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特開2024-25774帯電防止透明樹脂組成物及び当該帯電防止透明樹脂組成物を成形して得られる成形体
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  • 特開-帯電防止透明樹脂組成物及び当該帯電防止透明樹脂組成物を成形して得られる成形体 図1
  • 特開-帯電防止透明樹脂組成物及び当該帯電防止透明樹脂組成物を成形して得られる成形体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025774
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】帯電防止透明樹脂組成物及び当該帯電防止透明樹脂組成物を成形して得られる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20240216BHJP
   C08L 77/12 20060101ALI20240216BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240216BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20240216BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20240216BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240216BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240216BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L77/12
C08L15/00
C08L51/04
C08F212/08
C08F279/02
B32B27/18 D
B32B27/30 B
B32B27/30 A
C09K3/16 102H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131620
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2022128366
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】森 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】姫村 和典
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AL01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA22A
4F100JG03A
4J002BC072
4J002BN131
4J002BN141
4J002CL083
4J002FD103
4J002GG02
4J002GR00
4J026AA68
4J026AC11
4J026BA05
4J026BA27
4J026DB02
4J026DB09
4J026DB15
4J026DB26
4J026FA07
4J026GA09
4J100AB02P
4J100AJ02Q
4J100AL03R
4J100CA05
4J100DA63
4J100FA47
4J100GB05
4J100GB18
4J100JA43
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】本発明は、透明性、耐衝撃性及び帯電防止性のバランスに優れた帯電防止透明脂組成物、及び当該帯電防止透明脂組成物を成形して得られる成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含む帯電防止成分(A)5~50質量%、及びスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを含むポリマー成分(B)50~95質量%を含有する、帯電防止性透明樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含む帯電防止成分(A)5~50質量%、及び
スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを含むポリマー成分(B)50~95質量%を含有する、帯電防止性透明樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリマー成分(B)はゴム状重合体粒子(C1)をさらに有する、請求項1に記載の帯電防止性透明樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリマー成分(B)全体に対して、前記スチレン系単量体単位(b1)の含有量が40~98質量%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量が1~59.9質量%であり、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の含有量が0.1~20質量%である、請求項1又は2に記載の帯電防止性透明樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリマー成分(B)は、前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)とを有するスチレン系共重合体(B1)及び前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有するスチレン系共重合体(B2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、請求項1又は2に記載の帯電防止性透明樹脂組成物。
【請求項5】
前記スチレン系共重合体(B2)が、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)をさらに有する、請求項4に記載の帯電防止性透明樹脂組成物。
【請求項6】
前記帯電防止剤(a1)と前記スチレン系共重合体(B2)との混合物の屈折率と、前記スチレン系共重合体(B1)の屈折率との差が0.03以内である、請求項4又は5に記載の帯電防止性透明樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の帯電防止性樹脂組成物を用いた成形体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の帯電防止性樹脂組成物を押出し成形して得られるシート。
【請求項9】
基材層と、前記基材層の片側若しくは両側の表面に積層された請求項1又は2に記載の帯電防止性樹脂組成物を含む帯電防止層と、を有する積層シート。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の帯電防止性樹脂組成物を用いた電子部品包装容器。
【請求項11】
請求項8に記載のシートを用いた電子部品包装容器。
【請求項12】
請求項9に記載のシートを用いた電子部品包装容器。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の帯電防止性樹脂組成物を押出し成形して得られる電子部品包装用マガジン管。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の帯電防止性樹脂組成物を用いた電子部品包装用トレイ。
【請求項15】
請求項8に記載のシートを用いたキャリアテープ。
【請求項16】
請求項9に記載のシートを用いたキャリアテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止透明樹脂組成物及び当該帯電防止透明樹脂組成物を成形して得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂に制電性を付与する技術としては、(1)帯電防止剤としてアニオン性、カチオン性、両性或いは非イオン性の界面活性剤を添加する方法、又、(2)導電充填剤としてカーボンブラックや金属酸化物を添加する方法等があり、更に、(3)帯電防止剤を塗布したり、導電インキで印刷したりして樹脂成形製品に制電性を付与する技術も挙げられる。
【0003】
しかし、(1)の方法はスチレン系樹脂に対して相溶性の乏しい帯電防止剤を物理的に練り込んで、該帯電防止剤が表面に滲み出て来ることを原理とするため、帯電防止剤の添加量が限られる上に制電性の安定に欠ける。又、(2)の方法は黒色であったり高比重であったりする導電充填材を多量に添加するため、スチレン系樹脂の透明性や軽量性が失われる。更に、(3)の技術は塗布や印刷が追加工程となること、洗浄時や使用時の表面摩擦で制電性が失われることに難がある。
【0004】
上記(1)~(3)以外のスチレン系樹脂に制電性を付与する従来技術としては、ゴム強化スチレン系樹脂とポリエーテルエステルアミドとカルボキシル基含有ビニル系重合体からなる持続制電性の樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1)。当該特許文献1は、帯電防止剤として親水性のポリエーテルエステルアミドを添加すると共に、衝撃強度を始めとする物性や成形性を保持し、層状剥離を避けるために相溶化剤としてカルボキシル基含有ビニル系重合体を添加する技術に関するものである。
【0005】
これに対し他の従来技術として、塊状-懸濁重合法を用いたジエン系ゴム重合体を含むゴム強化スチレン系樹脂と、構成成分に脂肪族ジカルボン酸を用いたポリエーテルエステルアミド系帯電防止剤とからなる帯電防止透明樹脂組成物が知られている(特許文献2)。特許文献2の技術は、ゴム強化スチレン系樹脂の連続相であるスチレン系単量体及びアクリル酸(メタクリル酸)エステル単量体からなる共重合体と、分散相であるジエン系ゴムと、ポリエーテルエステルアミド帯電防止剤とを含有し、かつそれぞれの屈折率を0.03以内とすることにより透明性を発現させ、持続性の帯電防止性や物性のバランスを達成している技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62-241945号公報
【特許文献2】特許第3812965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術では透明性に関しては考慮されていない上、制電性、物性及び成形性の両立は甚だ不十分であり、物性及び成形性を高く保つにはポリエーテルエステルアミドの量を抑える必要があるため制電性が低くなる一方、制電性を高めようとポリエステルエーテルアミドの量を増やすと物性及び成形性が低くなるという問題がある。
【0008】
例えば、家庭用電気器具の埃避け程度、表面抵抗率が1011台乃至1012台Ωの制電性であれば物性及び成形性にも優れた樹脂組成物となり得るが、電子部品運搬資材のように表面抵抗率が1010台Ω以下の制電性が必要とされる場合、特許文献1の技術は、物性及び成形性が見劣りする樹脂組成物とならざるを得ない。また透明性を有さないため、内容物を視認あるいはセンサーやカメラ等で確認することは不可能である。
【0009】
また、特許文献2の技術でも帯電防止性と物性との両立が未だ不十分であり、物性を高く保つためにはポリエーテルエステルアミド帯電防止剤の量を抑える必要があるため帯電防止性が低くなる。また一方で、帯電防止性を高めるために添加するポリエーテルエステルアミド帯電防止剤の量を増やすと、耐衝撃性などの機械的物性が低くなるという問題が生じる。そのため、電子部品包装材料等に求められる特性を満たすためには、より高い水準での帯電防止性と物性の両立が必要である。
【0010】
そこで本開示は、高い透明性、帯電防止性及び耐衝撃性のバランスに優れた帯電防止透明樹脂組成物、及び当該帯電防止透明樹脂組成物を成形して得られる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の帯電防止透明樹脂組成物は、本来は絶縁性であるスチレン系樹脂に持続的な制電性を付与した透明な樹脂組成物に関し、従来の樹脂組成物では成し得なかった、優れた制電性、様々な成形方法に対応できる帯電防止性、衝撃強度、透明性の高いバランスを兼ね備えた帯電防止透明樹脂組成物に関する。本発明の樹脂組成物は電子部品包装材料など、内容物を電気的且つ物理的に保護する役割を担う用途に好ましく用いられる。
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。
【0013】
〔1〕本実施形態は、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含有する帯電防止成分(A)5~50質量%と、スチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を含むポリマー成分(B)50~95質量%とを含有する、帯電防止性透明樹脂組成物である。
【0014】
〔2〕本実施形態において、帯電防止性透明樹脂組成物がゴム状重合体粒子(C1)をさらに有することが望ましい。
【0015】
〔3〕本実施形態において、前記ポリマー成分(B)全体に対して、前記スチレン系単量体単位(b1)の含有量が40~98質量%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量が1~59.9質量%であり、前記(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の含有量が0.1~20質量%であることが好ましい。
【0016】
〔4〕本実施形態において、前記ポリマー成分(B)は、前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)とを有する及び前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有するスチレン系共重合体(B2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することが好ましい。
【0017】
〔5〕本実施形態において、前記ポリマー成分(B)を構成する前記スチレン系共重合体(B2)が、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)をさらに有することが好ましい。
【0018】
〔6〕本実施形態において、前記帯電防止剤(A)と前記スチレン系共重合体(B2)との混合物の屈折率と、前記スチレン系共重合体(B1)の屈折率との差が0.03以内であることが好ましい。
【0019】
〔7〕本実施形態は、[1]から[6]のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物を用いた成形体である。
【0020】
〔8〕本実施形態は、[1]から[6]のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物を押出し成形して得られるシートである。
【0021】
〔9〕本実施形態は、基材層の片側もしくは両側の面に[1]から[6]のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物が積層された積層シートである。
【0022】
〔10〕本実施形態は、[1]から[6]のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物を用いた電子部品包装容器である。
【0023】
〔12〕本実施形態は、[8]または[9]のいずれかに記載のシートを用いた電子部品包装容器である。
【0024】
〔13〕本実施形態は、[1]から[6]のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物を押出し成形して得られる電子部品包装用マガジン管である。
【0025】
〔14〕本実施形態は、[1]から[6]のいずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物を用いた電子部品包装用トレイである。
【0026】
〔15〕本実施形態は、[8]または[9]のいずれかに記載のシートを用いたキャリアテープである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高い透明性、帯電防止性及び耐衝撃性のバランスに優れた帯電防止透明樹脂組成物及びそれを用いた成形体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】帯電防止性樹脂組成物に含まれる各成分の状態を示す模式図である。
図2】本実施形態の好ましい帯電防止性樹脂組成物を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0030】
[帯電防止透明脂組成物]
本開示の帯電防止性透明樹脂組成物は、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含む帯電防止成分(A)と、ポリマー成分(B)とを含有する。また、帯電防止性透明樹脂組成物は、前記帯電防止成分(A)と前記ポリマー成分(B)とを特定の量で配合、溶融、混練、造粒して構成されうる。これにより、透明性と帯電防止性と衝撃強度に優れた樹脂組成物を提供しえる。
【0031】
本実施形態の帯電防止性透明樹脂組成物において、帯電防止成分(A)はアミド結合を有する帯電防止剤(a1)を主成分として含有していればよい。より具体的には、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)が、帯電防止成分(A)の総量(100質量%)に対して50質量%以上100質量%以下含有されていることが好ましい。また、帯電防止成分(A)には、帯電防止剤(a1)を必須に含有し、必要により公知のイオン性液体、イオン性界面活性剤及びリチウムイオン系化合物(例えば、公知のリチウム塩)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これら公知のイオン性液体、イオン性界面活性剤及びリチウムイオン系化合物が帯電防止成分(A)に含有される場合、イオン性液体、イオン性界面活性剤及びリチウムイオン系化合物を帯電防止成分(A)のそれぞれの含有量は、0質量%超10質量%以下であることが好ましく、0質量%超1質量%以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態の帯電防止性透明樹脂組成物において、ポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを含んでいればよく、複数の単独重合体を混合した系でも、あるいは複数の単量体単位を有する共重合体を1種又は2種以上含む系でもよい。したがって、本実施形態のポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体であってもよく、あるいはスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)からなる群から選択される1種又は2種以上の単量体単位を有する重合体を1種又は2種以上含有してもよい。
【0033】
本実施形態において、前記ポリマー成分(B)は、前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)とを有するスチレン系共重合体(B1)及び前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有するスチレン系共重合体(B2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することが好ましい。また、ポリマー成分(B)は混合物でもよいため、例えば、ポリマー成分(B)は、前記スチレン系共重合体(B1)及び前記スチレン系共重合体(B2)を含有してもよい。
【0034】
本実施形態の帯電防止樹脂組成物は、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含有する帯電防止成分(A)(以下、(A)成分とも称する。)と、ポリマー成分(B)(以下、(B)成分とも称する。)と、を含有する。そして、前記ポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを含有する。
【0035】
帯電防止樹脂組成物全体に対して、特定の帯電防止成分(A)と、特定の単量体単位から構成されるポリマー成分(B)とを併用して配合することにより、優れた透明性と帯電防止性と衝撃強度とを両立することができる。本発明に係る帯電防止樹脂組成物を構成する各成分について以下説明する。
【0036】
「帯電防止成分(A)」
本実施形態の帯電防止透明脂組成物は、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含有する。帯電防止剤(a1)又は当該帯電防止剤(a1)を主成分とする帯電防止成分(A)は、本開示の樹脂組成物全体において優れた帯電防止性を担うものである。
【0037】
本実施形態における帯電防止成分(A)は、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含有していればよく、当該アミド結合を有する帯電防止剤(a1)以外の帯電防止剤(a2)、公知のイオン性液体又はイオン性界面活性剤を含有してもよい。本実施形態の好適な帯電防止成分(A)としては、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)が、帯電防止成分(A)の総量(100質量%)に対して50質量%以上100質量%以下含有されていることが好ましい。換言すると、アミド結合を有する帯電防止剤(a1)が、帯電防止透明脂組成物の総量(100質量%)に対して5質量%以上60質量%以下含有されていることが好ましく、7質量%以上52質量%以下含有されていることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下含有されていることがさらに好ましい。
【0038】
本実施形態の帯電防止剤(a1)は、ソフトセグメントとハードセグメントとを有するブロック共重合体(A1)であり、より詳細には、ソフトセグメントであるポリオキシアルキレンブロック(又はポリエーテルブロックとも称する)と、ハードセグメントであるアミドブロックとを有するポリエーテルアミドブロック共重合体(A1-1)(以下、単にブロック共重合体(A1-1)とも称する。)である、又は前記エーテルブロックと前記アミドブロックとエステルブロックとを有するポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)(以下、単にブロック共重合体(A1-2)とも称する。)であることが好ましい。ポリエーテルブロックにおいて環境の水分吸収、水のイオン解離、プロトンのイオン伝導が起きて、静電気を散逸し帯電圧を減衰するため、本発明の帯電防止透明樹脂組成物全体として持続的な制電性を発揮する。
【0039】
本実施形態のアミド結合を有する帯電防止剤(a1)として、例えば、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)からなる帯電防止剤(a1)は、末端に反応基を有する(ポリ)エステルブロックと、ポリオキシアルキレンとを主構造とするポリエーテルブロックと、末端に反応基を有するアミド結合を有するアミドブロックとが繰り返し交互に結合した共重合体でありうる。本実施形態の帯電防止剤(a1)は、合成物を使用する、あるいは一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。
【0040】
特に、帯電防止剤(a1)がアミド結合を有することにより、帯電防止透明樹脂組成物全体の耐衝撃性及び透明性が向上する。
【0041】
本実施形態において、ブロック共重合体(A1)を1種配合して帯電防止剤(a1)としても、あるいは複数種のブロック共重合体(A1)を配合して帯電防止剤(a1)とすることもできる。この場合、帯電防止剤(a1)は、アミド結合を有するブロック共重合体(A1)が少なくとも1種含んでいることが好ましい。
【0042】
本実施形態の帯電防止剤(a1)は、分子内に、アミド結合と、ポリエーテルブロック骨格と含有し、かつ吸水率10~150質量%を有することが好ましい。また、前記ポリエーテルブロック骨格の含有量は、帯電防止剤(a1)分子全体に対して10~90質量%であることが好ましい。
【0043】
本実施形態の帯電防止剤(a1)は、ソフトセグメントであるポリエーテルブロックと、ハードセグメントであるアミドブロックとを有するブロック共重合体(A1)であることが好ましい。当該ブロック共重合体(A1)は、ポリエーテルアミドブロック共重合体(A1-1)及びポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の好ましいブロック共重合体(A1)としては、下記(I)で表されるソフトセグメントと、下記(III)で表されるハードセグメントとを有し、必要により下記(II)で表される構造単位をさらに有する。
【0045】
【化1】
(上記一般式(I)中、Mはそれぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキレン基を表し、mは重合度を表す。
【0046】
(上記一般式(II)中、Mは二価の有機基を表し、L及びLはそれぞれ独立して、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-又は-NR-を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)を表し、lは重合度を表す。
【0047】
(上記一般式(III)中、Mは二価の有機基を表し、L及びLはそれぞれ独立して、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-又は-NR-を表し、nは重合度を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)を表す。)
上記一般式(I)中、当該アルキレン基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0048】
上記一般式(I)中、重合度mは1以上400以下の整数を表し、5以上380以下の整数であることが好ましく、10以上290以下の整数であることがより好ましい。
【0049】
上記一般式(II)中、当該二価の有機基としては、芳香族環を有する基から水素原子を2つ除いた二価の芳香族基又は二価の脂肪族炭化水素基等が挙げられ、二価の芳香族基であることが好ましい。
【0050】
前記二価の芳香族基は、芳香族環を有し、かつ3~25の炭素原子数を有することが好ましい。また、前記芳香族基は、複素芳香族を含み、芳香族基中の-CH-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。さらに、前記芳香族環としては、単環芳香族環、縮環芳香族環及び環集合芳香族環を含む。前記単環芳香族環は、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮環芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香族環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
【0051】
上記一般式(II)中の好ましいMとしては、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数2~18のアルケニレン基、炭素原子数1~18のアルコキシレン基、炭素原子数6~20のアリーレン基又は炭素原子数7~21のアラルキレン基が挙げられる。
【0052】
前記アルキレン基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、プロピリデン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
【0053】
前記アルケニレン基は、1-プロピニレン基、2-プロピニレン基、イソプロペニレン基、2-ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ビニレン基等が挙げられる。
【0054】
前記アルコキシレン基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基及びノニルオキシ基からなる群から選択されるアルコキシ基から任意の水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。
【0055】
前記アリーレン基は、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基及びインダニル基からなる群から選択されるアリール基から任意の水素原子を1つ取り除いた基が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
【0056】
前記アラルキレン基は、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビフェニル基及びナフチルメチル基からなる群から選択されるアラルキル基から任意の水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。
【0057】
上記一般式(II)中、重合度lは1以上100以下の整数を表し、1以上90以下の整数であることが好ましく、1以上80以下の整数であることがより好ましい。
【0058】
上記一般式(II)中の特に好ましいMとしては、炭素原子数6~12のアリーレン基でありうる。
【0059】
上記一般式(II)中のLは、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NR-又は-NR-C(=O)-であることが好ましい。
【0060】
上記一般式(III)中のLは、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NR-又は-NR-C(=O)-であることが好ましい。
【0061】
なお、上記一般式(II)中、L及びLは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
【0062】
上記一般式(III)中、当該二価の有機基としては、芳香族環を有する基から水素原子を2つ除いた二価の芳香族基又は二価の脂肪族炭化水素基等が挙げられ、前記二価の芳香族基及び二価の脂肪族炭化水素基の例示は、上記の通りである。
【0063】
上記一般式(III)中の好ましいMとしては、炭素原子数1~25のアルキレン基、炭素原子数2~18のアルケニレン基、炭素原子数1~18のアルコキシレン基、炭素原子数6~20のアリーレン基又は炭素原子数7~21のアラルキレン基が挙げられ、炭素原子数3~25のアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数4~20の直鎖状のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素原子数5~19の直鎖状のアルキレン基であることがより好ましく。
【0064】
上記一般式(III)中のLは、-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-又は-NH-であることが好ましい。
【0065】
上記一般式(III)中のLは、-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-又は-NH-であることが好ましい。
【0066】
なお、上記一般式(III)中、L及びLは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
【0067】
上記一般式(III)中、重合度nは1以上200以下の整数を表し、7以上160以下の整数であることが好ましく、10以上140以下の整数であることがより好ましい。
【0068】
本実施形態のブロック共重合体(A1)は、ハードセグメントとしてのアミドブロックと、ソフトセグメントとしての官能基を有する末端を備えたポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合体でありうる。換言すると、本実施形態のブロック共重合体(A1)は、少なくとも一方の末端に第1官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボン酸基)を有するアミドブロック(=(ポリ)アミド重合体)と、前記第1の官能基と重縮合可能な第2官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボン酸基)を少なくとも一方の末端に有するポリオキシアルキレンブロック(=ポリエーテル重合体)とを反応原料とする共重縮合体である。また、本実施形態のブロック共重合体(A1)の好ましい態様としては、少なくとも一方の末端に第1官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボン酸基)を有するアミドブロック(=(ポリ)アミド重合体)と、前記第1の官能基と重縮合可能な第2官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボン酸基)を少なくとも一方の末端に有するポリオキシアルキレンブロック(=ポリエーテル重合体)と、少なくとも一方の末端に第3官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボン酸基)を有するエステルブロック(=(ポリ)エステル重合体)と、を反応原料とする共重縮合体である。
【0069】
本実施形態のブロック共重合体(A1)は、例えば、ジアミン鎖末端を含むアミドブロック(=(ポリ)アミド重合体)とカルボン酸基末端を備えたポリオキシアルキレンブロック(=ポリエーテル重合体)とを有する共重縮合体(1)、ジカルボン酸末端を備えたアミドブロック(=(ポリ)アミド重合体)と、ポリエーテルジオールとして知られる脂肪族ジヒドロキシル化α-ωポリオキシアルキレンのシアノエチル化及び水素化によって得られるジアミン末端を備えたポリオキシアルキレンブロック(=ポリエーテル重合体)とを有する共重縮合体(2)、又はジカルボキシル基末端を備えたアミドブロック(=(ポリ)アミド重合体)とポリエーテルジオール(=ポリエーテル重合体)との共重縮合体(3)であることが好ましい。また前記共重縮合体(3)は、ポリエーテルエステルアミド共重合体(A1-2)である。
【0070】
前記ジカルボン酸末端を備えたアミドブロック(例えば、ポリアミド12又はポリアミド6)の反応原料は、例えば、ジカルボン酸化合物の存在下におけるα,ω-アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物或いはジカルボン酸化合物とジアミン化合物でありうる。
【0071】
前記α、ω-アミノカルボン酸化合物としては、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸が挙げられる。前記ラクタム化合物としては、カプロラクタム及びラウリルラクタムが挙げられる。前記ジカルボン酸化合物としては、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、デカン二酸及びドデカン二酸が挙げられる。前記ジアミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、1-アミノエチルピペラジン、ビスアミノ-プロピルピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ジアミンピロール類、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPDM)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)及びビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)が挙げられる。
【0072】
本実施形態のブロック共重合体(A1)の別の態様としては、ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物及びポリオキシアルキレン基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1つの化合物(=ポリエーテルブロック)と、1分子中に2以上のカルボキシル基を有するアミドブロックとを重縮合することにより得られる重縮合体であることが好ましく、ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物及びポリオキシアルキレン基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1つの化合物(=ポリエーテルブロック)と、1分子中に2以上のカルボキシル基を有するアミドブロックと、エステル基を有するジオール化合物(=エステルブロック)とを有する重縮合体であることがより好ましい。
【0073】
本実施形態のブロック共重合体(A1)のポリオキシアルキレンブロック(=ポリエーテル重合体)は、ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物(両端に水酸基を有するポリエーテル化合物)又はオキシアルキレン基を有するジアミン化合物(両端にアミノ基を有するポリエーテル化合物)から構成されることが好ましい。換言すると、本実施形態のブロック共重合体(A1)のポリエーテルブロック(=ポリエーテル重合体)は、ジオール化合物又はオキシアルキレン基を有するジアミン化合物を反応原料とする重合体である。
【0074】
前記ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物としては、グリコール、2価フェノ-ル、アミン化合物又はジカルボン酸化合物に対して、アルキレンオキサイドが付加した化合物でありうる。換言すると、前記ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物は、グリコール、2価フェノ-ル、アミン化合物又はジカルボン酸化合物と、アルキレンオキサイドとを反応原料とする化合物でありうる。なお、前記付加は、公知の方法で行うことができる。例えば、無触媒又は触媒(アルカリ触媒、アミン触媒又は酸性触媒)の存在下において、(常圧又は加圧下に1段階又は多段階で行なわれる。
【0075】
前記ポリオキシアルキレン基を有するジアミン化合物としては、前記ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物の末端水酸基をアミノ基に変性した化合物を使用できる。前記ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物の末端水酸基をアミノ基に変性する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、前記ポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物の末端水酸基をシアノアルキル化して得られる末端シアノアルキル基を還元しアミノアルキル化する方法等が挙げられる。
【0076】
本実施形態における好適なポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物は、脂肪族グリコール、2価フェノール及び脂肪族ジカルボン酸からなる群から選択される1種に対して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(1,2-,2,3-又は1,3-)、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、α-オレフィンオキサイド及びエピクロルヒドリンからなる群から選択される1種を付加した付加体であることが好ましい。換言すると、本実施形態における好適なポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物は、脂肪族グリコール、2価フェノール及び脂肪族ジカルボン酸からなる群から選択される1種と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(1,2-,2,3-又は1,3-)、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、α-オレフィンオキサイド及びエピクロルヒドリンからなる群から選択される1種とを反応原料とする付加体である。
【0077】
前記脂肪族グリコール、2価フェノール及び脂肪族ジカルボン酸の好ましい形態としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS及びアジピン酸でありうる。
【0078】
本実施形態の1分子中に2以上のカルボキシル基を有するアミドブロックとしては、上述のジカルボキシル基末端を備えたアミドブロック(=(ポリ)アミド重合体)が挙げられる。また、その他の前記1分子中に2以上のカルボキシル基を有するアミドブロックとしては、両末端にカルボキシル基を有する、ポリアミド及びポリアミドイミドからなる群から選択される1以上のジカルボン酸誘導体であることが好ましい。
【0079】
前記ジカルボン酸誘導体は、ジカルボン酸化合物を調整剤として使用し、アミド結合形成単量体を開環重合又はアミド結合形成単量体と前記ジカルボン酸化合物との重縮合することによって調製できる。
【0080】
前記ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、β-メチルグルタル酸、エチルコハク酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、トリデカンジ酸、テトラデカンジ酸、ヘキサデカンジ酸、オクタデカンジ酸及びイコサンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸;
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、ホモフタル酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウム及び3-スルホイソフタル酸カリウム等の芳香族ジカルボン酸;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジ酢酸、1,3-シクロヘキサンジ酢酸、1,2-シクロヘキサンジ酢酸及びジシクロヘキシル-4,4-ジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0081】
前記アミド結合形成単量体は、ラクタム化合物、アミノカルボン酸化合物及びジアミン化合物が挙げられる。ラクタム化合物としては、例えば、γ-ブチロラクタム、γ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、γ-ピメロラクタム、γ-カプリロラクタム、γ-デカノラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、ウンデカノラクタム、エイコサノラクタム及び5-フェニル-2-ピペリドン等が挙げられる。
【0082】
前記アミノカルボン酸としては、例えば、グリシン、アラニン、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペルゴン酸、ω-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸及び20-アミノエイコサン酸等が挙げられる。
【0083】
前記ジアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、エイコサンジアミン、キシレンジアミン及びシクロヘキシルジアミン等が挙げられる。
【0084】
本実施形態のブロック共重合体(A1)は、上記のポリオキシアルキレン基を有するジオール化合物及びポリオキシアルキレン基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1つの化合物(=ポリエーテルブロック)と、上記の1分子中に2以上のカルボキシル基を有するアミドブロックと、1分子中に2以上のカルボキシル基を有するエステルブロックとを有する、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)であってもよい。
【0085】
本実施形態の1分子中に2以上のカルボキシル基を有するエステルブロックは、エステル基を有するジオール化合物でありうる。そして、エステル基を有するジオール化合物は、前記ジカルボン酸化合物を調整剤として使用し、後述のエステルブロック形成単量体を公知の方法により重縮合する、あるいはエステル交換反応して得られる構造でありうる。
【0086】
前記エステルブロック形成単量体は、前記ジカルボン酸化合物及びジカルボン酸エステル化合物から選択される1種以上と、アルコール化合物及びフェノール化合物から選択される1種以上との組み合わせ;前記ラクトン化合物;ヒドロキシカルボン酸化合物;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0087】
前記ジカルボン酸エステル化合物は、アジピン酸、セバシン酸、イコサン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウム、炭酸ジメチル、炭酸ジフェニル、アジピン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、3-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム及び3-スルホイソフタル酸ジエチルナトリウムからなる群から選択される1種以上のカルボン酸のエステル体(メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル又はフェニルエステル)であることが好ましい。
【0088】
前記アルコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。また、前記フェノール化合物としては、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールSが挙げられる。
【0089】
前記ヒドロキシカルボン酸化合物としては、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ω-ヒドロキシカプロン酸、ω-ヒドロキシエナント酸、ω-ヒドロキシカプリル酸、ω-ヒドロキシペルゴン酸、ω-ヒドロキシカプリン酸、11-ヒドロキシウンデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸又は20-ヒドロキシエイコサン酸等が挙げられる。
【0090】
本明細書における「吸水率」は、ASTM-D570に準拠した下記の方法により得られる値である。当該「吸水率」の測定方法は、予め50℃で24時間乾燥させた試験片(100×100×2mm)の質量(W1)と、前記試験片を23℃のイオン交換水に24時間浸漬した後、試験片についた水を布でよく拭いた後の質量(W2)を測定し、下記の式から求められる。
【0091】
吸水率(%)=[(W2)-(W1)]×100/(W1)
上記試験片は、通常射出成形機[PS40E5ASE、日精樹脂工業(株)製]を用い、所定のシリンダー温度180℃及び金型温度50℃で作成する。
【0092】
本実施形態の帯電防止剤(a1)の吸水率は好ましくは10~150質量%、より好ましくは20~100質量%、さらに好ましくは30~90質量%である。
【0093】
本実施形態において、アミドブロックの数平均分子量(Mn)は、300~15000であることが好ましい。また、ポリエーテルブロックの数平均分子量(Mn)は、100~6000であることが好ましい。エステルブロックの数平均分子量(Mn)は、150~15000であることが好ましい。
【0094】
本実施形態におけるブロック共重合体(A1)中のポリエーテルブロックの含有量は、ブロック共重合体(A1)の総量に対して、9質量%~50質量%である。
【0095】
本実施形態におけるブロック共重合体(A1)中のアミドブロックの含有量は、ブロック共重合体(A1)の総量に対して、90質量%~30質量%である。
【0096】
本実施形態におけるブロック共重合体(A1)中のエステルブロックの含有量は、ブロック共重合体(A1)の総量に対して、1質量%~50質量%である。
【0097】
「ブロック共重合体(A1)の製造方法」
本実施形態のブロック共重合体(A1)の製造方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0098】
カルボン酸基を2以上含有するカルボン酸化合物と、アミド結合を形成するモノマーと、必要によりエステル結合を形成するモノマーとを反応させて、末端部にカルボキシル基を有するアミド化合物を調製する。
【0099】
前記アミド化合物にオキシアルキレン基を有するジオール化合物及び/又はジアミン化合物を加えて、高温(200~245℃)、減圧下(1mmHg以下)で重合反応を行い、ポリエーテルアミドブロック共重合体(A1)を合成する。
【0100】
本実施形態の帯電防止剤は、ブロック共重合体(A1)と、必要により、例えばイオン性液体又はイオン性界面活性剤とを混練して製造することができる。
【0101】
上記製法における重合反応のうち、ポリエステル化反応においては、通常エステル化触媒が使用される。
【0102】
エステル化触媒としては、プロトン酸(リン酸など)、金属[アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)、遷移金属(ニッケル、鉄、コバルトなど)、IIB金属(亜鉛など)、IVB金属(チタン、ジルコニウムなど)及びVB金属(バナジウムなど)]の有機酸(酢酸など)塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、水酸化物及びアルコキシド等が挙げられる。
【0103】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物の表面抵抗率(Ω/sq.)は、1×10~1×1014(Ω/sq.)であることが好ましく、より好ましくは1×10~1×1013(Ω/sq.)、さらに好ましくは1×10~1×1012(Ω/sq.)である。
【0104】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物の体積抵抗率(Ω・cm)は、1×10~1×1014(Ω・cm)であることが好ましく、より好ましくは1×10~1×1013(Ω・cm)、さらに好ましくは1×10~1×1012(Ω・cm)である。
【0105】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物の表面抵抗率(Ω/sq.)及び体積抵抗率(Ω・cm)の測定方法は、実施例の欄に記載の方法により、試験片を作製して測定した。
【0106】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物の屈折率(27℃)は、1.510超であることが好ましく、1.510超1.580以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1.520以上1.570以下である。
【0107】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物の屈折率が1.510以下であると、帯電防止透明脂組成物中において、帯電防止剤(a1)及び帯電防止成分(A)がポリマー成分(B)に対して均一に分散する傾向を示す。
【0108】
特に、帯電防止成分(A)としてのポリエーテルアミドブロック共重合体(A1-1)又はポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)と、ポリマー成分(B)としてのスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する三元共重合体と、をそれぞれ当量混合した帯電防止透明脂組成物においては、前記三元共重合体と前記帯電防止成分(A)とが互いに相溶した相を形成することが確認された。これにより、両者が互いに相溶した状態であるため、両者の屈折率の差が大きくても、帯電防止透明脂組成物全体として極めて高い透明性を維持することができる。
一方、ポリマー成分(B)として、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)との二元共重合体及びスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)との二元共重合体を混合した系を前記三元共重合体の代わりに使用した場合、ポリマー成分(B)としては前記三元共重合体と同様の各単量体単位を含むものの、帯電防止成分(A)としてのポリエーテルアミドブロック共重合体(A1-1)又はポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)を混合しても互いに相溶した状態に至らなかった。その結果、2種の二元共重合体と前記帯電防止成分(A)とを混合した系は、前記三元共重合体と前記帯電防止成分(A)との系に比べると、帯電防止透明脂組成物全体として透明性が劣る結果となった。
【0109】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物の屈折率の測定方法は、実施例の欄に記載の方法により、試験片を作製して測定した。
【0110】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、帯電防止剤(a1)の含有量の上限は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、50.00質量%以下、40.00質量%以下が好ましい。一方、帯電防止剤(a1)の含有量の下限は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、5質量%以上、10質量%以上、13質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上が好ましい。前記帯電防止剤(a1)の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
【0111】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、帯電防止剤(a1)の含有量は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8質量%以上40質量%以下であり、さらにより好ましくは10質量%以上30質量%以下である。当該含有量を5質量%以上とすることにより、組成物の高い透明性を維持したまま帯電防止性と耐衝撃性を向上することができる。また、当該含有量を50質量%以下とすることにより、透明性をより向上させることができる。
【0112】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、帯電防止剤(a2)の含有量の上限は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下又は1質量%以下が好ましい。一方、帯電防止剤(a2)の含有量の下限は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、0質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上が好ましい。前記帯電防止剤(a2)の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
【0113】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、帯電防止剤(a2)の含有量は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、0質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下であり、さらにより好ましくは0.2質量%以上2質量%以下である。当該含有量を0.2質量%以上とすることにより、組成物の高い透明性を維持したまま帯電防止性と耐衝撃性を向上することができる。また、当該含有量を2質量%以下とすることにより、透明性をより向上させることができる。
【0114】
<イオン性液体>
本実施形態の帯電防止成分(A)は、イオン性液体を含有してもよい。当該イオン性液体としては特に制限されることは無く、例えば、以下のイミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン又はその他のカチオンを有するイオン性液体が挙げられる。
【0115】
当該イオン性液体は、具体的には、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(HMIm(TFSI))、1-エチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EPIm(TFSI))、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMIm(TFSI))、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(MMIm(TFSI))、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm(TFSI))、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(MPIm(TFSI))等のイミダゾリウムカチオン含有イオン性液体;1-エチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMPy(TFSI))、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMPy(TFSI))、及び1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート等のピロリジニウムカチオン含有イオン性液体;ブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等のアンモニウムカチオン含有イオン性液体;トリエチルペンチルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等のその他のイオン性液体が挙げられる。
【0116】
<イオン性界面活性剤>
本実施形態の帯電防止成分(A)は、イオン性界面活性剤を含有してもよい。当該イオン性界面活性剤としては特に制限されることは無く、陽イオン性界面活性剤又は陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0117】
当該イオン性界面活性剤は、具体的には、第四級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム及び変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム等)、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩及びハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩)等の陽イオン性界面活性剤;脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩及び高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;が挙げられる。
【0118】
「ポリマー成分(B)」
本実施形態のポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを含有する。
上記した通り、本実施形態のポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを組成物中のポリマー成分(B)として存在していればよい。したがってポリマー成分(B)は、単独重合体を複数種混合した系でもよく、あるいは複数種の単量体単位を有する共重合体を1種又は2種以上含む系でもよく、またあるいは1種又は2種以上の単独重合体と、複数種の単量体単位を有する共重合体1種又は2種以上とを混合した成分でもよい。
【0119】
したがって、本実施形態のポリマー成分(B)としては、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する3元以上の共重合体であってもよく、あるいはスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)からなる群から選択される1種又は2種以上の単量体単位を有する重合体を1種又は2種以上含有してもよい。
【0120】
本実施形態の帯電防止性透明樹脂組成物において、ポリマー成分(B)は帯電防止性透明組成物全体に対して、50質量%以上95質量%以下を含有し、好ましくは55質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上87質量%以下であり、さらにより好ましくは65質量%以上85質量%以下である。
組成物の高い透明性を維持したまま帯電防止性及び耐衝撃性を向上することを重視する場合、ポリマー成分(B)の含有量を帯電防止性透明組成物全体に対して60質量%以下とすることが好ましい。また、透明性をより向上させることを重視する場合、ポリマー成分(B)の含有量を帯電防止性透明組成物全体に対して85質量%以上とすることが好ましい。
【0121】
本実施形態の帯電防止性透明樹脂組成物において、ポリマー成分(B)以外に後述するゴム状重合体粒子(C1)をさらに有してもよい。
【0122】
本実施形態のポリマー成分(B)において、スチレン系単量体単位(b1)40~98質量%と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)1~59.9質量%と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)0.1~20質量%であることが好ましい。この場合、上述した通り、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とが、前記含有量の範囲内において組成物中のポリマー成分(B)として存在していればよい。
【0123】
以下、ポリマー成分(B)の構成成分である、スチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)及びポリマー成分(B)の好ましい形態について説明する。
【0124】
<スチレン系単量体単位(b1)>
本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成しうるスチレン系単量体(b1)としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。特に工業的観点からスチレンが好ましい。スチレン系単量体としては、これらを単独又は混合して使用できる。
【0125】
尚、本明細書における「スチレン系単量体単位(b1)」とは、スチレン系単量体(b1)由来の繰り返し単位を意味し、より詳細には、スチレン系単量体(b1)が重合反応又は架橋反応により、当該単量体(b1)中の不飽和二重結合が単結合になった構造単位をいう。尚、他の「単量体単位」の意味も上記と同様の意味である。
【0126】
本実施形態において、ポリマー成分(B)全体におけるスチレン系単量体単位(b1)の含有量は、帯電防止透明脂組成物全体の高い透明性を維持したまま帯電防止性と耐衝撃性を向上する観点から、例えば、ポリマー成分(B)全体に対して、好ましくは40~98質量%であり、より好ましくは30~90質量%であり、更により好ましくは40~80質量%である。
【0127】
本実施形態において、ポリマー成分(B)又は帯電防止透明脂組成物中のスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)及びその他の単量体単位の含有量は、スチレン系共重合体を核磁気共鳴測定装置(H-NMR)で測定したときのスペクトルの積分比から求めることができる。
【0128】
<(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)>
本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)は、炭素原子数1~6のアルキル鎖をエステル置換基として有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)が好ましい。この際、当該炭素原子数1~6のアルキル鎖は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を含む。そして、好ましい炭素原子数1~6のアルキル鎖は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、s-ブチル基又はイソブチル基などが挙げられる。
【0129】
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)としては、例えば、CH=C(R)-COO-Rで表され、ここで、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはエステル置換基であり、炭素原子数1~6のアルキル鎖であることが好ましい。
【0130】
本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル等が挙げられる。これらの中でも工業的の観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、及び(メタ)アクリル酸t-ブチルであることが好ましい。
【0131】
本実施形態において、ポリマー成分(B)全体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量は、帯電防止透明脂組成物全体の高い透明性を維持したまま帯電防止性と耐衝撃性を向上する観点から、例えば、ポリマー成分(B)全体に対して、好ましくは1~59.9質量%であり、より好ましくは5~53質量%であり、更により好ましくは15~43質量%である。上記含有量が1質量%未満では帯電防止透明樹脂組成物の透明性が低下する。また上記含有量が90質量%を超える場合は耐衝撃性が低下する。
【0132】
<(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)>
本実施形態において、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)は、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、メタクリル酸又はアクリル酸が好ましい。
【0133】
本実施形態において、ポリマー成分(B)全体における(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の含有量は、帯電防止透明脂組成物全体の高い透明性を維持したまま帯電防止性と耐衝撃性とを向上する観点から、例えば、ポリマー成分(B)全体に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは3~14質量%、更に好ましくは6~12質量%である。上記含有量が0.1質量%未満では帯電防止透明樹脂組成物の透明性向上の効果が低い傾向がある。また上記含有量が20質量%を超える場合は樹脂中のゲル化物が増加する傾向、並びに得られる帯電防止透明樹脂組成物の流動性及び機械的物性が低くなる傾向がある。
【0134】
また、ポリマー成分(B)が、スチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を有する共重合体を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)との分子間相互作用によって(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の脱水反応を抑制するために、及び、樹脂の機械的強度を向上させる効果も奏する。更には、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。さらに、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)とが隣り合わせで結合した場合、高温、高真空の脱揮装置を用いると、条件によっては脱アルコール反応が起こり、六員環酸無水物が形成される場合がある。本実施形態のポリマー成分(B)は、この六員環酸無水物を含んでいてもよいが、流動性を低下させることから、生成される六員環酸無水物はより少ない方が好ましい。
【0135】
本実施形態におけるポリマー成分(B)を構成する重合体の具体例としては、例えば、スチレン-アクリル酸イソプロピル共重合体、スチレン-アクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸イソブチル共重合体、若しくはスチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体等のスチレン-アクリル系二元共重合体;スチレン-アクリル酸-アクリル酸n-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸t-ブチル共重合体、若しくはスチレン-アクリル酸-アクリル酸イソブチル共重合体等のスチレン-アクリル系三元共重合体;スチレン-メタクリル酸イソプロピル共重合体、スチレン-メタクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸イソブチル共重合体、若しくはスチレン-メタクリル酸n-ブチル共重合体等のスチレン-メタクリル系二元共重合体;が好ましく、スチレン-アクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸イソブチル共重合体又はスチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体で表される、スチレン-アクリル酸ブチル二元共重合体、スチレン―(メタ)アクリル酸メチル―アクリル酸ブチル三元共重合体、もしくはスチレン―(メタ)アクリル酸メチル―アクリル酸ブチル三元共重合体がより好ましい。
【0136】
本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成する重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよいが、分散性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0137】
また、本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成する重合体は、後述のゴム状重合体粒子(C1)の表面にグラフトされていてもよい。
【0138】
本実施形態におけるポリマー成分(B)を構成する重合体は、スチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)からなる群から選択される1種又は2種以上の単量体単位を含有すればよい。したがって、ポリマー成分(B)を構成する重合体は、単独重合体又は二元以上の共重合体であれば特に限定されることはなく、二元~四元共重合体を含有することが好ましく、二元~三元共重合体を含有することがより好ましく、三元共重合体を含有することが特に好ましい。
【0139】
すなわち、本実施形態におけるポリマー成分(B)を構成する重合体は、前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)とを有するスチレン系共重合体(B1)及び前記スチレン系単量体単位(b1)と前記(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有するスチレン系共重合体(B2)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することが好ましい。また前記スチレン系共重合体(B2)は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)を含んでもよい。本実施形態におけるポリマー成分(B)を構成する好適な重合体としては、スチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を含有する三元共重合体である。これにより、流動性、耐衝撃性、耐折性及び透明性のバランスにより優れた帯電防止透明脂組成物を提供できる。また、帯電防止透明脂組成物を原料とするシート外観も向上しうる。なお、スチレン系共重合体(B1)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を含まない。
【0140】
<ポリマー成分(B)の好ましい形態>
上記した通り、本実施形態のポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを組成物中のポリマー成分(B)として存在していればよく、単独重合体を複数種混合した系でもよく、あるいは複数種の単量体単位を有する共重合体を1種又は2種以上含む系でもよく、またあるいは1種又は2種以上の単独重合体と、複数種の単量体単位を有する共重合体1種又は2種以上とを混合した成分でもよい。
【0141】
なかでも、本実施形態の好適なポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体(例えば、スチレン系共重合体(B2))を、ポリマー成分(B)全体に対して2~100質量%含有することが好ましい。換言すると、本実施形態の帯電防止透明脂組成物は、帯電防止成分(A)及びスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体(例えば、スチレン系共重合体(B2))を含有することが好ましい。これにより、帯電防止成分(A)及びポリマー成分(B)の相溶性が著しく高いため、均質に両者が相溶し、より高い透明性及び優れた耐衝撃性を示し、かつ帯電防止性に優れた帯電防止透明樹脂組成物が得られる。以下、図1~2を用いて、帯電防止透明脂組成物にスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体及びアミド結合を有する帯電防止剤(a1)を含有する系について説明する。
【0142】
図1(a)は、一般的な帯電防止剤2及びスチレン系単量体単位(b1)を含むスチレン樹脂3(例えばポリスチレンのホモポリマー)を含有する帯電防止透明脂組成物1における各成分の分散状態を示す模式図である。図1(b)は、一般的な帯電防止剤2とスチレン系単量体単位(b1)を含むスチレン樹脂3(例えばポリスチレンのホモポリマー)とスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体4(例えば、スチレン系共重合体(B2))とを含有する帯電防止透明脂組成物1における各成分の分散状態を示す模式図である。図2は、スチレン系単量体単位(b1)を含むスチレン樹脂3(例えばポリスチレンのホモポリマー)と、共重合体4と、帯電防止剤2としてのアミド結合を有する帯電防止剤(a1)とを含有する帯電防止透明脂組成物1における各成分の分散状態を示す模式図であり、図2の下段図は、図2の上段図の四角枠を拡大した模式図である。
【0143】
図1に示す通り、帯電防止透明脂組成物1中、スチレン樹脂3のポリマーマトリックス相に対して帯電防止剤2のドメイン相が分散している。図1に示す帯電防止透明脂組成物1の状態に、いわゆる相溶化剤としてスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体4を添加すると、共重合体4とスチレン樹脂3と帯電防止剤2との互いの相溶性から、図1(b)のように、共重合体4が帯電防止剤2のドメイン相とスチレン樹脂3のポリマーマトリックス相との界面近傍に偏在する傾向を示す。次に、帯電防止剤2としてアミド結合を有する帯電防止剤(a1)を用いると、図2に示す通り、帯電防止剤2と共重合体4との相溶性が極めて良好のため、帯電防止剤2と共重合体4とが互いに相溶したドメイン5を形成することが確認された。これにより、帯電防止透明脂組成物1全体の透明性及び機械的強度が極めて向上したと考えられる。屈折率について一例を挙げて説明すると、スチレン樹脂3の屈折率が例えば1.54であり、帯電防止剤2の屈折率が例えば1.50であり、共重合体4の屈折率が例えば1.57であった場合、ドメイン5の屈折率は帯電防止剤2と共重合体4の屈折率との相加平均である約1.535程度になることが確認された。
【0144】
したがって、本実施形態の好適なポリマー成分(B)は、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体を、ポリマー成分(B)全体に対して2~100質量%含有することが好ましく、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体(B2)と、スチレン系単量体単位(b1)を含有する重合体とを含有し、かつポリマー成分(B)全体に対して前記共重合体(B2)の含有量が2~100質量%、重合体の含有量が0~98質量%であることがより好ましい。
【0145】
本実施形態のポリマー成分(B)が上記の組成であると、帯電防止剤との相溶性が向上し、より高い透明性及び優れた耐衝撃性を示し、かつ帯電防止性に優れた帯電防止透明樹脂組成物が得られる。
【0146】
<スチレン系共重合体(B1)>
本実施形態のポリマー成分(B)は、スチレン系共重合体(B1)を含有することが好ましい。当該スチレン系共重合体(B1)としては、スチレン系単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)を有する共重合体であることが好ましい。前記スチレン系共重合体(B1)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を含有しない。また、前記スチレン系共重合体(B1)は、二元~四元共重合体であることが好ましい。
【0147】
スチレン系単量体単位(b1)の含有量は、スチレン系共重合体(B1)の全体(100質量%)に対して45~80質量%であることが好ましい。スチレン系単量体単位(b1)の含有量の下限は、スチレン系共重合体(B1)の全体(100質量%)に対して、47質量%以上、48質量%以上、49質量%以上、50質量%以上、51質量%以上及び52質量%以上の順で好ましい。スチレン系単量体単位(b1)の含有量の上限は、スチレン系共重合体(B1)の全体(100質量%)に対して、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下の順で好ましい。
【0148】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量は、スチレン系共重合体(B1)の全体(100質量%)に対して25~60質量%であることが好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量の下限は、スチレン系共重合体(B1)の全体(100質量%)に対して、41質量%以上、42質量%以上、43質量%以上、44質量%以上、45質量%以上及び46質量%以上の順で好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量の上限は、スチレン系共重合体(B1)の全体(100質量%)に対して、55質量%以下、54質量%以下、53質量%以下、52質量%以下、51質量%以下及び50質量%以下の順で好ましい。
【0149】
本実施形態の帯電防止透明樹脂組成物がスチレン系共重合体(B1)を含有する場合、前記スチレン系共重合体(B1)の含有量の上限は、帯電防止透明樹脂組成物の全体(100質量%)に対して、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下及び70質量%以下の順で好ましい。前記スチレン系共重合体(B1)の含有量の下限は、帯電防止透明樹脂組成物の全体(100質量%)に対して、50質量%以上、52質量%以上、54質量%以上、56質量%以上、58質量%以上及び60質量%以上の順で好ましい。
【0150】
本実施形態のポリマー成分(B)がスチレン系共重合体(B1)を含有する場合、前記スチレン系共重合体(B1)の含有量の上限は、ポリマー成分(B)の全体(100質量%)に対して、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下及び70質量%以下の順で好ましい。前記スチレン系共重合体(B1)の含有量の下限は、ポリマー成分(B)の全体(100質量%)に対して、45質量%以上、47質量%以上、49質量%以上、51質量%以上、53質量%以上及び55質量%以上の順で好ましい。
【0151】
上記スチレン系共重合体(B1)の屈折率は、1.505~1.650の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.520~1.575の範囲、さらに好ましくは1.535~1.550の範囲である。
上記スチレン系共重合体(B1)の屈折率は、アッベ屈折計を用いて、25℃で測定した。
【0152】
<スチレン系共重合体(B2)>
本実施形態のポリマー成分(B)は、スチレン系共重合体(B2)を含有することが好ましい。当該スチレン系共重合体(B2)としては、スチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する共重合体であることが好ましい。前記スチレン系共重合体(B2)は三元共重合体であることが好ましい。
【0153】
スチレン系単量体単位(b1)の含有量は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して70~99.5質量%であることが好ましい。スチレン系単量体単位(b1)の含有量の下限は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して、72質量%以上、74質量%以上、76質量%以上、78質量%以上、80質量%以上及び82質量%以上の順で好ましい。スチレン系単量体単位(b1)の含有量の上限は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、91質量%以下及び89質量%以下の順で好ましい。
【0154】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して3~50質量%であることが好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量の下限は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上、5質量%以上、5.5質量%以上及び5.7質量%以上の順で好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)の含有量の上限は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下及び20質量%以下の順で好ましい。
【0155】
(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の含有量は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して0.5~20質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の含有量の下限は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、9質量%以上及び11質量%以上の順で好ましい。(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の含有量の上限は、スチレン系共重合体(B2)の全体(100質量%)に対して、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下の順で好ましい。
【0156】
本実施形態の帯電防止透明樹脂組成物がスチレン系共重合体(B2)を含有する場合、前記スチレン系共重合体(B2)の含有量の上限は、帯電防止透明樹脂組成物の全体(100質量%)に対して、25質量%以下、23質量%以下、21質量%以下、19質量%以下、17質量%以下及び15質量%以下の順で好ましい。前記スチレン系共重合体(B2)の含有量の下限は、帯電防止透明樹脂組成物の全体(100質量%)に対して、2質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上及び5質量%以上の順で好ましい。
【0157】
本実施形態のポリマー成分(B)がスチレン系共重合体(B2)を含有する場合、前記スチレン系共重合体(B2)の含有量の上限は、ポリマー成分(B)の全体(100質量%)に対して、25質量%以下、23質量%以下、21質量%以下、19質量%以下、17質量%以下及び15質量%以下の順で好ましい。前記スチレン系共重合体(B2)の含有量の下限は、ポリマー成分(B)の全体(100質量%)に対して、2質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上及び5質量%以上の順で好ましい。
【0158】
上記スチレン系共重合体(B2)の屈折率は、1.530~1.650の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.550~1.600の範囲、さらに好ましくは1.565~1.575の範囲である。
上記スチレン系共重合体(B2)の屈折率は、アッベ屈折計を用いて、25℃で測定した。
【0159】
(ポリマー成分(B)の物性)
本実施形態におけるポリマー成分(B)を構成する重合体のメルトマスフローレイトは、0.3~15g/10minが好ましく、1.0~12.0g/10minがより好ましく、特に好ましくは、2.0~10.0g/10minである。尚、スチレン系共重合体のメルトマスフローレイトは、JIS K 7210-1に従って、200℃、5kg荷重で測定した値である。
【0160】
本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成する重合体の重量平均分子量(Mw)としては、好ましくは10万以上20万以下であり、より好ましくは12万以上18万以下である。前記重量平均分子量が10万より小さいと帯電防止透明脂組成物の衝撃強度が低下する恐れがあり、前記重量平均分子量が20万を超えると帯電防止透明脂組成物中でのスチレン系共重合体の分散性が低下し、機械的強度、特に耐折強度が低下する。尚、本発明における重量平均分子量の測定方法は、「実施例」の欄に記載の方法で行っている。
【0161】
本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成する重合体の数平均分子量(Mn)としては、好ましくは5万以上15万以下であり、より好ましくは5.5万以上10万以下であり、さらに好ましくは5.5万以上9万以下であり、よりさらに好ましくは6万以上8万以下である。前記数平均分子量が5万より小さいと帯電防止透明脂組成物の衝撃強度が低下する恐れがあり、前記数平均分子量が15万を超えると帯電防止透明脂組成物中でのスチレン系共重合体の分散性が低下し、機械的強度、特に耐折強度が低下する。尚、本発明における重量平均分子量の測定方法は、「実施例」の欄に記載の方法で行っている。
【0162】
本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成する重合体の数平均分子量(Mn)が5.5万以上10万以下であり、かつポリマー成分(B)を構成する重合体の重量平均分子量(Mw)が10万以上20万以下であることが好ましい。
ポリマー成分(B)を構成する重合体に低分子量成分が多く含まれると、数平均分子量(Mn)自体が小さくなる傾向を示し、分子の絡み合いが少なくなるために耐折性の効果が悪化しやすくなる。一方、ポリマー成分(B)を構成する重合体の重量平均分子量(Mw)は、ピークトップの位置に左右されることがなく、低分子量成分の影響を受けない傾向を示す。そのため、ポリマー成分(B)を構成する重合体の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との両方を制御することにより、耐折性の効果の効果を最大限に発揮しうる。
【0163】
<ポリマー成分(B)を構成する重合体の重合方法>
本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成する重合体の重合方法は、特に制限はないが例えば、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好適に採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とを備える。
【0164】
以下、本実施形態に用いることができるポリマー成分(B)を構成する重合体の重合方法の一例について説明する。
【0165】
本実施形態のポリマー成分(B)を構成する重合体を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
【0166】
本実施形態のポリマー成分(B)を構成する重合体の重合に用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0167】
本実施形態のポリマー成分(B)を構成する重合体の重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、α-メチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0168】
本実施形態のポリマー成分(B)を構成する重合体の重合方法としては、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ得られる樹脂の機械的強度の低下が大きくなる傾向がある。重合前に、全単量体100質量部に対して5~20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0169】
本実施形態において、ポリマー成分(B)を構成する重合体を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、公知の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合を採用する場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はない。塊状重合を採用する場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。より詳細には、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。尚、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度であり、190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0170】
(ゴム状重合体粒子(C1))
本実施形態における帯電防止透明脂組成物は、ゴム状重合体(c1)の粒子(本明細書ではゴム状重合体粒子(C1)と称する。)を含有してもよい。これにより、帯電防止透明脂組成物全体として、耐衝撃性、耐折性等の機械的特性を向上することができる。また、本明細書では、ゴム状重合体(c1)、共役ジエン(例えば、ポリブタジエン)又はゴム状重合体粒子(C1)の各含有量は、ポリマー成分(B)の含有量の一部とする。したがって、換言すると、本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、ポリマー成分(B)は、ゴム状重合体粒子(C1)を含有してもよい。
【0171】
本実施形態におけるゴム状重合体粒子(C1)は、ゴム状重合体(c1)を含有する粒子体であればよい。したがって、ゴム状重合体粒子(C1)の形態は、ゴム状重合体(c1)からなる中実粒子、ゴム状重合体(c1)からなる中空粒子、ゴム状重合体(c1)内にポリマー成分(B)を構成する重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にポリマー成分(B)を構成する重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子を含む。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。本実施形態のゴム状重合体粒子(C1)の好ましい形態としては、ゴム状重合体(c1)からなる中実粒子の表面にポリマー成分(B)を構成する重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子、ゴム状重合体(c1)内にポリマー成分(B)を構成する重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)の表面に対して、ポリマー成分(B)を構成する重合体がグラフトされた表面グラフト化内包粒子が挙げられる。これらのうち、ゴム状重合体粒子(C1)としては、上述した、表面グラフト化粒子、内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、及び表面グラフト化内包粒子が好ましい。
【0172】
また、上記内包粒子は、以下の(1)~(3)の構造を含む。
【0173】
(1)ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を有するスチレン系共重合体)が、ブロック共重合体(一部又は全部水添された共重合体を含む)であり、且つこれらブロック共重合体から形成されるミクロ相分離構造
【0174】
(2)ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を有するスチレン系共重合体)を含む相をコアとし、ゴム状重合体(c1)をシェルとするコアシェル構造体
【0175】
(3)ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を有するスチレン系共重合体)を含む相がゴム状重合体(c1)内に複数内包したサラミ型構造
上記(1)~(3)における“ポリスチレン”とは、スチレン系単量体単位(b1)のホモポリマーをいう。
【0176】
本実施形態におけるゴム状重合体粒子(C1)は、ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を有するスチレン系共重合体)を含む相がゴム状重合体(c1)内に複数内包したサラミ型構造であることが特に好ましい。
【0177】
尚、上記ゴム状重合体(c1)を含有する粒子体とは、ゴム状重合体粒子(C1)全体の5質量%以上をゴム状重合体(c1)が占めていることをいう。
【0178】
本実施形態において、帯電防止透明脂組成物中に存在するゴム状重合体粒子(C1)の総数の60%以上が、ポリマー成分(B)を構成する重合体を含むポリマー相を内包することが好ましく、より好ましくは、80%以上が、ポリマー成分(B)を構成する重合体を含むポリマー相を内包する。また、帯電防止透明脂組成物中に存在するゴム状重合体粒子(C1)の総数の60%以上が、ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3))を含む相がゴム状重合体粒子(C1)内に複数内包したサラミ型構造である。また、本実施形態において、帯電防止透明脂組成物中の全ゴム状重合体粒子(C1)に占める前記サラミ型構造の割合(個数)の下限は、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上及び95%以上の順でより好ましい。一方、前記サラミ型構造の割合の上限は、100%以下、99%以下及び98%以下の順でより好ましい。
【0179】
これにより、耐衝撃性、耐折性及び透明性がより優れた帯電防止透明脂組成物を提供できる。
【0180】
帯電防止透明脂組成物中の全ゴム状重合体粒子(C1)に占めるポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)を有するスチレン系共重合体)を含むポリマー相を内包する数及びサラミ型構造の割合の算出方法は、後述のゴム状重合体粒子(C1)の重量平均径の算出と同様に、透過電子顕微鏡を用いて個数平均で測定している。具体的には、四酸化オスミウムで染色した帯電防止透明脂組成物から厚さ100nmの超薄切片を5つ作製し、透過電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の明視野像を任意に10枚取得した後、所得した10枚の画像中、黒く染色された粒子がゴム状重合体粒子(C1)であり、当該ゴム状重合体粒子(C1)内に2以上の相を含んでいる粒子をサラミ型構造のゴム状重合体粒子(C1)であると判断して、10枚の画像中に映る全ゴム状重合体粒子(C1)の個数でサラミ型構造のゴム状重合体粒子(C1)の個数を割った値を百分率にすることにより算出している。
【0181】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、全ゴム状重合体粒子(C1)の含有量(ポリマー成分(B)を構成する重合体を含有したポリマー相を含む。)の上限は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、40質量%以下、38質量%以下、36質量%以下、34質量%以下、33質量%以下、32質量%以下、31質量%以下、30質量%以下、29質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、24.5質量%以下、24質量%以下、23.5質量%以下、23質量以下、22.5質量%以下、22質量%以下が好ましい。一方、本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、全ゴム状重合体粒子(C1)の含有量の下限は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、7.3質量%以上、8質量%以上、8.6質量%以上、9質量%以上、9.4質量%以上、9.9質量%以上、10質量%以上、10.3質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、14.1質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上が好ましい。これらの上限及び下限はそれぞれ任意に組み合わせできる。
【0182】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、ゴム状重合体粒子(C1)の含有量は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、3質量%以上40質量%以下であり、好ましくは5質量%以上35質量%以下、より好ましくは8質量%以上32質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。当該含有量を3質量%以上40質量%以下とすることにより、優れた耐衝撃性及び剛性を両立しやすくなる。
【0183】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、帯電防止透明脂組成物の総量(100質量%)に対して、ゴム状重合体粒子(C1)を構成するゴム状重合体(c1)の含有量(ポリマー成分(B)を構成する重合体を含むポリマー相を含まない。)が3質量%以上であり、7質量%以上20質量%以下であることが好ましく、8質量%以上16質量%以下であることがより好ましい。ゴム状重合体(c1)の含有量が10%未満では衝撃を吸収する効果が小さくなるため、耐衝撃性が低下してしまう。また、耐折性は極端に低下してしまう。ゴム状重合体(c1)の含有量が20%超の場合、流動性の低下や耐熱性の低下の問題や、耐衝撃性も低下する。
【0184】
尚、本明細書において、ゴム状重合体粒子(C1)を構成するゴム状重合体(c1)の量の算出方法は、後述の実施例の欄の「(5)ゴム状重合体(c1)の量の測定」に記載の測定方法を用いている。
【0185】
ゴム状重合体(c1)の量(%)=10.8×x×(B-A)/W
すなわち、ゴム状重合体(c1)の量は、例えば、実質的にブタジエン量などの共役ジエン量を表す。
【0186】
本実施形態におけるゴム状重合体粒子(C1)は、ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)を有するスチレン系共重合体(B1))を含むポリマー相を内包することが好ましい。これにより、耐衝撃性及び耐折性をより向上させることができる。
また、本実施形態における帯電防止透明脂組成物中のゴム状重合体粒子(C1)の80質量%以上が、前記ゴム状重合体粒子(C1)に内包される前記ポリマー成分(B)を構成する重合体を含むポリマー相で占められることが好ましく、より好ましくはゴム状重合体粒子(C1)の80質量%以上95質量%以下がポリマー相で占められる。
【0187】
なお、ゴム状重合体粒子(C1)中に内包されるポリマー成分(B)を構成する重合体を含むポリマー相の含有量の測定は、ゴム状重合体粒子(C1)の含有量からゴム状重合体(c1)を引いた値である。
【0188】
本実施形態のゴム状重合体粒子(C1)(或いはゴム状重合体(c1))に用いる材料としては、共役ジエン構造を有していればよい。そのため、本実施形態におけるゴム状重合体(c1)は、共役ジエンを有することが好ましく、例えば共役ジエン系重合体であることが好ましい。当該ゴム状重合体(c1)は、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できる。なかでも、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、ポリブタジエンは、ポリブタジエンの一部又は全部にスチレン-ブタジエン共重合体及び/又はアクリロニトリル-ブタジエン共重合体を有してもよい。スチレン-ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体粒子(C1)は1種若しくは2種以上使用することができる。
【0189】
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(C1)(或いはゴム状重合体)に用いる材料として、シアン化ビニル系単量体単位(例えば、アクリロニトリル単量体単位などの(メタ)アクリロニトリル)を含む共役ジエン系重合体を使用する場合、シアン化ビニル系単量体単位(例えば、(メタ)アクリロニトリル単量体単位)の含有量は、帯電防止透明脂組成物全体(100質量%)に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
【0190】
また、上記ブタジエン系ゴム、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体)を水素添加した飽和ゴムをゴム状重合体粒子(C1)として使用してもよい。
【0191】
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(C1)として、ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)を有するスチレン系共重合体)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、ポリマー成分(B)を構成する重合体(例えば、ポリスチレン及び/又はスチレン系単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)を有するスチレン系共重合体)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子を少なくとも1種有し、かつ前記ゴム状重合体粒子(C1)が、好ましくは0.30μm以上1.6μm以下の範囲、より好ましくは0.4μm以上1.2μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上1.0μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子である形態が好ましい。
【0192】
この場合、本実施形態において、帯電防止透明脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子は、3~40質量%含有することが好ましく、11~30質量%含有することがより好ましい。3質量%未満の場合、流動性は良好であるが耐衝撃性や耐折性が発現しにくく、40質量%超とすると流動性や透明性などの外観が低下する。
【0193】
「他の任意成分」
本実施形態において、上記各成分(A)~(B)を製造する際の回収工程の前後の任意の段階、又は帯電防止透明脂組成物を押出加工、成形加工する段階において、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、リチウムイオンを含有する化合物(リチウム系化合物)、流動パラフィン等の可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ヒンダートフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、各種染料や顔料、無機結晶核剤(酸化チタン、酸化スズ等の金属酸化物)、有機結晶核剤、蛍光増白剤、光拡散剤、選択波長吸収剤を添加してもよい。
【0194】
(添加物)
本発明に係る帯電防止透明脂組成物は、さらに無機結晶核剤として金属酸化物を含有してもよい。本実施形態の帯電防止透明脂組成物において、金属酸化物(例えば、二酸化チタン)の含有量は、帯電防止透明脂組成物の総量100質量%に対して、0.07質量以上5.5質量%以下であることが好ましく、0.65質量%以上3.8質量%以下であることがより好ましく、1.2質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。また、別の態様としては、1.1質量%以上2.8質量%以下であることが好ましい。さらに別の態様としては、0.2質量%以上0.9質量%以下であることがさらに好ましい。
【0195】
尚、帯電防止透明脂組成物中の上記各種添加剤は、帯電防止透明脂組成物100質量%に対して6.0質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましく、0.9質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0196】
[帯電防止透明脂組成物の物性]
<デュポン衝撃強さ>
本実施形態の帯電防止透明脂組成物のデュポン衝撃強度は、2kg・cm以上であることが好ましく、より好ましくは3kg・cm以上である。2kg・cm未満であると、使用中に破損する懸念がある。尚、本開示で、デュポン衝撃強度は、ISO 179に準拠して測定される値である。
【0197】
本実施形態の帯電防止透明脂組成物は、メルトマスフローレイトが、0.6g/10min以上であることが好ましい。メルトマスフローレイトが0.6g/10min以上であれば、押出成形時や真空成形時の成形性が良好である。0.6g/10minのメルトマスフローレイトは、各成分(A)~(C)のメルトマスフローレイト、並びにこれらの樹脂の混合比を調整することにより達成できる。尚、本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、温度200℃、5.00kgにて測定される値である。
【0198】
本発明に係る帯電防止透明脂組成物の用途としては、インジェクションブロー成形、シート体(フィルムも含む)、射出成形、又は押出成形に供されることが好ましい。
【0199】
<全光線透過率>
本実施形態において、本実施形態の帯電防止透明脂組成物から得られた厚さ1mmの試験片のJIS K 7361-1に規定の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、91%以上であることがさらに好ましい。
【0200】
<Haze>
本実施形態において、本実施形態の帯電防止透明脂組成物から得られた厚さ1mmの試験片のJIS K 7105に準拠して測定したヘイズ値が、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下である。
【0201】
<帯電防止透明脂組成物の製造方法>
本実施形態において、帯電防止透明脂組成物の製造方法は、スチレン系樹脂(A)及び流動パラフィンを配合、溶融、混練、造粒する方法は特に限定されず、樹脂組成物の製造で常用されている方法を用いることができる。例えば、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー等で配合(混合)した上記各成分をバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等を用いて溶融、混練し、ロータリーカッター、ファンカッター等で造粒することによって樹脂組成物を得ることができる。溶融、混練における樹脂温度は180~240℃が好ましい。目標とする樹脂温度にするためには、押出機等のシリンダー温度は樹脂温度よりも10~20℃低い温度に設定することが好ましい。樹脂温度が180℃未満では混合が不十分となり好ましくない。一方、樹脂温度が240℃を超えると樹脂の熱分解が起こり好ましくない。
【0202】
<帯電防止透明脂組成物の好ましい形態>
本実施形態の好適な帯電防止透明脂組成物は、帯電防止成分(A)としてのポリエーテルアミドブロック共重合体(A1-1)又はポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)と、ポリマー成分(B)としてのスチレン系単量体単位(b1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)と(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)とを有する三元共重合体と、を含有し、
帯電防止性透明組成物全体に対して、前記ポリエーテルアミドブロック共重合体(A1-1)及び前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)の合計量が15~30質量%であり、前記三元共重合体の合計量が5~30質量%であることが特に好ましい。また、上記好適な帯電防止透明脂組成物は、ゴム状重合体粒子(C1)を当該帯電防止透明脂組成物の総量に対して3質量%以上40質量%以下含有することが特に好ましい。
【0203】
帯電防止透明脂組成物が上記組成であると、上述した図2のように、ポリエーテルアミドブロック共重合体(A1-1)及び/又はポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(A1-2)と、三元共重合体とが互いに高いレベルで相溶するため、高い透明性及び優れた機械的強度を発揮する。
【0204】
<成形体>
本実施形態の成形体は、上記の帯電防止透明脂組成物を成形して得ることができる。当該成形体は、上記の樹脂組成物を成形して得たものであれば特に限定されないが、また、本実施形態の成形体は、特に限定されないが、射出成形体、押出成形体(例えば、マガジン管(マガジンスティック))、又はシート体(フィルムを含む)であることが好ましい。本実施形態の押出成形体したシートを用いた二次成形体の一例として、キャリアテープなどをはじめとした電子部品等の包装容器が挙げられ、当該容器は、押出機出口にて直接成形(賦形)することによって製造してもよく、または押出機を用いて得たシートをさらに成形することにより製造してもよい。また、本実施形態のシートは、電子部品包装容器だけでなく他の容器をはじめとした成形体を製造(成形)するために用いることができる。
【0205】
本実施形態として、シート状の成形品であることが好ましい。また、本実施形態のシートは、非発泡又は発泡のシートでありうる。本実施形態のシートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂等と多層化して用いてもよく、また、当該スチレン系樹脂等の層に加えて、又は代えて、該スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PC樹脂、ABS樹脂、PP樹脂、PP/PS系樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0206】
本実施形態の容器は、上記の帯電防止透明脂組成物を用いてインジェクションブロー成形により得られた容器、または、上記のシートを成形して得られた容器であることが好ましい。また、本実施形態の、上記のシートを成形して得られた容器としては、特に限定されず、シート又はこれを含む多層体より成形した、弁当の蓋材又は惣菜等を入れる容器が挙げられる。
【0207】
<積層体>
本実施形態の別の態様は、基材層と、前記基材層の片側若しくは両側の表面に積層された上記帯電防止性樹脂組成物を含む帯電防止層と、を有する積層シートでありうる。
【0208】
当該積層シートは、帯電防止透明樹脂組成物を含む帯電防止層を有するため、高い透明性、帯電防止性及び耐衝撃性のバランスに優れる。
【0209】
当該基材層としては特に制限はないが、本発明の趣旨を効果的に実現するには、透明性を示す基材が好ましく、例えば、透明なスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムを、一軸又は二軸方向に延伸してなるフィルムが挙げられる。中でも本発明の帯電防止透明樹脂組成物を含む層との密着性を考慮すると、本実施形態のスチレン系単量体(b1)を含むスチレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなる基材層がより好ましい。
【0210】
<キャリアテープ又は電子部品包装用トレイ>
本実施形態の帯電防止透明樹脂組成物を用いた成形品の一態様は、電子部品包装容器でありうる。また、当該電子部品包装容器は、上記した本実施形態の帯電防止透明樹脂組成物から直接成形しても、あるいは本実施形態の帯電防止透明樹脂組成物を成形したシート体から製造してもよい。
【0211】
本実施形態の電子部品包装容器の一例として、キャリアテープ又は電子部品包装用トレイが挙げられる。本実施形態の電子部品包装容器の一態様は、電子部品を収容する複数の凹部と、前記凹部を封止する被覆体と接着可能な縁部と、を有する基材から構成された電子部品包装用トレイでありうる。前記基材は、本実施形態の帯電防止透明樹脂組成物を含有する。また、本実施形態のキャリアテープは、前記基材と、前記基材に設けられた前記凹部を封止する被覆体(カバーテープ)とを有する。
当該カバーテープは、基材と同じ材料であってもよく、あるいは透明なスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド又はポリカーボネート等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムであってもよい。
【0212】
本発明のキャリアテープ又は電子部品包装用トレイは、帯電防止透明樹脂組成物を使用することにより、高い透明性、帯電防止性及び耐衝撃性のバランスに優れる。
【0213】
<成形体の製造方法>
本実施形態において、樹脂組成物から成形体を得る製造方法は、特に限定されず、公知の成形方法、例えば押出成形加工や射出成形加工により製造することができる。具体的には押出成形加工としては、例えば、押出成形、カレンダ成形、中空成形、押出発泡成形、異形押出成形、ラミネート成形、インフレーション成形、Tダイフィルム成形、シート成形、真空成形、圧空成形、ダイレクトブロー成形などが挙げられる。また、射出成形加工としては、例えば、射出成形、RIM成形、射出発泡成形、インジェクションブロー成形、射出延伸ブロー成形などが挙げられる。
【0214】
本実施形態において、成形体のなかでもシートの製造方法としては、特に限定されないが例えば、Tダイを取り付けた単軸又は二軸押出機で押し出しし、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る方法等を挙げることができる。
【0215】
また、本実施形態において、シートより成形して得る容器の製造方法は、特に限定されず例えば圧空成形、真空成形が挙げられる。
【0216】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例0217】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示の実施形態を更に具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0218】
「測定及び評価方法」
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の物性の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0219】
<樹脂又は樹脂組成物の特性解析
【0220】
(1)ポリマー成分(B)のスチレン系単量体単位(b1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b2)、(メタ)アクリル酸単量体単位(b3)の各々の単量体単位の含有量(質量%)の算
【0221】
(NMR測定)
プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
【0222】
試料調製:樹脂ペレット30mgをd6-DMSO 0.75mlに60℃で6時間加熱溶解した。
【0223】
測定機器:日本電子 JNM ECA-500
測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11
【0224】
(NMRスペクトルの帰属)
DMSO重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5~1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチル及び六員環酸無水物のα-メチル基の水素、1.6~2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(-COOCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5~7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素である。尚、本実施形態の樹脂は六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定の方法では通常定量化は難しい。
【0225】
(2)分子量の測定
ポリマー成分(B)の分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
【0226】
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM-H(内径4.6mm)
を2本直列に接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ-H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料調製:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターで
ろ過を行った。
【0227】
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:示差屈折率検出器(RI-8020)
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-45
0、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、
A-5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。ポリマー成分(B)のGPC測定で得られた溶出時間、溶出曲線と上記で作成した検量線からポリスチレン換算の相対分子量を算出することで数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を得た。
【0228】
(3)ゴム状重合体粒子(C1)の含有量の測定
帯電防止透明脂組成物中のゴム状重合体粒子(C1)の含有量(質量%)の測定は、沈殿管にゴム変性帯電防止透明脂組成物1gを精秤し(この質量をWとする)、メチルエチルケトン/メタノールの9:1の混合溶液20mLを加えて23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所製、SS-2050A)にて5℃以下、20000rpm(遠心加速度:4510G)で60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除き、得られた不溶分を、引き続き160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、メチルエチルケトン/メタノール不溶分の質量を精秤し(この質量をGとする)、下記式により、ゴム状重合体粒子(C1)の含有量(質量%)を求めた。
【0229】
ゴム状重合体粒子(C1)の含有量=(G/W)×10
【0230】
(4)トルエン不溶分の膨潤指数の測定
膨潤指数の測定は、沈殿管に帯電防止透明脂組成物1gを精秤し、トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所製、SS-2050A)にて10℃以下、20000rpm(遠心加速度:4510G)で60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し(この質量をW1とする)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤し(この質量をW2とする)、下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数を求めた。 トルエン不溶分の膨潤指数=(W1/W2
【0231】
(5)ゴム状重合体(c1)の量の測定
帯電防止透明脂組成物中のゴム状重合体(c1)のゴム状重合体(c1)の量(質量%)を以下のように測定した。
【0232】
メスフラスコに帯電防止透明脂組成物0.4gを精秤し(この質量をWとする)、クロロホルム75mLを加えてよく分散させた後、一塩化ヨウ素18gを1000mLの四塩化炭素に溶かした溶液20mLを加え、冷暗所に保存し、8時間後にクロロホルムを加え、標線に合わせた。これを25mL採取し、ヨウ化カリウム10gを水800mL、エタノール200mLの混合液に溶かした溶液60mLを加え、チオ硫酸ナトリウム10gを1000mLの水に溶かした溶液(この溶液のモル濃度をxとする)で滴定した。本試験AmL、空試験BmLとし、ゴム状重合体(c1)の含有量(質量%)は以下の式により求めた。
【0233】
ゴム状重合体(c1)の含有量=10.8×x×(B-A)/
【0234】
(6)屈折率の測定
帯電防止成分(A)、ポリマー成分(B)のそれぞれについて平板を作製し、アッベ屈折計を用いて、25℃で測定し、屈折率及びその差を算出した。
【0235】
(7)全光線透過率、ヘーズ(Haze)の測定
後述の「プレートの製造方法」の欄に記載の方法で作製した、厚さ1mmプレートについて、全光線透過率(%)をJIS K 7361-1に準拠して測定した。また、ヘーズ(Haze)(%)をJIS K 7136に準拠して測定し、透明性を評価した。
【0236】
(8)表面抵抗率の測定
後述の「プレートの製造方法」の欄に記載の方法で作製した厚さ2mmプレートを2日間/23℃/50%RHの前処理を施した後、JIS K6911に準じて表面抵抗率及び体積抵抗率を測定し
【0237】
(9)面衝撃強度の測定
面衝撃強度の測定に用いた試験片は後述の「プレートの製造方法」の欄に記載の方法で作製したプレートを用いた。試験はデュポン式ダート試験機((株)東洋精機製作所製)を用い、撃心受け台直径9.4mm、撃心突端の直径6.2mm、荷重100g~1kgの条件で、2mm厚みの試験片中央部に対してミサイルを落下させ、試験片が50%破壊を示す荷重により、破壊エネルギーを求め、これを面衝撃強度とした。
【0238】
(10)シャルピー衝撃強度の測定
シャルピー衝撃強度の測定に用いた試験片は、後述の「「ISOダンベル試験片の製造方法」の欄に記載の方法で作製したプレートを用いた。試験はISO 179に準拠して、シャルピー衝撃強度(kJ/m)をノッチありで測定した。
【0239】
(11)ゴム状重合体粒子(C1)の測定
後述の実施例の帯電防止透明脂組成物及び比較例の樹脂組成物を、四酸化オスミウムで染色した後、厚さ100nmの超薄切片を5つ作製し、透過電子顕微鏡を用いて、それぞれ5つの明視野像(倍率10000倍)を取得した。そして、それぞれの5つ明視野像を合計して、下記数式(N1):
重量平均径=ΣniDri /ΣniDri (N1
【0240】
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体粒子(C1)の粒子の個数であり、粒子径Driは、明視野画像中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体粒子(C1)の重量平均径とした。上記解析は、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて次の通り実施した。取得した前記画像を大津の手法(Otsu metod)で二値化し、ゴム状重合体粒子(C1)以外の白部分(マトリックス相)に相当)を塗りつぶした。隣接接触しているゴム状重合体粒子(C1)同士をWatershed処理により分割し、ゴム状重合体粒子(C1)の面積を算出後、円相当径に換算した。得られた円相当径の数値群から個数基準のヒストグラム及び平均値を導出した。また使用した装置等は以下の通りである。
【0241】
ウルトラミクロトーム:UC7/ライカ
透過電子顕微鏡:HT7700/日立ハイテクノロジーズ
「実施例・比較例に使用した原料
【0242】
(1)帯電防止成分(A)
・帯電防止剤A-1:「ペレスタットNC6321、三洋化成工業株式会社製、屈折率1.513 ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体」
・帯電防止剤A-2:「ペレスタットNC7530、三洋化成工業株式会社製、屈折率1.53 ポリエーテルエステルアミド」
・帯電防止剤A-3:「ペレクトロンAS、三洋化成工業株式会社製、屈折率1.503 ポリエーテルエステルアミド」
・帯電防止剤A-4:「ペレクトロンHC6800、三洋化成工業株式会社製、屈折率1.513 ポリエーテルエステルアミド」
・帯電防止剤A-5:「ペレスタット230、三洋化成工業株式会社製、屈折率1.496 ポリエーテル/ポリオレフィンブロック」
・帯電防止剤A-6:「ペレクトロンHS、三洋化成工業株式会社製、屈折率1.496 ポリエーテル/ポリオレフィンブロック」
・帯電防止剤A-7:「ペレクトロンPVL、三洋化成工業株式会社製、屈折率1.493 ポリエーテル/ポリオレフィンブロック」
・帯電防止剤A-8:「イルガスタットP18、BASFジャパン株式会社製、屈折率1.501 ポリエーテルブロックアミド」
・帯電防止剤A-9:「ぺバックスMV2080、アルケマ株式会社製、屈折率1.502 ポリエーテルブロックアミド
【0243】
(2)ポリマー成分(B)
ポリマー成分(B)として、以下のスチレン系樹脂(B1-1)~(B1-5)及びスチレン系樹脂(B2-1)~(B2-5)を使用した。
【0244】
ポリマー成分(B)としてスチレン系樹脂(B1-1)~(B1-5)は、以下の方法で合成した。
【0245】
「スチレン系樹脂(B1-1)の調製」
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体(b1)としてスチレン42.0質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位(b2)としてアクリル酸n-ブチル3.7質量%、メタアクリル酸メチル35.5質量%、ゴム状重合体(c1)の原料としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)8.7質量%、溶剤としてエチルベンゼン10.0質量%、重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.17質量%、を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-1に、2.5リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を125℃/130℃/135℃に調整した。
【0246】
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は132℃/137℃/142℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。温度は140℃/142℃/145℃に設定した。
【0247】
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズして、ペレット状のスチレン系樹脂(B)であるスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(スチレン系樹脂(B1-1))を得た(表1参照)。ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、0.60μmであった。スチレン-ブタジエンブロック共重合体中のスチレン単量体単位の含有量は35質量%であった。
【0248】
「スチレン系樹脂(B1-2)の調製」
スチレン樹脂(B1-2)は、以下の方法で合成した。
【0249】
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体としてスチレン42.7質量%、アクリル酸n-ブチル3.8質量%、メタアクリル酸メチル36.1質量%、ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)9.4質量%、溶剤としてエチルベンゼン8質量%、重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.17質量%とした他は、スチレン系樹脂(B1-1)と同じ条件で、ペレット状のスチレン系樹脂(B)であるスチレン系樹脂(B1-2)を得た(表1参照)。ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、0.59μmであった。スチレン-ブタジエンブロック共重合体中のスチレン単量体単位の含有量は35質量%であった。
【0250】
「スチレン系樹脂(B1-3)の調製」
スチレン樹脂(B1-3)は、以下の方法で合成した。
【0251】
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体としてスチレン41.4質量%、アクリル酸n-ブチル3.8質量%、メタアクリル酸メチル34.9質量%、ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)10.0質量%、溶剤としてエチルベンゼン10質量%、重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.17質量%とした他は、スチレン系樹脂(B1-1)と同じ条件で、ペレット状のスチレン系樹脂(B)であるスチレン系樹脂(B1-3)を得た(表1参照)。ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、0.61μmであった。スチレン-ブタジエンブロック共重合体中のスチレン単量体単位の含有量は35質量%であった。
【0252】
「スチレン系樹脂(B1-4)の調製」
スチレン樹脂(B1-4)は、以下の方法で合成した。
【0253】
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体としてスチレン43.7質量%、アクリル酸n-ブチル9.5質量%、メタアクリル酸メチル29.4質量%、ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)9.4質量%、溶剤としてエチルベンゼン8質量%、重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.17質量%とした他は、スチレン系樹脂(B1-1)と同じ条件で、ペレット状のスチレン系樹脂(B)であるスチレン系樹脂(B1-4)を得た(表1参照)。ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、0.62μmであった。スチレン-ブタジエンブロック共重合体中のスチレン単量体単位の含有量は35質量%であった。
【0254】
「スチレン系樹脂(B1-5)の調製」
スチレン樹脂(B1-5)は、以下の方法で合成した。
【0255】
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体としてスチレン41.9質量%、メタアクリル酸メチル40.1質量%、ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)9.0質量%、溶剤としてエチルベンゼン9質量%、重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.17質量%とした他は、スチレン系樹脂(B1-1)と同じ条件で、ペレット状のスチレン系樹脂(B)であるスチレン系樹脂(B1-5)を得た(表1参照)。ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、0.50μmであった。スチレン-ブタジエンブロック共重合体中のスチレン単量体単位の含有量は35質量%であった。
【0256】
【表1】
「スチレン系樹脂(B2-1)~(B2-7)の調製」
スチレン系樹脂(B2-1)~(B2-7)は、以下の方法で合成した。
【0257】
スチレン系単量体(b1)としてスチレン73.8質量部、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b2)としてメタクリル酸10.8質量部、(メタ)アクリル酸単量体(b3)としてメタクリル酸メチル5.4質量部、エチルベンゼン10.0質量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器、次いで、2リットルの層流型反応器からなる重合装置に、次いで、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に、順次供給し、スチレン系樹脂(B2-1)を調製した。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度118~128℃、層流型反応器は温度121~143℃とした。脱揮された未反応ガスは-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。
【0258】
以下の表2に示す樹脂の性状(樹脂組成、樹脂中のスチレン単量体含有量、スチレンの二量体と三量体との合計含有量、重量平均分子量)になるように条件を調整し、スチレン系樹脂(B2-1)と同様にして、スチレン系樹脂(B2-2)~(B2-7)を調製した。
【0259】
【表2】
「実施例1~26の帯電防止透明脂組成物の製造方法」
上記の「実施例・比較例に使用した原料」の欄及び下記の表3-1及び3-2に従い原料をそれぞれ調製した後、計量した原料をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、実施例1~26のペレット状の帯電防止透明脂組成物を得た。そして、上記に記載の測定方法に従い、得られた実施例1~22の帯電防止透明脂組成物の物性の測定及び評価を行った。その結果を表3-1~表3-2に示す。
【0260】
「比較例1~12の樹脂組成物の製造方法」
上記の「実施例・比較例に使用した原料」の欄及び下記の表4-1~表4-2に従い、原料をそれぞれ調製した後、計量した原料をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、比較例1~12のペレット状の樹脂組成物を得た。そして、上記に記載の測定方法に従い、得られた比較例1~12の樹脂組成物の物性の測定及び評価を行った。その結果を表4―1~表4-2に示す。
【0261】
「プレートの製造方法」
実施例1~26及び比較例1~12で得られたペレット状の帯電防止透明脂組成物をそれぞれ得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物又は樹脂組成物を東芝機械株式会社製EC-60N型射出成形機に供給した。樹脂溶融ゾーンの温度は180~220℃に設定し、45℃に設定されたプレート成形金型内に射出、2mm厚のプレート及び1mm厚のプレートを得た。そして、上記に記載の測定方法に従い、プレートの物性の測定及び評価を行った。その結果を表3-1~表3-2及び表4―1~表4-2に示す。
【0262】
「ISOダンベル試験片の製造方法」
ISOタイプA金型内を用いたほかは、前記「プレートの製造方法」と同条件にてISOダンベル試験片を得た。そして、上記に記載の測定方法に従い、プレートの物性の測定及び評価を行った。その結果を表3-1~表3-3及び表4―1~表4-2に示す。
【表3-1】
【0263】
【表3-2】
【0264】
【表4-1】
【0265】
【表4-2】
上記表3-1~表3-2及び表4-1~表4-2に示す実験結果から、本実施例で得られた帯電防止透明脂組成物及び成形体は、比較例の組成物又は成形体と比べて、透明性、耐衝撃性及び帯電防止性のバランスに優れることが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0266】
本発明の帯電防止透明脂組成物及び成形体は、透明性、耐衝撃性及び帯電防止性のバランスに優れるため、電子部品包装容器、電子部品包装用トレイ、電子部品包装用マガジン管又はキャリアテープに好適に使用できる。
図1
図2