変形例によれば、これらの固体素子うちの一以上はガラスである。しかしながら、本開示がこれに限られることはなく、他のタイプの固体素子も用いてよい。例えば、結晶及び/又はセラミックスも用いてよい。
【0046】
所与のタイプの固体素子は、発光された蛍光スペクトルの特性によって、例えば蛍光発光スペクトルのピーク(又は最大値)の位置によって、特徴付けられる。このピークは、蛍光最大値とも称する。ピーク位置は、当該ピークが中心となる波長によって表され、ピーク蛍光波長と称される。ピークは、絶対ピーク又は相対ピーク(すなわち局所的な最大値)としてよい。
【0047】
したがって、異なるタイプの固体素子が、異なる蛍光発光スペクトルによって、例えば蛍光発光スペクトルのピークの異なる位置によって、特徴付けられる。
【0048】
理解されることであるが、異なるタイプの固体素子は、ピークの位置とは異なる特性によって特徴付けられ得る。例えば、異なるタイプの固体素子は、それぞれの半値全幅(FWHM)によって特徴付けられてよい。これにより、2つの固体素子が同じスペクトル位置に(例えば同じ波長に)ピークを有する場合であっても、それらのFWHMが異なれば、それらは異なるタイプとされる。
【0049】
(蛍光)発光スペクトルは、例えば、固体素子がポンプ光の受光に応答して発光する放射線である。
【0050】
第1実施形態によれば、利得媒体は、第1固体素子2A(すなわち第1タイプの固体素子)及び第2固体素子2B(すなわち第2タイプの固体素子)を含む。第1固体素子2Aは、第1ピーク蛍光波長λ1を中心とするピークを有する第1レーザ光を発光するように構成される。第2固体素子2Bは、第2ピーク蛍光波長λ2を中心とするピークを有する第2レーザ光を発光するように構成される。
【0051】
第1固体素子及び第2固体素子はそれぞれが、活性レーザイオンを含有する。
【0052】
第1固体素子及び第2固体素子は、第1ピーク蛍光波長と第2ピーク蛍光波長との差が10nm以上かつ60nm以下となるように選択される。特に、このスペクトル関係によって結び付けられる一対の固体材料が、所望のパルス持続時間を生成するのに適切であることが決定されている。他方、この範囲外にある材料は、それほど好ましくないパルス特性をもたらす。
【0053】
さらに、第1固体素子及び第2固体素子は冷却され、例えば液体冷却される。
【0054】
一実施形態によれば、第1固体素子はLG-770ガラスであり、第2固体素子はK-824ガラスである。この組み合わせは特に有利である。それぞれの発光ピークのシフトが10nmを超えることを考慮すれば、ピーク波長が1050nmと1070nmとの間に存在する16nmを超えるFWHMスペクトル出力の達成が許容されるからである。かかるスペクトルコンテンツにより、100fsより短い持続時間のパルスを生成し得る。
【0055】
これらの材料の特性は、本開示の努力分野において周知であり、例えば、非特許文献4に記載されている。
【0056】
しかしながら、本開示がこれに限られることはなく、他例によれば、第1素子をLG-770ガラスとし、第2素子をL-65としてよい。L-65は、本特許出願の努力分野においても周知のガラスであり、上記文献にも記載されている。
【0057】
それにもかかわらず、本開示が、与えられた固体材料の特定の例によって限られることはなく、それぞれのピーク蛍光波長が上記スペクトル条件を満たす限り、他の固体材料を容易に使用し得ることが理解される。
【0058】
固体素子は、ディスク又は薄いスラブの形態を有してよい。固体素子の厚さは、所望の冷却効果に基づいて選択することができる。
【0059】
第1実施形態のレーザ増幅器を含むレーザは、100J以上のエネルギー、100fs以下のパルス持続時間、及び10Hzのパルス繰り返し周波数に到達し得る。レーザはまた、高い平均パワー及びピークパワーにスケールアップしてよい。
【0060】
ダイオードポンピングによって効率を改善し、活性媒体への熱伝達を低減することができる。冷却が、ダイオードポンピングの高い平均出力性能とともに与えられる。
【0061】
本開示のレーザ増幅器によれば、混合固体素子、ダイオードポンピング及び冷却の組み合わせに鑑み、システムの高い繰り返し回数動作を許容する高効率性能、高平均出力性能、高ピーク出力性能を有するレーザ放射を得ることができる。
【0062】
例えば、本開示のレーザ増幅器によれば、(i)圧縮後のエネルギーが50J以上であり、100J以上まで拡張可能であり、(ii)ピーク出力が約1PWであり、(iii)平均出力が500W以上のレーザ放射を得ることができる。
【0063】
第1実施形態の一変形例によれば、レーザ放射は、時間的及びスペクトル的に伸長することができ、その後、パルスは、チャープパルス増幅(CPA)技術に従って増幅された後に圧縮され得る。しかしながら、本開示がこれに限られることはなく、CPAとは異なる他の技術も適用してよい。例えば、光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)技術も適用してよい。
【0064】
したがって、レーザパラメータは、200J以上のエネルギー、50fs以下のパルス持続時間、及び実質的に10Hz以上のパルス繰り返し周波数まで伸長することができる。
【0065】
図が固体素子を垂直に横切るポンプ光を示す一方、明らかなことであるが、本開示がこれに限られることはなく、ポンプ光が固体素子に垂直に衝突しない構成も可能であり、本開示の範囲内である。
【0066】
図3は、本開示の第1実施形態の一変形例に係るレーザ増幅器を示す。
【0067】
特に、
図3によれば、第1固体素子2A及び第2固体素子2Bはそれぞれが2つの固体素子を含む。
【0068】
一般的に、本開示によれば、第1タイプの固体素子が第1複数M個の固体素子を含み、第2の固体素子が第2複数N個の固体素子を含む。MはNと等しくてよい。代替的に、MとNとは異なってよい。M及びNは双方とも、2以上の整数である。
【0069】
さらに、
図3は、第1タイプの固体素子2Aと第2タイプの固体素子2Bが容積1の異なる側に配置される場合を示す。しかしながら、本開示がこれに限られることはなく、本実施形態のさらなる変形例によれば、第1タイプの固体素子2Aと第2タイプの固体素子2Bとをインタレースしてもよい。すなわち、例えば、所与の第2固体素子2Bを、2つの第1タイプの固体素子2Aの間に配置してよいし、その逆を行ってもよい。
【0070】
図4Aは、本開示の第1実施形態の一実装例に係る固体素子のスペクトルを示す。
【0071】
x軸は発光スペクトルの波長を示し、y軸はスペクトルの正規化強度を示す。
【0072】
詳しくは、LG-770ガラス(第1固体素子の例)及びK-824ガラス(第2固体素子の例)を用いたレーザ増幅器を含むレーザが発光するレーザ放射を示す。与えられた例において、第1固体素子の発光ピーク(又はピーク蛍光波長)が近似的に1053nmに位置していることがわかる。さらに、与えられた例において、第2固体素子の発光ピーク(ピーク蛍光波長)が近似的に1065nmに位置している。
【0073】
当業者に明らかなことであるが、発光ピークは、例えば、近似的に1nmの誤差マージンを有する分光器を介して測定することができる。
【0074】
図4Bは、本開示の第2実施形態に係るレーザ放射シミュレーション及びシード放射シミュレーションを示す。本実施形態はまた、第1実施形態を参照し、相違点を特に強調して説明される。
【0075】
図4Bの実線は、レーザ増幅器に供給される増幅された形状のシードを示す。シードは、シード放射源によって生成される。理解されることだが、描かれるシード放射は、例示の目的のために増幅されたものであり、したがって、レーザ増幅器に入力される実際のシードの縮尺どおりではない。
【0076】
代わりに破線は、LG-770が第1固体素子として使用されてK-824が第2固体素子として使用される本開示の第1実施形態に係るレーザ増幅器を含むレーザによって発光されるレーザ放射を示す。
【0077】
図において、nmで表される波長がx軸に沿って報告される一方、ピーク蛍光に関する正規化蛍光スペクトルはy軸に沿って報告される。双方向矢印により示されるように、レーザ発光スペクトルは約30nm(FWHM)の広帯域を有する。
【0078】
第2実施形態によれば、レーザ増幅器は、シード放射源によって成形されたシード放射を入力として受光するように構成することができる。シード放射は、固体素子それぞれのピーク蛍光波長に対応するピークを含む所定のスペクトル形状を有してよく、また、それらの間に追加のピークが含まれることが好ましい。シード形状は、レーザの出力放射が最適化されるように成形される。
【0079】
ここで「ピーク蛍光波長に対応する」として使用される場合、例えば、シードピーク及び対応蛍光ピークが誤差マージン内で重なることを意味し得る。代替的に、これは、シードピーク及び蛍光ピークが、波長領域における所与の所定範囲内に存在することを意味してもよい。例えば、所定範囲は、ピーク蛍光波長の5%以内としてよい。
【0080】
換言すれば、事前に成形されたシード放射が、3つのピークを含む所定スペクトル形状を有してよい。第1ピークが第1固体素子の第1ピーク蛍光波長に対応し、第2ピークが第2固体素子の第2ピーク蛍光波長に対応する。第3ピークが好ましい。
【0081】
事前に成形とは、シード放射の形状又は形態が、レーザ増幅器で用いられる前(すなわちレーザ増幅器へのシードに先立って)に決定されていることを意味する。詳しくは、その形状は、利得媒体に基づいてアプリオリに決定されている。
【0082】
成形シードに鑑み、第1実施形態に係るレーザ増幅器の全体的な出力スペクトルを強化して短いパルスを達成することが可能となる。特定の非限定例によれば、成形シードは、パラメトリック増幅プロセスにおいてシードパルスの周波数がチャープされてスペクトルコンテンツが重複ポンプの強度によって成形される光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)バランスの方法によって生成することができる。これに関連して、非特許文献5を参照してよい。
【0083】
そしてポンプパルスが電子的に成形される。
【0084】
図5は、本開示の第3実施形態に係るレーザ増幅器を示す。本実施形態もまた、第1実施形態及び/又は第2実施形態を参照し、相違点を特に強調して説明される。簡潔性を目的として、対応するコンポーネントの説明は繰り返さない。
【0085】
第3実施形態によれば、3つの異なるタイプの固体素子が与えられる。
【0086】
第3固体素子の一例が、Schott(登録商標)社が製造するシリケートLG-680である。
図6にも描かれるように、シリケートLG-680は、約1062nmの発光ピークを有する。すなわち、第3固体材料の発光ピークは、第1固体材料と第2固体材料との間に含まれる。
【0087】
ちなみに、
図5に破線で模式的に示されるように、第1固体素子、第2固体素子及び第3固体素子は、別個の冷却エンクロージャ5A、5B及び5Cに含まれる。この場合において、これらの固体素子は別個の、すなわち独立した、冷却サイクルを有し得る。これは有利となり得る。異なる固体材料の異なる特性を考慮に入れるように冷却を設計することが許容されるからである。
【0088】
しかしながら、本開示がこれに限られることはなく、これらの固体素子を同じ冷却エンクロージャに存在させてよい。
【0089】
さらに、固体材料は、同一のダイオードアレイによってポンピングされてよく、又は別個のダイオードアレイによってポンピングされてよい。
【0090】
図6は
図4Aに対応し、さらにシリケートLG-680の蛍光発光スペクトルが表されている。
【0091】
第3実施形態によれば、レーザ増幅器が発光する放射線のスペクトルプロファイルの形状を改善することができる。詳しくは、選択された第1固体素子及び第2固体素子の特定のスペクトル特性にも依存して、第3固体素子は、発光される放射線のスペクトルプロファイルにおける2つのこぶ又はハンプ(又は局所ピーク)の形成を防止し得る。
【0092】
2つのハンプは、例えば、第1固体材料及び第2固体材料の発光ピークが波長空間においてあまりにも離れている場合に生じ得る。換言すれば、第3固体素子は、第1固体素子の発光スペクトルと第2固体素子と発光スペクトルとのギャップをスペクトル的に埋めることによって、スペクトル特性を改善し得る。
【0093】
すなわち、広帯域スペクトル(ひいては短いレーザパルス)を得ることができるのと同時に、発光レーザパルスのスペクトルの所望のガウス様形状の劣化を防止することができる。
【0094】
第3実施形態によれば、3つの異なるタイプの固体素子のみが説明されたが、本開示はこれに限られない。詳しくは、利得媒体が4つ、5つ又はそれ以上の固体素子を含む構成も可能である。
【0095】
利得媒体が第3固体素子を含む場合、シード形状はまた、第3固体素子の第3ピーク蛍光波長に対応する追加の第4ピークも含み得る。
【0096】
一般的に、シード形状は、固体素子の数以上の数のピークを含み得る。
【0097】
所与の固体素子が、一つを超えるピーク蛍光波長(例えば絶対ピーク及び相対ピーク)を有し得る。したがって、さらに一般的には、成形シードは、レーザ増幅器の固体素子のピーク蛍光波長の総数よりも大きな数のピークを含み得る。
【0098】
図7は、本開示の一実施形態に係るレーザの一実装例のブロック図を示す。
【0099】
レーザは、参照番号200により示されるCPAステージ1と、参照番号210により示されるOPCPAステージポンプレーザと、参照番号220により示されるOPCPAステージと、参照番号230により示されるガラス増幅器ステージと、圧縮器240とを含む。
【0100】
CPAステージ1は、複数のユニットを含み得る。詳しくはフェムト秒(fs)光源201と、パルス伸長器202と、増幅器203と、圧縮器204と、コントラストフィルタ205とを含み得る。CPAステージ1の終端において、特定の非限定例によれば、放射は、30fsのパルス持続時間、1060nmの中心波長、50nmを超える帯域幅(BW)、ほぼ10mJのエネルギーとの特性を有し、高いコントラストを特徴とする。
【0101】
OPCPAステージポンプレーザは、複数のユニットを含み得る。詳しくは、cwファイバ光源211、時間パルス成形器212、DPSSL出力増幅器Nd:YAG213、DP再生増幅器214、空間成形ユニット215、及びSHGユニットを含み得る。OPCPAステージポンプレーザの終端において、特定の非限定例によれば、パルスは、ほぼ3Jのエネルギー、532nmの中心波長、ほぼ5nsのパルス持続時間との特性を有し、空間的及び時間的に成形され得る。
OPCPAステージにおいて、パルスは、スペクトル的に事前成形され、伸長器、ほぼ5nsのチャープ、ほぼ0.5J、50nmを特徴とする。
【0102】
ガラス増幅器ステージは、x20、ほぼ(25mm)2、10Jとの特性を特徴とするシリケートガラス冷却ディスク増幅器231を含み、x12、ほぼ(50mm)2、120Jとの特性を特徴とするフォスフェイト(phosphate)ガラス冷却ディスク増幅器232を含み、880nm及びほぼ0.6MWを有するダイオードポンプ233を含み、880nm、ほぼ2×1.2MWを有するダイオードポンプ234を含む。
【0103】
すなわち、ガラス増幅器ステージにおいて、ガラスは冷却液体によって冷却される。
【0104】
圧縮器240において、特定の非限定例によれば、パルスは、100J、100fs超過、10Hzのサンプルを特徴とする。
【0105】
図8は、本開示の第4実施形態に係るレーザ発振及び増幅の方法に関するブロック図を示す。
【0106】
レーザ発振及び増幅の方法は、
【0107】
第1ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第1レーザ光を発光するように構成される第1固体素子と、第2ピーク蛍光波長を中心とするピークを有する第2レーザ光を発光するように構成される第2固体素子とを含む利得媒体を与える第1ステップ(S1)であって、第1固体素子及び第2固体素子はそれぞれが活性レーザイオンを含有し、第1ピーク蛍光波長と第2ピーク蛍光波長との差は10nm以上かつ60nm以下である第1ステップ(S1)と、
【0108】
第1固体素子及び第2固体素子を冷却する第2ステップ(S2)と、
【0109】
レーザ増幅器の一容積に利得媒体を含める第3ステップ(S3)と、
【0110】
一アレイのレーザダイオードのポンプ源によってポンプ光を生成する第4ステップ(S4)と、
【0111】
生成されたポンプ光をレーザ増幅器の一容積に与える第5ステップ(S5)と、
【0112】
ポンプ光の受光に応答して光を、利得媒体によって増幅する第6ステップ(S6)と
を含む。
【0113】
理解されることだが、本方法のステップは、必ずしも記載された順序で行われる必要はなく、所定のステップが他のステップの前に行われてよい。例えば、冷却の第2ステップは、一容積に利得媒体を含める第3ステップの後に行われてよい。
【0114】
他実施形態
【0115】
上述した実施形態の一変形例によれば、レーザシステムはさらに、レーザ増幅器が発光するレーザ放射の自己位相変調(self-phase modulation(SPM))を行うように構成される自己位相変調ユニットを含む。SPMを行うことにより、追加の圧縮ユニットにおいて後続の追加パルス圧縮を達成することができる。
【0116】
追加のSPMに鑑み、レーザ増幅器から発光される光が圧縮されてさらに短いパルスになり得る。
【0117】
レーザ放射は、対応する波長若しくは対応する範囲の波長を含み、又は対応する波長若しくは対応する範囲の波長から構成される。同様に、第1レーザ放射、第2レーザ放射及び第3レーザ放射はそれぞれが、第1波長、第2波長及び第3波長それぞれ、若しくは第1範囲、第2範囲及び第3範囲それぞれの波長を含み、又は第1波長、第2波長及び第3波長それぞれ、若しくは第1範囲、第2範囲及び第3範囲それぞれの波長から構成される。
【0118】
図9は、本開示の実施形態に従って用いられる固体素子のスペクトルプロファイルを示す。上記説明においてLG-770、K-824及びシリケートLG-680が参照されたが、本開示がこれらに限られることはなく、例えばガラス9016、L-65及びAPG-1のような追加固体材料を使用してよい。第1ガラスは非特許文献6によって記載されている。第2ガラスは非特許文献7によって記載されている。第3ガラスは、Schott(登録商標)社によって市販されている。
【0119】
これらの材料のいずれかのペア又は対を、第1ピーク蛍光波長と第2ピーク蛍光波長との差が10nm以上かつ60nm以下となる限りにおいて選択することができる。
【0120】
図9は
図6に(ひいては
図4Aに)対応し、追加の固体素子に対応する追加の蛍光発光スペクトルが示される。
【0121】
大きなシフトに鑑み、固体材料の有利な組み合わせはLG-770及び9016となり得る。
【0122】
さらに、第1蛍光ピークと第2蛍光ピークとの間に対応蛍光ピークが含まれる限り、図に示される材料はいずれも第3固体材料(又は第4固体材料)として使用することができる。
【0123】
なお、図からわかるように、LG-770のピーク蛍光波長は約1053nmであり、APG-1のピーク蛍光波長は約1056nmであり、シリケートLG-680のピーク蛍光波長は約1062nmであり、K-824のピーク蛍光波長は約1065nmであり、L-65のピーク蛍光波長は約1070nmであり、9016のピーク蛍光波長は約1090nmである。
【0124】
これらの材料は周知であって文献に記載され、又は市販されている(例えばSchott(登録商標))。
【0125】
一実施形態によれば、レーザ増幅器の発光スペクトルは、選択された固体材料の最低ピーク蛍光波長(例えば第1ピーク蛍光波長)と最高ピーク蛍光波長(例えば第2ピーク蛍光波長)との間に含まれる範囲を超えて広がる。適切な範囲は、ピーク・トゥ・ピークの範囲であり、最高ピーク側の右側が、第2固体材料の蛍光がその最大値の80%まで低下する範囲に広がり、最低ピーク側の左側が、第1固体材料の蛍光がその最大値の80%まで低下する範囲に広がる。
【0126】
所与の波長における蛍光スペクトルの強度がピーク蛍光波長における強度の80%である場合、対応する利得は当該ピーク蛍光波長に対応する利得よりも低くなる。かかる低い利得は、利得媒体を適切にシードすることによって補償することができる。詳しくは、シード放射を、ピーク最大値の100%(未満)とピーク最大値の80%との間に含まれる波長において多くのエネルギーを与えるようにスペクトル成形してよい。
【0127】
シード放射のスペクトル形状を適切に選択することにより、その範囲内で広くかつ平坦な出力スペクトルを達成することができる。
【0128】
換言すれば、最適なシード形状は、固体材料の蛍光スペクトルの関数である。
【0129】
詳細な実施形態を説明してきたが、これらは独立請求項によって定義される開示の良好な理解を与えるのに役立つにすぎず、限定とみなされることはない。むしろ、開示された特定の実施形態は、本開示の基礎となる概念を表すものとして解釈されなければならない。当業者にとって直ちに明らかなことであるが、一実施形態に関連して開示された側面及び特徴は、本開示の教示から逸脱することなく、他実施形態と自由に組み合わせることができる。
【外国語明細書】