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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025760
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/15 20230101AFI20240216BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240216BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20240216BHJP
   H10K 50/155 20230101ALI20240216BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240216BHJP
   H10K 50/19 20230101ALI20240216BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240216BHJP
【FI】
H10K50/15
H10K50/10
H10K50/00
H10K50/155
H10K59/10
H10K50/19
H10K85/60
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131011
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】202210964694.5
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519333413
【氏名又は名称】北京夏禾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】謝 夢▲蘭▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ホウ▼ 惠▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】▲クアン▼ 志遠
(72)【発明者】
【氏名】王 静
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC12
3K107CC21
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD52
3K107DD53
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD73
3K107FF14
3K107FF15
3K107FF19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子を開示する。本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電子アセンブリをさらに開示する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた正孔輸送領域を含み、正孔輸送領域には、第1の有機層が含まれ、第1の有機層は、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドを含有し、第1のp型ドーパンドと第2のp型ドーパンドは異なる。本発明に係る正孔輸送領域における第1の有機層には少なくとも2種の異なるp型ドーパンドが含まれるエレクトロルミネッセンス素子は、高い外部量子効率を維持しながら、電圧の大幅な低下および耐用年数の顕著な向上を達成し、素子の総合性能の向上を取得することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた正孔輸送領域を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記正孔輸送領域には、第1の有機層が含まれ、
前記第1の有機層は、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドを含有し、
前記第1のp型ドーパンドと第2のp型ドーパンドは異なる、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記第1の有機層の厚みは、100nmよりも大きくなく、
好ましくは、前記第1の有機層の厚みは、30nmよりも大きくなく、
より好ましくは、前記第1の有機層の厚みは、20nmよりも大きくない、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記第1の有機層は、陽極に直接接触する、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記第1のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率と第2のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率は、同一または異なる、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記第1のp型ドーパンドのLUMOと第2のp型ドーパンドのLUMOは異なり、
好ましくは、0.05eV≦|LUMO第1のp型ドーパンド-LUMO第2のp型ドーパンド|≦0.8eVであり、
より好ましくは、0.1eV≦|LUMO第1のp型ドーパンド-LUMO第2のp型ドーパンド|≦0.5eVである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記第1のp型ドーパンドのLUMOおよび/または第2のp型ドーパンドのLUMOは、-4.3eV以下-6.0eV以上であり、
好ましくは、前記第1のp型ドーパンドのLUMOおよび/または第2のp型ドーパンドのLUMOは、-4.5eV以下-5.5eV以上である、請求項1または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記第1の有機層は、第3のp型ドーパンドをさらに含有し、前記第3のp型ドーパンド、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドは、いずれも異なる、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記第1の有機層は、第1の有機材料をさらに含有する、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記第1の有機材料のHOMOは、-4.5eV以下-6.0eV以上であり、
好ましくは、前記第1の有機材料のHOMOは、-4.8eV以下-5.5eV以上である、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
さらに、前記陽極と前記陰極との間に設けられた発光層を少なくとも1層含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層は、りん光発光材料または蛍光発光材料である発光材料を含有する、請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
少なくとも1層の前記発光層と前記陰極との間に設けられた、p-型電荷発生層を含む電荷発生層をさらに含む、請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記第1の有機層は、前記電荷発生層のp-型電荷発生層に接触する、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記p-型電荷発生層は、前記第1のp型ドーパンドまたは前記第2のp型ドーパンドを含有する、請求項12または13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記p-型電荷発生層は、第1の有機材料、前記第1のp型ドーパンドおよび/または前記第2のp型ドーパンドを含有する、請求項12または13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、電子アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。特に、特定の第1の有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子素子は、有機発光ダイオード(OLEDs)、有機電界効果トランジスタ(O-FETs)、有機発光トランジスタ(OLETs)、有機起電セル(OPVs)、色素-増感太陽電池(DSSCs)、有機光検出器、有機感光装置、有機電界効果素子(OFQDs)、発光電気化学セル(LECs)、有機レーザダイオードおよび有機プラズマ発光素子を含むが、それに限定されない。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)は、陰極、陽極、および陰極と陽極との間の一連の有機発光材料により積層されたものであり、素子の陰極および陽極の両端に電圧を印加することにより、電気エネルギーを光に変換し、広角が広く、コントラストが高く、応答時間がより速いなどの利点を有する。イーストマンコダック社(Eastman Kodak)のTangおよびVan Slykeにより、1987年に、アリールアミン正孔輸送層とトリス-8-ヒドロキシキノリン-アルミニウム層を電子輸送層および発光層とする有機発光素子が報道されている(Applied Physics Letters、1987、51(12):913~915)。素子の両端に電圧が印加されると、緑色光が素子から放射される。この発明は、現代の有機発光ダイオード(OLEDs)の発展に対する基礎を築き上げている。OLEDsは、自発光性ソリッドステート素子であるので、表示および照明の適用に対して極めて大きな潜在力を提供している。また、有機材料の固有な特性、例えばそれらの可撓性は、フレキシブル基板においてフレキシブル表示または照明を製造するなどの特殊な適用に適合するようになっている。OLEDは、コストが低く、消費電力が低く、輝度が高く、視角が広く、厚みが薄いなどの利点を有し、数十年の発展にわたって、表示および照明の分野において広く適用されている。
【0004】
OLED素子は、一般的に、複数層積層された有機機能層により構成されたものであり、陰極、陽極および発光層(EML)以外、正孔輸送領域および電子輸送領域をさらに含む。そのうち、正孔輸送領域は、陽極と発光層との間に位置し、通常、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、および電子ブロッキング層(EBL)などの機能層を含み、電子輸送領域は、陰極と発光層との間に位置し、通常、正孔ブロッキング層(HBL)、電子輸送層(ETL)、および電子注入層(EIL)などの機能層を含む。これらの機能層は、必要に応じて、選択的に1層又は複数層設けられるか、または存在しなくてもよく、たとえば、そのうちのEBLおよび/またはHBLは、必要に応じて選択的に存在してもよいし、存在しなくてもよい。正孔注入層および電子注入層において、それぞれ正孔および電子が陽極端および陰極端から素子に注入されて、2種のキャリアが輸送層を介して発光層に遷移し、発光層において複合して励起子を形成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちる過程で放射することで、発光を実現する。電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層は、通常、選択可能層である。正孔注入層は、単一の材料を含有する機能層であってもよいし、複数種の材料を含有する機能層であってもよい。含有した複数種の材料として、正孔輸送材料(HTM)に一定の割合のp型ドーパンド(PD)がドーピングされたものが最もよく用いられている。p型ドーパンドの強い電子捕捉能力により、電子を正孔輸送材料からp型ドープ材料に捕捉することで、正孔輸送基質における正孔の濃度を大幅に向上させることができる。これにより、陽極と有機層のエネルギーレベルが合致して、正孔注入および輸送にいっそう有利である。
【0005】
電子と正孔の効果的な複合は、素子の発光量子効率に影響する一つの重要な要素である。現在、OLED素子のキャリアのバランスを改善する方法は、主に以下の3つの方向がある。一は、適当な電子、正孔注入材料を用いてキャリアの濃度をバランス指せることである。二は、適当な電子、正孔輸送材料を改良することで、キャリアの有機輸送材料における輸送能力を変更して、バランスを実現することである。三は、発光層におけるホスト材料および/または発光材料の輸送性能を調整することにより、キャリアのバランスを実現することである。既有のOLED素子における正孔輸送材料(HTM)は、多数、芳香族アミン系化合物であり、強い電子供給能力を有するため、良好な正孔伝導を実現することができる。陰極および陽極から注入された電子と正孔の濃度が同一であると仮定すると、有機材料自身の性能の相違に起因して、OLED構造において正孔移動度が電子移動度よりも1~3のオーダー高くなり、即ち発光層に輸送された正孔濃度が電子濃度よりも遥か大きくなる結果、キャリアの濃度がアンバランスとなり、ホールリッチ(Hole-rich)素子を形成することがある。キャリアのアンバランスは、キャリアが膜層境界において蓄積し、発熱することを引き起こしやすく、素子の老化を加速し、耐用年数を低下させるだけでなく、励起子の複合確率を低下させ、素子の効率を低下させることがある。電子の注入性能および輸送性能を向上させることによってキャリアをバランスすることができるが、選択可能な有機材料の種類が比較的に少ない。そのため、発光領域に到達した正孔の数を効果的に減らすことは、キャリアのバランスを改善して、素子の性能を向上させる1つの有効な手段となっている。
【0006】
OLEDにおいて、HILは、一般的に、HTMに適量のp型ドーパンドをドーピングすることにより正孔の注入能力を調節・制御して、陽極とHILとのオーム接触を実現することで、良好な正孔の注入効果を達成する。現在、商用の構造において一般的に、HTMに単一のp型ドーパンドがドーピングされたものが用いられているが、実際に単一のp型ドーパンドが正孔の注入に対する調節・制御能力が極めて有限である。p型ドープ材料の濃度が低いと、オーム接触を形成することができず、素子の電圧および耐用年数がいずれも影響されている。p型ドープ材料の濃度が高いと、オーム接触を確保することができるが、正孔の大量の注入に起因して、発光層における正孔の濃度が電子の濃度よりも大きくなることを加速して、キャリアをアンバランスさせ、さらに、異なる画素間の横方向クロストーク効果が進んでいる恐れがある。
【0007】
OLEDにおける電子および正孔をバランスさせるために、従来技術では、通常、正孔輸送層の厚みを増加させることにより、電子および正孔が同一な時間以内、有機層において効果的に結合可能となり、正孔の累積を引き起こしない。しかしながら、正孔輸送層の厚みの増加により、電圧が向上し、効率が低下し、ひいては耐用年数が短くなるなどのマイナス効果をもたらす恐れがある。
【0008】
一部の従来技術においても、複数層のHILを用いることにより、正孔の注入を調節・制御することが開示されている。たとえば、特許CN100373656Cでは、正孔注入層と第1の正孔輸送層の組合せによる有機発光表示素子が開示されている。正孔注入層は、フッ化炭素化合物を用い、第1の正孔輸送層は、p型ドーパンドを用いることで、電圧を低下させる効果を達成することができる。しかし、該特許では、注入層ではなく正孔輸送層としてp型ドーピングされた有機層を1層だけ含む素子が開示されているが、同一の有機層に複数種のp型ドーパンドが含まれる有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されておらず、同一の有機層に複数種の異なるp型ドーパンドがドーピングされることが素子の性能に対する影響が開示または教示されていない。
【0009】
特許出願CN107112437Aの実施例では、2層のp型ドープ材料が含まれる有機層を有する素子の構造が開示されているが、そのうちの各層に用いられたp型ドーパンドがいずれも1種のみであり、同一の有機層に異なるp型ドーパンドが含まれることが素子の性能に対する影響が開示または教示されていない。
【0010】
要するに、従来技術では、HILの正孔の注入能力を調節・制御するための一部の方案、たとえば複数層であるが、1種だけのp型ドープ材料を含有するHILを用いることが開示されているが、素子において単一のp型ドーパンド材料が用いられる場合、p型ドーパンドのドーピング率を調節することによってしか正孔の注入能力を調節することができず、そして、一般的に、p型ドーパンドのドーピング率が一定の濃度となった後、正孔の注入を継続して調節・制御することができないので、単一のp型ドーパンド(PD)の正孔の注入に対する調節・制御能力が比較的に有限である。そのため、如何に新規な有機エレクトロルミネッセンス素子を開発し、正孔の注入および輸送に対するより効果的な調節・制御を実現することで、より低い電圧、より長い耐用年数を取得し、素子の効率を綜合的に向上させるかは、当業者にとって差し迫って解決する技術的問題になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】中国特許第100373656号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第107112437号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Applied Physics Letters、1987、51(12):913~915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題の少なくとも一部を解決するために、新規な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた正孔輸送領域を含み、前記正孔輸送領域には、第1の有機層が含まれ、前記第1の有機層は、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドを含有し、前記第1のp型ドーパンドと第2のp型ドーパンドは異なる。本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、正孔輸送領域における第1の有機層に少なくとも2種の異なるp型ドーパンドが導入されることにより、素子における正孔の注入および輸送能力の調節のためにより多くの空間を提供することができ、素子におけるキャリアをよりよくバランスさせ、より優れた素子の綜合性能を取得することができ、高い外部量子効率を維持しながら、電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施例によれば、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた正孔輸送領域を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記正孔輸送領域には、第1の有機層が含まれ、
前記第1の有機層は、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドを含有し、
前記第1のp型ドーパンドと第2のp型ドーパンドは異なる有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0015】
本発明の他の実施例によれば、上記実施例に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電子アセンブリがさらに開示される。
【0016】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、正孔輸送領域における第1の有機層に少なくとも2種の異なるp型ドーパンドが導入されることにより、素子における正孔の入力および輸送能力の調節のためにより多くの空間を提供することができ、たとえば、異なるPD材料(LUMOエネルギーレベルが異なる、および/または構造が異なるPD材料)を選択することにより、正孔の入力能力の調節・制御を実現することができる一方、2種のPDのドーピング率を同時に調節・制御することにより、正孔の注入能力の調節・制御を実現することができる。上記調節手段は、素子のキャリアをバランスさせることや、素子の綜合性能を向上させることに対して極めて大きく寄与し、HIL層に1種だけのPD材料が含まれる場合には実現できないものである。本発明に係る正孔輸送領域における第1の有機層に少なくとも2種のp型ドーパンドが含まれるエレクトロルミネッセンス素子は、高い外部量子効率を維持しながら、さらに電圧を大幅に低下させ、耐用年数を著しく向上させ、素子の綜合性能の向上を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の構造模式図である。
図2】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子200の構造模式図である。
図3】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子300の構造模式図である。
図4】本発明に係る積層有機エレクトロルミネッセンス素子400の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
OLEDは、ガラス、プラスチック、および金属などの様々な基板上において製造することができる。図1は、有機発光装置100を例示的に制限せずに示している。図面に対して、必ずしも縮尺どおりに製作するわけではなく、図において、必要に応じて一部の層構造を省略してもよい。装置100には、基板101、陽極110、正孔注入層120、正孔輸送層130、電子ブロッキング層140(選択可能層)、発光層150、正孔ブロッキング層160(選択可能層)、電子輸送層170、電子注入層180および陰極190が含まれてもよい。装置100は、記載される層を順に堆積することにより製造されてもよい。一部の出願において、正孔注入層120および正孔輸送層130は、正孔輸送層、または第1の正孔輸送層、第2の正孔輸送層と総称されるが、両者は、通常、正孔注入層が陽極に直接接触し、厚みが正孔輸送層よりも薄いという大きな相違がある。各層の性質、機能および例示的な材料については、米国特許US7279704B2の第6~10欄においてより詳細に記載されており、上記特許の内容がすべて本明細書に援用されている。
【0019】
これらの層のそれぞれには、より多くの実例がある。例示的には、全文を援用するように組み込まれた米国特許第5844363号において、可撓性で透明な基板-陽極の組合せが開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、p型ドープの正孔輸送層の実例は1:50のモル比でF-TCNQがドーピングされたm-MTDATAであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた、トンプソン(Thompson)らによる米国特許第6303238号において、ホスト材料の実例が開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、n型ドープの電子輸送層の実例は1:1のモル比でLiがドーピングされたBPhenであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第5703436号および第5707745号において、例えばMg:Agなどの金属薄層と、その上に被覆された、スパッタ堆積された透明な導電ITO層とを有する複合陰極を含む陰極の実例が開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第6097147号および米国特許出願公開第2003/0230980号において、より詳細に、ブロッキング層の原理と使用が記載されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において注入層の実例が提供されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において、保護層が記載されている。
【0020】
非限定的な実施例により上述した分層構造が提供される。上述した各種の層を組み合わせることによってOLEDの機能が実現することができ、或いは、一部の層を完全に省略することができる。例えば、正孔ブロッキング層は、必須の層ではなく、一部の構造において省略してもよい。それは、明確に記載されていない他の層を含んでもよい。それぞれの層内に、最適な性能を実現するように、単一の材料または多種の材料の混合物を使用することができる。機能層はいずれも、複数なサブ層を含んでもよく、例えば、発光層は、所望の発光スペクトルを実現するように、2層の異なる発光材料を有してもよい。
【0021】
一実施例において、OLEDは、陰極と陽極との間に設けられた「有機層」を有すると記載されてもよい。当該有機層は、1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0022】
OLEDにもカプセル化層が必要であり、図2に示すように、有機発光装置200が例示的に制限せずに示されている。図1との相違点は、水分および酸素などの外界からの有害物質を防止するように、陰極190上にカプセル化層102を含んでもよい。ガラス、または有機-無機混合層などのカプセル化機能を提供可能ないかなる材料も、カプセル化層として用いられてもよい。カプセル化層は、OLED素子の外部に、直接または間接的に配置されるべきである。多層薄膜カプセル化については、米国特許US7968146B2において記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0023】
本発明の実施例により製造される素子は、当該素子の1つまたは複数の電子部材モジュール(或いは、ユニット)を有する各種の消費製品に組み込まれてもよい。これらの消費製品は、例えば、フラットパネルディスプレイ、モニタ、医療用モニタ、テレビ、ビルボード、室内または室外用照明ランプおよび/または信号ランプ、ヘッドアップディスプレイ、全部または一部透明のディスプレイ、可撓性ディスプレイ、スマートフォン、フラットパネルコンピューター、フラットパネル携帯電話、ウェアラブル素子、スマートウォッチ、ラップトップコンピューター、デジタルカメラ、携帯型ビデオカメラ、ファインダー、マイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、車載ディスプレイおよびテールライトを含む。
【0024】
本明細書に記載される材料および構造は、上述にて列挙されている他の有機電子素子にも用いられてもよい。
【0025】
様々なOLEDの製造方法が公知である。小分子OLEDは、一般的に、真空熱蒸発により製造されるものである。ポリマーOLEDは、例えばスピンコート、インクジェット印刷およびノズル印刷などの溶液法により製造されるものである。材料が溶剤に溶解または分散することが可能であれば、小分子OLEDも溶液法により製造されることができる。本願に係る有機エレクトロルミネッセンス素子における各有機層は、いずれも蒸着法または溶液法により製造されることができる。たとえば、本願における第1の有機層および第2の有機層は、必要に応じて蒸着法又は溶液法により製造されることができる。
【0026】
本明細書において、有機材料のエネルギーレベル((LUMOエネルギーレベル:最低未占有分子軌道エネルギーレベル(lowest unoccupied molecular orbital)、HOMOエネルギーレベル:最高被占分子軌道エネルギーレベル(highest occupied molecular orbital))は、電気化学的サイクリックボルタンメトリーにより測定される。本明細書において、すべての「HOMO」エネルギーレベルおよび「LUMO」エネルギーレベルは、いずれも負値で表され、数値が小さいほど(即ち、絶対値が大きいほど)、エネルギーレベルが深くなることを示す。本明細書において、エネルギーレベルがある値よりも小さいという記述は、エネルギーレベルが数値的にこの値よりも小さい、すなわち、よりマイナスな値を有することを示す。たとえば、ある有機材料のHOMOエネルギーレベルまたはLUMOエネルギーレベルが-4.5eVよりも小さいとは、該有機材料のHOMOエネルギーレベルまたはLUMOエネルギーレベルが数値的に-4.5eVよりも小さいか、または-4.5eVよりもマイナスであることを示す。本明細書において、「|LUMO第1のp型ドーパンド-LUMO第2のp型ドーパンド|」とは、第1のp型ドーパンドのLUMOエネルギーレベルと第2のp型ドーパンドのLUMOエネルギーレベルとの差の絶対値を示す。
【0027】
用語「p型ドーパンド」は、p-型導電ドープ材料とも呼ばれ、酸化能力を有するドーパンドを指す。従来技術において知られているp型ドーパンドは、一般的に有機電子受容体化合物である。p型ドーパンドは、ドープ材料として素子の有機層に添加されて、この層の導電率を向上させるために用いられてもよい。現在、従来技術においてよく用いられたp型ドーパンドは、F4-TCNQおよびF6-TCNNQである。前記F4-TCNQおよびF6-TCNNQの構造は、以下の通りである。
【化1】
【0028】
本発明に係る「p型ドーパンド」は、以下の式1で表される構造を有する化合物であることが好ましく、前記p型ドーパンドは、以下の式15~式19の1つで表される構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0029】
用語「ドーピング率」とは、有機薄膜のうちの1種の材料の、薄膜の合計質量に対する百分比を指す。たとえば、本願に言及された第1のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率および第2のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率とは、第1のp型ドーパンド又は第2のp型ドーパンドの、第1の有機層の合計質量に対する百分比を指す。第1の有機層が第1の有機材料、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドからなると、第1の有機層の合計質量は、第1の有機材料、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドの質量の和である。
【0030】
本明細書に用いられるように、材料が「異なる」とは、2種または複数種の材料の分子構造式が異なる、および/またはエネルギーレベルが異なることを指す。たとえば、「前記第1のp型ドーパンドと第2のp型ドーパンドが異なる」とは、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドの分子構造式が異なる、および/またはエネルギーレベルが異なることを意味する。
【0031】
本明細書に用いられるように、「頂部」とは、基板/陽極から最も遠く、「底部」とは、基板/陽極から最も近いことを意味する。第1の層が第2の層の「上」に「設けられている」と記載されている場合には、第2の層が基板から比較的に近いように設けられている。逆に、第1の層が第2の層の「下」に「設けられている」と記載されている場合には、第1の層が基板から比較的に近いように設けられている。第1の層が第2の層「に」「接触する」ことを規定していない限り、第1の層と第2の層との間に他の層が存在してもよい。例を挙げて、陰極と陽極との間に各種の有機層が存在しても、依然として、陰極が陽極「上」に設けられていると記載されることができる。
【0032】
本明細書に用いられるように、「発光ユニット」とは、電圧または電流を印加することによって発光する有機材料層である。1つの「発光ユニット」は、少なくとも1つの発光層を含む。発光層は、さらにホスト材料および発光材料を含有する。「発光ユニット」は、少なくとも1対の正孔と電子の輸送領域、たとえば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層をさらに含む。
【0033】
素子の構造からみれば、OLEDは、通常の単層構造およびタンデム構造(積層構造とも呼ばれる)に分けられてもよい。通常のOLEDは、陰極と陽極との間に発光ユニットを1つだけ含み、タンデムOLEDは、複数の発光ユニットにより積層されてなる。1つの発光ユニットは、一般的に、少なくとも1つの発光層、1つの正孔輸送層および1つの電子輸送層を含む。発光ユニットは、これに加えて正孔注入層、電子注入層、正孔ブロッキング層および電子ブロッキング層をさらに含んでもよい。注意すべきは、通常の単層OLEDには発光ユニットが1つだけ含まれるが、該発光ユニットは、複数の発光層を含んでもよく、例えば、発光ユニットは、1層の黄色発光層および1層の青色発光層を含んでもよい。しかしながら、各々の発光ユニットは、正孔輸送領域および電子輸送領域を1対含む。タンデムOLEDは、少なくとも2つ以上の発光ユニットを含み、つまり少なくとも2対および2対以上の正孔輸送領域および電子輸送領域を含む。そのため、積層素子に対しては、複数の本発明に係る第1の有機層を含んでもよい。ここで、複数の発光ユニットは、垂直積層という物理的な形態で配列されることにより、回路上における直列接続の特徴を実現することができるので、タンデムOLED(回路接続から)または積層OLED(物理的な形態から)と呼ばれる。同じ輝度で、タンデムOLEDに必要な電流密度が、通常の単層OLEDよりも小さいので、耐用年数を向上させるという効果を達成することができる。逆に、定電流密度で、タンデムOLEDの輝度が通常の単層OLEDよりも高く、電圧もそれに従って向上することがある。タンデムOLEDは、隣り合う発光ユニット同士が電荷発生層により連結され、その品質がタンデムOLEDの電圧、耐用年数および効率などのパラメータに直接影響を与える。そのため、電荷発生層領域は、正孔および電子を効果的に生成して、順調に対応する発光ユニットに注入する必要があり、可視光範囲内の透過率が大きいほど大きければよく、性能が安定して、製造しやい。
【0034】
本明細書に用いられるように、「電荷発生層(CGL)」とは、2つの発光ユニット間で電子および正孔を提供するための層であり、n-型材料層(n-型電荷発生層)およびp-型材料層(p-型電荷発生層)からなる。そのうち、n-型材料層は、1つの発光ユニットの電子輸送層または電子注入層に接触し、通常、Yb、Liなどの金属であってもよいし、Liq、LiFなどの金属化合物であってもよい。p-型材料層は、通常、有機層であり、隣り合う発光ユニットの正孔注入層または正孔輸送層に接触するとともに、後者に対して正孔を提供する。そのため、正孔輸送領域には、p-型材料層が含まれてもよい。p-型材料層は、単層の有機材料層であってもよいし、正孔輸送材料にp-型導電ドープ材料がドーピングされた複合層であってもよい。p-型電荷発生層は、本願に記載される第1の有機層として用いられてもよいし、本願における第1の有機層ではなくてもよい。
【0035】
置換基の専門用語の定義について
【0036】
ハロゲンまたはハロゲン化物とは、本明細書に用いられるように、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0037】
アルキル基とは、本明細書に用いられるように直鎖および分岐鎖のアルキル基を含む。アルキル基は、炭素原子数1~20のアルキル基であってもよく、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、ネオペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-ペンチルヘキシル、1-ブチルペンチル、1-ヘプチルオクチル、および3-メチルペンチルを含む。そのうち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチルおよびn-ヘキサンであることが好ましい。また、アルキル基は、置換されていてもよい。
【0038】
シクロアルキル基とは、本明細書に用いられるように環状のアルキル基を含む。シクロアルキル基は、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基であってもよく、炭素原子数4~10のシクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の実例は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基などを含む。そのうち、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシルであることが好ましい。また、シクロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0039】
ヘテロアルキル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル鎖のうちの1つまたは複数の炭素が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、リン原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子で置換されてなる。ヘテロアルキル基は、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基であってもよく、炭素原子数1~10のヘテロアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のヘテロアルキル基であることがより好ましい。ヘテロアルキル基の実例は、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、エチルチオエチル基、メトキシメトキシメチル基、エトキシメトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、メルカプトプロピル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルゲルマニウムメチル基、トリメチルゲルマニウムエチル基、トリメチルゲルマニウムイソプロピル基、ジメチルエチルゲルマニウムメチル基、ジメチルイソプロピルゲルマニウムメチル基、tert-ブチルジメチルゲルマニウムメチル基、トリエチルゲルマニウムメチル基、トリエチルゲルマニウムエチル基、トリイソプロピルゲルマニウムメチル基、トリイソプロピルゲルマニウムエチル基、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリメチルシリルイソプロピル基、トリメチルシリルイソプロピル基、トリイソプロピルシリルメチル基、トリイソプロオイルシリルエチル基。また、ヘテロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0040】
アルケニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖、分岐鎖および環状オレフィン基を含む。鎖状のアルケニル基は、炭素原子数2~20のアルケニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基の例は、ビニル基、プロピレン基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2-ジフェニルビニル基、1-メチルアリル基、1,1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3,3-ジフェニルアリル基、1,2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基、3-フェニル-1-ブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタテトラエニル基およびノルボルニルアルケニル基を含む。また、アルケニル基は、置換されていてもよい。
【0041】
アルキニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖のアルキニル基を含む。アルキニル基は、炭素原子数2~20のアルキニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルキニル基であることが好ましい。アルキニル基の実例は、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3,3-ジメチル-1-ブチニル基、3-エチル-3-メチル-1-ペンチニル基、3,3-ジイソプロピル1-ペンチニル基、フェニルエチニル基、フェニルプロピニル基などを含む。そのうち、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、フェニルエチニル基であることが好ましい。また、アルキニル基は、置換されていてもよい。
【0042】
アリール基または芳香族基とは、本明細書に用いられるように、非縮合および縮合系を考慮する。アリール基は、炭素原子数6~30のアリール基であってもよく、炭素原子数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素原子数6~12のアリール基であることがより好ましい。アリール基の例は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、およびアズレンを含み、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フルオレンおよびナフタレンであることが好ましい。非縮合アリール基の例は、フェニル、ビフェニル-2-イル、ビフェニル-3-イル、ビフェニル-4-イル、p-ターフェニル-4-イル、p-ターフェニル-3-イル、p-トリビフェニル-2-イル、m-ターフェニル-4-イル、m-ターフェニル-3-イル、m-ターフェニル-2-イル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニル、4’’-tert-ブチル-p-ターフェニル-4-イル、o-クミル、m-クミル、p-クミル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-ジメチルフェニル、メシチレンおよびm-テトラフェニルを含む。また、アリール基は、置換されていてもよい。
【0043】
複素環基または複素環とは、本明細書に用いられるように、非芳香族の環状基を考慮する。非芳香族複素環基は、環原子数3~20の飽和複素環基および環原子数3~20の不飽和非芳香族複素環基を含み、そのうちの少なくとも1つの環原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれ、非芳香族複素環基は、環原子数3~7のものであることが好ましく、窒素、酸素、ケイ素または硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む。非芳香族複素環基の実例は、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソペンチル、ジオキサニル、アジリジニル、ジヒドロピロール、テトラヒドロピロリル、ピペリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、オキサシクロヘプタトリエニル、チアシクロヘプタトリエニル、アザシクロヘプタトリエニルおよびテトラヒドロシロールを含む。また、複素環基は、置換されていてもよい。
【0044】
ヘテロアリール基とは、本明細書に用いられるように、ヘテロ原子数1~5の非縮合および縮合ヘテロ芳香族基を含んでもよく、そのうちの少なくとも1つのヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれる。イソアリール基とは、ヘテロアリール基も指す。ヘテロアリール基は、炭素原子数3~30のヘテロアリール基であってもよく、炭素原子数3~20のヘテロアリール基であることが好ましく、炭素原子数3~12のヘテロアリール基であることがより好ましい。好適なヘテロアリール基は、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリドインドール、ピロロピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インデノアジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、ベンゾフランピリジン、フランジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノビピリジン、ベンゾセレノピリジン、およびセレンベンゾピリジンを含み、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、1,2-アザボラン、1,3-アザボラン、1,4-アザボラン、ボラゾールおよびそのアザ類似物を含むことが好ましい。また、ヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0045】
アルコキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-ヘテロアルキル基または-O-複素環基で表される。アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基および複素環基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アルコキシ基は、炭素原子数1~20のアルコキシ基であってもよく、炭素原子数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、メトキシプロピルオキシ、エトキシエチルオキシ、メトキシメチルオキシおよびエトキシメチルオキシを含む。また、アルコキシ基は、置換されていてもよい。
【0046】
アリールオキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アリール基または-O-ヘテロアリール基で表される。アリール基およびヘテロアリール基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アリールオキシ基は、炭素原子数6~30のアリールオキシ基であってもよく、炭素原子数6~20のアリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例は、フェノキシおよびビフェノキシを含む。また、アリールオキシ基は、置換されていてもよい。
【0047】
アラルキル基とは、本明細書に用いられるように、アリール基で置換されたアルキル基を含む。アラルキル基は、炭素原子数7~30のアラルキル基であってもよく、炭素原子数7~20のアラルキル基であることが好ましく、炭素原子数7~13のアラルキル基であることがより好ましい。アラルキル基の例は、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピル、2-フェニルイソプロピル、フェニル-tert-ブチル、α-ナフチルメチル、1-α-ナフチルエチル、2-α-ナフチルエチル、1-α-ナフチルイソプロピル、2-α-ナフチルイソプロピル、β-ナフチルメチル、1-β-ナフチル-エチル、2-β-ナフチル-エチル、1-β-ナフチルイソプロピル、2-β-ナフチルイソプロピル、p-メチルベンジル、m-メチルベンジル、o-メチルベンジル、p-クロロベンジル、m-クロロベンジル、o-クロロベンジル、p-ブロモベンジル、m-ブロモベンジル、o-ブロモベンジル、p-ヨードベンジル、m-ヨードベンジル、o-ヨードベンジル、p-ヒドロキシベンジル、m-ヒドロキシベンジル、o-ヒドロキシベンジル、p-アミノベンジル、m-アミノベンジル、o-アミノベンジル、p-ニトロベンジル、m-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-ヒドロキシ-2-フェニルイソプロピルおよび1-クロロ-2-フェニルイソプロピルを含む。そのうち、ベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピルおよび2-フェニルイソプロピルであることが好ましい。また、アラルキル基は、置換されていてもよい。
【0048】
アルキルシリル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたシリル基を含む。アルキルシリル基は、炭素原子数3~20のアルキルシリル基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルシリル基であることが好ましい。アルキルシリル基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、メチルジエチルシリル、エチルジメチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリイソプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、トリ-tert-ブチルシリコン、トリイソブチルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル、およびメチルジ-tert-ブチルシリルを含む。また、アルキルシリル基は、置換されていてもよい。
【0049】
アリールシリル基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基で置換されたシリル基を含む。アリールシリル基は、炭素原子数6~30のアリールシリル基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールシリル基であることが好ましい。アリールシリル基の例は、トリフェニルシリル、フェニルジビフェニルシリル、ジフェニルビフェニルシリル、フェニルジエチルシリル、ジフェニルエチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジイソプロピルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、ジフェニルブチルシリル、ジフェニルイソブチルシリル、ジフェニル-tert-ブチルシリルを含む。また、アリールシリル基は、置換されていてもよい。
【0050】
アルキルゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたゲルマニウム基を含む。アルキルゲルマニウム基は、炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルゲルマニウム基であることが好ましい。アルキルゲルマニウム基の例は、トリメチルゲルマニウム基、トリエチルゲルマニウム基、メチルジエチルゲルマニウム基、エチルジメチルゲルマニウム基、トリプロピルゲルマニウム基、トリブチルゲルマニウム基、トリイソプロピルゲルマニウム基、メチルジイソプロピルゲルマニウム基、ジメチルイソプロピルゲルマニウム基、トリ-tert-ブチルゲルマニウム基、トリイソブチルゲルマニウム基、ジメチル-tert-ブチルゲルマニウム基、メチルジ-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アルキルゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0051】
アリールゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基またはヘテロアリール基で置換されたゲルマニウム基を含む。アリールゲルマニウム基は、炭素原子数6~30のアリールゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールゲルマニウム基であることが好ましい。アリールゲルマニウム基の例は、トリフェニルゲルマニウム基、フェニルジビフェニルゲルマニウム基、ジフェニルビフェニルゲルマニウム基、フェニルジエチルゲルマニウム基、ジフェニルエチルゲルマニウム基、フェニルジメチルゲルマニウム基、ジフェニルメチルゲルマニウム基、フェニルジイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルブチルゲルマニウム基、ジフェニルイソブチルゲルマニウム基、ジフェニル-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アリールゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0052】
アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェンなどにおける「アザ」とは、対応する芳香族フラグメントにおける1つまたは複数のC-H基が窒素原子に置換されることを指す。例えば、アザトリフェニレンは、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、ジベンゾ[f,h]キノリン、および環系において2つ以上の窒素を有する他の類似物を含む。当業者であれば、上述したアザ誘導体の他の窒素類似物を容易に想到することができ、且つこれらの類似物は、すべて本明細書に記載される専門用語に含まれるものとして確定される。
【0053】
本発明において、特に断りのない限り、置換のアルキル基、置換のシクロアルキル基、置換のヘテロアルキル基、置換の複素環基、置換のアラルキル基、置換のアルコキシ基、置換のアリールオキシ基、置換のアルケニル基、置換のアルキニル基、置換のアリール基、置換のヘテロアリール基、置換のアルキルシリル基、置換のアリールシリル基、置換のアルキルゲルマニウム基、置換のアリールゲルマニウム基、置換のアミノ基、置換のアシル基、置換のカルボニル基、置換のカルボキシル基、置換のエステル基、置換のスルフィニル基、置換のスルホニル基、置換のホスフィノ基からなる群のうちのいずれかの用語を使用すると、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルキニル、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルゲルマニウム基、アリールゲルマニウム基、アミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびホスフィノ基のうちのいずれか1つの基が、重水素、ハロゲン、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、非置換の環原子数3~20の複素環基、非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基およびこれらの組合せから選ばれる1つまたは複数により置換され得ることを意味する。
【0054】
分子フラグメントについて、置換基または他の形態で他の部分に結合させると記載する場合、フラグメント(例えば、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基)であるか否か、或いは、分子全体(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるか否かにより、その名称を確定することができることを理解すべきである。本明細書に用いられるように、置換基の指定、或いはフラグメントの結合の異なる形態は、均等であると認められている。
【0055】
本明細書で言及される化合物において、水素原子が重水素で一部または全部置換されてもよい。他の原子、例えば炭素および窒素も、それらの他の安定した同位体で置換されてもよい。素子の効率および安定性を向上させるために、化合物において他の安定した同位体の置換が好ましい可能性がある。
【0056】
本明細書で言及される化合物において、複数置換とは、二重置換を含む、最も多くの使用可能な置換に達するまでの範囲を指す。本明細書で言及される化合物中のある置換基は、複数置換(二重置換、三重置換、四重置換などを含む)を意味すると、その置換基はその結合構造上の複数の利用可能な置換位置に存在してもよいことを意味し、複数の利用可能な置換位置にいずれも存在する当該置換基は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0057】
本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいように特に限定されない限り、前記化合物における隣り合う置換基は結合して環を形成することができない。本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいことは、隣り合う置換基が結合して環を形成してもよい情況を含むだけでなく、隣り合う置換基が結合して環を形成しない情況を含む。隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよい場合、形成される環は、単環または多環、および脂環、ヘテロ脂環、アリール環、またはヘテロアリール環であってもよい。このような記述において、隣り合う置換基は、同一の原子に結合された置換基、互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基、または更に離れた炭素原子に結合された置換基を指してもよい。好ましくは、隣り合う置換基は、同一の炭素原子に結合された置換基および互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基を指す。
【0058】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、同一の炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化2】
【0059】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化3】
【0060】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、さらに離れる炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化4】
【0061】
また、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基の一方が水素を表す場合に、第2置換基は水素原子が結合された位置に結合されて環を形成することを意味すると認められている。下記式で例示する。
【化5】
【0062】
本発明の一実施例によれば、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた正孔輸送領域を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記正孔輸送領域には、第1の有機層が含まれ、
前記第1の有機層は、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドを含有し、
前記第1のp型ドーパンドと第2のp型ドーパンドは異なる、有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0063】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層の厚みは、100nmよりも大きくない。
【0064】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層の厚みは、30nmよりも大きくない。
【0065】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層の厚みは、20nmよりも大きくない。
【0066】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層は、陽極に直接接触する。
【0067】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率と第2のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率は、同一または異なる。
【0068】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドおよび/または前記第2のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率は、0.1%~50%である。
【0069】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドおよび/または前記第2のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率は、0.5%~16%である。
【0070】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドおよび/または前記第2のp型ドーパンドの第1の有機層におけるドーピング率は、0.5%~10%である。
【0071】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドおよび前記第2のp型ドーパンドの重量の和は、第1の有機層の総重量に対して1%~60%である。
【0072】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドおよび前記第2のp型ドーパンドの重量の和は、第1の有機層の総重量に対して10%~20%である。
【0073】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドのLUMOと第2のp型ドーパンドのLUMOは異なる。
【0074】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドのLUMOは、第2のp型ドーパンドのLUMO以上である。
【0075】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドのLUMOは、第2のp型ドーパンドのLUMO以下である。
【0076】
本発明の一実施例によれば、0.05eV≦|LUMO第1のp型ドーパンド-LUMO第2のp型ドーパンド|≦0.8eVである。
【0077】
本発明の一実施例によれば、0.1eV≦|LUMO第1のp型ドーパンド-LUMO第2のp型ドーパンド|≦0.5eVである。
【0078】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドのLUMOおよび/または第2のp型ドーパンドのLUMOは、-4.3eV以下である。
【0079】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドのLUMOおよび/または第2のp型ドーパンドのLUMOは、-4.5eV以下である。
【0080】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドのLUMOおよび/または第2のp型ドーパンドのLUMOは、-6.0eV以上である。
【0081】
本発明の一実施例によれば、前記第1のp型ドーパンドのLUMOおよび/または第2のp型ドーパンドのLUMOは、-5.5eV以上である。
【0082】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層は、第3のp型ドーパンドをさらに含有する。
【0083】
本発明の一実施例によれば、前記第3のp型ドーパンド、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドは、いずれも異なる。
【0084】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層は、第1の有機材料をさらに含有する。
【0085】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料のHOMOは、-4.5eV以下である。
【0086】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料のHOMOは、-4.8eV以下である。
【0087】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料のHOMOは、-6.0eV以上である。
【0088】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料のHOMOは、-5.5eV以上である。
【0089】
本発明の一実施例によれば、前記エレクトロルミネッセンス素子は、さらに、前記陽極と前記陰極との間に設けられた発光層を少なくとも1層含む。
【0090】
本発明の一実施例によれば、前記発光層は、りん光発光材料または蛍光発光材料である発光材料を含有する。
【0091】
本発明の一実施例によれば、前記エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも1層の前記発光層と前記陰極との間に設けられた、p-型電荷発生層を含む電荷発生層をさらに含む。
【0092】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層は、前記電荷発生層のp-型電荷発生層に接触する。
【0093】
本発明の一実施例によれば、前記p-型電荷発生層は、前記第1のp型ドーパンドまたは前記第2のp型ドーパンドを含有する。
【0094】
本発明の一実施例によれば、前記p-型電荷発生層は、第1の有機材料、前記第1のp型ドーパンドおよび/または前記第2のp型ドーパンドを含有する。
【0095】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機層は、p-型電荷発生層である。
【0096】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極/第1の有機層/正孔輸送層/電子ブロッキング層/発光層/正孔ブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/陰極という単層の素子の構造を有する。そのうち、前記有機層の構造は、必要に応じて追加してもよいし、追加しなくてもよい。たとえば、電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層は、選択可能層であり、必要に応じて選択可能である。そのうち、前記層構造は、単層構造に限定されず、たとえば、そのうち、発光層は、2層構造であってもよく、即ち2つの発光層を含んでもよい。
【0097】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極/第1の発光ユニット/電荷発生層/第2の発光ユニット/陰極という積層素子の構造を有する。そのうち、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットは、同一または異なってもよく、それぞれ独立して上記単層素子構造における陽極と陰極との間の有機層構造を有する。第2の発光ユニットと陰極との間に、第1の電荷発生層および第3の発光ユニット、即ち、陽極/第1の発光ユニット/電荷発生層/第2の発光ユニット/第1の電荷発生層/第3の発光ユニット/陰極という素子の構造がさらに含まれてもよい。そのうち、第3の発光ユニットおよび第1の発光ユニットは、同一または異なってもよく、第3の発光ユニットおよび第2の発光ユニットも同一または異なってもよい。
【0098】
本発明の一実施例によれば、前記p型ドーパンドは、式1で表される構造を有する。
【化6】
(nは、1~5の整数から選ばれ、
環Aは、出現毎に同一または異なって環原子数3~30の共役環から選ばれ、
は、一置換、複数置換または無置換を表し、
、RおよびRは、出現毎に同一または異なって水素、重水素または置換基から選ばれ、
隣り合う置換基R、R、Rは、結合して環を形成していてもよい。)
【0099】
本明細書において、「環Aが環原子数3~30の共役環である」とは、環Aは、環原子数3~30の環状構造であり、且つ環Aは、共役の構造特徴を有することを意味する。例示的には、環Aは、本願における式2~式14で表される構造を含むがそれらに限定されない。前記環Aは、単環構造または多環構造であってよい。そのうち、多環は、結合環構造または縮合環構造であってもよいし、二重結合により2つの共役環を結合して形成した全体共役の構造、たとえば、本願における式13で表される構造であってもよい。前記環Aは、炭素環であってもよいし、ヘテロ環であってもよい。
【0100】
本明細書において、「隣り合う置換基R、R、Rが結合して環を形成していてもよい」とは、隣り合う置換基グループ、たとえば、置換基R同士、置換基RおよびR同士、置換基RおよびR同士、置換基RおよびR同士のうちのいずれか1つまたは複数は、結合して環を形成していてもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基同士がいずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0101】
本発明の一実施例によれば、前記置換基は、電子求引基である。
【0102】
本発明の一実施例によれば、nは、1、2または3から選ばれる。
【0103】
本発明の一実施例によれば、nは、1または2から選ばれる。
【0104】
本発明の一実施例によれば、環Aは、出現毎に同一または異なって環原子数3~20の共役環から選ばれる。
【0105】
本発明の一実施例によれば、環Aは、出現毎に同一または異なって環原子数4~20の共役環から選ばれる。
【0106】
本発明の一実施例によれば、Rおよび/またはRは、少なくとも1つの電子求引基を含む置換基である。
【0107】
本発明の一実施例によれば、電子求引基のハメット定数が0.05以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上である。
【0108】
本発明における前記電子求引基は、ハメット置換基定数値が0.05以上、たとえば、0.1以上、または0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、電子求引能力が強いため、化合物のLUMOエネルギーレベルを顕著に低下させ、電荷移動度を向上させる効果を達成することができる。
【0109】
なお、前記ハメット置換基定数値は、ハメット置換基パラ位定数および/またはメタ位定数を含む。パラ位定数およびメタ位定数がいずれも0よりも大きく、そのうちの一方が0.05以上であれば、本発明において選択された基とすることができる。
【0110】
本発明の一実施例によれば、電子求引基は、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、アザ芳香族環基、またはハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、アザ芳香族環基のうちの1つまたは複数で置換された、炭素原子数1~20のアルキル基、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、環原子数3~20のヘテロ環基、炭素原子数7~30のアラルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数2~20のアルキニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数3~30のヘテロアリール基、炭素原子数3~20のアルキルシリル基、炭素原子数6~20のアリールシリル基のうちのいずれか1つの基、並びにこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0111】
本発明の一実施例によれば、電子求引基は、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、SF、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、アザ芳香族環基、およびハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、アザ芳香族環基のうちの1つまたは複数で置換された、炭素原子数1~20のアルキル基、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、炭素原子数7~30のアラルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数2~20のアルキニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数3~30のヘテロアリール基、炭素原子数3~20のアルキルシリル基、炭素原子数6~20のアリールシリル基のうちのいずれか1つの基、並びにこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0112】
本発明の一実施例によれば、電子求引基は、フッ素、アシル基、カルボニル基、エステル基、SF、ボラニル基、アザ芳香族環基、およびフッ素、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF、CF、OCF、SCF、アザ芳香族環基のうちの1つまたは複数で置換された、炭素原子数1~20のアルキル基、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、炭素原子数7~30のアラルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数2~20のアルキニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数3~30のヘテロアリール基、炭素原子数3~20のアルキルシリル基、炭素原子数6~20のアリールシリル基のうちのいずれか1つの基、並びにこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0113】
本発明の一実施例によれば、環Aは、出現毎に同一または異なって下記式2~式14からなる群から選ばれる。
【化7】
(Xは、出現毎に同一または異なってNおよびCRからなる群から選ばれ、
Wは、出現毎に同一または異なってO、S、SeおよびNRからなる群から選ばれ、
は、一置換、複数置換または無置換を表し、
、RおよびRは、出現毎に同一または異なって水素、重水素または置換基から選ばれ、
隣り合う置換基R、R、Rは、結合して環を形成していてもよく、
【化8】
は、式2~式14と式1における二重結合との結合箇所を表す。)
【0114】
本発明の一実施例によれば、p型ドーパンドは、下記式で表される構造を有する。
【化9】
(X、X、XおよびXは、出現毎に同一または異なってNおよびCRからなる群から選ばれ、
Wは、出現毎に同一または異なってO、S、SeおよびNRからなる群から選ばれ、
、RおよびRは、出現毎に同一または異なって水素、重水素または置換基から選ばれ、
隣り合う置換基R、R、Rは、結合して環を形成していてもよい。)
【0115】
本発明の一実施例によれば、前記置換基は、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、またはこれらの組合せである。
【0116】
本発明の一実施例によれば、Wは、出現毎に同一または異なってO、SまたはSeから選ばれる。
【0117】
本発明の一実施例によれば、Wは、出現毎に同一または異なってOまたはSから選ばれる。
【0118】
本発明の一実施例によれば、Wは、Oから選ばれる。
【0119】
本発明の一実施例によれば、Wは、出現毎に同一または異なってNRから選ばれ、Rは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0120】
本発明の一実施例によれば、Wは、出現毎に同一または異なってNRから選ばれ、Rは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0121】
本発明の一実施例によれば、p型ドーパンドは、下記構造を含むがそれらに限定されないものからなる群から選ばれる。

【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0122】
本発明の一実施例によれば、第1の有機材料は、トリアリールアミン単位を有する化合物、スピロビフルオレン系化合物、ペンタセン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、オリゴフェニル化合物、オリゴフェニレンエチレン化合物、オリゴフルオレン系化合物、ポルフィリン錯体または金属フタロシアニン錯体からなる群から選ばれる。
【0123】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、いずれも正孔輸送材料である。
【0124】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、トリアリールアミン、カルバゾール、フルオレン、スピロビフルオレン、チオフェン、フラン、フェニル、オリゴフェニレンエチレン、オリゴフルオレン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれるいずれか1つまたは複数の化学構造単位を含む。
【0125】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、モノトリアリールアミン構造単位またはビストリアリールアミン構造単位を含む。
【0126】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、モノトリアリールアミン-カルバゾール構造単位、モノトリアリールアミン-チオフェン構造単位、モノトリアリールアミン-フラン構造単位、モノトリアリールアミン-フルオレン構造単位、ビストリアリールアミン-カルバゾール構造単位、ビストリアリールアミン-チオフェン構造単位、ビストリアリールアミン-フラン構造単位、ビストリアリールアミン-フルオレン構造単位からなる群から選ばれるいずれか1つまたは複数の化学構造単位を含む。
【0127】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、モノトリアリールアミン化合物またはビストリアリールアミン化合物である。
【0128】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、モノトリアリールアミン-カルバゾール化合物、モノトリアリールアミン-チオフェン化合物、モノトリアリールアミン-フラン化合物、モノトリアリールアミン-フルオレン化合物、ビストリアリールアミン-カルバゾール化合物、ビストリアリールアミン-チオフェン化合物、ビストリアリールアミン-フラン化合物、ビストリアリールアミン-フルオレン化合物から選ばれる。
【0129】
本発明の一実施例によれば、前記モノトリアリールアミン構造単位を含む第1の有機材料は、式20または式21で表される構造を有する。
【化15】
(Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または者置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、前記Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArの構造には、カルバゾールが含まれず、
、L、LおよびLは、出現毎に同一または異なって単結合、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリーレン基、またはこれらの組合せから選ばれ、前記L、L、LおよびLの構造には、カルバゾールが含まれず、
Rは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換または無置換を表し、
Rは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、前記Rの構造には、カルバゾールが含まれない。)
【0130】
本発明の一実施例によれば、Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、出現毎に同一または異なって置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のテルフェニル基、置換または非置換のナフタレン基、置換または非置換のジベンゾフラン基、置換または非置換のジベンゾチオフェン基、置換または非置換のジベンゾセレノフェン基、置換または非置換のフェナントレン基、置換または非置換のトリフェニレン基、置換または非置換のピリジン基、置換または非置換のアントラセン基、置換または非置換のピレン基、置換または非置換のフルオレン基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0131】
本発明の一実施例によれば、L、L、LおよびLは、出現毎に同一または異なって単結合、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のビフェニレン基、置換または非置換のテルフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のジベンゾフラニレン基、置換または非置換のジベンゾチエニレン基、置換または非置換のジベンゾセレノフェン基、置換または非置換のフェナントリレン基、置換または非置換のトリフェニレニレン基、置換または非置換のピリジニレン基、置換または非置換のアントラセニレン基、置換または非置換のピレニレン基、置換または非置換のフルオレニレン基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0132】
本発明の一実施例によれば、前記ビストリアリールアミン構造単位を含む第1の有機材料は、式22で表される構造を有する。
【化16】
(Ar、Ar、ArおよびAr10は、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、
隣り合う置換基ArおよびArは、結合して環を形成しないか、または隣り合う置換基ArおよびAr10は、結合して環を形成せず、
は、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリーレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリーレン基から選ばれる。)
【0133】
本発明の一実施例によれば、Ar、Ar、ArおよびAr10は、出現毎に同一または異なって出現毎に同一または異なって置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のテルフェニル基、置換または非置換のナフタレン基、置換または非置換のカルバゾール基、置換または非置換のジベンゾフラン基、置換または非置換のジベンゾチオフェン基、置換または非置換のジベンゾセレノフェン基、置換または非置換のフェナントレン基、置換または非置換のトリフェニレン基、置換または非置換のピリジン基、置換または非置換のアントラセン基、置換または非置換のピレン基、置換または非置換のフルオレン基、またはこれらの組合せから選ばれる。そのうち、隣り合う置換基ArおよびArは、結合して環を形成しないか、または隣り合う置換基ArおよびAr10は、結合して環を形成しない。
【0134】
本発明の一実施例によれば、Lは、単結合、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のビフェニレン基、置換または非置換のテルフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のカルバゾーリレン基、置換または非置換のジベンゾフラニレン基、置換または非置換のジベンゾチエニレン基、置換または非置換のジベンゾセレノフェン基、置換または非置換のフェナントリレン基、置換または非置換のトリフェニレニレン基、置換または非置換のピリジニレン基、置換または非置換のアントラセニレン基、置換または非置換のピレニレン基、置換または非置換のフルオレニレン基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0135】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、トリアリールアミン、カルバゾール、フルオレン、スピロビフルオレン、チオフェン、フラン、フェニル、オリゴフェニレンエチレン、オリゴフルオレン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれるいずれか1つまたは複数の化学構造単位を含む。
【0136】
本発明の一実施例によれば、前記第1の有機材料は、下記構造を含むがそれらに限定されないものからなる群から選ばれる。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【0137】
本発明の他の実施例によれば、具体的な構造が上述したいずれか1つの実施例に示された有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電子アセンブリがさらに開示される。
【0138】
本発明の一実施例によれば、前記電子アセンブリは、表示アセンブリまたは照明アセンブリである。
【0139】
本明細書において、化合物のHOMOエネルギーレベル(最高被占分子軌道:highest occupied molecular orbital)およびLUMOエネルギーレベル(最低未占有分子軌道:lowest unoccupied molecular orbital)は、電気化学サイクリックボルタンメトリーにより測定される。具体的な方法は、武漢科思特計器有限公司製の型番CorrTestCS120の電気化学的ステーションが用いられると共に、プラチナディスク電極を作業電極、Ag/AgNO電極を参照電極、プラチナワイヤ電極を補助電極とする3電極作業体系が用いられた。無水ジクロロメタン(DCM)を溶剤、0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを支持電解質として、目標化合物を10-3mol/Lの溶液に調製し、テスト前に、溶液に窒素ガスを10min導入して酸素を除去した。計器のパラメータ設定は、以下の通りである。走査速度100mV/s、電位間隔0.5mV、テストウィンドウ1V~-0.5V。本願の実施例に用いられるp型ドーパンド(化合物4-19、化合物1-2、化合物5-1および化合物3-1)および第1の有機材料(HT-18)の上記テスト方法に従って測定されたエネルギーレベルを、以下の表1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
現在、商用OLED構造において、一般的に、正孔注入層(HIL)は、2種の材料によりドーピングされたもの(1種のp型ドーパンド(PD)が、特定の割合で正孔輸送ホスト材料(HTM)にドーピングされたもの)であってもよいし、1種だけの材料、たとえば、単一の材料HATCNにより形成されてもよい。単一のPDによりドーピングされる場合、PDのHTMにおけるドーピング率を調節することによってしか正孔の注入能力を調節することができず、PDのドーピング率が一定の濃度になった後、継続して正孔の注入を調節・制御することができないため、単一のPDが正孔の注入に対する調節・制御能力が比較的に有限である。
【0142】
1層のHILにおいて2種または複数種のPDがHTMにドーピングされれば、素子における正孔の注入能力の調節のためにより多くの空間を提供することができる。たとえば、同一のHIL層に2種の材料が異なるPDが存在するので、異なるLUMOのPD材料を選択して正孔の注入能力に対する調節・制御を実現することができ、好ましくは、同一のHILにおいてLUMOエネルギーレベル差が0.05eV~0.8eVの2種のPD材料(即ち、0.05eV≦|LUMO第1のp型ドーパンド-LUMO第2のp型ドーパンド|≦0.8eV)を選択し、より好ましくは、LUMOエネルギーレベル差が0.1eV~0.5eVの2種のPD材料(即ち、0.1eV≦|LUMO第1のp型ドーパンド-LUMO第2のp型ドーパンド|≦0.5eV)を選択することで、HILの正孔の注入に対するより効果的な調節を実現することができる。たとえば、化合物4-19と化合物1-2とのLUMOエネルギーレベル差(絶対値)が0.49eVに達し、それが共にHIL層の2種のPD材料として下記素子の実施例1-1に用いられた場合、単独で化合物1-2または化合物4-19がHIL層のPD材料として用いられた素子の比較例1-3および比較例1-1に対して、素子の実施例1-1は、電圧の低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することを分かることができる。一方、同時に2種のPD材料のHIL層におけるドーピング率を調節することにより、正孔の注入能力に対する調節・制御を実現することができる。上記調節手段は、素子のキャリアをバランスさせることや、素子の綜合性能を向上させることに対して極めて大きく寄与し、HIL層に1種だけのPD材料が含まれる場合には実現できないものである。
【0143】
本願では、新規な有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送領域には、特定の第1の有機層が含まれ、前記第1の有機層は、第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドを含有し、前記第1のp型ドーパンドおよび第2のp型ドーパンドの材料が異なる有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。このような新規な有機エレクトロルミネッセンス素子は、素子の綜合性能を向上させる点で顕著な効果を有する。
【0144】
他の材料との組合せ
【0145】
本発明に記載される有機発光素子に用いられる特定層の材料は、素子に存在する各種の他の材料と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せについて、米国特許出願US2016/0359122A1の第0132~0161段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0146】
本明細書において、有機発光素子に用いられる具体的な層の材料は、前記素子に存在する多種の他の材料と組み合わせて使用することができると記載されている。例示的には、本明細書において開示される発光ドーパントは、多種のホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極および他の存在可能な層と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せは、特許出願US2015/0349273A1の第0080~0101段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0147】
素子の実施例において、素子の特性に対しても、本分野における通常の機器(Angstrom Engineering製の蒸着機、蘇州弗士達製の光学テストシステム、耐用年数テストシステム、北京量拓製のエリプソメーターなどを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法でテストを行った。当業者は上述した機器の使用、テスト方法などの関連内容を知っているので、サンプルの固有データを確実に、影響を受けずに取得することができるため、上記関連内容を本明細書において繰り返し説明はしない。
【0148】
以下は、幾つかの素子の実施例によって、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の作動原理を具体的に説明する。明らかには、以下の実施例は、例示的な目的に過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。以下の実施例に基づき、当業者は、改良により、本発明の他の実施例を取得することができる。
【実施例0149】
素子の実施例1-1
【0150】
図3に示される有機エレクトロルミネッセンス素子300を製造した。実施例1-1の実施形態は、以下の通りである。まず、厚み1200Åのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極110を有するガラス基板101を洗浄した後、UVオゾンおよび酸素プラズマで処理した。そして、窒素ガスを満たしたグローブボックスで基板を乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空蒸着によって順次にITO陽極上に有機層の蒸着を行った。化合物HT-18、化合物4-19および化合物1-2を共蒸着して第1の有機層120(HIL、重量比83.5:0.5:16、100Å)として用いた。その後、化合物HT-18を蒸着して正孔輸送層130(HTL、400Å)として用いた。化合物EBを蒸着して電子ブロッキング層140(EBL、50Å)として用いた。次に、赤色光発光ドーパンドである化合物D-1をホスト化合物RHにドーピングして赤色光発光層150(EML、重量比3:97、400Å)を形成した。そして、化合物ETおよび8-ヒドロキシキノリン-リチウム(Liq)を共蒸着して電子輸送層170(ETL、重量比40:60、350Å)として用いた。ETL上において、10ÅのLiqを蒸着して電子注入層180(EIL)として用いた。最後、1200ÅのAlを蒸着して陰極190として用いた。該蒸着された素子をグローブボックスに転移させ、ガラスカバー102でカプセル化して該素子を完成させた。
【0151】
実施例1-2
【0152】
実施例1-2の製造過程は、HILにおいて化合物HT-18:化合物4-19:化合物1-2=89:1:10である以外、実施例1-1と同様である。
【0153】
実施例1-3
【0154】
実施例1-3の製造過程は、HILにおいて化合物HT-18:化合物4-19:化合物1-2=83:1:16である以外、実施例1-1と同様である。
【0155】
実施例1-4
【0156】
実施例1-4の製造過程は、HILにおいて化合物5-1で化合物4-19を代替し、且つ化合物HT-18:化合物5-1:化合物1-2=89.5:0.5:10である以外、実施例1-1と同様である。
【0157】
実施例1-5
【0158】
実施例1-5の製造過程は、HIL層においてHT-18:化合物5-1:化合物1-2=83.5:0.5:16である以外、実施例1-4と同様である。
【0159】
比較例1-1
【0160】
比較例1-1の製造過程は、HILにおけるドーパンドは、化合物4-19だけを含有し、且つHT-18:化合物4-19=99.5:0.5である以外、実施例1-1と同様である。
【0161】
比較例1-2
【0162】
比較例1-2の製造過程は、HIL層においてHT-18:化合物4-19=99:1である以外、比較例1-1と同様である。
【0163】
比較例1-3
【0164】
比較例1-3の製造過程は、HILにおけるドーパンドは、化合物1-2だけを含有し、HT-18:化合物1-2=84:16である以外、比較例1-1と同様である。
【0165】
比較例1-4
【0166】
比較例1-4の製造過程は、HIL層においてHT-18:化合物1-2=90:10である以外、比較例1-3と同様である。
【0167】
比較例1-5
【0168】
比較例1-5の製造過程は、HILにおけるドーパンドは、化合物5-1だけを含有し、且つHT-18:化合物5-1=99.5:0.5である以外、比較例1-1と同様である。
【0169】
詳細の素子の一部の有機層の構造および厚みは、表2に示される。用いられる材料が1種超えの層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。なお、上記素子の構造は、例示的なものに過ぎず、本発明は、上記挙げられた具体的な実施例に限定されない。
【0170】
【表2】
【0171】
素子に用いられる化合物の構造は、以下のように示される。

【化22】
【0172】
表3には、実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-5における素子の性能が示される。そのうち、色座標(CIE)、電圧および外部量子効率(EQE)は、電流密度10mA/cmの条件下で測定されたものである。素子の耐用年数(LT97)は、80mA/cmの定電流密度の駆動下で輝度が初期輝度の97%に減衰した実際測定時間である。
【0173】
【表3】
【0174】
高いEQE、低い電圧および長い耐用年数は、OLED分野において普遍的に追求されているものであるが、それらを兼備できない場合、素子の綜合性能を考慮する必要がある。1つの素子のEQEが高く、電圧も高ければ、このような素子は、商用性を具備しなかった。たとえば、表3には、比較例1-4は、10mA/cm下でのEQEが35.9%に達したが、その電圧も4.1Vに達し、耐用年数が27hのみである。実施例1-5は、EQEが26.6%であり、比較例1-4よりも低いが、EQEが26.6%であることがすでに業界内の高い水準に達し、その電圧が2.9のみであり、耐用年数も244hに達した。そのため、実施例1-5は、綜合性能に優れたOLED素子であり、比較例1-4は、業界内で追求されている素子ではないことを分かることができる。
【0175】
色座標から分かるように、示された実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-5における色座標は、ほぼ一致した。
【0176】
実施例1-1において、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物4-19および化合物1-2である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を83.5:0.5:16の重量比(ドーピング率)で共蒸着して第1の有機層であるHILとして用いた。表3のデータから分かるように、実施例1-1は、3.0Vの低い電圧、28.8%の高いEQE、および209hの長い耐用年数を取得した。単独で化合物4-19をp型ドーパンドとして用いた比較例1-1に対して、実施例1-1は、電圧が大幅に0.8V低くなり、耐用年数が80%向上した。同様には、HILにおいて単独で化合物1-2をp型ドーパンドとして用いた比較例1-3に対して、実施例1-1は、電圧が0.5V低下し、耐用年数が95%向上し、且つ実施例1-1のEQEも28.8%の高い水準に達した。そのため、実施例1-1の素子の綜合性能が非常に優れていることが認められている。以上のデータから分かるように、HIL層において2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、1種だけのp型ドーパンドが用いられることに対して、より優れた素子の綜合性能を取得し、特に電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。これにより、HILにおいて2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、素子の綜合性能の向上に対して非常に重要な役割を果たすことが示されている。
【0177】
実施例1-2において、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物4-19と化合物1-2である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を89:1:10の重量比で共蒸着して第1の有機層であるHILとして用いた。表3のデータから分かるように、実施例1-22.9Vの極めて低い電圧、27.5%の高いEQE、および225hの長い耐用年数を取得した。単独で化合物4-19をp型ドーパンドとして用いた比較例1-2に対して、実施例1-2は、電圧が0.2V低くなり、耐用年数が87.5%向上し、EQEもやや向上した。同様には、HILにおいて単独で化合物1-2をp型ドーパンドとして用いた比較例1-4に対して、実施例1-2は、電圧が大幅に1.2V低下し、耐用年数が顕著に7.3倍向上し、且つ実施例1-2のEQEも27.5%の高い水準に達した。そのため、実施例1-2の素子の綜合性能が非常に優れていることが認められている。以上のデータから分かるように、HIL層において2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、1種だけのp型ドーパンドが用いられることに対して、より優れた素子の綜合性能を取得し、特に電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。これにより、HILにおいて2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、素子の綜合性能の向上に対して非常に重要な役割を果たすことが示されている。
【0178】
実施例1-3において、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物4-19と化合物1-2である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を83:1:16の重量比で共蒸着して第1の有機層であるHILとして用いた。表3のデータから分かるように、実施例1-3は、3.0Vの低い電圧、26.6%の高いEQE、および235hの長い耐用年数を取得した。単独で化合物4-19をp型ドーパンドとして用いた比較例1-2に対して、実施例1-3は、電圧が0.1V低くなり、耐用年数が95.8%向上した。同様には、HILにおいて単独で化合物1-2をp型ドーパンドとして用いた比較例1-3に対して、実施例1-3は、電圧が0.5V低下し、耐用年数が大幅に約1.2倍向上し、且つ実施例1-3のEQEも26.6%の高い水準に達した。そのため、実施例1-3の素子の綜合性能が非常に優れていることが認められている。以上のデータから分かるように、HIL層において2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、1種だけのp型ドーパンドが用いられることに対して、より優れた素子の綜合性能を取得し、特に電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。これにより、HILにおいて2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、素子の綜合性能の向上に対して非常に重要な役割を果たすことが示されている。
【0179】
実施例1-4において、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物5-1と化合物1-2である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を89.5:0.5:10の重量比で共蒸着して第1の有機層であるHILとして用いた。表3のデータから分かるように、実施例1-4は、2.9Vの超低い電圧、27.4%の高いEQE、および197hの長い耐用年数を取得した。単独で化合物5-1をp型ドーパンドとして用いた比較例1-5に対して、実施例1-4は、電圧が0.2V低下し、耐用年数が約1.1倍向上し、EQEもやや向上した。同様には、HILにおいて化合物1-2だけをp型ドーパンドとして用いた比較例1-4に対して、実施例1-4は、電圧が大幅に1.2V低下し、耐用年数が顕著に約6.3倍向上し、且つ実施例1-4のEQEも27.4%の高い水準に達した。そのため、実施例1-4の素子の綜合性能が非常に優れていることが認められている。以上のデータから分かるように、HIL層において2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、1種だけのp型ドーパンドが用いられることに対して、より優れた素子の綜合性能を取得し、特に電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。これにより、HILにおいて2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、素子の綜合性能の向上に対して非常に重要な役割を果たすことが示されている。
【0180】
実施例1-5において、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物5-1および化合物1-2である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を83.5:0.5:16の重量比で共蒸着して第1の有機層であるHILとして用いた。表3のデータから分かるように、実施例1-5は、2.9Vの超低い電圧、26.6%の高いEQE、および244hの長い耐用年数を取得した。単独で化合物5-1をp型ドーパンドとして用いた比較例1-5に対して、実施例1-5は、電圧が0.2V低下し、耐用年数が約1.7倍向上し、EQEが大体相当した。同様には、HILにおいて単独で化合物1-2をp型ドーパンドとして用いた比較例1-3に対して、実施例1-5は、電圧が比較例1-3の電圧よりも0.6V低下し、耐用年数が大幅に約1.3倍向上し、且つ実施例1-5のEQEも26.6%の高い水準に達した。そのため、実施例1-5の素子の綜合性能が非常に優れていることが認められている。以上のデータから分かるように、HIL層において2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、1種だけのp型ドーパンドが用いられることに対して、より優れた素子の綜合性能を取得し、特に電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。これにより、HILにおいて2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、素子の綜合性能の向上に対して非常に重要な役割を果たすことが示されている。
【0181】
実施例2-1
【0182】
図2に示す有機エレクトロルミネッセンス素子200を製造した。実施例2-1の実施形態は、以下の通りである。まず、厚み800Åのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極110を有するガラス基板101を洗浄した後、UVオゾンおよび酸素プラズマで処理した。そして、窒素ガスを満たしたグローブボックスで基板を乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空蒸着によって順次にITO陽極110上において有機層の蒸着を行った。まず、化合物HT-18、化合物1-2、化合物3-1を共蒸着して第1の有機層120(HIL、重量比87:12:1、100Å)として用いた。その後、化合物HT-18を蒸着して正孔輸送層130(HTL、250Å)として用いた。化合物EB1を蒸着して電子ブロッキング層140(EBL、50Å)として用いた。そして、青色光ドーパンドである化合物D-2を青色光ホスト化合物BHにドーピングし、共蒸着して青色光発光層150(EML、重量比2:98、250Å)として用いた。そして、化合物HBを蒸着して正孔ブロッキング層160(HBL、50Å)として用いた。HBL上において、化合物ETおよびLiqを共蒸着して電子輸送層170(ETL、重量比40:60、300Å)として用いた。ETL上において、10ÅのLiqを蒸着して電子注入層180(EIL)として用いた。最後、1200ÅのAlを蒸着して陰極190として用いた。該蒸着された素子をグローブボックスに転移させ、ガラスカバー102でカプセル化して該素子を完成させた。
【0183】
比較例2-1
【0184】
比較例2-1の製造方法は、HIL層におけるドーパンドが化合物1-2だけを含み、且つHT-18:化合物1-2=88:12である以外、実施例2-1と同様である。
【0185】
比較例2-2
【0186】
比較例2-2の製造方法は、HIL層におけるドーパンドが化合物3-1だけを含み、且つHT-18:化合物3-1=99:1である以外、実施例2-1と同様である。
【0187】
詳細な素子の一部の有機層の構造および厚みは、表4に示される。用いられる材料が1種超えの層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0188】
【表4】
【0189】
素子に新たに用いられる化合物の構造は、以下のように示される。
【化23】
【0190】
表5には、実施例2-1および比較例2-1、2-2における素子の性能が示される。そのうち、色座標(CIE)、電圧および外部量子効率(EQE)は、電流密度10mA/cmの条件下で測定されたものである。素子の耐用年数(LT97)は、80mA/cmの定電流密度の駆動下で輝度が初期輝度の97%に減衰した実際測定時間である。
【0191】
【表5】
【0192】
実施例2-1において、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物1-2および化合物3-1である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を87:12:1の重量比で共蒸着して第1の有機層であるHILとして用いた。表5のデータから分かるように、単独で化合物1-2をp型ドーパンドとして用いた比較例2-1に対して、実施例2-1は、電圧が0.7V低下し、耐用年数が約129倍向上した。同様には、HILにおいて単独で化合物3-1をp型ドーパンドとして用いた比較例2-2に対して、実施例2-1は、電圧が0.2V低下し、耐用年数が顕著に約1.2倍向上し、且つ実施例2-1のEQEも8.7%に達し、これは青色蛍光体系において高い効率水準である。綜合的には、実施例2-1の素子の綜合性能が非常に優れていることが認められている。以上のデータから分かるように、正孔輸送領域の第1の有機層において2種の材料が異なるp型ドーパンドが用いられることは、1種だけのp型ドーパンドが用いられることに対して、より優れた素子の綜合性能を取得し、特に電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。これにより、第1の有機層において2種の異なるp型ドーパンドが用いられることは、素子の綜合性能の向上に対して非常に重要な役割を果たすことが示されている。
【0193】
実施例3-1 積層青色蛍光素子の製造
【0194】
図4に示される積層有機エレクトロルミネッセンス素子400を製造した。実施例3-1の実施形態は以下の通りである。まず、厚みが800Åのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極110を有するガラス基板101を洗浄した後、UVオゾンおよび酸素プラズマで処理した。そして、窒素ガスを満たしたグローブボックスで基板を乾燥させて水を除去し、基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空蒸着によって順次にITO陽極110上に有機層の蒸着を行った。まず、HT-18、化合物1-2、および化合物3-1を共蒸着して第1の有機層120(HIL、重量比87.5:12:0.5、100Å)として用いた。その後、化合物HT-18を蒸着して正孔輸送層130(HTL、250Å)として用いた。化合物EB1を蒸着して電子ブロッキング層140(EBL、50Å)として用いた。その後、青色光ドーパンドである化合物D-2を青色光ホスト化合物BHにドーピングし、共蒸着して青色光発光層150(EML、重量比2:98、250Å)として用いた。そして、化合物HBを蒸着して正孔ブロッキング層160(HBL、50Å)として用いた。HBL上において、化合物ETおよびLiqを共蒸着して電子輸送層170(ETL、重量比40:60、300Å)として用いた。上記110~170は、第1の発光ユニット1101を構成した。
【0195】
ETL170上において順次に15ÅのYb金属を蒸着してn型材料層210として用いた後、30Åの化合物1-2を蒸着してp型材料層220として用いた。上記210~220からなる電荷発生層1102は、第1の発光ユニット1101と第2の発光ユニット1103を連結するために用いられた。次に、2番目の発光ユニット1103を蒸着した。まず、HT-18、化合物1-2、および化合物3-1を共蒸着して第2の発光ユニットにおける第1の有機層310(HIL、重量比87.5:12:0.5、100Å)として用いた。その後、化合物HT-18を蒸着して正孔輸送層320(HTL、400Å)として用いた。化合物EB1を蒸着して電子ブロッキング層330(EBL、50Å)として用いた。その後、青色光ドーパンドである化合物D-2を青色光ホスト化合物BHにドーピングし、共蒸着して青色光発光層340(EML、重量比2:98、250Å)として用いた。そして、化合物HBを蒸着して正孔ブロッキング層350(HBL、50Å)として用いた。HBL上において、化合物ETおよびLiqを共蒸着して電子輸送層360(ETL、重量比40:60、300Å)として用いた。
【0196】
ETL360上において10ÅのLiqを蒸着して電子注入層370(EIL)として用いた。最後、1200ÅのAlを蒸着して陰極(380)として用いた。該蒸着された素子をグローブボックスに転移させ、ガラスカバー(102)でカプセル化して該素子を完成させた。
【0197】
詳細な素子の一部の有機層の構造および厚みは、表6に示される。用いられる材料が1種超えの層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0198】
【表6】
【0199】
表7には、実施例3-1における素子の性能が示される。そのうち、色座標(CIE)、電圧および外部量子効率(EQE)は、電流密度10mA/cmの条件下で測定されたものである。素子の耐用年数(LT97)は、80mA/cmの定電流密度の駆動下で輝度が初期輝度の97%に減衰した実際測定時間である。
【0200】
【表7】
【0201】
実施例3-1において、2つのPDが同一の有機層にドーピングされた構造を積層素子に適用し、すなわち、第1の発光ユニット1101において、同時に、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物1-2と化合物3-1である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を87.5:12:0.5の重量比で共蒸着して第1のユニットにおける第1の有機層であるHILとして用いた。第2の発光ユニット1103において、同時に、化合物HT-18を第1の有機材料として用い、化合物1-2と化合物3-1である2種のp型ドーパンドをドープ材料として用い、この3種の材料を87.5:12:0.5の重量比で共蒸着して第2のユニットにおける第1の有機層であるHILとして用いた。
【0202】
表7には、該積層素子の性能が示されている。その結果、実施例3-1は、8.3Vの低い電圧、18.5%の高いEQE、および38hの耐用年数を取得したことが示されている。現在、青色蛍光発光素子のEQEが一般的に8.5%程度に達することは、すでに業界内での高い水準であるが、本発明における特定の第1の有機層を含む青色積層蛍光発光素子のEQEは、18.5%の優れた水準に達した。これにより、正孔輸送領域における第1の有機層に2種のPD材料が同時に含まれると、単一層の素子の場合には、優れた素子の綜合性能を取得するだけでなく、積層素子の場合には、同様に優れた素子の性能も取得するができることが示されている。
【0203】
なお、積層素子におけるp-型電荷発生層も本願における第1の有機層であってもよく、たとえば、本願の実施例3-1において、第1の有機層がそのままp-型電荷発生層として用いられてもよい。むろん、p-型電荷発生層は、第1の有機材料、第1のp型ドーパンドおよび/または第2のp型ドーパンドを含有してもよい。
【0204】
要するに、本願に係る新規な有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1の有機層において2種または複数種の異なるp型ドーパンドが用いられているので、素子における正孔の注入能力の調節のためにより多くの空間を提供し、素子におけるキャリアをより良くバランスさせることができ、素子の綜合性能の向上に対して極めて大きく寄与する。第1の有機層において1種だけのp型ドーパンドが用いられた素子に対して、本発明に係る2種の異なるp型ドーパンドを含有した第1の有機層を有するエレクトロルミネッセンス素子は、より良好な素子の綜合性能を取得し、高い外部量子効率を維持しながら、電圧の大幅な低下、および耐用年数の顕著な向上を実現することができる。
【0205】
ここで記載される各種の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。そのため、当業者にとって、保護しようとする本発明は、本明細書に記載される具体的な実施例および好ましい実施例の変形を含むことが自明である。本発明の構想を逸脱しない前提で、本明細書に記載される材料および構造の多くは、他の材料および構造で代替することができる。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定的ではないことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4