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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025767
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】燃料電池排ガス装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20240216BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240216BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240216BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20240216BHJP
   B60L 58/32 20190101ALI20240216BHJP
【FI】
H01M8/0662
H01M8/04014
H01M8/04 N
B60L50/70
B60L58/32
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023131139
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】10 2022 120 291.7
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ガイザー
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD04
5H125CD05
5H125CD09
5H125FF09
5H125FF26
5H125FF27
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC03
5H127AC09
5H127BA02
5H127BA32
5H127BA33
5H127BA44
5H127BA48
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB17
5H127BB18
5H127BB24
5H127BB28
5H127BB39
5H127EE15
5H127EE16
5H127EE23
5H127EE24
5H127FF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に車両用の燃料電池排ガス装置を改良して、周囲に放出される燃料電池排ガス中の霧形成を実質的に阻止する。
【解決手段】特に車両用の燃料電池排ガス装置であって、燃料電池排ガスが通流可能な、該燃料電池排ガスから熱を導出するための第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30と、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30の領域にまたは/かつ下流側に設けられた、燃料電池排ガス中に含まれる凝縮液を分離するための第1の分離ユニット34と、第1の分離ユニットの領域にまたは/かつ下流側に設けられた、燃料電池排ガスを加熱するための燃料電池排ガス加熱ユニット36と、を含む、燃料電池排ガス装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両用の燃料電池排ガス装置であって、
-前記燃料電池排ガスが通流可能な、該燃料電池排ガスから熱を導出するための第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)と、
-前記第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)の領域にまたは/かつ下流側に設けられた、前記燃料電池排ガス中に含まれる凝縮液を分離するための第1の分離ユニット(34)と、
-前記第1の分離ユニット(34)の領域にまたは/かつ下流側に設けられた、前記燃料電池排ガスを加熱するための燃料電池排ガス加熱ユニット(36)と、
を含む燃料電池排ガス装置。
【請求項2】
前記第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)が、前記燃料電池排ガスから冷却媒体(K)、好ましくは冷却液または冷却ガスに熱を伝達するための第1の熱交換器(32)を含む、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項3】
前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)が、加熱媒体(H)、好ましくは加熱液または加熱ガスから前記燃料電池排ガスに熱を伝達するための第2の熱交換器(38)を含み、または/かつ前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)が、電気的に励起可能な少なくとも1つのヒータ(39)を含む、請求項1または2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項4】
前記第1の熱交換器(32)および前記第2の熱交換器(38)を通流する熱伝達媒体(M)が、前記冷却媒体(K)および前記加熱媒体(H)を提供する、請求項2を引用する請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項5】
前記第1の熱交換器(32)および前記第2の熱交換器(38)を提供する熱交換器ユニット(54)が設けられており、該熱交換器ユニット(54)は、前記燃料電池排ガスが通流可能な上流側の熱交換器領域(56)と、該上流側の熱交換器領域(56)の下流側の、前記上流側の熱交換器領域(56)と熱伝達式に相互作用する下流側の熱交換器領域(58)とを含む、請求項2を引用する請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項6】
前記第1の分離ユニット(34)が、前記上流側の熱交換器領域(56)の下流側かつ前記下流側の熱交換器領域(58)の上流側に配置されている、請求項5記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項7】
前記上流側の熱交換器領域(56)の下流側または/かつ該上流側の熱交換器領域(56)の下流側の端部(64)に、かつ前記下流側の熱交換器領域(58)の上流側または/かつ該下流側の熱交換器領域(58)の上流側の端部(68)に、前記燃料電池排ガスから熱を導出するための第2の燃料電池排ガス冷却ユニット(50)が設けられている、請求項5または6記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項8】
前記第2の燃料電池排ガス冷却ユニット(50)が、前記燃料電池排ガスから冷却媒体(K)、好ましくは冷却液または冷却ガスに熱を伝達するための第3の熱交換器(52)を含む、請求項7記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項9】
前記熱交換器ユニット(54)が、熱交換器ユニットケーシング(60)を含み、前記上流側の熱交換器領域(56)および前記下流側の熱交換器領域(58)が、前記熱交換器ユニットケーシング(60)内に設けられており、前記第3の熱交換器(52)が、実質的に前記熱交換器ユニットケーシング(60)内に配置されている、または/かつ前記熱交換器ユニットケーシング(60)を外面において取り囲むように配置されている、請求項8記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項10】
前記熱交換器ユニット(54)が、向流熱交換器またはクロスフロー熱交換器を含む、請求項5から9までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項11】
前記第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)に通じる第1の燃料電池排ガス管路(22)、好ましくはカソード排ガス管路が設けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項12】
前記第1の燃料電池排ガス管路(22)に、前記燃料電池排ガス中に実質的に液滴形状で含まれる液体を分離するための第2の分離ユニット(48)が対応配置されている、請求項11記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項13】
第2の燃料電池排ガス管路(28)、好ましくはアノード排ガス管路が設けられており、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)が、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内に開口しているか、または前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)から離れる方向にガイドされる燃料電池排ガス放出管路(40)内に開口している、請求項11または12記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項14】
前記第2の燃料電池排ガス管路(28)が、前記第2の分離ユニット(48)の下流側で、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内に開口している、請求項12を引用する請求項13記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項15】
燃料電池排ガス中に含まれる水素を酸化させるための少なくとも1つの酸化ユニット、好ましくは触媒ユニット(44,44’)または/およびバーナが設けられている、請求項1から14までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項16】
少なくとも1つの酸化ユニットが、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)内で、前記燃料電池排ガス放出管路(40)内への開口の上流側に配置されている、または/かつ少なくとも酸化ユニットが、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内で、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)の、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内への開口の下流側に配置されている、請求項13または14を引用する請求項15記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項17】
前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)から離れるようにガイドされる燃料電池排ガス放出管路(40)内に配置された少なくとも1つの燃料電池排ガス消音器(42)が設けられている、請求項1から16までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項18】
前記第2の燃料電池排ガス管路(28)の、前記燃料電池排ガス放出管路(40)内への開口の下流側に、少なくとも1つの燃料電池排ガス消音器(42)が配置されている、請求項13を引用する請求項17記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項19】
燃料電池(12)と、該燃料電池に対応配置された、請求項1から18までのいずれか1項記載の燃料電池排ガス装置(11)とを含む、燃料電池システム。
【請求項20】
前記第1の燃料電池排ガス管路(22)が、好ましくはカソード排ガス遮断ユニット(20)を介して、前記燃料電池(12)のカソード排ガス出口(18)に接続されており、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)が、好ましくはアノード排ガス遮断ユニット(26)を介して、前記燃料電池(12)のアノード排ガス出口(24)に接続されている、請求項13を引用する請求項19記載の燃料電池システム。
【請求項21】
燃料電池システム(10)、特に請求項19または20記載の燃料電池システム(10)を運転する方法であって、該方法において、水分を凝縮するために、燃料電池(12)から放出された燃料電池排ガスを冷却し、水分を凝縮した後に、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスを加熱する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池排ガス装置であって、この燃料電池排ガス装置を介して、例えば車両において、電気エネルギ生成のために運転される燃料電池から排出された燃料電池排ガスを周囲に放出することができる、燃料電池排ガス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池において電気エネルギを生成するために、燃料電池のアノード領域には、水素または水素を含むガスが供給され、燃料電池のカソード領域には、酸素または酸素を含むガス、例えば空気が供給される。燃料電池のアノード領域のアノード排ガス出口において、水素に乏しいガスが燃料電池排ガスとして放出される。燃料電池のカソード領域のカソード排ガス出口において、酸素に乏しいガスが燃料電池排ガスとして放出される。燃料電池の型に応じて、まずは、燃料電池のカソード領域において放出される燃料電池排ガス、またはまずは燃料電池のアノード領域において放出される燃料電池排ガスは、比較的大きな割合の水分または水蒸気を含んでいる。著しく水蒸気に富んだ、90~100%の範囲の相対湿度を有する燃料電池排ガスが、燃料電池排ガス装置を介して周囲に放出されると、特に周囲温度が比較的低い場合には、周辺空気との接触時に燃料電池排ガスの温度が著しく低下する恐れが生じ、これは、燃料電池排ガスからの水分の凝縮、ひいては著しい霧形成を招いてしまう。この種の霧形成は、単に視覚的な外観に基づいても不快で望ましくないと感じられ、特に周辺温度が極めて低い場合には、車両の停止時に、燃料電池排ガスが周囲に流出する領域で、車両の下側の地中に氷形成が生じる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に車両用の燃料電池排ガス装置を改良して、周囲に放出される燃料電池排ガス中の霧形成を実質的に阻止することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明によれば、特に車両用の燃料電池排ガス装置であって、
-燃料電池排ガスが通流可能な、燃料電池排ガスから熱を導出するための第1の燃料電池排ガス冷却ユニットと、
-第1の燃料電池排ガス冷却ユニットの領域にまたは/かつ下流側に設けられた、燃料電池排ガス中に含まれる凝縮液を分離するための第1の分離ユニットと、
-第1の分離ユニットの領域にまたは/かつ下流側に設けられた、燃料電池排ガスを加熱するための燃料電池排ガス加熱ユニットと、
を含む、燃料電池排ガス装置によって解決される。
【0005】
本発明により構成された燃料電池排ガス装置では、まず燃料電池排ガスの冷却と、その際の、露点の下側への燃料電池排ガスの温度の低下とにより、この燃料電池排ガス内で搬送された水分あるいは水蒸気の一部が、燃料電池排ガスから分離し、凝縮液として、特に第1の分離ユニット内に捕集されるか、または集合させられてよい。次いで、燃料電池排ガス加熱ユニットにおいて行われる、水分または水蒸気に乏しい燃料電池排ガスの加熱時には、確かに、燃料電池排ガス中にまだ含まれている水蒸気の量の変化は引き起こされない。しかし、温度上昇に基づいて、燃料電池排ガス中の相対湿度は著しく低下する。次いで、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスが、高められた温度で周囲に放出されると、自発的な凝縮または霧形成が回避される。燃料電池排ガスは、その温度が再び著しく低下する前に、周囲空気と十分な程度で混ざるので、これにより発生する希釈によって、燃料電池排ガスが燃料電池排ガス装置から流出する領域における局所的な著しい霧形成を回避することができる。
【0006】
燃料電池排ガスの効率的な冷却のために、第1の燃料電池排ガス冷却ユニットは、燃料電池排ガスから冷却媒体、好ましくは冷却液または冷却ガスに熱を伝達する第1の熱交換器を備えていてよい。
【0007】
同様に、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスの効率的な加熱のために、燃料電池排ガス加熱ユニットは、加熱媒体、好ましくは加熱液または加熱ガスから燃料電池排ガスに熱を伝達するための第2の熱交換器または/および電気的に励起可能な少なくとも1つのヒータを備えていてよい。
【0008】
燃料電池排ガス内で搬送される熱を、燃料電池システムのエネルギ効率のよい運転のために利用することができるようにするために、第1の熱交換器と第2の熱交換器とを通流する熱伝達媒体が、冷却媒体と加熱媒体とを提供することが提案される。したがって、この熱伝達媒体は、熱を、燃料電池排ガス装置のさらに上流側の部分を流れる燃料電池排ガスから、燃料電池排ガス装置のさらに下流側の部分を流れる燃料電池排ガスに伝達することができる。
【0009】
同様に燃料電池排ガス中で搬送される熱を利用する代替的な構成バリエーションでは、第1の熱交換器および第2の熱交換器を提供する熱交換器ユニットが設けられていてよく、熱交換器ユニットは、燃料電池排ガスが通流可能な上流側の熱交換器領域を有しており、この上流側の熱交換器領域の下流側に、上流側の熱交換器領域と熱伝達式に相互作用する下流側の熱交換器領域を有している。両方の熱交換器領域の熱伝達式の相互作用により、液状またはガス状の熱伝達媒体を必要とせず、したがって極めて効率的である直接的な熱伝達が達成される。
【0010】
この実質的に直接的な熱伝達時にも、燃料電池排ガスの冷却後に凝縮された水分を導出することができるようにするために、第1の分離ユニットが、上流側の熱交換器領域の下流側かつ下流側の熱交換器領域の上流側に配置されていることが提案される。
【0011】
燃料電池排ガス装置の様々なシステム領域の構造的な統合、ひいてはコンパクトな構造のために、上流側の熱交換器領域の下流側または/かつこの上流側の熱交換器領域の下流側の端部に、かつ下流側の熱交換器領域の上流側または/かつこの下流側の熱交換器領域の上流側の端部に、燃料電池排ガスから熱を導出するための第2の燃料電池排ガス冷却ユニットが設けられていることがさらに提案される。このような第2の燃料電池排ガス冷却ユニットを提供することにより、上流側の熱交換器領域において既に行われる冷却に加えて、燃料電池排ガスは下流側の熱交換器領域の上流側でさらに冷却され、したがって水分の凝縮が支援される。
【0012】
ここで、第2の燃料電池排ガス冷却ユニットは、熱を燃料電池排ガスから冷却媒体、好ましくは冷却液または冷却ガスに伝達する第3の熱交換器を備えていてよい。
【0013】
熱交換器ユニットが、熱交換器ユニットケーシングを備えていてよく、上流側の熱交換器領域および下流側の熱交換器領域が、熱交換器ユニットケーシング内に設けられている。さらに第3の熱交換器は、実質的に熱交換器ユニットケーシング内に配置されていてよく、または/かつ熱交換器ユニットケーシングを外面において取り囲むように配置されていてよい。
【0014】
燃料電池排ガス装置の様々な部分に流れる燃料電池排ガスのための効率的な熱伝達のために、熱交換器ユニットは、対向流熱交換器またはクロスフロー熱交換器を備えていてよい。
【0015】
燃料電池排ガスを第1の燃料電池排ガス冷却ユニットに導くために、第1の燃料電池排ガス冷却ユニットに通じる第1の燃料電池排ガス管路が設けられていてよい。したがって、第1の燃料電池排ガス管路は、水分または水蒸気が主にカソード排ガス中に含まれている場合、カソード排ガス管路であってよい。
【0016】
既に第1の燃料電池排ガス冷却ユニットの上流側で、燃料電池排ガス中において実質的に液滴形状で搬送される水分を分離するために、第1の燃料電池排ガス管路に、燃料電池排ガス中に実質的に液滴形状で含まれる液体を分離するための第2の分離ユニットが対応配置されていてよい。
【0017】
燃料電池排ガス装置はさらに、第2の燃料電池排ガス管路、好ましくはアノード排ガス管路を有していてよく、第2の燃料電池排ガス管路は、第1の燃料電池排ガス管路内に開口しているか、または燃料電池排ガス加熱ユニットから離れる方向にガイドされる燃料電池排ガス放出管路内に開口しており、このことは、それぞれ関連する両方の管路が、管路内でガイドされる燃料電池排ガス流を合流させるためにまとめられていることを意味している。特に、第2の燃料電池排ガス管路が、第1の燃料電池排ガス管路内に開口している場合、燃料電池排ガスの、第2の燃料電池排ガス管路により導かれる部分に含まれる水分または水蒸気も分離することができる。
【0018】
特に、第2の燃料電池排ガス管路により導かれる燃料電池排ガスが、比較的小さな割合の水分または水蒸気を含んでいる場合、第2の燃料電池排ガス管路は、第2の分離ユニットの下流側で、第1の燃料電池排ガス管路内に開口してよい。
【0019】
アノード排ガス中に依然として含まれる残留水素が過度に高い濃度で周囲に放出されることを阻止するために、燃料電池から放出される燃料電池排ガス中に含まれる水素を酸化させる少なくとも1つの酸化ユニット、好ましくは触媒ユニットまたは/およびバーナが設けられていてよい。
【0020】
第2の燃料電池排ガス管路、つまり特にアノード排ガス管路が、実質的に直接に燃料電池排ガス放出管路に通じている場合、少なくとも1つの酸化ユニットは、第2の燃料電池排ガス管路内で、燃料電池排ガス放出管路への開口の上流側に配置されていてもよい。特に、第2の燃料電池排ガス管路が、第1の燃料電池排ガス管路内に開口している場合、少なくとも1つの酸化ユニットが、第1の燃料電池排ガス管路内で、第2の燃料電池排ガス管路の、第1の燃料電池排ガス管路への開口の下流側に配置されていてよい。
【0021】
燃料電池システムの、例えばコンプレッサ等によって発生する騒音の、燃料電池排ガス装置を介した放出を可能な限り阻止するために、燃料電池排ガス加熱ユニットから離れるようにガイドされる燃料電池排ガス放出管路内に配置された少なくとも1つの燃料電池排ガス消音器が設けられていてよい。
【0022】
少なくとも1つの燃料電池排ガス消音器は、好ましくは第2の燃料電池排ガス管路の、燃料電池排ガス放出管路への開口の下流側に配置されており、これにより、第2の燃料電池排ガス管路を通流する燃料電池排ガスを介した騒音の搬送も抑制することができる。
【0023】
さらに本発明は、燃料電池と、この燃料電池に対応配置された、本発明により構成された燃料電池排ガス装置とを備えた燃料電池システムに関する。
【0024】
この燃料電池システムでは、第1の燃料電池排ガス管路は、好ましくはカソード排ガス遮断ユニットを介して、燃料電池のカソード排ガス出口に接続されていてよく、第2の燃料電池排ガス管路は、好ましくはアノード排ガス遮断ユニットを介して、燃料電池のアノード排ガス出口に接続されていてよい。
【0025】
さらに本発明は、燃料電池システム、特に本発明により構成された燃料電池システムを運転する方法であって、水分を凝縮するために、燃料電池から放出された燃料電池排ガスを冷却し、水分を凝縮した後に、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスを加熱する方法に関する。
【0026】
本発明を以下に添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】車両用の燃料電池システムを示す原理図である。
図2】燃料電池システムの代替的な構成を示す、図1に対応する図である。
図3】燃料電池システムの代替的な構成を示す、図1に対応する別の図である。
図4】燃料電池システムの代替的な構成を示す、図1に対応する別の図である。
図5】燃料電池システムの代替的な構成を示す、図1に対応する別の図である。
図6】燃料電池システムの代替的な構成を示す、図1に対応する別の図である。
図7】燃料電池システムの代替的な構成を示す、図1に対応する別の図である。
図8】燃料電池システムの代替的な構成を示す、図1に対応する別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、車両用の燃料電池システムが、全体として参照符号10で示されている。燃料電池システム10は、図示の例では例えばPEM燃料電池として構成された、アノード領域14およびカソード領域16を有した燃料電池12を含んでいる。アノード領域14には、水素または水素を含むガスWが供給される。カソード領域16には、酸素、または酸素を含み場合によって水蒸気も含むガスL、例えば空気が供給される。
【0029】
燃料電池12のカソード排ガス出口18に、カソード排ガス遮断ユニット20、例えば弁、作動フラップまたはそれに類するものを介して、燃料電池排ガス装置11の第1の燃料電池排ガス管路22が接続されており、図示の実施例では、第1の燃料電池排ガス管路22はカソード排ガス管路である。燃料電池のアノード排ガス出口24には、アノード排ガス遮断ユニット26を介して、燃料電池排ガス装置11の第2の燃料電池排ガス管路28が接続されており、図示の実施例では、第2の燃料電池排ガス管路28はアノード排ガス管路である。
【0030】
第1の燃料電池排ガス管路22は、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30に通じている。第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30は、第1の熱交換器32を備えていてよく、第1の熱交換器32内で、第1の燃料電池排ガス管路22を通流する燃料電池排ガス、すなわちカソード排ガスは、熱を液状またはガス状の冷却媒体Kに伝達し、これにより冷却される。この冷却により、カソード排ガス中に含まれる水分あるいは水蒸気の一部が、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30に続く第1の分離ユニット34内で凝縮されるか、またはこの分離ユニット34内に集められ、例えば燃料電池プロセスに戻されるか、または周囲に液状の形態で放出されることができる。
【0031】
下流側で第1の分離ユニット34に続く燃料電池排ガス加熱ユニット36内で、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスまたはカソード排ガスが再び加熱される。この加熱は、燃料電池排ガス加熱ユニット36が第2の熱交換器38として形成されている場合に、燃料電池排ガス加熱ユニット36を通流する燃料電池排ガスに加熱媒体Hによって熱を伝達することにより行うことができる。代替的または付加的に、燃料電池排ガス加熱ユニット36は、電気的に励起可能なヒータ39を備えていてよく、ヒータ39は、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスにより通流され、その際に熱をこの燃料電池排ガスに伝達する。
【0032】
水蒸気に乏しい、再び加熱された燃料電池排ガスは、燃料電池排ガス放出管路40を介して、燃料電池排ガス加熱ユニット36を出る。この燃料電池排ガス放出管路40を介して、水蒸気に乏しい、かつ再び加熱されたカソード排ガスまたは燃料電池排ガスが周囲に放出される。
【0033】
燃料電池システム10において、例えばコンプレッサ等の運転により発生する騒音を、燃料電池排ガスを介して周囲へ伝播しないようにするために、燃料電池排ガス放出管路40内には、燃料電池排ガス消音器42が設けられていてよく、燃料電池排ガス消音器42は、例えば、内燃機関に対応配置された消音器と同様に、互いに接続された、燃料電池排ガスが通流可能な1つ以上の室または/および1つ以上の共振器室を備えていてよい。
【0034】
アノード排ガス出口24を介して燃料電池排ガスとして放出されるアノード排ガスは、一般的に残留水素割合をなおも有している。アノード排ガス中に依然として含まれている水素の濃度は、周囲への放出が許容されないような高さであり得る。したがって、第2の燃料電池排ガス管路28内には、酸化ユニットの1つの実施例を形成する触媒ユニット44が配置されていてよく、この触媒ユニット44において、アノード排ガス中に含まれる残留水素を、供給管路46を介して供給される酸素によって酸化させる。供給管路46を介して、例えば空気を第2の燃料電池排ガス管路28内に導入することができる。
【0035】
図1に図示した燃料電池システム10では、燃料電池排ガスの、第1の燃料電池排ガス管路22を介して燃料電池12から放出される部分、つまりカソード排ガスに、冷却によってまず、このカソード排ガス中に含まれる水蒸気の一部、特に大部分が除去される。水蒸気に乏しい燃料電池排ガスは、その比較的低い温度に基づき、100%近くであり得る高い相対湿度を有している。燃料電池排ガス加熱ユニット36において、水蒸気に乏しいにもかかわらず、高い相対湿度を有するこの燃料電池排ガスを加熱することにより、燃料電池排ガスの相対湿度が低下し、これにより、燃料電池排ガス放出管路40を介して周囲に放出される燃料電池排ガスは、100%を著しく下回る相対湿度を有している。次いで、周囲に放出されるこの燃料電池排ガスが、比較的冷たい周囲空気と接触するか、または車両の周囲にある比較的低温の物体に接触した場合も、水分の凝縮により発生する自発的な霧形成が回避される。なぜならば、周囲に放出される燃料電池排ガスの温度が露点を下回って低下する前に、周囲空気との比較的強い混合が行われ、ひいては燃料電池排ガスの比較的強い希釈が行われるからである。
【0036】
燃料電池システム10の代替的な実施形態が図2に図示されている。図2に示した燃料電池システム10は、図1に示した燃料電池システムと比べて種々の変更点を有しており、これらの変更点は個別に、または図2に具体的に示したように、組み合わせて設けられていてもよい。
【0037】
図2においてまず、第2の燃料電池排ガス管路28が、第1の燃料電池排ガス管路22に開口していることを確認することができる。このことはつまり、第2の燃料電池排ガス管路28を介して放出される燃料電池排ガス、つまり図示の例におけるアノード排ガスも、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30および燃料電池排ガス加熱ユニット36に導かれることを意味している。これにより、アノード排ガス中に含まれる水分またはアノード排ガス中に含まれる水蒸気も、第1の分離ユニット34において凝縮されるか、または収集することができる。
【0038】
この実施形態においても、アノード排ガス中に含まれる残留水素を酸化させるために、触媒ユニット44が第1の燃料電池排ガス管路22内に配置されていてよい。代替的または付加的には、触媒ユニット44’が、燃料電池排ガス放出管路40内に配置されていてよい。第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30の上流側に触媒ユニット44を配置することは、触媒ユニット44により導かれる燃料電池排ガスが比較的高い温度を有しており、このことが触媒ユニット44の効率的な運転に寄与するという重要な利点を有している。燃料電池排ガス放出管路内に触媒ユニット44’を位置決めすることは、触媒装置44’を通流する燃料電池排ガスが、比較的低い割合の水分または水蒸気を含み、これは触媒装置44’の比較的僅かな経年劣化に寄与する、という利点を有している。水素を酸化させるために必要となる酸素は、カソード排ガス中に含まれる残留酸素により提供することができるので、酸素または空気の付加的な導入は不要である。
【0039】
図2において、第1の燃料電池排ガス管路22内には、例えば触媒装置44に関して上流側に、第2の分離ユニット48が配置されていることをさらに確認することができる。図示の実施例では、第2の分離ユニット48によって、カソード排ガスにより特に液滴の形態で連行される水分の一部をカソード排ガスから既に導出することができ、これにより、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30および第1の分離ユニット34の上流側に位置決めされた触媒ユニット44も、既に減じられた割合の水分または水蒸気を含む燃料電池排ガスにより通流される。
【0040】
図3には、燃料電池システム10の、特に第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30および燃料電池排ガス加熱ユニット36の領域において変更された構成が示されている。この構成では、第1の熱交換器32として構成された第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30において、この第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30を通流する燃料電池排ガスから熱が熱伝達媒体Mにより取り除かれ、この熱伝達媒体Mは、例えば閉じた循環路内において、第2の熱交換器38として構成された燃料電池排ガス加熱ユニット36によっても導かれる。したがって、燃料電池排ガス装置11においてさらに下流側で流れる燃料電池排ガスを、燃料電池排ガス装置11においてさらに上流側で流れる燃料電池排ガスによって加熱することができる。代替的または付加的に、燃料電池排ガス加熱ユニット36において、この燃料電池排ガス加熱ユニット36を通流する燃料電池排ガスは、加熱媒体Hまたは/および電気的に励起可能なヒータ39により加熱することができる。
【0041】
燃料電池排ガスをさらに冷却することができるようにするために、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30の下流側に、第2の燃料電池排ガス冷却ユニット50が配置されている。この第2の燃料電池排ガス冷却ユニット50は例えば第3の熱交換器52を備えていてよく、第3の熱交換器52において、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30内で既に冷却された燃料電池排ガスが、熱を冷却媒体Kに伝達することができる。既に上述したように、水分が第1の分離ユニット34において凝縮されるので、これにより、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスが、下流側に続く燃料電池排ガス加熱ユニット36に向かう方向に流れる。
【0042】
燃料電池排ガスの、さらに下流側を流れる部分を加熱するために、燃料電池排ガス中に含まれる熱が一様に利用される、特に効率的な熱伝達および簡単な構造上の構成に関して有利なバリエーションが図4に図示されている。燃料電池排ガス装置11の、図4に図示した実施形態では、全体として参照符号54で示した熱交換器ユニットが設けられており、この熱交換器ユニット54は、図示の実施例では向流熱交換器として構成されている。熱交換器ユニット54は、上流側の熱交換器領域56を備えており、上流側の熱交換器領域56は、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30または第1の熱交換器32を提供する。
【0043】
熱交換器ユニット54は、燃料電池排ガス加熱ユニット36または第2の熱交換器38を提供する下流側の熱交換器領域58をさらに備えている。両熱交換器領域56,58は、熱交換器ユニット54の熱交換器ユニットケーシング60内で通路状に形成されていて、1つ以上の分離壁62によって互いに分離された流路を提供することができ、流路内では、燃料電池排ガスが実質的に互いに逆方向で流れ、これにより、熱を、燃料電池排ガスの、上流側の熱交換器領域56を通流する部分から、燃料電池排ガスの、下流側の熱交換器領域58を通流する部分に伝達する。
【0044】
この構成においても、燃料電池排ガス加熱ユニット36、つまり下流側の熱交換器領域58において、この下流側の熱交換器領域58を流れる燃料電池排ガスが、上述のように、加熱媒体または/および電気的に励起可能なヒータにより付加的に加熱されてよいことが示唆される。
【0045】
上流側の熱交換器領域56を通流し、この上流側の熱交換器領域56を出た燃料電池排ガスは、下流側で上流側の熱交換器領域56に続く第2の燃料電池排ガス加熱ユニット50または第3の熱交換器52へと導かれ、この第2の燃料電池排ガス加熱ユニット50または第3の熱交換器52において、熱が冷却媒体Kに放出され、ひいてはさらに冷却される。第1の分離ユニット34では、さらなる冷却により燃料電池排ガスから凝縮された水分が集められる。次いで、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスは、下流側の熱交換器領域58へとさらに流れ、この下流側の熱交換器領域58において、下流側の熱交換器領域56を流れる燃料電池排ガスとの熱的な相互作用によって、かつ場合によっては付加的に加熱媒体または/および電気的に励起可能なヒータによって加熱される。
【0046】
図5は、第2の燃料電池排ガス冷却ユニット50および第1の分離ユニット34が熱交換器ユニット54と構造的にまとめられている構成バリエーションを示している。図5に確認することができるように、第2の燃料電池排ガス冷却ユニット50の第3の熱交換器52は、上流側の熱交換器領域56に、特にその下流側の端部64に組み込まれていてよい。上流側の熱交換器領域56のこの下流側の端部64において、または下流側で、第1の分離ユニット34へ、かつこの第1の分離ユニット34から下流側の熱交換器領域58への流れ技術的な移行が行われる。第1の分離ユニット34において集められた水分、ひいては熱交換器ユニット54の熱交換器ユニットケーシング60内に集められた水分も、例えば遮断ユニット66を介して周囲へ放出するか、または燃料電池プロセスに戻すことができる。
【0047】
極めて効率的な熱伝達のために、第3の熱交換器52がリブを有していてよく、これらのリブは、上流側の熱交換器領域56を流れる燃料電池排ガスとの熱的な相互作用のために利用することができる表面を拡大する。
【0048】
図5に示した構成原理の、図6に図示した変化形では、第2の燃料電池排ガス冷却ユニット50が、上流側の熱交換器領域56に、特にその下流側の端部64の領域において、かつ上流側の熱交換器領域58において、特にその上流側の端部68に組み込まれている。したがって、上流側の熱交換器領域56、つまり第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30から、下流側の熱交換器領域58、つまり燃料電池排ガス加熱ユニット36への移行領域全体において、燃料電池排ガスの冷却により、水分または水蒸気を凝縮し、第1の分離ユニット34内に収容するまたは集めることができる。
【0049】
この構成においても、極めて効率的な熱伝達のために、第3の熱交換器52がリブを有していてよく、これらのリブは、上流側の熱交換器領域56を流れる燃料電池排ガスとの熱的な相互作用のために利用することができる表面を拡大する。さらに、この実施形態においても、下流側の熱交換器領域58を通流する燃料電池排ガスの付加的な加熱を、加熱媒体または/および電気的に励起可能なヒータにより行うことができることを示唆しておく。
【0050】
燃料電池排ガス装置11の、図7に示した実施バリエーションでも、熱交換器ユニット54において、上流側の熱交換器領域56の下流側の端部64の領域と、下流側の熱交換器領域58の上流側の端部66の領域とにおいて熱が燃料電池排ガスから排出される。この目的のために、第1の燃料電池排ガス冷却ユニット30の第1の熱交換器32は、熱交換器ユニット54の熱交換器ユニットケーシング60をその外面で包囲しており、第1の熱交換器32には冷却媒体Kが通流可能である。熱的な相互作用を強化し、ひいては熱交換器ユニット54を通流する燃料電池排ガスからの熱導出を改善するために、熱交換器ユニットケーシング60の外面に熱伝達リブ70が設けられていてよく、この熱伝達リブ70により、冷却媒体Kへの熱の放出のために利用することができる表面が拡大される。
【0051】
熱交換器ユニット54において、熱を、燃料電池排ガス装置11のさらに上流側の部分を流れる燃料電池排ガスから、燃料電池排ガス装置11のさらに下流側の部分を流れる燃料電池排ガスに伝達することができる別の代替的な構成が図8に示されている。この実施形態では、熱交換器ユニット54が、クロスフロー熱交換器として形成されている。熱交換器ユニットケーシング60内には、実質的に上流側の熱交換器領域56を提供する容積が形成されており、この容積を、第1の燃料電池排ガス管路22を介して供給される燃料電池排ガスが通流する。次いで、この上流側の熱交換器領域56により導かれる燃料電池排ガスは、第2の燃料電池排ガス冷却ユニット50またはその第3の熱交換器52を通流し、その際に熱を冷却媒体Kに放出する。第1の分離ユニット34の通流後に、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスは、次いで、下流側の熱交換器領域58を提供する、熱交換器ユニットケーシング60内に延びる管路領域を通って流れ、この管路領域には、上流側の熱交換器領域56を通流する燃料電池排ガスとの増幅された熱的な相互作用のための熱伝達リブ72が設けられていてよい。
【0052】
この実施形態においても、燃料電池排ガスは、上流側の熱交換器領域58または熱交換器ユニット54を加熱して流出し、その後に、加熱され、ひいては比較的小さな相対湿度で周囲に放出される前に、例えば触媒ユニット44’および消音器42へと流れる。
【0053】
図7および図8に図示した実施形態でも、付加的な加熱のために、下流側の熱交換器領域58に、上述の手段が付加的に対応配置されていてよい。つまり、下流の熱交換器領域58を通流する水蒸気に乏しい燃料電池排ガスの付加的な加熱が、加熱媒体または/および電気的に励起可能なヒータにより行われてよい。
【0054】
前述のすべての実施形態において、使用される限りにおいて、冷却媒体Kまたは/および加熱媒体Hは、液体または気体によって提供することができ、特に冷却媒体Kは、この冷却媒体内に取り込んだ熱を、別の熱交換器において周囲に放出することができる。冷却媒体Kは、例えば周辺空気により提供されていてもよく、これにより、第1の熱交換器は、例えば周辺空気が周囲を流れることができる複数のリブを備えていてよい。加熱媒体Hは、例えば触媒ユニット44または44’内で進行する触媒酸化プロセスにおいて加熱することができる。代替的には、アノード排ガス中にまだ含まれている残留水素を酸化させるためのこのような触媒ユニットの代わりに、またはこの触媒ユニットに対して付加的に、酸化ユニットの別の例として、バーナが設けられていてよい。バーナにおいて、残留水素が酸素、例えばカソード排ガス中に含まれている残留酸素と共に燃焼させられる。その際に発生する熱を、バーナに対応配置された熱交換器において加熱媒体Hに伝達し、この加熱媒体Hから、第2の熱交換器38を通流する燃料電池排ガスに伝達することができる。
【0055】
本発明により構成された燃料電池排ガス装置では、特に図4図7に示した実施形態が示すように、様々なシステム領域、特に第1の燃料電池排ガス冷却ユニット、第1の分離ユニットおよび燃料電池排ガス加熱ユニット、場合によっては第2の燃料電池排ガス冷却ユニットの構造的な結合または融合が規定されていてよく、これにより、これらの様々なシステム領域が直接に互いに接続しているか、または流体技術的な観点において互いに重複していてよい。したがって、第1の分離ユニットにより、既に、第1の燃料電池排ガス冷却ユニットの領域において、または/かつ燃料電池排ガス加熱ユニットの領域においても、水蒸気または水分を燃料電池排ガスから分離し、例えば液状の形態で集めることができる。
【0056】
燃料電池排ガス装置の上述の構造は、アノード領域において比較的大きな割合の水分または水蒸気が発生し、かつアノード排ガスを介して燃料電池から排出される、別の機能原理に従って作動する燃料電池においても、または代替的に使用することができることを示唆しておく。このような場合、例えば、第1の燃料電池排ガス管路は、燃料電池のアノード排ガス出口に接続されていてよく、第2の燃料電池排ガス管路は、燃料電池のカソード排ガス出口に接続されていてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両用の燃料電池排ガス装置であって、
-前記燃料電池排ガスが通流可能な、該燃料電池排ガスから熱を導出するための第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)と、
-前記第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)の領域にまたは/かつ下流側に設けられた、前記燃料電池排ガス中に含まれる凝縮液を分離するための第1の分離ユニット(34)と、
-前記第1の分離ユニット(34)の領域にまたは/かつ下流側に設けられた、前記燃料電池排ガスを加熱するための燃料電池排ガス加熱ユニット(36)と、
を含む燃料電池排ガス装置。
【請求項2】
前記第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)が、前記燃料電池排ガスから冷却媒体(K)、好ましくは冷却液または冷却ガスに熱を伝達するための第1の熱交換器(32)を含む、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項3】
前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)が、加熱媒体(H)、好ましくは加熱液または加熱ガスから前記燃料電池排ガスに熱を伝達するための第2の熱交換器(38)を含み、または/かつ前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)が、電気的に励起可能な少なくとも1つのヒータ(39)を含む、請求項2記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項4】
前記第1の熱交換器(32)および前記第2の熱交換器(38)を通流する熱伝達媒体(M)が、前記冷却媒体(K)および前記加熱媒体(H)を提供する、請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項5】
前記第1の熱交換器(32)および前記第2の熱交換器(38)を提供する熱交換器ユニット(54)が設けられており、該熱交換器ユニット(54)は、前記燃料電池排ガスが通流可能な上流側の熱交換器領域(56)と、該上流側の熱交換器領域(56)の下流側の、前記上流側の熱交換器領域(56)と熱伝達式に相互作用する下流側の熱交換器領域(58)とを含む、請求項3記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項6】
前記第1の分離ユニット(34)が、前記上流側の熱交換器領域(56)の下流側かつ前記下流側の熱交換器領域(58)の上流側に配置されている、請求項5記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項7】
前記上流側の熱交換器領域(56)の下流側または/かつ該上流側の熱交換器領域(56)の下流側の端部(64)に、かつ前記下流側の熱交換器領域(58)の上流側または/かつ該下流側の熱交換器領域(58)の上流側の端部(68)に、前記燃料電池排ガスから熱を導出するための第2の燃料電池排ガス冷却ユニット(50)が設けられている、請求項5または6記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項8】
前記第2の燃料電池排ガス冷却ユニット(50)が、前記燃料電池排ガスから冷却媒体(K)、好ましくは冷却液または冷却ガスに熱を伝達するための第3の熱交換器(52)を含む、請求項7記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項9】
前記熱交換器ユニット(54)が、熱交換器ユニットケーシング(60)を含み、前記上流側の熱交換器領域(56)および前記下流側の熱交換器領域(58)が、前記熱交換器ユニットケーシング(60)内に設けられており、前記第3の熱交換器(52)が、実質的に前記熱交換器ユニットケーシング(60)内に配置されている、または/かつ前記熱交換器ユニットケーシング(60)を外面において取り囲むように配置されている、請求項8記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項10】
前記熱交換器ユニット(54)が、向流熱交換器またはクロスフロー熱交換器を含む、請求項5記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項11】
前記第1の燃料電池排ガス冷却ユニット(30)に通じる第1の燃料電池排ガス管路(22)、好ましくはカソード排ガス管路が設けられている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項12】
前記第1の燃料電池排ガス管路(22)に、前記燃料電池排ガス中に実質的に液滴形状で含まれる液体を分離するための第2の分離ユニット(48)が対応配置されている、請求項11記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項13】
第2の燃料電池排ガス管路(28)、好ましくはアノード排ガス管路が設けられており、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)が、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内に開口しているか、または前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)から離れる方向にガイドされる燃料電池排ガス放出管路(40)内に開口している、請求項12記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項14】
前記第2の燃料電池排ガス管路(28)が、前記第2の分離ユニット(48)の下流側で、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内に開口している、請求項13記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項15】
燃料電池排ガス中に含まれる水素を酸化させるための少なくとも1つの酸化ユニット、好ましくは触媒ユニット(44,44’)または/およびバーナが設けられている、請求項1記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項16】
少なくとも1つの酸化ユニットが、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)内で、前記燃料電池排ガス放出管路(40)内への開口の上流側に配置されている、または/かつ少なくとも酸化ユニットが、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内で、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)の、前記第1の燃料電池排ガス管路(22)内への開口の下流側に配置されている、請求項13または14を引用する請求項15記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項17】
前記燃料電池排ガス加熱ユニット(36)から離れるようにガイドされる燃料電池排ガス放出管路(40)内に配置された少なくとも1つの燃料電池排ガス消音器(42)が設けられている、請求項13記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項18】
前記第2の燃料電池排ガス管路(28)の、前記燃料電池排ガス放出管路(40)内への開口の下流側に、少なくとも1つの燃料電池排ガス消音器(42)が配置されている、請求項17記載の燃料電池排ガス装置。
【請求項19】
燃料電池(12)と、該燃料電池に対応配置された、請求項13記載の燃料電池排ガス装置(11)とを含む、燃料電池システム。
【請求項20】
前記第1の燃料電池排ガス管路(22)が、好ましくはカソード排ガス遮断ユニット(20)を介して、前記燃料電池(12)のカソード排ガス出口(18)に接続されており、前記第2の燃料電池排ガス管路(28)が、好ましくはアノード排ガス遮断ユニット(26)を介して、前記燃料電池(12)のアノード排ガス出口(24)に接続されている、請求項19記載の燃料電池システム。
【請求項21】
求項19または20記載の燃料電池システム(10)を運転する方法であって、該方法において、水分を凝縮するために、燃料電池(12)から放出された燃料電池排ガスを冷却し、水分を凝縮した後に、水蒸気に乏しい燃料電池排ガスを加熱する、方法。
【外国語明細書】