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特開2024-25751ブリスター包装材用蓋部フィルムおよびブリスター包装材
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  • 特開-ブリスター包装材用蓋部フィルムおよびブリスター包装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025751
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ブリスター包装材用蓋部フィルムおよびブリスター包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240216BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20240216BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D75/36
B65D77/20 L
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023130779
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】22189764
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523306405
【氏名又は名称】ズュートパック メディカ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】SUEDPACK Medica AG
【住所又は居所原語表記】Neuhofstrasse 20, 6340 Baar, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】カロリン グリムバッハー
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB81
3E067BA10A
3E067BA15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BC07A
3E067CA05
3E067CA06
3E067CA11
3E067CA16
3E067CA17
3E067EA04
3E067EB19
3E067EB27
3E067FB02
3E067FC01
4F100AC03
4F100AC03E
4F100AK02
4F100AK02E
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK07D
4F100AK07E
4F100AK21
4F100AK21E
4F100AL01
4F100AL01E
4F100BA05
4F100BA07
4F100EH46
4F100EH46A
4F100EJ38
4F100EJ38B
4F100GB18
4F100GB66
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、アルミニウムを排除することができ、かつ高価値の医薬品に課されている高い水および酸素バリア性に関する要求を低コストで満たすことができる、ブリスター包装材、蓋部フィルムおよび底部フィルムを提供することである。
【解決手段】医薬品用ブリスター包装材の底部フィルム(2)をシールするための蓋部フィルム(1)であって、2つの外層、すなわちカバー層(3)およびシール層(4)と、前記カバー層(3)と前記シール層(4)との間に配置された1つ以上の中間層(5)とを含む蓋部フィルムにおいて、前記カバー層(3)および前記シール層(4)が、ポリプロピレン層であることを特徴とする、蓋部フィルムとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品用ブリスター包装材の底部フィルム(2)をシールするための蓋部フィルム(1)であって、2つの外層、すなわちカバー層(3)およびシール層(4)と、前記カバー層(3)と前記シール層(4)との間に配置された1つ以上の中間層(5)とを含む蓋部フィルムにおいて、前記カバー層(3)および前記シール層(4)が、ポリプロピレン層(6,7,10)であることを特徴とする、蓋部フィルム。
【請求項2】
前記1つ以上の中間層(5)が、少なくとも1つのコポリマー層、有利にポリプロピレンコポリマー層を含む、請求項1記載の蓋部フィルム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコポリマー層(7)が、20~260μm、好ましくは100~180μmの層厚を有する、請求項2記載の蓋部フィルム。
【請求項4】
前記1つ以上の中間層(5)が、少なくとも1つのタルク強化ポリプロピレン層を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項5】
前記1つ以上の中間層(5)が、少なくとも1つのシクロオレフィン層(8)、有利にシクロオレフィンコポリマー層を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのシクロオレフィン層(8)が、20~260μm、好ましくは80~100μm、特に好ましくは80μmの層厚を有する、請求項5記載の蓋部フィルム。
【請求項7】
前記1つ以上の中間層が、少なくとも1つのポリビニルアルコール層(9)、好ましくはエチレン-ビニルアルコールコポリマー層を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリビニルアルコール層(9)が、5~15μmの層厚を有する、請求項7記載の蓋部フィルム。
【請求項9】
前記カバー層(3)および/または前記シール層(4)が、ポリプロピレンホモポリマー層(6)である、請求項1から8までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項10】
前記ポリプロピレンホモポリマー層(6)が、10~140μm、好ましくは60~110μmの層厚を有する、請求項9記載の蓋部フィルム。
【請求項11】
前記カバー層(3)および/または前記シール層(4)が、ポリプロピレンコポリマー層である、請求項1から8までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項12】
前記カバー層(3)および/または前記シール層(4)が、有核ポリプロピレンホモポリマー層(10)である、請求項1から8までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項13】
前記有核ポリプロピレンホモポリマー層(10)が、120~200μmの層厚を有する、請求項12記載の蓋部フィルム。
【請求項14】
前記シール層(4)にシーリングラッカーが施与されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項15】
前記カバー層(3)が、バリアコーティング、有利に剥離可能なバリアコーティングを有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項16】
前記バリアコーティングが、二軸延伸ポリプロピレン層である、請求項15記載の蓋部フィルム。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の蓋部フィルム(1)を含む、医薬品用ブリスター包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの外層、すなわちカバー層およびシール層と、カバー層とシール層との間に配置された1つ以上の中間層とを含む、蓋部フィルムおよびブリスターパックに関する。さらに本発明は、ブリスター包装材に関する。
【0002】
特に高価値の医薬品の場合、医薬品を環境の影響、特に酸素や湿気から確実に保護するために包装材が使用される。これは、医薬品の有効成分や内容物が服用時に発揮する効果を維持するための唯一の方法である。そのため、錠剤形の医薬品には、いわゆるブリスター包装材がよく使用される。ブリスター包装材は通常、底部材または底部フィルムとも呼ばれるいわゆるプッシュスルー式ブリスターと、ブリスターフィルムとも呼ばれるカバーフィルムとからなり、プッシュスルー式ブリスターは、窪みや空洞を有する成形品であり、この成形品は、通常はプラスチック製であるがアルミニウム製の場合もあり、カバーフィルムは通常、押し破ることができ、これも主にアルミニウム製であり、そのため、人が医薬品を底部フィルムの空洞から蓋部フィルムを貫通して押し出すことができる。ここで、ブリスター包装材の基本的な利点は、取り扱いが簡単で、包装材の寸法がコンパクトであり、それに伴って、起こり得る環境の影響から保護しつつ各医薬品を容易に携帯できることである。
【0003】
ここで、アルミニウムは、高い水蒸気および酸素バリア性を有すると同時に、フィルムの強度や厚さに応じて、使用者が底部フィルムの空洞内の各医薬品と一緒にブリスター包装材からカバーフィルムを貫通して比較的容易に押し出すことができるため、アルミニウムの使用は、主に、医薬品を水および酸素から封鎖する役割を果たす。しかし、材料としてのアルミニウムは、エネルギーおよび資源を大量に消費するものであり、アルミニウムは再生可能であるとはいえ、やはり高いエネルギー需要量を伴う。
【0004】
そのため、アルミニウムが提供する材料特性と同一の材料特性を提供しつつ、ブリスター包装材中のアルミニウムを低減あるいは完全に除去するための様々なアプローチが、先行技術から知られている。
【0005】
例えば、独国特許出願公開第102008056123号明細書から、各種プラスチックあるいはポリマー層のみからなる多層フィルムを含むため、結果的にアルミニウムを完全に排除することができるブリスター包装材がすでに知られている。これは特に、水蒸気および酸素透過性の低い深絞り加工可能な多層フィルムであり、このフィルムは、医薬品用ブリスター包装材に適しており、好ましくはPVC/PVDC/PCTFE/PVCタイプの層複合体を有する。
【0006】
さらに、米国特許出願公開第2009/0208729号明細書には、少なくとも5層を含むことを特徴とするフィルム構造体が開示されている。このうち、2つの外層はポリオレフィン製であり、対向面にそれぞれ1つのガスバリア形成層が設けられており、前述の2つのガスバリアの間に発泡プラスチック層が設けられている。ここで、2つの外層は、ポリオレフィンとバインダーとの混合物からなり、この混合物により、このポリオレフィン層をガスバリア形成層に結合させることができる。
【0007】
米国特許出願公開第2019/0009963号明細書には、ブリスター、特に錠剤ブリスター用のプラスチックフィルム成形品が開示されており、この成形品は、透明な支持基材と半透明の機能層とを含む。ここで、半透明の機能層は、プラスチックフィルム成形品が、入射光で見たときに視認可能な第一の色と、透過光で見たときに視認可能な第二の色とを有するような性質を有する。
【0008】
さらに、独国実用新案第202021002835号明細書から、包装する製品を収容するための熱成形により生成された1つ以上のキャビティを有し、かつ底部フィルムに接続された蓋部フィルムから構成されているポリオレフィン製ブリスター包装材がすでに知られている。ここで、このブリスター包装材は、底部フィルムおよび蓋部フィルムが実質的にポリオレフィンからなり、蓋部フィルムの少なくとも50重量%がシクロオレフィンポリマーからなることを特徴とする。
【0009】
さらに、スイス国特許出願公開第701216号明細書から、プッシュスルー式包装材の蓋部フィルムの製造方法がすでに知られている。この方法では、蓋部フィルムに電子線を照射して所望の押し出し性が調整される。
【0010】
この先行技術に基づき、本明細書に記載の本発明の課題は、それぞれアルミニウムを排除することができ、かつ高価値の医薬品に課されている高い水および酸素バリア性に関する要求が低コストで満たされる、ブリスター包装材、蓋部フィルムおよび底部フィルムを提供することである。
【0011】
この課題は、現行の請求項1記載の蓋部フィルムによって解決される。さらに、この課題は、並列独立請求項18記載のブリスター包装材によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項から得ることができる。
【0012】
本発明の第1の態様において、これは、医薬品用ブリスター包装材の底部フィルムをシールするための蓋部フィルムであって、2つの外層、すなわちカバー層およびシール層を含む蓋部フィルムである。このように、蓋部フィルム自体が多層フィルムであり、この多層フィルムにおいて、カバー層は、蓋部フィルムのうち外界または環境に面する方の側である。ここで、シール層は、蓋部フィルムのうち、底部フィルムの通常存在する空洞内の医薬品に面する方の側である。これらの外層、すなわちカバー層とシール層との間には、1つ以上の中間層が存在する。
【0013】
本発明は、カバー層およびシール層がポリプロピレン製であり、すなわちポリプロピレン層であることを特徴とする。ポリプロピレンは、ブリスター包装材やブリスター包装材の蓋部材や底部材でよく使用されるポリ塩化ビニルと同程度に好都合であるが、水蒸気バリア性が根本的に高い。
【0014】
破れ易さを低減するため、そして各医薬品を底部材から蓋部フィルムを貫通して押し出すのに必要な力を低減するため、本発明は、蓋部フィルムに関して、さらなる一実施形態において、2つの外層の間の1つ以上の中間層が、コポリマー層、有利に異相コポリマー層であることを提供する。特に好ましくは、これは、異相ポリプロピレンコポリマー層である。異相コポリマー層は、ブロックコポリマーとも呼ばれ、分散したゴム状コポリマー相を有するポリマーマトリックスを含む。このマトリックスは、ホモポリマーまたは統計的コポリマーマトリックスである。ゴム状コポリマー相は、非晶質ゴムと、ゴム状ポリマーと、半結晶質コポリマーとのブレンドであり、ここで、前述のゴム状ポリマーは、異相ポリプロピレンコポリマーの場合には、通常はエチレン/プロピレンコポリマー(ゴム)である。
【0015】
好ましくは、1つ以上の中間層の少なくとも1つのコポリマー層は、20~260μmの層厚、特に好ましくは100~180μmの層厚を有する。このような層厚では、機械的特性、すなわち、使用者による錠剤状の医薬品を用いた押し出し性が向上しつつ、蓋部フィルムは依然としてコンパクトなままである。
【0016】
代替的にまたは補足的に、本発明は、さらなる有利な一実施形態においてさらに、蓋部フィルムに関して、1つ以上の中間層が、少なくとも1つのタルク強化ポリプロピレン層を含むことを提供する。ここで、タルク強化ポリプロピレンは、例えばポリプロピレンとタルクとの組成物であり、タルクの割合は、通常は20~35%の範囲で変化する。タルク強化ポリプロピレンは、純粋なポリプロピレンと比較して、より高い耐熱性および耐荷重性、ならびに剛性の向上を特徴とする。しかし、剛性の向上という特性は、プラスチックが破れ易いことをも意味する。しかし、ここで、タルク強化ポリプロピレン層の層厚に応じて蓋部フィルムの押し出しをより容易にするには、まさにこの特性が望ましい。
【0017】
さらに本発明は、さらなる有利な一実施形態において、蓋部フィルムに関して、1つ以上の中間層が、少なくとも1つのシクロオレフィン層、好ましくはシクロオレフィンコポリマー層を含むことを提供する。シクロオレフィン層の存在は、水蒸気バリアの著しい向上をもたらし、水蒸気バリアのレベルを、シクロオレフィン層の層厚のみによって変えることができ、その際、この層厚は、20~260μmの範囲、好ましくは80~100μmの範囲とすることができ、特に好ましくは80μmである。ここで、この80μmという層厚は、蓋部フィルムの、水蒸気バリアの向上と、さらに望まれる押し出し性との最適な妥協点である。
【0018】
しかしまた、いくつかの医薬品に課されている高い酸素バリア性に関する要求を満たせるようにするため、本発明は、さらなる有利な一実施形態において、蓋部フィルムに関して、1つ以上の中間層が、少なくとも1つのポリビニルアルコール層、好ましくはエチレン-ビニルアルコールコポリマー層を含むことを提供する。ポリビニルアルコールの内部に存在する個々のポリマー鎖間の水素橋かけ結合および結晶構造との組み合わせにより、ポリビニルアルコールは、酸素に対する利用可能な最良のバリアの一つである。ここで、好ましくは、ポリビニルアルコール層は、5~15μmの層厚を有する。
【0019】
蓋部フィルムの所望の特性に応じて、本発明は、さらなる有利な一実施形態において、外層、すなわちカバー層およびシール層の各種材料を提供する。
【0020】
第1の代替的な実施形態において、カバー層および/またはシール層は、ポリプロピレンホモポリマー層からなる。ポリプロピレンホモポリマーは、基、この場合はメチレン基がアイソタクチック配向しているため、アタクチックポリプロピレンと比較して、結晶化度、融点、引張強度、剛性および硬度が高いことを特徴とする。アイソタクチック性が高いと、最終的に脆性が向上し、この脆性の向上は、さらに蓋部フィルムの押し出し性を向上させるのに有利となる。ここで、好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー層は、10~140μm、特に好ましくは60~110μmの層厚を有する。
【0021】
さらなる代替的な一実施形態において、カバー層および/またはシール層は、ポリプロピレンコポリマー層からなる。ここで、ポリプロピレンブロックコポリマーとポリプロピレンランダムコポリマーとを区別することができる。ポリプロピレンブロックコポリマーの場合、コポリマーのモノマーは、ブロック状にポリマー鎖に組み込まれるが、ポリプロピレンランダムコポリマーの場合、コポリマーのモノマーは、分子鎖中にランダムに分布している。特に、コポリマーブロックあるいはそれぞれ使用されるブロックコポリマーのモノマーの長さや数の違いによって、それぞれ得られるポリプロピレンコポリマーの特性に影響を及ぼすことができる。特に、その靭性挙動および剛性に影響を及ぼすことができる。最終的に、ポリプロピレンコポリマー層の使用は、さらに蓋部フィルムの破断強度や靭性に影響を及ぼすことができる。
【0022】
さらなる代替的な一実施形態において、カバー層および/またはシール層は、有核ポリプロピレンホモポリマー層からなる。成核あるいは核形成を利用して、アタクチックポリプロピレンにおいて結晶領域の形成を促進することができる。なぜならば、存在する結晶構造のサイズおよびタイプが、ポリプロピレンの機械的特性に影響を及ぼし得るためである。ポリプロピレン鎖のすべての領域がアイソタクチックまたはシンジオタクチックであるとは限らないため、ポリマー鎖のすべての領域が晶子に組み込まれるとは限らない。通常、ポリプロピレンホモポリマーのアイソタクチック領域は、α球晶の形態で結晶化する。しかし、適切なあるいは特定の核剤を添加することにより、β球晶の形成を達成することが可能であり、これに伴って、これから得られるポリプロピレンの衝撃強度が向上する。したがって、所望の特性および適用分野に応じて、α球晶またはβ球晶を有する有核ポリプロピレンホモポリマーを、蓋部フィルムのカバー層および/またはシール層に使用することが有利であり得る。ここで、特に好ましくは、有核ポリプロピレンホモポリマー層は、120~200μmの層厚を有する。
【0023】
水蒸気および酸素バリア性をさらに向上させるために、本発明は、さらなる有利な一実施形態において、シール層に関して、シール層にシーリングラッカーが施与されていることを提供する。このラッカーは、水蒸気あるいは酸素バリア性をさらに強化する役割を果たすが、その際、蓋部フィルムの望ましい特性、特に、存在し得る医薬品を蓋部フィルムを貫通して押し出せるようにするための破れ易さには悪影響を与えない。
【0024】
存在し得る医薬品用ブリスター包装材をチャイルドプルーフ性とするためには、先行技術では、アルミフィルムの層厚を高めるか、あるいはブリスター包装材を、蓋部フィルムは押し出しができず、また小さな子供には無理な力を加えなければ剥離することができないように設計するのが一般的である。同様に、本明細書に記載のブリスター包装材のチャイルドプルーフ性を提供できるようにするため、本発明は、さらなる有利な一実施形態において、ブリスター包装材が、バリアコーティング、有利に剥離可能なバリアコーティングを蓋部フィルムのカバー層上に有することを提供する。特に好ましくは、コーティングは、二軸延伸ポリプロピレン層である。二軸延伸ポリプロピレンは、最初にローラーの方向に延伸させ、次にローラーの方向と直交する方向に延伸させ、次に固定させるという特定の延伸プロセスによってその特定の特性を獲得し、これは特に、その高い引張強度、化学的、機械的および熱的安定性、ならびに透明性を特徴とする。したがって、このことは、存在し得る医薬品用ブリスター包装材を、子供による不用意な開封から保護するのに最適であり、なぜならば、蓋部フィルムに施与すると、相応する力を加えなければブリスター包装材の底部材から蓋部フィルムを剥離することができなくなるためである。
【0025】
第2のおよび最終の態様において、本発明は、本発明による蓋部フィルムを含む、医薬品用ブリスター包装材に関する。
【0026】
以下、いくつかの実施形態例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による多層フィルムの概略図である。
図2】本発明による多層蓋部フィルムの第1の実施形態例を示す図である。
図3】本発明による多層蓋部フィルムの第2の実施形態例を示す図である。
図4】本発明による多層蓋部フィルムの第3の実施形態例を示す図である。
図5】本発明による多層蓋部フィルムの第4の実施形態例を示す図である。
【0028】
図1は、本発明による多層フィルムの概略図を示す。蓋部フィルム1および底部フィルム2は、それぞれ2つの外層、すなわちカバー層3およびシール層4からなる。カバー層3は、蓋部フィルム1のうち外界または環境に面する方の側である。一方、シール層4は、蓋部フィルム1のうち、底部フィルム2の通常存在する空洞内の医薬品に面する方の側である。これらの外層、すなわちカバー層3とシール層4との間には、1つ以上の中間層5が存在する。
【0029】
ここで、図2は、本発明による蓋部フィルム1の第1の実施形態例を示す。この場合、本発明による蓋部フィルム1は、2つの外層と1つの中間層5とを含み、この場合、カバー層3およびシール層4は、ポリプロピレンホモポリマー層6であり、中間層5は、コポリマー層7、特に異相ランダムコポリマー層である。この層は、水や酸素にさほど敏感でない医薬品に適しており、また、外層に比べて中間層5が著しく大きいことから、押し出しが容易であるが、これは、異相ランダムコポリマー7製の中間層5が、ポリプロピレンホモポリマー層6に比べて破れ易さや剛性が高く、したがって弾性が低いためである。
【0030】
図3には、水に敏感な医薬品にも適した本発明による蓋部フィルム1が示されている。これは、カバー層3およびシール層4としての2つのポリプロピレンホモポリマー層6の間に、中間層5としてシクロオレフィン層8を有する。
【0031】
さらに、水および酸素の双方からの保護を提供できるようにするため、対応する蓋部フィルムが図4に示されている。これも同様に、カバー層3およびシール層4としてそれぞれ1つのポリプロピレンホモポリマー層6を含むとともに、合計で3つの中間層5を含む。最初の2つの中間層5は、それぞれシクロオレフィン層8であり、外層、すなわちカバー層3およびシール層4に直接隣接している。最後に、これら2つのシクロオレフィン層8の間にポリビニルアルコール層9が配置されており、このポリビニルアルコール層9は、その材料特性ゆえに酸素との親和性が高い。このように、ここで図4に示す蓋部フィルム1は、高い水蒸気バリア性と高い酸素バリア性とを併せ持つ。
【0032】
最後に、図5は、本発明による蓋部フィルム1であって、2つの外層、すなわちカバー層3およびシール層4が有核ポリプロピレンホモポリマー層10であり、かつ蓋部フィルム1が3つの中間層5を有するものを示す。この場合も、2つの外層がそれぞれシクロオレフィン層8に隣接しており、これらのシクロオレフィン層8が、異相ランダムコポリマー層7を囲んでいる。
【0033】
このように、上記では、フィルム中のアルミニウムを排除できるとともに、高い水蒸気および酸素バリア性に関する要求を低コストで満たすことができる、ブリスター包装材用蓋部フィルムおよび医薬品用ブリスター包装材が示されている。
【符号の説明】
【0034】
1 蓋部フィルム
2 底部フィルム
3 カバー層
4 シール層
5 中間層
6 ポリプロピレンホモポリマー層
7 コポリマー層
8 シクロオレフィン層
9 ポリビニルアルコール層
10 有核ポリプロピレンホモポリマー層
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品用ブリスター包装材の底部フィルム(2)をシールするための蓋部フィルム(1)であって、2つの外層、すなわちカバー層(3)およびシール層(4)と、前記カバー層(3)と前記シール層(4)との間に配置された1つ以上の中間層(5)とを含む蓋部フィルムにおいて、前記カバー層(3)および前記シール層(4)が、ポリプロピレン層(6,7,10)であることを特徴とする、蓋部フィルム。
【請求項2】
前記1つ以上の中間層(5)が、少なくとも1つのコポリマー層、有利にポリプロピレンコポリマー層を含む、請求項1記載の蓋部フィルム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコポリマー層(7)が、20~260μm、好ましくは100~180μmの層厚を有する、請求項2記載の蓋部フィルム。
【請求項4】
前記1つ以上の中間層(5)が、少なくとも1つのタルク強化ポリプロピレン層を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項5】
前記1つ以上の中間層(5)が、少なくとも1つのシクロオレフィン層(8)、有利にシクロオレフィンコポリマー層を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのシクロオレフィン層(8)が、20~260μm、好ましくは80~100μm、特に好ましくは80μmの層厚を有する、請求項5記載の蓋部フィルム。
【請求項7】
前記1つ以上の中間層が、少なくとも1つのポリビニルアルコール層(9)、好ましくはエチレン-ビニルアルコールコポリマー層を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリビニルアルコール層(9)が、5~15μmの層厚を有する、請求項7記載の蓋部フィルム。
【請求項9】
前記カバー層(3)および/または前記シール層(4)が、ポリプロピレンホモポリマー層(6)である、請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項10】
前記ポリプロピレンホモポリマー層(6)が、10~140μm、好ましくは60~110μmの層厚を有する、請求項9記載の蓋部フィルム。
【請求項11】
前記カバー層(3)および/または前記シール層(4)が、ポリプロピレンコポリマー層である、請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項12】
前記カバー層(3)および/または前記シール層(4)が、有核ポリプロピレンホモポリマー層(10)である、請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項13】
前記有核ポリプロピレンホモポリマー層(10)が、120~200μmの層厚を有する、請求項12記載の蓋部フィルム。
【請求項14】
前記シール層(4)にシーリングラッカーが施与されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項15】
前記カバー層(3)が、バリアコーティング、有利に剥離可能なバリアコーティングを有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム。
【請求項16】
前記バリアコーティングが、二軸延伸ポリプロピレン層である、請求項15記載の蓋部フィルム。
【請求項17】
請求項1からまでのいずれか1項記載の蓋部フィルム(1)を含む、医薬品用ブリスター包装材。
【外国語明細書】