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  • 特開-双方向交流電力変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025753
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】双方向交流電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20240216BHJP
   H02M 5/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H02M1/00 E
H02M5/04 Z
H02M1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023130790
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】111130139
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】505441638
【氏名又は名称】致茂電子股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Chroma Ate Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】徐佑
(72)【発明者】
【氏名】胡桂誠
【テーマコード(参考)】
5H740
5H750
【Fターム(参考)】
5H740AA10
5H740MM01
5H750BA01
5H750FF05
5H750GG02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、第1交流電力を入力又は出力し、デジタル制御モジュール及び電力変換モジュールを含む双方向交流電力変換装置1を提供する。
【解決手段】双方向交流電力変換装置1において、デジタル制御モジュール12は、制御信号を生成する。電力変換モジュール10は、制御信号に基づいて、入力又は出力される第1交流電力を設定する。デジタル制御モジュール12が、第1交流電力のリアルタイム電圧信号が異常であると判断した場合、制御信号は、切り替えて接地電圧を提供するように電力変換モジュール10を指示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1交流電力を入力するか又は出力する双方向交流電力変換装置であって、
制御信号を生成するデジタル制御モジュールと、
前記制御信号に基づいて、入力又は出力される前記第1交流電力を設定する電力変換モジュールと、を含み、
前記デジタル制御モジュールが、前記第1交流電力のリアルタイム電圧信号が異常であると判断した場合、前記制御信号は、切り替えて接地電圧を提供するように前記電力変換モジュールを指示する、双方向交流電力変換装置。
【請求項2】
前記デジタル制御モジュールは、前記リアルタイム電圧信号が異常であると判断した場合、前記電力変換モジュールによって受け取られた残存電流をさらに検出して、前記残存電流に対応する前記制御信号を設定する、請求項1に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換モジュールの出力端子は、前記残存電流を受け取り、前記残存電流が所定の電流値よりも大きい場合、前記制御信号は、前記接地電圧の提供を維持するように前記電力変換モジュールを指示する、請求項2に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項4】
前記残存電流が前記所定の電流値以下である場合、前記制御信号は、前記接地電圧の提供を停止するように前記電力変換モジュールを指示するとともに、前記電力変換モジュールのデューティ比をゼロにする、請求項3に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項5】
前記デジタル制御モジュールは、位相同期回路と制御ユニットを含み、前記位相同期回路は、入力又は出力される前記第1交流電力を検出し、前記リアルタイム電圧信号を生成し、前記リアルタイム電圧信号に振幅成分及び角速度成分が定義され、前記制御ユニットは、異なる切り替え周期で取得された前記振幅成分と少なくとも1つの振幅変化量に基づいて、前記制御信号を設定する、請求項1に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅変化量を判断し、連続的な前記切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅変化量がいずれも第1閾値よりも大きい場合、前記振幅変化量が異常であると判断する、請求項6に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅成分を判断し、連続的な前記切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅成分がいずれも第2閾値以下である場合、前記振幅成分が異常であると判断する、請求項6に記載の双方向交流電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向交流電力変換装置、特に測定対象の素子を随時切り離す双方向交流電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電力変換装置を用いて測定対象の素子に電流を印加する場合、交流電力変換装置から測定対象の素子を切り離す(電気的接続を切断する)必要があれば、まず、交流電力変換装置の印加電流をゼロにしてこそ、交流電力変換装置から測定対象の素子を安全に切り離すことができる。測定対象の素子が早期警報なしに交流電力変換装置から切り離された場合、交流電力変換装置は、保護メカニズムをトリガするため、動作を迅速に回復させることができない場合が多い。一例において、測定対象の素子が早期警報なしに交流電力変換装置の出力端子から切り離された場合、交流電力変換装置は、測定対象の素子が出力端子から切り離されたことを直ちに判断できないため、交流電力変換装置は、依然として開回路になった出力端子から電流を持続して引き出す。このとき、交流電力変換装置の出力端子は、異常な高電圧を受ける可能性があり、交流電力変換装置が破壊されることを回避するために、従来の交流電力変換装置は、保護メカニズムを直接的にトリガする。
【0003】
従来の交流電力変換装置は、保護メカニズムをトリガした後、出力端子と測定対象の素子との間の電流経路を迅速に遮断することができるが、上記電流経路における残存電力を迅速に放出するメカニズムが欠けている。一般的に、従来の交流電力変換装置は、かなりの時間待って、回路内部で残存電力を自ら消費することしかできない。実際には、測定対象の素子が出力端子に再び接続されている場合でも、上記残存電力が全部消費される前に、従来の交流電力変換装置は、測定対象の素子に電流を印加する動作を回復させることができない。したがって、業界では、測定対象の素子が切り離されたときに残存電力を迅速に放出することができるため、測定対象の素子が出力端子に再び接続された場合、測定対象の素子に電流を印加する動作を迅速に回復させ、測定対象の素子を随時調整できる柔軟性を向上させることができる、新たな交流電力変換装置が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、測定対象の素子が早期警報なしに出力端子から切り離された場合、切り離しイベントを直ちに検出できる以外に、電流経路に残存した電力を迅速に放出することができる、双方向交流電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1交流電力を入力又は出力し、デジタル制御モジュール及び電力変換モジュールを含む双方向交流電力変換装置を提供する。デジタル制御モジュールは、制御信号を生成する。電力変換モジュールは、制御信号に基づいて、入力又は出力される第1交流電力を設定する。デジタル制御モジュールが、第1交流電力のリアルタイム電圧信号が異常であると判断した場合、制御信号は、切り替えて接地電圧を提供するように電力変換モジュールを指示する。
【0006】
いくつかの実施例において、デジタル制御モジュールは、リアルタイム電圧信号が異常であると判断した場合、電力変換モジュールによって受け取られた残存電流をさらに検出して、残存電流に対応する制御信号を設定してもよい。電力変換モジュールの出力端子は、残存電流を受け取り、残存電流が所定の電流値よりも大きい場合、制御信号は、接地電圧の提供を維持するように電力変換モジュールを指示してもよい。残存電流が所定の電流値以下である場合、制御信号は、接地電圧の提供を停止するように電力変換モジュールを指示するとともに、電力変換モジュールのデューティ比をゼロにしてもよい。
【0007】
いくつかの実施例において、デジタル制御モジュールは、位相同期回路と制御ユニットを含んでもよく、位相同期回路は、入力又は出力される第1交流電力を検出し、リアルタイム電圧信号を生成してもよく、リアルタイム電圧信号に振幅成分及び角速度成分が定義されてもよく、制御ユニットは、異なる切り替え周期で取得された振幅成分と少なくとも1つの振幅変化量に基づいて、制御信号を設定してもよい。制御ユニットは、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の振幅変化量を判断し、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の振幅変化量がいずれも第1閾値よりも大きい場合、振幅変化量が異常であると判断してもよい。また、制御ユニットは、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の振幅成分を判断してもよく、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の振幅成分がいずれも第2閾値以下である場合、振幅成分が異常であると判断してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上より、本発明に係る双方向交流電力変換装置は、位相同期回路を利用して、入力又は出力される第1交流電力をロックし、リアルタイム電圧信号の振幅成分に基づいて測定対象の素子が出力端子から切り離されるか否かを判断する。測定対象の素子が早期警報なしに出力端子から切り離された場合、双方向交流電力変換装置は、測定対象の素子の切り離しを直ちに検出し、交流電力の入力又は出力を停止することができるだけでなく、電流経路における残存電力を効果的に放出することができる。測定対象の素子が出力端子に再び接続されると、双方向交流電力変換装置は、動作を迅速に回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例に係る双方向交流電力変換装置を示す機能ブロック図である。
図2】交流電圧を示す概略図である。
図3】本発明の一実施例に係る出力端子と測定対象の素子との間の回路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の特徴、目的及び機能を更に説明する。しかしながら、以下の説明は、本発明の実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、すなわち、本発明の特許請求の範囲で行われた均等変化及び修飾は、いずれも本発明の主旨を逸脱せず、本発明の精神及び範囲から逸脱しないため、本発明の更なる実施態様と見なされるべきである。
【0011】
図1に示すように、図1は、本発明の一実施例に係る双方向交流電力変換装置を示す機能ブロック図である。図1に示すように、双方向交流電力変換装置1は、測定対象の素子DUTへ交流電力(第1交流電力)を伝送するために、外部電源2と測定対象の素子DUTとの間に電気的に接続される。実際には、外部電源2は、商用電源又は他の電圧源であってもよく、双方向交流電力変換装置1に適用可能な測定対象の素子DUTは、負荷又は電圧源に限定されない。一例において、測定対象の素子DUTが負荷である場合、双方向交流電力変換装置1は、測定対象の素子DUTを駆動するように電力を提供することができる。測定対象の素子DUTが電圧源である場合、双方向交流電力変換装置1は、測定対象の素子DUTから電力を引き出すことにより、測定対象の素子DUTから提供される電力を外部電源2に供給することができる。つまり、双方向交流電力変換装置1は、交流電力の伝送方向を限定せず、上記交流電力は、双方向交流電力変換装置1へ入力されるか又は双方向交流電力変換装置1から出力されてもよい。
【0012】
双方向交流電力変換装置1は、電力変換モジュール10及びデジタル制御モジュール12を含み、デジタル制御モジュール12は、位相同期回路120及び制御ユニット122を含む。電力変換モジュール10は、測定対象の素子DUTに電気的に接続される出力端子100を備える。一例において、出力端子100と測定対象の素子DUTとは、バスバーによって接続されてもよい。また、制御ユニット122は、位相同期回路120と電力変換モジュール10にそれぞれ電気的に接続され、電力変換モジュール10へ入力されるか又は電力変換モジュール10から出力される第1交流電力を設定するための制御信号を生成することができる。上記制御信号は、パルス幅変調(PWM)信号であってもよく、制御ユニット122は、1つのデューティサイクル(duty cycle)におけるパルス幅変調信号のデューティ比(duty ratio)を決定することにより、電力変換モジュール10から出力された交流電圧又は交流電流の様々なパラメータを設定することができる。
【0013】
実際には、位相同期回路120は、位相検出器(phase detector)を備え、出力端子100と測定対象の素子DUTとが確実に接続された後、位相検出器は、電力変換モジュール10と測定対象の素子DUTとの間で伝送される交流電圧又は交流電流をロックすることができる。例えば、電力変換モジュール10が測定対象の素子DUTから電力を引き出すように設定されると仮定し、位相検出器が交流電圧をロックすると、位相同期回路120は、ロックされた交流電圧に基づいてリアルタイム電圧信号を生成することができる。一例において、位相同期回路120がリアルタイム電圧信号を生成することは、測定対象の素子DUTが正常に動作するか否かを判断する手段として使用される。つまり、位相検出器が交流電圧を成功裏にロックした(リアルタイム電圧信号を生成した)場合、制御ユニット122は、測定対象の素子DUTがシステムに接続されたと判断することができる。また、位相同期回路120は、リアルタイム電圧信号をパーク変換(park transformation)することにより、リアルタイム電圧信号の振幅成分及び角速度成分を取得することができる。当業者であれば、位相同期回路120の動作原理を理解できるはずであるため、本実施例は、ここで説明を省略する。一例において、位相同期回路120が、各切り替え周期(switching cycle)において対応するリアルタイム電圧信号を取得することができるため、制御ユニット122は、隣接する2つの切り替え周期のリアルタイム電圧信号に基づいて、2つの振幅成分の差異、すなわち振幅変化量を算出することができる。実際には、制御ユニット122は、連続的なN個の切り替え周期のリアルタイム電圧信号に基づいて、対応するN-1個の振幅変化量を記録し、上記N-1個の振幅変化量に基づいて制御信号を設定することができる。
【0014】
実際の例として、電力変換モジュール10が測定対象の素子DUTから電力を引き出すように設定されると仮定し、出力端子100と測定対象の素子DUTとの接続線路が突然切断されると、測定対象の素子DUTが早期警報なしに出力端子100から切り離されることを招く。本来、双方向交流電力変換装置1と測定対象の素子DUTとは、交流電力を伝送するため、測定対象の素子DUTが早期警報なしに出力端子100から切り離されると、この時の交流電圧は、ピーク電圧に近いか又はゼロ電圧に近い可能性がある。以下、本実施例の双方向交流電力変換装置1の処理方法をこの2つの場合で説明する。図1及び図2に示すように、図2は、交流電圧を示す概略図である。図に示すように、測定対象の素子DUTが時間T1に出力端子100から切り離されると仮定すると、交流電圧は、ピーク値に近い数値である。このとき、制御ユニット122は、リアルタイム(直前の切り替え周期と現在の切り替え周期)のリアルタイム電圧信号から、振幅変化量が突然異常に大きくなり、例えば電圧がピーク値から迅速に減衰するため振幅変化量が所定の第1閾値よりも大きいことを知ることができる。実際には、制御ユニット122は、振幅変化量が異常になったと判断すると、制御信号を迅速に調整することにより、交流電力の提供を継続しないように電力変換モジュール10を指示する。
【0015】
本実施例は、第1閾値の正確な数値を限定せず、当業者であれば、第1閾値が伝送された交流電圧に基づいて決定されることを理解することができる。他方では、制御ユニット122は、必ずしも単一の振幅変化量が異常になったことのみに基づいて、制御信号を直ちに調整するとは限らない。例えば、制御ユニット122は、連続的な複数の隣接する切り替え周期のリアルタイム電圧信号から、振幅変化量が異常になるか否かを判断することができる。例えば、制御ユニット122は、少なくとも連続的な6個の振幅変化量がいずれも所定の第1閾値よりも大きいことを知ると、測定対象の素子DUTが既に出力端子100から切り離されたことを判断することができる。
【0016】
一例において、測定対象の素子DUTが時間T2に出力端子100から切り離されると仮定すると、時間T2の交流電圧がゼロに近いため、出力端子100へ入力されるか又は出力端子100から出力される電流は、本来ゼロに近い。従来の交流電力変換装置であれば、測定対象の素子が切り離されるか否かを直ちに判断することができないため、誤判断を引き起こしやすい。特に、従来の交流電力変換装置の、電流をデジタル測定する方式としては、ノイズ干渉などの誤差があるため、電流ゼロ点付近で検出された微小な数値が電流ゼロ点であるか否かを決定しにくい。換言すれば、測定対象の素子DUTが電流ゼロ点付近で切り離された場合、従来の交流電力変換装置は、保護メカニズムを迅速にトリガするタイミングを把握することができない。これに対し、本実施例の振幅成分は、パーク変換により角速度成分(位相)を分離した数値であるため、制御ユニット122は、電圧振幅が変化するか否かをより速く発見することができる。したがって、測定対象の素子DUTが時間T2に出力端子100から切り離された場合、本実施例の制御ユニット122は、振幅変化量に基づいて、異常になるか否かを判断し、制御信号を迅速に調整することにより、交流電力の提供を継続しないように電力変換モジュール10を指示することができる。
【0017】
以上の振幅変化量を利用する判断手段は、電力変換モジュール10へ入力されるか又は電力変換モジュール10から出力される交流電圧の変化が大きい場合に適用し、電力変換モジュール10へ入力されるか又は電力変換モジュール10から出力される交流電圧の変化が小さい場合、制御ユニット122は、振幅成分を利用して測定対象の素子DUTが切り離されるか否かを判断することができる。一例において、電力変換モジュール10へ入力されるか又は電力変換モジュール10から出力される交流電圧の電圧ピーク値が既知であるため、本実施例では、上記電圧ピーク値を参照して閾値(第2閾値)を設定することができる。実際には、第2閾値は、必ずしも上記電圧ピーク値に等しいとは限らず、上記電圧ピーク値よりも僅かに小さくてもよいが、本実施例は、これを限定しない。実際の例として、電力変換モジュール10が測定対象の素子DUTから電力を引き出すように設定され、位相同期回路120の位相検出器がリアルタイム電圧信号をロックして振幅成分及び角速度成分を取得したと仮定する。このとき、制御ユニット122は、1つ又は複数の振幅成分が第2閾値よりも低いか否かに基づいて、測定対象の素子DUTが切り離されるか否かを判断することができる。例えば、制御ユニット122は、連続的な複数の切り替え周期の振幅成分を記録する可能性があり、連続的な複数の切り替え周期の振幅成分が持続して第2閾値よりも小さい場合、測定対象の素子DUTが既に切り離されたと判断することができる。上記のように、本実施例の振幅成分は、パーク変換により角速度成分(位相)を分離した数値であるため、交流電圧の変化が小さくても、制御ユニット122は、測定対象の素子DUTが切り離されるか否かを迅速に判断することができる。
【0018】
なお、通常、出力端子100にエネルギー蓄積コンデンサ(例えば、2つの端点の間にブリッジ接続される)がブリッジ接続されるため、本実施例では、また、エネルギー蓄積コンデンサの電力を放出するメカニズムが設計される。図1図3に示すように、図3は、本発明の一実施例に係る出力端子と測定対象の素子との間の回路を示す概略図である。図に示すように、2つの出力端子100の間にエネルギー蓄積コンデンサXcapがブリッジ接続されてもよいが、エネルギー蓄積コンデンサXcapは、必ずしも電流経路に意図的に設計されるとは限らず、例えば、エネルギー蓄積コンデンサXcapは、出力端子100と測定対象の素子DUTとの間の線路における非理想的な容量特性である可能性がある。以下、エネルギー蓄積コンデンサXcapによる双方向交流電力変換装置1への影響を説明する。
【0019】
実際の例として、電力変換モジュール10が正常に測定対象の素子DUTから電力を引き出すと、エネルギー蓄積コンデンサXcapは、電力を蓄積したままであると仮定する。このとき、測定対象の素子DUTが切り離された(図3において、スイッチSWの遮断で示す)場合、当業者であれば、エネルギー蓄積コンデンサXcapは、かなりの残存電力が存在するため、残存電流Icapを持続して放出することを理解することができる。本実施例は、エネルギー蓄積コンデンサXcapの大きさ及び残存電流Icapの放出方向を限定しない。従来、残存電流Icapは、回路内部の抵抗で消費されるが、通常、長い時間かかる必要がある。エネルギー蓄積コンデンサXcap中の残存電力の放出を加速するために、制御ユニット122は、測定対象の素子DUTが切り離されたと判断すると、接地電圧(又はゼロ電圧と称する)を一定時間維持するように電力変換モジュール10を制御する。一例において、電力変換モジュール10が能動的に出力端子100を接地電圧に制御して、エネルギー蓄積コンデンサXcapと出力端子100との間に電圧差があるように強制することにより、エネルギー蓄積コンデンサXcapは、残存電流Icapをより効率的に放出することができる(つまり、より大きな残存電流Icapがある)。
【0020】
実際には、制御ユニット122は、出力端子100に供給される残存電流Icapの数値を持続して検出する。残存電流Icapの数値が所定の電流値よりも大きい場合、エネルギー蓄積コンデンサXcap中の残存電力が全部放出されないことを示し、制御ユニット122によって提供された制御信号は、接地電圧の提供を維持するように電力変換モジュール10を継続して指示する。これに反して、残存電流Icapの数値が所定の電流値以下である場合、エネルギー蓄積コンデンサXcap中の残存電力が全部又はほぼ全部放出されたことを示し、制御ユニット122によって提供された制御信号は、接地電圧の提供を停止するように電力変換モジュール10を指示する。そして、制御ユニット122は、制御信号を調整してデューティ比をゼロにすることにより、第1交流電力を電力変換モジュール10へ入力しないか又は電力変換モジュール10から出力しないようにして、再起動の命令を待つ。
【0021】
以上から分かるように、本実施例の双方向交流電力変換装置1において、測定対象の素子DUTが早期警報なしに出力端子100から切り離された場合、制御ユニット122は、位相同期回路120によりロックされた交流電圧により生成されたリアルタイム電圧信号に基づいて測定対象の素子DUTの切り離しを判断するため、電圧位相の影響による誤判断を減少させることができ、測定対象の素子DUTの切り離しによる電圧値の上昇の前に、交流電力の提供を継続しないように電力変換モジュール10を制御することができる。同時に、電力変換モジュール10は、出力端子100において接地電圧を保持して、エネルギー蓄積コンデンサXcap中の残存電力を迅速に放出することができる。このように、双方向交流電力変換装置1は、出力端子100の異常な高電圧により保護メカニズムをトリガすることなく、エネルギー蓄積コンデンサXcap中の残存電力が全部迅速に放出されたので、測定対象の素子DUTが出力端子100に再び接続されると、双方向交流電力変換装置1は、動作を迅速に回復させることができる。
【0022】
なお、以上は電力変換モジュール10が測定対象の素子DUTから電力を引き出すことを例とするが、実際には、上記実施例は、さらに電力変換モジュール10が測定対象の素子DUTに電力を供給する場合に適用してもよい。つまり、振幅変化量が第1閾値よりも大きく、振幅成分が第2閾値よりも小さく、電力変換モジュール10のデューティ比が第3閾値よりも大きいなどの異常状況を制御ユニット122が判断することは、電力伝送方向と無関係である。電力変換モジュール10が測定対象の素子DUTに電力を供給しても、制御ユニット122は、上記実施例により測定対象の素子DUTが切り離されるか否かを判断することができる。
【0023】
以上より、本発明に係る双方向交流電力変換装置は、位相同期回路を利用して、入力又は出力される第1交流電力をロックし、リアルタイム電圧信号の振幅成分に基づいて測定対象の素子が出力端子から切り離されるか否かを判断する。測定対象の素子が早期警報なしに出力端子から切り離された場合、双方向交流電力変換装置は、測定対象の素子の切り離しを直ちに検出し、交流電力の入力又は出力を停止することができるだけでなく、電流経路における残存電力を効果的に放出することができる。測定対象の素子が出力端子に再び接続されると、双方向交流電力変換装置は、動作を迅速に回復させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 双方向交流電力変換装置
10 電力変換モジュール
100 出力端子
12 デジタル制御モジュール
120 位相同期回路
122 制御ユニット
2 外部電源
DUT 測定対象の素子
Xcap エネルギー蓄積コンデンサ
Icap 残存電流
SW スイッチ
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1交流電力を入力するか又は出力する双方向交流電力変換装置であって、
制御信号を生成するデジタル制御モジュールと、
前記制御信号に基づいて、入力又は出力される前記第1交流電力を設定する電力変換モジュールと、を含み、
前記デジタル制御モジュールが、前記第1交流電力のリアルタイム電圧信号が異常であると判断した場合、前記制御信号は、切り替えて接地電圧を提供するように前記電力変換モジュールを指示する、双方向交流電力変換装置。
【請求項2】
前記デジタル制御モジュールは、前記リアルタイム電圧信号が異常であると判断した場合、前記電力変換モジュールによって受け取られた残存電流をさらに検出して、前記残存電流に対応する前記制御信号を設定する、請求項1に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換モジュールの出力端子は、前記残存電流を受け取り、前記残存電流が所定の電流値よりも大きい場合、前記制御信号は、前記接地電圧の提供を維持するように前記電力変換モジュールを指示する、請求項2に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項4】
前記残存電流が前記所定の電流値以下である場合、前記制御信号は、前記接地電圧の提供を停止するように前記電力変換モジュールを指示するとともに、前記電力変換モジュールのデューティ比をゼロにする、請求項3に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項5】
前記デジタル制御モジュールは、位相同期回路と制御ユニットを含み、前記位相同期回路は、入力又は出力される前記第1交流電力を検出し、前記リアルタイム電圧信号を生成し、前記リアルタイム電圧信号に振幅成分及び角速度成分が定義され、前記制御ユニットは、異なる切り替え周期で取得された前記振幅成分と少なくとも1つの振幅変化量に基づいて、前記制御信号を設定する、請求項1に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅変化量を判断し、連続的な前記切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅変化量がいずれも第1閾値よりも大きい場合、前記振幅変化量が異常であると判断する、請求項に記載の双方向交流電力変換装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、連続的な複数の切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅成分を判断し、連続的な前記切り替え周期における各切り替え周期の前記振幅成分がいずれも第2閾値以下である場合、前記振幅成分が異常であると判断する、請求項6に記載の双方向交流電力変換装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
実際の例として、電力変換モジュール10が測定対象の素子DUTから電力を引き出すように設定されると仮定し、出力端子100と測定対象の素子DUTとの接続線路が突然切断されると、測定対象の素子DUTが早期警報なしに出力端子100から切り離されることを招く。本来、双方向交流電力変換装置1と測定対象の素子DUTとは、交流電力を伝送するため、測定対象の素子DUTが早期警報なしに出力端子100から切り離されると、この時の交流電圧は、ピーク電圧に近いか又はゼロ電圧に近い可能性がある。以下、本実施例の双方向交流電力変換装置1の処理方法をこの2つの場合で説明する。図1及び図2に示すように、図2は、交流電圧を示す概略図である。図に示すように、測定対象の素子DUTが時間T1に出力端子100から切り離されると仮定すると、交流電圧は、ピーク値に近い数値である。このとき、制御ユニット122は、リアルタイムに直前の切り替え周期と現在の切り替え周期のリアルタイム電圧信号から、振幅変化量が突然異常に大きくなり、例えば電圧がピーク値から迅速に減衰するため振幅変化量が所定の第1閾値よりも大きいことを知ることができる。実際には、制御ユニット122は、振幅変化量が異常になったと判断すると、制御信号を迅速に調整することにより、交流電力の提供を継続しないように電力変換モジュール10を指示する。

【外国語明細書】